(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オイルポンプの吐出圧を吐出通路を介して導入する導入ポート及び該導入ポートから導入された吐出圧を排出するドレンポートのそれぞれの一端が開口形成された弁収容室と、該弁収容室内に摺動自在に設けられ、前記導入ポートから一端部側で受けた吐出圧に応じて摺動して前記ドレンポートの開口面積を変化させるリリーフ弁体と、前記ドレンポートを閉止する方向へ前記リリーフ弁体を付勢する付勢部材と、前記弁収容室の前記リリーフ弁体の他端側に形成された背圧室に一端が開口した背圧通路と、を有するリリーフ弁と、
前記吐出通路と背圧通路との間に配置されて、前記吐出通路から吐出圧が導入される開口孔と、該開口孔から前記背圧通路に吐出圧を供給する背圧孔と、前記開口孔を開閉制御するボール弁体と、前記ボール弁体を開閉作動させるソレノイドと、を有する電磁切換弁と、
前記リリーフ弁の背圧室と電磁切換弁との間に配置されて、前記ポンプ吐出圧又は前記背圧室圧を受けて作動し、前記背圧室に供給される油圧を制御するパイロット弁と、
を備えたことを特徴とするオイルポンプのリリーフ圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る内燃機関のオイルポンプ及びオイルポンプのリリーフ圧制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0013】
なお、本実施形態は、自動車用内燃機関の機関弁の開閉時期を可変にするバルブタイミング制御装置(VTC)の作動源や、機関の摺動部、特にピストンとシリンダボアとの摺動部にオイルジェットによって潤滑油を供給し、またクランクシャフトの軸受に潤滑油を供給するオイルポンプに適用したものを示している。
【0014】
〔第1実施形態〕
第1実施形態における内燃機関のオイルポンプ及びオイルポンプのリリーフ圧制御装置は、
図1〜
図4に示すように、例えばトロコイドタイプであって、オイルポンプ1の吐出通路1aから分岐された分岐通路2に設けられて、前記オイルポンプ1の吐出圧を調整するリリーフ弁3と、前記ポンプ吐出圧を前記リリーフ弁3の後述する背圧室10に供給するか、あるいは供給を停止する電磁切換弁4と、前記リリーフ弁3の背圧室10と電磁切換弁4との間に配置されて、前記ポンプ吐出圧を、前記電磁切換弁4を介して導入して、前記背圧室10に供給される油圧を制御するパイロット弁5と、を備えている。
【0015】
前記オイルポンプ1は、図外の内燃機関のシリンダブロックに取り付けられたハウジングと、該ハウジング内に回転自在に挿通されて、クランクシャフトから回転力が伝達されるポンプ軸や、該ポンプ軸の外周に圧入などで固定されて、トロコイド形状の外歯を有するインナロータや、該インナロータの外側に配置されて該インナロータより1歯多いトロコイド形状の内葉を有して該インナロータと噛合って回転するアウタロータなどから構成されている。
【0016】
そして、このオイルポンプ1は、クランクシャフトの回転駆動に伴ってポンプ軸が回転してオイルパン6内の潤滑油(オイル)を吸入通路1bから内部の吸入ポートに吸入して、吐出ポートから前記吐出通路1aに吐出し、ここからメインオイルギャラリー27を介して機関の摺動部やVTCなどに供給するようになっている。なお、前記メインオイルギャラリー27の前記吐出通路1aの近傍にオイルフィルタ28が介装されている。
【0017】
前記リリーフ弁3は、ケーシング7内に形成されて、底部開口が栓体8aによって閉塞された円筒状の弁収容室8と、該弁収容室8の内部に摺動自在に設けられたリリーフ弁体9と、前記弁収容室8の下部内に形成された背圧室10と、該背圧室10内に収容されて前記リリーフ弁体9を上方向へ付勢する付勢部材であるバルブスプリング11と、を備えている。
【0018】
前記弁収容室8は、上端に前記分岐通路2と分岐したフィードバック通路2aの下流端が連通する導入ポート12が形成されていると共に、上端側の側部に、前記吸入通路1bに連通したリリーフ通路1cの上流端が連通するリリーフポート13が形成されている。また、弁収容室8の下部に前記背圧室10に連通する背圧ポート14が形成されている。
