(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
背中を支える背もたれ部と、前記背もたれ部の上部に一体に成形されて頭部を支えるヘッドレスト部と、前記ヘッドレスト部の裏面側に張り出して前記ヘッドレスト部と一体に形成されることで下向きに開口する袋状の中空部を形成する上部張出部とを備えるシートバックパッドの製造方法であって、
前記背もたれ部および前記ヘッドレスト部の表面側を成形する下型に前記シートバックパッドの液状原料を注入する原料注入工程と、
前記原料注入工程により液状原料が注入された下型に対して上型を型閉じすると共に、前記上型と前記下型との間に前記中空部を成形するコア部を有する中型を配置して発泡成形する成形工程と、
前記成形工程により発泡成形されたヘッドレスト部および上部張出部を前記コア部から引き抜いて脱型する脱型工程とを備え、
前記コア部は、前記ヘッドレスト部および前記上部張出部が成形される成形面の少なくとも一方に、空気を流入させるために凹設または凸設されるリーク部を備え、
前記リーク部は、前記ヘッドレスト部および前記上部張出部を前記コア部から引き抜くときの引抜方向に対して斜交する方向に延びる突条状または凹溝状に形成されていることを特徴とするシートバックパッドの製造方法。
前記上部張出部は、前記ヘッドレスト部および前記上部張出部を前記コア部から引き抜くときの引抜方向の長さが、前記ヘッドレスト部と前記背もたれ部とを合わせた引抜方向の長さより小さく設定されており、
前記リーク部は、少なくとも前記上部張出部が成形される成形面に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシートバックパッドの製造方法。
前記リーク部は、前記ヘッドレスト部および前記上部張出部を前記コア部から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、前記引抜方向に対して変化する形状に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートバックパッドの製造方法。
【背景技術】
【0002】
車両や船舶、航空機等の乗物に装備される座席や家具等の椅子などにおいて、軟質ポリウレタンフォームや半硬質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂製の軟質フォームによって成形されるシートバックパッドがある。このシートバックパッドは、金属製等のフレームに組み付けられると共に表皮材によって表面が覆われて、背中を支える背もたれ部が作られる。この種のシートバックパッドとして、例えば特許文献1に、頭部を支えるヘッドレスト部と背もたれ部とが軟質フォームにより一体に形成されるものが開示されている。以下、
図7から
図12を参照して、特許文献1に開示される技術について説明する。
【0003】
まず
図7から
図10を参照して特許文献1に開示されるシートバックパッドについて説明する。
図7はシートバックパッド201の正面図であり、
図8は正面側から視たシートバックパッド201の斜視図であり、
図9は背面側から視たシートバックパッド201の斜視図であり、
図10(a)は
図7のXa−Xa線におけるシートバックパッド201の断面端面図であり、
図10(b)は
図7のXb−Xb線におけるシートバックパッド201の断面図である。
【0004】
図7及び
図8に示すようにシートバックパッド201は、乗員の背中を支える背もたれ部202と、背もたれ部202の上部に位置して乗員の頭部を支えるヘッドレスト部203とを備え、それらが一体に軟質フォームで成形されるハイバック仕様のシートパッドである。シートバックパッド201は、自動車のフロントシートの背もたれ部として用いられる。
【0005】
図9に示すようにシートバックパッド201は、ヘッドレスト部203及び背もたれ部202の上縁からヘッドレスト部203及び背もたれ部202の裏面(背面)側に張り出す上部張出部204と、背もたれ部202の左右両側縁部から背もたれ部202の裏面(背面)側に張り出す側部張出部205とを備えている。上部張出部204は、ヘッドレスト部203の裏面側の全体を覆うと共に背もたれ部202の上部側(一部)を覆うように設けられている。側部張出部205は、背もたれ部202の裏面側の左右両側(一部)を覆うように設けられ、上部張出部204の下部両側縁に上端が連成される。上部張出部204と側部張出部205との境界部分に、上部張出部204及び側部張出部205の内縁から左右外側に向かって延びる切込部206が形成されている。なお、背もたれ部202の裏面には不織布等の補強布が積層一体化されるが、便宜上、補強布は図示を省略する。
【0006】
図10(a)に示すようにシートバックパッド201は、上部張出部204がヘッドレスト部203の全体および背もたれ部202の上部を裏面側から覆うので、
図10(a)及び
図10(b)に示すようにヘッドレスト部203及び上部張出部204によって下向き(
図10(a)下側)に開口する袋状の中空部207が形成される。上部張出部204及び側部張出部205とヘッドレスト部203及び背もたれ部202との間に形成される中空部207は、フレーム(図示せず)が装着される部位である。自動車の車体(図示せず)に設けられたフレームが中空部207に装着されることによって、シートバックパッド201が車体に固定される。
