(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状ボデーの内部にポリオレフィン製の中空糸膜束の端部をポリオレフィン製のポッティング部を介して封止した中空糸膜モジュールにおいて、前記中空糸膜束のポッティング部基端の根元部に前記ポッティング部よりも融点が高い高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿して前記中空糸膜束の根元部とその近傍部分をサポートするようにした中空糸膜モジュール。
前記中空糸膜束のポッティング部基端の根元部に嵌挿した前記保持部材の一端部と前記ポッティング部基端とを溶着したことを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
筒状ボデーの内部にポリオレフィン製の中空糸膜束の端部をポッティングしてポリオレフィン製のポッティング部を形成する際に、前記中空糸膜束の前記ポッティング部基端の根元部に前記ポッティング部よりも融点が高い高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿する工程を経ることにより製造することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野等において薬液、純水用途で使用されるフィルタは、耐薬品性が高く、金属、有機物溶出の少ない原料を選定して設けられている必要がある。このような耐薬品性が高い原料としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)及びフッソ系樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、PFA:ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等)がある。
この種のカートリッジフィルタ1は、例えば、
図6に示した態様に設けられる。
図6のカートリッジフィルタ1では、中空糸膜2がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの材料からなり、この中空糸膜2が複数束ねられた状態でポッティング剤3として低密度ポリエチレン樹脂を使って高密度ポリエチレン樹脂成形品からなるボデー4内にポッティング(端部溶着)され、中空糸膜モジュール5が形成される。この中空糸膜モジュール5と高密度ポリエチレンにより成形される流路を有するキャップ6a、6bとを熱溶着させることにより、カートリッジフィルタ1が構成される。
【0003】
この様な中空糸膜モジュールの製造方法として、特許文献1には、ドラムの表面に帯状の熱可塑性合成樹脂フィルムをセットし、該ドラム表面上に中空糸膜を前記フィルムと直角方向にスパイラル状に巻き付けた後、更に他の熱可塑性合成樹脂フィルムで中空糸膜を挟んで前記フィルムと同じ位置に載置し、これらフィルム同士及び/又は中空糸膜を熱融着して中空糸膜束を形成し、その中空糸膜束をドラムから外した後、帯状フィルムのほぼ中央で中空糸膜に沿って2つ折りとして中空糸膜層が2層に積層された中空糸膜束とし、この積層中空糸膜を中空糸膜の配列方向に沿ってのり巻き状に巻き込んで中空糸膜束素子を形成し、この中空糸膜束素子を熱収縮性を有するチュ−ブ状ケ−シング内に挿入した後に加熱し、端部を熱収縮させて締め付けるとともに熱融着させ、各中空糸膜同志及び中空糸膜束素子とケ−シング内壁とを液密的に接合した後、端部を切断除去して中空糸膜を開口させる中空糸膜型分離モジュ−ルの製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、
図6で示した態様で製作した中空糸膜モジュールの中空糸膜が取扱い時や使用時に搖動させられた際に中空糸膜に加わる応力が、ポッティングされた中空糸膜の根元部に集中し、中空糸膜が折れたり、破れたりしてリークが発生する問題を解決するため、ケースの開口端部にて各中空糸膜の隙間および各中空糸膜とケース間の隙間を封止材で封止固定し、前記封止固定部における中空糸膜束の根元部分を保護する封止の吸い上がり部より軸方向内側に延びる第1保護部材と、該第1保護部材と中空糸膜束の根元部分の外周部との間に前記第1保護部材より軸方向内側に延びる第2保護部材を設けた中空糸膜モジュールが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の製造方法により、高い濾過精度と幅広い耐薬品性を有する全ポリエチレン製中空糸膜モジュ−ルを製作する際には、中空糸膜として高密度ポリエチレン樹脂(融点約130℃)製又は超高分子量ポリエチレン(融点約130℃)製を、ポッティング剤として低密度ポリエチレン樹脂(融点約110℃)を使用するが、中空糸膜とポッティング剤との融点の差が20℃程度と小さく、また中空糸膜とポッティング剤との間に相溶性があるため、ポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜がポッティング時の熱履歴により膜表面にダメージを受け、孔が大きくなる問題がある。