(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192577
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】グラフェン系の電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20170828BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
H01L21/316 M
H01L29/78 618B
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-59698(P2014-59698)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2014-204122(P2014-204122A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】13162837.2
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591060898
【氏名又は名称】アイメック
【氏名又は名称原語表記】IMEC
(73)【特許権者】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】アミールハサン・ノウルバクシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ヘインス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・デ・ヘント
【審査官】
小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0181655(US,A1)
【文献】
特表2013−511139(JP,A)
【文献】
特開2011−192667(JP,A)
【文献】
B. Lee et al.,Characteristics of high-k Al2O3 dielectric using ozone-based atomic layer deposition for dual-gated graphene devices,Appl. Phys. Lett,2010年 7月28日,Volume 97, Issue 4,pp.043107-1 - 043107-3
【文献】
Bongki Lee et al.,Conformal Al2O3 dielectric layer deposited by atomic layer deposition for graphene-based nanoelectronics,Appl. Phys. Lett.,2008年 5月20日,Volume 92, Issue 20,pp.203102-1 - 203102-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板、
ソース、
ドレイン、
前記ソースと前記ドレインとの間に画定されるグラフェン層チャネル(2)、
前記グラフェン層チャネル(2)の上に設けられたグラフェン酸化物層(3)、
前記グラフェン酸化物層(3)の上に設けられたhigh−k誘電体層(8)、
前記high−k誘電体層(8)の上に設けられた上部電極(7)、を備え
前記グラフェン酸化物層(3)の酸素被覆率は、25%以上50%以下であり、該酸素被覆率は、前記グラフェン酸化物層(3)における酸素原子の数を炭素原子の数で割った値に100%を乗じて得られ、
前記グラフェン酸化物層(3)の抵抗率は、1010Ωスクウェアより大きく、
前記グラフェン酸化物層(3)の光学バンドギャップは、1eV以上3eV以下であり、
前記グラフェン酸化物(3)は絶縁体である
電界効果トランジスタデバイス(1)。
【請求項2】
前記high−k誘電体層(8)は、少なくとも1つのALD工程を含む方法により得られる
請求項1に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項3】
前記high−k誘電体層(8)の厚さは、2nm以上45nm未満である
請求項1または2に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項4】
前記high−k誘電体層(8)の厚さは、2nm以上5nm以下である
請求項3に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項5】
前記グラフェン酸化物層は、複数の酸素原子と炭素原子を含み、
複数の酸素原子の大部分が、グラフェン酸化物層(3)の2つの炭素に結合し、これによりエポキシ結合を形成する
請求項1から4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項6】