【0007】
次に
図11及び
図12を参照してシートバックパッド201の製造方法について説明する。
図11に示すようにシートバックパッド201は、合成樹脂材料(軟質フォームの液状原料)が成形型210の内部で発泡することにより成形される。成形型210は、シートバックパッド201の表面側を成形する成形面211aが形成された下型211と、下型211の一辺に配設されたヒンジ部212を介して下型211に対して回動可能に構成される上型213とを備えている。上型213は、シートバックパッド201の裏面側を成形する成形面213aが形成されており、上型213と下型211との間に中型214が配置されている。
【0008】
中型214は、背もたれ部202(
図10(a)参照)の裏面側を成形する成形面214aが形成されており、中空部207を形成するコア部215が突設されている。コア部215は、下型211の成形面211aとの間でヘッドレスト部203を成形する成形面215aと、上型213の成形面213aとの間で上部張出部204を成形する成形面215bとを有している。中型214は、上型213に設けられた駆動装置216により上型213に対して相対移動可能に設けられており、駆動装置216を駆動させることにより上型213から着脱される。
【0009】
この成形型210を用いてシートバックパッド201を製造するには、まず、成形型210を型開きし、駆動装置216を駆動して中型214を上型213から離脱させる。補強布(図示せず)を中型214に被せ、ピン等で固定する。次いで、駆動装置216を駆動して上型213に中型214を密着させる。次に、下型211に合成樹脂材料(液状原料、図示せず)を注入した後、下型211に対して上型213を型閉じする。合成樹脂材料を成形型210内で発泡させ、所定の時間キュアしてシートバックパッド201が成形される。
【0010】
図12に示すようにシートバックパッド201の成形後、下型211に対して上型213を型開きし、駆動装置216を駆動して中型214を上型213から離脱させる。次いで、シートバックパッド201を中型214から矢印L方向に示す方向(以下「引抜方向」と称す)に引き抜いて脱型する。成形直後、コア部215の成形面215a,215b(
図11参照)とヘッドレスト部203及び上部張出部204(中空部207)とは密着しているので、ヘッドレスト部203及び上部張出部204をコア部215から引き抜くときには、コア部215の成形面215a,215bとヘッドレスト部203及び上部張出部204との間が負圧になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して第1実施の形態について説明する。なお、背景技術において説明したシートバックパッド201(
図7から
図10参照)及び成形型210(
図11及び
図12参照)と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1(a)は第1実施の形態におけるシートバックパッド1及びその成形型10を背面側から視たシートバックパッド1及び成形型10の脱型前の模式図であり、
図1(b)は側面側から視たシートバックパッド1及び成形型10の脱型前の模式図である。
【0025】
図1(a)及び
図1(b)に示すようにシートバックパッド1は、頭部を支えるヘッドレスト部3及びその背面側に配置された上部張出部4を備え、それらヘッドレスト部3及び上部張出部4に囲まれた袋状の中空部207を有している。シートバックパッド1を成形する成形型10は、中型214に突設されるコア部215の成形面215a,215bにそれぞれリーク部11が設けられている。リーク部11は、脱型時に中空部207内が負圧になるのを防ぐため、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くときに中空部207内に空気を流入させるための部位である。
【0026】
本実施の形態では、リーク部11は、成形面215a,215bにそれぞれ2本ずつ突設されており、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くときの引抜方向(
図1(a)及び
図1(b)矢印L方向)に対して斜交する方向に延びる突条状に各々が形成されている。なお、引抜方向に対するリーク部11の角度(引抜方向に対するリーク部11の交わる角度)は5〜30°程度の一定値に設定されている。即ち、リーク部11は、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くときの引抜方向(矢印L方向)と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する形状に設定されている。換言すれば、引抜方向(矢印L方向)と直交するリーク部11の直交断面が、引抜方向の各位置において異なるようにリーク部11が形成されている。
【0027】
また、リーク部11は、短手方向断面が矩形状に形成されており、各成形面215a,215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。さらに、リーク部11は、湾曲面として形成されたコア部215の先端部(