【0019】
前記リリーフ弁体9は、有底円筒状に形成されて、円盤状の上壁9aの上面に前記導入ポート12を介してポンプ吐出圧を受ける受圧面9bが形成されていると共に、円筒状の周壁9cの外周面が弁収容室8の内周面を摺動するに伴って前記リリーフポート13の開口面積を変化させるようになっている。
【0020】
前記バルブスプリング11は、ばね力によって前記リリーフ弁体9を上方に付勢して前記周壁9cの外周面でリリーフポート13の開口端を閉止する方向に付勢している。
【0021】
前記背圧ポート14は、上流端が前記電磁切換弁4に連
通した背圧通路15の下流端に連通していると共に、前記リリーフ弁体9が最大に下降移動しても常時開成されるようになっている。
【0022】
前記電磁切換弁4は、例えばシリンダブロック01に形成されたバルブ孔02に挿通固定された円筒状のバルブボディ16と、該バルブボディ16の後端部に設けられたソレノイド部17と、前記バルブボディ16の先端内部に形成された弁収容部18内に移動可能に設けられたボール弁体19と、を備えている。
【0023】
前記バルブボディ16は、後端部外周に嵌着固定されたシールリング20によって前記バルブ孔02内に液密的に保持されており、内部軸方向に先端が弁収容部18内に臨むロッド挿通孔21が軸方向に貫通形成されていると共に、先端部内には、前記弁収容部18と前記分岐通路2の
下流側と連通する開口孔22が軸方向から貫通形成されている。この開口孔22は、内側が段差小径状に形成されて、この小径部の孔縁に前記ボール弁体19が離着座する着座部である環状のシート部が形成されている。
【0024】
また、バルブボディ16の先端部の周壁には、前記弁収容部18と背圧通路15とを円環状のグルーブ溝23aを介して連通させる複数の背圧孔23が径方向に沿って形成されている。
【0025】
さらに、バルブボディ16の軸方向のほぼ中央位置には、前記ロッド挿通孔21の一部に形成された筒状通路24を介して前記弁収容部18と連通する複数のドレン孔25が径方向に沿って貫通形成されており、この各ドレン孔25が円環状のグルーブ溝25aを介して前記オイルパン6に連通している。
【0026】
前記弁収容部18は、軸方向に沿った小径円柱状に形成され、内部に前記ボール弁体19が軸方向移動可能になっている。
【0027】
前記ソレノイド部17は、円筒状のケース17aの内部に電磁コイルや固定鉄心、可動プランジャなどの構成部品が収容されていると共に、前記可動プランジャの先端部に前記ロッド挿通孔21内を摺動する可動部材であるプッシュロッド26の基端部が固定されている。このプッシュロッド26は、先端部が前記弁収容部18を介して前記ボール弁体19に軸方向から押圧あるいは押圧を解除するようになっている。
【0028】
そして、この電磁切換弁4は、図外のコントロールユニットから電磁コイルへ通電(オン)されると、可動プランジャを介して前記プッシュロッド26が進出移動して前記ボール弁体19を押圧する。これによって、該ボール弁体19が、前記環状のシート部に着座して、開口孔22を閉止すると同時に、前記筒状通路24を介して前記背圧孔23とドレン孔25を連通させるようになっている。
【0029】
一方、前記電磁コイルへの通電が遮断(オフ)されると、可動プランジャが内部のリターンスプリングによってプッシュロッド26を後退移動させる。これによって、前記ボール弁体19が、前記開口孔22を開成すると共に、該開口孔22から導入されたポンプ吐出圧によって後退移動して筒状通路24の一端を閉止する。このため、弁収容部18を介して前記開口孔22と背圧孔23とを連通させると共に、弁収容部18とドレン孔25との連通を遮断するようになっている。
【0030】
前記コントロールユニットは、内燃機関の油温や水温、回転数、負荷などをパラメータとして検出された機関運転状態に応じて、前記電磁コイルに通電あるいは通電を遮断するようになっている。この実施形態では、主として機関回転数に応じて電磁コイルへの通電、通電を遮断するようになっている。
