特許第6192542号(P6192542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192542SPECT/CTシステムのための反復コーンビームCT再構成のための打ち切り補正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192542
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】SPECT/CTシステムのための反復コーンビームCT再構成のための打ち切り補正
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170828BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A61B6/03 350X
   A61B6/03 377
   G01T1/161 A
   G01T1/161 B
   G01T1/161 C
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-550974(P2013-550974)
(86)(22)【出願日】2012年1月18日
(65)【公表番号】特表2014-507988(P2014-507988A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】IB2012050239
(87)【国際公開番号】WO2012101548
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/436,714
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ハンズィス エバーハルト セバスティアン
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−312027(JP,A)
【文献】 特表2008−524575(JP,A)
【文献】 特表2010−500902(JP,A)
【文献】 特表2010−504525(JP,A)
【文献】 特開平09−021876(JP,A)
【文献】 特開2002−209880(JP,A)
【文献】 特開2004−073432(JP,A)
【文献】 米国特許第6907102(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングのためのシステムの作動方法であって、
第1のイメージングモダリティで検査領域に位置する対象の投影データを収集するステップと、
軸横断方向にボクセルグリッドで視野が画定されるステップと、
前記対象の最大軸横断範囲を決定するステップと、
前記視野のボクセルグリッドを、少なくとも前記決定された最大軸横断範囲及び前記軸横断方向の減衰を包含する前記視野の外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張することによって、拡張視野を生成するステップと、
前記収集された投影データを前記拡張視野の画像表現に反復的に再構成するステップと
を有し、
前記対象の範囲を決定するステップが、
前記対象の軸横断範囲よりも大きいことがわかっている視野内の粗いボクセルグリッドを画定するステップと、
前記大きな視野を粗い画像表現に再構成し、前記粗い画像表現は前記再構成された画像表現よりも低い分解能を持つ、ステップと、
前記粗い画像表現に基づいて前記対象の軸横断範囲を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
イメージングのためのシステムの作動方法であって、
第1のイメージングモダリティで検査領域に位置する対象の投影データを収集するステップと、
軸横断方向にボクセルグリッドで視野が画定されるステップと、
前記対象の最大軸横断範囲を決定するステップと、
前記視野のボクセルグリッドを、少なくとも前記決定された最大軸横断範囲及び前記軸横断方向の減衰を包含する前記視野の外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張することによって、拡張視野を生成するステップと、
前記収集された投影データを前記拡張視野の画像表現に反復的に再構成するステップと
を有し、
前記拡張視野を決定するステップが、
前記収集された投影データ上に前記視野を順投影して視野フットプリントを画定するステップと、
前記視野フットプリントを前記投影データに存在する全減衰若しくは活性を含むように拡張するステップと
を含む、方法。
【請求項3】
イメージングのためのシステムの作動方法であって、
第1のイメージングモダリティで検査領域に位置する対象の投影データを収集するステップと、
軸横断方向にボクセルグリッドで視野が画定されるステップと、
