(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の建築技術の向上に伴い複雑かつ高層建築が多く見られるようになってきている。これらの建物の建築は精密な設計と施工が必要であり、タイロッドの張力管理についても、より高度な管理が求められる。
【0007】
また、タイロッドの取り付けについてはタイロッドに歪みを発生させないようにするために、専用の治具を用いてタイロッドにひずみ計を取り付け、当該ひずみ計により歪みを発生させないように行われる。このひずみ計によるタイロッドの歪み測定は、ひずみ計のセンサーの取り扱いが非常に繊細であることから、タイロッドの仮施工後にタイロッドに取り付けることが好ましく、この場合、タイロッドの自重による引っ張り張力の把握をすることが困難になるという問題があった。
【0008】
さらに、テンション材料としてのタイロッドには、引っ張り力が常に加えられているが、地震などで建物に外力が加わりタイロッドが接続されている部材間の距離が近づいた場合などは、タイロッドが座屈により曲がるという問題もあった。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、タイロッドの張力管理を容易にすることができ、圧縮方向の力が加わった場合においてタイロッドの座屈を防止することができる、タイロッド用連結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のタイロッドユニットを提供する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、先端近傍に雄ネジが螺設されたタイロッドの一端側を挿入して固定する雌ネジ孔を有する略円筒形に構成された第1固定部材と、
前記タイロッドと連結する他の部材を固定する第2固定部材と、
前記第1及び第2固定部材が両端に連結されたコイルバネで構成されたバネ部材とを有し、
前記第1固定部材及び第2固定部材は、外筒接続部と挿入接続部で構成されて互いに入れ子式に進退自在に接続された前記バネ部材に挿入配置される接続機構を有し、
前記接続機構の挿入接続部は、外周面に前記外筒接続部への挿入深さ距離を示す目盛りを備え、前記外筒接続部は、当該目盛りを視認可能な視認窓を有することを特徴とする、タイロッド用連結具を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、
先端近傍に雄ネジが螺設されたタイロッドの一端側を挿入して固定する雌ネジ孔を有する略円筒形に構成された第1固定部材と、
前記タイロッドと連結する他の部材を固定する第2固定部材と、
前記第1及び第2固定部材が両端に連結されたコイルバネで構成されたバネ部材と、
前記バネ部材を挿入可能に第1固定部材及び第2固定部材に設けられ、互いに入れ子式に挿入可能な外筒と内筒を備えたケーシングを有し、
前記ケーシングの内筒筐体は、外周面に前記外筒筐体への挿入深さ距離を示す目盛りを備え、前記外筒筐体は、当該目盛りを視認可能な視認窓を有することを特徴とする、タイロッド用連結具を提供する。
【0013】
本発明の第
3態様によれば、
前記第1固定部材及び第2固定部材は、外筒接続部と挿入接続部で構成されて互いに入れ子式に進退自在に接続された前記バネ部材に挿入配置される接続機構を有することを特徴とする、第2態様のタイロッド用連結具を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記第1及び第2固定部材は、前記バネ部材端部のピッチと同じピッチに構成され前記バネ部材と
螺合可能な雄ネジ部を外周面に有することを特徴とする、第1
から第3態様のいずれか1つのタイロッド用連結具を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記接続機構の外筒接続部内に充填配置され、前記挿入接続部の先端に当接可能な衝撃緩衝部材を有することを特徴とする、
第1又は第3態様のタイロッド用連結具を提供する。
【0018】
本発明の第
6態様によれば、前記第2固定部材に固定される前記他の部材は、前記第1固定部材に固定されるタイロッドと連結する他のタイロッドであり、
前記タイロッド同士を連結するターンバックルとして機能することを特徴とする、ことを特徴とする、第1から第
5態様のいずれか1つのタイロッド用連結具を提供する。
【0019】
本発明の第
7態様によれば、前記第2固定部材に固定される前記他の部材は、前記第1固定部材に固定されるタイロッドが連結する構造物であり、
前記タイロッドと前記構造物を連結するクレビスとして機能することを特徴とする、第1から第