図1(b)上側部分)を除いて、コア部215の基部(
図1(b)下側部分)から先端部までの成形面215a,215bの平面部分に亘って突設されている。なお、リーク部11は、引抜方向(矢印L方向)に対して斜交する方向に延びる突条状に形成されているので、リーク部11に倣ってヘッドレスト部3及び上部張出部4に、引抜方向(矢印L方向)に対して斜交する方向に延びる凹溝1a(
図2(a)参照)が形成される。
【0028】
次に
図2を参照して、シートバックパッド1の脱型時の状態について説明する。
図2(a)は背面側から視たシートバックパッド1及び成形型10の脱型時の模式図であり、
図2(b)は側面側から視たシートバックパッド1及び成形型10の脱型時の模式図である。
【0029】
図2(a)及び
図2(b)に示すようにシートバックパッド1の脱型時には、シートバックパッド1をコア部215から引抜方向(矢印L方向)に引き抜く。上部張出部4及びヘッドレスト部3は、断面矩形状に凸設されたリーク部11に倣って凹溝1aが成形されるので、その凹溝1aの端部がリーク部11の下端部(角部)にそれぞれ引っ掛かって、凹溝1aがリーク部11を乗り越えるときに上部張出部4及びヘッドレスト部3がコア部215の成形面215a,215bに対して浮き上がる。
【0030】
さらに、ヘッドレスト部3及び上部張出部4をコア部215に対して引抜方向(矢印L方向)に移動させると、引抜方向(矢印L方向)に対して斜交する方向に延びる突条状のリーク部11と、ヘッドレスト部3及び上部張出部4に形成された凹溝1aとの間に、引抜方向(矢印L方向)と直交する方向(
図2(a)左右方向)に位置ずれが生じる。引抜方向に直交する方向の位置ずれ量は、コア部215に対するシートバックパッド1の引き抜きが進行すればするほど大きくなる。そのリーク部11と凹溝1aとの位置ずれによって、リーク部11を起点として隙間が形成される。その隙間を通じて中空部207に向かって上部張出部204の下端から空気を流入させることができる。
【0031】
その結果、中空部207の負圧を解消できるので、コア部215にシートバックパッド1が吸着して脱型作業の作業性が低下することを防ぎ、脱型作業を容易にできる。また、コア部215にシートバックパッド1が吸着することを防止できるので、脱型のときに上部張出部4が大きく変形することを防ぎ、切込部206(
図9参照)に亀裂が生じたり上部張出部4が損傷したりすることを防止できる。
【0032】
ここで、上部張出部4は、引抜方向(矢印L方向)の長さが、ヘッドレスト部3と背もたれ部202とを合わせた引抜方向の長さより小さく設定されている。また、リーク部11は、上部張出部4が成形される成形面215b及びヘッドレスト部3が形成される成形面215aに設けられている。仮に、ヘッドレスト部3が成形される成形面215aだけにリーク部11が設けられる場合、中空部207へ空気が流入するためには、背もたれ部202及びヘッドレスト部3を通じて隙間が形成されなければならない。これに対し、上部張出部4が成形される成形面215bにリーク部11が設けられているので、引抜方向の長さが短い分だけ隙間を形成し易くでき、上部張出部4から中空部207に空気を流入させ易くできる。その結果、上部張出部4の長さを利用して脱型作業を容易にできる。
【0033】
さらに、ヘッドレスト部3が形成される成形面215aにリーク部11が設けられているので、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くことで、ヘッドレスト部3とコア部215の成形面215aとに隙間を形成できる。その隙間を通じて空気を流入させることができるので、成形面215a,215bの両面から中空部207に空気を流入できる。その結果、成形面215a,215bの一方の面から空気を中空部207に流入させる場合と比較して、中空部207の負圧を解消する速度を大きくできる。
【0034】
また、リーク部11は、ヘッドレスト部3及び上部張出部4をコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する形状に設定されている。リーク部11の形状はシートバックパッド1に型取りされて凹溝1aが形成されるので、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くと、引抜方向と直交するリーク部11の直交断面が引抜方向に対して変化することにより、リーク部11と凹溝1aとに隙間を生じさせることができる。その隙間に沿って中空部207に空気を流入させることができるので、確実に脱型作業を容易にできる。
【0035】
また、リーク部11は成形面215a,215bに凸設されているので、リーク部11が成形面215a,215bに凹設される場合と比較して、脱型のときにシートバックパッド1とリーク部11との間に隙間を形成させ易くできる。一方、リーク部11が成形面215a,215bに凹設されている場合には、シートバックパッド1が弾性変形するとヘッドレスト部3や上部張出部4とリーク部11との隙間が埋まり易くなる。そうすると隙間に沿って中空部207に空気を流入させ難くなる。これに対し、リーク部11を成形面215a,215bに凸設させることで、ヘッドレスト部3や上部張出部4を成形面215a,215bに対して浮き上がらせて隙間を形成できる。シートバックパッド1の弾性変形によって隙間が埋まってしまうことを防止できるので、確実に脱型作業を容易にできる。
