特許第6192536号(P6192536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192536
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ガスシール誘導トンネル炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/04 20060101AFI20170828BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F27B9/04
   H05B6/10 381
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-512147(P2013-512147)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-532265(P2013-532265A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】US2011037714
(87)【国際公開番号】WO2011149919
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月14日
【審判番号】不服2016-2488(P2016-2488/J1)
【審判請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】61/348,167
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591029943
【氏名又は名称】インダクトサーム・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INDUCTOTHERM CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ロヴェンス
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・フォンテーヌ
【合議体】
【審判長】 鈴木 正紀
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−267704(JP,A)
【文献】 特開2005−221132(JP,A)
【文献】 特開平8−121969(JP,A)
【文献】 特開2008−308729(JP,A)
【文献】 特開2008−190783(JP,A)
【文献】 特開2002−206117(JP,A)
【文献】 実開平2−58694(JP,U)
【文献】 特開2003−227764(JP,A)
【文献】 特開平10−103639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
C21D 9/52- 9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスシール誘導トンネル炉であって、
工作物がそこを通過して誘導加熱されるところの閉鎖トンネル領域をその長手方向長さに沿って形成する炉エンクロージャにして、前記閉鎖トンネル領域が工作物入口端部及び工作物出口端部を有する炉エンクロージャ、
前記工作物入口端部位置に位置付けた炉エンクロージャ入口端部フランジ及び工作物出口端部位置に位置付けた炉エンクロージャ出口端部フランジ、
炉エンクロージャの閉鎖トンネル領域の長手方向長さの周囲に配置した誘導コイル、
を含み、
炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲にガス密のバリヤチャンバを形成するバリヤ材料にして、前記炉エンクロージャ入口端部フランジとインターフェースするシールされた入口端部及び、前記炉エンクロージャ出口端部フランジとインターフェースするシールされた出口端部を有するバリヤ材料を含み、
前記炉エンクロージャ入口端部フランジ内または炉エンクロージャ出口端部フランジ内に配置したバリヤガス入口導管にして、前記ガス密のバリヤチャンバ内へのバリヤガス入口通路を形成するバリヤガス入口導管、
調節ガス出口及び調節ガス入口を有し、前記調節ガス出口がバリヤガス入口導管に接続されるガスレギュレータ、
前記調節ガス入口に接続したバリヤガスのサプライ、
前記バリヤガスのサプライの前記調節ガス出口への送給を調節するフィードバック圧力信号を前記ガスレギュレータに提供する圧力センサ、