特に、ポッティング時にポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜が倒れて溶融したポッティング剤に接触すると、溶融したポッティング剤が中空糸膜に溶着するが、ポッティング剤とポッティング剤に埋没していない部分の中空糸膜との溶着強度は低いため、その後の工程で溶着したポッティング剤が剥がれた場合には中空糸膜表面を損傷させ、リーク発生の原因となる問題がある。
また、ポッティング時には、中空糸膜束を収納した筒状ボデーを外周及び底面より加熱しているため、ポッティング部付近の筒状ボデーも加熱された状態になっており、中空糸膜が筒状ボデーの内面に接触すると熱によりダメージを受ける可能性がある。
特に、例えば孔径の大きな中空糸膜を用いる場合などには、膜のコシが弱いためポッティング時にポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜が倒れてポッティング剤及び筒状ボデーの内面に接触する傾向があり、中空糸膜表面の損傷及びリークがより発生し易くなる。
【0007】
また、特許文献2には、中空糸膜束の根元部分を保護する封止材の吸い上がり部より軸方向内側に延びる第1保護部材と、該第1保護部材と中空糸膜束の根元部分の外周部との間に第1保護部材により軸方向内側に延びる第2保護部材を設けていることから、第1保護部材により封止材の吸い上がり部において中空糸膜が揺動した際の屈曲が防がれることにより中空糸膜の切れが防止され、第2保護部材により第1保護部材による中空糸膜の屈曲が防がれることにより中空糸膜の切れが防止されるので、確実に中空糸膜の切れが防止され、寿命の延長が図れ、耐久性の向上が図れた旨は記載されている。しかしながら、第1保護部材及び第2保護部材がポッティング時に中空糸膜の倒れを防ぎ、中空糸膜が溶融したポッティング剤及び加熱された筒状ボデー内面の接触することによる発生する中空糸膜表面の損傷及びリークを防止する旨は記載されておらず、また何らの示唆もされていない。
【0008】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発に至ったものであり、その目的とするところは、リーク不良がなく高い信頼性を有するポリオレフィン樹脂製の中空糸膜モジュールとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状ボデーの内部にポリオレフィン製の中空糸膜束の端部をポリオレフィン製のポッティング部を介して封止した中空糸膜モジュールにおいて、前記中空糸膜束のポッティング部基端の根元部に前記ポッティング部よりも融点が高い
高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿して前記中空糸膜束の根元部とその近傍部分をサポートするようにした中空糸膜モジュールである。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記中空糸膜束のポッティング部基端の根元部に嵌挿した前記保持部材の一端部と前記ポッティング部基端とを溶着したことを特徴とする中空糸膜モジュールである。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記保持部材は、筒状ネットである中空糸膜モジュールである。
【0012】
請求項4に係る発明は
、前記ポッティング部を形成するポッティング剤が低密度ポリエチレンであ
る。
【0013】
請求項5に係る発明は、筒状ボデーの内部にポリオレフィン製の中空糸膜束の端部をポッティングしてポリオレフィン製のポッティング部を形成する際に、前記中空糸膜束の前記ポッティング部基端の根元部に前記ポッティング部よりも融点が高い
高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿する工程を経ることにより製造することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、ポッティング時に、中空糸膜束のポッティング部基端の根元部分にポッティング部よりも融点が高い
