特許第6192494号(P6192494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192494
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B65D1/02 221
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-230474(P2013-230474)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89827(P2015-89827A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】岩下 寛昌
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−256693(JP,A)
【文献】 特開2008−7166(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028571(WO,A1)
【文献】 特開2009−96511(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/070916(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1348636(EP,A1)
【文献】 意匠登録第1505347(JP,S)
【文献】 意匠登録第1401030(JP,S)
【文献】 意匠登録第1297912(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/00−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル胴部のくびれ部の少なくとも一部に指挿入用の窪み部を有するプラスチックボトルであって、
前記窪み部の底面は、第1の底面と、当該第1の底面とは異なる角度で延びる第2の底面と、当該第1の底面と当該第2の底面とをつなぐ境界線と、を有し、
前記境界線は、前記第1の底面の上端と前記第2の底面の下端とをつなぐ仮想上の線よりもボトル外方に位置し、
前記くびれ部には、前記第1及び第2の底面から外れた位置において、上下方向に間隔をあけて複数のリブが凹状に形成されている、プラスチックボトル。
【請求項2】
前記窪み部の底面は、前記境界線に沿って形成された凹状のリブを有する、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記窪み部の底面は、前記第1の底面の上端につながって当該窪み部の最深部を構成する第3の底面をさらに有し、
前記第3の底面は、上下方向に平行であり、
前記第1の底面は、下方に向かってボトル外方に傾斜する、請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記くびれ部の前記複数のリブは、前記第3の底面と前記第1の底面との境界を横断するように前記ボトル胴部の周方向に延在する第1の横断周リブを有する、請求項3に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
前記くびれ部の前記複数のリブは、前記第3の底面の上側部分を横断するように前記ボトル胴部の周方向に延在する第2の横断周リブを有する、請求項4に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
前記くびれ部の前記複数のリブは、前記第1の横断周リブと前記第2の横断周リブとの間に、前記第3の底面の少なくとも一部において非連続となるように前記ボトル胴部の周方向に延在する分断周リブを有する、請求項5に記載のプラスチックボトル。
【請求項7】
前記ボトル胴部は、正方形の横断面形状を基調としてなり、
前記窪み部は、前記正方形を構成する4つの面に対称に形成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用のPETボトルとしてプラスチックボトルが広く用いられており、その軽量化が求められている。しかし、軽量化した薄肉のボトルは、トップロード(縦圧縮荷重)や横からの圧力などの力に対して弱くなる。そのため、ボトル胴部に環状の凹リブを形成して、強度を上げるなど、様々な工夫が施されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば1リットルを超える大型のボトルの場合には、持ち易さや注ぎ易さといったユーザビリティが求められる。かかるユーザビリティのために、ボトル胴部にくびれ部を形成したり、ボトル胴部に指挿入用の窪み部を形成したりするなどの工夫が施されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−116427号公報
