特許第6192521号(P6192521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192521
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】スウェージツール
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/00 20060101AFI20170828BHJP
   F16B 19/08 20060101ALI20170828BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20170828BHJP
   B21D 37/01 20060101ALI20170828BHJP
   B21D 37/18 20060101ALI20170828BHJP
   B21J 15/36 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B21D39/00 A
   F16B19/08 C
   F16B5/04 A
   B21D37/01
   B21D37/18
   B21J15/36 M
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-253679(P2013-253679)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-112606(P2015-112606A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】井加田 朗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 太郎
(72)【発明者】
【氏名】月岡 勇気
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03792933(US,A)
【文献】 特開2013−176803(JP,A)
【文献】 特開2004−306040(JP,A)
【文献】 特表2005−535843(JP,A)
【文献】 特表2008−518125(JP,A)
【文献】 特公昭36−005561(JP,B1)
【文献】 特開2003−062902(JP,A)
【文献】 特表2003−506220(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0003964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00−39/20
B21D 37/01
B21D 37/18
B21J 15/00−15/50
F16B 5/04
F16B 19/08−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結ピンが挿通される被締結部の一方側に前記締結ピンのピンヘッドが位置する一方で、前記被締結部の他方側に前記締結ピンのピンテールが位置しており、前記締結ピンの前記ピンテール側に装着されたカラーを、前記被締結部に当接するように前記ピンヘッド側に移動させ、前記カラーを前記被締結部に当接させた状態で前記締結ピンにかしめ、前記ピンテールに引張荷重を与えて破断除去することで、前記被締結部を締結するスウェージツールであって、
前記カラーに当接して前記カラーをかしめるかしめ用穴が形成されるスウェージダイを備え、
前記かしめ用穴の内周面には、低摩擦コーティング膜が形成され
前記かしめ用穴は、その直径が前記カラーが圧入される入口側において広く、中央側の頂部において最も狭く、出口側において頂部よりも広く形成され、
前記低摩擦コーティング膜は、前記かしめ用穴の少なくとも入口側から頂部までの領域に形成されていることを特徴とするスウェージツール。
【請求項2】
前記低摩擦コーティング膜の摩擦係数は、0.35以下であることを特徴とする請求項1に記載のスウェージツール。
【請求項3】
前記低摩擦コーティング膜の摩擦係数は、0.12以下であることを特徴とする請求項2に記載のスウェージツール。
【請求項4】
前記低摩擦コーティング膜は、耐摩耗コーティング膜としての機能を兼ね備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスウェージツール。
【請求項5】
前記低摩擦コーティング膜は、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングにより形成された膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスウェージツール。
【請求項6】
前記ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングは、物理蒸着で行われることを特徴とする請求項5に記載のスウェージツール。
【請求項7】
締結ピンが挿通される被締結部の一方側に前記締結ピンのピンヘッドが位置する一方で、前記被締結部の他方側に前記締結ピンのピンテールが位置しており、前記締結ピンの前記ピンテール側に装着されたカラーを、前記被締結部に当接するように前記ピンヘッド側に移動させ、前記カラーを前記被締結部に当接させた状態で前記締結ピンにかしめ、前記ピンテールに引張荷重を与えて破断除去することで、前記被締結部を締結するスウェージツールであって、
