(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192541
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】キトサンを利用する防音建材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20170828BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04B1/86 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-547642(P2013-547642)
(86)(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公表番号】特表2014-501345(P2014-501345A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2011067562
(87)【国際公開番号】WO2012092358
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】13/294,200
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/427,643
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512127109
【氏名又は名称】ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・エル・アウバラン
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−084409(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/088797(WO,A1)
【文献】
特開2001−316162(JP,A)
【文献】
特表2011−508839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00−13/30
E04B 1/62− 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維、充填剤、結合剤およびスラリー成分と相互作用するために水性スラリー全体にわたって均一に分散されたキトサンを含む成分の前記水性スラリーから形成される防音建材であって、前記繊維は鉱物綿であり、前記充填剤はスタッコであり、前記結合剤はデンプンであり、
前記防音建材が、重量ベースで、
65%〜80%の繊維、
3%〜14%の充填剤、
3%〜20%の結合剤、および
0.5%〜15%のキトサン
を含む組成を有することを特徴とする防音建材。
【請求項2】
前記水性スラリーは、許容できる曲げ強度(MOR)および硬度の物理的性質を維持するために加えられる前記キトサンの量に応じて減少した量の結合剤および前記減少した結合剤の量に応じて増加した量のリサイクルセルロース繊維を含み、
前記減少した結合剤の量に応じて増加したリサイクルセルロース繊維の含有量は、3重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の吸音建材。
【請求項3】
鉱物繊維、充填剤、結合剤およびキトサンを含む成分の水性スラリーを形成する工程と、
水性スラリー中に前記キトサンを均一に分散する工程と、
防音材料を形成するために前記水性スラリーを脱水し、乾燥する工程とを含む鋳造プロセスにおいて防音建材を製造する方法であって、
前記キトサンが、前記水性スラリー中の固体の全重量に基づいて0.5%〜15%の量で存在することを特徴とする防音建材の製造方法。
【請求項4】
前記キトサンが、酸溶液中に溶解され、前記スラリーに添加されることを特徴とする請求項3に記載の防音建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
PCT出願である、2011年12月28日に出願された、PCT/US2011/067562の371である、本出願は、2011年11月11日に出願された米国特許出願第13/294,200号の一部継続出願であり、同様に、2010年12月28日に出願された米国仮特許出願第61/427,643号の優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、建造物のための建材、より具体的には、タイル建造物内に均一に分散されたキトサンを含有する天井タイルに関する。
【背景技術】
【0003】
建材または天井タイルは、元の天井構造または天井構造を覆う取り換え物を提供するために建築業において使用されている。天井タイルは建造物面に直接取り付けられ得るか、またはそれらは、建造物に固定される支持格子を使用して吊り天井構成に取り付けられ得る。タイルは繊維、充填剤および結合剤のスラリーから作製される。