高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿し、中空糸膜束の根元部とその近傍部分をサポートするようにしているため、ポッティング時に筒状の保持部材により中空糸膜束の根元部がしっかりとサポートされ、ポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜が倒れ、溶融しているポッティング剤及び加熱された筒状ボデー内面に接触することがない。従って、中空糸膜が溶着したポッティング剤及び筒状ボデーの内面と接触しないので、中空糸膜表面が損傷することにより発生するリーク不良を防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、ポッティング時に、中空糸膜束のポッティング部基端の根元部分に嵌挿した保持部材の一端部と前記ポッティング部基端とを溶着し、前記中空糸膜束の根元部とその近傍部分をサポートするようにしているため、ポッティング時に保持部材により中空糸膜束の根元部がより確実にサポートされ、ポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜が倒れ、溶融しているポッティング剤及び加熱された筒状ボデー内面に接触することがない。従って、中空糸膜が溶着したポッティング剤及び筒状ボデーの内面と接触しないので、中空糸膜表面が損傷することにより発生するリーク不良を防止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、保持部材は、筒状ネットであるため、保持部材を中空糸膜束の根元部に嵌挿した状態であっても、当該保持部材の側面に設けた複数の開口部を濾過流体が自由に通過して中空糸膜と接触することができるので、中空糸膜の濾過面積を無駄なく有効に使用することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によると、ポッティング剤として使用する低密度ポリエチレン樹脂の融点は、保持部材に使用する高密度ポリエチレン樹脂の融点よりも低いので、保持部材が中空糸膜と溶着することがない。従って、ポッティング時に保持部材が中空糸膜と一旦融着し、その後の工程等で保持部材が剥がれることにより、中空糸膜の表面に損傷が発生することがない。また、ポッティング剤、保持部材ともに高い耐薬品性を有するとともに、パーティクルを発生させて濾過流体を汚染することがない。
【0018】
請求項5に係る発明によると、中空糸膜束のポッティング部基端の根元部分にポッティング部よりも融点が高い
高密度ポリエチレン製の筒状の保持部材を嵌挿する工程を経ているため、当該保持部材により中空糸膜束の根元部が確実にサポートされ、ポッティング時にポッティング剤に埋没されていない部分の中空糸膜が倒れ、溶融しているポッティング剤及び加熱された筒状ボデーの内面に接触することがないので、中空糸膜表面の損傷を防止し、リーク不良がなく高い信頼性を有する中空糸膜モジュールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明における中空糸膜モジュールとその製造方法における好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の中空糸膜モジュールの一実施形態の模式縦断面である。中空糸膜モジュール10は、中空糸膜11を複数結束した中空糸膜束12と、ポッティング剤13と、筒状の保持部材14と、筒状ボデー15とから構成される。ポッティング剤13は、筒状ボデー15の内部に中空糸膜束12の端部を封止するポッティング部16を形成している。
【0021】
図2においては、
図1に示した中空糸膜モジュール10のポッティング部16における模式横断面を示している。複数の中空糸膜11からなる中空糸膜束12は、筒状の保持部材14を根元部12aに嵌挿した状態で筒状ボデー15内に収納され、ポッティング部16により中空糸膜束12の端部を筒状ボデー15内に封止されている。
【0022】
図3においては、
図1に示した中空糸膜モジュール10のポッティング部16の部分拡大模式断面を示している。本図に示すように、筒状の保持部材14は、中空糸膜束12のポッティング部基端17の根元部12aに嵌挿され、筒状の保持部材14の一端部18は、ポッティング部基端17と溶着されて中空糸膜12の根元部12aとその近傍をサポートしている。筒状の保持部材14の内径は、中空糸膜12の直径と略同一となるように成形されており、筒状の保持部材14は、その一端部18をポッティング部基端17に溶着した状態でポッティング部16に固定され、中空糸膜12の根元部12aをサポートするので、例え中空糸膜11のコシがない状態であっても、筒状の保持部材14内に収納されている中空糸膜12の根元部12a及びその近傍の中空糸膜11が倒れることはない。
【0023】