前記カラーに当接して前記カラーをかしめるかしめ用穴が形成されるスウェージダイを備え、
前記かしめ用穴の内周面における摩擦係数は、0.35以下となっており、
前記かしめ用穴は、その直径が前記カラーが圧入される入口側において広く、中央側の頂部において最も狭く、出口側において頂部よりも広く形成されていることを特徴とするスウェージツール。
【請求項8】
前記かしめ用穴の内周面における摩擦係数は、0.12以下となっていることを特徴とする請求項に記載のスウェージツール。
【請求項9】
前記カラーには、かしめられる前に潤滑剤が塗布されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のスウェージツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーを締結ピンにかしめることで、被締結部を締結するスウェージツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フルードを用いて、シリンダ内のピストンを作動させることにより、カラーを締結ピンにかしめる油圧式のスウェージツールが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、スウェージツールとしては、油圧式のものの他、空気圧によってシリンダ内のピストンを作動させるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5548889号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スウェージツールによってかしめられるカラーは、スウェージツールが当接する面(外表面)に、セチルアルコール等の潤滑剤が塗布されている。しかしながら、この潤滑剤は、取り扱っているうちに経時的に取れてしまう。ここで、特許文献1のスウェージツールを用いて、潤滑剤が取れてしまったカラーをかしめる場合、スウェージツールとカラーとの摩擦が増大する。この場合、カラーの一部のみが締結ピンにかしめられた状態で、ピンテールが破断する締結不良が発生し易い。締結不良が発生すると、締結不良となった(締結ピン及び)カラーを取り外し、再び、締結作業を行う必要があり、作業性が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、カラーを締結ピンに好適にかしめることができるスウェージツールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスウェージツールは、締結ピンが挿通される被締結部の一方側に前記締結ピンのピンヘッドが位置する一方で、前記被締結部の他方側に前記締結ピンのピンテールが位置しており、前記締結ピンの前記ピンテール側に装着されたカラーを、前記被締結部に当接するように前記ピンヘッド側に移動させ、前記カラーを前記被締結部に当接させた状態で前記締結ピンにかしめ、前記ピンテールに引張荷重を与えて破断除去することで、前記被締結部を締結するスウェージツールであって、前記カラーに当接して前記カラーをかしめるかしめ用穴が形成されるスウェージダイを備え、前記かしめ用穴の内周面には、低摩擦コーティング膜が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、スウェージダイに形成されるかしめ用穴の内周面に、低摩擦コーティング膜を形成することができるため、カラーに塗布された潤滑剤が取れてしまっても、スウェージツールとカラーとの摩擦の増大を抑制することができる。このため、カラーに塗布された潤滑剤が取れてしまっても、カラーを締結ピンに好適にかしめることが可能となる。なお、低摩擦コーティングとしては、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティング(DLCコーティング)、ダイヤモンド・コーティング、チタンライト・コーティング、またはチタンアルミ・コーティング等がある。
【0008】
また、前記低摩擦コーティング膜の摩擦係数は、0.35以下であることが好ましく、0.12以下であることがより好ましい。
【0009】
この構成によれば、スウェージツールとカラーとの摩擦の増大を好適に抑制することができる。なお、低摩擦コーティング膜の摩擦係数は、低ければ低いほど好ましい。
【0010】
また、前記低摩擦コーティング膜は、耐摩耗コーティング膜としての機能を兼ね備えていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、スウェージダイに形成されるかしめ用穴の摩耗を抑制することができる。このため、スウェージダイの工具寿命の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記低摩擦コーティング膜は、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングにより形成された膜であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、低摩擦コーティング膜を、低摩擦性及び耐摩耗性を有するコーティング膜とすることができる。
