(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気設備の1つとして蓄電池を備える需要家施設を含む複数の需要家施設を共通の系統電源に接続して構成される電力管理システムにおいて前記系統電源に接続される共通蓄電装置と、
前記複数の需要家施設における電気設備を対象とする所定の電力管理を実行する需要家施設対応電力管理部と、
前記需要家施設対応電力管理部による所定の電力管理が行われている状態のもとでの、前記電力管理システムにおける各蓄電池に対する充電電力の余剰分または前記各蓄電池から負荷に供給する電力の不足分に対応する差分電力を算出する差分電力算出部と、
前記差分電力算出部により算出された差分電力に基づいて、前記共通蓄電装置の充電または放電を制御する蓄電装置制御部とを備え、
前記需要家施設対応電力管理部は、
ネットワーク経由で前記需要家施設の各々と通信を行うことにより、前記所定の電力管理に必要な情報を取得するとともに、取得した情報に基づいて前記需要家施設における所定の電気設備を制御し、
前記蓄電装置制御部は、
前記ネットワークとは異なる所定の通信路を介して前記共通蓄電装置の充電または放電を制御する
電力管理システム。
電気設備の1つとして蓄電池を備える需要家施設を含む複数の需要家施設を共通の系統電源に接続して構成される電力管理システムにおいて、前記複数の需要家施設における電気設備を対象とする所定の電力管理を実行する需要家施設対応電力管理部と、
前記需要家施設対応電力管理部による所定の電力管理が行われている状態のもとでの、前記電力管理システムにおける各蓄電池に対する充電電力の余剰分または前記各蓄電池から負荷に供給する電力の不足分に対応する差分電力を算出する差分電力算出部と、
前記差分電力算出部により算出された差分電力に基づいて、前記共通の系統電源に接続される共通蓄電装置の充電または放電を制御する蓄電装置制御部とを備え、
前記需要家施設対応電力管理部は、
ネットワーク経由で前記需要家施設の各々と通信を行うことにより、前記所定の電力管理に必要な情報を取得するとともに、取得した情報に基づいて前記需要家施設における所定の電気設備を制御し、
前記蓄電装置制御部は、
前記ネットワークとは異なる所定の通信路を介して前記共通蓄電装置の充電または放電を制御する
電力管理装置。
電気設備の1つとして蓄電池を備える需要家施設を含む複数の需要家施設を共通の系統電源に接続して構成される電力管理システムにおいて、前記複数の需要家施設における電気設備を対象とする所定の電力管理を実行する需要家施設対応電力管理ステップと、
前記需要家施設対応電力管理ステップによる所定の電力管理が行われている状態のもとでの、前記電力管理システムにおける各蓄電池に対する充電電力の余剰分または前記各蓄電池から負荷に供給する電力の不足分に対応する差分電力を算出する差分電力算出ステップと、
前記差分電力算出ステップにより算出された差分電力に基づいて、前記共通の系統電源に接続される共通蓄電装置の充電または放電を制御する蓄電装置制御ステップとを備え、
前記需要家施設対応電力管理ステップは、
ネットワーク経由で前記需要家施設の各々と通信を行うことにより、前記所定の電力管理に必要な情報を取得するとともに、取得した情報に基づいて前記需要家施設における所定の電気設備を制御し、
前記蓄電装置制御ステップは、
前記ネットワークとは異なる所定の通信路を介して前記共通蓄電装置の充電または放電を制御する
電力管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[電力管理システムの全体構成例]
図1は、本発明の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示している。本実施形態における電力管理システムは、例えば、所定の地域範囲における複数の需要家に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などといわれるものに対応する。
【0014】
本実施形態の電力管理システムは、
図1において電力管理地域1として示す一定範囲の地域における複数の需要家施設10ごとに備えられる電気設備を対象として電力管理を行う。
需要家施設10は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。また、電力管理地域1が、例えば1つまたは複数の集合住宅に対応し、需要家施設10のそれぞれが集合住宅における各戸であるような態様でもよい。
【0015】
同図に示す電力管理地域1における複数の需要家施設10においては、再生可能エネルギーを利用した発電装置である太陽電池を備える需要家施設10が含まれる。また、電力管理地域1における複数の需要家施設10においては、電気設備の1つとして蓄電池を備える需要家施設10が含まれる。このような需要家施設10のうちには、太陽電池と蓄電池の両者を備える需要家施設10が有ってもよいし、太陽電池と蓄電池のいずれか一方を備える需要家施設10が有ってもよい。
【0016】
電力管理地域1における各需要家施設10には、共通の系統電源3と接続されることで、商用電源2が分岐して供給される。各需要家施設10は、系統電源3から供給される電力を負荷に供給することができる。これにより、負荷としての各種の電気設備(機器)が稼働される。
また、太陽電池を備える需要家施設10は、太陽電池の発電電力を系統電源3に出力させることができる。
また、蓄電池を備える需要家施設10においては、系統電源3から電力供給を受けて蓄電池に蓄電(充電)させることができる。また、蓄電池と太陽電池を備える需要家施設10においては、太陽電池の発電電力を蓄電池に充電させることができる。
【0017】
また、本実施形態の電力管理システムにおいては、共通蓄電装置20が備えられる。共通蓄電装置20は、電力管理システムにおける需要家施設10に対して共通に備えられる蓄電装置であって、需要家施設10と共通の系統電源3に接続される。
【0018】
共通蓄電装置20は、蓄電池21、インバータ22及び制御部23を備える。
蓄電池21は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する。蓄電池21としては、例えばリチウムイオン電池などを採用することができる。
【0019】