前記電界効果トランジスタは、デュアルゲート電界効果トランジスタである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項7】
前記high−k誘電体層(8)は、Al2O3層である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項8】
前記グラフェン酸化物層の光学バンドギャップは、1.5eV以上2.5eV以下である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【請求項9】
前記グラフェン層チャネル(2)は、グラフェンの単層である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの分野に関し、特にグラフェン系の半導体デバイスの分野に関する。また、本発明は、当該デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン系のトップゲート型電界効果トランジスタ(FET)の開発において重要な工程の1つが、ゲート絶縁体として動作する高誘電率(high−k)材料の成長である。これらの誘電体薄膜は、光学性能のために、極薄であって、共形的(conformal)であって、かつ、誘電体−グラフェン界面で無秩序やトラップが最小であるピンホールのない状態であるべきである。極薄均質膜の堆積を制御する非常に好適な方法が、原子層堆積(ALD)である。しかし、グラフェン上での薄膜のALDは容易ではない。なぜなら、不活性であるグラフェンの表面上には、表面官能基または表面欠陥が存在しないからである。これらは、従来のALDプロセスが基礎とする表面化学反応のために必要となるものである。
【0003】
これまで、原子層堆積(ALD)によるグラフェン上でのゲート誘電体について成長の均一性を向上させるために、種々の表面処理方法が追求されてきた。例えば非特許文献1は金属膜の堆積と酸化に関し、非特許文献2はオゾンを用いたグラフェンの官能基化(functionalization)に関し、非特許文献3はシード層としてのポリマー膜のスピンコートに関する。これらの方法には、原始グラフェン(pristine graphene)の上に直接にALD誘電体を堆積した場合と比較すると利点があるが、重要な問題が解決されずに残っている。例えば、酸化処理を伴うグラフェン膜の前処理は、一般にグラフェンの表面損傷とその電気特性の低下につながる。さらに、ゲート厚さが低下すると共に実効k値が低下することに起因して、ポリマーおよび金属酸化物のシード層がゲート誘電体層の総静電容量を低下させる。グラフェンの化学的官能基化についての技術分野には、以下の必要性が明らかに残っている。
(i)効率的かつ均一にALD成長の種となる(seed)。
(ii)下位のグラフェン構造を維持する。
(iii)望ましい誘電体特性(例えば低いリーク電流と高い静電容量)を達成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Fallahazad, B.; Kim, S.; Colombo, L.; Tutuc, E., Dielectric thickness dependence of carrier mobility in graphene with HfO2 top dielectric. Appl Phys Lett 2010, 97 (12)
【非特許文献2】Lee, B. K.; Park, S. Y.; Kim, H. C.; Cho, K.; Vogel, E. M.; Kim, M. J.; Wallace, R. M.; Kim, J.Y., Conformal Al2O3 dielectric layer deposited by atomic layer deposition for graphene-based nanoelectronics. Appl Phys Lett 2008, 92 (20)
【非特許文献3】Farmer, D. B.; Chiu, H. Y.; Lin, Y. M.; Jenkins, K. A.; Xia, F. N.; Avouris, P., Utilization of a Buffered Dielectric to Achieve High Field-Effect Carrier Mobility in Graphene Transistors. Nano Lett 2009, 9 (12), 4474-4478
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、ALD成長したhigh−k誘電体層を備えた、優れたグラフェン系半導体デバイスを提供することである。本発明に先立ち、グラフェン表面上でのALD層の不良な核生成に起因して、これは特に困難である。
【0006】
本発明の実施形態の1つの利点は、グラフェン系半導体デバイスに、非常に薄いhigh−k誘電体層(数nmオーダの)を設けることができることである。
【0007】
