特許第6192453号(P6192453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192453屋根構造、太陽電池モジュールの取付具、太陽電池モジュールの取付構造、及び太陽電池モジュールの取付工法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192453
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】屋根構造、太陽電池モジュールの取付具、太陽電池モジュールの取付構造、及び太陽電池モジュールの取付工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20140101AFI20170828BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20170828BHJP
【FI】
   E04D13/18ETD
   H02S20/23 B
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-188061(P2013-188061)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-55075(P2015-55075A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501241128
【氏名又は名称】エイ・エイチ・アイ・ルーフィング・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AHI Roofing Limited
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 武士
(72)【発明者】
【氏名】石田 謙介
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−163058(JP,A)
【文献】 特開2008−274646(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0293383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
E04D 13/00
H02S 20/00−20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材が敷きつめられ、さらにその上に取付具を介して太陽電池モジュールが設置された屋根構造であって、前記屋根材は軒側の面を有し、軒側の面の底側部分が他の屋根材の棟側に重ねられた状態で敷きつめられている屋根構造において、
前記屋根材は設置状態を基準として軒側に向かう面に軒側壁面部が形成されており、
前記取付具は、前記屋根材に固定される本体部と保持部材を有し、
前記保持部材は、前記太陽電池モジュールの辺部を保持する、又は前記太陽電モジュールを固定するための部材を保持するものであって、
前記本体部は、前記軒側壁面部に固定される軒側取付面と、前記屋根材の上に被さるとともに保持部材が取り付けられる保持部材取付部と、前記屋根材の上面側に当接する脚部とを有し、
前記軒側取付面が前記軒側壁面部に対して締結要素を介して固定されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記屋根材に固定された前記軒側取付面の下端側が、他の屋根材の上面と当接していることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記本体部は一枚の金属板を折り曲げて成形されたものであり、前記脚部は前記屋根材の上面と面接触する面状部分を有し、前記軒側取付面と前記脚部との間に前記保持部材取付部が設けられており、前記面状部分と同一平面となる仮想面が前記軒側取付面と略垂直に交わることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造。
【請求項4】
軒側に向かう面に軒側壁面部が存在する屋根材と、太陽電池モジュールとの間に介在され、前記太陽電池モジュールを前記屋根材に固定する取付具において、
前記屋根材側に固定される本体部と保持部材を有し、
前記保持部材は、前記太陽電池モジュールの辺部を保持する、又は前記太陽電モジュールを固定するための部材を保持するものであって、
前記本体部は、前記軒側壁面部に接すると共に当該軒側壁面部に締結要素を介して取り付けるための軒側取付面と、前記屋根材の上に隙間を空けた状態で被さると共に前記保持部材を締結要素を介して取り付けるための保持部材取付部と、前記屋根材の上面側に当接する脚部とを有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付具。
【請求項5】
軒側に向かう面に軒側壁面部が存在する屋根材を複数備え、前記屋根材が列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置される屋根に対して太陽電池モジュールを取り付ける取付構造であって、
請求項4に記載の太陽電池モジュールの取付具を備えており、
前記軒側取付面を前記軒側壁面部に対して締結要素を介して固定することで、太陽電池モジュールの取付具が前記屋根材に固定されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項6】
請求項4に記載の太陽電池モジュールの取付具を用いる太陽電池モジュールの取付工法であって、
屋根材の軒側に向かう面に存在する軒側壁面部に対し、前記軒側取付面を締結要素を介して固定する工程を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの取付工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを取り付けて形成される屋根構造、屋根上に太陽電池モジュールを取り付けるための太陽電池モジュールの取付具、太陽電池モジュールの取付構造、及び太陽電池モジュールの取付工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムの普及が進められている。太陽光発電システムは、一般住宅やビル等の建屋上に太陽電池モジュールを取り付けて形成するものであり、発電した電力の建屋内への供給や、余剰電力の電力会社への売却が可能となっている。
【0003】
太陽電池モジュールを建屋上に取り付ける取付構造として、以下の2つの構造が知られている。第1の構造は、屋根下地の上に瓦や金属板といった屋根材を葺き、さらにその上に太陽電池モジュールを取り付ける構造である。また、第2の構造は、太陽電池モジュールに瓦の機能を具備させ、屋根下地の上に太陽電池モジュールを敷き詰めていく構造である。
【0004】