【0014】
また、前記ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングは、物理蒸着で行われることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)で形成されるDLCコーティングは、膜形成時において水素が入りにくいコーティングとなっているため、例えば、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)でDLCコーティングを行う場合に比べて、低摩擦コーティング膜を硬質なものとすることができる。このため、DLCコーティングであっても、より低摩擦性及び耐摩耗性を有するコーティング膜とすることができる。
【0016】
また、前記かしめ用穴は、その直径が前記カラーが圧入される入口側において広く、中央側の頂部において最も狭く、出口側において頂部よりも広く形成され、前記低摩擦コーティング膜は、前記かしめ用穴の少なくとも入口側から頂部までの領域に形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、かしめ用穴の内周面に対し、低摩擦コーティング膜を適切な領域に形成することができる。
【0018】
本発明の他のスウェージツールは、締結ピンが挿通される被締結部の一方側に前記締結ピンのピンヘッドが位置する一方で、前記被締結部の他方側に前記締結ピンのピンテールが位置しており、前記締結ピンの前記ピンテール側に装着されたカラーを、前記被締結部に当接するように前記ピンヘッド側に移動させ、前記カラーを前記被締結部に当接させた状態で前記締結ピンにかしめ、前記ピンテールに引張荷重を与えて破断除去することで、前記被締結部を締結するスウェージツールであって、前記カラーに当接して前記カラーをかしめるかしめ用穴が形成されるスウェージダイを備え、前記かしめ用穴の内周面における摩擦係数は、0.35以下となっていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、スウェージダイに形成されるかしめ用穴の内周面を、低摩擦となる平滑面に形成することができるため、カラーに塗布された潤滑剤が取れてしまっても、スウェージツールとカラーとの摩擦の増大を抑制することができる。このため、カラーに塗布された潤滑剤が取れてしまっても、カラーを締結ピンに好適にかしめることが可能となる。なお、より好ましくは、かしめ用穴の内周面における摩擦係数は、0.12以下であることが好ましい。
【0020】
また、前記カラーには、かしめられる前に潤滑剤が塗布されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、スウェージツールとカラーとの摩擦の増大をより好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1に係るスウェージツールにより締結されるロックボルトを模式的に表した概略構成図である。
図2図2は、実施例1のスウェージツール及び従来のスウェージツールを用いたときのカラーの未かしめ部高さを比較したときの説明図である。
図3図3は、摩擦係数を比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係るスウェージツールにより締結されるロックボルトを模式的に表した概略構成図である。図2は、実施例1のスウェージツール及び従来のスウェージツールを用いたときのカラーの未かしめ部高さを比較したときの説明図である。図3は、摩擦係数を比較した表である。
【0025】
実施例1のスウェージツール1は、被締結部となる重ね合わせた一対の板材3a,3bに対し、ロックボルト5を締結するための工具である。先ず、図1を参照し、スウェージツール1によって一対の板材3a,3bに締結されるロックボルト5について説明する。
【0026】
図1に示すように、ロックボルト5は、軸方向に延在する締結ピン7と、締結ピン7にかしめられるカラー8とを有する。締結ピン7は、軸方向の一方側に設けられるピンヘッド7aと、中央のピン本体7bと、軸方向の他方側に設けられるピンテール7cとを含んで構成されている。また、ピン本体7bとピンテール7cとの間は、破断部7dとなっており、破断部7dは、ピン本体7bとピンテール7cとに対し、相互に所定の引張荷重が与えられることで、破断可能となっている。
【0027】
この締結ピン7は、一対の板材3a,3bの積層方向に貫通形成される締結孔4に挿通される。締結孔4に挿通される締結ピン7は、締結時において、一対の板材3a,3bを挟んで、一方(図1の下側)の板材3a側にピンヘッド7aが位置し、他方(図1の上側)の板材3b側にピンテール7cが位置する。そして、ピン本体7bは、その一部が締結孔4の内部に位置し、その他の一部が他方(図1の上側)の板材3b側に位置する。
【0028】
カラー8は、円筒形状となっており、締結ピン7のピンテール7c側から装着される。締結ピン7に装着されたカラー8は、スウェージツール1によって、軸方向の板材3b側(ピンヘッド7a側)に移動させられることで板材3bに当接し、板材3bに当接した状態で締結ピン7のピン本体7bにかしめられる。この後、締結ピン7に所定の引張荷重が与えられることで、破断部7dが破断し、ピンテール7cが破断除去される。
【0029】
