特許第6192506号(P6192506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192506
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   G05D1/02 L
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-239481(P2013-239481)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-99518(P2015-99518A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】松本 高斉
(72)【発明者】
【氏名】白根 一登
(72)【発明者】
【氏名】槙 修一
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−276754(JP,A)
【文献】 特開2013−020345(JP,A)
【文献】 特開2012−194517(JP,A)
【文献】 特開2012−234449(JP,A)
【文献】 特開2006−111381(JP,A)
【文献】 特開平09−034548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と環境中の物体との距離、および、前記移動体から前記環境中の物体への方向を測定するセンサ部と、
前記センサ部が測定したデータを元に得られた前記環境中の物体の幾何形状データと、前記環境中の物体の地図データのマッチングを取ることによって、前記移動体の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、
入力された位置を含む範囲であって前記位置姿勢推定部が前記マッチングを取る際に前記移動体の位置および姿勢を推定する範囲である探索範囲を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記マッチングが失敗した際に、探索に失敗した前記探索範囲を表示し、
前記表示部は、前記探索範囲が設定された際にその範囲を探索するために必要な探索時間を表示する探索時間表示エリアを有することを特徴とする移動体。
【請求項2】
移動体と環境中の物体との距離、および、前記移動体から前記環境中の物体への方向を測定するセンサ部と、
前記センサ部が測定したデータを元に得られた前記環境中の物体の幾何形状データと、前記環境中の物体の地図データのマッチングを取ることによって、前記移動体の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、
入力された位置を含む範囲であって前記位置姿勢推定部が前記マッチングを取る際に前記移動体の位置および姿勢を推定する範囲である探索範囲を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記マッチングが失敗した際に、探索に失敗した前記探索範囲を表示し、
前記表示部は、許容探索時間の入力を受け付ける許容探索時間入力エリアを有し、
前記探索範囲は、その範囲を探索するために必要な探索時間が前記許容探索時間以下となるように設定されることを特徴とする移動体。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記探索範囲は、矩形であることを特徴とする移動体。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つにおいて、
前記表示部は、前記環境の地図を、通路領域と部屋領域が区別できる態様で表示することを特徴とする移動体。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記表示部は、前記入力を受け付けるタッチパネルであることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体に関する。より具体的には、当該移動体の位置および姿勢を推定する機能を持つ移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に関する背景技術として、特許文献1には、予め地図情報や障害物情報を認識させておき、タッチパネル上にて目的地等設定することで自律移動が可能な自律移動装置ついての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-316799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人搬送車等、所定の経路に沿って走行する移動体が、自身の位置を認識できない状態に陥って脱線した場合、あるいは電源がオフで位置を認識できない状態のまま別の場所に運ばれた場合等においては、走行可能な状態に復帰するために、初期位置および初期姿勢の推定を行う必要がある。