このため、ポッティング時にポッティング剤13に埋没されていない部分の中空糸膜11(根元部12aの中空糸膜11)に倒れが発生せず、中空糸膜11が溶融したポッティング剤13や加熱された筒状ボデー15の内面15aに接触することがないので、中空糸膜表面が損傷することにより発生するリーク不良を防止することができる。
【0024】
中空糸膜11は、耐溶剤性、耐薬品性の要求を満たし、かつ膜の柔軟性、強度、コスト等の観点から選定すると、ポリオレフィン樹脂からなる中空糸膜が好ましく、特に、高密度ポリエチレン樹脂製の中空糸膜又は超高分子量ポリエチレン樹脂製の中空糸膜が最も好ましい。本実施例では、高密度ポリエチレン樹脂製の中空糸膜を使用している。
【0025】
ポッティング剤13は、ポッティング時における中空糸膜11の熱による損傷を防止するため、高密度ポリエチレン樹脂製中空糸膜又は超高分子量ポリエチレン樹脂製中空糸膜の融点(約130℃)よりも融点が低い樹脂が好ましく、また、薬液用途で使用されるため、耐薬品性が高く、金属、有機物溶出の少ない原料を選定する必要がある。このため、本実施例では低密度ポリエチレン樹脂(融点約110℃)を使用した。
【0026】
筒状の保持部材14は、中空糸膜モジュールが薬液用途で使用されるため、耐薬品性が高く、金属、有機物溶出の少ない原料を部材として選定する必要がある。耐薬品性が高い原料としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)及びフッ素系樹脂(PTFE、PFA等)がある。また、筒状の保持部材14は、ポッティング時に中空糸膜11と溶着することを防止するため、ポッティング剤13より高い融点を有している必要がある。
【0027】
また、筒状の保持部材14は、中空糸膜束12を収容できるように筒状に成形し、筒を高さ方向に自立させたときに、その筒状形状を単独で維持して自立できる程度の強度を有することが好ましい。筒状の保持部材14は、中空糸膜束12の根元部12aのみを保持できれば良いので筒状の高さ14aを高くする必要はなく、50mm程度あれば足り、好ましくは15〜30mm程度で良い。
【0028】
筒状の保持部材14は、内径が過小な場合には中空糸膜束12への締め付けが強くなり、中空糸膜11間の流路が閉鎖されてしまうため、有効に中空糸膜11を使うことができなくなる。一方、内径が過大な場合には中空糸膜束12への締め付けが弱くなり、筒状の保持部材14を装着した中空糸膜束12の根元部12aの中空糸膜11に倒れが生じ、折れ曲りが発生するおそれがある。このため、筒状の保持部材14は、中空糸膜束12との間に隙間が生じないように嵌挿することが好ましく、このため、筒状の保持部材14の内径は中空糸膜束12の外径と略同一であることが望ましい。
【0029】
また、筒状の保持部材14は、中空糸膜束12に嵌挿され、その根元部12aの中空糸膜11の倒れを防ぐために中空糸膜束12の根元部12aをサポートするだけであれば、単に筒状に形成されていれば足りるが、中空糸膜11の濾過面積を有効に活用するためには、中空糸膜束12の根元部12aに嵌挿された前記保持部材14を濾過流体が通過できる形状又は材質であることが好ましい。以上を考慮し、本実施例では、筒状の保持部材14は高密度ポリエチレン樹脂製とし、壁面に複数の開口部20を有する筒状ネットに形成した。
【0030】
筒状ボデー15は、耐溶剤性、耐薬品性の要求を満たす必要からポリオレフィン系樹脂製で、ポッティング剤13の融点(約110℃)よりも高い融点を有する必要がある。このため、本実施例では、上記の条件を満たす高密度ポリエチレン樹脂により筒状ボデーを形成した。
【0031】
以上のように構成された中空糸膜モジュール10では、前述したように、中空糸膜束12の直径と略同一の内径を有する筒状の保持部材14が、中空糸膜束12のポッティング部基端17の根元部12aに嵌挿されており、ポッティング時に、前記保持部材14の一端部18は、ポッティング部基端17と溶着された状態でポッティング部16に固定される。このため、筒状の保持部材14は、安定した状態で中空糸膜12の根元部12aとその近傍をサポートすることができる。なお、筒状の保持部材14の一端部18は必ずしもポッティング部基端17に溶着された状態でなくてもよく、前記保持部材14の一端部18がポッティング部16に溶着しないでわずかに埋もれるか、又はポッティング部基端17に当接した状態であってもよい。
【0032】
さらに、筒状の保持部材14の内径は、中空糸膜束12の直径と略同一であるため、前記保持部材14を嵌挿している中空糸膜束12の根元部12aでは、前記保持部材14の内側空間に中空糸膜11の倒れを受け入れる空間的余裕が存在しない。従って、筒状の保持部材14を嵌挿している中空糸膜束12の根元部12aでは、例え中空糸膜11のコシがない場合であっても、中空糸膜11の倒れが発生することがなく、また上述したように前記保持部材14は、ポッティング時に、ポッティング部16に溶着された状態などで固定されるため、前記保持部材14は、中空糸膜束12の根元部12a及びその近傍部分を、中空糸膜11が束ねられた状態で確実かつ堅固にサポートすることができる。