インバータ22は、蓄電池21に充電するための電力の交流直流変換または蓄電池21からの放電により出力される電力の直流交流変換を行う。つまり、インバータ22は、蓄電池21が入出力する電力の双方向変換を行う。
具体的に、蓄電池21に対する充電時には、系統電源3から充電のための交流の電力がインバータ22に供給される。インバータ22は、供給される交流の電力を直流に変換し、蓄電池21に供給する。
【0020】
また、蓄電池21の放電時には、蓄電池21から直流の電力が出力される。インバータ22は、蓄電池21から出力される直流の電力を交流に変換して系統電源3に出力する。蓄電池21から系統電源3に出力された電力は、需要家施設10において稼働される負荷によって消費される。あるいは、蓄電池21から系統電源3に出力された電力は、需要家施設10において備えられる蓄電池に充電させることもできる。
【0021】
制御部23は、共通蓄電装置20における蓄電池21とインバータ22の動作を制御する。即ち、共通蓄電装置20における充放電の動作は制御部23によって制御される。
制御部23は、電力管理装置200の制御に従って、蓄電池21とインバータ22を制御する。
【0022】
また、本実施形態の電力管理システムにおいては、電力管理装置200が備えられる。電力管理装置200は、電力管理地域1に属する各需要家施設10における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、
図1における電力管理装置200は、ネットワーク300を介して需要家施設10の各々と相互通信可能なように接続される。これにより、電力管理装置200は、各需要家施設10における電気設備を制御することができる。
【0023】
[需要家施設における電気設備例]
次に、
図2を参照して、1つの需要家施設10が備える電気設備の一例について説明する。
同図に示す需要家施設10は、電気設備として、太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104、電力経路切替部105、負荷106及び施設別制御部107を備えている。
【0024】
太陽電池101は、再生可能エネルギーを利用する発電装置の1つであり、光起電力効果により光エネルギーを電力に変換する。太陽電池101は、例えば需要家施設10の屋根などのように太陽光を効率的に受けられる場所に設置されることで、太陽光を電力に変換する。
パワーコンディショナ102は、太陽電池101に対応して備えられ、太陽電池101から出力される直流の電力を交流に変換する。
【0025】
蓄電池103は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する。この蓄電池103には、例えばリチウムイオン電池などを採用することができる。
【0026】
インバータ104は、複数の蓄電池103ごとに対応して備えられるもので、蓄電池103に充電するための電力の交流直流変換または蓄電池103から放電により出力される電力の直流交流変換を行う。つまり、インバータ104は、蓄電池103が入出力する電力の双方向変換を行う。
具体的に、蓄電池103に対する充電時には、商用電源2またはパワーコンディショナ102から電力経路切替部105を介して充電のための交流の電力がインバータ104に供給される。インバータ104は、このように供給される交流の電力を直流に変換し、蓄電池103に供給する。
また、蓄電池103の放電時には、蓄電池103から直流の電力が出力される。インバータ104は、このように蓄電池103から出力される直流の電力を交流に変換して電力経路切替部105に供給する。
【0027】
電力経路切替部105は、施設別制御部107の制御に応じて電力経路の切り替えを行う。この際、施設別制御部107は、電力管理装置200の指示に応じて、電力経路切替部105を制御することができる。
上記の制御に応じて、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、商用電源2を負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0028】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、太陽電池101により発生された電力をパワーコンディショナ102から負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0029】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、商用電源2と太陽電池101の一方または両方から供給される電力をインバータ104経由で蓄電池103に充電するように電力経路を形成することができる。
【0030】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、蓄電池103から放電により出力させた電力を、インバータ104経由で負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0031】
さらに、電力経路切替部105は、太陽電池101により発生された電力を、例えば商用電源2の電力系統を経由して、他の需要家施設10における蓄電池に対して供給するように電力経路を形成することができる。
また、電力経路切替部105は、蓄電池103の放電により出力される電力を、他の需要家施設10における負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0032】
負荷106は、需要家施設10において自己が動作するために電力を消費する機器や設備などを一括して示したものである。
【0033】
施設別制御部107は、需要家施設10における電気設備(太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104、電力経路切替部105、負荷106のすべてまたは一部)を制御する。
【0034】
先に
図1に示した電力管理装置200は、電力管理地域1に属する需要家施設10全体における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、電力管理装置200は、需要家施設10における施設別制御部107の各々と、ネットワーク300経由で相互通信可能なように接続される。これにより、施設別制御部107は、電力管理装置200の制御に応じて自己の管理下にある電気設備を制御することができる。