この推定は、ユーザによって入力された移動体のおよその位置(位置・姿勢の探索の基準の位置)を含む範囲を探索範囲として行うこととなる。ここで、例えば工場で似たような光景が多数ある環境や、またはユーザが不慣れな環境である等の理由により、ユーザが適切に移動体のおよその位置を入力できない場合がありえる。このような場合に、より短時間で走行可能な状態に復帰するための技術については、特許文献1には、何ら記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明による課題を解決する手段のうち代表的なものを例示すれば、移動体であって、移動体と環境中の物体との距離および移動体から環境中の物体への方向を測定するセンサ部と、センサ部が測定したデータを元に得られた環境中の物体の幾何形状データと環境中の物体の地図データのマッチングを取るによって移動体の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、入力された位置を含む範囲であって位置姿勢推定部がマッチングを取る際に移動体の位置および姿勢を推定する範囲である探索範囲を表示する表示部と、を有し、表示部が、マッチングが失敗した際に、探索に失敗した探索範囲を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ユーザが、過去の探索範囲の履歴を確認しながら基準位置を指定できるようになるため、基準位置の指定を誤る可能性が減り、ひいては迅速に走行可能な状態に復帰できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る移動体の構成を示す模式図である。
図2】実施例1に係る移動体の動作を示すフローチャートである。
図3】実施例1に係る移動体が配置される環境を示す模式図である。
図4】実施例1に係る移動体による初期位置および初期姿勢の推定が成功と判断される例を示す模式図である。
図5】実施例1に係る移動体による初期位置および初期姿勢の推定が失敗と判断される例を示す模式図である。
図6】実施例1に係る移動体による初期位置および初期姿勢の推定が失敗と判断された後に成功と判断される例を示す模式図である。
図7】実施例2に係る移動体の表示部を示す模式図である。
図8】実施例3に係る移動体の表示部を示す模式図である。
図9】実施例4に係る移動体の構成を示す模式図である。
図10】実施例4に係る移動体の、探索範囲設定の動作を示すフローチャートである。
図11】実施例4に係る移動体の表示部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
移動体の1つの例として、以下では車輪による移動機構を備えるロボットにおける発明の実施について、図1で述べる。ロボット0101は、コントローラ部0102、移動機構部0103、距離センサ部0104、距離センサ制御部0105、位置姿勢推定部0106、経路計画部0107、移動機構制御部0108、地図データ0109、経路データ0110、表示部0111、探索範囲履歴データ0112、入力表示制御部0113から構成される。また、ここでは図示していないが、例えば筐体、電源・配線等ハードウェアやOSや各種ファームウェア等基本的なソフトウェアのように各部が連携し、動作するために必要なものは備わっているものとする。
【0009】
また、ここでは、コントローラ0102内の各部についてはソフトウェア、他はハードウェアとしての実装を想定しているが、コントローラ0102内の各部についてハードウェアとして実装してもよい。また、距離センサ部0104と移動機構部0103を除く各部については、通信が可能ならば部分的に遠隔地にあってもよい。また、以上の各部をなすハードウェアやソフトウェアは、実施形態に応じた取捨選択を行ってもよい。
【0010】
まず、通常の自動走行時におけるロボット0101内の処理について述べる。ロボット0101は、距離センサ制御部0105により、距離センサ部0104に、環境を計測させることで、移動体と環境中の物体の距離および移動体から環境中の物体への方向からなる距離データを得る。ここでは、距離センサ部0104として、レーザ距離センサを用いるものとする。このレーザ距離センサは、レーザを照射してから、照射したレーザが環境中の物体により反射してセンサに返ってくるまでの時間を計測することで、センサから物体までの距離を計測するレーザ照射部を備えており、このレーザ照射部を一定の回転角毎に回転させながら計測することで、回転角度の範囲内にある物体までの距離の計測(以下、スキャン)が可能であるとする。今、このスキャンが平面内で行われるとすると、スキャンによりレーザがなす平面(以下、スキャン面)上におけるセンサから物体のまでの距離と方向が得られることとなる。このときに得られる各方向におけるセンサと物体間の距離のデータとレーザを照射した方向データを組としたデータを、ここでは単に距離データと呼ぶものとする。
