特許第6192570号(P6192570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192570アプリケーション開発支援プログラム及びアプリケーション開発支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192570
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】アプリケーション開発支援プログラム及びアプリケーション開発支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/44 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   G06F9/06 620K
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-36604(P2014-36604)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-162067(P2015-162067A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 巧太郎
【審査官】 坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−208841(JP,A)
【文献】 特開2012−093979(JP,A)
【文献】 特開2011−053729(JP,A)
【文献】 特開2011−008487(JP,A)
【文献】 特開2009−258905(JP,A)
【文献】 特開2007−257046(JP,A)
【文献】 特開2007−122348(JP,A)
【文献】 特開2006−309719(JP,A)
【文献】 特開2004−129220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置のアプリケーションを作成する際に用いられるアプリケーション開発支援プログラムであって、
前記アプリケーション開発支援プログラムを実行することにより、コンピュータを開発ツール部と、ビルド用資産保持部と、ビルド部として機能させ、
前記開発ツール部は、(1)前記アプリケーションの開発環境を提供するためのソフトウェアツールであって、Graphical User Interface(GUI)によって、少なくとも前記アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、及びテストを支援するための統合環境を提供し、(2)作成するアプリケーションの前記開発環境をプロジェクトと呼ばれる単位で管理し、前記アプリケーションを作成する際に前記開発ツール部が使用され前記プロジェクトが定義されるとともに、定義された前記プロジェクトにおいてソースコードの編集が行なわれ、
前記ビルド用資産保持部は、前記プロジェクトにおいて作成される前記アプリケーションをビルドする際に必要とされるファイル及びライブラリを保持し、
前記ビルド部は、ビルド実行部と、ファイル抽出部と、インターフェイス照会部と、マニフェストファイル作成部とを備え、前記ビルド用資産保持部に保持されている前記ファイル及び前記ライブラリを用いて、前記マニフェストファイル作成部により作成されるマニフェストファイルに基づき、前記ビルド実行部によりビルドを行わせることにより前記アプリケーションを作成し、
前記ファイル抽出部は、(1)前記ビルド用資産保持部を参照して、全ての前記プロジェクトのビルド対象アプリケーションの動作ターゲットとなるプラットフォームのバージョンをリストアップし(2)リストアップした前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンを自身の環境のバージョンと比較し、(3)異なる場合に、前記ビルド用資産保持部から、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通に必要とされ固定的に定められているファイル及びライブラリを抽出し、(4)抽出されずに残っているファイル及びライブラリにおいて、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるライブラリを特定し、(5)前記プラットフォームのバージョン毎に異なる特定したファイル及びライブラリ前記ビルド対象アプリケーション動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンに適したファイル及びライブラリに置き換えることにより更新
前記インターフェイス照会部は、抽出されずに残っているライブラリにおいて特定された前記ライブラリについて、前記ビルド対象アプリケーションが前記ライブラリ上で利用できるApplication Programming Interface(API)を探し出すための公開インターフェイスを問い合わせる処理を行い、
前記公開インターフェイスを問い合わせる処理は、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかを決定するために宣言されるものであり、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかの情報を記載したファイルはマニフェストファイルと呼ばれ、
前記マニフェストファイル作成部は、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理によって探し出された前記APIについて、差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルに結合することを特徴とするアプリケーション開発支援プログラム。
【請求項2】