第1の構造としては、例えば、特許文献1に開示された構造がある。この屋根構造で採用される太陽電池モジュールの取付具(以下単に取付具とも称す)は、太陽電池モジュールを挟持するための板状部(中間板部材、押さえ板部材)と、土台部分(固定部)を備えた構成となっている。そして、この屋根構造では、屋根下地の上に屋根材を敷き詰めていく際、屋根材と共に取付具の土台部分を取り付けている。
このことから、屋根構造を構築する過程では、基礎屋根構造、すなわち、敷き詰められた屋根材の上側から土台部分が露出した基礎となる屋根構造が形成されることとなる。そして、この基礎屋根構造に対し、露出した土台部分に上記した板状部を取り付けると、屋根材及び土台部分の上側で太陽電池モジュールを固定する屋根構造が構築されることとなる。すなわち、屋根材が葺かれた部分の上側に太陽電池モジュールが取り付けられた屋根構造が構築されることとなる。
【0005】
より具体的には、特許文献1に開示された屋根構造では、屋根材の取付用孔と取付具の土台部分に形成した取付用孔とを重ね合わせてネジ釘等の締結部材を挿通し、屋根材と土台部分を屋根下地に一体に固定している。このとき、段状に隣接する2つの屋根材のうち、軒側に位置する屋根材と土台部分の一部とを共に固定している。そして、軒側に位置する屋根材と土台部分の取付用孔、すなわち、締結要素を挿通するための取付用孔を棟側に位置する他の屋根材によって覆った状態としている。このため、土台部分を固定するための取付用孔から雨水等が屋根下地側へと浸入し難く、雨漏りし難い構造とすることができる。
【0006】
第2の構造としては、例えば、特許文献2、特許文献3に開示された構造がある。特許文献2に開示された屋根構造では、吊り子の固定部を屋根下地(野地板)に釘で固定しており、この吊り子の上側に金属屋根部材と太陽電池からなる屋根材モジュールが載置された構造となっている。より詳細には、屋根材モジュールの軒側端部寄りの部分が吊り子に載置され、屋根下地から離れた位置に支持された状態となっている。そして、この屋根構造では、屋根材モジュールの軒側端部の下側に、隣接配置する他の屋根材モジュールの棟側端部を位置させ、これら2つの屋根材モジュールを連結部材で一体に固定している。
つまり、特許文献2に開示された構造は、金属屋根部材と太陽電池とを少なくとも備えた屋根材モジュールを止めネジ等(特許文献2における止めネジ54等)を用いて予め組み立てておき、この屋根材モジュールを吊り子を介して屋根下地に取り付け、さらに屋根材モジュール同士を一体に固定する構造であるといえる。
【0007】
特許文献3に開示された屋根構造では、野地板に直接取り付けられた固定金具に対し、表面に太陽電池が貼着された金属屋根材を取り付けている。つまり、この屋根構造は、太陽電池と金属屋根材からなる部材を予め一体に形成し、固定金具を介して野地板に直接取り付けた構造であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−163062号公報
【特許文献2】特開2000−96775号公報
【特許文献3】特開平8−270151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来技術の取付構造では、新たに屋根を構築する際に太陽電池モジュールを取り付けることを想定している。そのため、すでに屋根下地の上に瓦等の屋根材が葺かれて形成された既設の屋根構造に太陽電池モジュールを取り付けようとする場合、取り付け作業が煩雑になってしまう可能性がある。
【0010】
より詳細に説明すると、特許文献1に開示された構造では、屋根材と共に取付具の土台部分を屋根下地に固定する必要があるため、既設の屋根構造に太陽電池モジュールを取り付ける場合、すでに葺かれた瓦等の屋根材を取り外さなければならない場合がある。すなわち、すでに葺かれた屋根材を取り外し、剥き出しとなった屋根下地に対して屋根材と共に取付具を取り付けていく必要が生じてしまう。
【0011】
また、特許文献2、特許文献3に開示された構造でもまた、既設の屋根構造に太陽電池モジュールを取り付ける場合、すでに葺かれた瓦等の屋根材を取り外す必要が生じてしまう。すなわち、すでに葺かれた屋根材を取り外し、屋根下地に対して吊り子や固定金具等を取り付け、さらにその上側に屋根材モジュール等(屋根部材と太陽電池からなる部材)を取り付けていく必要がある。
【0012】
つまり、上記した従来の屋根構造では、すでに屋根材が葺かれた既設の屋根構造に太陽電池モジュールを取り付ける場合、葺かれた屋根材を取り外す作業が生じてしまう。そして、この屋根材の取り外し作業は手間であり、太陽電池モジュールの取り付け作業が煩雑化してしまう可能性がある。
【0013】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、すでに屋根材が葺かれた既設の屋根構造に太陽電池モジュールを取り付ける場合においても、太陽電池モジュールの取り付けを容易に実施可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、屋根材が敷きつめられ、さらにその上に取付具を介して太陽電池モジュールが設置された屋根構造であって、前記屋根材は軒側の面を有し、軒側の面の底側部分が他の屋根材の棟側に重ねられた状態で敷きつめられている屋根構造において、前記屋根材は設置状態を基準として軒側に向かう面に軒側壁面部が形成されており、前記取付具は、前記屋根材に固定される本体部と保持部材を有し、前記保持部材は、前記太陽電池モジュールの辺部を保持する、又は前記太陽電モジュールを固定するための部材を保持するものであって、前記本体部は、前記軒側壁面部に固定される軒側取付面と、前記屋根材の上に被さるとともに保持部材が取り付けられる保持部材取付部と、前記屋根材の上面側に当接する脚部とを有し、前記軒側取付面が前記軒側壁面部に対して締結要素を介して固定されていることを特徴とする屋根構造である。
【0015】
本発明の屋根構造は、屋根材の一部である軒側の面の底側部分が他の屋根材の棟側に重ねられた状態で敷きつめられている。すなわち、棟側に位置する屋根材の軒側の面が、軒側に位置する屋根材の上面と交わっており、段差を形成した状態となっている。そして、この段差を形成している部分に対し、太陽電池モジュールを取り付けるための取付具を固定している。すなわち、屋根材を重ね合わせた際に形成される段差部分に取付具を固定する構造となっている。
この構造によると、ネジ、釘等(締結要素)を屋根の上面から屋根下地へ向かう方向に挿通することなく、取付具の固定が可能となる。具体的に説明すると、段差を形成している部分は、軒側の屋根材の上面と棟側の屋根材の上面の間に位置しており、これらと交わる面となっている。したがって、この面にネジ、釘等を挿通すると、上面に貫通孔を形成することなく取付具の固定が可能となる。
【0016】
このため、本発明の屋根構造では、屋根材が葺かれて形成された既設の屋根構造に対して取付具を取り付けても、高い防水性を発揮することが可能となる。