本発明の実施形態の1つの利点は、グラフェン系半導体デバイスに、共形的であるhigh−k誘電体層を設けることができることである。
【0008】
また、本発明の実施形態の1つの利点は、グラフェン系半導体デバイスに、ピンホールがなく(pinhole-free)、または最低でもピンホールが少ない(pinhole-poor)high−k誘電体層を設けることができることである。
【0009】
また、本発明の実施形態の1つの利点は、グラフェン系半導体デバイスに、high−k−グラフェン界面で無秩序(disorder)やトラップが最小であるhigh−k誘電体層を設けることができることである。
【0010】
本発明の実施形態の更なる利点は、グラフェン系半導体デバイスに、制御された方法で、high−k誘電体層を設けることができることである。
【0011】
本発明の実施形態の更なる利点は、グラフェン系半導体デバイスに、均質なhigh−k誘電体層を設けることができることである。
【0012】
本発明の実施形態の更なる利点は、グラフェン表面を損傷することなく、電気特性を悪化させることなく、グラフェン系半導体デバイスにhigh−k誘電体層を設けることができることである。
【0013】
本発明の実施形態の更なる利点は、ゲート厚さを非常に低い値(例えば2nm)に維持して総静電容量のスケーリングを可能にしつつ、グラフェン系半導体デバイスにhigh−k誘電体層を設けることができることである。
【0014】
本発明の実施形態の更なる利点は、リーク電流が少ないグラフェン系半導体デバイスを得ることができることである。
【0015】
上記目的は、本発明に係る方法とデバイスによって達成される。
【0016】
第1の態様で、本発明は、
a)グラフェン層、
b)前記グラフェン層の上位の(overlay)グラフェン酸化物層、
c)前記グラフェン酸化物層の上位のhigh−k誘電体層
を備えた半導体デバイスに関する。
【0017】
これは、グラフェン酸化物層の存在により、high−k誘電体層の堆積を促進させる含酸素官能基(oxygen functional group)が得られるので好都合である。それゆえこれは、高い品質(例えば、薄い、共形的である、ピンホールが少ない、均質であるなど)を有しうる。さらに、グラフェン酸化物層の存在により第1グラフェン層の電気特性は悪化しない。また、グラフェン酸化物層が等価酸化膜厚に与える影響は最小限である。
【0018】
実施形態で、high−k誘電体層は共形的である、すなわち均一な厚さを有していてもよい。
【0019】
実施形態で、high−k誘電体層にはピンホールがなくてもよい。
【0020】
実施形態では、少なくとも1つのALD工程を含む方法により、前記high−k誘電体層を得ることができる。
これは、ALDにより確実にhigh−k誘電体層の非常に高い共形性(conformality)が得られると共に厚さを極めて良好に制御できるので好都合である。
【0021】
典型的に、前記high−k誘電体層の厚さは、2nmから50nmであってもよい。
【0022】
実施形態で、前記high−k誘電体層の厚さは、45nm未満、好ましくは30nm未満、より好ましくは20nm未満、さらに好ましくは15nm未満、さらに好ましくは10nm未満、最も好ましくは5nm未満であってもよい。
これは、薄いhigh−k誘電体層によりFETのスイッチング速度が大きくなるので好都合である。例えば、前記high−k誘電体層の厚さは、2nmから10nmまたは2nmから5nmであってもよい。
【0023】
実施形態で、デバイスは、チャネルを有し、グラフェン層が当該チャネルとして機能するような電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。実施形態で、FETはトンネル型FET(TFET)であってもよい。
【0024】
実施形態で、グラフェン酸化物層は、5%から50%、好ましくは10%から50%、好ましくは12%から50%、より好ましくは15%から50%、さらに好ましくは20%から50%、最も好ましくは25%から50%の酸素被覆率を有してもよい。ここで、酸素被覆率は、グラフェン酸化物層の酸素原子数をグラフェン酸化物層の炭素原子数で割った値に100%を乗じた値として定義される。均一なhigh−k誘電体層の堆積を改善し且つ可能にするためには、5%の酸素被覆率で充分である。少なくとも25%の酸素被覆率が好都合であるが、これは、均一なhigh−k誘電体層の堆積を可能にすることに加えて、グラフェン酸化物を絶縁体とし、これにより等価酸化膜厚が低い値に維持されるからである。
【0025】
実施形態で、前記グラフェン酸化物層は、10
10オーム毎スクウェアより大きい抵抗率を有してもよい。
【0026】
実施形態で、前記グラフェン酸化物層は1eVから3eV(典型的に1.5eVから2.5eV)の光学バンドギャップ(optical band gap)を有してもよい。等価酸化膜厚を低下させるので、比較的大きいバンドギャップが好都合である。high−k誘電体層の成長を促進するためには、グラフェン酸化物層が0.1eVから1eVのバンドギャップを有すれば充分であるが、これは電気特性のためには理想的ではないことになる。