5態様のいずれか1つのタイロッド用連結具を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイロッドを固定する第1固定部材と他の部材を固定する第2固定部材とがその軸方向に張力を加えるバネ部材の両端に連結しているため、連結具に連結されているタイロッドの伸縮方向、特に引っ張り力に対向する方向にバネ力を作用させ、当該バネ力による張力を与えることができる。また、そのバネ力は、バネ部材の長さ変化すなわち、タイロッドの挿入深さに基づいて決定されるため、タイロッドの張力管理を容易にすることができる。一方、タイロッドが圧縮した場合には、バネ部材が縮小することにより、タイロッド間の長さ変化を吸収することができ、タイロッドの座屈を防止することができる。
【0021】
本発明の第2態様によれば、第1及び第2固定部材の雄ネジ部とコイルバネが同じピッチで構成されていることにより、両者の連結を容易にすることができる。
【0022】
本発明の第3態様によれば、外筒接続部と挿入接続部で構成されて互いに入れ子式に接続された接続機構を備えることで、バネ部材の伸縮方向を規制することができ、予定していない方向への連結具の座屈を防止することができる。
【0023】
本発明の第4態様によれば、接続機構の筒内に衝撃緩衝部材を設けることで、第1固定部材及び第2固定部材の圧縮方向への移動時に両者が勢いよく他の部材に接触することを防止し、圧縮時の座屈を防止することができる。
【0024】
本発明の第5態様によれば、ケーシングを設けることで、バネ部材の露出を防止して腐食などの問題をなくすことができ、さらに、デザイン性を良くすることができる。
【0025】
本発明の第6態様及び第7態様によれば、入れ子式に設けられる部材である接続機構又はケーシングに目盛りを設けることで、両者の挿入深さを自由に調整することができ、施工時にはネジ込み量の調整によりタイロッド間の長さを調整することができる。したがって、バネ部材の張力の管理が容易となる。
【0026】
本発明のタイロッド用の連結具は、第1及び第2固定部材にタイロッドを固定し、タイロッド同士を連結するターンバックル又は第2固定部材に建材などの構造物を固定し、タイロッドと構造物を連結するクレビス(フォークエンド)として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るタイロッド用連結具について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明のタイロッド用連結具の第1実施形態にかかる使用状態のタイロッド用ターンバックルの構成を示す一部断面図である。
図2は、
図1のタイロッド用ターンバックルの分解斜視図である。なお、
図1は、タイロッド間に張力が負荷されている状態を示している。
図1及び
図2では、タイロッド用ターンバックル1に加えて、タイロッド用ターンバックル1に接続されるタイロッド70a,70bも示している。
【0030】
タイロッド70a,70bは、部材としての一方の壁材や梁材と、他方の壁材や梁材との間に取り付けられて、張力材として機能する炭素鋼棒である。タイロッド70a,70bは、壁材や梁材などの取付部材に設けられたガセットプレートに対して連結される連結具を介して取り付けられる。タイロッド用ターンバックル1は、2つのタイロッド70a,70bの他端同士を連結し、2つのタイロッドで接続された取付部材間に張力を与えた状態とするものである。
【0031】
本実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル1は、
図1に示すように、それぞれタイロッド70a,70bに固定される第1固定部材及び第2固定部材の一例としての第1ナット部材2及び第2ナット部材3と、コイルバネで構成されたバネ部材4と、衝撃緩衝部材5を備えている。
【0032】
第1及び第2ナット部材2,3は、
図3,
図4に示すように、一般に建材として用いられている剛性の高い材料で構成されており、端面2a,3aに軸方向に伸びる雌ネジ孔6、7が設けられている。それぞれの雌ネジ孔6,7には、ねじ切りの回転方向が相反している順ネジ6a及び逆ネジ7aが設けられている。雌ネジ孔6、7は、後述するタイロッド70a,70bの先端を受け入れる受入空間として機能する。
【0033】
第1ナット部材2は、
図3に示すように、本実施形態においては全長330mmに構成され、略円筒形を有し、端面2aに有底の雌ネジ孔6が設けられている。雌ネジ孔6は、タイロッド70aの先端に設けられた雄ネジ71aと螺合し、第1ナット部材2とタイロッド70aとの螺進位置を調整することで、設置時のタイロッドの長さの調整しろが設定できる。
【0034】
第2ナット部材3は、
図4に示すように、本実施形態においては全長300mmに構成された円筒形の部材である。その軸方向に貫通して設けられた雌ネジ孔7が設けられている。雌ネジ孔7は、タイロッド70bの挿入側端部に所定幅に設けられた逆ネジ7aによって第2ナット部材3とタイロッド70bとの螺進位置を調整することで設置時のタイロッドの長さの調整しろが設定できる。