【0011】
この距離データは、距離と方向のデータを組として記録されているため、センサを基準とした位置のデータに変換することができる。このようにして距離データを位置のデータに変換したものをここでは幾何形状データと呼ぶものとする。ここでは、レーザ距離センサのスキャン面が床面に平行となるようにロボットに取り付けられており、レーザ距離センサのスキャン面の高さでの幾何形状データが得られるものとする。
【0012】
得られた幾何形状データは位置姿勢推定部0106に送られる。位置姿勢推定部0106には、スキャン面の高さでの環境の幾何形状を画像として記録した地図データ0109が予め読み込まれている。この地図データ0109の画素には、物体の有無が記録されており、物体が存在することが記録された画素(以下、物体存在画素)に対して、画像状に表わされた幾何形状データ内の物体存在画素が最も重なり合うときの地図データ上での幾何形状データの位置・姿勢を探索する処理(以下、マッチング)が行われる。これにより、幾何形状データと地図データ0109が最も重なりあうときの地図データ0109の座標系での幾何形状データの位置・姿勢が求まる。これは、直接的には距離センサ部0104のレーザ照射部の位置・姿勢に相当するが、ロボットの位置・姿勢を表す際にはロボットの筐体のどこを基準としてもよいため、ここでは、得られた距離センサ部0104の位置・姿勢をもってロボット0101の位置・姿勢とする。
【0013】
続いて、経路計画部0107に処理が進み、予め設定された経路データ0110と位置姿勢推定部0106で得られたロボットの現在の位置・姿勢より、自動走行する際の目標位置・姿勢の算出が行われる。
【0014】
続いて、移動機構制御部0108では、算出された目標位置・姿勢とロボット0101の現在の位置・姿勢とのずれを小さくするように移動機構部0103の制御、すなわち、車輪の回転速度やステアリングの切れ角などが求められ、さらにモータ等への指示が行われる。以上により、ロボットの経路への追従、ひいては目的地までの自動走行が実現される。
【0015】
このロボットが、メンテナンス等で電源がオフにされた状態のまま移動され、別の場所で電源をオンとされた場合、あるいは偶発的に生じた通信のトラブル等で位置姿勢推定が行えないままに一定距離を走行したところで停止した場合などのように、自身の位置・姿勢を把握していないロボットを走行すべき経路に復帰させる場合を考える。
【0016】
このような場合、ロボットは初期位置および初期姿勢の推定(初期位置姿勢推定)を行う必要がある。これは、ロボットの動作開始時に行う位置および姿勢の推定を指す。
【0017】
この処理では、まず、入力表示制御部0113により、表示部0111に地図が表示される。ここでの表示部0111としてはタッチパネルを想定するが、ディスプレイとマウスを組み合わせる等他の表示・操作入力装置を用いてもよい。このタッチパネル上に表示された環境の地図において、ユーザがロボットのおよその位置を画面へのタッチ等によって指定すると、指定された位置を含むマッチングの探索範囲が設定・表示される。続いて、設定された探索範囲に移動体が位置すると仮定し、任意の姿勢を取っているとした際の幾何形状データと地図データとのマッチングにより初期位置および初期姿勢の推定が行われる。
【0018】
この初期位置および初期姿勢の推定の結果の成否については、マッチングにおける幾何形状データと地図とが重なる割合によって行われ、成功と判断された場合は、前述の自動走行において定期的に行われる位置姿勢推定(以下、通常位置姿勢推定)に進むこととなる。
【0019】
一方、失敗したと判断された場合、再度、探索範囲を指定した上で初期位置および初期姿勢の推定をやりなおすこととなる。ここで、本実施例に係る移動体は、入力表示制御部0113により、探索に失敗した探索範囲(以下、探索範囲履歴)が表示された状態で探索範囲を指定することを特徴とする。これにより、初期位置および初期姿勢の推定が失敗する探索範囲を避けながら探索範囲を設定することが可能となる。その後、あらためて初期位置および初期姿勢の推定を行い、成功した場合は、通常位置姿勢推定に処理が進む。以上により、ロボットが環境中における自身の位置・姿勢を把握した状態になり、自動走行が可能となる。なお、成功したと判断された際の表示態様については、本実施例に係る発明は、特に限定しない。すなわち、本実施例に係る移動体は、少なくとも失敗したと判断された際に上記表示を行っていれば良く、成功した際に探索範囲を表示する移動体も、表示しない移動体も、その技術的思想の範囲に含むものである。
【0020】