【0004】
本明細書における特定の目的の中で、タイルは特許文献1および特許文献2に記載されているもののような組成および鋳造処理を使用して作製される。これらの特許の教示によれば、繊維、充填剤、着色剤および結合剤、特にデンプンゲルを含む成形材料が、タイルの本体を成形または鋳造するために準備される。この混合物または材料は適切なトレイに入れられ、次いでその材料は、スクリードバーまたはローラを用いて所望の厚さにスクリードされる。次いでその材料で充填されたトレイは、その材料を乾燥または硬化するためにオーブン内に入れられる。乾燥したシートはトレイから取り除かれ、平滑面を提供し、所望の厚さを得、反りを防ぐために1つまたは両方の面で処理され得る。シートは次いで、所望のサイズのタイルに切断される。
【0005】
キトサンまたはポリ−D−グルコサミンは、甲殻類の外骨格および特定の菌類の細胞壁における構造要素であるキチンの脱アセチル化形態として商業的に利用可能である。それはセルロースと同様のカチオン性ポリマーである。キトサンは血液凝固を促進することが見出されており、それは包帯に使用される。それは殺生物剤であり、抗菌性および抗真菌活性を高める特別な特徴を有する。キトサンはまた、重金属の水濾過において羊毛として使用される。キトサンはまた、ホルムアルデヒドおよび臭気を吸収することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,395,438号明細書
【特許文献2】米国特許第1,769,519号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
キトサンは、スラリー配合物に直接組み込まれ得る繊維板に対する多機能性添加剤であると見出されている。キトサンは酸に溶解され、希釈液としてスラリーに直接加えられる。このように、キトサンは、製造プロセスを実質的に変化させずにボード建造物中に均一に分散される。
【0008】
天井タイル建造物におけるキトサンの使用により、得られる製品において多くの利点が可能となる。例えば、約10wt%未満のキトサン濃度は結合剤の量の減少を可能にするのに十分な構造補強を提供する。この結果、結合剤は繊維板材料中で高価な成分であるので、コスト削減が得られる。
【0009】
ボード建造物内にキトサンを組み込むさらなる利点は、成分の結合を高め、かつ成分の結合に寄与し、リサイクル含有量を増加させることができることである。すなわち、結合剤の量を減少させることができ、多くの量のリサイクルセルロースを使用できる。
【0010】
キトサンの殺菌特性は特に、高湿度、凝縮または他の水蒸気源がタイルを湿潤させる可能性がある天井タイル用途において有用である。このような環境は、空中移動により堆積され得る望ましくない微生物および真菌生育に好適である。
【0011】
ホルムアルデヒドを吸収するキトサンの能力は、プロセスおよび製品のホルムアルデヒドレベルの両方を減少させると考えられる。キトサンの臭いを吸収する能力は特に製品用途において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記に示したように、キトサンは、建材、特に多機能性添加剤として鋳造天井タイル材料に望ましい特性を与えることが見出されている。便宜上、本発明は特に鋳造天井タイルに関して以下に記載する。
【0013】
本明細書における対象の天井タイルは、通常、鉱物綿または同様の無機繊維などの鉱物繊維である基本繊維を含む。充填剤は一般的なパーライト、粘土、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、スタッコ(硫酸カルシウム半水化物)または石膏である。結合剤は典型的にデンプン、ラテックス、または同様の材料である。これらの材料または成分は典型的に水性スラリー中で混合され、上記のように水縮充加工法(water felting process)において処理される。
【0014】
典型的な組成において、繊維および充填剤成分は主成分を含む。しかしながら、様々な成分が利用されてもよい。例えば、以下の表に典型的な鋳造天井タイル組成をまとめる。組成は、以下の表に記載した繊維、充填剤または結合剤の例示した種類の1つ以上を含んでもよいことは理解されるべきである。本明細書においてパーセンテージは、注釈または文脈により他に示さない限り、固体に基づいた重量パーセントである。
【0016】
繊維、充填剤および結合剤の成分は、公知の方法で約65%〜75%の固体のレベルにて水性スラリー中で合わされる。キトサンは酸性水溶液中で溶解され、スラリー中に均一に混合される。例えば、粉末またはチップ形態のキトサンは、2〜4容量%の酢酸水溶液中に溶解され得、スラリーに添加され得る。キトサン溶液は、スラリー中に含まれる固体に基づいて1〜6%の範囲の最終製品の重量ベースの量を与える量で添加される。