【0035】
順ネジ6a及び逆ネジ7aは、タイロッド用ターンバックル1の大きさに応じて、必要とするタイロッド70a,70bの長さの調整しろ及びタイロッドとの固定強度に基づいて適宜決定すればよい。
【0036】
第1ナット部材2の他端側は挿入接続部10が設けられており、第2ナット部材3には、雌ネジ孔7と連通して構成される外筒接続部11が設けられている。挿入接続部10は、他の部分よりも若干細径に設けられており、本実施形態においては、150mmの長さを有している。挿入接続部10を外筒接続部11に嵌入することで第1ナット部材2と第2ナット部材3とが接続可能に構成される。
【0037】
バネ部材4は、断面が円形のバネ材で製造されたコイルバネで構成されており、両端に位置するコイル状部分に第1及び第2ナット部材2,3を連結する。
【0038】
第1及び第2ナット部材2,3の外周面には、
図3,
図4に示すように、雄ネジ部8,9が設けられている。雄ネジ部8,9は、バネ部材4のピッチと同じピッチPnを有しており、バネ部材4の端部に螺合可能に構成されている。雄ネジ部8,9は、バネ部材4の断面形状に合わせて円形のネジ山に構成されている。
【0039】
第1及び第2ナット部材2,3は、バネ部材4に対して軸周りに回転させることでバネ部材4の端部に雄ネジ部8,9が螺合する。第1及び第2ナット部材2,3の合計長は、バネ部材4の長さLよりも長く構成されており、第1及び第2ナット部材2,3がバネ部材4に連結すると、挿入接続部10が外筒接続部11に挿入して、第1ナット部材2と第2ナット部材3とが接続する。第1及び第2ナット部材2,3に外力が加わっていないときの挿入接続部10の挿入深さは用途に応じて適宜調整することができるが、挿入接続部10が外筒接続部11に対して最も深く挿入した状態としておくことで、後述する張力の調整しろを大きく取ることができる。
【0040】
また、挿入接続部10の外筒接続部への挿入深さによって第1及び第2ナット部材2,3の端部間距離が変化することで、バネ部材4は伸張し第1及び第2ナット部材2,3間にバネ力が作用する。当該バネ力は、バネ部材4のバネ定数とバネ部材4の伸び量によって決定し、当該バネ力が、施工時のタイロッド70a,70bの両端に加わる張力となる。
【0041】
挿入接続部10の外周面には、第1ナット部材2の第2ナット部材3への挿入深さを視認するため及び、後述する施工時に第1及び第2ナット部材2,3を供回りさせるために目盛りピン12を取りつける。
【0042】
また、外筒接続部11には、視認窓13が設けられている。挿入接続部10を外筒接続部11した状態で、目盛りピン12を挿入接続部10の表面に設けられている取付孔12aに差し込んで固定することにより、目盛りピン12の頭部が視認窓13内に位置することとなり、挿入接続部10の外筒接続部11への挿入幅に応じて目盛りピン12が視認窓13内で移動する。
【0043】
これにより、第1及び第2ナット部材2,3の全長長さを認識することができるため、バネ部材4のバネ定数及び長さ寸法が既知であれば、第1ナット部材2の第2ナット部材3への挿入深さからバネ部材4の変形量を導くことができる。タイロッド70a,70bの間に負荷される引っ張り力を算出することができる。なお、本実施形態では、バネ部材4のバネ定数は、必要とされる張力から算定することができる。
【0044】
外筒接続部11内に設けられる衝撃緩衝部材5は、挿入接続部10及びタイロッド70bの先端との間に設けられている。衝撃緩衝部材5は、第1ナット部材2の第2ナット部材3に圧縮方向の力が加わったときに、部材同士が直接衝突してタイロッド70a,70bに与える衝撃を緩和するためのものである。衝撃緩衝部材5としては、例えば、高分子材料やバネなど、衝撃を吸収できるクッション性を有するものであればその材質は問われない。本実施形態では、高分子衝撃吸収材が使用されている。
【0045】
本実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル1は、次のようにして施工する。タイロッド用ターンバックル1は、第1及び第2ナット部材2,3が自然長のバネ部材4に螺合されたとき挿入接続部10が深い位置まで挿入された状態となるよう構成されている。まず、
図5に示すように、タイロッド70a,70bの他端側をタイロッド用ターンバックル1の第1及び第2ナット部材2,3の雌ネジ孔6,7に通し、螺合させる。
【0046】
その後、タイロッド用ターンバックル1を軸周りに回転させて、タイロッド70a,70bが第1及び第2ナット部材2,3に深く挿入されるように螺進位置を調整する。このとき、上述したとおり、第1及び第2ナット部材2,3に設けられている順ネジ6a及び逆ネジ7aは相反しているため、タイロッド用ターンバックル1を回すことで、第1及び第2ナット部材2,3に接続されているタイロッド70a,70bが雌ネジ孔6,7への螺進深さが深くなるようになっている。