を更に含み、
前記フィードバック圧力信号が、ガス密のバリヤチャンバ内のバリヤガス圧力と、閉鎖トンネル領域内のプロセスガス圧力との間の差圧に比例し、圧力コントローラが、閉鎖トンネル領域からのプロセスガスのフラッシングをコントロールする異常出力信号を有することを特徴とするガスシール誘導トンネル炉。
【請求項2】
前記誘導コイルがバリヤ材料の外側に配置される請求項1に記載のガスシール誘導トンネル炉。
【請求項3】
前記ガス密のバリヤチャンバからのバリヤガス出口通路を形成するバリヤガス出口導管を更に含む請求項1又は2に記載のガスシール誘導トンネル炉。
【請求項4】
炉エンクロージャ入口端部フランジとのガス密の入口接続部を形成する相互接続用のガス密の入口コンポーネントと、炉エンクロージャ出口端部フランジとのガス密の出口接続部を形成する相互接続用のガス密の出口コンポーネントとを更に含む請求項1〜3の何れかに記載のガスシール誘導トンネル炉。
【請求項5】
前記誘導コイルをガス密のバリヤチャンバ内に配置した請求項1、3、4の何れかに記載のガスシール誘導トンネル炉。
【請求項6】
工作物がそこを通過して誘導加熱されるところの閉鎖トンネル領域をその長手方向長さに沿って形成する炉エンクロージャを含み、前記閉鎖トンネル領域が工作物入口端部及び工作物出口端部を有する、ガスシール誘導トンネル炉からのプロセスガスの漏出防止方法
であって、前記プロセスガスがプロセスガス圧力下において少なくとも前記閉鎖トンネル領域内に収納され、炉エンクロージャ入口端部フランジが前記工作物入口端部位置に位置付けられ、炉エンクロージャ出口端部フランジが前記工作物出口端部位置に位置付けられ、炉エンクロージャの長手方向長さの周囲には誘導コイルが配置され、
前記方法が、
前記炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲にバリヤ材料を提供するステップ、
前記バリヤ材料と前記炉エンクロージャ入口端部フランジとの間の入口端部インターフェースをシールし且つ前記バリヤ材料と炉エンクロージャ出口端部フランジとの間の出口端部インターフェースをシールすることにより炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲にガス密のバリヤチャンバを形成するステップを含み、
前記炉エンクロージャ入口端部フランジ内または炉エンクロージャ出口端部フランジ内に配置したバリヤガス入口導管を介して前記ガス密のバリヤチャンバにバリヤガスを供給するステップ、
ガス密のバリヤチャンバからバリヤガスを排出させるステップ、
ガス密のバリヤチャンバ内のバリヤガス圧力を、閉鎖トンネル領域内のプロセスガス圧力より大きい圧力に維持するステップ、を更に含む方法。
【請求項7】
炉エンクロージャの長手方向長さ内部に形成した閉鎖トンネル領域内のプロセスガス中で工作物を誘導加熱処理する方法であって、
前記閉鎖トンネル領域の工作物入口端部位置の入口端部フランジにして、炉エンクロージャの外側に位置付けたバリヤ材料とインターフェースするシールされた入口端部を形成する入口端部フランジを通して工作物を送るステップ、
炉エンクロージャの長手方向長さの周囲に配置した誘導コイルに交流を印加して前記閉鎖トンネル領域内の工作物を誘導加熱するステップ、
前記閉鎖トンネル領域の工作物出口端部位置の出口端部フランジにして、前記バリヤ材料とインターフェースするシールされた出口端部を形成する出口端部フランジを通して前記閉鎖トンネル領域から工作物を抜き出し、かくして前記炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲にガス密のバリヤチャンバを形成するステップ、
炉エンクロージャ入口端部フランジ内または炉エンクロージャ出口端部フランジ内に配置したバリヤガス入口導管を介して前記ガス密のバリヤチャンバにバリヤガスを供給するステップ、
前記閉鎖トンネル領域内のプロセスガス圧力を大気圧より大きい圧力に維持するステップ、及び、ガス密のバリヤチャンバ内のバリヤガス圧力を、閉鎖トンネル領域内のプロセスガス圧力より大きい圧力に維持するステップ、
前記ガス密のバリヤチャンバ内のバリヤガスを再循環させるステップ、
を更に含む方法。
【請求項8】
プロセスガスが水素であり、バリヤガスが窒素である請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、ここでの参照により本明細書の一部とする2010年5月25日出願の米国仮特許出願第61/348,167の利益を主張するものである。