詳細に説明すると、屋根材の上面に貫通孔が形成されるような従来の構造では、屋根材を上下方向に貫通する貫通孔から屋根下地側へと雨水等が浸入してしまうおそれがある。そのため、屋根材の上面に形成される貫通孔を他の屋根材で覆う構造としたり、コーキング処理を実施したりする必要が生じることとなる。
これに対して、本発明の屋根構造では、屋根材の上面に貫通孔を形成することなく取付具の固定が可能となっている。そのため、既設の屋根構造を形成する屋根材に取付具を取り付けても高い防水性を確保できる。このことから、すでに構築した既設の屋根構造を解体したりすることなく、この屋根構造を構成する屋根材に対して取付具を直接固定することが可能となる。また、取付具を固定する際、単に締結要素を挿通するといった簡単な取り付け作業により、取付具の固定が可能となる。
つまり、本発明の屋根構造では、太陽電池モジュールを取り付けるための取付具の固定作業が容易となることから、太陽電池モジュールの取り付け作業を簡易化できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記屋根材に固定された前記軒側取付面の下端側が、他の屋根材の上面と当接していることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造である。
【0018】
かかる構成によると、取付具の一部が取付具を固定した屋根材とは異なる屋根材に上側から当接することとなる。このことから、取付具が太陽電池モジュール等から受ける荷重を複数の屋根材に分散させることが可能となり、取付具を固定した屋根材に大きな負荷がかからない構造とすることができる。別言すると、取付具を固定した屋根材の劣化、破損等を抑制できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記本体部は一枚の金属板を折り曲げて成形されたものであり、前記脚部は前記屋根材の上面と面接触する面状部分を有し、前記軒側取付面と前記脚部との間に前記保持部材取付部が設けられており、前記面状部分と同一平面となる仮想面が前記軒側取付面と略垂直に交わることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造である。
【0020】
かかる構成によると、取付具を固定した部分に対して荷重が集中してしまうことがなく、好適な荷重分散が可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、軒側に向かう面に軒側壁面部が存在する屋根材と、太陽電池モジュールとの間に介在され、前記太陽電池モジュールを前記屋根材に固定する取付具において、前記屋根材側に固定される本体部と保持部材を有し、前記保持部材は、前記太陽電池モジュールの辺部を保持する、又は前記太陽電モジュールを固定するための部材を保持するものであって、前記本体部は、前記軒側壁面部に接すると共に当該軒側壁面部に締結要素を介して取り付けるための軒側取付面と、前記屋根材の上に隙間を空けた状態で被さると共に前記保持部材を締結要素を介して取り付けるための保持部材取付部と、前記屋根材の上面側に当接する脚部とを有することを特徴とする太陽電池モジュールの取付具である。
【0022】
請求項5に記載の発明は、軒側に向かう面に軒側壁面部が存在する屋根材を複数備え、前記屋根材が列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置される屋根に対して太陽電池モジュールを取り付ける取付構造であって、請求項4に記載の太陽電池モジュールの取付具を備えており、前記軒側取付面を前記軒側壁面部に対して締結要素を介して固定することで、太陽電池モジュールの取付具が前記屋根材に固定されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造である。
【0023】
本発明の太陽電池モジュールの取付具、本発明の太陽電池モジュールの取付構造においても、上記した本発明の屋根構造と同様であり、取付具を既設の屋根構造に対して取り付ける場合であっても、高い防水性を発揮することが可能となる。そのため、すでに葺かれた屋根構造を構成する屋根材に対して取付具を直接固定することが可能であり、単に締結要素を挿通するといった簡単な取り付け作業によって取付具の固定が可能となる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の太陽電池モジュールの取付具を用いる太陽電池モジュールの取付工法であって、屋根材の軒側に向かう面に存在する軒側壁面部に対し、前記軒側取付面を締結要素を介して固定する工程を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの取付工法である。
【0025】
本発明の太陽電池モジュールの取付具は、このような工法で固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、既設の屋根構造を形成する屋根材に取付具を取り付けても高い防水性を確保できる。このことから、すでに構築した既設の屋根構造を解体したりすることなく、取付具を屋根材に対して容易に固定可能であるので、太陽電池モジュールの取り付け作業を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る屋根構造を示す斜視図である。
図2図1の屋根構造で採用した屋根材を示す斜視図である。
図3図1の取付具を示す斜視図である。
図4図3の本体部を示す斜視図である。
図5図3の保持部を示す斜視図である。
図6図5の保持部を示す分解斜視図である。
図7図3の保持部を図5とは異なる方向からみた状態を示す斜視図である。
図8図3の本体部に保持部を取付ける様子を示す説明図であり、(a)〜(c)の順に取り付ける。
図9図3の取付具を示す分解斜視図である。
図10】本実施形態の屋根構造の施工手順を示す斜視図であり、屋根の軒先側の部分に取付具を取り付け、屋根の棟側の部分に取付具の一部である本体部を取付けた状態を示す。
図11】基礎屋根構造に対して本体部を取付ける様子を示す説明図である。
図12】基礎屋根構造に対して本体部を取付ける様子を示す断面図である。
図13】基礎屋根構造に取り付けた本体部に対して保持部を取り付ける様子を示す説明図である。
図14図10と同様の状態の屋根構造を示す断面図である。
図15】実施形態の屋根構造の施工手順を示す斜視図であり、図10の状態の屋根構造に対してさらに太陽電池モジュールを載置した状態を示す斜視図である。
図16】実施形態の屋根構造の施工手順を示す図であり、図15の状態の屋根構造に対し、棟側に位置する本体部に保持部を取付ける様子を示す断面図である。
図17】実施形態の屋根構造の施工手順を示す斜視図であり、図16の状態から棟側に位置する本体部に保持部を取付け、さらに隣接する太陽電池モジュールのケーブル同士を接続し、このケーブルを鉤状部に係止した状態を示す。
図18図1の取付具の取り付け時における傾きを調整する様子を示す説明図であり、(a)は取付具が傾いた状態を示し、(b)は取付具が正常な姿勢となっている状態を示す。
図19図2とは異なる屋根材を示す斜視図である。