【0031】
前記パイロット弁5は、リリーフ弁3とほぼ同じ構造であって、ケーシング7内に形成されて、底部開口が栓体30aによって閉塞された円柱状のシリンダ30と、該シリンダ30の内部に摺動自在に設けられたパイロット弁体31と、シリンダ30の内部に収容されて前記パイロット弁体31を上方向へ付勢する付勢部材であるバルブスプリング32と、を備えている。
【0032】
前記シリンダ30は、上端に前記背圧通路15から分岐した信号通路29の下流端が連通する供給ポート33が形成されていると共に、上端側の側部に、前記吸入通路1bに連通した排出ポート34が形成されている。また、シリンダ30の下端部の側部には、外気に常時連通してパイロット弁体31の円滑な摺動を確保する呼吸ポート35が形成されている。なお、この呼吸ポート35は、栓体30aに形成することも可能である。
【0033】
前記パイロット弁体31は、有底円筒状に形成されて、円盤状の上壁31aの上面に前記信号通路29を介してポンプ吐出圧を受ける受圧面31bが形成されていると共に、円筒状の周壁31cの外周面がシリンダ30の内周面を摺動するに伴って前記排出ポート34の開口面積(前記供給ポート33と前記排出ポート34の連通面積)を変化させるようになっている。
【0034】
前記バルブスプリング32は、ばね力によって前記パイロット弁体31を上方に付勢して前記周壁30cの外周面で排出ポート3
4の開口を閉止するようになっており、そのばね力は、
図5に示すP2のポンプ吐出圧が前記供給ポート33からパイロット弁体31に作用したときに、該パイロット弁体31を下降移動させて、前記供給ポート33と排出ポート34とを連通させる大きさに設定されている。
【0035】
電磁コイルへの通電状態が継続されて回転数が上昇し、ポンプ吐出圧がP1まで上昇すると、リリーフ弁体9の受圧面9bに作用するポンプ吐出圧が高くなって、
図2に示すように、リリーフ弁体9をバルブスプリング11のばね力に抗して所定量だけ下降移動させる。この移動位置では、リリーフ弁体9の周壁9cの外周面がリリーフポート13を漸次開成させて開口面積を大きくする。このため、吐出通路1aから分岐通路2に流入した余剰油は、フィードバック通路2aからリリーフ弁3の導入ポート12、弁収容室8を通ってリリーフポート13、リリーフ通路1cを介して吸入通路1bに戻される。
【0036】
したがって、この状態では、
図5の破線で示すように、ポンプ吐出圧がP1を超えて大きく上昇することなく、かかるポンプ吐出圧が適度に調整されてほぼ平坦な油圧特性になる。この油圧P1は前記VTCの駆動に要する要求油圧
に設定されている。
【0037】
その後、機関回転数や油温の上昇する高油圧が必要な状態に機関運転条件が移行すると、これを検出したコントロールユニットが、前記電磁切換弁4の電磁コイルへの通電を遮断(オフ)する。これによって、
図3に示すように、プッシュロッド26が可動プランジャと共に後退移動してボール弁体19の押圧を解除することから、該ボール弁体19によって開口孔22が開成されて、分岐通路2と背圧通路15を連通させると共に、筒状通路24を閉止する。
【0038】
したがって、前記ポンプ吐出圧が、分岐通路2から背圧通路15を通って前記リリーフ弁3の背圧室10に供給されるため、該背圧室10の内部油圧が高くなるが、前記フィードバック通路2aを介して導入ポート12から同じポンプ吐出圧がリリーフ弁体9の受圧面9bに作用することから、該リリーフ弁体9の上下が同圧となる。このため、リリーフ弁体9は、バルブスプリング11のばね力によって、上昇移動して周壁9cの外周面でリリーフポート13の開口端を閉止すると共に、上壁9aの受圧面9bで導入ポート12の開口端も閉止する。
【0039】
この状態からさらに機関回転数が上昇すると、前記リリーフ弁体9は、
図3で示す最上方位置の状態を維持しつつさらに背圧室10に高いポンプ吐出圧が供給されることから、ポンプ吐出圧が
図5に示すP1を超えてさらに上昇し続けP2まで上昇する。
【0040】
