【実施例1】
【0013】
本発明の実施例として、冷却された飲料水を供給するように構成された飲料水供給装置1について説明する。
図1(a)は飲料水供給装置1の上面図、
図1(b)は飲料水供給装置1の正面図、
図1(c)は飲料水供給装置1の側面図、
図1(d)は飲料水供給装置の背面図である。
図2は、飲料水供給装置1の内部構造を説明する図である。
【0014】
飲料水供給装置1は、外形が略直方体で箱状の下部筐体10と、下部筐体10の上に配置され外形が略直方体で箱状の上部筐体20を備えている。下部筐体10と上部筐体20との間には回転手段34が設けられ、上部筐体20は、下部筐体10に対して水平方向に(鉛直方向に伸びる回転中心Cの周りに)回転可能に支持されている。
【0015】
下部筐体10の内部空間の下面12には飲料水を貯蔵する一次タンク51が、下部筐体10に対して着脱可能に、排出51aが上になるように設置されている。一次タンク51は、バッグインボックスタイプ、ボトルタイプ等の任意の構造の容器である。下部筐体10の前面13は開閉可能な構造となっており、一次タンク51内の飲料水がなくなると使用者が前面13を開けて新しい一次タンク51と交換する。一次タンク51の容量は10リットル以上とする場合もあり、飲料水供給装置1全体の重量に一次タンク51の重量が占める割合は大きい。
【0016】
上部筐体20の内部には、一次タンク51と配管53で接続され、一次タンク51から供給された飲料水を貯蔵する二次タンク52が設けられている。配管53はフレキシブルなもので構成され、長さに余裕を持たせてある。配管53の下部筐体10の内部の位置には、一次タンク51から二次タンク52に飲料水を送出するポンプ55が設けられている。
【0017】
二次タンク52の側面外側には、冷媒の気化熱を利用して二次タンク52内の飲料水を冷却する冷却器43が設けられている。上部筐体20の内部には冷却器43とサクションパイプ46で接続され冷却器43で気化した冷媒を圧縮する圧縮機44が設けられている。上部筐体20の背面24には一端が圧縮機44と接続され高圧の冷媒を液化しキャピラリチューブ47を介して冷却器43に供給する凝縮器45(放熱部の一例)が設けられている。冷却器43と圧縮機44と凝縮器45とサクションパイプ46とキャピラリチューブ47とを含んで冷却手段40が構成される。
【0018】
凝縮器45は、上部筐体20の内部の背面24に近い位置に設け、背面24に放熱口を設けるようにしてもよい。この場合、放熱口が放熱部となる。
【0019】
また、冷却器43をペルチェ素子を用いたものとし、上部筐体20内にペルチェ素子が吸収した熱を放熱するためのヒートシンクとファンを設け、上部筐体20の背面24に放熱口(放熱部の一例)を設けるようにしてもよい。
【0020】
いずれの場合も、放熱部を上部筐体20の側面25または側面26に設けてもよい。
【0021】
従来の飲料水供給装置では、一次タンクは、重力を利用して内部の飲料水を二次タンクや給水口に自然流下させることができるように、筐体の上部に配置されていた。しかし、飲料水供給装置1では、一次タンク51をあえて低い位置、具体的には下部筐体10内の下面12上に配置することにより、使用者が楽に一次タンク51の交換を行うことができるようにしてある。また、重量の大きい一次タンク51を装置の最下部に配置しているため装置全体の重心が低くなり、飲料水供給装置1は転倒しにくくなっている。
【0022】
また、下部筐体10の平面形状は、上部筐体20の平面形状に比べ幅、奥行き共に大きくなっている。このような形状によっても飲料水供給装置1は転倒しにくくなっている。
【0023】
上部筐体20の前面23には、使用者が給水の指示を行うためのボタン31a等が配置された操作パネル31、二次タンク52と配管54で接続された給水口32、給水口32から流下する飲料水を受ける容器2を置くためのホルダー33が設けられている。操作パネル31とホルダー33は、上部筐体20の前面23に突出して設けられた弓形の板状部材である。
【0024】
