特許第6192539号(P6192539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192539
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】クランクシャフトプーリ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20170828BHJP
   F16F 15/10 20060101ALI20170828BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20170828BHJP
   F16F 15/123 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F16H55/36 E
   F16F15/10 X
   F16F15/12 S
   F16F15/123 A
   F16H55/36 H
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-541204(P2013-541204)
(86)(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公表番号】特表2013-545052(P2013-545052A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】DE2011001890
(87)【国際公開番号】WO2012075981
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】102010053260.6
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(72)【発明者】
【氏名】ラシュロ マン
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03469473(US,A)
【文献】 特開2000−130508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16F 15/10
F16F 15/12
F16F 15/123
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(4)とベルト駆動装置との間でトルクを伝達する、遊星歯車伝動装置(10)を備えたクランクシャフトプーリであって、
遊星歯車伝動装置(10)は、内歯車(11)と、太陽歯車(14)と、前記内歯車(11)及び前記太陽歯車(14)と噛み合う遊星歯車(12)と、を有し、前記遊星歯車(12)は、前記クランクシャフト(4)に対し回動可能に支承されており、前記クランクシャフト(4)から、前記遊星歯車(12)、及び前記太陽歯車(14)を介して前記ベルト駆動装置にトルクが伝達され、
動吸振装置(80)が、前記内歯車(11)と、前記遊星歯車(12)と、前記太陽歯車(14)との間に介在することなく、前記遊星歯車(12)に懸架されていることを特徴とする、クランクシャフトプーリ。
【請求項2】
前記動吸振装置(80)は複数の押圧部材(91〜96)を有し、該押圧部材(91〜96)は動吸振マスであることを特徴とする、請求項1記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項3】
前記動吸振装置(80)は、複数の動吸振ばね(101〜106)をさらに有し、前記複数の動吸振ばね(101〜106)は、それぞれ一方の端部で前記遊星歯車(12)の保持部(108,109,110)に支持されており、前記複数の押圧部材(91〜96)は、前記複数の動吸振ばね(101〜106)のそれぞれの他の端部によって互いに予め付勢されていることを特徴とする、請求項2記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項4】
前記遊星歯車(12)を回転可能に支承する遊星キャリア(13)をさらに備え、
前記押圧部材(91〜96)に摩擦ライニング(98)が設けられており、
前記摩擦ライニング(98)は、前記遊星キャリア(13)に形成されている摩擦面に対して予め付勢されていることを特徴とする、請求項2記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項5】
前記摩擦ライニング(98)は、前記押圧部材(91〜96)の半径方向外側に設けられており、前記押圧部材(91〜96)は、動吸振ばね(101〜106)によって互いに向かって半径方向外側に予め付勢されていることを特徴とする、請求項4記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項6】
前記動吸振ばね(101〜106)は一方の端部でもって、遊星歯車(12)を支承する保持部(108〜110)に支持されていることを特徴とする、請求項5記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項7】