【0027】
実施形態で、グラフェン酸化物層中の複数の酸素原子の大部分がグラフェン酸化物層の2つの炭素原子に結合し、これによりエポキシ結合(epoxy bond)が形成されてもよい。例えば、酸素原子の50%より多く、好ましくは酸素原子の60%より多く、さらに好ましくは酸素原子の70%より多く、最も好ましくは酸素原子の80%より多くが、グラフェン酸化物層のグラフェンの2つの炭素原子に結合していてもよい。例えば、この割合は約90%であってもよい。
【0028】
第2の態様で、本発明は、
a)グラフェン層の上にグラフェン酸化物層を設ける工程、
b)high−k金属酸化物層を形成するように、(high−k金属酸化物のための)金属前駆体(プリカーサ)のALDパルスと酸素前駆体のALDパルスとに交互に前記グラフェン酸化物層を曝露する工程
を含む半導体デバイスを製造する方法に関する。
【0029】
言い換えると、工程b)は、high−k金属酸化物層を形成するように、前記グラフェン酸化物層をALD前駆体に曝露する工程であってもよい。
またこの方法は、工程a)の前に、基板の上にグラフェン層を設ける工程を含んでもよい。グラフェン酸化物層が存在することによる1つの利点は、ALDにより、品質の優れたhigh−k金属酸化物層の成長が可能となることである。
【0030】
グラフェン層の上にグラフェン酸化物層を設けることにより、グラフェン層の電気特性が維持されるという利点がある。デバイスのグラフェン層の上でのみ酸化処理を行う先行技術では、グラフェン層の電気特性が悪化する。
【0031】
第2の態様の第1の一般的実施形態で、工程a)は、
i.第1グラフェン層と第2グラフェン層を含むグラフェン二重層を基板の上に設け、これにより基板−二重グラフェン層スタックを形成する工程、
ii.前記第2グラフェン層からグラフェン酸化物層を形成するように、第2グラフェン層を反応性酸素種に曝露する工程
を含んでもよい。
この方法には、以下の第2の一般的実施形態と比較して、第1グラフェン層の上にグラフェン酸化物層を転写する追加の工程が必要ないという利点がある。
【0032】
反応性酸素種は、熱酸化やO
3ガスとの接触といった既知の任意のグラフェン酸化法により付与することができるが、好ましくはプラズマプロセスにより付与される。
【0033】
実施形態で、前記反応性酸素種は、分子酸素および/またはオゾンのプラズマであってもよい。好ましくは、前記反応性酸素種は、分子酸素(オゾンなし)のプラズマである。分子酸素のRFプラズマが好ましい。
【0034】
前記反応性酸素種が分子酸素またはオゾン(好ましくは分子酸素)のプラズマである実施形態では、少なくとも1つのプラズマパルス(例えば1つの分子酸素プラズマパルス)を使用してもよい。2つ以上のパルスを使用する場合、より優れた絶縁体を製造できる。好ましくは、分子酸素プラズマは、RFプラズマ反応器チャンバ内で生成される。
【0035】
第2の態様の第2の一般的実施形態で、工程a)は、
i.第1グラフェン層を基板の上に設ける工程、
ii.前記第2グラフェン層からグラフェン酸化物層を形成するように、第2グラフェン層を反応性酸素種に曝露する工程、
iii.前記第1グラフェン層の上に前記グラフェン酸化物層を設ける工程
を含んでもよい。
【0036】
この第2の一般的実施形態は第1グラフェン層についてより安全であるが、これは第1グラフェン層が反応性酸素種に曝露される可能性がないからである。ただし、第1の一般的実施形態は、第1グラフェン層について充分に安全である(
図3参照)。
【0037】
第2の態様の実施形態で、第2グラフェン層を反応性酸素種に曝露する工程は、第2グラフェン層をプラズマ(例えばO
2プラズマおよび/またはO
3プラズマ)、好ましくは分子酸素(O
2)プラズマ、より好ましくは分子酸素RFプラズマに曝露する工程を含んでもよい。
【0038】
分子酸素プラズマが好ましいが、これは、オゾンプラズマと比較して、分子酸素プラズマが第2グラフェン層内に欠陥をより生成しにくい迅速かつ安全な方法だからである。
【0039】
第2の態様のいずれの実施形態(第1の一般的実施形態または第2の一般的実施形態)でも、プラズマへの曝露は間接的であってもよい。間接的曝露とは、第1電極から第2電極に向けて反応性酸素種を加速するときに、第2グラフェン層に反応性酸素種が直接に衝突しないような曝露を意味する。間接的曝露が好都合であるが、これは、反応性酸素(例えばプラズマ)へのグラフェンの間接的曝露が行われ、これにより物理的な損傷(例えばイオンの衝突に起因する)なく酸化されるからである。好ましくは、ホルダは、底部から2cm未満、好ましくは1.5cm未満の位置に第2グラフェン層を有するようになっている。例えば、間接的曝露は、第2グラフェン層を載置するチャンバとは異なるチャンバ内で発生したプラズマに、第2グラフェン層を曝露する工程を含んでもよい。間接的曝露についての好ましい実施形態では、第1電極と第2電極を有する(例えばRF)プラズマ反応器チャンバ内で、間接的曝露を実施できる。ここで、前記第1電極から前記第2電極に向けて前記反応性酸素種を加速する。また、前記第2グラフェン層を、基板(例えば、基板−二重グラフェン層スタックの一部)の上に設けると共に、前記第2グラフェン層が前記第2(例えば底部)電極に面し且つ前記基板が前記第1電極に面するように前記第1電極と前記第2電極との間に配置する(例えば絶縁ホルダにより支持する)。例えば、絶縁ホルダは第2(例えば底部)電極の上に立設されてもよい。