続いて、具体的なシチュエーションを設定し、その状況でのロボット0101の動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。具体的なシチュエーションとしては、図3に示されるような環境において、図中の位置にてロボットを起動して自動走行させることを想定する。
【0021】
まず、コントローラ0102が起動されると(0201)、図1の各部の初期化として、距離センサや移動機構等ハードウェアのリセット、コントローラ内のOSやロボット用ソフトウェアの起動などが行われる(0202)。
【0022】
続いて、位置姿勢推定部0106の処理として、地図データ0109が読み込まれる(0203)。なお、ここでの地図データ0109は画像データとなっており、各画素の位置が座標に対応し、各画素の画素値に環境中の物体の存在の有無が記録されているものとする。
【0023】
続いて、初期位置および初期姿勢の推定が完了しているかの確認が行われ(0204)、完了していない場合は探索範囲設定処理(0210)に移り、表示部0111に相当するタッチパネルに、地図データが表示される(0217)。今、図3において、左下がりの斜線による領域0301が障害物の存在領域を表わすとき、障害物の存在領域の外縁が図4の0401で表わされる物体存在画素としてタッチパネルに表示される。また、この表示に関する処理0217においては、過去の探索範囲が履歴として残っている場合はそれも表示されるが、この例における、この時点においては過去の探索範囲はまだ表示されていないものとする。なお、座標系0302は、位置姿勢推定を行った際に得られる位置・姿勢の基準となる座標系の取り方を便宜上書き記しているが図3のように表示されてもされなくてもよい。
【0024】
ユーザがこの地図0401を確認し、画面へのタッチにより、ロボットのおよその位置0406を指定すると、位置0406を中心とする矩形による探索範囲0407が設けられ、タッチパネルに表示されると共に探索範囲の位置・形状は探索範囲履歴データ0112として記録される(0218)。
【0025】
探索範囲設定処理(0210)に続いて、レーザ距離センサによる計測が行われる。今、レーザ距離センサ0306を備えるロボット0305が位置0307に配置されているとすると、図3のスキャン範囲0304に相当する環境の幾何形状データ0303が得られる(0211)。なお、スキャン範囲0304のうち、太い点線で表わされる部分が、障害物にレーザが反射して、幾何形状データ0303として得られる部分となる。
【0026】
続いて、幾何形状データと地図データを用いた初期位置および初期姿勢の推定が行われる(0212)。位置および姿勢の推定は前述の通り、位置姿勢推定部0106にて、幾何形状データと地図データのマッチングにもとづき行われる。
【0027】
今、地図データ0401に対して、ロボット0305が図3の位置・姿勢でスキャンすることで得られた幾何形状データ0402のマッチングを行い、ロボット0305の位置・姿勢を推定する場合を考える。
【0028】
マッチングでは、ユーザの指定にもとづいて設けられた探索範囲0407において、幾何形状データ0402がとりうる位置・姿勢で幾何形状データ0402と地図データ0401とが重なる割合を評価し、重なる割合が最大となるときの位置・姿勢を求める。
【0029】
具体的には、例えば、図4の位置0405で、かつ位置0405から伸びる矢印の姿勢において、幾何形状データ0402を地図データ0401に重ね合わせたとすると、図4のような重なり方となる。
【0030】
このとき、例えば0403の範囲に着目すると、地図データ0401は、物体存在画素0409と物体が存在しないことを示す画素0411からなる画像で表されており、また、この画像に対して幾何形状データ0402をなす物体存在画素0410で表される。このとき、幾何形状データ0402をなす物体存在画素0410は、0408で地図データ0401の物体存在画素0409と重なり合っており、この場合、この画素はマッチしたものとみなされる。このようにマッチする物体存在画素の数をカウントしておき、幾何形状データをなす物体存在画素の総数に対するマッチした物体存在画素の数、すなわち地図データにマッチした幾何形状データの割合が最大となるときの幾何形状データの位置・姿勢を探索範囲内にて求める。
【0031】
この図4においては、幾何形状データ0402が、位置0404にて、かつ、この位置0404から伸びる矢印の姿勢をとるときに地図データをなす物体存在画素0401と重なる割合(以下、評価値)が最大となり、マッチングの解、つまりはロボット0305の位置・姿勢が求められることとなる。
【0032】
評価値が閾値より大きい場合は、初期位置および初期姿勢の推定は成功と判断される。これに対し、閾値より小さい場合は失敗と判断され、探索範囲設定0210に戻ることなる(0214)。
【0033】