【特許文献2】特開2005−247393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボトルは、運搬・保管の際、飲料などの内容物を充填された状態のものが数本〜数十本単位で段ボール箱に入れられ、パレット上に段積みされる。このため、下段の段ボール箱内の各ボトルには、それよりも上側にある段ボール箱によるトップロードがかかる。
【0006】
しかし、くびれ部や指挿入用の窪み部など、ボトルの断面が急激に変化している部分を有する軽量化ボトルにトップロードが作用すると、当該部分に応力が集中する。その結果、トップロードが所定値を超えた場合には、不可逆な変形が起きて、商品価値を損ねてしまうという問題がある。
【0007】
このようなトップロードによるボトル変形の問題に対し、くびれ部や窪み部をなくす設計をすることは、大型ボトルのユーザビリティを確保することができないため、望ましくない。
一方、強度を確保するという観点からすれば、一般には特許文献1のような環状の凹リブを設けて対処する。この場合、一般的な設計概念からすれば、環状の凹リブを窪み部及びくびれ部の周方向に亘って形成することになるが、このような設計をしたのでは、トップロードによって応力集中部分(例えば図5の符号S1)の下側周辺部分(例えば図5の符号S3)が膨らむように変形し、段ボール箱に胴膨れが生じる。その結果、最悪な場合には段ボール箱の荷崩れが生じるなど、運搬・保管に支障をきたしてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型のボトルを軽量化した場合であっても、ユーザビリティを確保することができると共に、トップロードに対して有効に対応することできるプラスチックボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく、本発明のプラスチックボトルは、ボトル胴部のくびれ部の少なくとも一部に指挿入用の窪み部を有するものであって、窪み部の底面は、第1の底面と、第1の底面とは異なる角度で延びる第2の底面と、第1の底面と第2の底面とをつなぐ境界線と、を有し、境界線は、第1の底面の上端と第2の底面の下端とをつなぐ仮想上の線よりもボトル外方に位置し、くびれ部には、第1及び第2の底面から外れた位置において、上下方向に間隔をあけて複数のリブが凹状に形成されている。
【0010】
本発明によれば、くびれ部の複数のリブによって強度を上げることができるので、使用時に、消費者がくびれ部を掴んだときにこれが撓むような変形を抑制することができる。よって、プラスチックボトルを大型化し、軽量化した場合であっても、持ち易さ・注ぎ易さといったユーザビリティが実感されるような強度を確保することができる。
【0011】
加えて、複数のリブの全てをボトル胴部の全周に亘って形成するのではなく、窪み部の第1及び第2の底面が存在しない位置に形成している。これにより、第1及び第2の底面の強度を必要以上に大きくせずにすみ、これら底面にトップロードに対して有効に対応する柔軟性(可動性)をもせることができる。この結果、所定値以上のトップロードがかかった場合に、第1及び第2の底面は境界線を起点として境界線に沿ってボトル外方へと屈曲するようになる。この屈曲変形が起きたときに、窪み部に集中する応力が解放されるため、窪み部の周辺部分が不可逆に変形するのを防止することができる。また、このように、屈曲変形させる箇所を予め設定しておいて、しかも、屈曲変形させる方向を予め設定しておくことで、トップロードがかかった場合の安定した変形をもたらすため、不規則な変形による商品価値の低下をもたらすことも防止することができる。加えて、屈曲変形が起きる位置が窪み部の底面であるため、例えば段ボール箱に詰めたプラスチックボトルに大きなトップロードがかかったとしても、段ボール箱の胴膨れを防止することができる。
【0012】
好ましくは、窪み部の底面は、境界線に沿って形成された凹状のリブを有するとよい。