【0036】
また、リーク部11は、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くときの引抜方向に対して斜交する方向に延びる突条状に形成されているので、引抜方向に対してリーク部が直交する方向に延設される場合と比較して、小さい引抜抵抗で凹溝1aをリーク部11から離脱させることができる。その結果、リーク部11と凹溝1aとの間に容易に隙間を生じさせることができる。その隙間を通じて中空部207に空気を流入させることができるので、確実に脱型作業を容易にできる。
【0037】
次に
図3を参照して第2実施の形態および第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、シートバックパッド1をコア部215から引き抜くときの引抜方向に対して斜交する方向に延びる突条状にリーク部11が形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、リーク部21が、引抜方向(
図3(a)上方向)に対して直交する方向に延びる突条状に形成される場合について説明し、第3実施の形態では、リーク部31が、引抜方向(
図3(c)上方向)に対して平行となる方向に延びる突条状に形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0038】
図3(a)は第2実施の形態における成形型20のコア部215を模式的に示した背面図であり、
図3(b)は脱型時の模式図であり、
図3(c)は第3実施の形態における成形型30のコア部215を模式的に示した背面図である。
【0039】
図3(a)に示す第2実施の形態では、シートバックパッド25を成形する成形型20は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bにリーク部21が設けられている。リーク部21は、成形面215bに3本突設されており、引抜方向(
図3(a)上方向)に対して直交する方向に延びる突条状に形成されている。リーク部21は、引抜方向に対して分離して設けられているので、シートバックパッドをコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。なお、リーク部21は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0040】
図3(b)に示すようにシートバックパッド5は、断面矩形状に凸設されたリーク部21に倣って凹溝5aが成形されるので、脱型時にシートバックパッド5をコア部215から引抜方向(矢印L方向)に引き抜くと、凹溝5aがリーク部21を乗り越えるときに、シートバックパッド5がコア部215の成形面215bに対して浮き上がる。このときにシートバックパッド5と成形面215bとに隙間が形成され、この隙間を通って空気が中空部207へ流入する。その結果、シートバックパッド5の脱型を容易にできる。
【0041】
図3(c)に示す第3実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型30は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bにリーク部31が設けられている。リーク部31は、成形面215bに3本突設されており、引抜方向(
図3(c)上方向)に対して平行となる方向に延びる突条状に形成されている。その結果、リーク部31は、引抜方向に対して連続して設けられているので、シートバックパッドをコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して同一となる。なお、リーク部31は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0042】
第3実施の形態によれば、脱型時にシートバックパッドをコア部215から引抜方向(矢印L方向)に引き抜くと、断面矩形状に凸設されたリーク部31と平行にシートバックパッドが移動するので、リーク部31をシートバックパッドの移動の抵抗になり難くできる。また、リーク部31に対してシートバックパッドが浮き上がることで、成形面215bとシートバックパッドとに隙間を形成できるので、その隙間を通じて中空部207へ空気を流入させることができる。その結果、シートバックパッドの脱型を容易にできる。
【0043】
次に
図4を参照して、第4実施の形態および第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、背面視してリーク部11,21,31が直線状に形成される場合について説明した。これに対し第4実施の形態および第5実施の形態では、背面視してリーク部41,42,51が等辺山形状に形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4(a)は第4実施の形態における成形型40のコア部215を模式的に示す背面図であり、
図4(b)は第5実施の形態における成形型50のコア部215を模式的に示す背面図である。
【0044】
