【実施例】
【0013】
本実施例は、注出キャップをヒンジキャップとして具体化したものであり、
図1〜3において、Aは容器の口部1に装着するキャップ本体、Bはキャップ本体AにヒンジCを介して一体成形した上蓋である。
【0014】
容器は、上端に口部1を具え、口部1の外周面には、嵌合突条2を形成している。
キャップ本体Aは、装着部3と、装着部3に連設し、容器内の内容液を注出する注出部4とからなっている。
装着部3は、周縁部に係止突条6aを設けた蓋係止部6を立設した環状の基壁7と、基壁7の内周縁から垂設した内筒8と、基壁7の外周縁から垂設した外筒9とからなっている。
外筒9の内周面下端部には、容器の口部1の嵌合突条2と係合する係合突条10を形成している。
【0015】
注出部4は、上壁11の内縁から立設した注出筒12と、注出筒12の内周下部に連設した隔壁13とからなっている。
注出筒12は、内容液を注ぎ易くするために、本実施例では、ヒンジC側を低く、ヒンジCと反対側を高く形成し、その先端部12aは、ラッパ状に広がっている。
隔壁13には、注出筒12の内周12b近傍に形成した破断可能な薄肉の弱化部14により注出孔Dを開口する除去部15を設けており、除去部15のヒンジC側には、支柱16を介してプルリング17を連設し、プルリング17のヒンジCと反対側の下部には、指先への接圧をやわらかくするために緩衝部18を形成している。
また、本実施例では、薄肉の弱化部14を破断して開封するまで容器内部を密閉する隔壁13としたが、予め注出孔Dを開口した隔壁13であっても構わない。
【0016】
上蓋Bは、頂壁20と、頂壁20の周縁から垂下した側周壁21と、頂壁20の内面から垂設した筒状の密封リング22とからなっている。
本実施例では、上蓋Bの内面に付着する内容液の流下を促すために、頂壁20は、密封リング22より内周側の内面20aがドーム状をなし、中央付近が最も高く周縁に向かって高さを漸減しながら密封リング22に連設している。
【0017】
図4、5に示すように、頂壁20のドーム状内面20aには、中央付近から半径方向に、ヒンジCと反対側(後述する摘み部26側)の密封リング22内周上部に向けて1条の縦リブ23を形成している。
縦リブ23は、
図4(b)に示すように、Y−Y断面の形状がエッジ部23aを境にして、ドーム状内面20aに向けて半径Rの円弧状にえぐられ、先鋭な形状をなしている。縦リブ23は、そのエッジ部23aのドーム状内面20aからの高さが、縦リブ23の中間付近が最も高く、それぞれ両端方向に向かって漸減するように形成している。
【0018】
さらに、縦リブ23のエッジ部23aの接線とドーム状内面20aの中心からの垂線Eとのなす角度θは、中心から遠ざかるに従い小さくなるように形成している。
【0019】
密封リング22の下端部22aには、ヒンジC側の中央に向かって両側から隆起する形状に形成した板状の舌片24を注出筒12内方に向かって延設している。
本実施例では、舌片24は、
図1に示すように、閉蓋時に、先端24aがキャップ本体Aの隔壁13上面に接近する高さであるとともに、舌片24は、外表面24bが注出筒12の内周12bに接触しないように、密封リング22の下端部22aよりも薄肉に形成している。
【0020】
舌片24の形状は、密封リング22内面に付着した内容液を注出孔D内方に案内できるものであれば、どのような形状でも構わず、例えば、下方に向かって凸の半楕円形状や、三角形状等とすることができる。
【0021】
側周壁21の下端部内周には、キャップ本体Aの蓋係止部6の係止突条6aと嵌合する下方に係合突条を設けた環状の係止凹部25を形成している。
側周壁21の下端外周縁の一方はヒンジCに連設し、ヒンジCと反対側の下端部外周には、
図2(a)に示すように、つば状の摘み部26を形成し、本実施例では、側周壁21は、摘み部26を設けた近傍を薄肉状部21aとし、摘み部26には、側周壁21下端部近傍の上面に凹部26aを形成している。