【0013】
この構成によれば、屈曲の起点がより明確となるため、トップロードがかかって変形するときの第1及び第2の底面の屈曲変形がより容易に行われるようになる。
【0014】
好ましくは、窪み部の底面は、第1の底面の上端につながって窪み部の最深部を構成する第3の底面をさらに有し、第3の底面は上下方向に平行であり、第1の底面は下方に向かってボトル外方に傾斜するとよい。
【0015】
この構成によれば、窪み部の底面が延在方向の異なる複数の底面で形成されるため、使用時に、消費者が窪み部に指を挿入したときのフィット感を向上させ、持ち易さ・注ぎ易さを実感させることができる。また、トップロードがかかった場合に変形させる面として、下方に向かってボトル外方に傾斜した面(第1の底面)を含むため、その変形がよりスムーズに行われ易くなる。
【0016】
好ましくは、くびれ部の複数のリブは、第3の底面と第1の底面との境界を横断するようにボトル胴部の周方向に延在する第1の横断周リブを有するとよい。
【0017】
この構成によれば、窪み部を補強することができるので、窪み部に指を入れたときにこれが撓むような変形を抑制することができる。また、第1の底面と第3の底面とが第1の横断周リブによって区画されることで、トップロードがかかった場合に第1の底面が第3の底面とは独立してボトル外方に変形するような挙動をとり得るため、第1の底面の変形が容易に行われるようになる。
【0018】
好ましくは、くびれ部の複数のリブは、第3の底面の上側部分を横断するようにボトル胴部の周方向に延在する第2の横断周リブを有するとよい。
【0019】
この構成によれば、上記同様に、窪み部を補強することができるので、窪み部に指を入れたときにこれが撓むような変形を抑制することができる。
【0020】
好ましくは、くびれ部の複数のリブは、第1の横断周リブと第2の横断周リブとの間に、第3の底面の少なくとも一部において非連続となるようにボトル胴部の周方向に延在する分断周リブを有するとよい。
【0021】
この構成によれば、トップロードがかかった場合の第1及び第2の底面の変形を確保しながら、第3の底面の強度を大きすぎない程度に上げることができる。
【0022】
好ましくは、ボトル胴部は、正方形の横断面形状を基調としてなり、窪み部は、その正方形を構成する4つの面に対称に形成されているとよい。
【0023】
こうすることで、プラスチックボトルをどの方向から掴んでも、対向する窪み部に指を入れて掴むことができるので、ユーザビリティを向上することができる。また、トップロードがかかった場合には、ボトル胴部の周方向では均等に力がかかるので、応力をバランスよく解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るプラスチックボトルの正面図である。
図2図1のプラスチックボトルの平面図である。
図3図1のプラスチックボトルの底面図である。
図4図4(a)は図1のプラスチックボトルのくびれ部まわりを示す拡大正面図であり、図4(b)は図4(a)のb−b線で切断した半端面図である。
図5図5(a)は比較例に係るプラスチックボトルのくびれ部まわりを示す拡大正面図であり、図5(b)は図5(a)のb−b線で切断した半端面図である。
図6図1のプラスチックボトルのくびれ部まわりを示す図であり、図6(a)はトップロードがかかる前の一部拡大斜視図であり、図6(b)はトップロードがかかった場合の一部拡大斜視図であり、図6(c)は図6(b)の状態に関して図4(b)と同じ位置で切断した半端面図である。
図7図7(a)は第2実施形態に係るプラスチックボトルのくびれ部まわりを示す拡大正面図であり、図7(b)は図7(a)のb−b線で切断した半端面図である。
図8図7のプラスチックボトルのくびれ部まわりを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るプラスチックボトルを説明する。
以下の説明では、ボトルの口部が存在する方を上側とし、ボトルの底部が存在する方を下側とする。横断面形状とは、ボトルの中心軸に直交する平面における断面形状を意味する。
【0026】
(第1実施形態)