画像形成装置のアプリケーションを作成する際に用いられるアプリケーション開発支援システムであって、
前記アプリケーション開発支援システムは、開発ツール部と、ビルド用資産保持部と、ビルド部とを備え、
前記開発ツール部は、(1)前記アプリケーションの開発環境を提供するためのソフトウェアツールであって、Graphical User Interface(GUI)によって、少なくとも前記アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、及びテストを支援するための統合環境を提供し、(2)作成するアプリケーションの前記開発環境をプロジェクトと呼ばれる単位で管理し、前記アプリケーションを作成する際に前記開発ツール部が使用され前記プロジェクトが定義されるとともに、定義された前記プロジェクトにおいてソースコードの編集が行なわれ、
前記ビルド用資産保持部は、前記プロジェクトにおいて作成される前記アプリケーションをビルドする際に必要とされるファイル及びライブラリを保持し、
前記ビルド部は、ビルド実行部と、ファイル抽出部と、インターフェイス照会部と、マニフェストファイル作成部とを備え、前記ビルド用資産保持部に保持されている前記ファイル及び前記ライブラリを用いて、前記マニフェストファイル作成部により作成されるマニフェストファイルに基づき、前記ビルド実行部によりビルドを行わせることにより前記アプリケーションを作成し、
前記ファイル抽出部は、(1)前記ビルド用資産保持部を参照して、全ての前記プロジェクトのビルド対象アプリケーションの動作ターゲットとなるプラットフォームのバージョンをリストアップし(2)リストアップした前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンを自身の環境のバージョンと比較し、(3)異なる場合に、前記ビルド用資産保持部から、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通に必要とされ固定的に定められているファイル及びライブラリを抽出し、(4)抽出されずに残っているファイル及びライブラリにおいて、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットのバージョンのプラットフォームに必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるライブラリを特定し、(5)前記プラットフォームのバージョン毎に異なる特定した前記ファイル及び前記ライブラリ前記ビルド対象アプリケーション動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンに適したファイル及びライブラリに置き換えることにより更新
前記インターフェイス照会部は、抽出されずに残っているライブラリにおいて特定された前記ライブラリについて、前記ビルド対象アプリケーションが前記ライブラリ上で利用できるApplication Programming Interface(API)を探し出すための公開インターフェイスを問い合わせる処理を行い、
前記公開インターフェイスを問い合わせる処理は、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかを決定するために宣言されるものであり、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかの情報を記載したファイルはマニフェストファイルと呼ばれ、
前記マニフェストファイル作成部は、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理によって探し出された前記APIについて、差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルに結合することを特徴とするアプリケーション開発支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーション開発支援プログラム及びアプリケーション開発支援システムに係り、例えば、開発環境のプロジェクトに管理されるアプリケーションを作成するためのアプリケーション開発支援プログラム及びアプリケーション開発支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にアプリケーションを作成するためには開発環境が必要であり、この開発環境を利用してターゲットとなるアプリケーション(ソフトウェア)を作成する。ターゲットとなるアプリケーションは、通常、プロジェクトと称される単位で構成され管理される。
【0003】
プロジェクトは、開発環境のバージョンと密接に関連している。そして、開発環境のバージョンは、そのアプリケーションが主な動作対象となるプラットフォームと密接に関連している。
【0004】
アプリケーションに必要とされるファイル、ライブラリ等はプラットフォームのバージョン毎に異なる。もし、開発者が様々なプラットフォームのバージョンで開発しようとした場合、各プロジェクトを各バージョン用に修正しなければならない場合がある。
【0005】
