(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192458
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ポータブルスポット溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/28 20060101AFI20170828BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
B23K11/28
B23K11/11 591Z
B23K11/11 550A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-194753(P2013-194753)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-58462(P2015-58462A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109772
【氏名又は名称】デンゲン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】樋上 正信
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−033880(JP,A)
【文献】
特開2002−160067(JP,A)
【文献】
実開平06−083174(JP,U)
【文献】
特開2000−117455(JP,A)
【文献】
米国特許第06337456(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/28
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ガンと、該溶接ガンを支持するための溶接ガン支持装置と、該溶接ガン支持装置が取着される溶接装置本体とを備えたポータブルスポット溶接装置において、
前記溶接ガンは、外面にガイド溝部を備え、
溶接ガン支持装置は、前記ガイド溝部内に摺動及び固定が可能なガイド部材と、アーム部とを備え、
前記ガイド部材は、ガイド板と、該ガイド板に立設され前記ガイド溝部から突出する第一軸部と、ガイド板を固定するためのロック機構を備え、
前記アーム部は、前記ガイド部材の第一軸部に直交する第二軸部及び蓄圧器を備えたことを特徴とするポータブルスポット溶接装置。
【請求項2】
ガイド溝部は、開口部に沿って連続する鍔部を備え、
前記ロック機構は、ガイド板を貫通する雌螺子部とこれに螺合する雄螺子部材とからなり、雄螺子部材の締込によって前記鍔部とガイド板とが当接して当該ガイド部材を固定する構成としたことを特徴とする請求項1記載のポータブルスポット溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両等のスポット溶接に使用し、スポット溶接ガンを備えたポータブルスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の製造・修理工程においては、ロボットを用いた溶接が利用される一方で、従来のスポット溶接ガンを用いた手動による溶接作業が行われている。ロボットを用いた溶接は、同形状の複数商品の製造を連続的に量産する上においては適するが、それ以外の製造・修理工程においては、作業者によってその状況に応じた最適な溶接作業を速やかに行い得る点で、手動の溶接ガンの利用価値が認められる。
【0003】
このような手動の溶接ガンを用いた溶接ガン支持装置として、例えば、溶接されるべきワークをクランプ支持する架台と、前記ワークの下方の架台内に配設された第1垂直軸回りに自由水平旋回可能な第1回転部材と基端部が前記第1回転部材に取付けられ先端部が上下方向に揺動可能な平行4連リンクと、前記平行4連リンクの先端部に水平方向にスライド自在に取付けられた水平スライド軸と、前記水平スライド軸の先端部に取付けられた第2垂直軸回りに自由水平旋回可能な第2 