【0040】
上記の間接的曝露についての好ましい実施形態には、設備と空間をほとんど必要としないという追加の利点があるが、これは、プラズマ曝露チャンバから分離したプラズマ生成チャンバが必要とされないからである。
【0041】
実施形態で、前記酸素プラズマ処理は、プラズマパルス(9)への曝露を含んでもよい。プラズマパルス(9)への曝露は、1秒から10秒の範囲内の時間で、出力を50Wから200Wへ増加させることを含んでもよい。必要に応じて、プラズマパルス(9)への曝露の後、最大5秒間続く一定出力での曝露を行ってもよい。
【0042】
実施形態で、前記増加させることは、0Wから、50W〜200Wの出力まで増加させることであってもよい。
【0043】
実施形態で、前記酸素プラズマは、10mTorrから30mTorr、好ましくは15mTorrから25mTorrの分子酸素圧で生成してもよい。
【0044】
実施形態で、high−k金属酸化物のための金属前駆体は、アルミニウム含有前駆体またはハフニウム含有前駆体であってもよい。
【0045】
Al前駆体の一例はトリメチルアルミニウムであるが、当業者に知られた他の前駆体も同様に使用できる。
【0046】
Hf前駆体の一例はHfCl
4であるが、当業者に知られた他の前駆体も同様に使用できる。
【0047】
ALD用の酸素前駆体の一例はH
2Oであるが、当業者に知られた他の前駆体も同様に使用できる。
【0048】
H
2Oが好都合であるが、これは、H
2OがO
3のような他の酸素前駆体と異なり、先に形成されたグラフェン酸化物の酸化を修正しにくく、これによりその性質が保存されるからである。ただし、H
2OもO
3も使用可能である。
【0049】
実施形態では、工程a)の後であって工程b)の前に、弱く結合した(weakly-bonded)酸素種を脱離させるのに充分高い温度でデバイスをアニールしてもよい。この温度は、例えば100℃以上または130℃以上であってもよく、例えば150℃であってもよく、例えば100℃から200℃の範囲内にあってもよい。必要に応じて、第2グラフェン層を反応性酸素種に曝露する前に、このようなアニール工程を実施してもよい。
【0050】
実施形態で、high−k誘電体層の材料は、Al
2O
3および/またはHfO
2を含んでもよい。
【0051】
実施形態で、基板は半導体基板(例えばSi基板やGe基板)であってもよい。実施形態で、半導体基板は酸化物上層(例えばSiO
2層またはGeO
2層)を有していてもよい。
【0052】
実施形態で、絶縁ホルダはガラスからなってもよい。
【0053】
本発明の特定かつ好ましい態様について、添付の独立請求項および従属請求項で述べる。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と、適切にかつ単に請求項に記載されただけでないものとして組み合わせてもよい。
【0054】
この分野のデバイスには一定の改良、変化および発展があったが、本発明のコンセプトは、(従来の実践からの脱却を含む)充分に新規な(new and novel)改良を示しており、これにより、この類のデバイスであって、より有効で安定した信頼性の高いデバイスが得られると考えられる。
【0055】
本発明の上記および他の特性、特徴、利点は、以下の詳細な説明と本発明の原理を例示的に示す添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。この説明は、単に例示的な目的で記載しており、本発明の範囲を限定するものではない。以下で引用する参照図は、添付の図面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】2つの異なる角度から見たグラフェン酸化物層の概略図である。
【
図2】(上側)先行技術に係るデバイス(B)と本発明に係るデバイス(A)を概略的に示す。(下側)先行技術に係るデバイス(B)と本発明に係るデバイス(A)の両方についての、抵抗(R)−02パルス(O2#)の数のグラフである。
【
図3】A(本発明に係るデバイス)とB(先行技術に係るデバイス)についての、規格化強度−ラマンシフト(ラマン2Dモード)のグラフである。
【
図4】本発明の実施形態に係るデバイスの概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るデバイスについての、抵抗−トップゲート電圧のグラフである。