【0033】
この様な状態でポッティングが行われるため、ポッティング剤13に埋没されていない部分の中空糸膜11が倒れ、溶融しているポッティング剤13及び加熱された筒状ボデー15の内面15aに接触することがない。従って、中空糸膜11にポッティング剤13が溶着すること及び中空糸膜11が筒状ボデー15の内面15aと接触することによる中空糸膜11表面の損傷及びリークの発生を防止することができる。
また、筒状の保持部材14は、中空糸膜束12の根元部12aの周囲を囲むようにしてサポートしているので、ポッティング時に加熱用金型により筒状ボデー15の外周から加熱された際に、筒状ボデー15の内面15aからの輻射熱をある程度さえぎり、中空糸膜11に加わる熱履歴を軽減させ、中空糸膜11の変質を防ぐ効果もある。また、筒状の保持部材14はネット状に形成されているので、壁面に複数設けられている開口部20より前記保持部材14内部の熱を逃がして内部に熱が籠るのを防止し、中空糸膜11に加わる熱履歴を軽減させる効果もある。
【0034】
ここで、本明細書における中空糸膜とポッティング剤の溶着とは、ポッティング時に溶融したポッティング剤の熱により中空糸膜の外周が半溶融状態となり、中空糸膜がポッティング剤と接着されている状態のことをいう。このため、ポッティング剤が冷却した後に中空糸膜表面からポッティング剤が剥がれると、中空糸膜表面が損傷し、リークが生じる原因となる。
【0035】
また、本明細書における中空糸膜束のポッティング部基端の根元部に前記ポッティング部よりも融点が高いポリオレフィン製の筒状の保持部材を嵌挿する工程とは、中空糸膜束12を筒状ボデー15に挿入するのに先立ち、筒状の保持部材14を中空糸膜束12のループ側から挿入し、前記保持部材14の一端部18がポッティング部基端17と接する位置、又はポッティング部16に埋設する位置に配置する工程をいう。
【0036】
なお、本発明の直接的な効果ではないが、ポッティングが完了し、ポッティング剤13が冷却固化した後は、筒状の保持部材14の一端部18がポッティング部基端17に溶着した状態で固定されているため、フィルタの使用時に濾過流体の流れにより中空糸膜11が動揺しても、前記保持部材14が中空糸膜束12の根元部12aをサポートし、中空糸膜11の根元の損傷発生を抑制する効果もある。
【0037】
次に本発明における中空糸膜モジュールの製造方法について説明する。
中空糸膜束を筒状ボデー内にポッティングする方法としては、簾状に配置した中空糸膜の端部にフィルム状にしたポッティング剤を溶着して螺旋状に巻き込んだ後にボデー内に配置し、ポッティング剤を加熱溶融させる方法、中空糸膜を結束した中空糸膜束のポッティング部に粉末状にしたポッティング剤を介在させた後にボデー内に配置し、ポッティング剤を加熱溶融させる方法、中空糸膜を結束した中空糸膜束のポッティング部を、予め加熱溶融させたポッティング剤を入れたカップに浸漬させる方法等があり、本発明の中空糸膜を製造するためには、何れの方法を用いることができる。
【0038】
本実施例においては、簾状に配置した中空糸膜の端部にフィルム状にしたポッティング剤を溶着して螺旋状に巻き込んだ後にボデー内に配置し、ポッティング剤を加熱溶融させる方法を用いて中空糸膜モジュールを作製した。
先ず、ポリエチレン樹脂製中空糸膜11を一定間隔に配列し、上下2枚の帯状の低密度ポリエチレン樹脂フィルム21(ポッティング剤)で挟んで、熱溶着により簾状に一体化する。その後、二つ折りにして螺旋状に巻き込み、
図4の(a)に示すような結束端部に低密度ポリエチレン樹脂フィルム21が溶着された中空糸膜束12を作製する。
【0039】
次いで、
図4の(b)に示すように、筒状の保持部材14を中空糸膜束12のループ側(低密度ポリエチレン樹脂フィルム21が貼り付けられていない側)より挿入し、低密度ポリエチレン樹脂フィルム21が張り付けられている部分との境目(ポッティング部基端17)に装着する。筒状の保持部材14の嵌挿位置は、前記保持部材14の一端部18がポッティング部基端17と溶着することができるようすることが好ましい。ポッティング時に、筒状の保持部材14の一端部18とポッティング部基端17とが溶着されると、前記保持部材14による中空糸膜12の根元部12aのサポートがより確実になり、本発明の効果を十分に発揮することできるためである。
【0040】
このためには、筒状の保持部材14の一端部18とポッティング部基端17とは、少なくとも接触した状態で中空糸膜束12に前記保持部材14を嵌挿することが必要であり、前記保持部材14の一端部18がポッティング部16に埋設されるように中空糸膜束12に前記保持部材14を嵌挿することがより好ましい。