配管54にはポンプ56が設けられている。このポンプ56は、使用者が給水ボタン31aを操作することにより作動し、所定の量の飲料水を二次タンク52から給水口32に送出する。二次タンク52と配管53、54とポンプ55、56を含んで、冷却手段40により冷却された飲料水を供給するための配管系統50が構成されている。
【0025】
下部筐体10の上面11の背面側中央部には、直方体状の下部ストッパー35が上方に突出して設けられている。また、ホルダー33の下面中央部には、直方体状の上部ストッパー36が下方に突出して設けられている。下部ストッパー35と上部ストッパー36は平面的には回転中心Cを中心とする一つの円周上に設けられているため、上部筐体20を通常の状態から時計回り、または反時計回りに180度以上回転させようとすると下部ストッパー35と上部ストッパー36は当接し、上部筐体20の回転角度を制限する。すなわち、下部ストッパー35と上部ストッパー36を含んで回転止めが構成されている。
【0026】
図3(a)は、回転手段34の拡大図、
図3(b)は、
図3(a)のa−a線での断面図である。下部プレート61は、平面形状がリング型の板状部材であり、一方の面は平坦になっており、他方の面には断面形状が円弧状の溝61aが全周にわたって設けられている。下部プレート61は、その平面的な中心が下部筐体10の上面11の中心および上部筐体20の上面21の中心と一致するように、溝61aの設けられている面を上側にして、上面11に固定されている。上部プレート62は、下部プレート61と同一形状の部材で、下部プレート61と中心が一致するように、溝62aの設けられている面を下側にして、上部筐体20の下面22に固定されている。下部プレート61の溝61aと上部プレート62の溝62aとの間には溝61a、62aの幅よりもやや直径の大きい4個のボール63が挟み込まれている。
【0027】
下部プレート61と上部プレート62との間にはリング形状の薄板部材であるリテーナー64が設けられている。リテーナー64には、ボール63よりもやや径の大きい円形の穴64aが4個設けられており、この穴64aにボール63をはめ込むことにより、ボール63同士の間隔を保持している。
【0028】
回転中心Cの位置には、回転中心を固定するために下部筐体10と上部筐体20とを接続する回転軸64が設けられている。回転軸64は両端が開口したパイプ状部材で、その中に配管系統50や図示しない電源線等を通すことができる。回転軸64の下端は下部筐体10の上面11に設けられた凹部11aに、上端は上部筐体20の下面22に設けられた凹部22aにそれぞれはめ込まれ、上部筐体20の下部筐体10に対する平面的な回転を妨げないようになっている。
【0029】
上部筐体20に平面的に回転させる力が加えられると、例えば前面23の左端部が押されると、ボール63は位置を変えずに回転し、その結果上部筐体20は下部筐体10に対して、下部筐体10の上面11の中心を通る鉛直の線(回転中心C)の周りに回転する。このとき上部筐体を回転させるために必要とされる力は、ボール63の転がり摩擦によって大幅に低減されるため、使用者は容易に上部筐体20を回転させることができる。
【0030】
回転手段34としては、
図3(a)、(b)に示した構成の他、プレートとボールを用いず、上部筐体10と下部筐体20とを連結する回転軸を軸受で支持する構造等、種々の構成を用いることができる。
【0031】
図4(a)、(b)は、上部筐体20が回転する動作を説明する図である。以下の説明で、下部筐体10または上部筐体20をそれらの付属物も含めて上方の水平面に投影した図形の輪郭を「平面外形」と言うことにする。
【0032】
図4(a)は、通常の使用状態を示しており、図の下側が飲料水供給装置1の前面である。下部筐体10の上面11と上部筐体20の上面21の平面形状は共に正方形で、両者の中心は一致するように配置されている。上面11の中心と上面21の中心を通り鉛直方向に延びる直線が回転中心Cである。下部筐体10の平面外形Dは上面11と同形状の正方形である。上部筐体20の平面外形Eは上面21と同形状の正方形の前面側に操作パネル31と同形状の弓形部分が突出した形状である。
【0033】