本発明は、一般に、連続ストリップまたは個別のプレートをガスシールしたトンネルに通して誘導加熱する誘導トンネル炉に関し、詳しくは、トンネルから環境中へのプロセスガス漏出防止が考慮されるべきプロセスで使用する誘導トンネル炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス密トンネル炉内で連続ストリップを誘導加熱する必要のある工業プロセスが存在する。例えば、図1に長手方向断面で示す如く、ストリップ90がガスシール誘導トンネル炉110を通過する。炉エンクロージャ112の、ストリップ90が通過するトンネル114の周囲は十分にガス密化される。炉エンクロージャに、コイル116を通して流れる交流により発生する磁束場に対する十分な透過性があれば、単数あるいは複数の誘導コイル116を炉エンクロージャ112の外側に配置し、磁束場を炉エンクロージャを貫かせてトンネル内のストリップに磁気カップリングさせ得る。断熱材118を、例えば、トンネル内側と炉エンクロージャ12との間に使用し得る。磁束場がストリップに電磁カップリングしてストリップを加熱し、ストリップ内に渦電流を誘起させる。ストリップを加熱すると、例えば、トンネルに入る以前に液体成分をコーティングした場合は、液体成分中の溶媒が蒸発して当該液体成分がストリップに接着(または、硬化)する工業プロセスが生じる。
【0003】
炉内での誘導加熱をプロセスガス環境内で実施する必要のある工業プロセスでは、トンネルガスが炉外の周辺野外(環境)に放出されると、汚染、空気と反応しての爆発あるいは燃焼、高いプロセスガスコスト、あるいはプロセスガスの組成変更に対する厳しく低い許容差、等が問題となり得る。例えば、トンネル内の、スチール脱炭用プロセスガスには高濃度水素ガスが含まれる。炉エンクロージャ112は“ガス密”エンクロージャであるとは言え、特に、実際上は連続した1つのエンクロージャとしては構成し得ないために漏出を生じ易い。そのため、例えば、炉エンクロージャを構成する各材料間のジョイント部は、当該炉エンクロージャの初期形成中には十分ガス密であり得るが、炉エンクロージャが作動され、当該ジョイント部周囲の材料が反復して加熱及び冷却されると漏出が発生し得る。炉エンクロージャの組成や炉エンクロージャ自体の断熱材もガス透過性を有し且つトンネルからの漏出ガスの通炉として作用し得る。トンネルガスのガス漏れ対策の1つは、漏出するトンネルガスを換気良好環境内に逃出させることである。例えば、炉110の外側周囲に強制換気ボックス180を配置し得る。強制換気ボックスの上部開口180aが、ファン182がその外部周囲の空気を強制換気ボックスに送る際に当該強制換気ボックスから放出されるガスに方向性を与える。しかしながらこの方策は、炉外環境中に危険濃度のプロセスガスが蓄積しないことを保証する的確な手段を欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/348,167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスシール誘導トンネル炉からのプロセスガス漏れ防止を助成する、ガスシール誘導トンネル炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1様相によれば、実質的にガス密のトンネル炉を通過する連続ストリップまたは個別のプレートに誘導加熱プロセスを実施する装置及び方法であって、前記トンネル炉が、当該トンネル炉の長手方向に沿ってそのストリップ入口端部からストリップ出口端まで伸延するエンクロージャにより構成される装置及び方法が提供される。エンクロージャの外側の長手方向周囲にはバリヤチャンバまたはバリヤプレナムが形成される。バリヤチャンバ内にはバリヤガスを注入し且つこれをトンネル炉内のプロセスガスのそれとは異なる圧力下に維持し得る。誘導加熱プロセスに用いるインダクタはバリヤチャンバの外側または内側に位置付け得る。
【0007】
本発明の他の様相によれば、ガスシール誘導トンネル炉が提供される。炉エンクロージャが、当該炉エンクロージャの長手方向に沿った、工作物が通過して誘導加熱される閉鎖トンネル領域を形成する。炉エンクロージャの前記閉鎖トンネル領域は工作物入口端部及び工作物出口端部を有する。炉エンクロージャ入口端部フランジが工作物入口端部位置に位置付けられ、炉エンクロージャ出口端部フランジが工作物出口端部位置に位置付けられる。炉エンクロージャの閉鎖トンネル領域の長手方向周囲には誘導コイルが配置される。バリヤ材料が炉エンクロージャの長手方向外側周囲のガス密バリヤチャンバを構成し、前記バリヤ材料が、前記炉エンクロージャ入口端部フランジとインターフェースするシールされた入口端部と、炉エンクロージャ出口端部フランジとインターフェースするシールされた出口端部とを有する。
