特許第6192472号(P6192472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192472
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】タイヤの試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20170828BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20170828BHJP
   B60C 19/00 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   G01M17/02
   G01N3/08
   !B60C19/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-208024(P2013-208024)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-72194(P2015-72194A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸二
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−106968(JP,A)
【文献】 特開2005−188975(JP,A)
【文献】 特開2013−195372(JP,A)
【文献】 特開2005−337929(JP,A)
【文献】 特開昭49−067667(JP,A)
【文献】 特開2004−155273(JP,A)
【文献】 特開平06−201531(JP,A)
【文献】 特開2004−085297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01N 3/08
B60C 19/00
G01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードを有するタイヤの表面から内側に向かって進行する進行部、
上記進行部の進行によってタイヤから発生する音を捕捉する集音器、及び
上記集音器で捕捉された音を解析して上記コードの破断を検出する検出器
を備えたタイヤ用試験装置。
【請求項2】
コードを有するタイヤの表面から内側に向かって進行部を進行させる工程、
上記進行部の進行によってタイヤから発生する音を集音器で捕捉する工程、及び
上記集音器で捕捉された音を解析して上記コードの破断を検出器で検出する工程
を備えたタイヤ試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの強度を測定するための試験方法と、この試験方法に用いられる装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
JIS−D4230には、プランジャーが用いられたタイヤ試験方法が規定されている。この方法では、空気が充填されたタイヤの表面にプランジャーが当てられる。このプランジャーは、タイヤの内側に向かって徐々に進行する。進行により、タイヤが徐々に変形する。進行により、プランジャーにかかる押し込み力が徐々に大きくなる。やがてプランジャーは、タイヤを突き抜ける。タイヤを突き抜けた瞬間、押し込み力が低下する。この低下により、プランジャーの突き抜けが検知される。突き抜けの直前の押し込み力とプランジャーの移動距離とに基づき、タイヤの破壊エネルギーが算出される。この破壊エネルギーにより、タイヤの強度が評価される。
【0003】
特開2003−106968公報には、重錘が用いられたタイヤ試験方法が記載されている。この重錘は、その下面から突出するバーを有する。この重錘は、空気が充填されたタイヤに向けて落下させられる。落下により、バーがタイヤに衝突し、このタイヤの内側に向かって進行する。重錘の落下エネルギーが小さいときは、バーはタイヤを突き抜けない。重錘の落下エネルギーが大きいときは、バーはタイヤを突き抜ける。落下エネルギーは、落下前の重錘の高さの変更によって設定されうる。バーがタイヤを突き抜けた場合は、タイヤに孔が形成される。この孔から空気が抜けて、タイヤの内圧が低下する。内圧の低下により、突き抜けが検知される。突き抜けが検知されたときの落下エネルギーにより、タイヤの強度が評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−106968公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JIS−D4230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤは、カーカスコード、ベルトコード、バンドコード等の多数のコードを含んでいる。JIS−D4230に記載された試験方法では、プランジャーの進行によってタイヤが大幅に変形する。この変形は、コードの破断を伴う。変形量が大きいので、破断するコードの数がばらつきやすい。これに起因して、評価の値がばらつく。この試験方法では、高精度のタイヤ評価は、なされ得ない。
【0007】
特開2003−106968公報に記載された試験方法では、プランジャーの進行によってタイヤが大幅に変形する。この変形は、コードの破断を伴う。変形量が大きいので、破断するコードの数がばらつきやすい。これに起因して、評価の値がばらつく。この試験方法では、高精度のタイヤ評価は、なされ得ない。
【0008】