その後、機関回転数が上昇し、ポンプ吐出圧がP2を超えると、このポンプ吐出圧が信号通路29を介してパイロット弁5の供給ポート33からパイロット弁体31の受圧面31bに作用し、パイロット弁体31をバルブスプリング32のばね力に抗して下方へ摺動させる。これによって、前記供給ポート33と排出ポート34が連通して
背圧室10の油圧が背圧通路15を介して外部に排出されて前記背圧室10の圧力を調整する。
【0041】
パイロット弁5は、電磁切換弁4下流の背圧通路15の油圧(=リリーフ弁3の背圧)をP2に調整することから、リリーフ弁3のバルブスプリング11のばね力と合わせて作用して、前記開口孔22での吐出圧がP3(=P1+P2)に達したときに
図4に示す状態になる。よって、ポンプ吐出圧は、
図5のP3の位置から実線に示すやや立ち上がり傾斜状の特性となる。
【0042】
なお、この油圧P3は機関の高速運転時のクランク軸の潤滑に必要な油圧や、ピストンオイルジェットの噴射に必要な油圧に設定される。
【0043】
本実施形態では、バルブスプリング11、32を変更するのみで前記リリーフ弁3の開弁圧であるP1及び前記パイロット弁5の開弁圧であるP2を変更することができる。そのため、機関に必要な油圧に応じてP1、P2を設定する場合にバルブスプリング11、32以外の部品を共用化することが可能となり、コストダウンが図れる。
【0044】
なお、機関回転数が上昇途中で電磁切換弁4がオンからオフに切り換えられたときには、
図5の一点鎖線で示すように、破線の特性と実線の特性を切り換えることが可能になる。
【0045】
以上のように、本実施形態にあっては、例えば機関回転数に応じてコントロールユニットから前記電磁切換弁4に、オン、オフ信号(通電、非通電)を出力してボール弁体19によって開口孔22と筒状通路24の開口端を相対的に開閉制御することにより、オイルポンプ1のリリーフ圧を高精度に制御することが可能になる。
【0046】
特に、前記ボール弁体19を経由する潤滑油(ポンプ吐出圧)の流れは、前記分岐通路2から背圧通路15への一方向のみであって、前記背圧通路15から分岐通路2への逆方向の流れ、つまり双方向の流れは生じない。したがって、前記ボール弁体19の挙動が不安定になるとか、詰まりを起こすといったことが全くなく、常に安定した動作が得られる。この結果、リリーフ圧をさらに高精度に制御することができ、ポンプ効率の向上が図れる。
【0047】
なお、第1実施形態では、前記パイロット弁5がリリーフ弁3とほぼ同じ構造となっているが、背圧通路15の油圧(リリーフ弁3の背圧)に応じて背圧通路15のオイルをリリーフする構成であれば良く、例えば電磁弁であっても良い。
〔第2実施形態〕
図6〜
図9は第2実施形態を示し、主として、オイルフィルタ28の配設位置を変更すると共に、リリーフ弁3のリリーフ弁体40とパイロット弁5のパイロット弁体50の構造を変更し、さらに、該リリーフ弁3とパイロット弁5への流路を変更したものである。
【0048】
前記オイルフィルタ28は、オイルポンプ1の吐出通路1aの上流側に配置されて、この下流側にメインオイルギャラリー27と前記分岐通路2の上流側一端が接続されている。
【0049】
前記リリーフ弁3の弁収容室8に上下摺動自在に設けられたリリーフ弁40は、スプール弁型であって、導入ポート12に臨む円盤状の受圧部40aと、該受圧部40aに中央の弁軸40bを介して一体に連結された有底円筒状の弁部40cと、前記弁軸40b外周に形成された環状通路40dとから構成されている。また、前記バルブスプリング11のばね力によって前記導入ポート12方向に付勢されている。
【0050】
また、弁収容室8の上部側の側部には、上流部41aがオイルポンプ1の吐出通路1aの前記オイルフィルタ28より上流側に開口形成されたリターン通路41の下流部41bが開口形成されていると共に、該リターン通路41の軸方向下側には、リリーフ通路1cに連通するリリーフポート13が開口形成されている。
【0051】