【0035】
なお、例えば施設別制御部107を省略して、電力管理装置200が各需要家施設10における電気設備などを直接制御するようにしてもよい。しかし、本実施形態のように、電力管理装置200と施設別制御部107を備えた構成とすることで、電力管理地域1全体と、需要家施設10とで制御を階層化することにより、電力管理装置200の制御の複雑化を回避することができる。
【0036】
また、前述のように、電力管理地域1内の需要家施設10のうちの一部において、例えば太陽電池101や、蓄電池103及びインバータ104を備えないものがあってもよい。
【0037】
ここで、例えば日中は、太陽電池101により電力が発生される一方で、例えば需要家施設10における人の存在数が少ないような状態では、負荷106の消費電力が相当に小さくなる。このような状態では、電力管理地域1全体の太陽電池101により発生される電力の総量が、同じ電力管理地域1全体の負荷106が必要とする電力の総量を超える場合がある。このような場合、電力管理地域1全体の負荷106に電力管理地域1全体の太陽電池101により発生される電力を供給しても、電力管理地域1全体の太陽電池101の電力に余剰が生じる。
このように生じた余剰電力は、例えば電力管理地域1において設置されている蓄電池103に充電して蓄積させれば、有効に利用できることとなって好ましい。
【0038】
ただし、上記のように発生する太陽電池101の余剰電力は、例えばそのときの日照条件などに応じてまちまちである。
例えば、余剰電力が小さい場合においては、蓄電池103に蓄積させるべき電力も小さなものとなる。しかし、インバータ104は、電力が一定以上の状態では高効率を維持するが、電力が一定未満の状態では効率の低下が顕著になるという特性を有している。
このために、電力管理地域1において発生した各太陽電池101の小さな余剰電力を、例えば、需要家施設10ごとの蓄電池103に分配して充電したとすれば、各インバータ104の電力は相当に小さくなる。この場合、各インバータ104の電力損失は大幅に増加することになる。
なお、需要家施設10ごとにおいて個別に太陽電池101の余剰電力を蓄電池103に充電したとしても、上記の問題は同様に生じる。また、このようなインバータ104における電力損失の問題は、電力管理地域1において、蓄電池103から放電させた電力を負荷106に供給するにあたって、蓄電池103の放電電力が小さい状態である場合にも同様に生じる。
【0039】
そこで、本実施形態の電力管理装置200は、電力管理地域1内の蓄電池103に対して充電または放電を行うにあたり、以降説明するように、インバータ104の電力損失の低減を図りながら需要家施設10が備える蓄電池103の充放電動作を制御する。
ここで、以降において説明する蓄電池103の充放電動作の制御は、電力管理地域1における太陽電池101から蓄電池103への充電電力の分配、もしくは、蓄電池103から負荷106への電力の分配を伴う。このため、以降において説明する蓄電池103に対する充放電動作の制御については電力分配制御とも呼ぶ。
【0040】
[電力管理装置における電力分配制御のための構成]
次に、
図3を参照して、電力管理装置200の電力分配制御に対応する構成例について説明する。電力管理装置200は、電力分配制御に対応して、ネットワークインターフェース部201及び第1電力管理部202を備える。なお、第2電力管理部203については後述する。
【0041】
ネットワークインターフェース部201は、ネットワーク300経由で各需要家施設10の施設別制御部107と通信を実行する。
【0042】
第1電力管理部202(需要家施設対応電力管理部の一例)は、電力管理地域1における複数の需要家施設10における電気設備を対象とする所定の電力管理を実行する。
本実施形態における第1電力管理部202が実行する電力管理は、需要家施設10ごとにおけるインバータ104の損失の低減を図るための上述の電力分配制御である。
【0043】
同図に示す第1電力管理部202は、総電力算出部221、分配電力決定部222、分配制御部223及びインバータ効率特性記憶部224を備える。
総電力算出部221は、電力管理地域1において、複数の蓄電池103の群に対して充電すべき総電力(充電総電力)または複数の蓄電池103の群から放電させるべき総電力(放電総電力)を算出する。なお、以降において、充電総電力と放電総電力とで特に区別しない場合には、総電力と記載する。
【0044】
また、分配電力決定部222は、インバータ104ごとのインバータ効率特性に基づいて複数の蓄電池103のうちから少なくとも1つの蓄電池103を総電力の分配対象として決定する。また、これとともに、分配電力決定部222は、決定された分配対象としての蓄電池103ごとに分配する分配電力を決定する。
分配制御部223は、分配対象としての蓄電池の各々に決定された分配電力が分配されるように制御する。
【0045】
インバータ効率特性記憶部224は、分配電力決定部222が利用するインバータ104ごとのインバータ効率特性を予め記憶する。換言すれば、インバータ効率特性記憶部224は、電力管理地域1において備えられるインバータ104ごとのインバータ効率特性を記憶する。
1つのインバータ効率特性は、対応のインバータ104についての電力に応じた効率の変動特性を示す。そのうえで、インバータ効率特性記憶部224は、電力管理地域1におけるインバータ104ごとのインバータ効率特性をインバータ効率特性テーブルに格納するように記憶する。
【0046】
[インバータ効率特性テーブルの構造例]
図4は、インバータ効率特性記憶部224が記憶するインバータ効率特性テーブル240の構造例を示す図である。
同図に示すインバータ効率特性テーブル240における1つのレコードが1つのインバータ104に対応する。1つのレコードは、施設別制御部識別子241と、施設別制御部アドレス242と、インバータ効率特性243を含む。
【0047】
施設別制御部識別子241は、対応のインバータ104を管理下におく施設別制御部107を特定する施設別制御部識別子を示す。
施設別制御部アドレス242は、同じレコードの施設別制御部識別子241が示す施設別制御部107のアドレスを示す。
インバータ効率特性243は、対応のインバータ104についてのインバータ効率特性を示す。