【
図6】本発明の実施形態に係る半導体デバイスを製造する方法の概略図である。
【
図7】酸素被覆率(CO
2,%)の関数としたグラフェン酸化物のバンドギャップ(eV)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
特定の実施形態に関して図面を参照して本発明を説明するが、本発明はこれに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載した図面は、概略的であって非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のために誇張していることがあり、また縮尺どおり描写していないことがある。寸法と相対寸法は、本発明を実施するための実際の縮尺に対応していない。
【0058】
さらに、説明および請求項での用語「第1」、「第2」、「第3」などは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも時間的、空間的、順序でまたは他の方法でシーケンスを記述するために使用しているわけではない。使用する用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明し、あるいは図示したものとは別のシーケンスで動作可能であると理解すべきである。
【0059】
さらに、説明と請求項での用語「上(top)」、「下、底(bottom)」、「〜の上に(over)」、「〜の下に(under)」などは、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するために使用しているわけではない。使用する用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または図示したものとは異なる向きで動作可能であると理解すべきである。
【0060】
請求項で使用する用語「備える、含む、有する(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定するものと解釈すべきでなく、他の要素または工程を除外していないことに留意されたい。記述した特徴、整数、工程またはコンポーネントの存在を、参照したように特定するよう解釈する必要があるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程またはコンポーネント、あるいはこれらのグループの存在または追加は除外されない。したがって、「手段AとBとを備えたデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントAとBのみから成る装置に限定されるべきでない。それは、本発明に関して、AとBがデバイスの関連コンポーネントであることを意味するに過ぎない。
【0061】
本明細書を通じて「一実施形態(one embodiment)」または「実施形態(an embodiment)」は、実施形態との関連で記載した特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じてさまざまな場所で現れるフレーズ「一実施形態」または「実施形態」は、必ずしもすべて同一の実施形態を参照しているわけではないが、参照してもよい。さらに、本発明から当業者にとって明らかなように、1つまたは複数の実施形態で、特定の特徴、構造または特性を、いずれかの好適な方法で組み合わせることができる。
【0062】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本開示を合理化し、本発明の1つまたは複数の種々の態様の理解を支援する目的で、単一の実施形態、図、またはその説明において、本発明の種々の特徴が一緒にグループ化されることがあると理解すべきである。しかし、この開示の方法は、請求項に係る発明が、各請求項で明示的に記載された特徴より多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈すべきでない。むしろ、請求項が反映しているように、発明の態様は、それまでに開示した単一の実施形態の全特徴より少ない。このように、詳細な説明に続く請求項は、この詳細な説明の中に明示的に組み込まれており、各請求項は、本発明の別々の実施形態としてそれ自体で成立している。
【0063】
さらに、本明細書で説明する幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴の幾つかを含むが、含まない特徴もある。当業者によって理解されるように、種々の実施形態の特徴の組合せとは、本発明の範囲内にあるとともに種々の実施形態を構成することを意味する。例えば、以下の請求項において、請求項に係る実施形態のいずれもが、任意の組合せで使用可能である。
【0064】