【0017】
キトサンに存在する親水性OHおよびNH基は、キトサンの均一な分散および浸透ならびに/または繊維および充填剤のスラリー成分との接触を高めると考えられる。また、陽イオンに荷電したキトサンはデンプンと相互作用すると考えられる。さらに、キトサンは、タイルの物理的性質の許容可能な限定された変化で結合剤の量を減少させることができる構造補強を提供するために、タイルの他の繊維成分と結びつくおよび/またはそうでなければ相互作用する繊維状構造を形成するように見える。
【0018】
以下に示した例は、タイルのコアに対応し、外側コーティング、穴または他の仕上げ処理を含まないボードを比較する。ボード組成は、鉱物綿、トウモロコシ由来のデンプン、スタッコ、およびホウ酸を含む。本明細書において、ボード組成は、キトサンの結合および強化特性を実証するために種々の量のキトサンを組み込むように変更した。
【0019】
作製したボードに含まれる成分の絶対量を以下の表1に報告する。
【0021】
ボード1は、キトサンおよび典型的な量のデンプンを添加していない対照を提供する。ボード2〜5は多くの量のキトサンを含有する。
【0022】
ボード1〜5についての特性を表2に示す。
【0024】
ボード1〜5を試験し、その結果を上記の表2に示す。表2に報告した試験結果を決定するのに以下の試験手順を使用した。
【0025】
破壊係数についてのMOR試験は3点曲げ試験である。本明細書における試験手順は、既製建築防音タイルまたははめ込み(lay−in)天井パネルの強度特性についてのASTM C 367標準試験法と同様である。硬度試験は、設置中または設置後に発生し得る圧入に耐性がある天井タイルの能力を示す。本明細書に使用した2インチのボール硬度試験は、既製建築タイルまたははめ込み(lay−in)天井パネルの強度特性についてのASTM C 367標準試験法と同様である。
【0026】
ボード1と2の比較は、増加したMORおよび硬度の結果により示すように強度および硬度の増加を示す。この比較は、ボード2において1%のキトサンを添加し、同じ量の結合剤を含む。したがって、キトサンはこれらの物理的性質を増加させた。
【0027】
ボード3および4は増加したMORにより示されるように強度のさらなる増加を示す。ボード5は10%添加時の強度およびMORの減少を示す。強度もしくはMORおよび/または許容可能な物理的性質の値の増加は、5%より多く約10%以下またはそれ以上の量のキトサンの添加により達成され得ると考えられる。現在、キトサンの好ましい範囲は約2%〜約8%である。本明細書で使用する場合、許容可能な物理的性質とは、キトサンの添加を除いて同じ成分を使用して同様に形成された天井タイルにより与えられた約95%の値と少なくとも等しい試験した物理的性質の値を意味する。
【0028】
わずかに低い特性値が得られ得るが、よりコストのかかるデンプン成分は、増加した強度もしくはMOR特性および/または硬度を達成する建造物の量の中で減少し得ることが理解されるべきである。さらに、再生新聞紙は、減少したデンプン含有量を置き換える量で増加し得るので、タイルのリサイクルおよび脱工業化/再利用含有量を増加させる。
【0029】
ボード5は、対照値の5%より多く強度および硬度を減少させることにより特徴付けられる。このような減少は現在、許容可能な物理的性質の値を超えるとみなされる。
【0030】
カビ抵抗性を評価するために上記の鋳造手順を使用して以下のボードを作製した。全乾燥成分に基づいたボード組成を以下の表3にまとめる。
【0032】
上述の配合に従って、ボード6〜7を作製し、ASTM D3273−00(2005年に再承認された)に基づいてカビに対するそれらの抵抗性について試験した。ボード6は対照であり、キトサンを含まず、ボード7は5%のキトサンを含み、ボード7は10%のキトサンを含んだ。2週間の曝露後、および4週間の曝露後にボード表面および背面を評価した。ボード表面および背面を検査し、0〜10の値を割り当て、0はサンプルの表面全体にわたる連続した変形を示し、10は粒状物質による変形が全くないサンプルを示す。結果を以下の表4のカビ抵抗性に報告する。試験結果を以下の表4に報告する。
【0034】
表4に示すように、キトサンの使用はカビ形成を妨げる。ボード表面は実質的に外観の損傷がない。キトサンにより、強度およびMOR値の増加と共にカビ抵抗性が向上する。
【0035】
さらなる対照、5%のキトサンおよび10%のキトサン配合を以下に示す。
【0039】
本開示は例示であり、本開示に含まれる教示の十分な範囲から逸脱せずに詳細を付加すること、修飾することまたは排除することによって種々の変更がなされてもよいことは明らかであるべきである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲がそのように限定する必要性の範囲を除いて本開示の特定の詳細に限定されない。