前記リターン通路41の下流部41bは、前記リリーフ弁体40の所定の摺動範囲において前記環状通路40dに常時臨んでいる一方、前記リリーフポート13の開口端は、リリーフ弁体40の摺動位置に応じて前記弁部40cの外周面により開口面積が変化されるようになっている。つまり、前記リリーフ弁体40が、バルブスプリング11のばね力で
図6や
図8に示す最大上方位置に保持されている場合は、弁部40cの外周面によって完全に閉止されているが、
図7や
図9に示すように、リリーフ弁体40僅かに下降移動した場合は、弁部40cが前記リリーフポート13を開成して僅かな開口面積に制御して、前記環状通路40dを介してリターン通路41と連通させるようになっている。
【0052】
前記パイロット弁5は、パイロット弁体50が前記リリーフ弁体40とほぼ同じくスプール型によって形成され、供給ポート33に臨む円盤状の受圧部50aと、該受圧部50aに中央の弁軸50bを介して一体に連結された有底円筒状の弁部50cと、前記弁軸50b外周に形成された環状通路50dとから構成されている。また、前記バルブスプリング32のばね力によって前記供給ポート33方向に付勢されている。
【0053】
また、シリンダ30の上部側の側部には、前記背圧通路15から分岐した分岐ポート51の下流端51aが開口形成されていると共に、該下流端51aの軸方向下側には、前記排出ポート34の一端が開口形成されている。
【0054】
前記信号通路29は、一端が前記フィードバック通路2aに接続され、他端が前記供給ポート33に接続されている。
【0055】
前記パイロット弁体50は、
図6〜
図8に示すように、前記分岐通路2やフィードバック通路2a及び信号通路29から供給されたポンプ吐出圧が、所定以下である場合は前記パイロット弁体50がバルブスプリング32のばね力によって最上方位置に保持されて分岐ポート51の下流端51aを閉止した状態になるが、ポンプ吐出圧が所定以上になると、
図9に示すように、下降移動して分岐ポート51の下端縁51aを開口して、環状通路50dを介して排出ポート34と連通させるようになっている。つまり、前記供給ポート33の油圧に応じて前記分岐ボート51と前記排出ポート34との連通面積を変化させている。
【0056】
なお、シリンダ30の下端部には、前記呼吸ポート35の一端が開口形成されている。
〔第2実施形態の作用〕
機関の始動から低回転領域では、オイルポンプ1が機関によって回転駆動すると共に、前記コントロールユニットから電磁切換弁4の電磁コイルに通電(オン)される。これによって、
図6に示すように、プッシュロッド26がボール弁体19を押圧して環状シート部に着座させ開口孔22を閉止すると共に、背圧孔23と筒状通路24を介して背圧通路15とドレン孔25とを連通する。したがって、リリーフ弁3の背圧室10内は低圧になることから、リリーフ弁体40はバルブスプリング11のばね力のみによって弁収容室8の最大上方位置に付勢され、受圧部40aが弁収容室8上端の環状段差面に着座しリリーフ弁体40の周壁がリリーフポート13を閉止している。
【0057】
電磁コイルへの通電状態が継続されて回転数が上昇し、ポンプ吐出圧がP1まで上昇すると、
図7に示すように、吐出通路1aからオイルフィルタ28を経由して分岐通路2、フィードバック通路2aを通って受圧部40aに作用するポンプ吐出圧が高くなって、リリーフ弁体40をバルブスプリング11のばね力に抗して所定量だけ下方へ摺動させる。この摺動位置では、リリーフ弁体40の弁部40cの外周面がリリーフポート13を漸次開成させて開口面積を大きくする。このため、吐出通路1aからリターン通路41を通って環状通路40dに流入した余剰油は、リリーフポート13からリリーフ通路1cを介して吸気通路1bに戻される。
【0058】
したがって、この状態では、
図10の破線で示すように、ポンプ吐出圧がP1を超えて大きく上昇することなく、かかるポンプ吐出圧が適度に調整され僅かな上昇する油圧特性になる。
【0059】
その後、機関回転数(ポンプ回転数)や油温が上昇するなど、高油圧が必要な状態に機関の運転条件が移行すると、これを検出したコントロールユニットが、前記電磁切換弁4の電磁コイルへの通電を遮断(オフ)する。これによって、
