【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術においては、壁面構造の爪部が開口の周縁に当接してステム部の伝声により爪部が内側に変位しながら押し込まれ、爪部が開口の内側に収容されるとステム部の弾性が解除され、爪部が外側に弾性復帰してインストルメントパネルの裏面側の開口に係合することができる。
【0008】
このような構成である助手席用エアバッグ装置の最適化を図るうえでは、エアバッグカバーを押し込む際に、各係止爪は弾性変形の容易性と破損しない程度の強度性とを確保する必要がある。
【0009】
しかしながら、薄肉の壁面部のような構成では、爪部の極度な変形を防止するために、ピンを必要とするうえ、リブの数も増やすなどの補強構造が必要となり、結果的に材料コストや部品コストが高騰するうえ、係止爪の強度の設定が複雑化してしまうという問題が生じていた。
【0010】
しかも、インストルメントパネルは表皮等によって表面を覆っていることもあり、薄肉の壁面部のような構成では、エアバッグカバーを押し付ける際に、係止爪の壁面部によってインストルメントパネルの表面に擦り傷や切り傷等が入り易く、見栄えを損なうという問題も生じていた。
【0011】
本発明の目的は、材料コストを削減しつつ、係止爪の強度を容易に確保することができる助手席用エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1発明の助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルの開口内に挿入配置されたエアバッグカバーと、前記エアバッグカバーの内部に配置された金属ケースと、前記金属ケースの内部に配置され、その底面に固定されたインフレータと、前記金属ケース
の内部に収容され、前記インフレータを覆うように配置されたエアバッグ本体と、前記エアバッグ本体を前記金属ケースに固定するリテーナと、を有する助手席用エアバッグ装置であって、前記エアバッグカバーは、当該エアバッグカバーを前記開口に嵌め込んで係止するための係止爪を備えており、前記係止爪は、内部に中空部を形成する外枠部と、前記外枠部の内部に前記中空部を仕切るように前記嵌め込み方向に沿って形成されたリブ部と、と備え、かつ、前記係止爪は、前記開口に接する側の横断面形状が、先端側から基部側へ向かう第1略直線部と、前記第1略直線部と所定の角度をなすように連設される第2略直線部と、を備えた段付き形状となるように、構成され
、前記リブ部は、前記嵌め込み方向に沿って末広がり形状を備えていることを特徴とする。
【0013】
第1発明の助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルに助手席用エアバッグ装置を配置するための開口が形成されている。この開口は、助手席用エアバッグ装置の一部を構成すると同時にインストルメントパネルの一部を構成するエアバッグカバーによって閉じられている。
【0014】
したがって、エアバッグカバーの裏面側は、開口からインストルメントパネルの内部に挿入されている。
【0015】
助手席用エアバッグ装置配置は、エアバッグカバーの裏面側である内部に金属ケースが配置されており、この金属ケースの内部にインフレータとエアバッグ本体とが収納されている。さらに、エアバッグ本体は金属ケースにリテーナによって固定されている。
【0016】
一方、エアバッグカバーの裏面側には、インストルメントパネルの開口にエアバッグカバーを嵌め込んだ際の抜け止め用の係止爪を備えている。
【0017】
この係止爪は、エアバッグカバーを開口に嵌め込む過程においては弾性変形し易く、嵌め込んだ後には、その状態を維持するように強固にインストルメントパネルと係合するような強度を有しているのが望ましい。
【0018】
また、係止爪は、材料コストの高騰を抑制しつつ、エアバッグカバーを開口に嵌め込む過程においては、インストルメントパネルに対してある程度の接触面を有していないと、例えば、薄肉な壁面部等では剛性を確保し難いうえ、インストルメントパネルにエアバッグカバーを押し込む際に、例えば、エッジ機能が働いてインストルメントパネルの表面に擦り傷や切り傷等のダメージを与えてしまい易く、見栄えを損なう虞れが生じる。
【0019】
そこで、本願第1発明の助手席用エアバッグ装置では、前記係止爪は、内部に中空部を形成する外枠部に加えて、その外枠部よりも内側に中空部を仕切るように嵌め込み方向に沿ってリブ部を形成している。
【0020】
したがって、中空部の存在により材料コストを削減しつつ、外枠部以外に嵌め込み方向に沿うリブ部を併設していることにより、インストルメントパネルに対する接触面積を確保し、擦り傷や切り傷等のダメージを与え難くすることができる。
【0021】
しかも、係止爪は、開口に接する側の横断面形状が、先端側から基部側へ向かう第1略直線部と、この第1略直線部と所定の角度をなすように連設される第2略直線部と、を備えた段付き形状となるように構成されている。
【0022】
これにより、係止爪は、インストルメントパネルにエアバッグカバーを押し込む際の弾性変形を少なくしつつ、インストルメントパネルへの係合を確実かつ強固にすることができる。
【0023】
また、本願第1発明の助手席用エアバッグ装置
では、前記リブ部は、前記嵌め込み方向に沿って末広がり形状を備えてい
る。
【0024】
換言すれば、中空部を先端側から基部側へ向かうほど幅が狭くすることにより、リブ部を嵌め込み方向に沿って末広がり形状とすることができる。
【0025】
これにより、
本願第
1発明の助手席用エアバッグ装置によれば、係合爪の強度設定を容易とすることができる。
【0026】
すなわち、係止爪は先端から後端に向かうほど嵌め込む際に開口からの負荷が大きくなる。
【0027】
したがって、中空部を先端側から基部側へ向かうほど幅を狭くすることで開口との接触面積を増やすとともに強度を確保することができる。
【0028】
これにより、係合爪の大きさや第1略直線部及び第2略直線部の角度に応じた強度設定を中空部の幅によって容易に調整することができる。
【0029】
本願第
2発明は、第1発明
の助手席用エアバッグ装置において、前記エアバッグカバーを前記インストルメントパネルに嵌め込んだ状態で車体前方側に位置する前記係止爪にのみ、前記外枠部と前記リブ部とを備え、かつ、前記第1略直線部と前記第2略直線部とを備えた段付き形状となるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
第
2発明の助手席用エアバッグ装置によれば、エアバッグカバーの組み付け性をより一層向上することができる。
【0031】
すなわち、助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルにおいて車体前方側よりも後方側に寄った位置に配置されることが多い。このため、車体前後方向のインストルメントパネルの端部から開口までの距離は、車体前方側から車体前方側の開口までの距離の方が車体後方側から車体後方側の開口までの距離の方が長くなる。
【0032】
したがって、その構造上、インストルメントパネルの開口は、車体前方側の開口の方が距離が長い分だけエアバッグ押し込み方向に対した撓み易く、係合爪がインストルメントパネルの裏面側に嵌り難くなる。
【0033】
そこで、車体前方側の係止爪を本発明の構造を有する係合爪を用いれば、組み付け時にインストルメントパネルに荷重が加わり難くすることができ、係合爪を効率よく開口に嵌め込み易くすることができる。