特許第6192556号(P6192556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192556硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板
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  • 特許6192556-硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192556
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20170828BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20170828BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20170828BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08L101/08
   C08K9/02
   G06F3/041 450
   G06F3/041 495
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-22859(P2014-22859)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147909(P2015-147909A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】大胡 義和
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141124(WO,A1)
【文献】 特開2012−219232(JP,A)
【文献】 特開2012−008324(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/137257(WO,A1)
【文献】 特開2015−078290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08K 3/00−13/08
C08G 59/00−59/72
C08L 101/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)アルミナおよび/またはシリカで表面処理されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有し、
前記(B)熱硬化性成分として、エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物およびオキサゾリン化合物のいずれか1種以上を含み、
前記(C)アルミナおよび/またはシリカで表面処理されたルチル型酸化チタンの吸油量が25mL/100g以上(但し、25mL/100gを除く)であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)熱硬化性成分が、エポキシ化合物である請求項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の硬化性樹組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化皮膜。
【請求項4】
請求項記載の硬化皮膜を備えてなることを特徴とする加飾ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称す)、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板に関し、詳しくは、スクリーン印刷により形成する加飾層の積層数および積層膜厚を低減させつつも、十分な遮光性を有する加飾部を形成することができる白色の硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や、携帯情報端末、カーナビゲーションシステムを始め、様々な電子機器の操作部にタッチパネル型入力装置(以下、単に「タッチパネル」とも称す。)が採用されている。タッチパネルは、液晶表示装置等の表示用パネルの表示面上で、指先やペン先の接触位置を検出する入力装置として貼り合わせて使用されるものである。タッチパネルには、その構造および検出方式の違いにより、抵抗膜型や静電容量型等の様々なタイプがある。
【0003】
静電容量型のタッチパネルは、一枚のガラス基板上にマトリック状の透光性導電膜を形成し、電極間部分に指等が接触することによって誘起される静電容量の変化を、微弱な電流変化として検出することでタッチパネル上の被接触位置を特定するものであり、従来より使用されていた抵抗膜型入力装置に比べて、より高い透過率を有するという利点がある。
【0004】
タッチパネルを備える液晶表示装置は、一般的にタッチパネルが、液晶表示装置の表示用パネルの偏光板上に搭載固定されており、粘着剤付きクッションゴムを敷設してタッチパネルを固定する方法や表示パネルとタッチパネルを透明接着剤で全面貼り付けする方法等が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、携帯電話等では使用者側から表示部を見る際、カバーガラス全面に情報や画像が表示されるのでなく、カバーガラスの外周部分に、表示部を区画するように黒塗りの枠部分があり、この枠内で表示がなされている。この枠部分は加飾部と呼ばれており、表示部分を4角形状等の所定形状に形成するとともに、タッチパネル配線部分や表示装置の配線部分等の見えると都合が悪い部分を視認されないように隠蔽する機能が求められる。
【0006】
従来は、カバーガラスに加飾を施したものとタッチパネルセンサーとは別々に製造され、最終的に貼り合わされて一体化されていた。これに対し、近年、タッチセンサーの薄型化を目的にカバーガラスに加飾部を形成後、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明導電膜を形成し、カバーガラスにタッチパネルセンサーを付与する加飾カバーガラス一体型タッチパネルセンサー構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−274536号公報