図8に示すように、プッシュロッド26が可動プランジャと共に後退移動してボール弁体19の押圧を解除することから、該ボール弁体19は吐出圧によって環状シート部から離間して開口孔22を開成して、分岐通路2と背圧通路15を連通させると共に、筒状通路24を閉止する。
【0060】
したがって、前記ポンプ吐出圧が、分岐通路2から背圧通路15を通って前記リリーフ弁3の背圧室10に供給されるため、該背圧室10の内部油圧が高くなるが、前記導入ポート12からも同じポンプ吐出圧がリリーフ弁体40の受圧部40aに作用することから、該リリーフ弁体40の上下が同圧となる。このため、リリーフ弁体40は、バルブスプリング11のばね力によって、上昇移動して弁部40cの外周面でリリーフポート13の開口端を閉止すると共に、受圧部40aで導入ポート12の開口端も閉止する。
【0061】
この状態からさらに機関回転数が上昇すると、前記リリーフ弁体40は、
図8で示す最上方位置の状態を維持しつつさらに背圧室10に高いポンプ吐出圧が供給されることから、ポンプ吐出圧が
図10に示すP1を超えてさらに上昇し続けP2まで上昇する。
【0062】
その後、機関回転数が上昇し、ポンプ吐出圧がP2を超えると、パイロット弁体50をバルブスプリング32のばね力に抗して下方へ摺動させる。これによって、弁部50cが排出ポート34の開口端を開成する。これによって、前記分岐ポート51の下流端51aが環状通路51dを介して排出ポート34と、を連通させることから、前記背圧通路15内のポンプ吐出圧が外部に排出されて前記背圧通路15内の圧力を調整する。
【0063】
前記パイロット弁体50がバルブスプリング32のばね力で排出ポート34を閉じているときは、前記電磁切換弁4の上流と下流側の油圧が同一になるが、前記パイロット弁体50がP2の油圧で開弁して、排出ポート34から油圧が排出されると、オイルフィルタ28や電磁切換弁4の流路抵抗による例えば開口孔22での圧損で背圧通路15側の油圧が低下する。そうすると、リリーフ弁3はバルブスプリング11のばね力に抗して下方に移動して
図9に示す状態になる。
【0064】
なお、この油圧P2は機関の高速運転時のクランク軸の潤滑に必要な油圧や、ピストンオイルジェットの噴射に必要な油圧に設定される。
【0065】
前記パイロット弁5は、メインギャラリ27の油圧がP2になる様に電磁切換弁4下流の背圧通路15の油圧(=リリーフ弁3の背圧)を調整することから、
図10の実線で示すように、P2の位置からほぼ水平な特性となる。つまり、前記背圧室10には、前記オイルフィルタ28と絞られた開口孔22を通過した後のポンプ吐出圧が背圧通路15内に流入し、ここから分岐ポート51を通って排出ポート34から排出されることから、ポンプ吐出圧はP2から上昇することなくフラット状態になる。
【0066】
なお、機関回転数が上昇途中で電磁切換弁4がオンからオフに切り換えられたときには、
図10の一点鎖線で示すように、破線の特性と実線の特性を切り換えることが可能になる。
【0067】
他の構成や作用は前記第1実施形態と同様であるから、前記ボール弁体19の挙動の安定化による高精度のリリーフ圧制御が可能になり、ポンプ効率の向上が図れるなどの作用効果が得られる。
【0068】
なお、第2実施形態においてもパイロット弁5は背圧通路15の油圧を調整できれば良く、例えば電磁弁であっても良い。
【0069】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、前記リリーフ弁3とパイロット弁5の各実施形態における2つの組み合わせ以外の組み合わせとすることも可能である。
【0070】
また、オイルポンプ1としては、トロコイドポンプの他にベーンポンプや外接ギアポンプなどを用いることも可能である。
【0071】
なお、本発明のリリーフ弁装置は、オイルポンプ1のハウジングに一体的に設けられていても良いし、別部材に形成されていても良い。
【0072】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項4に記載のリリーフ圧制御装置において、