このように、インバータ効率特性243が施設別制御部識別子241と対応付けられていることで、インバータ効率特性243が対応するインバータ104を特定することができる。また、施設別制御部アドレス242は、例えば分配制御部223が蓄電池103の充電または放電のための電力を制御するにあたって、その蓄電池103を管理下におく施設別制御部107と通信を行う際に使用する。
【0048】
図5は、インバータ効率特性243として示されるインバータ効率特性の例を示している。この図からも理解されるように、インバータ104は、定格から境界値αとして示すまでの電力の区間においては高効率を維持するが、電力が境界値αから小さくなっていくのに応じて効率が低下する傾向にある。
インバータ104の各々は、同図に示す特性と同様の傾向を有するのであるが、例えば、定格電力、定格電力時の効率の値、境界値αなどのパラメータは、インバータ104のメーカや機種などに応じて異なる。インバータ効率特性243には、このようなインバータ104ごとに異なる特性が反映される。また、同図に示す特性は、例えば蓄電池103への充電時(交流直流変換時)または放電時(直流交流変換時)に対応するものであるが、本実施形態におけるインバータ効率特性243は、充電時と放電時との両者に対応する特性を含む。
【0049】
[電力管理装置の充電制御]
次に、電力管理装置200が、電力分配制御として、電力管理地域1における蓄電池103の群に対して充電を行う場合の制御例について説明する。ここでは、電力管理地域1における太陽電池101の群により発生した電力を負荷106の群に供給した際の余剰電力を蓄電池103の群に対して充電する場合を例に挙げる。
【0050】
図6は、
図1の電力管理システムにおける各需要家施設10の太陽電池101(101−1〜101−n)、パワーコンディショナ102(102−1〜102−n)、蓄電池103(103−1〜103−n)、インバータ104(104−1〜104−n)及び負荷106(106−1〜106−n)の間の電力系統を模式的に示している。
なお、
図6の例では、太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104及び負荷106について、それぞれがn個で同数である場合を示している。これは一例であり、太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104及び負荷106は、それぞれの数が異なっていてもよい。
【0051】
また、同図においては、共通蓄電装置20が示されているが、電力分配制御としての充電制御に対応する共通蓄電装置20の動作については後述する。
【0052】
同図を参照して、本実施形態における電力管理装置200が実行する蓄電池103の群に対する充電制御の概要について説明する。
この場合において、太陽電池101−1〜101−nの各々にて発電された電力は、それぞれ、パワーコンディショナ102−1〜102−nにより交流に変換されて、それぞれ、対応の負荷106−1〜106−nに供給される。
このときに、パワーコンディショナ102−1〜102−nから出力された電力の総量が、負荷106−1〜106−nにおいて必要な電力の総量よりも多いとき、両者の差分が太陽電池101の群による余剰電力の総量(総電力)pとなる。
電力管理装置200における総電力算出部221は、太陽電池101の余剰電力を充電しようする際には、上記のように余剰電力としての総電力pを算出すればよい。
【0053】
この際において、総電力pが或る限度よりも小さい場合、総電力pをすべての蓄電池103−1〜103−nに分配すると、前述のように、インバータ104−1〜104−nが境界値α未満の電力で動作することになり、電力損失が増加する。
【0054】
そこで、本実施形態の電力管理装置200は、電力損失の抑制のために例えば以下のように充電対象とする蓄電池103を決定する。
つまり、電力管理装置200における分配電力決定部222は、インバータ効率特性記憶部224に記憶されるインバータ効率特性テーブル240を参照して、各インバータの効率(電力損失)と電力との関係を認識する。そのうえで、蓄電池103−1〜103−nのうちから、例えば、総電力pを分配したときに、インバータ104における損失が一定以下(効率が一定以上)となる電力で充電可能な1以上の蓄電池103を充電対象として決定する。また、この際に、充電対象としての蓄電池103ごとに総電力pをどれだけ分配して充電すべきかについても決定する。
【0055】
そして、分配制御部223は、上記のように決定された分配電力が充電されるように、分配対象の蓄電池103を制御する。
具体的に、分配制御部223は、分配対象の蓄電池103を備える需要家施設10の施設別制御部107に対して、それぞれ、分配電力決定部222により決定された分配電力を指示する。施設別制御部107は、指示された分配電力により充電が行われるように同じ需要家施設10における蓄電池103を制御する。
【0056】
ここで、第1の実施形態の分配電力決定部222が実行する分配対象の蓄電池103と分配対象の蓄電池103ごとの分配電力を決定するためのアルゴリズムは、例えば、下記の式1により表される関数における損失Lを最小化する「i」と「pi」を求める処理とすることができる。
下記の式1における損失Lは、インバータ104−1〜104−nの各損失の総量を示す。また、ηi(pi)は、i番目のインバータ104−iのインバータ効率特性における分配電力piのときの効率ηiを示す。また、wiは、i番目のインバータ104−iのインバータ効率特性における定格を示す。
【0058】
[充電制御のための処理手順例]
図7のフローチャートは、本実施形態における電力管理装置200が充電制御に対応して実行する処理手順例を示している。
【0059】
まず、総電力算出部221は、電力管理地域1における各太陽電池101の余剰電力を取得する(ステップS101)。
このために、例えば総電力算出部221は、需要家施設10における施設別制御部107のそれぞれに対して、ネットワーク300経由で太陽電池101の余剰電力の通知を要求する。この要求に応じて施設別制御部107の各々は、自己の管理下における太陽電池101の余剰電力を求める。この余剰電力は、例えば同じ需要家施設10において太陽電池101が発生している電力と、負荷106に供給される電力との差分として求めることができる。施設別制御部107は、このように求めた太陽電池101の余剰電力を電力管理装置200に通知する。