図20図19で示す屋根材を葺いて構築した基礎屋根構造に対し、図3の本体部を取付ける様子を示す説明図である。
図21図4とは異なる本体部を示す斜視図である。
図22図4図21とは異なる本体部を示す斜視図であり、(a)は軒側からみた状態を示し、(b)は棟側からみた状態を示す。
図23図4図21図22とは異なる形態の取付具と、太陽電池モジュールを取り付けるためのレール部材を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下左右前後の位置関係は、通常の設置位置(図1)を基準に説明する。
【0029】
本実施形態の屋根構造1は、屋根下地の上に屋根材2が葺かれて形成された基礎屋根構造3に対し、取付具4(太陽電池モジュールの取付具)を介して太陽電池モジュール5が取り付けられたものである。
【0030】
屋根材2は、ガルバリウム鋼板等の金属板にメッキ処理をした後、所定の形状にプレス加工して形成されるものである。本実施形態の屋根材2は、図2で示されるように、略長方形平板状の屋根材本体10と、屋根材本体10の前端側部分を下方に折り返して形成される前方立板部11と、屋根材本体10の後端側部分を上側へ立ち上げて形成される後方立板部12とを備えており、これらが一体となるように形成されている。
【0031】
前方立板部11は、屋根材本体10の前端側部分から下方へ向かって突出する立板状の部分である。
なお、屋根材本体10の前端側部分は、屋根上への設置時に軒側端部となる部分である。つまり、前方立板部11は、屋根上への設置時に軒側に位置する部分に形成されており、前方立板部11の前端面11a(軒側壁面部)は軒側に向かう面となる。
【0032】
取付具4は、図3で示されるように、主に本体部20と、保持部21(保持部材)とを有する構成となっている。
【0033】
本体部20は、ガルバリウム鋼板等の適宜な金属を所定の形状に打ち抜き、折り曲げ加工して形成されるものである。すなわち、本体部20は、一枚の金属板を折り曲げて成形されたものである。より具体的には、本体部20は、直立した長方形平板状の前板部25と、前板部25の上端部分を後方へ折り曲げて形成される長方形平板状の台板部26(保持部材取付部)と、台板部26の後側部分と連続する後側脚部27(脚部)とを有する構成となっている。
【0034】
前板部25は、本体部20の前端部分(軒側の端部)に位置する立板状の部分であり、上端近傍が後方に向かって折り曲げられた状態となっている。すなわち、前板部25は、直立した長方形平板状であって下方側に位置する下板部分25aと、下板部分25aの上端から後方上側へ向かって突出する上板部分25bによって形成されている。
【0035】
また、前板部25の下板部分25aには、前板部25を厚さ方向に貫通する取付用孔30が複数設けられている。より詳細には、2つの取付用孔30が水平方向に間隔を空けて並列している。2つの取付用孔30の一つである取付用孔30aは、上下方向に延びる長孔となっている。対して、もう一方の取付用孔30bは、正面視した開口形状が円形となる丸孔となっている。すなわち、2つの取付用孔30は開口形状がそれぞれ異なる孔となっており、そのうち1つのみが上下方向に延びる長孔となっている。別言すると、複数の取付用孔30のうちで少なくとも1つの孔が上下方向に延びる長孔となっている。
【0036】
台板部26は、本体部20の上端に位置する部分であり、保持部21(図3参照)を載置可能な載置面を有している。すなわち、台板部26は、保持部21を固定するするための固定台として機能する部分である。
【0037】
この台板部26には、図4で示されるように、台板部26を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている。より詳細には、台板部26の後側(棟側)近傍に左右方向に間隔を空けて並列する2つの貫通孔が設けられている。
【0038】
この2つの貫通孔は、保持部21(図3参照)を固定するための保持具取付孔33となっている。この保持具取付孔33には、ブラインドナット等の固定部材(図4では図示せず、図8等参照)が取り付けられており、さらに、ネジ等の締結要素が緩めた状態で取り付けられた状態となっている。
【0039】
後側脚部27は、台板部26の後端部分(棟側の端部)から下方へ垂下された立板状の支持板部37と、支持板部37の下端から後方へ突出する長方形平板状の押圧板部38(面状部分)とを有する構成となっている。
【0040】
支持板部37は、前板部25と前後方向(梁間方向)で間隔を空けて対向するように位置しており、その下端部分は、前板部25の下端部分よりも上方に位置している。このことから、押圧板部38もまた、前板部25の下端部分よりも上方に位置した状態となっている。
また、押圧板部38が水平板状の部分であるのに対し、前板部25は直立板状の部分となっている。別言すると、押圧板部38が水平方向に広がりを持つ面を形成するのに対し、前板部25は高さ方向を含む方向に広がりを持つ面を形成している。すなわち、押圧板部38が形成する面と同一平面となる仮想面は、前板部25(下板部分25a)が形成する面と略垂直に交わることとなる。
【0041】
押圧板部38には、押圧板部38を厚さ方向に貫通する貫通孔であるスペーサ取付孔35と、押圧板部38の一部を切り起こして形成される鉤状部36とがそれぞれ設けられている。
【0042】
スペーサ取付孔35は、押圧板部38に複数設けられており、より詳細には、2つのスペーサ取付孔35が左右方向(桁行方向)に間隔を空けて並列するように形成されている。すなわち、一方のスペーサ取付孔35は、押圧板部38の左右方向における片側端部寄りの位置に形成され、他方のスペーサ取付孔35は、押圧板部38の左右方向における他方側端部寄りの位置に形成されている。これらはいずれも開口形状が円形の貫通孔となっている。
【0043】
鉤状部36は、押圧板部38の幅方向における中心近傍に設けられており、2つのスペーサ取付孔35の間に位置している。すなわち、押圧板部38では、左右方向における片側端部側から他方端部側へ向かって、スペーサ取付孔35、鉤状部36、スペーサ取付孔35がこの順序で並列するようにそれぞれ形成されている。
【0044】
鉤状部36は、押圧板部38に正面視が略「U」字状となる切り込みを入れ、この切り込みに囲まれた部分を立ち上げて形成したものである。すなわち、この鉤状部36は、押圧板部38の一部を切り起こすと共に、その先端部分を鉤状に折曲することで形成されている。したがって、鉤状部36は、押圧板部38から上方へ突出する直立した長方形平板状の部分と、この立板状の部分の上端部分を前側(軒側)へ折り返して形成される平板状の部分とを有する構成となっている。そして、この鉤状部36は、前方へと折り返された部分の下方側に、前方が開放された空間を形成している。
【0045】
保持部21は、図5で示されるように、保持部本体42に押さえ板部材43が装着されたものである。
【0046】