前記対象の最大軸横断範囲を決定するステップと、
前記視野のボクセルグリッドを、少なくとも前記決定された最大軸横断範囲及び前記軸横断方向の減衰を包含する前記視野の外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張することによって、拡張視野を生成するステップと、
前記収集された投影データを前記拡張視野の画像表現に反復的に再構成するステップと
を有し、
前記視野を拡張するステップが、
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内のボクセルの数を増加するステップ、若しくは
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内の各ボクセルのサイズを増加するステップ
の少なくとも一つを含む、方法。
【請求項4】
前記拡張視野の前記再構成された画像表現に基づいて減衰マップを生成するステップと、
第2のイメージングモダリティで収集された前記対象の第2の投影データセットを生成するステップと、
前記減衰マップを使用することを含む、前記第2の投影画像データを再構成するステップと
をさらに有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のイメージングモダリティからの投影データが前記第2のイメージングモダリティの投影データと同時に若しくは時間的に接近して収集される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象の範囲が前記対象の体重、前記対象の身長、及び患者集団データベースの少なくとも一つに従って推定される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の範囲が前記対象の事前に収集された画像から決定される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記視野を拡張するステップが、
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内のボクセルの数を増加するステップ、若しくは
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内の各ボクセルのサイズを増加するステップ
の少なくとも一つを含む、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記視野のボクセル及び前記少なくとも一つの拡張領域のボクセルが異なるサイズを持つ、請求項3乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記再構成画像表現が前記視野と前記拡張領域を含み、前記方法が、
前記ボクセルサイズを前記視野ボクセルグリッドのサイズへ縮小するように前記再構成された画像表現をリサンプリングするステップと、
前記画定された視野が目に見えるように前記リサンプリングされた画像表現を表示するステップと
をさらに含む、請求項3乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実行するように一つ以上のプロセッサを制御するソフトウェアを備えるコンピュータ媒体。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされるプロセッサ。
【請求項13】
第1のイメージングモダリティを用いて検査領域に位置する対象の投影データを収集する第1のイメージングスキャナと、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされる少なくとも一つのプロセッサと
を有する、イメージングスキャナ。
【請求項14】
前記第1のイメージングスキャナがオフセット検出器を含むコーンビームコンピュータ断層撮影スキャナを含む、請求項13に記載のイメージングスキャナ。
【請求項15】
前記検査領域に位置する前記対象の核データを収集する核イメージングスキャナをさらに含み、
前記プロセッサがさらに、
前記拡張視野の前記反復的に再構成された画像表現に基づいて減衰マップを生成し、
前記減衰マップを用いて前記核データを再構成するようにプログラムされる、請求項13又は14に記載のイメージングスキャナ。
【請求項16】
前記プロセッサが、
前記対象の体重、前記対象の身長、若しくは事前に収集された画像からの患者集団データベースから、又は、
前記対象の軸横断範囲よりも大きいことがわかっている粗い視野を画定し、前記粗い視野を粗い画像表現へ再構成し、前記粗い画像表現は前記反復的に再構成された画像表現よりも低い分解能を持ち、前記粗い画像表現に基づいて前記対象の軸横断範囲を決定することによって、又は、
前記収集された投影データ上に前記視野を順投影してフットプリントを画定し、前記フットプリントを前記収集された投影データに存在する全減衰若しくは活性を含むように拡張すること