上記のようにして、電力管理装置200における総電力算出部221は、各施設別制御部107から通知される太陽電池101の余剰電力を取得する。
【0060】
総電力算出部221は、ステップS101により取得した太陽電池101ごとの余剰電力を合計することで、太陽電池101の群における余剰電力の総量(総電力p)を算出する(ステップS102)。
【0061】
次に、分配電力決定部222は、電力管理地域1におけるインバータ104ごとのインバータ効率特性を、インバータ効率特性記憶部224が記憶するインバータ効率特性テーブル240から読み出して取得する(ステップS103)。
【0062】
次に、分配電力決定部222は、ステップS102により算出した余剰電力の総量と、ステップS103により取得したインバータ効率特性を利用し、先の式1に基づいて、分配対象の蓄電池103と、分配対象の蓄電池ごとの分配電力を決定する(ステップS104)。
【0063】
分配制御部223は、ステップS104の決定結果に従って、分配対象として決定された蓄電池103ごとに対して、決定された分配電力により充電が行われるように制御する(ステップS105)。
【0064】
このように蓄電池103の群に対する充電制御が行われることで、分配対象として決定された蓄電池103に対応するインバータ104は、例えば定格近傍で電力変換を行うように動作させることができる。これにより、分配対象として決定された蓄電池103に対応するインバータ104は、いずれも高効率が維持され、電力損失が低減される。
一方、分配対象として決定されなかった蓄電池103に対しては充電のための電力が供給されない。従って、分配対象として決定されなかった蓄電池103に対応するインバータ104において電力損失は発生しない。
この結果、電力管理地域1における蓄電池103の群を対象として充電を行うにあたってのインバータ104の群における電力損失が低減される。
【0065】
[電力管理装置の放電制御]
次に、電力管理装置200が、電力管理地域1における蓄電池103を対象として行う電力分配制御としての放電制御について説明する。
図8は、
図1の電力管理システムにおける各需要家施設10の蓄電池103(103−1〜103−n)、インバータ104(104−1〜104−n)及び負荷106(106−1〜106−n)の間の電力系統を模式的に示している。
なお、同図においては、共通蓄電装置20が示されているが、電力分配制御としての放電制御に対応する共通蓄電装置20の動作については後述する。
【0066】
蓄電池103の各々において蓄積された電力を放電させて負荷106に供給しようとする場合、負荷106の群が必要とする電力の総量である総電力pは、図示するように、インバータ104のそれぞれにおいて交流変換された後に出力された電力p1〜pnの和である。
【0067】
この際において、例えば、総電力pが少ないような場合において、総電力pを得るためにすべての蓄電池103−1〜103−nを放電させたとすると、各蓄電池103−1〜103−nがまかなうべき放電電力が少なくなる。この場合、インバータ104−1〜104−nが境界値α未満の電力で動作することになり、電力損失が増加する可能性がある。
【0068】
そこで、電力管理装置200は、例えば先の充電制御に準じて、以下のように放電のための電力を分配すべき(割り当てるべき)分配対象としての蓄電池103を決定する。
つまり、電力管理装置200における分配電力決定部222は、インバータ効率特性記憶部224に記憶されるインバータ効率特性テーブル240を参照して、各インバータの効率(電力損失)と電力との関係を認識する。そのうえで、蓄電池103−1〜103−nのうちから、例えば、総電力pを分配したときに、インバータ104における損失が一定以下(効率が一定以上)となる電力で放電可能な1以上の蓄電池103を充電対象として決定する。また、この際に、充電対象としての蓄電池103ごとに総電力pのうちからどれだけの電力を分配して充電すべきかについても決定する。
【0069】
なお、分配電力決定部222は、放電時においても、先の式1を利用して、損失Lを最小化する「i」と「pi」を求めることにより、分配対象の蓄電池103と分配電力(放電電力)を求めるようにすればよい。
【0070】
[放電制御のための処理手順例]
図9のフローチャートは、電力管理装置200が放電制御のために実行する処理手順例を示している。なお、この図において、
図7と同様の処理となるステップについては同一符号を付している。
まず、放電制御における総電力算出部221は、負荷106のそれぞれが必要とする電力(負荷電力)を取得する(ステップS101a)。
このために、総電力算出部221は、施設別制御部107のそれぞれに対して、ネットワーク300経由で負荷電力の通知を要求する。この要求に応答して、施設別制御部107は、それぞれ、自己の管理下にある負荷106の負荷電力を計測し、計測した負荷電力を電力管理装置200に通知する。総電力算出部221は、このように各施設別制御部107から通知された負荷電力を取得する。
【0071】
次に、総電力算出部221は、負荷106の群が必要とする電力の総量、つまり総電力pを算出する(ステップS102a)。このためには、総電力算出部221は、ステップS101aにより取得した負荷電力の総和を算出すればよい。
図9におけるステップS103、S104の処理は、
図7と同様である。ただし、ステップS104において、分配電力決定部222は、分配対象として、負荷106の群が必要とする総電力pをまかなうための蓄電池103を決定する。また、ステップS104において、分配電力決定部222は、分配対象の蓄電池103ごとに、放電により出力させるべき電力を分配電力として決定する。
そして、分配制御部223は、分配対象の蓄電池103から、それぞれについて決定された分配電力による電力が出力されるように放電制御を実行する(ステップS105a)。
このように処理が実行されることで、蓄電池103から放電させる場合においても、インバータ104の電力損失を低減させることができる。
【0072】
[共通蓄電装置制御]
続いて、本実施形態における共通蓄電装置制御について説明する。本実施形態における共通蓄電装置制御は、
図1に示したように、系統電源3に接続される共通蓄電装置20の充放電動作を電力管理装置200が制御することである。
【0073】