保持部本体42は、図6で示されるように、一枚の金属板を階段状に折曲することで形成される部分である。すなわち、この保持部本体42は、いずれも長方形平板状の部分である第1平板部47、第1立板部48、第2平板部49、第2立板部50が順に連続するように形成されている。このうち、第1立板部48と第2立板部50とは、直立した姿勢となっている。
【0047】
より詳細に説明すると、この保持部本体42では、第1平板部47の軒側端部から第1立板部48が上方に突出しており、第1立板部48の上端から第2平板部49が軒側に突出しており、第2平板部49の軒側端部から第2立板部50が上方へ突出した状態となっている。
【0048】
第1平板部47には、取付用長孔53が複数設けられている。すなわち、2つの取付用長孔53が左右方向(桁行方向)に間隔を空けて並列するように形成されている。
【0049】
この取付用長孔53は、図7で示されるように、いずれも第1平板部47の後端(棟側端部であり図7では前端部)よりやや前方(軒側であり図7では後方)に位置する部分から、第1立板部48の壁面に至るまで延びている。
つまり、この取付用長孔53は、第1立板部48の壁面を厚さ方向に貫通する長孔延長部53aと、第1平板部47を厚さ方向に貫通する長孔本体部53bとが連続して形成される長孔となっている。長孔延長部53aは、その開口形状が略四角形となる貫通孔であり、その幅方向の長さが長孔本体部53bよりも長くなっている。そして、長孔延長部53aは、ネジの頭部が通過可能な大きさに設計されている。また、長孔本体部53bは、ネジの軸部は通過可能であるが、ネジの頭部は通過できない寸法に設計されている。
【0050】
また、第2立板部50には、図6で示されるように、押さえ板部材43を固定するための板固定用孔55が形成されている。この板固定用孔55は、第2立板部50を部材厚方向に貫通する雌ネジ孔であり、左右方向(桁行方向)に間隔を空けて並列するように形成されている。
【0051】
押さえ板部材43は、側面視した形状が略「コ」字状となる部材であり、直立した長方形平板状の正面板部58と、正面板部58の上端から後方へ突出する長方形平板状の天板部59と、正面板部58の下端から後方へ突出する長方形平板状の下板部60とを有する構成となっている。
【0052】
押さえ板部材43の正面板部58にもまた、正面板部58を厚さ方向に貫通する板固定用孔61が設けられている。この板固定用孔61は、正面板部58を厚さ方向に貫通する貫通孔となっており、左右方向(桁行方向)に間隔を空けて並列するように形成されている。
【0053】
続いて、取付具4の組み立て構造について説明する。
【0054】
取付具4は、図3で示されるように、台板部26の上に保持部21が載置された状態で固定されたものである。すなわち、本体部20に保持部21が固定されることで、取付具4が形成されている。保持部21を本体部20に取り付ける際の推奨される手順に沿って、取付具4の組み立て構造を詳細に説明する。
【0055】
ここで、台板部26の保持具取付孔33には、上記したように、ブラインドナット等の固定部材が取り付けられており、さらに、ネジ等の締結要素が緩めた状態で取り付けられている(図4図8等参照)。
【0056】
そして、保持部21を本体部20に取り付ける際には、図8(a)で示されるように、保持具取付孔33に挿通された締結要素よりも後側(棟側)の部分に、保持部本体42の第1立板部48を位置させた状態とする。そして、そのまま保持部本体42を前方(軒側であり図8では左側)へとスライド移動させると、締結要素(ネジ)の頭部が取付用長孔53の長孔延長部53a(図7等参照)を通過し、第1平板部47の上側に位置した状態となる(図8(b)参照)。この状態で締結要素(ネジ)を締め付けることにより、台板部26に保持部本体42が固定された状態となる(図8(c)参照)。
【0057】
また、保持部本体42には、押さえ板部材43が固定された状態となっている。
すなわち、図6図9で示されるように、保持部本体42の第2立板部50と、押さえ板部材43の正面板部58とを重ね合わせ、第2立板部50の板固定用孔55と正面板部58の板固定用孔61とが合致された状態とする。つまり、これらの孔が連通した状態とする。そして、これらにネジ等の締結要素を挿通することにより、保持部本体42に押さえ板部材43が固定された状態となる。
【0058】
このように組み立てられた取付具4では、図3で示されるように、台板部26と第2平板部49によって構成される第1凹部65と、第2平板部49と押さえ板部材43の天板部59によって構成される第2凹部66とが形成されることとなる。
【0059】
第1凹部65は、台板部26の上面と第2平板部49の下面との間に形成される空間であり、前側(軒側)に向かって開口している。対して、第2凹部66は、第2平板部49の上面と天板部59の下面との間に形成される空間であり、後側(棟側)に向かって開口している。つまり、第1凹部65と第2凹部66とはそれぞれ逆方向に開口した状態となっている。
【0060】
また、第1凹部65と第2凹部66の内側には、それぞれ保護部材70が取り付けられている。第1凹部65では、奥側(後側であり棟側)の端部近傍に保護部材70が取り付けられている。この保護部材70は、第1立板部48の前面(軒側端面)の少なくとも一部と、第2平板部49の下面の少なくとも一部を覆うように設けられている。また、第2凹部66では、少なくとも天板部59の下面が保護部材70によって覆われた状態となっている。
なお、この保護部材70は、ゴム等の弾性体で形成されている。
【0061】
さらに、本実施形態の屋根構造1の施工方法について説明する。
【0062】
まず、図10で示されるように、屋根下地の上に屋根材2が葺かれて形成された基礎屋根構造3に対し、取付具4の本体部20を取り付けた状態とする。
詳細に説明すると、予め定められた取付具4の配置位置に本体部20を仮置きし、本体部20の前板部25の後端面(軒側取付面)が屋根材2の前方立板部11に接触した状態とする。別言すると、前板部25の棟側端部に位置する棟側端面が前方立板部11に接触した状態とする。つまりは、本体部20の前板部25と、屋根材2の前端面11aとが接触した状態とする。そして、ビス等の締結要素を介して本体部20を屋根材2に固定する。
なお、締結要素とは、ビス、木ネジ、釘等の上位概念であるものとする。
【0063】
本実施形態では、最も軒先寄りの部分に取り付ける本体部20、すなわち、軒先上部に取り付ける本体部20と、その他の部分に取り付ける本体部20では取り付け方法が異なっている。
【0064】
まず、棟側に取り付ける本体部20について説明する。
本実施形態では、図11図12で示されるように、本体部20の前側(軒先側)に位置する前板部25と、屋根材2の前方立板部11とを重ね合わせ、これらを締結要素を介して一体に固定し、本体部20を屋根材2に固定している。換言すると、前板部25と前方立板部11とを接触した状態(又は僅かに隙間を空けて近接した状態)とし、これらを一体に固定している。より詳細には、前板部25の取付用孔30が形成された部分に締結要素を位置合わせし、その状態から締結要素を捩じ込むことにより、締結要素が取付用孔30に挿通されると共に屋根材2に水平方向(桁行方向)に延びる貫通孔が形成される。