の少なくとも一つから、前記対象の最大軸横断を決定するようにプログラムされる、請求項13乃至15のいずれか一項に記載のイメージングスキャナ。
【請求項17】
前記プロセッサが、
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内のボクセルの数を増加するステップ、及び
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内の各ボクセルのサイズを増加するステップ
の少なくとも一つによって、前記視野を拡張するようにプログラムされる、請求項13乃至16のいずれか一項に記載のイメージングスキャナ。
【請求項18】
軸横断方向にボクセルグリッドで視野を画定するための手段と、
対象の最大軸横断範囲を決定するための手段と、
前記視野のボクセルグリッドを、少なくとも前記決定された最大軸横断範囲及び前記軸横断方向の全減衰を包含する前記視野の外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張することによって、拡張視野を生成するための手段と、
前記収集された投影データを前記拡張視野の画像表現に反復的に再構成するための手段と
を有するイメージングスキャナにおいて、
前記拡張視野を生成するための手段は、
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内のボクセルの数を増加する手段、若しくは
前記少なくとも一つの拡張領域を包含するように前記視野内の各ボクセルのサイズを増加する手段
の少なくとも一つを含み、
前記再構成画像表現が前記視野と前記拡張領域を含み、
前記ボクセルサイズを前記視野ボクセルグリッドのサイズへ縮小するように前記再構成された画像表現をリサンプリングする手段と、
前記画定された視野が目に見えるように前記リサンプリングされた画像表現を表示する手段と
をさらに含む、イメージングスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は医用画像技術に関する。これは特にx線コンピュータ断層撮影(CT)イメージングのための再構成スキームに応用される。しかしながら、これは限定されないが単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)及び陽電子放出断層撮影(PET)など、他のイメージングモダリティにも一般的に応用される。
【背景技術】
【0002】
核医学画像診断では、循環系を撮像するため、若しくは注入された放射性医薬品を蓄積する特定臓器を撮像するために、放射性核種分布が患者の血流を通過する際に調べられる。有利には、放射性医薬品は選択組織に集中し、この選択組織の選択的イメージングをもたらすように設計されることができる。
【0003】
単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)において、一般にガンマカメラと呼ばれる一つ以上の放射線検出器が、放射性崩壊イベントによって生じる放射線放出を介して放射性医薬品を検出するために使用される。典型的には、各ガンマカメラは放射線検出器アレイと、放射線検出器アレイの前に配置されるコリメータを含む。コリメータは検出放射線が投影データを有するように線形若しくは小角円錐の視線を規定する。ガンマカメラがある範囲の角度ビューにわたって、例えば180°若しくは360°の角度範囲にわたって動かされる場合、得られる投影データは患者における放射性医薬品分布の画像に再構成されることができる。
【0004】
陽電子放出断層撮影(PET)において、放射性医薬品の放射性崩壊イベントは陽電子を生じる。各陽電子は電子と相互作用して二つの逆方向性のガンマ線を放出する陽電子‐電子消滅イベントを生じる。同時検出回路を用いて、撮像する患者を取り囲む放射線検出器のリングアレイは陽電子‐電子消滅に対応する同時の逆方向性ガンマ線イベントを検出する。二つの同時検出を接続する同時計数線(Line of response(LOR))は陽電子‐電子消滅イベントの位置を含む。かかる同時計数線は再構成されて放射性医薬品分布の画像を生じることができる。
【0005】
飛行時間型PET(TOF‐PET)では、LOR(同時計数線)に沿って消滅イベントの位置を特定するために二つの同時γ線イベントの検出時間のわずかな時差が使用される。
【0006】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージングでは、放射線源が撮像対象を照射し、撮像対象の反対側に配置される放射線検出器アレイが透過放射線を検出する。撮像対象内の組織による様々な放射線減衰のために、検出放射線は撮像対象内の放射線吸収構造を描く画像に再構成されることができる。
【0007】