図4(a)に示す第4実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型40は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに、全体が等辺山形状に形成されたリーク部41,42が設けられている。リーク部41,42は互いに相似形とされ、頂部41a,42aから延びる各々2辺が、引抜方向(
図4(a)上方向)に対して斜交する方向に延設される。その結果、リーク部41,42は、引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。なお、リーク部41,42は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0045】
図4(b)に示す第5実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型50は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに、全体が等辺山形状に形成された一対のリーク部51が設けられている。リーク部51は互いに合同とされ、頂部51aから延びる2辺が、引抜方向(
図4(b)上方向)に対して斜交する方向に延設される。その結果、リーク部51は、引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。なお、リーク部51は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0046】
第4実施の形態および第5実施の形態によれば、シートバックパッドは脱型時にリーク部41,42,51に対して斜交する方向に移動するので、リーク部41,42,51をシートバックパッドの移動の抵抗になり難くできると共に、リーク部41,42,51に対してシートバックパッドを浮き上がらせ易くできる。その結果、脱型作業を容易にできる。
【0047】
次に
図5を参照して、リーク部61,71,81の形状が第1実施の形態から第5実施の形態とは異なる第6実施の形態から第8実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5(a)は第6実施の形態における成形型60のコア部215を模式的に示す背面図であり、
図5(b)は第7実施の形態における成形型70のコア部215を模式的に示す背面図であり、
図5(c)は第8実施の形態における成形型80のコア部215を模式的に示す背面図である。
【0048】
図5(a)に示す第6実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型60は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに、全体が略Z状に形成された一対のリーク部61が設けられている。リーク部61は互いに合同とされ、各辺が、引抜方向(
図5(a)上方向)に対して斜交する方向に延設される。その結果、リーク部61は、引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。なお、リーク部61は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0049】
図5(b)に示す第7実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型70は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに、全体が十字状に形成されたリーク部71が設けられている。リーク部71は2つの辺が互いに交差し、各辺が、引抜方向(
図5(b)上方向)に対して斜交する方向に延設される。その結果、リーク部71は、引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。なお、リーク部71は、短手方向断面が矩形状に形成されており、成形面215bからの高さ及び短手方向の幅が長手方向に亘って5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0050】
第6実施の形態および第7実施の形態によれば、脱型時にはシートバックパッドがリーク部61,71に対して斜交する方向に移動するので、リーク部61,71をシートバックパッドの移動の抵抗になり難くできると共に、リーク部61,71に対してシートバックパッドを浮き上がらせ易くできる。その結果、脱型作業を容易にできる。
【0051】
図5(c)に示す第8実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型80は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに、複数のリーク部81が互いに離間されて凸起状に設けられている。リーク部81は、引抜方向に対して整列されておらず千鳥格子状に配置されている。リーク部81は引抜方向(
図5(c)上方向)に対して分離されているので、リーク部81は、引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化する。
【0052】
なお、リーク部81は、背面視において引抜方向(