前述の例では、ユーザがロボットのおよその位置として、位置0406を指定しており、これにより設けられた探索範囲0407に解となる位置0404が含まれていたため、評価値は大きくなり、初期位置および初期姿勢の推定は成功と判断される。これに対して、ユーザが、ロボットのおよその位置として、図5の位置0501を指定した場合を考える。この場合、位置0501を基準に設けられる探索範囲0503に前述の解である位置0404が含まれていないため、幾何形状データは地図データに対して重なりあわず、例えば図5の0502のように重ならない状態での初期位置および初期姿勢の推定結果が得られることとなり、評価値は小さくなる。このとき、処理0210に戻ることになり(0214)、探索範囲設定を再度行うこととなる。ここで、本実施例に係る発明は、図6に示すように、再度の処理0210を行う際に、前回の探索範囲0503を表示部0111に表示することを特徴とする。これにより、ユーザが位置0501を基準として設けられた探索範囲0503に解がなかった点を踏まえ、表示されている探索範囲0503より離れた位置0505を指定することが容易となる。以上を踏まえ、再度の処理0210では探索範囲0504が設けられたとする。
【0034】
この場合は、前述の解である位置0404(0505)が探索範囲内となるため、前述のマッチングにより、評価値が高い解、すなわちロボットの位置・姿勢の推定結果(図6の0601)が得られることとなる。このとき、幾何形状データ0602は地図データ0603とマッチングした状態で表示され、正しく位置姿勢推定が行われていることが確認できる。なお、図6では幾何形状データ0602と地図データ0603を完全に重ね合わせると判読しづらくなるため、説明用としてややずらして表記している。
【0035】
このように、本実施例に係る移動体は、移動体と環境中の物体との距離および移動体から環境中の物体への方向を測定するセンサ部(0104)と、センサ部が測定したデータを元に得られた環境中の物体の幾何形状データと環境中の物体の地図データのマッチングを取ることによって移動体の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部(0106)と、入力された位置を含む範囲であって位置姿勢推定部がマッチングを取る際に移動体の位置および姿勢を推定する範囲である探索範囲を表示する表示部(0111)と、を有し、表示部は、マッチングが失敗した際に、探索に失敗した前記探索範囲を表示することを特徴とする。
【0036】
このような特徴によって、本実施例に係る移動体は、初期位置および初期姿勢の推定に失敗する探索範囲を誤って再指定してしまうことが減らせることとなり、ひいてはロボットを迅速に自動走行可能な状態にできることとなる。
【0037】
なお、位置姿勢推定プログラム0214にて位置・姿勢を算出する処理としては前述のようなマッチングの処理をここでは想定しているが、同様の効果が得られるならば他の方法であってもよい。例えばICP(Iterative Closest Point)等を用いてもよい。また、探索範囲の基準として位置のみを指定しているが、位置と姿勢、探索範囲形状を指定してもよい。また、設定した矩形をタッチしたままドラッグすることで、矩形の位置・姿勢、つまりは探索範囲の位置・姿勢が調整できるようになっていてもよい。
【0038】
以上のフローにより、初期位置および初期姿勢の推定が成功した場合は、レーザ距離センサによる幾何形状データの取得が行われ(0205)、初期位置および初期姿勢の推定と同等のマッチングにもとづく通常位置姿勢推定が行われる(0206)。これは前述の初期位置および初期姿勢の推定と同じ原理にもとづく位置姿勢推定であるが、探索範囲は直前の推定位置・姿勢をもとに自動的に設定される点で異なっている。
【0039】
その後、通常位置姿勢推定の結果をもとに経路計画(0208)として、現在位置から所定の経路に沿って自動走行するための目標位置・姿勢の算出が行われ、移動機構制御が行われる(0209)。なお、通常位置姿勢推定0206から移動機構の制御0209までの処理の間にて終了の操作入力があった場合(0207)、自動走行が停止され、ハードウェア・ソフトウェアの終了処理が行われ、プログラムが終了となる(0215)。
【実施例2】
【0040】
実施例1の探索範囲設定0210について、別の方法を示す。実施例1において、初期位置および初期姿勢の推定に際しては、タッチパネル上に表示された地図上にて、ユーザによる画面へのタッチによって指定された位置を基準として矩形による探索範囲が設定された。ここでは、矩形以外の任意の形状による探索範囲を設定可能なものとする。
【0041】
具体的には探索範囲設定0210の際に、図形の頂点の位置を入力すると任意の形状が描かれ、この形状が探索範囲として設定される機能を備えるものとする。これにより、例えば、図7の探索範囲0701のように、任意形状で探索範囲を設定することが可能となる。また、探索範囲は、複数個所設定可能なものとし、図7での探索範囲0701に加えて、探索範囲0703を追加することが可能なものとする。