核放出断層撮影及びx線透過断層撮影のための再構成アルゴリズムは、フィルタ逆投影(FBP)若しくはコンボリューション逆投影法と、放出及び透過投影データを再構成するために必要な関連フィルタリングを含む。FBPは信号‐検出器アプローチをとる解析法である。FBPは容易に実施され、計算が速く、概して線形である。しかしながら、FBPにはいくつかの制限があり、とりわけ検出器における低光子カウントから生じるノイズのモデリングを準備しておらず、これは信号対ノイズ比(SNR)を妨げる。FBP再構成を用いて画像ノイズを軽減する一つの方法は高い放射線量を使用することであり、これは患者の安全に関する懸念である。
【0008】
別の類の再構成法は反復再構成法であり、これは画像表現を改良して構築し、減衰、ノイズ、散乱、検出器効率、デッドタイム、解剖学的モデル、患者の動き、放射性トレーサキネティクスなどに対する補正に対応することができる、複雑な反復アルゴリズムを使用する。
【0009】
しかしながら、反復再構成法は打ち切り誤差を生じやすい。原理上、反復再構成法はシミュレーションされた再構成画像収集を測定データと比較することによって機能する。例えば、CTの場合方法は再構成減衰画像の線積分を計算し、これらを測定された減衰と比較する。シミュレーションデータと測定データの差に従って、再構成画像はシミュレーションデータが測定データに一致するまで反復的に改良される。撮像対象全体を包含しない打ち切り(truncated)再構成FoV(再構成ボリューム)の場合、測定データはもともと再構成FoVの外側にあった減衰を含み得る。しかしながら、反復法は、固定FoVを仮定したシミュレーション及び測定した減衰を一致させる際、この減衰をFoVの内側に置く。これはストリーク及びシェーディングなどの強いアーチファクトにつながり得る。打ち切り問題は特に撮像対象の軸横断打ち切りの場合深刻である。撮像対象全体を包含するように再構成FoVを増加することは打ち切りアーチファクトを除去する。同様の議論はトレーサ活性が減衰の代わりに再構成される放出断層撮影の場合も当てはまる。
【0010】
SPECT及びPETイメージング技術の両方に関連する一つの問題は、放射性核種と検出器の間の患者の解剖学的構造による光子吸収及び散乱が、結果として得られる画像を歪めることである。一つの技術は減衰マップを生成するためにx線CTスキャンデータを使用する。x線及びガンマ線はともに、軟組織と比較して骨若しくは人工インプラントなどの硬組織によってより強く減衰されるので、放射性医薬品によって放出されるガンマ線の減衰マップを推定するためにCTデータが使用されることができる。再構成された減衰マップが打ち切り誤差を抱える場合、誤差は補正されたSPECT/PET投影データの中に持ち込まれることになり、不正確な再構成された活性値をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願は上述の問題などを克服する新たな改良されたシステムと方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、画像診断のための方法が提示される。方法は、第1のイメージングモダリティで検査領域に位置する対象の投影データを収集するステップ;軸横断方向のボクセルグリッドで視野(FoV)を画定するステップ;対象の最大軸横断範囲を決定するステップ;少なくとも決定された最大軸横断範囲と軸横断方向の減衰を包含するFoVの外側の少なくとも一つの拡張領域へFoVのボクセルグリッドを拡張することによって拡張FoVを生成するステップ;及び収集された投影データを拡張FoVの画像表現に反復的に再構成するステップを含む。
【0013】
別の態様によれば、イメージングスキャナが提示される。イメージングスキャナは第1のイメージングモダリティを用いて検査領域に位置する対象の投影データを収集する第1のイメージングスキャナを含む。少なくとも一つのプロセッサが以下のステップを実行するようにプログラムされる:軸横断方向のボクセルグリッドで視野(FoV)を画定するステップ;対象の最大軸横断範囲を決定するステップ;少なくとも決定された最大軸横断範囲と軸横断方向の減衰を包含するFoVの外側の少なくとも一つの拡張領域へFoVのボクセルグリッドを拡張することによって拡張FoVを生成するステップ;及び収集された投影データを拡張FoVの画像表現に反復的に再構成するステップ。
【0014】
別の態様によれば、マルチモダリティイメージングシステムが提示される。システムは検査領域内の対象のCT投影データを収集するコンピュータ断層撮影スキャナと、検査領域内の対象の核投影データを収集する核イメージングスキャナとを含む。少なくとも一つのCT再構成プロセッサは以下のステップを実行するようにプログラムされる:CT投影データにおいて、軸横断方向のボクセルグリッドで視野(FoV)を画定するステップ;対象の最大軸横断範囲を決定するステップ;少なくとも決定された最大軸横断範囲と軸横断方向の全減衰を包含するFoVの外側の少なくとも一つの拡張領域へFoVのボクセルグリッドを拡張することによって拡張FoVを生成するステップ;CT投影データを拡張FoVの減衰マップに反復的に再構成するステップ;及び反復的に再構成された減衰マップに基づいて核投影データを補正するステップ。