【特許文献2】特開2012−226688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、ガラス基板上に形成された加飾部は、表示装置の配線部を隠蔽する役割が求められるが、同時に加飾部において表示装置から光抜けをしないように、併せて遮光性も求められる。このため、加飾部をスクリーン印刷にて形成する場合、遮光性を高めるため、加飾層を複数層積層することで要求される遮光特性をみたしている。特に、白色加飾では遮光性を確保することは困難であるため、加飾層の膜厚を厚くする必要がある。例えば、光学濃度特性値OD(オプティカルデンシティ)値が4〜5程度以上必要とされる場合、スクリーン印刷法により形成した白色加飾インキでは、80〜120μm程度以上積層する必要がある。
【0009】
しかしながら、加飾層が複数層積層された場合、加飾部の膜厚が厚くなり、タッチパネルセンサー形成工程における、スピンコート法による各工程におけるレジスト塗布時に、加飾部の段差が障壁となり、塗膜にケラムラ等が発生し、良好な塗膜品質を確保することが困難になる。また、遮光性を、遮光層を併用して実現する場合、白色加飾層は遮光層の色が透けて見えない高い隠蔽性が必要となる。さらに、タッチパネルセンサー形成工程において、各種レジストがガラス基板全体で均一に塗布されていないと、タッチパネルセンサーの配線形成がうまくいかず断線する結果、タッチパネルが正常に動作しなくなる。さらにまた、ITO蒸着などの後工程で加熱処理を行うと、隠蔽性の問題が顕著になるという課題も有している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、スクリーン印刷により形成する加飾層の積層数および積層膜厚を低減させつつも、十分な遮光性を有する加飾部を形成することができる白色の硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、白色顔料として所定の酸化チタンを用いることで、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の樹脂組成物においては、前記(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンの吸油量は、25mL/100g以上であることが好ましい。また、前記(B)熱硬化性成分は、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0014】
本発明の硬化皮膜は、上記本発明の硬化性樹組成物が硬化されてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の加飾ガラス板は、上記本発明の硬化皮膜を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スクリーン印刷により形成する加飾層の積層数および積層膜厚を低減させつつも、十分な遮光性を有する加飾部を形成することができる白色の硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板を提供することができる。さらに、加熱処理を行っても良好な隠蔽性を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1〜4および比較例1〜4の、遮光層有無のΔE*abを示すグラフである。隠蔽性の高低を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有する。白色顔料として、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有することで、薄層であっても、十分な遮蔽性および遮光性を有する加飾層を形成することができる。以下、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタン、および(D)熱硬化触媒について、詳細に説明する。
【0019】
<(A)カルボキシル基含有樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物においては、(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子内にカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合等の感光性基を有さない樹脂を好適に用いることができる。
【0020】
このようなカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、例えば、以下に挙げる化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。中でも、スチレン系共重合体が好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られる非感光性カルボキシル基含有樹脂が挙げられる。なお、低級アルキルとは、炭素原子数1〜5のアルキル基を指す。
【0021】
<(B)熱硬化性成分>
本発明の硬化性樹脂組成物においては、(B)熱硬化性成分は、耐熱性を付与するための成分であり、例えば、エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、またはオキサゾリン化合物を用いることができるが、特にエポキシ化合物が好適である。本発明の樹脂組成物においては、熱硬化性成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、多塩基酸化合物とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物、およびグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等公知慣用のエポキシ樹脂等が挙げられる。硬化皮膜の強度および耐熱黄変性をより一層高める観点からは、エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100以上1,000以下である。エポキシ当量を100以上とすることで、印刷時の増粘が少なく作業性が良くなる。また、エポキシ当量を1,000以下とすることで、硬化皮膜の強度をより一層高めることができる。