図6に例示したように、太陽電池101−1〜101−nにおける余剰電力の総電力pを蓄電池103−1〜103−nに充電するにあたっては、蓄電池103−1〜103−nによる空き容量の総量に対して総電力pが相対的に大きいような状態となる可能性がある。
太陽電池101の発電電力は、日照などの条件に依存する。例えば日照が良好な天気であれば、太陽電池101−1〜101−nにおける発電電力が増加し、総合の発電電力も相当に高くなる。このようなときに、蓄電池103−1〜103−nにおける空き容量が十分でない状態である場合、総電力pのすべてを蓄電池103−1〜103−nに分配できない場合が生じる。
この場合には、総電力pにおいて、さらに、蓄電池103−1〜103−nに対する充電電力の余剰分としての差分電力が生じる。このような余剰分としての差分電力は、系統電源3に流出することによる損失となる。
【0074】
また、負荷106−1〜106−nのそれぞれの必要電力が大きいのに対して、相対的に蓄電池103−1〜103−nの蓄電容量が少ない状態となる可能性がある。このような状態のもとで、
図8に例示したように、負荷106−1〜106−nに対して蓄電池103−1〜103−nから電力を分配するように制御される可能性もある。
上記のような場合には、蓄電池103−1〜103−nからインバータ104−1〜104−nを介して出力される電力p1〜pnの和である総電力pが、負荷106−1〜106−nによる総合の負荷電力に満たない状態となる。
この場合には、負荷106−1〜106−nに供給すべき総電力pについての不足分としての差分電力が生じる。このような不足分としての差分電力が生じることによっては、系統電源3に商用電源2が不足分に応じて流入することにより、商用電源2の使用量が増加することになる。
【0075】
また、本実施形態の電力管理装置200における第1電力管理部202による電力管理は、先の説明から理解されるように、ネットワーク300経由による各需要家施設10における施設別制御部107との通信を伴う。
つまり、第1電力管理部202は、総電力pを算出するにあたり、
図7のステップS101として示したように、ネットワーク300経由で施設別制御部107から太陽電池101ごとの余剰電力を取得する。あるいは、電力管理装置200は、
図9のステップS101aとして示したように、ネットワーク300経由で施設別制御部107から負荷106の負荷電力を取得する。このように、第1電力管理部202は、ネットワーク300経由で電力管理に必要な情報を取得する。
また、
図7のステップS105による充電制御あるいは
図9のステップS105aによる放電制御を行うにあたっては、第1電力管理部202は、ネットワーク300経由での通信を介して、各需要家施設10における施設別制御部107を制御する。制御の際には、例えば第1電力管理部202は、施設別制御部107に対して蓄電池103の充電あるいは放電のための指令値などを含む制御データを送信する。
【0076】
しかし、ネットワークによる通信はベストエフォート型であって、必ずしも通信速度が補償されるわけではなく、また、一定時間内にデータが相手に到達することについての補償はない。
このために、各需要家施設10の施設別制御部107が制御データを受信して蓄電池103の制御を実行するタイミングは、制御値を生成するための蓄電池103の余剰電力や負荷106の負荷電力などが得られていたタイミングに対して遅延する可能性がある。そして、このような遅延によるタイムラグは、ネットワーク300のトラヒックの状況の他、電力管理装置200や施設別制御部107の処理負荷などによって相当に大きくなる場合がある。
【0077】
このような場合、施設別制御部107が受信した制御データが示す制御内容は、制御対象である現在の総電力に対して乖離していることになる。このように制御データが現在の電力状態と乖離している状態のもとで蓄電池103の充放電動作を制御した場合には、充放電される電力に誤差が生じ、蓄電池103の充放電電力に過不足が生じる。つまり、第1電力管理部202による電力分配制御のタイムラグによっても、蓄電池103の充放電電力の余剰分あるいは不足分による差分電力が生じる。
このように、電力分配制御のタイムラグに起因して差分電力が生じた場合にも、余剰分の差分電力が系統電源3に流出することによる電力損失や、不足分の差分電力が商用電源2から系統電源3に流入することによる商用電源2の使用量の増加などが生じる。
【0078】
そこで、電力管理装置200における第2電力管理部203は、第1電力管理部202による電力分配制御と並行して、以下に説明するようにして、共通蓄電装置20の充放電動作を制御する。このような第2電力管理部203の制御によって、上記のように生じる差分電力の抑制が図られる。
【0079】
[第2電力管理部の構成例]
ここで、再度、
図3を参照して第2電力管理部203の構成例について説明する。同図に示す第2電力管理部203は、差分電力算出部231と蓄電装置制御部232とを備える。
差分電力算出部231は、第1電力管理部202による電力分配制御が行われている状態のもとでの、電力管理システムにおける各蓄電池103に対する充電電力の余剰分または各蓄電池103から負荷106に供給する電力の不足分に対応する差分電力を算出する。
なお、差分電力算出部231は、系統電源3にて得られる電力に基づいて差分電力を算出する。より具体的には、差分電力算出部231は、
図6または
図8に示されるように、系統電源において総電力pが得られる点から共通蓄電装置20の接続点との間において得られる総電力pについての現在値を測定し、測定した現在値を利用して差分電力Pdfを算出する。
【0080】
蓄電装置制御部232は、差分電力算出部231により算出された差分電力に基づいて、共通蓄電装置20の充電または放電を制御する。
【0081】
図10は、
図1に例示した電力管理システムにおける或る1日(0時〜24時)の電力に関する測定結果例を示している。同図においては、横軸により時間が示され、縦軸に電力が示される。
同図のグラフにおける線Aは、電力管理システムにおける各需要家施設10の負荷106の群による総合の必要電力(需要電力)についての測定結果を示す。
線Bは、電力管理システムにおける太陽電池101の群による総合の発電電力についての測定結果を示す。
線Cは、電力管理システムにおける総合の発電電力における総合の需要電力に対する余剰電力を示す。余剰電力が正の値であれば、総合の発電電力が総合の需要電力に対して余剰していることを示す。一方、余剰電力が負の値であれば、総合の発電電力が総合の需要電力に対して不足していることを示す。余剰電力は、第1電力管理部202における総電力算出部221が算出する総電力pに相当する。