図5(c)上方向)の長さに対して引抜方向と直交する方向の長さが小さく設定された矩形状に形成されている。リーク部81は、引抜方向と直交する直交断面が略矩形状に形成されており、直交断面の幅および成形面215bからの高さが5〜10mm程度の一定値に設定されている。
【0053】
第8実施の形態によれば、脱型時にシートバックパッドをコア部215から引抜方向に引き抜くと、リーク部81を乗り越えるときに、シートバックパッドをコア部215の成形面215bに対して浮き上がらせることができる。このときにシートバックパッド25と成形面215bとに隙間が形成され、この隙間を通って空気が中空部207へ流入する。その結果、シートバックパッドの脱型を容易にできる。
【0054】
また、リーク部81は、引抜方向と直交する方向において互いに離間されているので、リーク部81が引抜方向と直交する方向に連続して設けられる場合と比較して、リーク部81からシートバックパッドを離脱させるときの抵抗を小さくできる。さらに、リーク部81は、引抜方向に対して整列されておらず千鳥格子状に配置されているので、シートバックパッドを引抜方向に移動させることで、リーク部81により形成されるシートバックパッドと成形面215bとの間隔を確実に確保できる。
【0055】
次に
図6を参照して、第9実施の形態から第11実施の形態について説明する。第1実施の形態から第8実施の形態では、リーク部11,21,31,41,42,51,61,71,81の引抜方向の断面が略矩形状に形成される場合について説明した。これに対し第9実施の形態から第11実施の形態では、リーク部91,101,111が、コア部215の基部側(
図6下側)から先端側(
図6上側)に向かうにつれて成形面215bに対する突出高さが漸次増加する傾斜面91c,101c,111cを有する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0056】
図6(a)は第9実施の形態における成形型90の背面側から視たコア部215を模式的に示す斜視図であり、
図6(b)は第10実施の形態における成形型100の背面側から視たコア部215を模式的に示す斜視図であり、
図6(c)は第11実施の形態における成形型110の背面側から視たコア部215を模式的に示す斜視図である。
【0057】
図6(a)に示す第9実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型90は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bにリーク部91が設けられている。リーク部91は、成形面215bに2本が平行となるように突設されており、引抜方向(
図6(a)上方向)に対して平行となる方向に延びる突条状に形成されている。また、リーク部91は、コア部215の基部側の基端部91aから先端部91bに向かうにつれて成形面215bに対する突出高さが漸次増加する傾斜面91cを有している。成形面215bに対する基端部91aの突出高さは0mmであり、成形面215bに対する先端部91bの突出高さは5〜10mm程度である。その結果、リーク部91は、シートバックパッドをコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化(漸次増加)する。
【0058】
第9実施の形態によれば、脱型時にシートバックパッドをコア部215から引抜方向に引き抜くと、リーク部91と平行にシートバックパッドが移動するので、リーク部91をシートバックパッドの移動の抵抗になり難くできる。また、リーク部91に傾斜面91cが形成されているので、リーク部91に沿ってシートバックパッドを移動させることで、傾斜面91cに沿って成形面215bに対してシートバックパッドを自然に浮き上がらせることができる。傾斜面91cが形成されているので、リーク部91による脱型時の抵抗を小さくできると共に、成形面215bとシートバックパッドとに形成された隙間に空気を流入させて、中空部207を大気圧にして脱型を容易にできる。
【0059】
図6(b)に示す第10実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型100は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bに一対のリーク部101が設けられている。一対のリーク部101は、板状に形成されると共にコア部215の基部側(
図6(b)下側)及び先端側(
図6(b)上側)にそれぞれ設けられている。また、リーク部101は、コア部215の基部側の基端部101aから先端部101bに向かうにつれて成形面215bに対する突出高さが漸次増加する傾斜面101cを有している。成形面215bに対する基端部101aの突出高さは0mmであり、成形面215bに対する先端部101bの突出高さは5〜10mm程度である。その結果、リーク部101は、シートバックパッドをコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化(漸次増加)する。
【0060】