【0041】
上記で作製した中空糸膜束12を
図4(C)に示すように筒状ボデー15に挿入後、
図4(d)に示すようにポティングカップ22に挿入し、加熱された金型23の中にセットして、低密度ポリエチレン樹脂フィルム21(ポッティング剤)を加熱溶融させて、中空糸膜束12の端部をポッティング部16を介して封止する。この時、高密度ポリエチレン(融点約130℃)製の中空糸膜11と低密度ポリエチレン(融点約110℃)樹脂との融点差は約20℃しかないため、中空糸膜を溶融させないように、ポッティング部16の温度が高密度ポリエチレンの融点以下であるように、金型23の温度を維持する必要がある。また、ポッティング時に中空糸膜11が溶融するまでには至らなくても、ポッティング時の熱によって中空糸膜11が変質するおそれがあるので、中空糸膜が溶融せずにポッティング剤が適度に溶融する程度の温度で短時間ポッティングを行い、中空糸膜11に加わる熱履歴を低減することに留意する必要がある。
【0042】
この時に使用する金型23は、ポッティング部16のみを筒状ボデー15の周囲から加熱してポッティング剤13を加熱溶融させれば足りるので、その深さ23aは、ポッティング剤13の高さと同等以上から3倍程度までとするのが適当である。金型が深すぎると、筒状の保持部材14によりサポートされている範囲を超えて中空糸膜束12が加熱されることにより、熱履歴の問題が生じるおそれがある。
【0043】
冷却固化させた後、ポッティングカップ22から取り出し、固化したポッティング部16の端部を切断し中空糸膜11を開口させると中空糸膜モジュール10が得られる。
この後、この中空糸膜モジュール10に、図示しない入口ポートを有する高密度ポリエチレン樹脂製のキャップを溶着すると、カートリッジフィルタが完成する。なお、必要により、入口ポートを有する高密度ポリエチレン樹脂製のキャップに加え、出口ポートを有する同一材質のキャップを更に溶着してもよい。
【実施例】
【0044】
本発明における中空糸膜モジュールについて、中空糸膜のリーク試験を行い、実施例、比較例及び参考例1〜3の試験結果を得た。
【0045】
〔実施例〕
実施例として、
図5(a)に示すように、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製でネット状に形成した筒状の保持部材14を0.1μm高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製中空糸膜11を結束した中空糸膜束12に嵌挿し、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂で成形した筒状ボデー15に収納した後、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂フィルムのポッティング剤13により中空糸膜束12の端部をポッティングした中空糸膜モジュールを作製した。
〔比較例〕
比較例として、
図6に示すように保持部材を有しない以外は、実施例と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
〔参考例〕
参考例1及び2として、
図5(b)に示すように、ポリプロピレン(PP)樹脂製不織布を保持部材24として中空糸膜束12に装着したことを除いては、実施例と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。ただし、参考例1の不織布の厚さを3mmとしたのに対し、参考例2では不織布の厚さを0.5mmとした。
参考例3として、
図5(c)に示すように、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂製フィルムを保持部材24として中空糸膜束12に装着したことを除いては、実施例と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
【0046】
完成した各中空糸膜モジュールにイソプロピルアルコール(IPA)を通液させて中空糸膜を湿潤させた後、中空糸膜モジュールの1次側にエアー圧0.1MPaを印加し、2次側からの気泡の発生有無を確認するリーク検査試験を実施した。
【0047】
実施例、比較例及び参考例1〜3の具体的な構成、リーク検査試験に供した本数、並びにリーク検査試験で2次側から気泡が発生した(リークが発生した)本数を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