【0022】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、
図2(b)に示すように、完全に開蓋した状態で一体成形により作製する。
本実施例のヒンジキャップを容器に装着するには、まず上蓋BをヒンジCの回りに回動して閉蓋し、内容液が充填された容器の口部1に打栓して装着する。
打栓工程は、装着部3の内筒8と外筒9との間に形成された環状溝部に容器の口部1を当てがい、上蓋Bの上から押圧力を加えることによって、外筒9の係合突条10が口部1の嵌合突条2を乗り越えて嵌合し、容器の口部1を、内筒8の外周と外筒9の内周および基壁7とによって挟持することで装着する。
なお、本実施例では、装着部3は、内筒8の外周と外筒9の内周および基壁7とによって容器の口部1を狭持するものとしたが、容器の口部1の外周に雄ネジを形成するとともに、外筒9の内周に雌ねじを形成することによって螺着するものであってもよい。
【0023】
本実施例のヒンジキャップを開蓋するには、
図1に示す状態から、上蓋Bの摘み部26を持ち上げると、側周壁21の薄肉状部21aは、側周壁21の他の壁より薄肉となっているので、摘み部26側から薄肉状部21aが変形し、側周壁21の摘み部26付近の部分が持ち上がっていく。
側周壁21の摘み部26付近の部分が持ち上がると、側周壁21の摘み部26付近の係止凹部25と蓋係止部6の係止突条6aとの係止が外れる。
さらに、ヒンジCを支点に上蓋Bが廻動し、摘み部26側を持ち上げると、摘み部26付近から側周壁21の他の部分も変形し、係止凹部25内周と蓋係止部6外周との嵌合がすべて外れ、上蓋Bが開蓋する。
【0024】
つぎに、キャップ本体Aの隔壁13の注出孔Dを開口する際には、キャップ本体Aの注出部4の隔壁13のプルリング17に指などを掛けて引っ張り上げ、弱化部14をヒンジC側から破断させていく。
最後は、隔壁13の除去部15を抜栓し、
図3に示すように、隔壁13に注出孔Dを開口する。
隔壁13に注出孔Dが開口された後は、ヒンジCを支点とし、上蓋Bを廻動して閉蓋すると、キャップ本体Aの注出筒12の内周12bに、上蓋Bの密封リング22の外周が密接し、注出筒12より内方を密封することができる。
【0025】
容器の使用にあたっては、容器内の分離した内容液を混合するために、上蓋Bを閉じた状態で容器を上下にシェイクして撹拌する必要がある。
このシェイクして撹拌する際に、内容液が上蓋Bのドーム状内面20aに付着するが、シェイク後の付着量を比較するために、上蓋Bの内面形状ごとに内容液の種類を変えて、比較実験を行い、その結果を表1〜3に示す。
表1は、本実施例のキャップ本体Aに、本実施例の上蓋B(ドーム状内面に1条の縦リブを設ける)を被冠して行った実験結果を示す。
なお、実験に用いた上蓋Bの寸法は、
図7(a)に示す上蓋と同じであり、材質は、以下の表2、3の上蓋全てがLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)樹脂である。
【0026】
【表1】
【0027】
表2は、本実施例のキャップ本体Aに、
図7(a)で示す寸法の上蓋(ドーム状内面に縦リブを設けていない)を被冠して行った実験結果を示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表3は、本実施例のキャップ本体Aに、
図7(b)で示す寸法の上蓋(内面が平坦な形状)を被冠して行った実験結果を示す。
【0030】
【表3】
【0031】