この状態では、下部筐体10の背面14は建物の壁71に当接していて、左右の側面15、16は、家具、家電製品等の物体72、73にそれぞれ当接している。凝縮器45と壁71との間は後述の最小距離は確保されているものの手や掃除機のノズルを入れるには狭く、また、前面側にいる使用者からは凝縮器45を視認しにくい。そのため、この状態では、凝縮器45を清掃することは困難である。
【0034】
図4(b)は、上部筐体20を
図4(a)の状態から矢印Bに示すように、回転中心Cの周りに時計回りに約180度回転させ、凝縮器45が前面側に来るようにした状態を示している。このように、飲料水供給装置1は、上部筐体20が下部筐体10に対して水平方向に回転できるように構成されているため、飲料水供給装置1全体を動かさなくても、凝縮器45を前面に向け、清掃を行うことができる。
【0035】
上部筐体20の平面外形Eのなかで回転中心Cからの距離が最も大きい点である最遠点Fが回転する際に描く軌跡Aは、左右方向、奥行き方向とも、下部筐体10の平面外形Dの内側に収まっている。軌跡Aが下部筐体10の平面外形Dから背面方向にはみ出していないから、下部筐体10の背面14が壁71に当接して配置されていても上部筐体20は壁71に妨げられることなく回転することができる。軌跡Aが下部筐体10の平面外形Dから左右方向にはみ出していないから、下部筐体10の左右の側面15、16が物体72、73にそれぞれ当接して配置されていても、上部筐体20は物体72、73に妨げられることなく回転することができる。下部筐体10の側面25、26は凹部のない形状であるから、物体72、73の平面形状がどのようなものであっても、上部筐体20の回転が妨げられることがない。
【0036】
また、
図4(a)の状態では、凝縮器45が設けられている上部筐体20の背面24と下部筐体10の背面14との間の距離dは、放熱の効果を十分にするために必要な凝縮器45と他の物体との間の最小距離dmin以上となっている。そのため、使用者が下部筐体10の背面14を壁71に当接させて配置しても、凝縮器45と壁71との距離は、最小距離dmin以上となる。最小距離dminは、通常、取扱説明書等に明記され使用者に伝えられるが、使用者が取扱説明書を読まなかったり、読んでも正しく設置しないことがしばしばある。そのような場合でも、飲料水供給装置1によれば、最小距離dminが自然と確保されることになる。
【0037】
図4(b)の状態では、上部ストッパー36は、下部ストッパー35の左側に当接し、上部筐体20は、これ以上時計回りには回転できなくなっている。使用者は清掃が終了したら、上部筐体20を反時計回りに回転させて
図4(a)の状態に戻す。
【0038】
飲料水供給装置1では、上記とは反対に凝縮器45を前面にする際に反時計回り、元に戻すときは時計回りに上部筐体20を回転させることもできる。この場合、凝縮器45を前面にしたときは、
図4(c)に示すように、上部ストッパー36は、下部ストッパー35の右側に当接し、上部筐体20は、それ以上反時計回りには回転できない。すなわち、上部筐体20の最大の回転角度は360度よりやや小さい角度、具体的には360度から下部ストッパー35の幅に相当する角度を引いた角度に制限される。そのため、清掃が何回も行われたとき上部筐体20が一方向に回り続け、配管53、電源線(図示せず)、信号線(図示せず)等、下部筐体10と上部筐体20にまたがって配置される部材に過大な捩りや引張力が加わることを防止することができる。
【0039】
回転止めの機構は、上記の構成以外にも種々の構成のものを用いることができる。また、例えば、下部筐体10の上面11の前面側に、通常の使用状態で上部ストッパー36の右側に当接するストッパーをさらに設け、上部筐体20の回転角度を正面から時計回りまたは反時計回りにそれぞれ180度以下に制限することもできる。このようにすれば、上部筐体20を回転させる方向は固定されるが、配管53等に対する負荷を下部ストッパーを1個とし回転角度を360度以下に制限した場合よりさらに小さくすることができる。つまり、回転角度の制限は凝縮器45を前面にするために必要な回転角度よりも大きければ任意とすることができる。
【0040】
ここまでの説明では、下部筐体10と上部筐体20の上面の平面形状は共に正方形とし、中心が一致するように配置するものとしたが、これ以外の形状と位置関係の例を