同図によれば、1日おいて、余剰電力が変動しながらほぼ定常的に発生していることが分かる。
【0082】
第1電力管理部202は、電力分配制御として、線Cにより示す余剰電力が正の値の場合には、
図6により説明した充電制御を実行し、余剰電力が負の値の場合には、
図8により説明した放電制御を実行することで余剰電力の抑制が図られる。
ただし、上記の電力分配制御にあたっては、前述のように、太陽電池101の発電電力と蓄電池103の空き容量との差、あるいは負荷が必要とする総合の必要電力と蓄電池103の蓄電量との差に応じて差分電力が生じる。蓄電池103に充電しきれない状態では、正の差分電力が生じ、蓄電池103が負荷106の必要とする必要電力に応じた電力を放電できない場合には負の差分電力が生じる。また、前述した第1電力管理部202による電力分配制御のタイムラグによっても差分電力が生じる可能性がある。この場合にも、差分電力については、正の値となる場合と負の値となる場合とのいずれもが生じ得る。
【0083】
図11は、1日における予測誤差値の変化を示している。同図においては横軸が時間を示し、縦軸が電力を示す。また、同図に示される予測値、現在値、予測誤差値、制御値、制御誤差値は、10時10分における電力管理装置200の制御状態を示している。
【0084】
同図において予測値(w)は、第1電力管理部202における総電力算出部221が算出する総電力pに相当する。より具体的には、予測値は、過去の一定時間(例えば30分)の総電力pの平均値であり、10分後の制御値を求めるための計算値である。このように求められる予測値は、先の説明から理解されるように、総電力の現在値と乖離している可能性がある。
【0085】
現在値(w)は、例えば10時10分から10時20分までにおいて第2電力管理部203における差分電力算出部231が系統電源3から測定した総電力についての値である。
予測誤差値(w)は、予測値の誤差を示すもので、現在値から予測値を減算することによって求められる。
図11におけるグラフは、このような予測誤差値を示している。
制御値(w)は、第1電力管理部202における分配電力決定部222が決定する分配電力(p1〜pn)の総計である。この場合、制御値は予測値と等しい。
【0086】
制御誤差値は、第1電力管理部202による充電制御または放電制御における制御誤差によって現れる電力の値であり、差分電力に相当する。この場合の差分電力は、現在値から制御値を減算することによって求められる。
つまり、差分電力算出部231は、系統電源3から現在の総電力を測定して現在値を取得し、取得した現在値から総電力算出部221が算出した総電力p(即ち、予測値である)を減算することにより差分電力を求めることができる。
【0087】
蓄電装置制御部232は、上記のように算出された差分電力(制御誤差値)がゼロとなるように、共通蓄電装置20の充放電を制御する。
具体的に、差分電力が正の値である場合には、電力管理地域1における太陽電池101の総合の余剰電力を各蓄電池103に分配してもなお残存している状態である。
そこで、この場合の蓄電装置制御部232は、
図6に示すように、差分電力Pdfとしての余剰電力の残存分が共通蓄電装置20に充電されるように、共通蓄電装置20を制御する。
【0088】
また、差分電力が負の値である場合には、電力管理地域1における各需要家施設10における負荷106の必要電力に対して、各蓄電池103から放電される総合の電力が不足している状態である。
そこで、蓄電装置制御部232は、
図8に示すように、負荷106の群にとって必要な負荷電力の不足分に相当する差分電力Pdfが、共通蓄電装置20によって放電されるように、共通蓄電装置20を制御する。
【0089】
また、
図12を参照して、インバータ104のインバータ効率特性を考慮した共通蓄電装置20の制御例について説明する。
図12に示される予測値、現在値、予測誤差値、制御値及び制御誤差値は、16時40分における電力管理装置200の制御状態を示している。
【0090】
図12によると、16時40分において、総電力算出部221により算出された予測値(総電力p)は−217Wであり、差分電力算出部231が系統電源3から測定した総電力の現在値は−316Wである。この場合の予測誤差値は−99W(=−316W−(−217W))である。
【0091】
この場合において、−217Wの予測値としての電力の絶対値は、インバータ104のインバータ効率特性における境界値α未満の範囲に含まれる。このため、
図12の場合には、第1電力管理部202における分配電力決定部222が1つの蓄電池103のみを分配対象として決定したとしても、分配対象の蓄電池103を放電させた際にはインバータ104の効率が低下してしまう。
【0092】
そこで、このような場合の総電力算出部221は、制御値である総電力pについて予測値と同じにするのではなく、境界値αに対応する値としてもよい。
図12においては、境界値αに対応する電力値が1000wである場合を例に挙げている。このように境界値αに対応する電力値が1000wであるのに応じて、同図では、総電力算出部221が制御値である総電力pについても−1000wとして算出した例が示されている。
上記のように制御値について−1000wが設定されるのに応じて、差分電力算出部231は、制御誤差値である差分電力について、684w(=−316−(−1000))である算出する。この場合、制御誤差値として求められた差分電力と、現実に得られている差分電力との間には誤差が生じるものの、インバータ104における電力損失を回避することができる。
【0093】
なお、
図12の場合において、総電力算出部221は、予め定めた所定の条件に従って、インバータ104における電力損失と、差分電力の誤差による損失とのいずれを回避すべきかを判断してもよい。総電力算出部221は、判断した結果に基づいて、制御値である総電力pについて予測値と同じ値にすべきか、境界値αに対応する値に設定すべきかを決定する。
【0094】
図13は、第2電力管理部203による蓄電装置制御が行われなかった場合の9時から17時までの電力状態と、蓄電装置制御を行った場合の9時から17時までの共通蓄電装置20の蓄電量を示している。同図においては横軸が時間を示し、縦軸が電力量を示す。
【0095】