【0008】
本発明の他の様相によれば、ガスシール誘導炉からのプロセスガス漏れ防止方法であって、前記ガスシール誘導炉が炉エンクロージャを有し、該炉エンクロージャがその長手方向に沿った閉鎖トンネル領域を形成し、少なくとも該閉鎖トンネル領域内にプロセスガスが収納される間、工作物を当該閉鎖トンネル領域を通して送ることで誘導加熱する方法が提供される。炉エンクロージャの前記閉鎖トンネル領域は工作物入口端部と工作物出口端部とを有する。炉エンクロージャの工作物入口端部位置には入口端部フランジを位置付け、炉エンクロージャの工作物出口端部位置には出口端部フランジを位置付ける。炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲にはバリヤ材料を設け、炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲には、前記バリヤ材料と炉エンクロージャ入口端部フランジとの間をインターフェースする入口端部をシールし、また、前記バリヤ材料と炉エンクロージャ出口端部フランジとの間をインターフェースする出口端部をシールすることにより、ガス密チャンバを形成する。
【0009】
本発明の他の様相によれば、炉エンクロージャの長手方向長さ内に形成した閉鎖トンネル領域内のプロセスガス中で工作物を誘導加熱処理する方法が提供される。工作物が閉鎖トンネル領域の工作物入口端部位置の入口端部フランジを通して送られ、当該入口端部フランジが、炉エンクロージャの外側に位置付けたバリヤ材料とインターフェースするシールされた入口端部を形成し、炉エンクロージャの外側にはバリヤ材料を配置する。炉エンクロージャの長手方向長さの周囲に配置した誘導コイルに交流を印加して閉鎖トンネル領域内の工作物を誘導加熱する。閉鎖トンネル領域の工作物出口端部位置で、前記バリヤ材料とインターフェースするシールされた出口端部を形成するところの出口端部フランジを通して閉鎖トンネル領域から工作物を抜き出し、かくして、炉エンクロージャの長手方向長さの外側周囲に、バリヤガスを供給するガス密バリヤチャンバを形成する。
本発明の上記及びその他の各様相は本明細書及び付随する請求の範囲に示される。
【発明の効果】
【0010】
ガスシール誘導トンネル炉からのプロセスガス漏れ防止を助成する、ガスシール誘導トンネル炉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、従来のガスシール誘導トンネル炉の断面図である。
図2(a)】図2(a)は、本発明のガスシール誘導トンネル炉の1実施例における長手方向断面図である。
図2(b)】図2(b)は、図2aのガスシール誘導トンネル炉を線A−Aに沿って切断した横断方向断面図である。
図2(c)】図2(c)は、図2aのガスシール誘導トンネル炉を線D−Dに沿って切断して上方から見た部分断面図である。
図3(a)】図3(a)は、本発明のガスシール誘導トンネル炉の他の実施例における横断方向断面図である。
図3(b)】図3(b)は、図3aのガスシール誘導トンネル炉を線B−Bに沿って切断した横方向断面図である。
図3(c)】図3(c)は、図3aのガスシール誘導トンネル炉を線E−Eに沿って切断して上方から見た部分断面図である。
図4(a)】図4(a)は、本発明のガスシール誘導トンネル炉の他の実施例における横断方向断面図である。
図4(b)】図4(b)は、図4aのガスシール誘導トンネル炉を線C−Cに沿って切断した横方向断面図である。
図4(c)】図4(c)は、図4aのガスシール誘導トンネル炉を線F−Fに沿って切断して上方から見た部分断面図である。
図5図5(a)及び5(b)は、本発明のガスシール誘導トンネル炉の工作物入口及び出口の各端部の他のガスシール方法の実施例示図である。