本発明の目的は、タイヤの強度が高精度で評価されうる方法及びこの方法に用いられる装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタイヤ用試験装置は、コードを有するタイヤの表面から内側に向かって進行する進行部、この進行部の進行によってタイヤから発生する音を捕捉する集音器、及び
この集音器で捕捉された音を解析してコードの破断を検出する検出器を備える。
【0010】
本発明に係るタイヤ試験方法は、
(1)コードを有するタイヤの表面から内側に向かって進行部を進行させる工程、
(2)進行部の進行によってタイヤから発生する音を集音器で捕捉する工程、及び
(3)集音器で捕捉された音を解析してコードの破断を検出器で検出する工程
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る試験方法により、タイヤの強度が高精度で評価されうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る試験装置がタイヤと共に示された概念図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る試験装置がタイヤと共に示された概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1に示された試験装置2は、プランジャー4、制御部6、マイクロフォン8、アンプ10、A/D交換機12及びコンピュータ14を備えている。プランジャー4は、進行部である。マイクロフォン8は、集音器である。コンピュータ14は、検出器である。
【0015】
図1には、タイヤ16も示されている。このタイヤ16は、リムに装着されている。このタイヤ16には、空気が充填されている。このタイヤ16の内圧は、所定値に設定されている。このタイヤ16は、コードを含んでいる。コードとして、カーカスコード、ベルトコード及びバンドコードが例示される。タイヤ16は、有機繊維から形成されたコードを含みうる。タイヤ16は、スチールから形成されたコードを含みうる。
【0016】
プランジャー4の下端18は、上昇及び下降しうる。この下端18が徐々に下降すると、この下端18がタイヤ16の表面に当接する。さらなる下降により、下端18は内側に向かって進行する。進行により、タイヤ16が徐々に変形する。進行により、プランジャー4の押し込み力が、徐々に上昇する。
【0017】
制御部6は、プランジャー4の上昇及び下降を制御する。制御部6は、プランジャー4の移動距離及び押し込み力を検出しうる。プランジャー4の移動距離及び押し込み力のデータは、制御部6からコンピュータ14に送られる。
【0018】
マイクロフォン8は、タイヤ16の近くに位置している。このマイクロフォン8は、プランジャー4によって変形させられたタイヤ16から発生する音を捕捉する。捕捉によって得られた信号は、アンプ10及びA/D交換機12を通され、コンピュータ14へと送られる。
【0019】
コンピュータ14は、音の波形を解析しうる。タイヤ16のコードが破断するとき、固有の波長を有する音が発生する。この固有の波長を有する音を検出することにより、コンピュータ14は、コードが破断したことを検出しうる。固有の振幅を有する音、固有の周波数を有する音、固有の減衰率を有する音等を検出することにより、コンピュータ14が、コードの破断を検出してもよい。
【0020】
この装置2が用いられた評価方法では、まず、タイヤ16がセットされる。タイヤ16は、プランジャー4を押し込みたい箇所がプランジャー4の下端18の真下に位置するように、セットされる。例えば、トレッドの中央を押し込みたい場合は、タイヤ16の軸方向が水平となるように、タイヤ16がセットされる。
【0021】
次に、制御部6により、プランジャー4の下端18が徐々に下降する。前述の通り、この下降により、タイヤ16が徐々に変形する。この変形により、やがてコードが破断する。この破断によって発生した音を、コンピュータ14が検出する。コンピュータ14は、破断の瞬間の、プランジャー4の、押し込み力Fと移動距離Pとを記憶する。コンピュータ14はさらに、下記数式に基づき、破断の瞬間のエネルギー値Wを算出する。
W = (F × P) / 2
コンピュータ14は、このエネルギー値Wも記憶する。このエネルギー値Wは、モニタ(図示されず)に表示される。このエネルギー値Wはさらに、プリンタ(図示されず)によって出力される。
【0022】
破断時のエネルギー値Wは、タイヤ16の強度と相関する指数である。破断時のエネルギー値Wが大きなタイヤ16は、強度に優れる。この方法により、タイヤ16の強度が評価されうる。
【0023】
コードの破断は、タイヤ16の変形過程のうちの比較的初期に発生する。破断の段階でのタイヤ16の変形量は、大きくない。従って、この評価方法によって得られるエネルギー値Wのばらつきは、小さい。この方法により、タイヤ16の強度が精度良く評価されうる。
【0024】
精度の観点から、破断したコードの数が1であるときのエネルギー値Wによってタイヤ16が評価されることが好ましい。破断したコードの数が2以上であるときのエネルギー値Wによってタイヤ16が評価されてもよい。
【0025】
波形の解析により、破断したコードの材質が特定されてもよい。
【0026】
図2は、本発明の他の実施形態に係る試験装置20が示された概念図である。この試験装置20は、重錘22、マイクロフォン24、アンプ26、A/D交換機28及びコンピュータ30を備えている。重錘22は、その下側にバー32を備えている。このバー32は、進行部である。マイクロフォン24は、集音器である。コンピュータ30は、検出器である。
【0027】