【0065】
このとき、前板部25と前方立板部11とは、いずれも直立した姿勢となっており、締結要素はこれらを厚さ方向に貫通することとなる。つまり、本実施形態では、本体部20を屋根上に固定するとき、締結要素を水平方向(桁行方向)に沿って挿通させる構成となっている。
【0066】
このような構成によると、屋根材2の上面側から締結要素を挿通する構成と比べ、雨漏りし難い構成することができる。
すなわち、屋根材2の上面側から締結要素を挿通し、屋根材2を上下方向に貫通する貫通孔が形成されると、貫通孔から屋根材2の裏面側(屋根下地側)へと雨水等が浸入してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、締結要素を水平方向に沿って挿通させる構成となっている。そのため、形成される貫通孔もまた水平方向に延びる貫通孔となる。このことにより、雨水等がこの貫通孔の内部に浸入し難く、また、屋根材2の裏面側へ流れ難い構造とすることができる。
【0067】
つまり、すでに形成された基礎屋根構造3に対して取付具4を取り付ける際、本体部20を屋根上に仮置きして締結要素で固定するだけで、防水性の高い取り付けが可能となる。このように、本実施形態では、屋根材2等を取り外すことなく取付具4を屋根上に固定可能となっている。さらにいうと、取付具4を固定するために、すでに構築した基礎屋根構造3を解体する必要のない構造となっている。したがって、取り付け作業の簡易化を図ることができる。
【0068】
さらに、この本体部20は、図11図12で示されるように、桁行方向で段状に配される2つの屋根材2(例えば、屋根材2aと屋根材2b)に跨った状態で固定されている。つまり、2つの屋根材2が連なる部分に形成される段差、より具体的には、上側(棟側)に位置する屋根材2bの屋根材本体10と前方立板部11によって形成される段差を跨いだ状態となっている。このため、本体部20の一部である台板部26は、屋根材2の上側に間隔を空けて配された状態、すなわち、屋根材2から離れた位置で屋根材2の上に被さった状態となっている。このため、台板部26の裏面側に取り付けたリベット等が屋根材2に接触することはない。
【0069】
そして、本体部20のうち、前板部25の下端部分が軒側に位置する屋根材2aの上面と接触しており、後側脚部27の押圧板部38が棟側に位置する屋根材2bの上面と接触している。より詳細には、上側(棟側)に位置する屋根材2bの前方立板部11に固定される本体部20のうち、前板部25は、下側(軒側)に位置する屋根材2aの上に接触した状態となっている。すなわち、本体部20の一部は、本体部20を固定した屋根材2bとは異なる屋根材2aに上方から接触した状態となっている。
また、後側脚部27の押圧板部38は、棟側に位置する屋根材2bの上面に当接した状態となっている。すなわち、本体部20を固定した屋根材2bの上面に上方から接触した状態となっている。
【0070】
このことにより、太陽電池モジュール5を設置した際に取付具4が受ける荷重を複数の屋根材2に分散することができる。そのため、1つの屋根材2に荷重が集中してしまうことがなく、屋根材2の劣化、破損を抑制できる。
なお、取付具4が受ける荷重には、太陽電池モジュール5の自重の他、積雪荷重、台風等の強風による風圧荷重等がある。
【0071】
このことに加え、締結要素を挿通するための取付用孔30が設けられた前板部25が、本体部20の前方で荷重を受ける脚部として作用している。このことから、取付用孔30の近傍、延いては、取付用孔30に挿通された締結要素に荷重がかかり難い構造となっている。すなわち、取付用孔30の近傍にかかる荷重を屋根材2へと分散可能となっている。このことから、締結要素の抜け方向に荷重がかかり難い構成となっており、取付具4の屋根材2からの意図しない脱落を抑制可能となっている。
【0072】
続いて、最も軒先側に取り付ける本体部20について説明する。
本実施形態では、図11図12で示されるように、最も軒先側に取り付ける本体部20のみ、後側脚部27の押圧板部38に取り付け用の貫通孔を設けている。そして、押圧板部38の下面と屋根材2の上面を重ね合わせ、これらを締結要素で挿通し、一体に固定している。つまり、最も軒先側に位置する本体部20を取り付ける場合のみ、屋根材2の上面側から締結要素を挿通する構成となっている。
【0073】
詳細に説明すると、最も軒先側に取り付けられる取付具4は、通常、基礎屋根構造3の軒先側の端部近傍に取り付けられることとなる。この部分は、基礎屋根構造3に吹かれた屋根材2のうち、最も軒側に位置する屋根材2のうちで軒側端部寄りの部分となる。ここで、この軒側端部寄りの部分の下方側には、図12で示されるように、屋根材2の屋根下地の間に軒先水切73が配された状態となっている。そして、この軒先水切73は、面状に広がりを持つ部材となっている。
【0074】
このため、この軒側端部寄りの部分では、屋根材2の上面側から締結要素を挿通し、上下方向に延びる貫通孔が形成されたとしても、屋根下地まで雨水等が到達しにくい構造となっている。すなわち、上下方向に延びる貫通孔に雨水等が流れ込んだとしても、この雨水等の流れが軒先水切73によって遮られ、雨水等が屋根下地側に浸入し難い構造となっている。
【0075】
つまり、本実施形態では、屋根材2に上下方向に延びる貫通孔が形成されたとしても、雨水等が屋根下地側に浸入し難い部分、すなわち、基礎屋根構造3の軒先側の端部近傍となる部分に本体部20を固定する場合のみ、屋根材2の上面側から締結要素を挿通している。別言すると、基礎屋根構造3の全領域のうちで軒先水切73が配されている領域、すなわち、屋根材2と屋根下地の間に面状に広がりを持つ部材が配されている領域に本体部20を固定する場合のみ、屋根材2の上面側から締結要素を挿通している。このことにより、屋根下地への雨水等の浸入を阻止しつつ、最も軒先側に位置する取付具4をさらに強固に固定している。
【0076】
以上のように、本実施形態では、最も軒先側に位置する本体部20を取り付ける場合のみ、屋根材2の上面側から締結要素を挿通する構成となっている。換言すると、最も軒先側に位置する本体部20を除いた他の本体部20は、上面側から締結要素を挿通することなく取り付ける構成となっている。すなわち、棟側に位置する本体部20を固定するための締結要素は、いずれも水平方向に沿って挿通された状態となっている。
つまり、屋根構造1で採用される本体部20のうちの少なくとも1つは、上面側から締結要素を挿通することなく取り付けられている。別言すると、屋根構造1で採用される本体部20のうちの少なくとも1つは、屋根材2に固定するための締結要素の挿通方向が水平方向に沿った方向のみとなっている。さらに言うと、この本体部20を屋根材2に固定するための締結要素は、全て横方向から挿通された状態となっている。
【0077】
そして、基礎屋根構造3に対して本体部20を取り付ける工程に続き、この本体部20に保持部21を取り付ける工程を実施する。
【0078】