次に、図1を参照して、スウェージツール1について説明する。図1に示すように、スウェージツール1は、カラー8をかしめるためかしめ用穴19が貫通形成されるスウェージダイ11を有する。
【0030】
スウェージダイ11は、カラー8に当接して、板材3b側へ押し込まれる部材となっている。スウェージダイ11に形成されるかしめ用穴19は、スウェージダイ11が押し込まれ、締結ピン7に装着されたカラー8が圧入されることで、カラー8をかしめている。このかしめ用穴19は、その内周面の形状が、貫通方向において湾曲した形状となっている。つまり、かしめ用穴19は、カラー8が圧入される入口側の直径がカラー8の直径よりも広く、出口側に向かうにつれて狭くなっている。また、かしめ用穴19は、中央側の頂部において、最も狭い(小さい)直径となっており、カラー8の直径よりも小さくなっている。さらに、かしめ用穴19は、中央側の頂部から出口側に向かうにつれて広くなっている。
【0031】
このかしめ用穴19の内周面には、低摩擦コーティング膜21が形成されている。低摩擦コーティング膜21は、少なくとも入口側から頂部までの領域に形成されており、実施例1では、全面に形成されている。この低摩擦コーティング膜21は、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティング(DLCコーティング)により形成された膜となっている。DLCコーティングで形成された低摩擦コーティング膜21は、耐摩耗コーティング膜としても機能することから、低摩擦コーティング膜21は、低摩擦性及び耐摩耗性を有するコーティング膜となる。
【0032】
また、DLCコーティングは、物理蒸着によって行われている。ここで、DLCコーティングは、物理蒸着または化学蒸着によって行われるが、物理蒸着によって行われるDLCコーティングは、低摩擦コーティング膜21の形成の際に、化学蒸着に比して水素が混入し難いものとなっている。このため、物理蒸着でDLCコーティングした低摩擦コーティング膜21は、化学蒸着でDLCコーティングする場合に比して、より硬質なものに形成することができる。このため、DLCコーティングの中でも、低摩擦コーティング膜21は、より低摩擦性及び耐摩耗性を有するコーティング膜となる。このように形成された低摩擦コーティング膜21は、その摩擦係数が、少なくとも0.35以下となっており、より好適には、その摩擦係数が、0.12以下となっている。
【0033】
次に、図2を参照して、従来のスウェージツールを用いたときのカラー8の締結状態と、実施例1のスウェージツール1を用いたときのカラー8の締結状態とについて比較する。図2では、その縦軸が、カラー8の未かしめ部の高さとなっている。また、図2では、左側に示す一組の白抜き丸(○)及び白抜き三角(△)が、従来のスウェージツールを用いたときのカラー8の締結状態を示しており、右側に示す一組の白抜き丸(○)及び白抜き三角(△)が、実施例1のスウェージツール1を用いたときのカラー8の締結状態を示している。ここで、白抜き丸(○)は、カラー8の外周面に、セチルアルコール等の潤滑剤が塗布されている場合であり、白抜き三角(△)は、カラー8の外周面に塗布されたセチルアルコール等の潤滑剤が取れた場合である。また、点線Lは、カラー8の締結状態の良否を判定するためのかしめ部の規定高さを示す規定ラインであり、カラー8の未かしめ部の高さが、規定ラインLよりも低ければ、カラー8の締結状態が良好となる一方で、規定ラインLよりも高ければ、カラー8の締結状態が不良となる。
【0034】
図2に示すように、従来のスウェージツールでは、カラー8に潤滑剤が塗布されている場合、カラー8を良好に締結できることが確認された。一方で、従来のスウェージツールでは、カラー8に潤滑剤が塗布されていない場合、カラー8の締結不良が発生する場合があることが確認された。
【0035】
これに対し、実施例1のスウェージツール1では、カラー8に潤滑剤が塗布されている場合、カラー8を良好に締結できることが確認された。また、実施例1のスウェージツール1では、カラー8に潤滑剤が塗布されていない場合、カラー8をほぼ良好に締結できることが確認された。つまり、実施例1のスウェージツール1では、カラー8の締結不良が発生する場合があるものの、従来のスウェージツールに比して十分に抑制できることが確認された。
【0036】
次に、図3を参照し、従来のスウェージツールを用いたときの摩擦係数と、実施例1のスウェージツール1を用いたときの摩擦係数とをそれぞれ比較する。図3において、試料となるNo.1〜No.3のカラー8は、セチルアルコール等の潤滑剤が取れたカラー8となっており、従来のスウェージツールを用いてカラー8を締結したときの摩擦係数となっている。図3において、試料となるNo.4及びNo.5のカラー8は、セチルアルコール等の潤滑剤が塗布されたカラー8となっており、従来のスウェージツールを用いてカラー8を締結したときの摩擦係数となっている。図3において、試料となるNo.6のカラー8は、セチルアルコール等の潤滑剤が取れたカラー8となっており、実施例1のスウェージツール1を用いてカラー8を締結したときの摩擦係数となっている。
【0037】