【0047】
図6に示すように、タイロッド70a,70bの螺進深さが深くなることにより、2つの第1及び第2ナット部材2,3の距離が大きくなり、バネ部材4は伸張されることとなる。これにより、タイロッド70a,70b間にバネの引っ張り力が作用し、タイロッド70a,70bの両端に張力が負荷される。
【0048】
バネ部材4の弾性力は、バネ定数及びバネの変形量によって決定されるバネの弾性力に相当する張力がタイロッド70a,70bに付加される。バネ部材4は、両端が第1及び第2ナット部材2,3に接続されているため、このバネの変形幅は挿入接続部10の外筒接続部11への挿入深さを測定することで導くことができ、これは挿入接続部10の外周面に設けられた目盛りピン12の位置によって計測することができる。
【0049】
また、タイロッド70a,70bの施工後、2つのタイロッドが圧縮される方向に力が加わった場合、
図6に示すように、第1及び第2ナット部材2,3がより近接することで座屈が防止できる。このとき、挿入接続部10及び外筒接続部11によって軸方向のみに収縮可能であることから、収縮時にタイロッド70a,70bが予期しない方向に曲がることが防止される。さらに、第1及び第2ナット部材2,3の間に衝撃緩衝部材5が設けられていることにより、2つのタイロッド2に直接的に衝撃が伝わることもなく座屈を防止することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図7は、本発明のタイロッド用連結具の第2実施形態にかかる使用状態のタイロッド用ターンバックルの構成を示す分解斜視図である。
図8は、
図7のタイロッド用ターンバックルの分解斜視図である。
図7及び
図8では、タイロッド用ターンバックル20に加えて、タイロッド用ターンバックル20に接続されるタイロッド70a,70bも示している。本第2実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル20は、第1実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル1と共通する構成を有するため、以下、相違点を中心として説明を進める。
【0051】
本実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル20は、
図7に示すように、それぞれタイロッド70a,70bに固定される第1固定部材及び第2固定部材の一例としての第1ナット部材22及び第2ナット部材23と、コイルバネで構成されたバネ部材24と、第1ナット部材22及び第2ナット部材23に取り付けられ、本発明のケーシングの一例としてのインナーカバー25b及びアウターカバー25aを備えている。
【0052】
第1及び第2ナット部材22,23に設けられている雌ネジ孔26、27は、ねじ切りの回転方向が相反している順ネジ26a及び逆ネジ27aが設けられている。
【0053】
第1ナット部材22は、
図9に示すように、本実施形態においては全長90mmに構成され、雌ネジ孔26が軸方向に貫通して設けられている。雌ネジ孔26は、タイロッド70aの先端に設けられた雄ネジ71aと螺合し、第1ナット部材22とタイロッド70aとの螺進位置を調整することができる。
【0054】
第2ナット部材23は、
図10に示すように、本実施形態においては全長90mmに構成され、雌ネジ孔27が軸方向に貫通して設けられている。雌ネジ孔27は、タイロッド70bの先端と螺合し、第2ナット部材23とタイロッド70bとの螺進位置を調整することができる。
【0055】
第1及び第2ナット部材22,23の外周面には、
図9,
図10に示すように、螺旋方向が互いに相反する雄ネジ部28,29が設けられている。雄ネジ部28,29は、バネ部材24のコイル状連結部のピッチと同じピッチに構成されており、バネ部材24の端部に螺合可能に構成されている。
【0056】
また、第1及び第2ナット部材22,23の後端側外周面には、第1及び第2ナット部材22,23の回転時に使用するスパナ掛け30a,30bが設けられている。
【0057】
第1及び第2ナット部材22,23をバネ部材24の端部に配置し、その軸周りに回転させることでバネ部材24の端部に雄ネジ部28,29が螺合されることによってバネ部材24に連結される。第1及び第2ナット部材22,23のバネ部材24へ螺進位置を調整することによってタイロッド用ターンバックル20の全長を調整することができる。
【0058】
インナーカバー25b及びアウターカバー25aは、本実施形態においては、長さ寸法が320mmの略円筒形の部材であり、互いに入れ子構造となるように第1及び第2ナット部材22,23に設けられる。インナーカバー25b及びアウターカバー25aは、内側にバネ部材24を収容できる程度の内径を有しバネ部材24を被覆して保護するためのものである。