すなわち、上記したように、保持具取付孔33よりも後側の部分に第1立板部48を位置させた状態から、保持部本体42を前方へとスライド移動させ、保持具取付孔33に予め取り付けておいた締結要素(ネジ)を締め付ける(図8図13参照)。このことにより、図14で示されるように、本体部20に保持部21を固定する。
【0079】
なお、本体部20に保持部21を固定する工程では、保持部本体42と押さえ板部材43を予め一体に固定した後に、保持部21を本体部20に固定してもよい。また、予め保持部本体42だけを本体部20に固定し、本体部20に固定された状態の保持部本体42に対して押さえ板部材43を取り付けてもよい。
【0080】
続いて、第1段目の太陽電池モジュール5を取り付ける工程を実施する。
【0081】
図15図16で示されるように、最も軒側に位置する取付具4の第2凹部66と、太陽電池モジュール5の軒側端部とが嵌合した状態とする。すなわち、太陽電池モジュール5の軒側端部が、押さえ板部材43の下面と保持部本体42(台板部26)の上面との間に配され、これら押さえ板部材43と保持部本体42によって挟み込まれた状態とする。
【0082】
そして、太陽電池モジュール5の棟側端部を、棟側に位置する本体部20の上に載置する。より詳しくは、太陽電池モジュール5の棟側端部は、本体部20の上端に位置する台板部26の上面のうち、軒側寄りの部分に載置された状態となる。
【0083】
このように太陽電池モジュール5の棟側端部が載置された状態で、棟側に位置する本体部20に対し、保持部21を取り付ける。なお、この保持部21の取り付け方法は、最も軒先側に位置する本体部20に保持部21を取り付ける場合と同様である。つまり、保持部本体42を前方へとスライド移動させ、保持具取付孔33に予め取り付けておいた締結要素(ネジ)を締め付ける(図8等参照)。
【0084】
そして、隣接する太陽電池モジュール5から延びるケーブル同士を繋ぎ合わせ、このケーブルを取付具4に設けられた鉤状部36(図3等参照)に係止した状態とする。このことにより、図17で示されるように、第1段目の太陽電池モジュール5が取り付けられた状態となる。
【0085】
そして、第1段目と同様に、第2段目以降の太陽電池モジュール5を取り付ける工程を順次実施していく。このことにより、図1で示されるような、本実施形態の屋根構造1が完成する。
【0086】
ところで、本実施形態の取付具4では、上述したように、本体部20の前板部25に形成した取付用孔30のうち、一方の取付用孔30aを長孔とし、他方の取付用孔30b丸孔としている(図3等参照)。このことから、取付具4を屋根材2に固定した後に、取付具4の傾きを調整可能となっている。
【0087】
例を挙げて具体的に説明すると、仮に屋根材2に対して本体部20を固定したとき、図18(a)で示されるように、取付具4が傾いた状態であったとする。この場合、長孔である取付用孔30aに挿通された締結要素(ネジ等)をやや緩めたりすることにより、もう一方の取付用孔30bに挿通された締結要素を軸として、本体部20が揺動可能な状態となる。このことにより、取付具4を傾いた姿勢(図18(a)で示される姿勢)から、取付具4が正常に取り付けられた姿勢(図18(b)で示される姿勢)へと移行することができる。つまり、取付具4の傾きを調整可能となっている。
【0088】
上記した実施形態では、屋根材本体10の上面が平らな状態となっている屋根材2を採用した例を示したが、本発明の屋根構造はこれに限るものではない。
本発明の屋根構造は、図19で示されるように、屋根材本体110の上面に凹凸が形成された屋根材102を採用してもよい。上記した実施形態の取付具4は、このような屋根材102を採用した場合であっても好適に使用可能となっている。
【0089】
具体的に説明すると、このような屋根材102が屋根下地上に葺かれて形成された基礎屋根構造103に対し、上記した場合と同様に、本体部20を取り付けたとする。このとき、図19で示されるように、屋根材102の上面に形成される窪んだ部分が、押圧板部38の下方に位置してしまう場合が考えられる。すなわち、押圧板部38の一部では、下方に窪んだ部分が位置しており、押圧板部38の他の部分では、下方に窪んでいない部分が位置した状態となることが考えられる。この場合、取付具4に荷重がかかったときに、押圧板部38が水平状態で安定しないおそれがある。
【0090】
そこで、本体部20には、図3等で示されるように、押圧板部38にスペーサ取付孔35が設けられている。そして、図20で示されるように、スペーサ部材115を取り付け可能となっている。
【0091】
スペーサ部材115を取り付けると、押圧板部38と屋根材102の間にスペーサ部材115の少なくとも一部が介在することとなる。そして、押圧板部38と一体に取り付けられ、押圧板部38の下面から下方へ突出するスペーサ部材115の下部が、屋根材102の下方に窪んだ部分の上面と接触した状態となる。このことから、押圧板部38に上から荷重がかかった場合であっても、押圧板部38がぐらつくことがなく、水平状態で安定することとなる。すなわち、押圧板部38のうちで屋根材102の窪んだ部分の上側に位置する部分は、スペーサ部材115によってその姿勢が維持されることとなる。
【0092】
つまり、上記した実施形態の取付具4は、屋根材本体110の上面に凹凸が形成された屋根材102を採用した場合であっても、安定性の高い取付けが可能であり、好適に使用可能となっている。
【0093】
上記した実施形態では、押圧板部38の一部を切り起こして鉤状部36を形成したが、本発明はこれに限るものではない。上記した鉤状部36とは異なる鉤状部136を備えた本体部120につき、図21を参照しつつ詳細に説明する。なお、上記した本体部20と同等のものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
本体部120には、押圧板部138の後端部分から上方へ突出する立壁部139が形成されている。そして、この立壁部139の上端部分に鉤状部136が形成されている。
【0095】
鉤状部136は、長方形平板状の部分であり、立壁部139の上端部分から軒側へ突出している。この鉤状部136もまた、立壁部139の幅方向における中心近傍に設けられている。
【0096】
ここで、立壁部139は押圧板部138の後端部分(軒側端部)が上方へ折り返されて形成されており、鉤状部136は立壁部139の上端側の一部分が前方(軒側)へ折り返されて形成されている。すなわち、これらの部分は、所定の形状に打ち抜いた金属板を折り曲げ加工することにより形成されている。
【0097】
すなわち、本体部20,120に形成される鉤状部36,136の形状は適宜変更してよく、また、配置位置、数等も適宜変更してよい。すなわち、鉤状部36,136は1つのみ形成してもよく、複数形成してもよい。例えば、2つの鉤状部36を設け、これらを押圧板部38の幅方向(左右方向であり桁行方向)に間隔を空けて並列するように配してもよい。
さらに、本発明の太陽電池モジュールの取付具は、このような実施形態のものに限るものではなく、以下のような本体部220を備えたものであってもよい。