第10実施の形態によれば、脱型時にシートバックパッドをコア部215から引き抜くと、リーク部101の傾斜方向に沿ってシートバックパッドが移動するので、リーク部101をシートバックパッドの移動の抵抗になり難くできる。また、リーク部101に傾斜面101cが形成されているので、リーク部101に沿ってシートバックパッドを移動させることで、成形面215bに対してシートバックパッドを自然に浮き上がらせることができる。傾斜面101cが形成されているので、リーク部101による脱型時の抵抗を小さくできると共に、成形面215bとシートバックパッドとに形成された隙間に空気を流入させて、中空部207を大気圧にして脱型を容易にできる。
【0061】
また、リーク部101はコア部215の基部側(
図6(b)下側)及び先端側(
図6(b)上側)にそれぞれ設けられているので、第9実施の形態で説明したリーク部91(
図6(a)参照)と比較して、傾斜面101cの勾配を大きくできる。そのため、第9実施の形態と比較して、引抜方向におけるシートバックパッドの移動量に対し、成形面215bとシートバックパッドとの隙間を大きくできる。シートバックパッドの移動量が小さくても隙間を設けて中空部207に空気を流入できるので、脱型作業を容易にできる。
【0062】
図6(c)に示す第11実施の形態では、シートバックパッド(図示せず)を成形する成形型110は、中型214に突設されるコア部215の成形面215bにリーク部111が設けられている。リーク部111は、成形面215bに2本が平行となるようにコア部215の基部側(
図6(c)下側)及び先端側(
図6(c)上側)にそれぞれ突設されており、引抜方向(
図6(c)上方向)に対して斜交する方向に延びる突条状に形成されている。また、リーク部111は、コア部215の基部側の基端部111aから先端部111bに向かうにつれて成形面215bに対する突出高さが漸次増加する傾斜面111cを有している。成形面215bに対する基端部111aの突出高さは0mmであり、成形面215bに対する先端部111bの突出高さは5〜10mm程度である。その結果、リーク部111は、シートバックパッドをコア部215から引き抜くときの引抜方向と直交する直交断面が、引抜方向に対して変化(漸次増加)する。
【0063】
第11実施の形態によれば、脱型時にシートバックパッドをコア部215から引き抜くと、リーク部111に傾斜面111cが形成されているので、引抜方向にシートバックパッドを移動させることで、傾斜面111cに沿って成形面215bに対してシートバックパッドを自然に浮き上がらせることができる。傾斜面131cが形成されているので、リーク部111による脱型時の抵抗を小さくできると共に、成形面215bとシートバックパッドとに形成された隙間に空気を流入させて、中空部207を大気圧にして脱型を容易にできる。
【0064】
また、リーク部111はコア部215の基部側(
図6(b)下側)及び先端側(
図6(b)上側)にそれぞれ設けられているので、第9実施の形態で説明したリーク部91(
図6(a)参照)と比較して、傾斜面111cの勾配を大きくできる。そのため、第9実施の形態と比較して、引抜方向におけるシートバックパッドの移動量に対し、成形面215bとシートバックパッドとの隙間を大きくできる。シートバックパッドの小さい移動量で隙間を設けて中空部207に空気を流入できるので、脱型作業を容易にできる。
【0065】
また、リーク部111はコア部215の基部側(
図6(c)下側)及び先端側(
図6(c)上側)にそれぞれ設けられているので、第9実施の形態で説明したリーク部91(
図6(a)参照)と比較して、傾斜面111cの勾配を大きくできる。そのため、第9実施の形態と比較して、引抜方向におけるシートバックパッドの移動量に対し、成形面215bとシートバックパッドとの隙間を大きくできる。シートバックパッドの移動量が小さくても隙間を設けて中空部207に空気を流入できるので、脱型作業を容易にできる。
【0066】
また、リーク部111が突条状に形成されているので、第10実施の形態で説明したリーク部101(
図6(b)参照)と比較して、傾斜面111cの面積を小さくできる。傾斜面111cに密着するシートバックパッドの面積を小さくできるので、第10実施の形態と比較して、シートバックパッドを引抜方向に移動させるときの引抜抵抗を小さくできる。
【0067】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0068】
上記各実施の形態では、コア部215の成形面215a,215bにリーク部11,21,31,41,42,51,61,71,81,91,101,111が凸設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、リーク部を成形面215a,215bに凹設することは当然可能である。リーク部を成形面215a,215bに凹設することで、リーク部の凹みの分だけ中空部207(シートバックパッド)とリーク部との間に隙間を設けることができる。その隙間を通じて中空部207に空気を流入させて、中空部207を大気圧にできる。そのためシートバックパッドの脱型作業を容易にできる。
【0069】
上記各実施の形態では、自動車のフロントシートの背もたれ部として用いられるシートバックパッド1,5について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、船舶、航空機等の乗物に装備される座席や家具等の椅子などの背もたれ部を構成するシートバックパッドに適用することは当然可能である。