高密度ポリエチレン樹脂をネット状に形成して作製した筒状の保持部材14を嵌挿して中空糸膜束12をサポートした実施例では、供試した中空糸膜モジュール10本に対してリーク発生本数は0本であった。この試験結果は、筒状の保持部材のサポート効果により、ポッティング時に中空糸膜が倒れてポッティング剤及び筒状ボデーの内面に接触することが防止され、中空糸膜表面に損傷が発生しなかったことを示している。
【0050】
従来の中空糸膜モジュールと同様に筒状の保持部材を装着しなかった比較例では、供試した中空糸膜モジュール10本の全てにリークが発生した。この試験結果は、筒状の保持部材を装着することなく高密度ポリエチレン樹脂製の中空糸膜を低密度ポリエチレン樹脂でポッティングする場合には、中空糸膜が倒れてポッティング剤及び筒状ボデー内面に接触することにより発生する中空糸膜表面の損傷及びリークが、極めて発生しやすいことを示している。
【0051】
ポリプロピレン不織布を保持部材として装着して中空糸膜束12をサポートした参考例1及び参考例2においては、厚手の不織布(厚さ3mm)を使用した参考例1では、供試した中空糸膜モジュール4本に対してリーク発生本数は0本であった。一方、薄手の不織布(厚さ0.5mm)を使用した参考例2では、供試した中空糸膜モジュール4本の全てにリークが発生した。この試験結果は、ポリプロピレン不織布が厚い場合には保持部材としてのサポート効果が得られるが、ポリプロピレン不織布が薄い場合には保持部材としてのサポート効果が得られないことを示している。
【0052】
低密度ポリエチレンフィルムを保持部材として装着して中空糸膜束をサポートした参考例3では、供試した中空糸膜モジュール数4本に対してリーク発生本数は1本であった。この試験結果は、低密度ポリエチレンフィルムでは、保持部材としてのサポート効果が十分に得られないことを示している。
【0053】
以上の試験結果から、高密度ポリエチレン樹脂製の中空糸膜、特にコシがない中空糸膜を低密度ポリエチレン樹脂でポッティングする際に、高密度ポリエチレン樹脂製の筒状の保持部材を中空糸膜束の根元部に嵌挿して中空糸束をサポートさせると、中空糸膜が倒れてポッティング剤及び筒状ボデー内面に接触することにより発生する中空糸膜表面の損傷及びリークを防止するために極めて有効であることが確認できた。
【0054】
また、保持部材の材質及び形状については、次の通りまとめることができる。
高密度ポリエチレン製でネット状に形成した筒状の保持部材を装着して中空糸膜束をサポートした場合には、中空糸膜の倒れ防止効果を発揮するとともに、前記保持部材と中空糸膜との溶着も防ぐことができる。これに加え、前記保持部材からパーティクルが発生しないために濾過流体を汚染することもないため、本発明の部材に適している。また、ネットの網目を通過して濾過流体が中空糸膜に侵入できるため、中空糸膜の濾過面積を有効に活用することができる。
【0055】
ポリプロピレン不織布を保持体として中空糸膜束をサポートした場合は、不織布が厚い場合には中空糸膜の倒れ防止の効果を発揮し、ポリプロピレン不織布の融点が高密度ポリエチレン製の中空糸膜の融点より高いため、ポッティング時の加熱によって不織布が溶けることがなく、不織布と中空糸膜が溶着しない利点がある。しかしながら、不織布自体からパーティクルを発生するため、高純度の薬液用途のフィルタ部材としては適さない。
【0056】
低密度ポリエチレン製フィルムを保持部材として装着して中空糸膜束をサポートした場合は、中空糸膜束の根本部分外周を強く締め付けないと中空糸膜の倒れ防止効果が得らなかった。また、ポッティング剤と同じ材質の低密度ポリエチレンであるために融点が同じであり、ポッティング時にフィルムが溶け、ポッティング剤に埋没していない中空糸膜と溶着し、その後の工程で剥がれ、中空糸膜表面に損傷が発生するおそれがある。さらに、フィルムが中空糸膜束外周部に存在するため、流路の妨げとなり、中空糸膜の濾過面積を有効に活用することができないため、フィルタ設計として好ましくない。なお、同様の不具合は、筒状の保持部材としてパイプ状の部材を使用した場合にも当てはまる。
【0057】
以上説明したとおり、高密度ポリエチレン樹脂製の中空糸膜束を高密度ポリエチレン製筒状ボデーに収納し、端部を低密度ポリエチレン樹脂でポッティングして耐薬品性が高く、金属、有機物溶出の少ない中空糸膜モジュールを製作する際に、特にコシがない中空糸膜を使用する場合には、高密度ポリエチレン樹脂でネット状に形成した筒状の保持部材を中空糸膜束の根元部に嵌挿してポッティングすると、中空糸膜の倒れに起因する不具合の発生を防止し、リーク不良がなく、高い信頼性を有するポリオレフィン樹脂製の中空糸膜モジュールを製造することができるため、極めて有益である。
また、筒状の保持体の端部がポッティング剤に固定された状態で中空糸膜束の根元部をサポートするので、フィルタの使用時に、濾過流体により中空糸膜が揺れることにより発生する中空糸膜の根元の損傷発生を抑制する効果もある。