このような背景のもと、開発者を支援するための技術が各種提案されている。例えば、ソフトウェアの開発環境及び実行環境におけるライブラリ管理方法に関して、特にライブラリ構成に関する規則を追加・変更・削除することができるライブラリ管理方法の技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−269065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の技術では、管理表を利用しており更新が頻繁に行われる環境向きではなく、更新に関わる工数も大きいことから別の技術が求められていた。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、画像形成装置のアプリケーションを作成する際に用いられるアプリケーション開発支援プログラムであって、前記アプリケーション開発支援プログラムを実行することにより、コンピュータを開発ツール部と、ビルド用資産保持部と、ビルド部として機能させ、前記開発ツール部は、(1)前記アプリケーションの開発環境を提供するためのソフトウェアツールであって、Graphical User Interface(GUI)によって、少なくとも前記アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、及びテストを支援するための統合環境を提供し、(2)作成するアプリケーションの前記開発環境をプロジェクトと呼ばれる単位で管理し、前記アプリケーションを作成する際に前記開発ツール部が使用され前記プロジェクトが定義されるとともに、定義された前記プロジェクトにおいてソースコードの編集が行なわれ、前記ビルド用資産保持部は、前記プロジェクトにおいて作成される前記アプリケーションをビルドする際に必要とされるファイル及びライブラリを保持し、前記ビルド部は、ビルド実行部と、ファイル抽出部と、インターフェイス照会部と、マニフェストファイル作成部とを備え、前記ビルド用資産保持部に保持されている前記ファイル及び前記ライブラリを用いて、前記マニフェストファイル作成部により作成されるマニフェストファイルに基づき、前記ビルド実行部によりビルドを行わせることにより前記アプリケーションを作成し、前記ファイル抽出部は、(1)前記ビルド用資産保持部を参照して、全ての前記プロジェクトのビルド対象アプリケーションの動作ターゲットとなるプラットフォームのバージョンをリストアップし、(2)リストアップした前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンを自身の環境のバージョンと比較し、(3)異なる場合に、前記ビルド用資産保持部から、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通に必要とされ固定的に定められているファイル及びライブラリを抽出し、(4)抽出されずに残っているファイル及びライブラリにおいて、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるライブラリを特定し、(5)前記プラットフォームのバージョン毎に異なる特定したファイル及びライブラリを、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンに適したファイル及びライブラリに置き換えることにより更新し、前記インターフェイス照会部は、抽出されずに残っているライブラリにおいて特定された前記ライブラリについて、前記ビルド対象アプリケーションが前記ライブラリ上で利用できるApplication Programming Interface(API)を探し出すための公開インターフェイスを問い合わせる処理を行い、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理は、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかを決定するために宣言されるものであり、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかの情報を記載したファイルはマニフェストファイルと呼ばれ、前記マニフェストファイル作成部は、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理によって探し出された前記APIについて、差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルに結合することを特徴とする
本発明は、画像形成装置のアプリケーションを作成する際に用いられるアプリケーション開発支援システムであって、前記アプリケーション開発支援システムは、開発ツール部と、ビルド用資産保持部と、ビルド部とを備え、前記開発ツール部は、(1)前記アプリケーションの開発環境を提供するためのソフトウェアツールであって、Graphical User Interface(GUI)によって、少なくとも前記アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、及びテストを支援するための統合環境を提供し、(2)作成するアプリケーションの前記開発環境をプロジェクトと呼ばれる単位で管理し、前記アプリケーションを作成する際に前記開発ツール部が使用され前記プロジェクトが定義されるとともに、定義された前記プロジェクトにおいてソースコードの編集が行なわれ、前記ビルド用資産保持部は、前記プロジェクトにおいて作成される前記アプリケーションをビルドする際に必要とされるファイル及びライブラリを保持し、前記ビルド部は、ビルド実行部と、ファイル抽出部と、インターフェイス照会部と、マニフェストファイル作成部とを備え、前記ビルド用資産保持部に保持されている前記ファイル及び前記ライブラリを用いて、前記マニフェストファイル作成部により作成されるマニフェストファイルに基づき、前記ビルド実行部によりビルドを行わせることにより前記アプリケーションを作成し、前記ファイル抽出部は、(1)前記ビルド用資産保持部を参照して、全ての前記プロジェクトのビルド対象アプリケーションの動作ターゲットとなるプラットフォームのバージョンをリストアップし、(2)リストアップした前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンを自身の環境のバージョンと比較し、(3)異なる場合に、前記ビルド用資産保持部から、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通に必要とされ固定的に定められているファイル及びライブラリを抽出し、(4)抽出されずに残