同図における線Dは、第2電力管理部203による蓄電装置制御を行わない場合における、時間経過に応じた正の差分電力の積算値である。正の差分電力は、系統電源3に流出する電力である。同図によれば、9時から17時までに1683Whの電力が系統電源3に流出する。
一方、同図における線Eは、第2電力管理部203による蓄電装置制御を行わない場合における、時間経過に応じた負の差分電力の積算値である。負の差分電力は、商用電源2から系統電源3に流入する電力である。同図によれば、9時から17時までに1413Whの電力が商用電源2から系統電源3に流入する。
この場合、9時から17時までの差分電力による電力損失は、2096Wh(=1683Wh+1413Wh)である。
【0096】
線Fは、第2電力管理部203による蓄電装置制御を行った場合の共通蓄電装置20の時間ごとの蓄電量について、9時の蓄電量をゼロとした相対値により示している。
あくまでも一例であるが、同図によれば、9時から17時までにおける蓄電量の最小値は−136Whであり、最大値は270Whである。このことから、例えば9時における蓄電量を蓄電容量の50%として運用するとした場合、共通蓄電装置20における蓄電池21の蓄電容量としては、600Wh(=300Wh±270Wh)程度を確保すればよいことが導出される。
【0097】
[処理手順例]
図14のフローチャートを参照して、電力管理装置200における第2電力管理部203が実行する共通蓄電装置制御のための処理手順例について説明する。
まず、第2電力管理部203において、差分電力算出部231は、前回の共通蓄電装置20に対する充放電制御から一定時間が経過するのを待機する(ステップS201−NO)。
ここで、本実施形態の共通蓄電装置制御によっては、第1電力管理部202による電力分配制御のもとでの制御誤差が抑制される。このことを考慮すれば、ステップS201における一定時間については、第1電力管理部202による電力分配制御の周期よりも短い時間とすることが好ましい。
【0098】
前回の共通蓄電装置20に対する充放電制御の実行から一定時間が経過すると(ステップS201−YES)、差分電力算出部231は、例えば系統電源3における所定位置の電力を測定することによって、現在の総電力を測定する(ステップS202)。
具体的に、差分電力算出部231は、現在において第1電力管理部202が電力分配制御として蓄電池103に対する充電制御を行っている場合には、ステップS201により、現在の充電総電力を測定する。
一方、現在において第1電力管理部202が電力分配制御として蓄電池103に対して放電制御を行っている場合、差分電力算出部231は、現在の放電総電力を測定する。
【0099】
次に、差分電力算出部231は、ステップS202により測定された現在の総電力を利用して差分電力を算出する(ステップS203)。具体的に、差分電力算出部231は、
図11にて説明したように、第1電力管理部202における総電力算出部221が算出した予測値(総電力p)とステップS201により測定された現在の総電力との差分を差分電力として求めればよい。
【0100】
蓄電装置制御部232は、ステップS203により算出された差分電力に基づいて共通蓄電装置20の充放電電力(充電電力または放電電力)を決定する(ステップS204)。ここで、正の値による充放電電力は共通蓄電装置20に対する充電電力を示し、負の値による充放電電力は、共通蓄電装置20の放電電力を示す。
最も簡単な例として、蓄電装置制御部232は、ステップS203により算出された差分電力をそのまま充放電電力とすることができる。正の値の差分電力は太陽電池101の群による余剰電力のうちで蓄電池103の群に充電されずに系統電源3に流出する電力に相当する。また、負の値の差分電力は、負荷106の群に供給すべき蓄電池103の群からの放電電力についての不足分として商用電源2から系統電源3に流入する電力に相当する。
あるいは、蓄電装置制御部232は、ステップS203により算出された差分電力と、分配対象の蓄電池103から共通蓄電装置20までの系統の電力伝搬特性や共通蓄電装置20の特性などに応じた係数などを利用した演算によって充放電電力を決定してもよい。
【0101】
次に、蓄電装置制御部232は、ステップS204により決定された充放電電力によって充電または放電が行われるように共通蓄電装置20を制御する(ステップS205)。
この際、蓄電装置制御部232は、共通蓄電装置20における制御部23に対して、ステップS204により決定された充放電電力を指示する。制御部23は、指示された充放電電力による充電または放電が蓄電池21にて行われるように制御を実行する。
【0102】
ここで、蓄電装置制御部232と共通蓄電装置20の制御部23との通信は、ネットワーク300とは異なる所定の通信路を介して行われる。蓄電装置制御部232と共通蓄電装置20の制御部23とを接続する通信路については、例えば一定以上の通信品質が保証されており、一定時間内におけるデータの送受信が保証されている。このように、蓄電装置制御部232と制御部23との通信路をネットワーク300とは異なるものとすることで、蓄電装置制御部232による制御に応答した共通蓄電装置20における蓄電池21の充放電動作を迅速に開始させることができる。つまり、本実施形態においては、差分電力の抑制を速い応答で行うことができる。
【0103】
なお、これまでの説明においては、第1電力管理部202が行う電力管理が、インバータ104における電力損失の低減を図るための電力分配制御である場合を例に挙げている。
しかし、第1電力管理部202が行う電力管理は、例えば、予め定めた運転計画に従った電力管理地域1における電力制御や、商用電源2の利用料金の抑制などを考慮した電力管理地域1における電力制御などであってもよい。
つまり、第2電力管理部203の蓄電装置制御によっては、第1電力管理部202が行う電力管理の内容に係わらず、蓄電池103に対する充放電に際して生じる差分電力を抑制することが可能である。
【0104】
なお、上述の電力管理装置200の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の電力管理装置200の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0105】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。