【0015】
一つの利点は視野打ち切り誤差が軽減されることである。
【0016】
別の利点は放出断層撮影データが減衰及び散乱効果に対してより正確に補正されることができることである。
【0017】
本発明のなおさらなる利点は以下の詳細な説明を読んで理解することで当業者に理解される。
【0018】
本発明は様々な構成要素と構成要素の配置、及び様々なステップとステップの配置で具体化し得る。図面は好適な実施形態を例示する目的に過ぎず、本発明を限定するものと解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】複合SPECT/CT単一ガントリシステムの略図である。
図2A】強いアーチファクトを生じる軸横断方向における対象を包含しない視野における反復再構成の画像表現である。
図2B】打ち切り誤差を軽減するために拡張視野で再構成が実行された反復再構成の画像表現である。
図2C】ユーザ選択視野と拡張視野の画像表現である。
図3】反復再構成法のための打ち切り補正のための方法のフローチャートである。
図4A】拡張視野を決定するための代替方法のフローチャートである。
図4B】拡張視野を決定するための代替方法のフローチャートである。
図4C】拡張視野を決定するための代替方法のフローチャートである。
図4D】拡張視野を決定するための代替方法のフローチャートである。
図5】視野のボクセルグリッドを拡張視野に拡張するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、画像診断システム10はx線コンピュータ断層撮影(CT)とPET若しくはSPECTなどの核イメージングを同時に及び/又は独立に実行する。イメージングシステム10は患者受入ボア14を画定する固定ハウジング12を含む。ハウジング12によって支持される回転可能ガントリ16は共通検査領域18を画定するようにボアまわりの回転のために構成される。撮像及び/又は検査される患者若しくは対象22を支持する患者支持台20は検査領域において患者の所望の位置を達成するように長手方向に及び/又は垂直に調節される。
【0021】
CTイメージング能力をもたらすために、回転可能ガントリ16に取り付けられるx線アセンブリ24はx線管などのx線源26と、フィルタ、コリメータ、及び/又はシャッターアセンブリ28を含む。コリメータはx線源26からの放射線をコーン若しくはウェッジビーム、一つ以上のほぼ平行なファンビームなどにコリメートする。シャッターはビームをオン及びオフにゲートする。固体、フラットパネル検出器などのx線検出器30がx線アセンブリ24と反対側に回転可能ガントリ16に取り付けられる。図示の実施形態において、検出器パネルは放射線の投影中心に対してオフセットされるか、若しくは軸横断面における回転中心から横方向にずれている。オフセット検出器配置は、増加したFoVを可能にするか若しくはより小さな検出器サイズを可能にするので望ましい。大きな検出器はより複雑で製造コストがかかる傾向があり、全体のシステム設計を制限する可能性があり、検出器位置調整若しくは患者アクセスなどを制限する可能性がある。全視野に及ぶ幅広のノンオフセット検出器を持つx線システムも考慮される。
【0022】
ガントリが回転すると、x線アセンブリ24とx線検出器30が協調して検査領域18まわりを回転し、全360°回転、マルチ回転、若しくはより小さな円弧に及ぶCT投影データを収集する。各CT投影はx線アセンブリ24とx線検出器30の検出器素子の間の線形経路に沿ったx線減衰を示す。収集されたCT投影データはCTデータバッファ32に保存され、CT再構成プロセッサ34によってCT画像表現に処理され、そしてCT画像メモリユニット36に保存される。総合すると、x線源、コリメータ/シャッターアセンブリ、検出器、及び再構成プロセッサは、解剖学的、CT、x線、若しくは第1の画像を生成するためのシステム若しくは手段を規定する。
【0023】
機能的核イメージング能力をもたらすために、単光子放出断層撮影(SPECT)検出器など、一つ以上の核検出器ヘッド40a,40bが回転ガントリ16に運動可能に取り付けられる。x線アセンブリ24と核検出器ヘッド40a,40bを同じガントリに取り付けることは患者22を動かすことなく両モダリティによって検査領域18が撮像されることを可能にする。一実施形態において、検出器ヘッドは回転ガントリ16に取り付けられるロボットアセンブリ(不図示)によって運動可能に支持される。ロボットアセンブリは検出器ヘッドが患者22のまわりに選択可能なオフセットで、例えば90°オフセット、互いに180°対向などで位置付けられることを可能にする。各SPECT検出器ヘッドはコリメータを含み、収集された放射線が投影データを有するように、検出された放射線イベントの各々が特定可能な線形若しくは小角円錐視線に沿って生じたことがわかるようになっている。収集されたSPECT投影データはデータバッファ42に保存され、SPECT再構成プロセッサ44によってSPECT画像表現へ処理され、SPECT画像メモリユニット46に保存される。総合すると、SPECT検出器ヘッドとSPECT再構成プロセッサは核の、機能的な、若しくは第2の画像を生成するためのシステム若しくは手段を規定する。