さらに、本明細書では、コンピュータシステムの処理装置、または当該機能を果たす他の手段により実行可能な方法または方法の要素の組合せとして、実施形態の幾つかを説明している。したがって、このような方法または方法の要素を実行するために必要な命令を有する処理装置が、当該方法または方法の要素を実行するための手段を構成する。さらに、本明細書で説明している装置の実施形態の要素が、本発明を実行する目的で要素により果たされる機能を実行する手段の一例である。
【0065】
本明細書の説明では、多くの具体的な詳細について記述している。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施してよいことが理解されよう。別の例では、本明細書の説明の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造および技術について詳細には示していない。
【0066】
本発明の種々の実施形態の詳細な説明により、本発明を説明することになる。当業者の知識に従って、本発明の他の実施形態を構成でき、本発明が添付の特許請求の範囲の文言によってのみ限定されることは明らかである。
【0067】
トランジスタについて言及する。トランジスタは、第1主電極(例えばドレイン)、第2主電極(例えばソース)および、第1主電極と第2主電極の間で電荷の流れを制御する制御電極(例えばゲート)を有する三端子のデバイスである。
本明細書で使用する場合、別段の定めがない限り、グラフェン酸化物層という用語は、ある程度酸化したグラフェンの単一層(単原子層・単分子層(monolayer))を指す。本発明で使用する好ましいグラフェン酸化物層は、5%から50%の酸素被覆率を有する。好ましくは、複数の酸素原子の大部分がグラフェン酸化物層のグラフェンの2つの炭素に結合し、これによりエポキシ結合が形成される。50%の酸素被覆率が、飽和値に相当する。飽和値では、各炭素原子が1つの酸素に結合し且つ各酸素が2つの炭素原子に結合する。
【0068】
図1は、2つの異なる斜視図によって、グラフェン酸化物層(3)、より正確にはエポキシ化したグラフェン層(3)を概略的に示す。
グラフェン酸化物(またはエポキシド)(3)は、面内シグマ結合を有し且つ面外酸素エポキシド(C−O−C)(1)官能基を有する2次元グラフェン平面高分子(plane macromolecule)(12)からなる。酸素エポキシド官能基(1)はすべて、炭素原子を含む平面(12)の同じ側に存在する。底面斜視図(bottom perspective view)において、炭素原子がすべて1つの面(12)内に存在し、酸素エポキシ基(1)が前記面(12)の一方に突出していることは明らかである。
【0069】
通常、充分に酸化したグラフェン面(12)内で酸素原子(1)に結合したすべての炭素原子は、1つの酸素原子(1)にのみ結合している。一方、グラフェン面(12)に結合したすべての酸素原子(1)は、2つの炭素原子に結合している。
【0070】
通常、充分に酸化したグラフェン酸化物(3)のグラフェン面(12)内のすべての炭素原子が、1つの酸素原子(1)を第2の炭素原子と共有し、グラフェン面(12)に結合したすべての酸素原子(1)が、2つの炭素原子に結合している。グラフェン面のエッジに沿って、ヒドロキシル基(図示せず)が存在する。
図1に示すグラフェン酸化物は、約2eVの光学バンドギャップを有する質の高い絶縁体(10
10オーム毎スクウェア以上の抵抗率)である。グラフェン酸化物の厚さは約3オングストロームである。
【0071】
(実施例1:デバイスの製造)
図2を参照する。
試料AとBの両方を同じ基板(4)の上に形成した。
【0072】
試料Bの準備:
マイクロ機械的剥離により、90nmの熱成長SiO
2膜で覆われたnドープSi基板(4)の上に単一層グラフェン(SLG)のフレーク(2)を堆積させ、これにより試料Bを形成した。
【0073】
試料Aの準備:
マイクロ機械的剥離により、90nmの熱成長SiO
2膜で覆われたnドープSi基板(4)の上に単一層グラフェン(SLG)のフレーク(2)を堆積させた。
次に、化学気相成長(CVD)により、銅薄膜の上に大きいグラフェン膜を成長させた。次に、この膜を銅ホイルから分離すると共に、標準のポリメチルメタクリレート(PMMA)転写法により、SiO
2に支持されたグラフェンフレーク(2)の上に転写した。これにより、基板二層(substrate-double-layer)グラフェンスタック(試料A)を形成した。
【0074】
次に、試料Aと試料Bの両方に対して標準のフォトリソグラフィを実施し、50nmのAuリフトオフメタライゼーションを利用して、(i)幅狭リボン内で試料Aと試料Bをパターニングし、(ii)複数ターミナルのFETデバイスを製造する。
【0075】
次に、rfプラズマシステムのチャンバ内に配置された試料Aと試料Bに、分子酸素ガスを供給した。使用したrfプラズマシステムは、13.57MHzで動作する平行板システムである。このとき、試料を150℃でアニールし、弱く結合した酸素種を脱離させた。次に、O