図6図6は、本発明のガスシール誘導トンネル炉と共に使用するバリヤガスコントロールシステムの1例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図中、同じ参照番号あるいは記号は、以下に説明する如く、類似する各要素を表わすものとする。図2(a)、図2(b)、図2(c)には本発明のガスシール誘導トンネル炉10の1実施例が例示される。本実施例では、バリヤ材料22をエンクロージャ12の好適な長手方向端部構造要素に連結して、エンクロージャ12の長手方向外面周囲にバリヤチャンバ20を形成する。非限定的な当該実施例では、前記端部構造要素は“U”字型の入口及び出口の各端部フランジ12aであり、これら端部フランジを、例えば溶接またはボルト止めにより炉エンクロージャ12の各長手方向端部に好適に連結する。類似連結手段を用いてバリヤ材料22を各端部フランジ12aに連結可能である。例えば図2(a)の長手方向断面図や図2(c)の上方から見た部分断面図に示す如き少なくとも1つの位置に、バリヤガスをバリヤチャンバに供給する入口導管24を設ける。ここで“長手方向”とは、炉エンクロージャにおける、ストリップ入口端部(図2(a)の矢印に隣接する)からストリップ出口端部までの長さを言うものとする。従って、バリヤチャンバ20は、炉エンクロージャ12の外側でストリップ入口端部からストリップ出口端部までの長さ部分に“巻き付け”た、実質的にガス密のチャンバを形成する。言い換えれば、炉エンクロージャ12は、トンネルの横断方向周囲の長手方向内側“スリーブ”を形成し、バリヤ材料22が、閉鎖トンネル領域の横断方向周囲の長手方向外側第2“スリーブ”を形成する。ここで、“横断方向”とは、トンネルを通して移動するストリップの長さ方向に実質的に直交するトンネルの各断面を言うものとする。ガス密のバリヤチャンバは結局、炉エンクロージャ12の外側、バリヤ材料22の内側、そして、炉エンクロージャ12の長手方向の出口及び入口の2つの各端部フランジ12a、により境界付けられる。本発明では各端部フランジ12aは炉エンクロージャ12の一体部分であり得るが、当該構成は炉エンクロージャの長手方向各端部を終端させる非限定的な1方法を表わす。炉エンクロージャの長手方向の一端位置の端部フランジ12aを、トンネルの工作物入口及びまたは出口周辺の全周囲に伸延され得る。
【0013】
炉エンクロージャ及びバリヤ材料を、シリコンあるいはテフロン(登録商標)処理した、例えばシートフォーム状のガラス繊維等の、電磁的に透明な材料から形成した場合は、炉エンクロージャ12と、バリヤ材料22の外側に1つまたは1つ超のインダクタ16(誘導コイル)を配置し得る。従来技術における如く、断熱材18を本発明の全実施例において設け得る。図2(b)に示す如く、1実施例において使用する一回巻きソレノイドインダクタを、端子16a及び16b位置で外部交流電源(もし使用する場合はインダクタ負荷整合用コンポーネントを介して)に接続し得る。
【0014】
図では一回巻き型ソレノイドインダクタを示したが、インダクタは、本発明の全実施例において任意の電気的構成、例えば、直列及びまたは並列で接続可能な電気的構成を有する1つまたは1つ超のインダクタであり得、また、特定用途に対する任意の好適なタイプ、例えばソレノイドまたは横方向磁束型インダクタ等であり得る。
【0015】
ガス密トンネル内でストリップを処理中に、入口導管24を介してバリヤガス、例えば窒素等の不活性ガスを、当該ガス密トンネル14内のプロセスガスの圧力より大きい正のバリヤガス圧力下にバリヤチャンバ20に注入し得る。バリヤチャンバからバリヤガスを抜き出すための1つまたは1つ超の出口導管(図示せず)を設け得る。
【0016】
本発明の全実施例において、炉のトンネルに関する入口及び出口位置でのガス密性は、図5(a)に示す如きストリップ工業プロセスにおいてその他コンポーネントに相互接続するか、または、図5(b)に示す如く、炉の入口及び出口の各端部を十分にガス密化するかにより実現し得る。図5(a)では、入口及び出口の各位置において、相互接続用の、ガス密の、隣接するコンポーネントはステンレススチール製のフランジ80であり、これらステンレススチール製フランジに接続した上流側及び下流側のコンポーネントが、炉のトンネルに供給される及び該トンネルから取り出したプロセスガスを取り扱い得る。図5(b)では炉のエンクロージャの横断方向の入口及び出口の各端部が、ストリップの両側部にシール圧を行使する加圧ロール82または加圧パッドを利用してガス密化され得る。
【0017】