2つの前記押圧部材(91〜96)の間に夫々、動吸振マス環状ボディ(82)を有する動吸振マスの懸架用の切欠き(131〜133)が形成されていることを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項8】
前記遊星キャリア(13)から、前記押圧部材(91〜96)用の保持舌片(116)が折り曲げられていることを特徴とする、請求項7記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項9】
前記遊星歯車伝動装置(10)は、ブレーキ及び/若しくはクラッチ装置(50)と組み合わされており、
前記ブレーキ及び/若しくはクラッチ装置(50)は、クランプ可能なブレーキディスク(56)を有し、
前記ブレーキディスク(56)は、前記内歯車(11)に相対回動不能に結合されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のクランクシャフトプーリ。
【請求項10】
前記遊星歯車伝動装置(10)は、フリーホイール(6)と組み合わされていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のクランクシャフトプーリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトとベルト駆動装置との間でトルクを伝達するための、遊星歯車伝動装置を備えたクランクシャフトプーリに関する。
【0002】
欧州特許第0782674号明細書において、方向切換え型のクラッチを備えたクランクシャフトデカップラが公知になっている。欧州特許第0980479号明細書においても、ジェネレータ結合用のフリーホイールクラッチを備えたベルト駆動システムが公知になっている。
【0003】
本発明の目的は、請求項1の上位概念部に記載した、特に種々異なる運転機能及び/又は必要とされる構成スペースを考慮して、クランクシャフトプーリをさらに最適化することである。
【0004】
上記目的は、クランクシャフトとベルト駆動装置との間でトルクを伝達するための、遊星歯車伝動装置を備えたクランクシャフトプーリにおいて、動吸振装置が遊星歯車伝動装置内に組み込まれていることにより達成される。動吸振装置は、全体的に又は部分的に遊星歯車伝動装置に組み込まれている。これにより、クランクシャフトに必要とされていた軸線方向の構成スペースを減じることができる。軸線方向とは、クランクシャフトプーリの回動軸線に沿っているか又は回動軸線に対して平行であるという意味である。半径方向とは、回動軸線に対して横方向を意味する。
【0005】
クランクシャフトプーリの有利な構成は、動吸振装置が、動吸振マスである押圧部材を有していることを特徴とする。押圧部材は、他の動吸振マスを限定的に移動可能に、遊星歯車伝動装置に必要な構成スペースに取り付けるために働く。
【0006】
クランクシャフトプーリの別の有利な構成は、押圧部材が半径方向外側に予め付勢されている或いは予負荷をかけられていることを特徴とする。押圧部材は、好ましくは遊星キャリアのポット壁部に形成されていてよい摩擦面に向かって予め付勢されている。押圧部材の半径方向外側へ予め付勢されることにより、動吸振装置の運転中に、押圧部材と遊星キャリアとの間に摩擦力が形成される。
【0007】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、押圧部材に摩擦ライニングが設けられていることを特徴とする。押圧部材は、好ましくは予め付勢された状態で摩擦ライニングでもって、遊星キャリアに形成されている摩擦面に当接している。
【0008】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、押圧部材が動吸振ばねによって互いにかつ半径方向外方に予め付勢されていることを特徴とする。押圧部材を備えた動吸振ばねが、周方向で好ましくは遊星歯車伝導装置の遊星歯車の間に配置されている。これにより遊星歯車の間にある構成スペースを最適に活用することができる。
【0009】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、動吸振ばねが、一方の端部で、遊星歯車を支承するための保持部に支持されていることを特徴とする。これらの保持部は、遊星歯車を部分的に、少なくとも動吸振ばねの領域において取り囲む。保持部は、好ましくは金属薄板部材として構成されていて、例えば素材結合(stoffschluessig)によって、溶接により遊星キャリアに結合することができる。
【0010】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、2つの押圧部材の間に夫々、動吸振マス環状ボディを有する動吸振マスを懸架するための切欠きが形成されていることを特徴とする。動吸振マス環状ボディは、押圧部材に対して付加的な動吸振マスである。押圧部材の切欠きにおいて動吸振マスを懸架することにより、簡単に動吸振マス環状ボディの運動力学エネルギを、クランクシャフトプーリの運転中に動吸振ばねに伝達することができる。