比較実験には内容液として、4種類の市販ドレッシング類を使用し、表1〜3中で「レタス」と表記したのは、レタス用醤油ドレッシング(粘度:66mPa・s)、同じく「きゅうり」と表記したのは、きゅうり用ドレッシング(粘度:103mPa・s)、同じく「トマト」と表記したのは、トマト用イタリアンドレッシング(粘度:233mPa・s)、同じく「ごま」と表記したのは、焙煎ごまドレッシング(粘度:320mPa・s)であり、いわゆる、乳化液状ドレッシング(粘度30Pa・s以下)といわれる油分と水分が混ざったドレッシングである。
なお、上記内容液の粘度測定は、東京計器製 B形粘度計(No.2ローター使用、回転速度60rpm、20秒後、室温)を使用し、内溶液に固形物(ごま、たまねぎ、バジルなど)が分散した状態で行った。
【0032】
実験方法は、表1〜3に示す3種類の上蓋を使用しての実験に共通するもので、以下のように行った。
(1)シェイク前の上蓋重量(単位:グラム)を計量する。
(2)シェイクした後、3秒間おいて内溶液が付着した上蓋重量を計量する。
(3)前記(2)の計量を3回繰り返し、内溶液が付着した上蓋重量の平均値を求める。
(4)前記(3)で求めた平均値から前記(1)で計量した上蓋重量を差し引いて内溶液の付着重量を求める。
【0033】
以上の比較実験の結果から、4種類のドレッシングのいずれについても、表1に示す本実施例の上蓋Bの付着量が最も少ないことがわかる。
さらに、表1と表2の付着量をドレッシングの種類に着目して比較すると、粘度が比較的高い「トマト」、「ごま」では、縦リブ23を設けないと付着量が増えるが、縦リブを設けると付着量が3分の1以下に激減することがわかる。
【0034】
つぎに、本実施例において、上蓋Bのドーム状内面20aに付着した内容液(たとえば、粘度の比較的高い「トマト」や「ごま」)は、縦リブ23が存在することによって、どのような流れ方をするかを以下に説明する。
上蓋Bのドーム状内面20aに付着した内溶液が流れる様子を
図6を用いて模式的に示すと、(a)のように上蓋Bのドーム状内面20a全体に付着した内容液Lは、(b)のように縦リブ23を境にして両側に分かれながら、(c)のようにヒンジC側に追いやられ、最後に(d)のようにヒンジC寄りに少し付着したまま残る。
【0035】
これに対して、上蓋Bのドーム状内面20aに縦リブ23を設けない場合(表2の実験結果)には、内容液が上蓋Bのドーム状内面20aに付着すると、中央部付近は傾斜が緩いので、表面張力により溜まりやすくなり、そのままでは流れ落ちない。
また、上蓋Bのドーム状内面20aに縦リブ23を2条以上設けても、それぞれの縦リブ23の間に内容液が集まることになり、本実施例のようにヒンジC側に内容液を集めることができない。
以上のことから、上蓋Bのドーム状内面20aに付着する内容液は、縦リブ23がないと、中央部付近に溜まりやすい傾向にあるが、縦リブ23を1条だけ設けると、表面張力で引き合おうとする内容液を縦リブ23のエッジ部23aが分断してバランスを崩すことになり、内容液の分断された部分が
図6に示すように、表面張力によりヒンジC側で丸くなろうとして集まるものと考えられる。
【0036】
今回の比較実験において、粘度の比較的高い「トマト」、「ごま」ドレッシングでは、
図6に示す流れ方が目視で確認でき、さらに、粘度300mPa・s以上の「ごま」ドレッシングにおいて、顕著な効果が認められた。
この実験結果から、とくに、粘度200mPa・s以上の内容液の場合に、縦リブを1条だけ設けたことによる効果が得られ、さらには、粘度300mPa・s以上がより好ましいことがわかった。
【0037】
さらに、容器をシェイクして内容液を撹拌した後、上蓋Bを開蓋して容器をヒンジCの反対側に傾けると、容器内の内容液は、注出筒12の先端部12aを介して注出することができる。
図3に示すように、上蓋Bを開蓋する際に、ドーム状内面20aのヒンジC側に付着して残った内容液は、密封リング22内面および舌片24の内表面24cを伝って、注出孔Dの内方に案内されるので、舌片24を流れ落ちる内容液が注出筒12の内周12bに付着することなく注出孔Dに回収することができる。