2の分解により作成した原子状酸素プラズマに、試料を1回または複数回曝露した。3.3秒間で0Wから100Wまで電力を直線的に増加させ、100Wで1.0秒間電力を維持することにより、各曝露工程を実施した。チャンバ内の酸素圧は20mTorrとした。各曝露工程の後、試料を150℃でアニールし、弱く結合した酸素種を脱離させた。荷電粒子のグラフェン表面への直接衝突に起因するプラズマの物理的影響を最小化するために、試料(基板4とグラフェンの単原子層2、または基板4とグラフェン2−グラフェン酸化物3の二重層)を上下逆に配置した。試料は、高さ1.0cmの一対のガラスホルダ11の上に保持し、反応器チャンバの底部13に対向させた。試料Aにつき、これを
図6に示す。プラズマは矢印9で示される。
【0076】
(実施例2:電気特性化)
各プラズマ曝露/アニール工程の後、試料Aと試料Bの抵抗を測定した。
図2では、AとBの抵抗とプラズマ曝露パルスの数を比較している。試料Aの抵抗は比較的一定であった。一方、試料Bの抵抗は指数関数的に増加して10
11Ωとなった。試料B(CVDグラフェン)は、酸化の際に高抵抗(絶縁体)に変化した。試料A(剥離された単一層グラフェン(SLG)とCVDグラフェンのスタック)について観察された抵抗がほぼ一定であることは、一旦上層(CVDグラフェン)が酸化を経ると、下位の(underlying)(金属製)SLGが正常(intact)を維持することを示す。
【0077】
図3を参照する。
グラフェンのラマンスペクトルで最も議論される特徴は、2700cm
−1付近のいわゆる2Dピークである。これは、2フォノン谷間ラマン散乱(two-phonon intervalley Raman scattering)プロセスに起因する。単一層グラフェンの場合、2Dピークは、可視光を用いた励起のための単一の価電子エネルギバンドと伝導エネルギバンドの存在に起因して、単一ピークからなる。これにより、ブリルアンゾーンのK対称点で、単一の2フォノン散乱プロセスのみが可能となる。
図3では、酸素プラズマへの曝露後の試料Aと試料Bの規格化2Dピーク(I
2D/I
G)を比較している。酸化処理に起因して、試料Bの2Dピークは広くなり(110cm
−1)、その強度は大きく低下する(約0.2)。一方、試料Aの2Dピークの形状、位置(約2675cm
−1)、FWHM(約36cm
−1)および強度(約1.4)は、一旦上層(CVDグラフェン)が酸化を経ると、下位のグラフェン層は正常を維持することを示す。
【0078】
(実施例3:トップゲートスタックの製造)
トリメチルアルミニウム(TMA)のパルスと水のパルスを交互に使用して、試料1の酸素リッチな表面の上に、ALDにより150℃で30nmのAl
2O
3層を堆積させた。次に、電子ビームリソグラフィ(1nm/50nm Cr/pd)によりトップゲート電極を製造することにより、デュアルゲートFETの製造を完了した。
図4は、グラフェン2−グラフェン酸化物3スタックを有するデュアルゲートFETの概略図を示す。グラフェン2はチャネルであり、グラフェン酸化物3の上にALD−Al
2O
3が成長している。
【0079】
図5は、種々の電圧での、実施例3のデュアルゲートFETの伝達特性(抵抗R対トップゲート電圧(V
TG))を示す。実施例3で得られるデバイスを用いて、ソース−ドレイン抵抗を調節できることが示されている。
【0080】
図4は、本発明の実施形態に係る電界効果トランジスタを示す。
この電界効果トランジスタは、グラフェン層2とグラフェン酸化物層3を保持する基板4を備える。さらに、電界効果トランジスタは、グラフェン酸化物層3の上にhigh−k誘電体層8を備える。また、それらの間には、チャネルを画定するソース5とドレイン6が存在する。high−k誘電体層8の上には、上部電極7が存在する。
【0081】
図7は、グラフェン酸化物のバンドギャップ[eV]のグラフを酸素被覆率(%)の関数として示す。
3つのエネルギ領域を定義する。0.1未満のバンドギャップの場合、グラフェン酸化物は金属(M)である。これは、約10%以下の酸素被覆率に対応する。0.1から1のバンドギャップの場合、グラフェン酸化物は半導体(SC)である。これは、10%から20%の酸素被覆率に対応する。1eVから3eVのバンドギャップの場合、グラフェン酸化物は絶縁体(I)である。これは、20%から50%の酸素被覆率に対応する。本明細書で、酸素被覆率は、グラフェン酸化物層の酸素原子数をグラフェン酸化物層の炭素原子数で割った値に100%を乗じた値として定義される。酸素エポキシ基が飽和したグラフェン層からなるグラフェン酸化物層には、50%の酸素被覆率が対応する。
【0082】
本明細書では、本発明に係るデバイスについて、好ましい実施形態、特定の構造や配置さらに材料を説明してきたが、本発明を逸脱しない範囲で、形式、詳細において種々の変更または修正を行うことができる。例えば、上記のいずれかの式は、単に使用可能な手順の典型的なものを示すに過ぎない。ブロック図から機能を追加または削除でき、複数の機能ブロックの間で動作を交換できる。説明している方法に対して、本発明の範囲内で工程を追加または削除できる。