っているファイル及びライブラリにおいて、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットのバージョンのプラットフォームに必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるファイルを、ファイルとライブラリを区別する拡張子に基づき探索することにより、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの全てのバージョンの前記プラットフォームに共通でないが必要とされるライブラリを特定し、(5)前記プラットフォームのバージョン毎に異なる特定した前記ファイル及び前記ライブラリを、前記ビルド対象アプリケーションの動作ターゲットの前記プラットフォームのバージョンに適したファイル及びライブラリに置き換えることにより更新し、前記インターフェイス照会部は、抽出されずに残っているライブラリにおいて特定された前記ライブラリについて、前記ビルド対象アプリケーションが前記ライブラリ上で利用できるApplication Programming Interface(API)を探し出すための公開インターフェイスを問い合わせる処理を行い、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理は、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかを決定するために宣言されるものであり、前記ビルド対象アプリケーションがどの前記APIを利用するか利用しないかの情報を記載したファイルはマニフェストファイルと呼ばれ、前記マニフェストファイル作成部は、前記公開インターフェイスを問い合わせる処理によって探し出された前記APIについて、差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルに結合することを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アプリケーション開発環境において、ターゲットのプラットフォームのバージョンを関連付けるテーブルが不要となる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る、アプリケーション開発支援システムを示す機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る、アプリケーション開発支援システムを用いたプロジェクト更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るアプリケーション開発支援システム10(アプリケーション開発環境)の概略構成を示す機能ブロック図である。アプリケーション開発支援システム10は、ソフトウェア的には所定の演算装置や記憶装置を有するコンピュータにより実行されるプログラムとして、ハードウェア的にはそのプログラムを実行するコンピュータ及びその周辺機器(表示装置、入出力装置等)により実現される。
【0014】
アプリケーション開発支援システム10は、開発ツール部20と、ビルド用資産保持部30と、ビルド部40とを有する。
【0015】
開発ツール部20は、アプリケーション(ソフトウェア)の開発環境を提供するためのソフトウェアツールであって、いわゆるGUI(Graphical User Interface)によって、アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、及びテスト等を支援するための統合環境を提供する。ここでは、開発ツール部20は、作成するアプリケーションの開発環境を「プロジェクト」と呼ばれる単位で管理する。具体的には、ユーザーは、アプリケーションを作成する際に開発ツール部20を使用しプロジェクトを定義するととともに、定義したプロジェクトにおいてソースコード等の編集を行う。プロジェクトは、ファイル、ライブラリおよびフォルダから構成され、フォルダにはプロジェクトのコンポーネントが格納される。
【0016】
ビルド用資産保持部30は、プロジェクトにおいて作成されるアプリケーションをビルドする際に必要とされる各種のファイルやライブラリ等を保持する。
【0017】
ビルド部40は、ビルド用資産保持部30に保持されているファイルやライブラリ等を用いてビルドを行い、所望のアプリケーションを作成する。ここで、ビルドとは、ビルド用資産保持部30のファイル等に基づいてアプリケーションの実行コードを生成することである。一般的にはコンパイル及びリンク等の過程を含む処理をいう。
【0018】
ビルド部40は、ビルド実行部42と、ファイル抽出部44と、インターフェイス照会部46と、マニフェストファイル作成部48とを備える。
【0019】
ビルド実行部42は、ビルド用資産保持部30に基づいてアプリケーションを実際にビルドするためのコンパイラ等のプログラムツールである。
【0020】
ファイル抽出部44は、オペレーションシステム(以下、「OS」という。)等のプラットフォームが複数バージョン有る場合に、それら全てのプラットフォームに共通に必要とされるライブラリを抽出する。ここで、抽出するとは、実際に検索してプロジェクトにおける必要な場所に配置することである。これはビルド時のリンクのためのパスが通っていれば配置場所は特に限定しない。また、共通というのは全てのバージョンで共通なファイルとなる。この共通ファイルは固定である。
【0021】
さらに、ファイル抽出部44は、共通に必要とされるライブラリの抽出処理につづき、ターゲットとなるプラットフォーム、より具体的にはプロジェクトのバージョンに対応したファイルを探索する処理を行う。探索するためにはファイルとライブラリを区別する必要があるが、区別に拡張子を利用してもよい。この処理により、ファイル抽出部44は、共通でないが必要とされるライブラリを特定する。
【0022】