【0011】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、押圧部材が、遊星キャリアに形成されている摩擦面に対して予め付勢されていることを特徴とする。遊星キャリアは、好ましくはポット底部と、摩擦面が内側に形成されているポット壁部とでほぼポット形に形成されている。遊星キャリアにおける摩擦面は、周方向で好ましくは一貫して構成されておらず、遊星歯車伝導装置の遊星歯車の領域において中断されている。
【0012】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、遊星キャリアから押圧部材用の保持部が折り曲げられていることを特徴とする。これらの保持部は、押圧部材用の軸線方向の固定エレメントである。組み付けられた状態において、押圧部材は軸線方向で好ましくは遊星キャリアのポット底部と保持部との間に配置されている。
【0013】
クランクシャフトプーリのさらに別の有利な構成は、遊星歯車伝動装置が、フリーホイール並びに/又はブレーキ装置及び/若しくはクラッチ装置と組み合わされていることを特徴とする。プーリフリーホイールとも称呼されるフリーホイールは、好ましくは軸受内輪と軸受外輪との間におけるころ型フリーホイールとして構成されている。ブレーキ装置及び/又はクラッチ装置は、構成スペースを節約するために、好ましくはクランクシャフトプーリの外側に配置されている。ブレーキ装置及び/又はクラッチ装置により簡単に、ベルト駆動式のスタータジェネレータの、スタートストップ運転、停止中の空調運転(Standklimabetrieb)及びジェネレータ運転といった種々の運転モードを実現することができる。さらに、ブレーキ装置及び/又はクラッチ装置は、停止中の空気調節といった特殊な運転状態において、遊星歯車伝動装置の切離しを可能にする。ブレーキ装置及び/クラッチ装置は、通常開放されている。燃焼器の始動、つまりスタータジェネレータによって内燃機関を始動させるために、ブレーキ装置及び/クラッチ装置を使って遊星歯車伝動装置が始動される。
【0014】
本発明は、さらに例えば独国特許出願公開第102007021233号明細書に開示されているような、自動車のパワートレインに関する。この明細書に記載された力伝達ユニットは、本発明に係るクランクシャフトプーリに交換される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るクランクシャフトプーリの縦断面図である。
図2】本発明に係る動吸振装置を備えた、図1に示したクランクシャフトプーリに組み込まれている遊星歯車伝動装置の斜視図である。
図3】動吸振装置を備えた遊星歯車伝動装置の平面図である。
図4】動吸振装置を備えた遊星歯車伝動装置の横断面図である。
図5】動吸振装置を備えた遊星歯車伝動装置の斜視図である。
図6】反対側から見た遊星キャリアのない、図5に類似した図である。
図7】遊星キャリアの斜視図であって、遊星キャリアには、遊星歯車用の保持部が取り付けられている。
図8】遊星キャリアのみの斜視図である。
図9】遊星歯車用の1つの保持部を示す斜視図である。
図10】動吸振装置の押圧部材の斜視図である。
図11】動吸振装置の動吸振マス環状ボディの斜視図である。
図12図11に示した動吸振マス環状ボディと、動吸振装置の押圧部材とを示す図である。
【0016】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細については、以下の記載から明らかになる。以下の記載において、図面に基づく実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1〜12に、クランクシャフトプーリ1を種々異なる図若しくは見方において示す。クランクシャフトプーリ1は、略してプーリ又はベルトレーンとも称呼され、例えばベルト駆動装置のベルトを、ベルトスタータジェネレータ及び/又は空調コンプレッサといった少なくとも1つの補機に連結するために働くプーリレーン2を有する。
【0018】
クランクシャフトプーリ1は、例えば独国特許出願公開第102007021233号明細書に開示されているように、自動車のパワートレインにおいて、クランクシャフト4に取り付けられている。このクランクシャフト4は、回動軸5を中心に回動可能である。自動車は、内燃機関及び電気機械を備えたハイブリッド車両であってもよい。
【0019】
クランクシャフトプーリ1に、プーリフリーホイール6が組み込まれている。このプーリフリーホイール6は、ベルトレーン2とクランクシャフト4との間で有効である。プーリフリーホイール6は、とりわけクランクシャフトプーリ1の運転中のトルク衝撃を緩衝するために働く。クランクシャフトプーリ1は、さらにフランジ部分7を有する。このフランジ部分7は、クランクシャフト4に不動に結合されている。