図3(a)、図3(b)、図3(c)には本発明のガスシール誘導トンネル炉30の他の実施例が例示される。本実施例ではバリヤチャンバは、バリヤ材料32を炉エンクロージャ12の好適な長手方向端部構造要素に連結することで炉エンクロージャ12の外側長手方向表面周囲に形成した拡張バリヤプレナム34である。当該非限定実施例では、端部構造要素は“U”字型の入口及び出口の各端部フランジ12aであり、溶接またはボルト止めにより炉エンクロージャ12の各長手方向端部に好適に連結する。類似連結手段を用いてバリヤ材料32を各端部フランジ12aに連結可能である。例えば図3(a)の長手方向断面図や図3(c)の上方から見た部分平面図に示す如き少なくとも1つの位置に、バリヤガスをバリヤチャンバに供給する入口導管36を設ける。従って、バリヤプレナム34は、炉エンクロージャ12の外側でストリップ入口端部からストリップ出口端部までの長さ部分に“巻き付け”た、実質的にガス密のチャンバを形成する。図3(a)の実施例の当該ガス密のチャンバは上述した図2(a)の実施例におけるそれと類似するが、インダクタ16がバリヤプレナムに収納される点で相違している。バリヤプレナム34は、例えば図2(a)の実施例ではインダクタはバリヤプレナムの外側であるのとは逆に、少なくとも、1つまたは1つ超のインダクタ16(及び、使用するのであれば流体冷却用要素)を当該バリヤプレナムに収納するに十分大型である。当該構成上、インダクタ外部電源(及び使用するのであれば冷却源)への接続には、ガス密の電気的(及び使用するのであれば流体冷却用の)フィッティングを使用すべきである。本発明では各端部フランジ12aは、図2(a)の実施例における如く炉エンクロージャ12の一体部分であり得るが、当該構成は炉エンクロージャの長手方向各端部を終端させる非限定的な1方法を表わす。あるいは各端部フランジ12aはバリヤ材料32の一体部分と考え得る。
【0018】
ガス密トンネル内でのストリップ処理中に、入口導管36を介してバリヤガス、例えば窒素等の不活性ガスを、当該ガス密トンネル14内のプロセスガスの圧力より大きい正のバリヤガス圧力下にバリヤプレナム34に注入し得る。バリヤチャンバからバリヤガスを抜き出すための1つまたは1つ超の出口導管(図示せず)を設け得る。
【0019】
バリヤ材料32が導電性材料である場合はバリヤプレナム34を、インダクタ16への交流印加時に発生する磁束場の通炉に当該バリヤ材料が干渉しないよう十分なサイズとする。バリヤ材料を非導電性材料製とする場合はバリヤプレナムを小型化し得るが、当該小型の非導電性材料の周囲を電磁シールド化する必要がある。
【0020】
図4(a)、図4(b)、図4(c)、には、本発明のガスシール誘導トンネル炉40の他の実施例が例示される。本実施例では、炉エンクロージャの入口及び出口の各端部フランジ12bと、バリヤ材料42の各端部42’及び42”とを図4(a)に示す如く相互接続することで、炉エンクロージャ12の外側長手方向表面周囲にバリヤチャンバ44が形成される。バリヤ材料の各端部、炉エンクロージャの各端部及び、エンクロージャの各端部フランジはナット及びボルト止め具等の好適手段により相互接続され得る。バリヤ材料42内の、例えば図4(a)の長手方向断面図や図4(c)の部分平面図に示す如き少なくとも1つの位置に、バリヤチャンバにバリヤガスを供給する入口導管46を設ける。かくして、ガス密のバリヤチャンバ44は、炉エンクロージャ12の外側及びバリヤ材料42の内側により境界付けられる。本発明において、各端部フランジ12bは炉エンクロージャの一体部分であり得るが、当該構成は炉エンクロージャの長手方向各端部を終端させる非限定的な1方法を表わす。
【0021】
ガス密トンネル内でのストリップ処理中に、入口導管46を介してバリヤガス、例えば窒素等の不活性ガスを、当該ガス密トンネル14内のプロセスガスの圧力より大きい正のバリヤガス圧力下にバリヤチャンバ44に注入し得る。バリヤチャンバからバリヤガスを抜き出すための1つまたは1つ超の出口導管(図示せず)を設け得る。
【0022】
バリヤチャンバの特定構成に基づき、バリヤチャンバの外側の炉部分内に補充バリヤガスを随意的に注入し得る。例えば図4(a)では、断熱材18は代表的にはガス多孔性材料である。かくして、トンネル14内のプロセスガスは当該断熱材18を通して漏出し、次いで、図4(a)に示す如く、端部フランジ12bと、炉エンクロージャ12のエンクロージャ端部12”との間に接続した連結部を通して漏出し得る。当該連結部は図4(a)の特定構成では漏出ガスをバリヤチャンバではなく大気中に漏出させるため、バリヤガスを導管48内に注入して当該連結部にバリヤガスを充満させ得る。
【0023】