回転部材と、前記第2回転部材に取付けられた溶接ガンと、前記平行4連リンクから溶接ガンまでの重量を支持すべく、前記第1回転部材と平行4連リンクとの間に配設された反力手段とを有することを特徴とする溶接ガン支持装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、当該特許文献1の構成をベースとしつつ、更に利便性を向上したものとして、例えば、略水平方向に延びるレールと、そのレールに沿って移動可能な支持体と、基端部が前記支持体に取付けられており先端部が前記レールと交差する面内で平行移動する平行リンクと、その平行リンクの先端部に回動可能に取付けられており前記面内で揺動可能な揺動部材と、その揺動部材の先端部に設けられた溶接ガン取付部と、前記支持体と前記揺動部材との間に介装されており前記平行リンクから溶接ガンまでの重量を支える反力装置とを備えてなる溶接ガン支持装置が公知である(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、本出願人が先に開示した発明として、移動キャスターで支持した溶接装置本体に立設したメインポールの上端部に、メインスイングアームの基端部を枢着するとともに、前記メインスイングアームの中間部とメインポールとを重量バランス平衡手段で連結し、前記メインスイングアームの先端部には一本乃至二本の水平スイングアームを介してガン懸吊具を設け、該ガン懸吊具に、エア圧力により直線進退するように主電極棒の基端部を取付けたヘッド主体と、前記主電極棒と対峙する副電極棒を保持固定したガンアーム部とを連結固定してなるスポット溶接ガンを懸吊し、前記主電極棒と副電極棒との先端相互間に被溶接部材を挟着してこれを溶接するようにしたポータブルスポット溶接装置において、前記メインスイングアームの中間部とメインポールとを連結するバランス支持制御手段を、エア圧源からレギュレータと電磁切換弁及びスピードコントローラを介して配管した単動シリンダ又は片ロッド形複動シリンダからなるエアシリンダのピストンロッドの端部を、枢着支持位置の高さをメインポールに沿って変更設定できるようにメインポールに枢着し、スポット溶接ガンを保持する溶接作業者の近傍に配置又はスポット溶接ガンに脱着自在に取付けた遠隔操作スイッチの手元操作によって前記電磁切換弁の給排気を行う構成として、スポット溶接ガンの重量に応じたバランス制御が溶接作業者の手元又は近接位置で実施できるようにしたことを特徴とするポータブルスポット溶接装置が公知である(例えば、特許文献3参照。)
【0006】
更に、本出願人が先に開示した発明として、移動自在の溶接装置本体に内蔵されたトランスの二次側を、給電ケーブルによって溶接ガンの一対の電極に接続し、前記給電ケーブルと溶接ガンを、溶接装置本体に立設したクレーン型スイングアーム組体で支持するようにしたポータブルスポット溶接装置において、前記クレーン型スイングアーム組体が、溶接装置本体に対して固定又は縦軸回りに回動できるように立設支持した支柱とこれに平行な中間支柱とを、平行運動をするようにした平行運動機構で連結したスイングアーム基体と、前記中間支柱に水平方向に回動するように軸連結した中間アームと、該中間アームに水平軸線回りに回動するように一端部を連結し他端部を溶接ガンに連結するようにした補助アームとから構成され、前記スイングアーム基体は、溶接ガン及び/又は給電ケーブルの重量とによるモーメントと平衡する領域に、溶接ガンを用いた作業領域を調節設定するための、一定の気体圧力による基準バランス設定手段及び流体の給排による圧力バランス補助調節手段を併設したことを特徴とするポータブルスポット溶接装置が公知である(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3585345号公報
【特許文献2】特開2003−33880号公報
【特許文献3】特開2002―224848号公報
【特許文献4】特開2000−343237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に係る溶接ガン支持装置によれば、所定の架台にクランプされるワークに対して上下周方向へ溶接ガンを移動させる構成としたものであり、架台にクランプされたワークへの溶接処理を行うために特化されたものである。
このため、当該構成によれば、設置された位置から所定範囲内においてクランプに干渉しない範囲でのみ、当該クランプを回避しながらワークの周縁部のみを溶接するものであり、必要以上に溶接ガンのアーム等の可動部(例えば平行4連リンクのリンク板18a等)の可動域を拡大すると、クランプへの干渉等を招来し、却って作業効率を低下させる原因となるものであった。また、対象となるワークは当該溶接ガン支持装置の配置された箇所においてクランプ可能なワークに限られ、用途が制限されるものであった。
【0009】