インターフェイス照会部46は、抽出されず残っているライブラリに関して公開インターフェイスを問い合わせる処理を行う。インターフェイスへの問い合わせについては、他のアプリケーションがそのライブラリ上で利用できるAPI(Application Programming Interface)を探し出すためのものである。この処理はビルド対象のアプリケーションがどのAPIを利用するかまた利用しないかを決定するために宣言されるものであって、動的に生成される。この情報を記載したファイルはマニフェストファイルと呼ばれるものであり、多くの開発環境においてビルド時に必要となる。
【0023】
ニフェストファイル作成部48は、インターフェイス照会部46によって探し出された差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルに結合する。
【0024】
以上の構成による処理を説明する。図2は、アプリケーション開発支援システム10によるプロジェクト更新処理を示すフローチャートである。
【0025】
ユーザーは、開発環境を起動すると、開発ツール部20を操作し表示装置に開発用のGUIを表示させ、アプリケーション作成処理を開始する。まず、ファイル抽出部44は、ビルド用資産保持部30を参照して、対象フォルダに存在する全てのプロジェクトを検索しバージョンを確認する(S10)。より、具体的には、対象フォルダにある全てのプロジェクトを検索し、全てのプロジェクトのターゲットプラットフォームバージョンをリストアップする。なお、ターゲットプラットフォームバージョンとは、そのプロジェクトがビルドされてアプリケーションを生成した場合に、対象となるプラットフォーム(例えばOS)のバージョンである。
【0026】
ファイル抽出部44は、検索したプロジェクトが自身の環境と同じバージョンであるか否かを判断する(S12)。同じバージョンであれば(S12のY)、プロジェクトを更新する必要がないため、更新に関する処理は終了する。
【0027】
異なるバージョンの場合(S12のN)、ファイル抽出部44は、バージョン依存ファイルを更新し、開発環境に保存されているバージョン毎に異なるファイル、例えばライブラリ等を置き換える処理を行う(S14)。当然、開発環境は自らのプラットフォームバージョンのバージョン依存ファイルを保持する。
【0028】
つぎに、マニフェストファイル作成部48は、公開インターフェイスとの差分のマニフェストファイルを作成し(S16)、既存のマニフェストファイルと結合する(S18)。具体的には、マニフェストファイル作成部48は、インターフェイス照会部46によって探し出した差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルと結合する。
【0029】
通常、公開インターフェイスの処理は単純な置き換えができない場合の代表的な例である。アプリケーションは自らが動作するプラットフォームのAPIを利用するが、どのAPI(またはAPIグループ)が公開されていて、その中でどのAPI(またはAPIグループ)を利用するかをマニフェストファイル等に記載しておくことが要求されるプラットフォームが、比較的多い。例えば、組み込みシステムで利用されるOSGi環境等である。このような場合、プロジェクト作成者が作成したマニフェストファイルには、プロジェクト作成者が記載した部分とプラットフォームが要求する部分とが1つのファイルに存在する。したがって、単純な置き換えはできない。そこで、上述のように、公開インターフェイスとの差分のマニフェストファイルを作成し、既存のマニフェストファイルと結合することで、プラットフォームが要求するバージョン依存部分のみ置き換える。
【0030】
以上、本実施形態では、様々なプラットフォームがターゲットとなるプロジェクトが複数存在する場合に、自動的に開発環境のターゲットプラットフォームに対応することができる。その結果で、プラットフォームバージョンとプロジェクトとを関連付けるテーブルといったものが不要となる。従来技術ではファイル、ライブラリ、マニフェストファイルとプラットフォームバージョンを関連付けるテーブルといったものを管理し、アプリケーションビルド時にバージョンを選択し、必要なライブラリを特定してビルドすることが多かった。これは開発環境が肥本化、複雑化していく要因の1つである。しかし、本実施形態ではターゲットプラットフォームバージョンの切り替えは選択方式ではなく、開発環境も自バージョンファイルのみ同梱すればよく、管理テーブル等も不用になる。
【0031】
特に、Android(登録商標)やLinux(登録商標)のようなオープンソースのオペレーテンングシステムではバージョンが頻繁に更新されるため、上述のような方式を用いることは非常に効果的である。また、特別のリソースや処理能力は不要であり、他の既存機能にほとんど影響しないという利点もある。また、このような開発環境(アプリケーション開発支援システム10)は、例えばプリンターや複合機といった画像形成装置に関するアプリケーションの作成に有効である。すわなち、プリンターや複合機は、現実的な処理の観点から寿命が長いものもあり、特に多くのOS(プラットフォーム)に対応する必要がある。一方、パーソナルコンピュータでは、ハードウェアの処理能力等の観点から、使用可能なOSは数世代(数バージョン)に限られることが多い。この点で、画像形成装置のアプリケーションに関して、本実施形態の機能を利用することで、多様なプラットフォームに対応したアプリケーション作成環境の利便性を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0033】
10 アプリケーション開発支援システム
20 開発ツール部
30 ビルド用資産保持部
40 ビルド部
42 ビルド実行部
44 ファイル抽出部(プロジェクトバージョン確認部、更新部)
46 インターフェイス照会部
48 マニフェストファイル作成部
図1
図2