図6には本発明の幾つかの実施例と共に使用し得る、バリヤガスコントロールシステムの1実施例が略示される。弁V−1が、バリヤガスレギュレータBGRへのバリヤガス送給をコントロールし、当該バリヤガスレギュレータBGRが、入口導管(本発明の上記実施例では24、36、46)を介してのバリヤチャンバ(本発明の上記実施例では20、34あるいは44)へのガス流れを、本実施例ではトンネル内のプロセスガスの圧力より高い正の圧力であるところのバリヤガス呼び圧力下に調節する。圧力センサPSが、バリヤチャンバ内のバリヤガスの実際の圧力(あるいはバリヤチャンバ内のガスとトンネル内のプロセスガスとの間の差圧)を検出し、当該検出圧力データをバリヤガスレギュレータBGRにフィードバックする。圧力コントローラPCも、バリヤチャンバ内のバリヤガスの実際の圧力(あるいはバリヤチャンバ内のガスとトンネル内のプロセスガスとの間の差圧)を検出する。バリヤガス圧が圧力コントローラの高低圧力設定帯域を越える場合、当該圧力コントローラは、例えばプロセスライン内の他の機器によりトンネル内のプロセスガスのフラッシュを開始させるために使用し得る異常信号を出力する。弁V−2は圧力センサ及び圧力コントローラへのガス送給用の随意的な制御弁である。例えば、バリヤガスチャンバを通過するバリヤガスの連続流れ(または循環流れ)によりバリヤガスチャンバを冷却するため、あるいはトンネルからバリヤチャンバ内に漏出するプロセスガスをフラッシュするための弁V−3を、バリヤチャンバからの随意的なガス出口位置に設け得る。弁V−3は図示しないバリヤガス処理用機器に接続し得る。
【0024】
本発明のガスシール誘導トンネル炉の1用途例はストリップスチールの脱炭である。トンネル内に収容したプロセスガスは空気中で燃焼あるいは爆発する水素ガスを高い割合で含有する。従って、トンネル内のプロセスガスはトンネル内への空気侵入を防止するべく炉の周囲大気圧より高圧に維持すべきである。本実施例用に選択した不活性バリヤガスは標準的な工業等級窒素であって、炉のバリヤチャンバ内にプロセスガス圧より大きい圧力下に注入され、かくして、炉エンクロージャとバリヤチャンバとの間からの漏出は、バリヤチャンバへのプロセスガス流入ではなくむしろ、トンネル内への窒素流入を引き起こす。
【0025】
不活性ガスの代替物としてのバリヤガスは、トンネル内のプロセスガスと許容下に反応し得る。当該反応は、非不活性であるバリヤガスとプロセスガスとの間における、燃焼、爆発あるいはその他の危険状況を招かない化学反応である。
本発明の全実施例において、バリヤチャンバに供給するバリヤガスは再循環ガスまたは非再循環ガスのいずれかであり得る。再循環ガスは、例えば、バリヤチャンバ内のバリヤガスと、トンネル内のプロセスガスとの間の正差圧の損失時、あるいは、バリヤチャンバあるいはバリヤチャンバに隣り合う領域を、バリヤチャンバにバリヤガスを連続流通させて冷却する必要がある場合に、トンネルからの漏出プロセスガスを捕捉及び処理するために使用し得る。
【0026】
本発明の全実施例において、バリヤチャンバあるいはプレナムへのバリヤガス入口を、特定用途における必要に応じてその他の好都合な位置に位置付け得る。
本発明の各実施例ではバリヤチャンバは1つを示したが、本発明の他の実施例では特定用途に依存して多数のバリヤチャンバを使用可能である。
本発明の上記各実施例ではバリヤチャンバあるいはプレナム内のバリヤガス圧力はトンネル内のプロセスガス圧力より大きいが、他の用途では、バリヤチャンバあるいはプレナム内のバリヤガス圧力がトンネル内のプロセスガス圧より低い差圧逆転状況となり得る。
本発明の全実施例における追加特徴として、図1に示す換気ボックスを本発明のガスシール誘導トンネル炉と組み合わせて使用し得る。
本発明は危険状況の恐れを最小化することを意図するものであるが、設計に関わらず工業的装置作動時には常に注意を払うべきである。大気中への自然及び強制換気が代表的なものであるが、予防的手段のみに限定されることはない。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
12 炉エンクロージャ
12a 端部フランジ
12b 端部フランジ
16 インダクタ
16a 端子
18 断熱材
20 バリヤチャンバ
22 バリヤ材料
24 入口導管
30 ガスシール誘導トンネル炉
32 バリヤ材料
34 拡張バリヤプレナム
36 入口導管
40 ガスシール誘導トンネル炉
42 バリヤ材料
44 バリヤチャンバ
46 入口導管
80 フランジ
82 加圧ロール
BGR バリヤガスレギュレータ
PS 圧力センサ
PC 圧力コントローラ
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6