図5(a)〜(f)に示す。いずれの図でも図の下側が飲料水供給装置1の前面で、通常の使用状態を示し、図示は省略するが、背面と両側面には
図4(a)と同様に壁と他の物体があるものとする。また、上部筐体20の回転角度を制限する回転止めが設けられているものとする。
【0041】
図5(a)は、
図4(a)と同一の形状、配置であるが、凝縮器45を上部筐体20の側面26に設けた例である。この場合、下部筐体10の側面16と上部筐体20の側面26との距離d2を前述のdmin以上とすれば、
図4(a)の場合と同様の効果が得られる。
【0042】
図5(b)は、下部筐体10の平面形状を長方形から前面左右の角を切り落とした形の6角形、上部筐体20の平面形状をやや横長の長方形とした例である。操作パネル31の平面形状は、長方形であり、最遠部Fは操作パネル31の前面側左右の隅角部である。この例では、回転中心Cは、下部筐体10の中心と上部筐体20の中心のいずれとも一致していないが、軌跡Aが下部筐体10の平面外形Dに収まっているので、
図4(a)の場合と同様の効果が得られる。
【0043】
図5(c)は、
図4(a)とほぼ同じであるが、下部筐体10の奥行き方向の寸法が小さくなっている。回転中心Cは、上部筐体20の上面21の中心であり、そのため、最遠点Fの軌跡Aは、背面方向と左右方向には下部筐体10の平面外形Dからはみ出していないが、前面方向には、はみ出している。しかし、前面には障害物がないので
図4(a)の場合と同様の効果が得られる。
【0044】
図5(d)は、下部筐体10の平面外形Dに凹凸がある例である。下部筐体10の平面外形Dは正方形の四隅に凸部17を設けた形状となっている。上部筐体20の平面外形Eは、正方形である。下部筐体10と上部筐体20の中心は一致していて、この中心が回転中心Cとなっている。最遠点Fの軌跡Aは下部筐体10の平面外形Dからははみ出すが、平面外形Dに外接する長方形である境界Gの内部に収まっている。他の物体の奥行き方向の寸法が凹部18の幅d3より小さかったり、大きくても凸部を有する場合(例えば
図5(d)の物体75)、他の物体が凹部18の部分で軌跡Aの内側に入り込み上部筐体20の回転を妨げる可能性がある。しかし、他の物体の奥行き方向の寸法が大きく凸部がない(家具等はこのような形状となっていることが多い、例えば
図5(d)の物体74)場合には、
図4(a)の場合と同様の効果が得られる。また、そうでない場合でも、使用者は凸部17を目安として他の物体で上部筐体20の回転が妨げられないように飲料水供給装置1を設置することができる。つまり、上部筐体20の平面外形Eが下部筐体10の平面外形Dから左右方向にはみ出していても、境界Gから左右方向にはみ出していなければ、他の物体に妨げられずに上部筐体20を回転できるという効果が一定程度得られる。
【0045】
図5(e)は、下部筐体10の平面外形Dを正方形とし、上部筐体20の上面21の平面形状をそれよりも大きい正方形とし、両者の中心を一致させて配置した例である。回転中心Cは、上部筐体20の上面21の中心である。このように下部筐体10の平面外形Dに上部筐体20の平面外形Eが収まらない場合、使用者は、軌跡Aの内部に他の物体がないように、また、壁と上部筐体20の背面24との最小間隔dminを確保できるように飲料水供給装置1を設置する必要があるが、上部筐体20を回転させて凝縮器45が前面側に来るようにし、容易に清掃することができる。
【0046】
図5(f)は、下部筐体10の平面外形Eを正方形とし、上部筐体20の平面外形Eをそれに外接する円よりも大きい円とし、両者の中心を一致させて配置した例である。回転中心Cは、上部筐体20の平面外形Eの中心である。この場合、最遠点Fは上部筐体20の平面外形Eの任意の点で、軌跡Aは、平面外形Eと一致する(図は見やすくするためやや大きく描いている)。そのため、最小距離dminについては使用者が意識して確保する必要があるが、側面の他の物体と上部筐体20との間に僅かでも間隔があれば上部筐体20を回転させることができる。ただし、このような形状だと重心が高くなり、飲料水供給装置1は転倒しやすくなるおそれがある。