【0098】
この本体部220における鉤状部236は、押圧板部238に正面視が略「U」字状となる切り込みを入れ、この切り込みに囲まれた部分を立ち上げて形成したものである。すなわち、押圧板部238の一部を切り起こすと共に、その先端部分を鉤状に折曲することで形成されている。
【0099】
そして、上記した実施形態では、2つのスペーサ取付孔35の間に鉤状部36を設けたが、この本体部220では、スペーサ取付孔235より後方(棟側)に鉤状部236が位置している。
すなわち、この本体部220では、図22(b)で示されるように、押圧板部238の前端近傍(軒側近傍)に2つスペーサ取付孔235と、2つの固定用孔237とが設けられている。なお、固定用孔237は、軒先部分に取り付ける際に締結要素を挿通するための孔となっており、スペーサ取付孔235よりも開口径が大きくなっている。
【0100】
このスペーサ取付孔235と固定用孔237は、左右方向(桁行方向)に間隔を空けて並列するように形成されている。詳細には、左右方向における片側端部側から他方端部側へ向かって、スペーサ取付孔235、固定用孔237、固定用孔237、スペーサ取付孔235がこの順序で並列し、貫通孔の列を形成している。そして、この貫通孔の列よりも後方(棟側)であって押圧板部238の幅方向(左右方向)における中心近傍に、鉤状部236が形成されている。
【0101】
また、この本体部220の台板部26には、保護部材270が取り付けられている。
保護部材270は、外形が略直方体状であり、台板部26の前端(軒側端部)に取り付けられ、台板部26の幅方向に延びた状態となっている。より詳細には、保護部材270は、台板部26の幅方向における片側端部から他方端部まで延びた状態となっている。この保護部材270は、弾性を有する発泡シール材であり、太陽電池モジュール5の辺部が台板部26に載置された際に緩衝材として作用するものである。
具体的に説明すると、太陽電池モジュール5の辺部を台板部26に載置するとき、これらが広く面接触すると、太陽電池モジュール5の辺部が擦れて傷ついてしまう可能性がある。そこで、この本体部220では、台板部26の上面に保護部材270を取り付ける構造とし、太陽電池モジュール5を載置した際に、太陽電池モジュール5と台板部26の間に保護部材270が介在させている。このことにより、太陽電池モジュール5と台板部26とが広範囲に亘って直接接触せず、太陽電池モジュール5の損傷を防止可能となっている。
【0102】
さらに、この本体部220には、前板部225の上板部分225bに配線固定用孔245が設けられている。
【0103】
配線固定用孔245は、上板部分225bを厚さ方向に貫通する貫通孔であり、前板部225の幅方向における片側端部近傍と、他方側端部近傍とにそれぞれ1つずつ設けられている。
そして、配線固定用孔245は、太陽電池モジュール5から延びる配線を束ねるための結束具やアース線を固定するための貫通孔となっている。具体的には、配線固定用孔245は、結束具やアース線を固定部材(図示せず)を介して取り付けたり、結束具やアース線を直接挿通して固定するための孔となっている。つまり、この配線固定用孔245は、太陽電池モジュール5と連続する配線を直接又は間接的に固定するための配線固定部として機能する部分となっている。
【0104】
上記した実施形態では、本体部20に対し、太陽電池モジュール5の辺部を直接保持する保持部21を取り付けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図23で示されるように、レール状架台308を固定するための保持部321を本体部320に取り付けてもよい。すなわち、保持部321と太陽電池モジュール5の間にレール状架台308を介在させ、太陽電池モジュール5を間接的に保持する取付具であってもよい。このような実施形態に係るレール状架台308、保持部321、本体部320につき、以下で詳細に説明する。
【0105】
レール状架台308は、公知のそれと同様のものであり、太陽電池モジュール5を固定するための長尺状の部材となっている。
【0106】
本体部320は、台板部26に形成されている保持具取付孔333の位置が、上記した本体部20とは異なる位置となっている。より詳細には、台板部26の前後方向(梁間方向)における中心近傍であり、且つ、左右方向(幅方向であり、桁行方向)の片側端部近傍及び他方側端部近傍にそれぞれ1つずつ保持具取付孔333が形成されている。そして、この保持具取付孔333は、台板部26を厚さ方向に貫通する貫通孔となっている。つまり、台板部26の前後方向における中心近傍には、左右方向に間隔を空けて並列する2つの貫通孔が設けられている。
なお、上記した本体部20では、保持具取付孔33にネジ等の締結要素を緩めた状態で取り付けた状態とした。これに対し、本実施形態の本体部320では、保持具取付孔333に締結要素が予め取り付けられていない状態としている。
【0107】
保持部321は、長方形平板状の取付板部350と、取付板部350から上方に突出する立板状の挟持板部351と、2つの挟持板部351の間に位置してこれらを連結する連結板部352とを有している。
【0108】
取付板部350は、保持部321の下端部分であり、且つ、左右方向における両端部分にそれぞれ位置した状態となっている。つまり、保持部321の下端部分では、2つの取付板部350が左右方向で間隔を空けて並列している。そして、2つの取付板部350には、それぞれ取付用孔355が設けられている(一方のみを図示し、他方については図示せず)。この取付用孔355は、取付板部350を厚さ方向に貫通する貫通孔となっている。
【0109】
さらに、2つの取付板部350の並列方向における内側端部から、それぞれ挟持板部351が上方に突出している。そして、2つの挟持板部351は、左右方向で所定の間隔を空けて対向した状態となっている。
【0110】
そして、この保持部321は、2つの挟持板部351の間にレール状架台308を位置させ、レール状架台308を保持することが可能となっている。そして、基礎屋根構造3に固定された本体部320に保持部321を固定し、保持部321にレール状架台308を固定することで、レール状架台308を屋根上に固定することが可能となっている。
なお、保持部321を本体部320に固定する際には、保持部321の取付用孔355と、本体部320の保持具取付孔333とを重ね合わせ、これらに締結要素を挿通した状態とする。このことにより、本体部320と保持部321を一体に固定することが可能となっている。
【符号の説明】
【0111】
1 屋根構造
2 屋根材
4 取付具(太陽電池モジュールの取付具)
5 太陽電池モジュール
11a 前端面(軒側壁面部)
20,120,220,320 本体部
21 保持部(保持部材)
26 台板部(保持部材取付部)
27 後側脚部(脚部)
38,138,238 押圧板部(面状部分)
図1
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