【0059】
また、インナーカバー25bの外周面には、アウターカバー25aへの挿入深さを示す目盛り32が設けられ、また、アウターカバー25aには、当該目盛り32を視認するための視認窓33が設けられている。これにより、第1及び第2ナット部材22,23間の距離を認識することができるため、バネ部材24のバネ定数及び長さ寸法が既知であれば、第1ナット部材22と第2ナット部材23間の距離からバネ部材24の変形量を導くことができる。したがって、タイロッド70a,70bの間に負荷される引っ張り力を算出することができる。
【0060】
本実施形態にかかるタイロッド用ターンバックル20は、次のようにして施工する。まず、タイロッド70a,70bの先端を第1及び第2ナット部材22,23に取り付け、螺進位置を調整することでタイロッドの軸間距離を決定する。
【0061】
その後、タイロッドをガセットプレートに固定し、第1及び第2ナット部材22,23を軸周りに回転させて、タイロッド70a,70bと第1及び第2ナット部材22,23の螺進位置を調整する。このとき、上述したとおり、第1及び第2ナット部材2,3の順ネジ6a及び逆ネジ7aは相反しているため、タイロッド用ターンバックル20を回すことで、第1及び第2ナット部材22,23に接続されているタイロッド70a,70bが雌ネジ孔26,27への螺進深さが深くなるようになっている。
【0062】
タイロッド70a,70bの螺進深さが深くなることにより、2つの第1及び第2ナット部材22,23が引っ張られ、バネ部材24が伸張してタイロッド70a,70b間にバネの引っ張り力が作用して張力が負荷される。
【0063】
バネ部材4は、両端が第1及び第2ナット部材22,23に接続されているため、このバネの変形幅は第1及び第2ナット部材22,23に固定されたインナーカバー25b及びアウターカバー25aの挿入深さを測定することで導くことができ、これはインナーカバー25bの外周面に設けられた目盛り32によって計測することができる。また、インナーカバー25b及びアウターカバー25aは、タイロッドに直接連結していないため、タイロッドの軸間距離調整においてタイロッドの螺進位置を変更した場合でも、その位置関係は変化せず、目盛り32の値を直接値とすることができる。
【0064】
また、タイロッド70a,70bの施工後、2つのタイロッドが圧縮される方向に力が加わった場合、第1及び第2ナット部材22,23がより近接することで座屈が防止できる。
【0065】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態にかかる使用状態のタイロッド用クレビス(フォークエンド)の構成を示す断面図である。
図12は、
図11のタイロッド用クレビスの分解斜視図である。
図11及び
図12では、タイロッド用クレビス40に加えて、タイロッド用クレビスに接続されるタイロッド70を示している。
【0066】
本実施形態にかかるタイロッド用クレビス40は、タイロッド70の一端側を挿入して固定する第1固定部材の一例としてのナット部材42と、壁材や梁材に設けられたガセットプレート60に対して連結される第2固定部材の一例としての連結部材43と、ナット部材42と連結部材43が両端に連結されたコイルバネ44と、ナット部材42と連結部材43に取り付けられ、本発明のケーシングの一例としてのインナーカバー45b及びアウターカバー45aを備えている。
【0067】
ナット部材42は、
図12に示すように、本実施形態においては全長300mmを有する円筒形状に構成されている。ナット部材42に設けられた雌ネジ孔46は、タイロッド70の螺進位置を調整することで、タイロッド用クレビス40に対するタイロッド70の挿入幅を調整することができるように構成されている。
【0068】
連結部材43は、
図12に示すように、ガセットプレート60を受け入れる隙間を形成して互いに平行に延びる一対の舌片部47を有する。各舌片部47には、ピン61の径に対応する径を有するピン挿通孔48が形成されている。また、ガセットプレート60は、舌片部47間に形成された隙間に挿入可能な幅寸法を有する鋼板部材で構成され、ピン61の径に対応する径を備えたピン挿通孔62が形成されている。
【0069】
図12に示されるように、ガセットプレート60が、連結部材43の舌片部47間の隙間に差し込まれ、ピン挿通孔48,62が位置合わせされた状態で、これらピン挿通孔48,62にピン61が挿通され脱落不可に連結部材43に保持される。このように組み付けることで、タイロッド用クレビス40が、ガセットプレート60にピン61を回転軸として回動自在に連結される。
【0070】