図1〜3に示すように、プラスチックボトル1(以下、「ボトル1」という。)は、上側から順に、口部2、肩部3、胴部4及び底部5を有する。これらの部分(2、3、4及び5)は、一体に形成され、内部に飲料を貯留するための有底筒状のボトル壁を構成する。飲料としては、水、緑茶、ウーロン茶、ブレンド茶、スポーツドリンク又は果汁等の非炭酸飲料を貯留するのに適している。また、ボトル1は、容量が1リットルを超えるような大型サイズのボトルに適したものであり、ここでは2リットル用となっている。
【0027】
ボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成形等の延伸成形法により成形される。
ボトル1の製造工程の一例を説明する。先ず、金型内に熱可塑性樹脂を射出し、プリフォームを射出成形する。プリフォームは、口部2と同形状の口部と、その下側に連なる有底の筒状部と、で構成される。射出成形後は、プリフォームをブロー成形機にセットして、プリフォームの筒状部を加熱する。そして、延伸ロッドによって筒状部を縦方向に延伸させると共に、圧縮空気を吹き込んで筒状部を横方向に延伸させる。延伸させた筒状部の部位を金型の内面に押し付け、その後固化させる。これにより、肩部3、胴部4及び底部5が成形され、ボトル1の一連の成形が完了する。
【0028】
口部2は、上端が開口しており、飲料の注ぎ口として機能する。口部2の開口は、図示省略したキャップにより開閉される。肩部3は、横断面が下方にかけて徐々に拡大してなり、ボトル1において最小径の口部2を、ボトル1において最大幅を構成する胴部4の上端に連続させる。肩部3には、口部2から胴部4の上端にかけて放射状に延びる複数のリブ10が形成されている。また、肩部3と胴部4の上端とをむすぶ綾線は、周方向に山部12と谷部14とを交互に繰り返して延びる略正弦波状の曲線となっている。具体的には、胴部4の正方形の横断面形状に対応して、山部12の頂部が正方形の一辺の真ん中に位置すると共に、谷部14の頂部が正方形の角に位置している。これにより、肩部3の座屈強度が高められている。底部5は、底壁21及び周壁22で構成される。周壁22は、下方にかけて僅かにすぼめられてなり、胴部4の下端を底壁21に連続させる。口部2、肩部3及び底部5の形状は、特に限定されるものではなく、適宜設計することができる。
【0029】
胴部4は、正方形の横断面形状を基調とする角筒状の部分である。詳細には、図2及び3に示すように、胴部4の正方形の横断面形状は、正方形の4つの角部31が円弧からなり、隣り合う角部31,31の間に直線部33を有する。
【0030】
胴部4は、図1に示すように、その上下方向の途中にくびれ部40及び指挿入用の窪み部80を有している。胴部4を上下方向に3つのエリアで区分けすると、胴部4は、くびれ部40と、くびれ部40の上側にある上側胴部42と、くびれ部40の下側にある下側胴部44と、からなる。上側胴部42及び下側胴部44は、上下方向において一定の正方形の横断面形状からなる部分である。上側胴部42及び下側胴部44には、それぞれ、周方向に延びる複数の連続溝50及び複数の断続溝52が上下方向に交互に形成されている。
【0031】
くびれ部40は、胴部4において最も絞られているピンチ部60と、ピンチ部60を上側胴部42につなぐ上側傾斜部62と、ピンチ部60を下側胴部44につなぐ下側傾斜部64と、を有している。くびれ部40は、全周にわたって上下非対称に形成されており、下側傾斜部64は、上側傾斜部62よりも緩やかな傾斜角度で、ピンチ部60から遠ざかるにつれて徐々に径方向に拡大するように形成されている。このように、下側傾斜部64を比較的浅い傾斜角度とすることで、消費者がくびれ部40を把持した際に下側傾斜部64に手をあてがいやすくなり、フィット感を高めることができる。下側傾斜部64と下側胴部44との境界は、分断周リブ106によって区画されている。一方、上側傾斜部62と上側胴部42との境界には、これらをむすぶ綾線70があり、稜線70は、山部72と谷部74とが周方向に交互に4回繰り返す湾曲した線で形成されている。山部72及び谷部74は、それぞれ、胴部4の正方形の横断面形状における角部31及び直線部33に相当する位置にあり、谷部74の頂部は、正方形の一辺の真ん中に位置している。
【0032】