【0042】
また、設定された探索範囲において、初期位置および初期姿勢の推定に要する時間を算出し、表示を行う。この時間は、多角形の面積の公式より得られた探索範囲の面積に単位面積当たりの探索時間を乗じることで求める。なお、算出された時間は図7の探索時間表示エリア0702に表示される。
【実施例3】
【0043】
実施例1の探索範囲設定0210について、別の方法を示す。具体的には、図8のように、タッチパネル上に地図と共に表示される許容探索時間入力エリア0802にユーザが時間を入力すると、許容探索時間に応じた大きさの探索範囲0801が表示され、ユーザがこの探索範囲を、ロボットのおよその位置を含む位置にドラッグ等で移動させることで、探索範囲を設定するものとする。これにより、許容探索時間を大きくするほど、時間はかかるものの、探索範囲履歴を見ながら探索範囲の設定をやり直す可能性が減ることとなる。なお、実施例1の探索範囲の履歴の表示と組み合わせて実施してもよい。
【実施例4】
【0044】
実施例1〜3においては、ユーザがタッチパネルに表示されている地図上において、ロボットのおよその位置を指定していた。しかし、このような指定を実効的なものとするためには、ユーザ自身が地図上のおよその位置をある程度把握している必要がある。この場合、その場所に詳しくないユーザにとってはロボットの位置の指定が困難となる。これを踏まえ、ロボットのおよその位置の指定をより簡単に行う方法について述べる。
【0045】
このときのロボットの構成を図9に示す。基本構成は図1と同様であるが、領域別探索範囲データ・位置姿勢履歴データ0901が追加されている。また、探索範囲設定0210は図10の処理に変更されているものとする。
【0046】
処理1001では、領域別探索範囲データ・位置姿勢履歴データ0901が読み込まれる。ここで、領域別探索範囲データとは、地図上において、ユーザが、地図上に設定した領域に部屋や通路などの名前をタグ付けしたデータであり、探索範囲として指定可能となっている。
【0047】
また、同時に読み込まれた位置姿勢履歴データが含まれる領域の検索が行われ、これに該当する領域が探索範囲として設定された状態となる(1002)。
【0048】
続いて、タッチパネル上に地図などが表示される。これを図11に示す。画面には、地図に加えて、領域別探索範囲データに記録されていた通路領域1101や部屋領域1103が区別して表示されている。また、同時に読み込まれた位置姿勢履歴データをもとに直前の位置・姿勢が1102として表示されている。
【0049】
ここで、ユーザが、ロボットが少なくとも通路上にあると判断できる場合はこのまま位置姿勢推定を開始する。通路上になく、例えば部屋内にあると判断できる場合は、部屋を探索範囲として選択し(1004、1005)、初期位置および初期姿勢の推定を行う。なお、ここでの通慮領域や部屋領域といった探索範囲と対応づけた探索範囲の候補のリストを、図11右側のように表示し、1105〜1109のような領域に対応する名前のリストからロボットが含まれる領域の名前を選択することで探索範囲が設定されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
0101:ロボット、0102:コントローラ部、0103:移動機構部、0104:距離センサ部、0105:距離センサ制御部、0106:位置姿勢推定部、0107:経路計画部、0108:移動機構制御部、0109:地図データ、0110:経路データ、0111:表示部、0112:探索範囲履歴データ、0113:入力表示制御部、0201〜0214:フローチャート、0301:障害物の存在領域、0302:地図に設定された座標系、0303:幾何形状データ、0304:スキャン範囲、0305:ロボット、0306:レーザ距離センサ、0307:位置、0401:地図データ、0402:幾何形状データ、0403:範囲、0404:位置、0405:位置、0406:位置、0407:探索範囲、0408:画素、0409:物体存在画素、0410:物体存在画素、0411:画素、0501:位置、0502:推定結果、0503:探索範囲、0504:探索範囲、0505:位置、0601:推定結果、0602:幾何形状データ、0603:地図データ、0701:探索範囲、0702:探索時間表示エリア、0703:探索範囲、0801:探索範囲、0802:許容探索時間入力エリア、0901:位置姿勢履歴データ、1001〜1005:フローチャート、1101:通路領域、1102:位置・姿勢、1103:部屋領域、1105:領域に該当する名前のリスト,1106:領域に該当する名前のリスト。
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