図2には、タイヤ34も示されている。このタイヤ34は、リムに装着されている。このタイヤ34には、空気が充填されている。このタイヤ34の内圧は、所定値に設定されている。このタイヤ34は、コードを含んでいる。コードとして、カーカスコード、ベルトコード及びバンドコードが例示される。タイヤ34は、有機繊維から形成されたコードを含みうる。タイヤ34は、スチールから形成されたコードを含みうる。
【0028】
重錘22は、図2において矢印で示されるように、落下させられる。重錘22は、図示されないレールに案内されつつ落下する。重錘22が落下すると、バー32の下端36がタイヤ34の表面に衝突する。その後、下端36は内側に向かって急速に進行する。進行により、タイヤ34が変形する。
【0029】
マイクロフォン24は、タイヤ34の近くに位置している。このマイクロフォン24は、バー32によって変形させられたタイヤ34から発生する音を捕捉する。捕捉によって得られた信号は、アンプ26及びA/D交換機28を通され、コンピュータ30へと送られる。
【0030】
コンピュータ30は、音の波形を解析しうる。タイヤ34のコードが破断するとき、固有の波長を有する音が発生する。この固有の波長を有する音を検出することにより、コンピュータ30は、コードの破断を検出しうる。固有の振幅を有する音、固有の周波数を有する音、固有の減衰率を有する音等を検出することにより、コンピュータ30が、コードの破断を検出してもよい。
【0031】
この装置20が用いられた評価方法では、まず、重錘22がタイヤ34に対して所定の高さに位置させられる。次に、タイヤ34がセットされる。タイヤ34は、バー32を衝突させたい箇所がバー32の下端36の真下に位置するように、セットされる。例えば、トレッドの中央にバー32を衝突させたい場合は、タイヤ34の軸方向が水平となるように、タイヤ34がセットされる。
【0032】
次に、重錘22が落下させられる。前述の通り、この落下により、バー32がタイヤ34に衝突する。衝突によってタイヤ34から生じた音を、コンピュータ30が解析する。コンピュータ30は、衝突によってコードの破断が生じたか否かを判定する。破断が生じていない場合、より高い位置に重錘22がセットされ、この重錘22が落下させられる。この落下により、バー32がタイヤ34に衝突する。衝突によってタイヤ34から生じた音を、コンピュータ30が解析する。コンピュータ30は、衝突によってコードの破断が生じたか否かを判定する。このような、より高い位置への重錘22のセット、この重錘22の落下、及び破断の判定が、繰り返される。最初に破断が確認された場合の重錘22の高さに基づき、タイヤ34の強度が評価される。具体的には、コンピュータ30は、下記数式に基づき、破断の瞬間のエネルギー値Wを算出する。
W = (M × g × H)
この数式において、Mは重錘22の質量を表し、gは重力加速度を表し、Hは重錘22の高さを表す。コンピュータ30は、このエネルギー値Wを記憶する。このエネルギー値Wは、モニタ(図示されず)に表示される。このエネルギー値Wはさらに、プリンタ(図示されず)によって出力される。
【0033】
破断時のエネルギー値Wは、タイヤ34の強度と相関する指数である。破断時のエネルギー値Wが大きなタイヤ34は、強度に優れる。この方法により、タイヤ34の強度が評価されうる。
【0034】
コードの破断が最初に確認された場合の、タイヤ34の変形量は、大きくない。従って、この評価方法によって得られるエネルギー値Wのばらつきは、小さい。この方法により、タイヤ34の強度が精度良く評価されうる。
【0035】
波形の解析により、破断したコードの材質が特定されてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0037】
[実施例1]
サイズが「195/85R16 114/112L」であるタイヤを用意した。このタイヤを、幅が5.5インチであるリムに組み込んだ。このタイヤに、内圧が600kPaとなるように、空気を充填した。このタイヤを、図1に示された試験装置にセットした。このタイヤのトレッドの中央に、直径が19mmであるプランジャーを押し込んだ。この押し込みを、コードの破断の音がマイクロフォンで捕捉されるまで継続し、エネルギーWを算出した。72°刻みの5箇所にてエネルギーWを算出した。これらのエネルギーWから、下記数式に基づいて、ばらつきVを算出した。
V = (Wmax − Wmin) / Wave × 100
この数式において、Wmaxは5つのエネルギー値の中の最大値を表し、Wminは5つのエネルギー値の中の最小値を表し、Waveは5つのエネルギー値の平均値を表わす。
【0038】
[比較例1]
プランジャーがタイヤを突き抜けるまで、このプランジャーの押し込みを継続した他は実施例1と同様にして、ばらつきを算出した。
【0039】
[実施例2及び3]
タイヤのサイズ及びリムの幅を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、ばらつきを算出した。
【0040】
[比較例2及び3]
タイヤのサイズ及びリムの幅を下記の表1に示される通りとした他は比較例1と同様にして、ばらつきを算出した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示されるように、各実施例の評価方法では、ばらつきが小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明された方法は、タイヤの様々な部位の強度の評価に適している。
【符号の説明】
【0044】
2、20・・・評価装置
4・・・プランジャー
6・・・制御部
8、24・・・マイクロフォン
10、26・・・アンプ
12、28・・・A/D交換機
14、30・・・コンピュータ
16、34・・・タイヤ
22・・・重錘
32・・・バー
図1
図2