窪み部80は、胴部4の正方形の横断面形状における4つの各面(直線部33)に、前後対称及び左右対称となるように形成されている。したがって、胴部4の前後の面に位置する窪み部80、80は互いに対向し、かつ、胴部4の左右の面に位置する窪み部80、80は互いに対向し、これら4つの窪み部80は、同じ高さレベルで同じ形状で形成されている。また、窪み部80は、くびれ部40よりも一段深い位置に形成されている。すなわち、窪み部80は、胴部4の側面をくびれ部40よりも凹ませた部位からなり、くびれ部40よりもボトル内方に位置している。また、窪み部80は、くびれ部40の高さ方向の略全域に亘って形成され、一部がくびれ部40の外側にまで形成されている。詳細には、窪み部80は、上端部がくびれ部40の上側傾斜部62に位置し、かつ、下端部が下側胴部44の上部に位置している。窪み部80の高さは、幅よりも長く、成人の消費者であれば、例えば2〜3本の指を縦に挿入することができる程度の高さとなっている。
【0033】
窪み部80は、図4に示すように、上下方向に平行に延在して窪み部80の最深部を構成する上側底面82と、上側底面82の下端から下方に向かってボトル外方に傾斜した下側第1底面84と、下側第1底面84とは異なる角度で下側第1底面84の下端から下方に向かってボトル外方に傾斜した下側第2底面86と、を底部に有している。また、窪み部80は、上側底面82の上側につながる上側傾斜面90と、下側第2底面86の下側につながる下側傾斜面92と、を有している。上側傾斜面90は、上側傾斜部62の傾斜面62aとは異なる角度で、この傾斜面62aにつながっている。また、下側傾斜面92は、下側胴部44の平坦面44aにつながっている。上側傾斜面90及び下側傾斜面92は、窪み部80の周壁部における上下の面を構成する。窪み部80の周壁部の左右の面は、上側底面82、下側第1底面84及び下側第2底面86のそれぞれの左右の両端から外側に広がるように傾斜して立ち上がった傾斜面94、96によって構成されている。
【0034】
下側第1底面84と下側第2底面86の間には、これらをつなぐ境界線88が位置している。境界線88は、下側第1底面84の上端と下側第2底面86の下端とをつなぐ仮想上の線L1よりもボトル外方に位置している。別の観点で換言すると、窪み部80において、上側底面82の下側にある底面は、下側第2底面86が下側第1底面84の延長線上よりもボトル内方に位置するように、境界線88の位置で折れ曲がっている。境界線88と仮想上の線L1との距離は、例えば1mmで設計することができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
くびれ部40には、窪み部80の下側第1底面84及び下側第2底面86から外れた位置に、上下方向に間隔をあけてリブ100、102、104、106が凹状に複数形成されている。このうち、リブ100、104は、窪み部80の底部を横断して胴部4の周方向に亘って形成された横断周リブとして構成されている。具体的には、横断周リブ100は、上側底面82の上端側の部分を横断し、横断周リブ104は、上側底面82と下側第1底面84とを区画するように、これらの境界部分を横断している。一方、残りのリブのうち、リブ102、106は、窪み部80の底部において非連続となるように分断されて胴部4の周方向に延在する分断周リブとして構成されている。具体的には、分断周リブ102は、リブ部分が窪み部80の左右の傾斜面94,96から上側底面82の一部にまで達してはいるが、上側底面82の中央位置では非連続となっている。分断周リブ106は、リブ部分が窪み部80の外側にあり、窪み部80の底面及び左右の傾斜面94,96にまでは達していない。分断周リブ106のリブ部分と境界線88とは、上下方向において同じ高さレベルにはなく、境界線88の方が分断周リブ106のリブ部分よりも僅かに上側に位置している。なお、横断周リブ100及び分断周リブ102が、上述のピンチ部60に位置している。
【0036】
以上の構成の如く、複数の凹状のリブ100、102、104、106を窪み部80の下側第1底面84及び下側第2底面86から外れた位置に形成し、かつ、下側第1底面84と下側第2底面86とを境界線88でつなぐことで、ボトル1に所定値以上のトップロードがかかった場合に、下側第1底面84と下側第2底面86とが境界線88に沿ってボトル外方へと屈曲するように変形する構成となっている。この点について、以下詳述する。
【0037】
まず、比較のため、周リブを全て横断周リブとして形成した例を図5に示す。図5に示すように、横断周リブとなった周リブ102´,106´は、それぞれ上側底面82及び下側底面87´を横断している。下側底面87´は、境界線がない一つの傾斜角度からなる面である。その他の構成は本実施形態に係る構成と同じである。周リブはボトル1の強度を上げるものであり、横断周リブは分断周リブよりも強度を上げる。したがって、比較例に係る窪み部80´の底部は、本実施形態に係る窪み部80の底部よりも強度が向上されており、荷重に対してより変形しないようになる。