【0020】
さらに、クランクシャフトプーリ1内に遊星歯車伝動装置10が組み込まれている。この遊星歯車伝動装置10は、内歯車11を有する。遊星キャリア13に回動可能に支承されている3つの遊星歯車12が、内歯車11に噛み合う。遊星キャリア13は、フランジ部分7と一体に結合されている。さらに遊星歯車12は、内歯車11、遊星歯車12及び遊星キャリア13と共にクランクシャフトプーリ1内に組み込まれている太陽歯車14と噛み合う。
【0021】
プーリフリーホイール6は、内輪41と外輪42とを有する。プーリフリーホイール6の内輪41は、センタねじとも称呼される組付けねじ44に形成されている。この組付けねじ44でもってクランクシャフトにフランジ部分7が取り付けられている。外輪42は、例えば玉軸受として構成されている転がり軸受45により、組付けねじ44において回動可能に支承されている。さらに外輪42は、例えばころ軸受として構成されている転がり軸受46によって、プーリフリーホイール6の内輪41に回動可能に支承されている。
【0022】
クランクシャフトプーリ1は、電磁操作される両面摩擦ブレーキ52として構成されているブレーキ及び/又はクラッチ装置50を有する。両面摩擦ブレーキ52は、取付けプレート54と協働する電磁石53を有する。この電磁石53及び取付けプレート54は、別体の板ばね懸架部により、クランクハウジング55に軸線方向で調整可能に固定されている。これにより、ブレーキ52の両面のエアギャップが調節される。両面摩擦ブレーキ52は、クランクシャフトプーリ1の外側に配置されている。
【0023】
電磁石53と取付けプレート54との間に、ブレーキディスク56がクランプ可能である。このブレーキディスク56は、遊星歯車伝動装置10の内歯車11に相対回動不能に結合されている。内歯車11にシール金属薄板58が取り付けられていて、このシール金属薄板58は、他のシール金属薄板59と共に遊星歯車伝動装置10を取り囲む。他のシール金属薄板59とフリーホイール外輪42との間に、半径方向軸シールリング60が配置されている。この半径方向軸シールリング60は、好ましくは小さな直径上に位置し、ジェネレータ運転中にはほとんど速度差を有さない、付加的な唯一のシールである。これにより遊星歯車伝動装置10は摩擦が少ない。クランクシャフトシールは、遊星歯車伝動装置10のシール金属薄板58において摺動し、これによりクランクシャフト4における摺動面を省略することができる。
【0024】
遊星歯車伝動装置10は、エンジンオイルで潤滑されていて、追加の脱気を必要としない。内歯車11、シール金属薄板58,59、ブレーキディスク56の質量部つまりマスは、がたつき音を最小限にするために、可能な限り小さく保たれる。
【0025】
本発明の重要な観点によれば、動吸振装置80は、クランクシャフトプーリ1の内部において、特に省スペース型で遊星歯車伝動装置10と組み合わされている。動吸振装置80は、動吸振マス環状ボディ82の形式で動吸振マスを有する。動吸振マス環状ボディ82は、同様に動吸振マスである押圧部材91〜96によって、遊星歯車伝動装置10の遊星歯車12の間で周方向に懸架されている。
【0026】
押圧部材91〜96は、ペアになって組み合わされていて、周方向で遊星歯車12の間には夫々、一対の押圧部材91,92;93,94;95,96が配置されている。押圧部材91〜96の上記アセンブリにより、遊星歯車12の間の構成スペースを、最適に活用することができる。各押圧部材91〜96に、半径方向外側で摩擦ライニング98が設けられている。
【0027】
押圧部材91〜96は、動吸振ばね101〜106によって相対してかつ半径方向外側に予め付勢されている。動吸振ばね101〜106は一方の端部でもって夫々、遊星歯車12のための保持部108,109,110に支持されている。動吸振ばね101〜106は他方の端部でもって夫々、これらの動吸振ばね101〜106に配設された押圧部材91〜96に対して支持されている。
【0028】
動吸振ばね101〜106は、圧縮コイルばねとして構成されている。この実施の形態において、2つの動吸振ばね103,104は夫々、2つの保持部109,110の間で押圧部材93,94に対して予め付勢されていて、これにより、押圧部材93,94は、斜め外方に押圧され、これによりポット形の遊星キャリア13のポット壁部112に形成されている摩擦面との摩擦を発生させる。
【0029】
図7,8に見られるように、遊星キャリア13のポット壁部112は、周方向に一貫して構成されているのではなく、遊星歯車12用の保持部108〜110において中断されている。これによりポット壁部112は、ポット形の遊星キャリア13のポット底部113から軸線方向に折り曲げられている3つの円弧状のポット壁部分に分けられている。ポット底部113は、上述のハブフランジ7であり、このハブフランジ7により遊星キャリア13は、クランクシャフト4に取り付けられている。この実施の形態において、ポット底部113における貫通孔114が、センタねじ44の差込みを可能にする。