図3に示すように、No.1の場合、摩擦係数は、「0.3558」となっている。No.2の場合、摩擦係数は、「0.3550」となっている。No.3の場合、摩擦係数は、「0.3597」となっている。以上から、セチルアルコール等の潤滑剤が取れたカラー8に対して、従来のスウェージツールを用いて締結したときの摩擦係数、つまり、カラー8の締結不良が発生する場合の摩擦係数は、No.1〜No.3に示す摩擦係数となる。
【0038】
また、図3に示すように、No.4の場合、摩擦係数は、「0.0866」となっている。No.5の場合、摩擦係数は、「0.0576」となっている。以上から、セチルアルコール等の潤滑剤が塗布されたカラー8に対して、従来のスウェージツールを用いて締結したときの摩擦係数、つまり、カラー8を良好に締結できる場合の摩擦係数は、No.4及びNo.5に示す摩擦係数となる。
【0039】
また、図3に示すように、No.6の場合、摩擦係数は、「0.1289」となっている。以上から、セチルアルコール等の潤滑剤が取れたカラー8に対して、実施例1のスウェージツール1を用いて締結したときの摩擦係数、つまり、カラー8をほぼ良好に締結できる場合の摩擦係数は、No.6に示す摩擦係数となる。よって、低摩擦コーティング膜21は、その摩擦係数を、少なくとも0.35以下とすればよく、より好適には、その摩擦係数を、0.12±0.01とすることで、カラー8をほぼ良好に締結できることが確認された。よって、低摩擦コーティング膜21は、その摩擦係数を、0.12以下とすれば、カラー8をより良好に締結できる。
【0040】
以上のように、実施例1の構成によれば、スウェージダイ11に形成されるかしめ用穴19の内周面に、低摩擦コーティング膜21を形成することができるため、カラー8に塗布された潤滑剤が取れてしまっても、スウェージツール1とカラー8との摩擦の増大を抑制することができる。このため、カラー8に塗布された潤滑剤が取れてしまっても、カラー8を締結ピン7に好適にかしめることが可能となる。
【0041】
また、実施例1の構成によれば、低摩擦コーティング膜21の摩擦係数を、少なくとも0.35以下とすることができ、より好適には、0.12以下とすることができるため、スウェージツール1とカラー8との摩擦の増大を好適に抑制することができる。
【0042】
また、実施例1の構成によれば、物理蒸着でDLCコーティングを行って低摩擦コーティング膜21を形成したため、低摩擦コーティング膜21を硬質にできることから、低摩擦性の高いコーティング膜とすることができ、また、耐摩耗性を有するコーティング膜とすることができる。このため、スウェージダイ11に形成されるかしめ用穴19の摩耗を抑制できることから、スウェージツール1の工具寿命の向上を図ることができる。
【0043】
また、実施例1の構成によれば、かしめ用穴19の内周面の全面に、低摩擦コーティング膜21を形成することができる。このため、カラー8が接触するかしめ用穴19の内周面に、低摩擦コーティング膜21を形成することができ、かしめ用穴19の内周面とカラー8とが接触する部分において好適に摩擦を低減することができる。なお、実施例1では、かしめ用穴19の内周面の全面に、低摩擦コーティング膜21を形成したが、少なくともかしめ用穴19の入口側から頂部までの領域に形成すればよい。
【0044】
なお、実施例1では、低摩擦コーティング膜21をDLCコーティングにより形成したが、この構成に限定されない。低摩擦コーティングとして、例えば、ダイヤモンド・コーティング、チタンライト・コーティング、またはチタンアルミ・コーティング等を適用してもよく、摩擦係数を低減可能なコーティングであればよい。
【0045】
また、実施例1のスウェージツール1を用いて、潤滑剤が取れたカラー8をかしめる場合、事前にカラー8に潤滑剤を再塗布し、この後、カラー8をかしめてもよい。この場合、スウェージツール1とカラー8との摩擦の増大をより好適に抑制することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、実施例2に係るスウェージツールについて説明する。実施例2に係るスウェージツールは、かしめ用穴19の内周面を平滑面としており、実施例1の図1に示すスウェージツール1の低摩擦コーティング膜21を省いた構成となっている。このため、実施例2のスウェージツールの図面については、図1の低摩擦コーティング膜21を省いた図となることから、実施例2のスウェージツールの図示を省略する。
【0047】
実施例2に係るスウェージツールは、かしめ用穴19の内周面の摩擦係数が、少なくとも0.35以下の摩擦係数となっている。つまり、実施例2のスウェージツールは、かしめ用穴19の内周面を、摩擦係数が少なくとも0.35以下の平滑面となるように加工している。なお、より好ましくは、かしめ用穴19の内周面を、摩擦係数が0.12以下の平滑面としている。
【0048】
以上のように、実施例2の構成においても、スウェージダイ11に形成されるかしめ用穴19の内周面を、低摩擦となる平滑面に形成することができるため、カラー8に塗布された潤滑剤が取れてしまっても、スウェージツールとカラー8との摩擦の増大を抑制することができる。このため、カラー8に塗布された潤滑剤が取れてしまっても、カラー8を締結ピン7に好適にかしめることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 スウェージツール
5 ロックボルト
7 締結ピン
8 カラー
11 スウェージダイ
19 かしめ用穴
21 低摩擦コーティング膜
図1
図2
図3