【0038】
ここで、ボトル1の運搬・保管中においては、ボトル1にはトップロードFがかかる(参照:図1,5)。トップロードFがかかった場合、ボトル1の断面が急激に変化しているところで応力集中が起きる。図5に示す比較例の場合、窪み部80´の下側部分であるエリアS1のところで大きな応力集中が起きる。トップロードFがある大きさとなるまではエリアS1の下側部分の点々模様部分S3が膨らむように変形する。これは、比較例に係る窪み部80´の上側底面82及び下側底面87´は、横断周リブ102´,106´のために強度が強い面となっていて、その変形が十分に抑制されているからである。点々模様部分S3が膨らんでしまうと、ボトルを段ボール箱に詰めている場合に、点々模様部分S3で段ボール箱に胴膨れが生じてしまい、運搬・保管に支障をきたすことになる。また、トップロードFがある大きさを超えると、点々模様部分S3が一気に不可逆に変形するようになる。
【0039】
これに対し、図4及び図6に示す本実施形態に係るボトル1では、分断周リブ106を用いて、窪み部80の下側第1底面84及び下側第2底面86の強度を比較例よりも下げている。また、境界線88を用いて、下側第2底面86が下側第1底面84の延長線上よりもボトル内方に位置するようにしている。その結果、所定値以上のトップロードFがかかった場合、図6(b)及び(c)に示すように、下側第1底面84及び下側第2底面86が境界線88を起点として境界線88に沿ってボトル外方へと屈曲するように構成されている。すなわち、所定値以上のトップロードFがかかった場合、下側第1底面84と下側第2底面86との間の角度が狭まって境界線88がボトル外方へと張り出すように、下側第1底面84及び下側第2底面86が屈曲変形する。この屈曲変形が起きたときに、上記のエリアS1で集中していた応力が解放される。これにより、比較例のように窪み部80の周辺部分(点々模様部分S3)が膨らむことが抑制されるため、段ボール箱に胴膨れが生じることが抑制される。
【0040】
ここで、本実施形態に係るボトル1では、トップロードFによって下側第1底面84及び下側第2底面86が屈曲変形した場合、トップロードFが解放されても、下側第1底面84及び下側第2底面86は元の状態には弾性復元せず、屈曲変形した状態が維持される。したがって、下側第1底面84及び下側第2底面86を屈曲変形させる量については、屈曲変形後に商品価値を低下させない程度に設定する必要がある。そのような設計値の一例を挙げると、屈曲変形前の境界線88と仮想上の線L1との距離を1mmで設計した場合には、屈曲変形後の当該距離を3mmとすることが好適である。なお、これらの寸法は適宜設計することができる。
【0041】
以上説明した本実施形態のボトル1の作用効果を説明する。
【0042】
くびれ部40及び窪み部80が複数のリブ(横断周リブ100、104、分断周リブ102、106)によって補強されているので、使用時に、消費者がくびれ部40を掴んで窪み部80に指を入れたときにこれらが撓むような変形が抑制される。これにより、ボトル1を大型にし、軽量化した場合であっても、持ち易さ・注ぎ易さといったユーザビリティが実感されるような強度を確保することができる。
【0043】
また、このようなユーザビリティのために必要な強度を窪み部80にもたせつつ、窪み部80の下側第1底面84及び下側第2底面86については、分断周リブ106の非連続部分を設定することで、その強度を必要以上に大きくしないようにし、トップロードFに対して有効に対応する柔軟性(可動性)をもたせている。加えて、下側第1底面84及び下側第2底面86は、トップロードFの作用時に意図した方向に屈曲するように、両者の角度を変えてその間に境界線88を位置させている。
【0044】