前記リリーフ弁体は、有底円筒状に形成されて、軸方向一端側に形成された受圧面に、前記導入ポートから導入された前記吐出圧が作用することを特徴とするリリーフ弁制御装置。
〔請求項b〕請求項4に記載のリリーフ圧制御装置において、
前記リリーフ弁体が、有底円筒状に形成されていると共に、
前記弁収容室が円柱状に形成されて、軸方向一端側に、前記導入ポートの一端が開口形成されていると共に、前記弁収容室の側部に前記ドレンポートの一端開口と背圧通路の下流側開口端が軸方向に並んで径方向から形成されていることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項c〕請求項bに記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記パイロット弁体は、有底円筒状に形成され、
前記シリンダは、円筒状に形成されて、前記供給ポートの一端が軸方向の一端部に開口形成されていると共に、前記排出ポートと背圧ポートの各一端が軸方向に並んで径方向から連通形成されていることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項d〕請求項1または4に記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記オイルポンプの吐出通路の前記リリーフ弁及び電磁切換弁の上流側にオイルフィルタを設けたことを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項e〕請求項4に記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記電磁切換弁は、先端内部に前記ボール弁体が移動可能に収容された円筒状の収容部を有し、該収容部の軸方向先端に前記開口孔が形成されている一方、収容部の側部径方向に沿って前記背圧孔が形成され、前記ソレノイドが前記収容部内に挿通されたプッシュロッドを有し、該プッシュロッドによって前記ボール弁体を進退動させて前記開口孔を開閉することを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項f〕請求項eに記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記オイルポンプの始動時には、前記電磁切換弁の開口孔がボール弁体によって閉止されていることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項g〕請求項eに記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記電磁切換弁は、機関の油温や水温、回転数、負荷などをパラメータとしてコントロールユニットによってソレノイドへの通電が制御されることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項h〕請求項eに記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記電磁切換弁の収容部の前記開口孔と反対側の位置に、前記開口孔がボール弁体によって閉止されている際に、前記背圧孔を介して背圧通路と外部とを連通する排出孔が形成されていることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項i〕請求項3または6に記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記パイロット弁は、前記パイロット弁体の摺動に応じて、前記供給ポートと前記排出ポートを連通する連通面積を変化させることを特徴とするリリーフ圧制御装置。
〔請求項j〕請求項3または6に記載のリリーフ圧制御装置であって、
前記パイロット弁は、前記パイロット弁体の摺動に応じて、前記背圧通路と前記排出ポートの連通する連通面積を変化させることを特徴とするリリーフ圧制御装置。