【0024】
別の実施形態において、機能的イメージングシステム若しくは手段は陽電子放出断層撮影(PET)検出器を含む。PET検出器の一つ以上のリングは患者受入ボア14のまわりにそこからガンマ線を受信するように配置される。検出された同時放射線イベントのペアはLORを規定し、これはデータバッファにリストモードで保存され、PET再構成プロセッサによってPET画像表現へ処理され、PET画像メモリユニットに保存される。総合すると、PET検出器リング及びPET再構成プロセッサは機能的画像を生成するためのシステム若しくは手段を規定する。
【0025】
フィルタコンボリューション逆投影(FBP)は放出及び透過投影データを再構成するために一般に利用される。FBPは信号‐検出器アプローチをとる解析法であり、すなわちこれはx線管上の焦点からの点源放射が、各検出器セルの中心に向かう、ボクセルの中心を通る単一の細い線として通過すると仮定する。FBPは容易に実施でき計算が速い。しかしながら、FBPにはいくつかの制限があり、とりわけ信号対ノイズ比(SNR)を妨げる低光子カウントから生じるノイズのモデリングを準備していない。FBP再構成を用いて画像ノイズを克服するために、高放射線量が使用され得るが、これは患者の安全に関する懸念になっている。
【0026】
代替的な技術は最尤推定期待値最大化法(MLEM)若しくはサブセット化による期待値最大化法(OSEM)などの複雑反復アルゴリズムを使用する反復再構成法であり、これは画像表現を改良して構築し、減衰、散乱、ノイズ、検出器効率、デッドタイム、解析モデル、患者の動き、及び放射性トレーサキネティクスなどを考慮するように処理ステップを適応させることができる。反復アルゴリズムでは、FoVにおける活性若しくは減衰の初期推定が作られる。言い換えれば、初期画像表現が例えばFBPから、若しくは均一信号分布を仮定して生成される。投影データは初期画像から計算若しくは順投影され、対応する収集された投影データと比較される。計算された投影データと実際の投影データの差が初期画像表現上に逆投影されて画像表現を更新する。アルゴリズムは差が最小化されるまで若しくは最適解が得られるまで反復される。
【0027】
反復再構成法は魅力的な特性を持ち、例えばノイズの多いデータを処理するときにFBPよりもノイズの少ない再構成を生成することができるが、打ち切り誤差を生じやすい。
【0028】
選択されたボクセルグリッドを持つFoVがユーザ若しくは臨床医によって選択され、FoVの外側の拡張領域を含む拡張FoV(ex‐FoV)が決定される。打ち切り誤差を補正するために、CT再構成プロセッサ34は再構成中に自動的に視野(FoV)を拡張し、これがCT投影データに存在する全減衰若しくはPET/SPECT投影データに存在する全活性を考慮するように軸横断方向に対象全体を含むようにする。
【0029】
ex‐FoVを決定するための一実施形態において、FoVは収集されたx線投影データ上に順投影されてFoV'フットプリント'を画定する。軸横断方向にFoVフットプリントの外側の相当量の減衰若しくは活性の存在は打ち切りを示す。そしてex‐FoVは軸横断方向の全投影内に存在する全減衰若しくは活性を包含するように十分な大きさで選択される。この方法は対象が軸横断方向に検出器を超えて広がる場合、すなわち対象がスキャナFoVを超えて広がる場合には適用できない可能性があり、この場合ex‐FoVを決定するための以下の方法の一つが使用され得る。
【0030】
別の実施形態において、対象の軸横断範囲は典型的な患者形状に関する統計データと併せてその体重と身長から推定される。対象の身長と体重が測定され、そして身長と体重に関する統計値に従って最大軸横断範囲にインデックスを付ける患者集団若しくはデータベースと比較される。そしてex‐FoVがこの推定患者サイズを包含するように決定される。同様に、典型的な最大軸横断範囲が患者集合から推定されることができる。そしてこの最大範囲がex‐FoVを決定するために使用される。
【0031】