【0024】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0025】
オキサゾリン化合物としては、例えば、2−メチルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2,4−トリメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキザゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキザゾリン)、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。市販品としては、エポクロス(日本触媒社製)のK−2010E、K−2020E、K−2030E、WS−500、WS−700、RPS−1005が挙げられる。
【0026】
(B)熱硬化性成分の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されるものではない。(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、(B)熱硬化性成分の配合量は好ましくは10質量部以上100質量部以下、より好ましくは20質量部以上90質量部以下、さらに好ましくは25質量部以上85質量部以下である。(B)熱硬化性成分の配合量を上記の範囲とすると、加熱により樹脂組成物がより一層効果的に硬化し、硬化皮膜の耐熱性がより一層高くなる。
【0027】
<(C)多処理加工されたルチル型酸化チタン>
本発明の硬化性樹脂組成物においては、白色顔料として、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有する。ここで、多処理加工とは、ルチル型酸化チタンの表面をアルミナやシリカで被覆することを意味する。この(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンは吸油量が多いため、これを用いた硬化皮膜はドライハイド効果により高い隠蔽性が得られる。そのため、加飾部の厚みを薄くすることができる。ここで、ドライハイド効果とは、白色顔料である酸化チタン粒子を包む層が空気(屈折率1.0)と樹脂(屈折率1.4〜1.6程度)を含有することで、その平均屈折率(見かけ屈折率)が大幅に減少し、光拡散性能が向上することをいう。また、加熱処理を行うと問題が顕著となる隠蔽性についても、上記酸化チタンを用いることにより、改善することができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物においては、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンの吸油量は、25mL/100g以上であることが好ましい。吸油量を25mL/100g以上とすることで、特に、ドライハイド効果による加飾部の隠蔽性を良好に得ることができる。ここで、吸油量とは、JIS K 5101−13−1の試験方法にある試料顔料100gに対する精製あまに油の消費容量である。
【0029】
なお、本発明の樹脂組成物においては、多処理加工された酸化チタンとしてルチル型を用いている。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して紫外線領域の短波長側での反射率が高いため、反射率としては望ましいが、光触媒活性を有するために、組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して紫外線領域の短波長側での反射率が劣るものの、光活性を殆ど有さないために、樹脂の劣化を抑えることができ、安定した硬化皮膜を得ることができる。本発明の樹脂組成物においては、ルチル型酸化チタンは、塩素法で製造したものでも硫酸法で製造したものでも何れを用いてもよい。多処理加工されたルチル型酸化チタンとしては、タイピュアR−931(デュポン社製)、TITON R−7E(堺化学工業社製)等を使用することができる。
【0030】
(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンの配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは50〜350質量部、より好ましくは100〜300質量部である。配合量を350質量部以下とすることで、分散性の悪化を防止しつつ、硬化皮膜が脆くなることを防止することができる。また、50質量部以上とすることで、隠蔽力を十分に得ることができ、遮光層の色が透けてしまうことを防止することができる。
【0031】
<(D)熱硬化触媒>
本発明の樹脂組成物は、(D)熱硬化触媒を含有する。熱硬化触媒としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、これら以外にも、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもできる。特に、トリフェニルホスフィンを熱硬化触媒として用いると、硬化皮膜が200℃以上の高温にさらされても、黄変を防止することができるので好ましい。
【0032】
市販されている熱硬化触媒としては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0033】
本発明の樹脂組成物においては、(D)熱硬化触媒の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。(D)熱硬化触媒の配合量を上記範囲とすることで、保管時の安定性と樹脂組成物の硬化特性をバランスよく両立することができる。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜5.0質量部である。
【0034】
<光重合開始剤>
本発明の樹脂組成物には、光重合開始剤を含めてもよい。光重合開始剤を加えることにより、本発明の樹脂組成物を、熱硬化以外にも光硬化にも用いることができるようになる。光重合開始剤としては、公知のいずれのものも用いることができるが、中でも、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0035】
<光重合開始助剤または増感剤>