連結部材43には挿入接続部49が設けられており、ナット部材42には、雌ネジ孔46と連通して構成される外筒接続部50が設けられている。挿入接続部49は、連結部材43の他の部分よりも若干細径に設けられており、本実施形態においては、150mmの長さを有している。挿入接続部49を外筒接続部50に嵌入することでナット部材42と連結部材43とが接続可能に構成される。
【0071】
ナット部材42及び連結部材43の外周面には、
図11,
図12に示すように、螺旋方向が互いに相反する雄ネジ部51,52が設けられている。雄ネジ部51,52は、バネ部材44のコイル状連結部のピッチと同じピッチに構成されており、バネ部材4の端部に螺合可能に構成されている。
【0072】
ナット部材42及び連結部材43をバネ部材44配置し、その軸周りに回転させることでバネ部材44の端部に雄ネジ部51,52が螺合されることによってバネ部材44に連結される。ナット部材42及び連結部材43のバネ部材44へ螺進位置を調整することによってクレビス40の全長を調整することができる。
【0073】
インナーカバー45b及びアウターカバー45aは、本実施形態においては、長さ寸法が320mmの略円筒形の部材であり、互いに入れ子構造となるようにナット部材42及び連結部材43に設けられる。インナーカバー45b及びアウターカバー45aは、内側にバネ部材44を収容できる程度の内径を有しバネ部材44を被覆して保護するためのものである。
【0074】
また、インナーカバー45bの外周面には、アウターカバー45aへの挿入深さを示す目盛り53が設けられ、また、アウターカバー45aには、当該目盛り32を視認するための視認窓54が設けられている。これにより、ナット部材42及び連結部材43間の距離を認識することができるため、バネ部材44のバネ定数及び長さ寸法が既知であれば、ナット部材42及び連結部材43間の距離からバネ部材44の変形量を導くことができる。したがって、タイロッド70a,70bの間に負荷される引っ張り力を算出することができる。
【0075】
本実施形態にかかるタイロッド用クレビス40は、次のようにして施工する。まず、タイロッド70の両端にそれぞれタイロッド用クレビス40を取りつける。このとき、タイロッド70の螺進位置を調整することにより、タイロッドの軸間距離を調整することができる。
【0076】
次いで、それぞれの連結部材43をガセットプレート60に取り付け、タイロッド70を仮固定した後、タイロッド70を軸周りに回転させて、タイロッド70とナット部材42の螺進位置を変更することによってタイロッド間に張力を負荷する。タイロッドに加えられる張力によって、バネ部材44が伸びて連結部材43及びナット部材42の距離が大きくなる。連結部材43及びナット部材42の距離は、これらに連結するインナーカバー45b及びアウターカバー45aの挿入深さとして把握することができ、これはインナーカバー45bの外周面に設けられた目盛り53によって計測することができる。
【0077】
また、タイロッド70a,70bの施工後、2つのタイロッドが圧縮される方向に力が加わった場合、バネ部材44が縮小することでタイロッド70の座屈が防止できる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態にかかるタイロッド用連結具によれば、コイルバネで構成されたバネ部材により、タイロッドの張力を調整可能に支持するため、連結具に連結されているタイロッドの伸縮方向、特に引っ張り力に対向する方向にバネ力を作用させ、当該バネ力による張力を与えることができる。また、そのバネ力は、バネ部材の長さ変化に基づいて決定されるため、タイロッドの張力管理を容易にすることができる。一方、タイロッドが圧縮した場合には、バネ部材が伸縮することにより、タイロッド間の長さ変化を吸収することができ、タイロッドの座屈を防止することができる。
【0079】
本発明の各実施形態にかかる、タイロッド用ターンバックルとタイロッド用クレビスを組み合わせることで、部材間に取り付けられるタイロッドに複数のバネ部材を配置させることができる。このため、これらのコイルバネの張力の合計がタイロッドの張力となり、タイロッドの張力管理を容易に行なうことができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、本実施形態においてタイロッド用連結具に接続されるタイロッドは炭素鋼棒で形成されたが、高張力鋼棒やステンレス鋼棒で形成されてもよく、あるいは、ワイヤ等の線材であってもよい。なお、タイロッドは、用途や設置位置に応じて、テンションロッドやブレースと称呼されるものも包含される。
【0081】
また、本発明のタイロッド用連結具に接続されるタイロッドは、壁材や梁材に限らず、例えば柱材等の他の部材に取り付けられてもよく、また、タイロッドが取り付けられる部材は、建築構造物及び土木構造物のいずれの部材であってもよい。