このようなボトル1によれば、実際にトップロードFがかかった場合、下側第1底面84と下側第2底面86とが境界線88に沿って屈曲変形し、これにより、局所的に集中していた応力が解放されることとなる。これにより、窪み部80周辺の不可逆な変形や段ボール箱の胴膨れの問題を解消し、全体として座屈強度が向上したようなボトル1となる。また、このような意図した屈曲変形は、トップロードFがかかった場合の安定した変形をもたらすため、不規則な変形による商品価値の低下を防止することができる。加えて、トップロードFが解放されたときには、下側第1底面84及び下側第2底面86について、商品価値を低下させない程度に屈曲変形した状態を維持することができる。また、トップロード以外の荷重、例えば、ボトル1又はボトル1を詰めた段ボール箱が落下することによる衝撃荷重がボトル1に加わった場合であっても、下側第1底面84と下側第2底面86とが境界線88に沿って屈曲する上述の安定した変形をもたらすことができ、不規則な変形による商品価値の低下を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態では、窪み部80に関して、上側底面82と下側第1底面84とを横断周リブ104によって区画しているため、トップロードFがかかった場合に下側第1底面84が上側底面82とは独立してボトル外方に変形するような挙動をとり得る。これにより、下側第1底面84の下側第2対面86に対する屈曲変形がスムーズに行われ易くなる。
【0046】
さらに、窪み部80の底面が延在方向の異なる複数の面(82,84,86)で形成されるため、使用時に、消費者が窪み部80に指を挿入したときのフィット感を向上させ、持ち易さ・注ぎ易さを実感させることができる。しかも、トップロードFがかかった場合に屈曲変形させる面として、屈曲変形させていく方向に指向した傾斜面(84,86)としているため、その屈曲変形がよりスムーズに行われ易くなる。
【0047】
なお、上側底面82、下側第1底面84及び下側第2底面86の柔軟性については、設計の際、分断周リブ102、106の非連続部分の大きさ(分断している長さ)で調整することができるとともに、分断周リブ102、106のリブ部分の断面形状で調整することもできる。また、分断周リブの数を増減することによっても、調整することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態に係るボトル200について説明する。第1実施形態のボトル1との相違点は、凹状のリブ210を境界線88に沿って形成した点である。第1実施形態と同一の構成については、適宜同一の符合を付して、説明を省略する。
【0049】
リブ210は、窪み部80の底部から窪み部80の傾斜面94,96を超えて窪み部80の外側にまで延在している。ここでは、リブ210の両端は、分断周リブ106のリブ部分の両端上部106a,106aにまで達している。リブ210の断面形状は、例えばR5の円弧からなる。また、リブ210の大きさは、横断周リブ100、104及び分断周リブ102、106の大きさよりも十分に小さく、リブ210による補強効果は、これら横断周リブ100、104及び分断周リブ102、106による補強効果よりもはるかに小さいものとなっている。
【0050】
本実施形態によれば、第1実施形態よりも、トップロードFがかかった場合の下側第1底面84及び下側第2底面86の屈曲変形がより容易に行われるようになる。これは、境界線88上のリブ210によって、屈曲の起点がより明確となるためである。
【0051】
なお、本実施形態の場合には、第1実施形態よりも、屈曲変形前の境界線88と仮想上の線L1との距離を短くすることができ、例えば0.5mmとすることができる。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、胴部4の横断面形状を長方形とすることができる。また、窪み部80の底面に2以上の境界線を上下に形成し、2以上の箇所でトップロード作用時の応力を一度に又は段階的に解放するようにしてもよい。さらに、境界線の位置は2つの傾斜面の間でなくてもよく、一方の面が垂直面であってもよい。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1:ボトル、 4:胴部、 40:くびれ部、 42:上側胴部、 44:下側胴部、 80:窪み部、 82:上側底面(第3底面)、 84:下側第1底面(第1の底面)、 86:下側第2底面(第2の底面)、 88:境界線、 100:横断周リブ(第2の横断周リブ)、 102:分断周リブ、 104:横断周リブ(第1の横断周リブ)、 106:分断周リブ、 210:凹状のリブ、 F:トップロード、 L1:仮想上の線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8