光重合開始剤の他、本発明の樹脂組成物においては、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<フィラー>
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合してもよい。このようなフィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用でき、例えば、硫酸バリウム、球状シリカまたはタルクを用いることができる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために金属酸化物、水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
【0037】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物には、酸化を防ぐために、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤や、発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤等の酸化防止剤を含有することができる。本発明で用いられる酸化防止剤は、樹脂等の酸化劣化を防止し、黄変を抑制することができる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<紫外線吸収剤>
一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤と酸化防止剤とを併用することで本発明の樹脂組成物より得られる硬化皮膜の安定化が図れる。
【0039】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を1種以上配合することができる。
【0040】
<有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、組成物の調整の際、粘度調整のため有機溶剤を使用することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有することのみが重要であり、それ以外に特に制限はない。例えば、本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分を混合した1液型の樹脂組成物として用いてもよいが、保存安定性の観点から、(A)成分と(B)成分とを分けて2液型の樹脂組成物とすることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の硬化皮膜について説明する。
本発明の硬化皮膜は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化してなるものである。本発明の樹脂組成物には(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有しているため、得られる硬化皮膜は、隠蔽性や遮光性に優れている。そのため、本発明の樹脂組成物は、電子機器等のタッチパネル部の加飾部に好適に用いることができる。なお、本発明の硬化皮膜は、本発明の硬化組成物を熱硬化させたもののみならず、選択的に光硬化させ不要な未露光部分を現像により除去する写真現像法も含まれるが、この場合であっても、光硬化後に、さらに熱硬化させることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化により、十分な硬化特性を発揮することができるからである。
【0043】
本発明の樹脂組成物を熱硬化させる場合は、樹脂組成物を100〜250℃程度、好ましくは100〜200℃程度とすればよく、光硬化させる場合は、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプ等の紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物の被着体としては、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0045】
上述のとおり、本発明の樹脂組成物は、隠蔽性や遮光性に優れているため、電子機器等のタッチパネル部の加飾部に好適に用いることができるので、被着体としてはガラス板が好適である。この場合、ガラス基板としては、一般的なフロートガラスや液晶パネル等の平面型表示装置の基板用ガラスと同等の透明性の良好な材質のガラスを使用できるが、特にタッチパネルとしての接触使用を考慮して、高い表面圧縮応力を有する強化ガラスの使用が望ましい。強化ガラスは、イオン交換法や風冷強化法等により、表面に圧縮応力層を形成したものであるが、ダイヤモンドカッターやレーザカッター等による片面からの加工により、厚さ方向に非対称な断裁面をつくると、クラックを生じ易い。このため、後述のカバーガラスを分割する工程で、さらに工夫をすることが望ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物を被着体に塗布する場合は、例えば、有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させればよい。
【0047】
次に、本発明の加飾ガラス板について説明する。
本発明の加飾ガラス板は、ガラス基板上に本発明の樹脂組成物の硬化皮膜が備えられてなるものであり、上述のとおり、電子機器等のタッチパネル部のカバーガラスとして好適に好適である。加飾パターンとしては、印刷法を用いて容易に形成することができ、特にスクリーンインキを用いたスクリーン印刷法により任意のパターンをカバーガラス1の片面上に形成できる。額縁パターン等の光遮蔽性の高い厚膜形成にはスクリーン印刷法が最も適しているが、これに限定されるものではなく、必要により他の印刷法やフォトリソグラフィー法や転写法等も利用できる。
【0048】
本発明の加飾ガラス板は、ガラス基板上に本発明の樹脂組成物の硬化皮膜を形成してなるものであること以外に特に制限はなく、あらゆる用途に用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物は、隠蔽性や遮光性に優れているため、本発明の加飾ガラス板は電子機器等のタッチパネル部に好適であるが、光重合開始剤を含有する場合は必ずしもこれに限られることはなく、高温を必要としない加飾用途にも用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0050】