ex‐FoVの範囲を決定するための別の実施形態において、対象の範囲は事前に収集されたCT,MRI,SPECT,PET若しくは類似する画像表現など、他の利用可能な画像データから推定されることができる。同様に、対象の範囲は、撮像された患者領域が検査領域18から出ない、同時に若しくは後に収集された投影データ若しくは再構成画像データから推定されることができる。例えば、イメージングシステム10でSPECT/CT若しくはPET/CT収集を実行するとき、SPECT/PETデータ若しくはそこからの再構成画像表現は対象のアウトラインを、従って対象の範囲を推定するために使用されることができる。代替的に、追加CT投影データが対象の範囲を決定するために収集されることができる。
【0032】
ex‐FoVを決定するための別の実施形態において、第1の再構成(おそらく低分解能)が、対象全体を包含することがわかっている非常に大きなFoVにおいて実行される。例えば、FoVは少なくともスキャナボアと同じ大きさで選ばれ得る。そして真の患者アウトラインがこの第1の再構成において検出されることができ、拡張された再構成に対する拡張FoVがそれに従って選ばれることができる。
【0033】
一旦ex‐FoVが決定されると、FoVは再構成の使用目的及び計算ハードウェア制限に応じて多数の方法でex‐FoVを包含するように拡張される。一実施形態において、FoVのボクセルグリッドは最大でex‐FoVのサイズまでFoVの外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張される。言い換えれば、FoVのボクセルグリッドにおけるボクセルの数が各ボクセルのサイズは同じまま増加される。別の実施形態において、FoVボクセルグリッドの拡張が処理メモリ若しくは処理時間に対する制限のために達成できない場合、FoVの各ボクセルのサイズ若しくは寸法がグリッド内のボクセルの数は一定のまま増加され、従ってボクセルグリッドの空間範囲を拡大する。
【0034】
ex‐FoVの位置及びボクセルグリッドが決定された後、少なくともFoVの画像表現が、例えば反復再構成法を用いて、ex‐FoVに基づいて生成され、グラフィカルユーザインターフェース50上に表示するためにCT画像メモリ36に保存される。グラフィカルユーザインターフェース50は、臨床医若しくはユーザがスキャンコントローラ52と相互作用してスキャンシーケンス及びプロトコルなどを選択するユーザ入力装置も含む。
【0035】
一実施形態において、ex‐FoVはユーザ選択FoVをラベルして表示される。付加的に、ラベルは完全にサンプリングされたFoV及びおそらくアンダーサンプリングされた領域を示すことができる。代替的に、FoVのボクセルグリッドが拡張される実施形態において、再構成画像表現はユーザが画定したFoVだけを表示するように切り取られることができる。FoVのボクセルグリッドが拡大若しくは拡張及び拡大される、又はボクセルの一部若しくは全部のサイズが拡大された実施形態において、再構成画像表現はユーザ選択FoVのボクセルサイズに戻ってリサンプリングされる。
【0036】
別の実施形態において、再構成されたex‐FoVはSPECT若しくはPET放出データなどの核イメージングスキャナで収集された投影データを補正するための減衰マップを生成するために使用される。正確な減衰補正のために、収集中の全減衰を考慮するように減衰マップが対象全体をあらわすことが重要である。これはユーザ画定FoVには当てはまらないかもしれないが、上記方法を用いてex‐FoV再構成から減衰マップを生成することによって完全な範囲が保障されることができる。例えば、SPECT再構成プロセッサ44はex‐FoVの再構成画像表現を受信し、そこから減衰マップを生成する。減衰マップは対象の解剖学構造による光子吸収及び散乱を補正するために使用される。
【0037】
打ち切り誤差を補正するために拡張FoVを利用する反復再構成法はコンピュータ断層撮影画像再構成における使用について記載されるが、方法は反復再構成法が同様に実行される他のイメージングモダリティにも応用可能である。例えば、ex‐FoV反復再構成法は単一スライスCT,PET,SPECT若しくは同様のものに応用されることができる。イメージングシステム10に関して、SPECT再構成プロセッサ44はSPECT画像表現を生成するために反復再構成アルゴリズムと一緒に拡張視野を利用することによって収集されたSPECT放出データにおける打ち切り誤差を補正することができる。
【0038】
図3を参照すると、反復再構成法における打ち切り補正のための方法が提示される。対象の投影データが検査領域18から収集される(S100)。グラフィカルユーザインターフェース52を用いて、臨床医が視野を画定若しくは選択する(S102)。対象最大軸横断範囲が決定され(S104)、そしてこれは少なくとも決定された最大軸横断範囲及び軸横断方向の全減衰若しくは活性を包含する拡張視野を決定するために使用される(S106)。拡張視野は収集された投影データを用いて反復的に再構成される(S108)。
【0039】
再構成された画像表現は様々な方法で表示されることができる(S110)。
【0040】