上記特許文献2に係る溶接ガン支持装置は、略水平方向に延びるレールと、そのレールに沿って移動可能な支持体とを備えることによって、所定範囲で溶接ガンの移動を容易とし、作業者の負担を軽減できる溶接ガン支持装置であり、上記特許文献1の改良といえるものである。当該構成によれば、ワークを載置する架台は図示省略されているものの、上記特許文献1と同様に、レールを支持する取付脚は当該架台の下方位置のフロアに配設される。このため、レールを用いることによって所定方向の動きは特許文献1よりも簡単に動かすことができるものの、特許文献1と同様に、結局設置された位置から所定範囲内においてクランプに干渉しない範囲でのみ、当該クランプを回避しながらワークの周縁部のみを溶接するものであり、必要以上に溶接ガンのアーム等の可動部の可動域を拡大すると、クランプへの干渉等を招来し、却って作業効率を低下させる原因となる点、また、対象となるワークは当該溶接ガン支持装置の配置された箇所においてクランプ可能なワークに限られ、用途が制限される点においては、何ら変わるものではなかった。
【0010】
即ち、特許文献1、2に係る発明によれば、既存のワークを保持する架台に対する処理を行うものであるため、ワークの形状や製造施設内の状況等に応じて機動的にスポット溶接を行う観点からすれば、不十分なものであった。
【0011】
一方で、本出願人が先に開示した発明であるポータブルスポット溶接装置によれば、上記特許文献1、2に開示された据付型の溶接ガン支持装置とは異なり、作業者自身による作業者の手元又は近傍において、作業環境、作業姿勢に対応して、重量バランスの平衡を細かく調節制御できるものであった。しかしながら、アームの懸吊構造を備えた構成であるため、溶接個所がワークのうち特に奥まった箇所等の場合であれば、懸吊構造を構成するアーム、ワイヤ等の構成部品が作業の邪魔となることがあった。
【0012】
上記特許文献の存在からすれば、例えば、特許文献3に係るポータブルスポット溶接装置において、上記アームの懸吊構造に代えて特許文献1、2に開示されるような構造に置換することにより、容易に作業の邪魔とならない構成とすることも考えられる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2はいずれも上方に架台を備える構成を前提としたものであり、架台を回避して回り込むための形状となっていること、また引用文献2に至っては支持にレール及び車輪を有する構成を必須とするため、本質的な支持構造が相違し、これらの構成を共存させてバランスをとることは事実上非常に困難であった。
【0013】
また、特許文献4に係るポータブルスポット溶接装置は、特許文献3のアームの懸吊構造をクレーン型スイングアーム組体で支持する構成としたものであり、シリンダ型空気バネ及びエアシリンダの連結によるクレーン型スイングアーム組体へのモーメントの作用と、引っ張りバネの力によるケーブルハンガーへのモーメントの作用の協働により、溶接ガンの重量が変更されても、平行リンクの水平位置を基準として±40°程度の範囲においては、作業者による溶接ガンへの僅かな力付与で上下に移動可能な静止又は略静止状態(バランス状態)が得られ、これによって作業の軽減を図るものである。このため、当該モーメントバランスが常に保持できる必要があるところ、平行リンクの水平位置を基準として±40°程度の範囲を超えるような、ワークの奥まった溶接ガンを送り込み難い位置等へ取廻すような場合には、モーメントバランスを十分に保持できない場合があった。
【0014】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、ワークの奥まった位置等を溶接する際においても、作業者の作業負担の低減を図ることができる優れたポータブルスポット溶接装置の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶接ガンと、該溶接ガンを支持するための溶接ガン支持装置と、該溶接ガン支持装置が取着される溶接装置本体とを備えたポータブルスポット溶接装置において、前記溶接ガンは、外面にガイド溝部を備え、溶接ガン支持装置は、前記ガイド溝部内に摺動及び固定を可能とするガイド板と該ガイド板に立設され前記ガイド溝部から突出する第一軸部を有するガイド部材と、該ガイド部材の第一軸部に直交する第二軸部及び蓄圧器を備えるアーム部とを備え、前記蓄圧器はホルダ部に保持され、該ホルダ部は蓄圧器の軸を基準として該蓄圧器に対して回動可能としたことを特徴とするポータブルスポット溶接装置を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接ガンと、該溶接ガンを支持