<カルボキシル基含有樹脂溶液の合成>
攪拌機と冷却管を備えた2,000mlのフラスコに、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル377gを入れ、窒素気流下で90℃に加熱した。スチレン104.2g、メタクリル酸246.5g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製:V−601)20.7gを混合溶解したものを、4時間かけてフラスコに滴下した。このようにして、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このカルボキシル基含有樹脂溶液は、固形分酸価が120mgKOH/g、固形分が50%、分子量は20,000である。なお、得られたカルボキシル基含有樹脂の質量平均分子量は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804,KF−803,KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0051】
<実施例1〜4および比較例1〜4>
下記表1、2に示す組成を有する硬化性樹脂組成物を調製した。なお、同表中の各成分の単位は質量部であり、カルボキシル基含有樹脂としては、上記のカルボキシル基含有樹脂溶液の合成で合成したものを用いた。次に、得られた各硬化性樹脂組成物を、厚さ1.0mmのソーダライムガラス(セントラル硝子社製)上にスクリーン法にて塗布した。その後、90℃にて10分間乾燥させて有機溶媒を除去した。この操作を2回繰り返し、白色加飾層をガラス基板上に印刷した。
【0052】
次に、白色加飾層上に黒色の遮光層をスクリーン法にて印刷し、90℃で10分間乾燥させた。その後、150℃で60分間熱を加え、評価用の加飾ガラス板を作製した。なお、黒色の遮光層に用いた組成物の組成は下記のとおりである。
【0053】
【表1】
【0054】
(A)カルボキシル基含有樹脂:<カルボキシル基含有樹脂溶液の合成>で製造したもの(固形分50質量%)
(B)熱硬化性成分1:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型)
(B)熱硬化性成分2:三菱化学社製 YX−8034(水添ビスフェノールA型)
(C)多処理加工ルチル型酸化チタン1:吸油量35.9ml/100g
(C)多処理加工ルチル型酸化チタン2:吸油量27〜31ml/100g
ルチル型酸化チタン1:吸油量19ml/100g
ルチル型酸化チタン2:吸油量19〜21ml/100g
(D)熱硬化触媒1: ジシアンジアミド
(D)熱硬化触媒2:メラミン
(D)熱硬化触媒3:トリフェニルホスフィン
消泡剤:信越化学工業社製:KS−66(シリコン系消泡剤)
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111
酸化防止剤:BASF社製 IRGANOX1010
溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール)
【0055】
【表2】
【0056】
黒色遮光層の組成
カルボキシル基含有樹脂溶液:<カルボキシル基含有樹脂溶液の合成>で製造したカルボキシル基含有樹脂溶液 100質量部(固形分50質量%)
熱硬化性成分:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型) 8質量部
トリフェニルホスフィン 0.6質量部
黒色顔料:四三酸化コバルト粉 75質量部
ルチル型酸化チタン:石原産業社製 CR−58(塩素法ルチル型酸化チタン) 75質量部
溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール) 12質量部
消泡剤:信越化学工業社製シリコン系消泡剤 KS−66 3質量部
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111 6質量部
【0057】
得られた評価用の加飾ガラス板を用いて、遮光層の隠蔽性、硬化皮膜の密着性、耐熱性につき評価した。なお、遮光層の隠蔽性、硬化皮膜の密着性は、下記の手順で評価した。
【0058】
<遮光層の隠蔽性>
黒色遮光層有りの場合と無しの場合(黒色加飾層形成前の場合と後の場合)において、サンプルをガラス基板側から見て色差ΔE*abを算出した。ΔEabは、L表色系において遮光層がある場合と遮光層がない場合の差を算出したもので、数値が小さいほど、遮光層が透けて見えないことを示す。ΔEabの計算式は以下の通りである。
ΔEab=[(L*2−L*1+(a*2−a*1+(b*2−b*11/2
式中、L*1、a*1、b*1は、各々遮光層がある場合のL、a、bを表し、L*2、a*2、b*2は、各々遮光層がない場合のL、a、bの値を表す。ΔE*ab<0.5の場合(黒色遮光層が見えない場合に相当)を○、ΔE*ab>2.0の場合(黒色遮光層が見える場合に相当)を×とした。得られた結果を表3、4に併記する。なお、ΔE*abを算出するに当たり、先ずはコニカミノルタ社製色彩色差計CR−400を用い、L表色系の遮光層がある場合の試料と遮光層がない場合の試料の各L、a、b値をそれぞれ測定した。
【0059】
<密着性(碁盤目付着性)>
JISK5400に準拠して、各サンプルの皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べた。評価基準は以下のとおりである。得られた結果を表3、4に併記する。
○:碁盤目に剥がれが生じなかった。
×:碁盤目に剥がれが生じた。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表3および4からわかるとおり、多処理加工されてルチル型酸化チタンを用いた実施例は、白色加飾層は薄層であっても、十分な隠蔽性を発揮している。また、多処理加工されたルチル型酸化チタンと、熱硬化触媒としてトリフェニルホスフィンとを組み合わせて用いると、加熱による硬化被膜の色の変化(熱処理後のΔEab−熱処理前のΔEab)を著しく低減できていることがわかる。なお、図1に、実施例1〜4および比較例1〜4の、遮光層有無のΔE*abを示すグラフを示す。
図1