CT投影データがCT透過データである実施形態において、ex‐FoVの再構成CT画像表現が減衰マップを生成するために使用されることができ(S110)、これは例えばSPECT/PETデータなどの核投影データを補正するために使用され(S112)、そしてこれは例えば反復的に減衰補正核画像表現へ再構成される(S114)。
【0041】
対象の軸横断範囲は多数の方法で決定されることができる。図4Aに図示の一実施形態において、ex‐FoVの位置、FoVは収集されたx線投影データ上に順投影されてFoV'フットプリント'を画定する(S200)。軸横断方向におけるFoVフットプリントの外側の相当量の減衰の存在は打ち切りを示す。そしてex‐FoVが軸横断方向の全投影に存在する全減衰を包含するように十分な大きさで選択される(S202)。この方法は対象が軸横断方向に検出器を超えて広がる場合、すなわち対象がスキャナFoVを超えて広がる場合は適用することができない可能性があり、この場合ex‐FoVを決定するための以下の方法の一つが使用されることができる。
【0042】
図4Bを参照すると、別の実施形態において、対象の軸横断範囲が典型的な患者形状に関する統計データと併せて彼/彼女の体重と身長から推定される(S304)。対象の身長と体重が測定され(300)、患者集団若しくはデータベースに相互参照され、最大軸横断範囲が身長と体重に関する統計値に従って推定される(302)。そしてこの推定患者サイズを包含するようにex‐FoVが決定される(304)。同様に、典型的な最大軸横断範囲が患者集団から推定されることができる。そしてこの最大範囲はex‐FoVを決定するために使用される。
【0043】
図4Cを参照すると、別の実施形態において、対象の範囲は事前に収集されたCT,SPECT,PET若しくは同様の画像表現など、他の利用可能な画像データから推定される。事前に収集された画像表現は再構成プロセッサ34,44によって取得され(S400)、対象のアウトラインが生成される(S402)。そして最大範囲が対象のアウトラインから決定される(S404)。同様に、対象の範囲は、撮像された患者領域が検査領域18内にとどまっている、同時に若しくは後に収集された投影データから推定されることができる。
【0044】
図4Dを参照すると、第1の再構成(S502)が、FBPなどの低分解能及び/又は高速アルゴリズムを用いて、対象全体を包含することがわかっている選択された非常に大きなFoV(S500)において実行される。例えば、FoVは少なくともスキャナボアと同じ大きさで選ばれる。真の患者アウトラインがこの第1の再構成において決定され(S504)、拡張された再構成に対する拡張FoVが決定されたアウトラインの最大軸横断範囲に従って選ばれる。
【0045】
図5を参照すると、FoVは再構成の使用目的及び計算ハードウェア制限に応じて多数の方法でex‐FoVを包含するように拡張されることができる。一実施形態において、FoVのボクセルグリッドは最大でex‐FoVのサイズまでFoVの外側の少なくとも一つの拡張領域へ拡張される。言い換えれば、FoVのボクセルグリッド内のボクセルの数が各ボクセルのサイズは同じままでありながら増加される。別の実施形態において、FoVボクセルグリッドの拡張が処理メモリ若しくは処理時間に対する制限のために達成できないかもしれない場合、FoVの各ボクセルのサイズ若しくは寸法がグリッド内のボクセルの数は一定のままでありながら増加され、従ってボクセルグリッドの空間範囲を拡大する。
【0046】
本明細書に開示される様々な計算及び制御コンポーネントは様々な方法で、例えばデジタルプロセッサを含む、及び開示の処理を実行するようにプログラムされた若しくは実行するファームウェアを含むコンピュータ若しくは他の装置によって、又は開示の処理若しくはその一部を実行するように構成されるハイブリッド若しくはアナログ回路などによって、実施されることができる。一部の実施形態において、計算コンポーネントは適切なファームウェア若しくはプログラミングを持つコンピュータによって具体化され得る。本明細書に開示の技術はプロセッサ若しくは他のハードウェアによって実施されることができ、及び/又はかかるプロセッサ若しくは他のハードウェアによって実行されるときに開示の方法を実行する命令を保存する記憶媒体として具体化されることができる。かかる記憶媒体は、磁気ディスク、光学ディスク、FLASHメモリ若しくは他の静電気メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、DVDなどの一つ以上など、一つ以上のタイプの記憶媒体によって具体化され得る。
【0047】
本発明は好適な実施形態を参照して記載されている。修正及び変更は先の詳細な説明を読んで理解することで想到され得る。本発明はかかる修正及び変更が添付の請求項若しくはその均等物の範囲内にある限り全て含むものと解釈されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5