するための溶接ガン支持装置と、該溶接ガン支持装置が取着される溶接装置本体とを備えたポータブルスポット溶接装置において、前記溶接ガンは、外面にガイド溝部を備え、溶接ガン支持装置は、前記ガイド溝部内に摺動及び固定が可能なガイド部材と、アーム部とを備え、前記ガイド部材は、ガイド板と、該ガイド板に立設され前記ガイド溝部から突出する第一軸部と、ガイド板を固定するためのロック機構を備え、前記アーム部は、前記ガイド部材の第一軸部に直交する第二軸部及び蓄圧器を備えたポータブルスポット溶接装置としたことから、溶接ガンが溶接ガン支持装置に対して近接した位置で二軸(第一軸部と第二軸部)による上下、左右への傾きの調節を行い得ることと、アームに対する溶接ガンの前後方向へのスライド調節が可能であることの相乗効果によって、ワークの奥まった位置等に対してスポット溶接を行う際に、作業者の手元(即ち、溶接ガンとその近接位置)のみで、非常に広範な方向、範囲において溶接ガンの位置決めが可能となり、スポット溶接を容易に行うことができる。
【0017】
そして、回動を許容するホルダ部によって蓄圧器が保持されているため、前記溶接ガンの位置決めの際には作業者の体勢に適したアーム部の傾き角度を保持しつつ蓄圧器により溶接ガンの上昇、下降に応じて蓄圧器で圧力を一定に保つことで、溶接ガンのコントロールをさらに良好なものとすることができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、上記発明の構成を前提としてガイド溝部は、開口部に沿って連続する鍔部を備え、前記ロック機構は、ガイド板を貫通する雌螺子部とこれに螺合する雄螺子部材とからなり、雄螺子部材の締込によって前記鍔部とガイド板とが当接して当該ガイド部材を固定する構成としたことから、上記発明の作用効果を奏する上に、雄螺子を締込むだけの非常に簡単な操作で溶接ガン支持装置に対する溶接ガンの位置を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係るポータブルスポット溶接装置における溶接ガンと溶接ガン支持装置の前端側とを連結する前の構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係るポータブルスポット溶接装置における溶接ガンと溶接ガン支持装置の前端側とを連結した構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係るアーム部を示す右側面図である。
【
図4】本発明の実施例に係るポータブルスポット溶接装置を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施例に係るポータブルスポット溶接装置Pを示す。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例に係るポータブルスポット溶接装置Pは、溶接ガン1、溶接ガン支持装置2、及び溶接装置本体4を主要構成とする。以下、各構成について説明する。
【0022】
本実施例に係る溶接ガン1は、C型のスポット溶接ガン1である。本発明に係る溶接ガン1は、溶接ガン本体の左右側面に前後方向へ連続するガイド溝部10を形成した構成である。ガイド溝部10は開口部10aに鍔部10bを形成しており、これによって底面10cの溝幅d1が開口部10aの幅d2よりも広く形成されている。
【0023】
ガイド溝部10の底面10cのうち、前端側及び後端側には、溶接ガン支持装置2におけるガイド板の不慮の離脱を防止するための係止体10eを設けてある。本実施例において係止体10eは六角ボルトを使用し、ガイド溝部10の底面10cに設けた雌穴10fに螺合させた状態で設けている。ガイド溝部10に対して溶接ガン支持装置2を着脱する際には、これらの係止体10eの少なくとも一方を取り外すことで、当該着脱操作を行うことができる。
【0024】
本実施例に係る溶接ガン支持装置2は、ガイド板20及び該ガイド板20に立設される第一軸部21とガイド板20をガイド溝部10へ固定するためのロック部材24と、アーム部23とを備えるものである。
【0025】
前記ガイド板20は、金属製の板材からなり、前記ガイド溝部10の底面10cの溝幅d1と略同程度の幅を有し、当該ガイド溝部10に対して摺動するものである。
ガイド板20の前端及び後端には前記係止体10eと当接する円弧状輪郭を有する切欠部20aを有する。尚、当該切欠部20aは必須ではないが、切欠部20aと係止体10aの側周面と切欠部20aとが密着するように面接触することで、接触時の衝撃を緩和できる利点を有する。