【0030】
遊星キャリア13のポット壁部112の3つの部分から夫々、押圧部材を軸線方向に保持するために働く4つの保持舌片116が折り曲げられている。さらにポット壁部112の部分の端部で夫々、保持部108〜110を遊星キャリア13に固定するために働く2つの固定板118,119が折り曲げられている。固定板118,119は、択一的に又は付加的に動吸振ばねの支持のために使用することもできる。
【0031】
押圧部材91〜96とポット壁部112との間の摩擦力は、ばね101〜106の角度位置により調節される。動吸振ばね101〜106によって予め付勢された力の半径方向の力成分が、摩擦力を形成する。動吸振ばね101〜106によって予め付勢された力の接線方向の成分により、周方向における動吸振マス環状ボディ82の弾性懸架(Federung)が可能になる。
【0032】
図11から、動吸振マス環状ボディ82に、軸線方向に延びていて、実質的に直方体に形成されている3つの連結ノーズ121,122,123が形成されていることが分かる。3つの連結ノーズ121〜123は、2つの押圧部材91,92;93,94;95,96によって夫々画成される切欠き131〜133内に差し込まれる。動吸振ばね101〜106の予め付勢された力により、押圧部材91〜96は、切欠き131〜133の領域において、動吸振マス環状ボディ82の連結ノーズ121〜123に押し付けられる。
【0033】
これにより、動吸振マスである押圧部材91〜96の運動は、動吸振マス環状ボディ82の運動と連動するか又は一体化する。摩擦を形成するポット壁部112の内側における摩擦面に対する押圧部材91〜96の半径方向の移動可能性は、これにより損なわれない。動吸振装置80の動吸振マス構造は、動吸振ばね101〜106により、クランクシャフトプーリ1の各運転点において、動吸振機能のために遊びなし(Spielfreiheit)が保証されているように予め付勢される。
【0034】
図9に、保持部110だけを斜視的に示す。保持部108〜110は同一に構成されていて、例えば溶接により遊星キャリア13に取り付けられている。保持部110は、夫々1つの動吸振ばねを支持する2つの支持脚部141,142を有する。2つの支持脚部141,142は、実質的に円弧状の結合部分144により一体に互いに結合されている。支持脚部141,142には夫々、所属の動吸振ばねを位置固定するばねカップが形成されている。結合部分144は、スペーサピンを位置固定する貫通孔を有する。このスペーサピンにおいて、1つの遊星歯車12が針状ころ軸受を介在させて支承されている。
【0035】
図10に、押圧部材92だけを斜視的に示す。押圧部材91〜96は、好ましくは同一部材として構成されている。押圧部材92は、配設される動吸振ばね用に丸味付けされた切欠きを半径方向内側に備えた本体150を有する。この本体150から、所属の動吸振ばねが支持される支持脚部154が折り曲げられている。この支持脚部154において、配設される動吸振ばね(図示せず)とは反対側に、角張った切欠き155が形成されている。この切欠き155は、他の押圧部材の他の切欠きと共に、1つの切欠き131〜133を成すために働く。
【0036】
図12から、2つの押圧部材91,92;93,94;95,96が夫々、連結ノーズ121〜123を夫々収容している切欠き131〜133を画成していることが分かる。所属の動吸振ばね及び保持部は、図12には示していない。
【符号の説明】
【0037】
1 クランクシャフトプーリ
2 ベルトレーン
4 クランクシャフト
5 回動軸
6 プーリフリーホイール
7 フランジ部分
10 遊星歯車伝動装置
11 内歯車
12 遊星歯車
13 遊星キャリア
14 サンギア
41 内輪
42 外輪
44 組付けねじ
45 転がり軸受
46 転がり軸受
50 ブレーキ及び/又はクラッチ装置
52 両面摩擦ブレーキ
53 電磁石
54 取付けプレート
55 クランクハウジング
56 ブレーキディスク
58 シール金属薄板
59 シール金属薄板
60 半径方向軸シールリング
80 動吸振装置
82 動吸振マス環状ボディ
91 押圧部材
92 押圧部材
93 押圧部材
94 押圧部材
95 押圧部材
96 押圧部材
98 摩擦ライニング
101 動吸振ばね
102 動吸振ばね
103 動吸振ばね
104 動吸振ばね
105 動吸振ばね
106 動吸振ばね
108 保持部
109 保持部
110 保持部
112 ポット壁部
113 ポット底部
114 貫通孔
116 保持舌片
118 固定板
119 固定板
121 連結ノーズ
122 連結ノーズ
123 連結ノーズ
131 切欠き
132 切欠き
133 切欠き
141 支持脚部
142 支持脚部
144 結合部分
150 本体
152 丸味付けされた切欠き
154 支持脚部
155 角張った切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12