前記ガイド板20には、第一軸部21が一体として立設される。当該第一軸部21の直径は、前記開口部10aの幅d2よりも小さいものとしている。
【0026】
また、ガイド板20には、第一軸部21に隣接して、ロック部材24を取付けた構成としている。ロック部材24は、当該ロック部材24は、頭部24aと雄螺子部24bとを備え、雄螺子部の長さはガイド板20の厚みよりも大きい。ロック部材24は、前記ガイド板20に設けた図示されない雌穴に対してその雄螺子部24bを螺合させることで取着される。
【0027】
頭部24aには、その軸方向と交差する方向に貫通孔が形成されており、該貫通孔に両端に拡径部を備えた柱状の把持手段を備えている。把持手段を用いて当該ロック部材24をガイド部材に捩じ込むことで、ロック部材24の雄螺子部24bがガイド板20の下面(裏面)から、下方へ突出し、相対的にガイド板20が底面から上方(開口部10a側)へ移動し、当該ガイド板20と鍔部10bの下面とが当接して、ガイド板20がロックされることとなる。
【0028】
以上の構成によって、ロック部材24の解除状態において溶接ガン1に対して溶接ガン支持装置2の取付位置を前後させ、ロック部材24のロック操作によって、溶接ガン1に対する溶接ガン支持装置2の取付位置を簡単に位置決めできる。ロック部材24のロック操作は、前記把持手段を指で回転することで簡単に強固に締付固定でき、非常に容易に行うことができる。
【0029】
また、本実施例における溶接ガン支持装置2のアーム部23と前記第一軸部21との取付の構造については、アーム部23の前端に設けられ第二軸部26の軸受となる略コの字状の軸受枠部27、第一軸部21及び第二軸部26の双方の軸を受ける軸受ブロック25、第一軸部21を軸中心に回動可能に保持する外筒部22を用い、以下のように構成される。
【0030】
軸受ブロック25は略直方体形状を有する金属製のブロックであって、第一軸の方向に貫通穴を有し、第二軸の方向に対応する二面において所定深さの凹部(有底穴)を形成したものである。
【0031】
これらの貫通穴若しくは凹部はその直径を調節可能とするために、当該貫通穴に対して一体となるスリットを形成し、該スリットで分断される各部材を螺子で連通固着することで、外筒部22を貫通穴に固定する構成を実現している。
【0032】
一方、アーム部23の前端に設けられる軸受枠部27は、その対向する両端近傍からそれぞれ第二軸部26を立設した構成である。対向する第二軸部26は、前記軸受ブロック25の凹部に対して枢着される。
【0033】
以上の構成によって、溶接ガン1に対する溶接ガン支持装置2の前後方向のスライドと、第一軸を基準とする溶接ガン1に対する回動、第二軸を基準とする軸受枠部27に対する軸受ブロックの搖動(若しくは回動)が、溶接ガン1と溶接ガン支持装置2との近接位置で行えることとなる。
【0034】
また、当該ポータブルスポット溶接装置Pにおける溶接ガン支持装置2の他端側には、蓄圧器と該蓄圧器を保持するホルダ部を設けている。当該ホルダ部は、蓄圧器の軸を基準軸として該蓄圧器に対して回動可能である。そして、当該基準軸(の延長線)は、前記第一軸部21及び第二軸部26の交点と概ね交差する構成としている。
【0035】
当該構成によって、本実施例に係る発明によれば、蓄圧器3による装置側と溶接ガン1側のバランスを保ち、当該基準軸(の延長線)は、前記第一軸部21及び第二軸部26の交点と概ね交差する構成としたことによって、溶接ガン1の向きや高さ等を大きく動かしてもバランスが維持され、ワークの奥まった位置等に対しても、作業者の意図する位置、方向へ溶接ガン1を移動でき、スポット溶接を可能とすることができる。
【0036】
そして、当該構成と、ガイド板20のガイド溝部10を利用したガイド機構によって、溶接ガン1側のバランスを保持した状態で、溶接ガン1を更に前方若しくは後方にスライド固定できるため、ワークの奥まった位置等であっても、非常に使い勝手のよいポータブルスポット溶接装置Pとすることができる。
【符号の説明】
【0037】
d1 溝幅
d2 幅
P ポータブルスポット溶接装置
1 溶接ガン
10 ガイド溝部
10a 開口部
10b 鍔部
10c 底面
10e 係止体
10f 雌穴
2 溶接ガン支持装置
20 ガイド板
20a 切欠部
21 第一軸部
22 外筒部
23 アーム部
24 ロック部材
24a 頭部
24b 雄螺子部
24c 把持手段
25 軸受ブロック
26 第二軸部
27 軸受枠部
3 蓄圧器
4 溶接装置本体