(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図面によって説明する。
図1は、本実施例に係るパワー半導体モジュール1の外観斜視図である。
図2は、パワー半導体モジュール1を構成部品ごとに分解した展開斜視図である。
図3は、
図1に示す断面Aで切断したときのパワー半導体モジュール1の断面図である。
【0010】
パワー半導体モジュール1は、パワー半導体素子を有する回路体2を内蔵する。回路体2は、ケース3内に挿入、設置される。本実施形態においては、回路体2は、インバータ回路の上アーム回路を構成するパワー半導体素子と、下アーム回路を構成するパワー半導体素子と、を含んで構成されているが、上アーム回路又は下アーム回路のいずれか一方のパワー半導体素子のみを含んで構成されるようにしてもよい。また回路体2は、複数の上下アーム回路を含むように構成してもよい。
【0011】
さらに回路体2は、パワー半導体素子とはんだ材等で接続される導体部材と、この導体部材とパワー半導体素子を封止する樹脂封止部材と、を含んで構成される。
【0012】
ケース3は、回路体2を挿入するための第3開口部3Cを形成する。またケース3は、第3開口部3Cの開口面とは略直角方向に放熱面を形成した第1放熱部材5及び第2放熱部材6を有する。
【0013】
第1放熱部材5及び第2放熱部材6は、外面に多数のフィンを備える。本実施形態においては、フィンを円柱状のピンフィンを用いているが、板状のストレートフィンであってもよい。第1放熱部材5と第2放熱部材6は、回路体2を挟むように互いに対向して配置される。
【0014】
押圧部材4は、第2放熱部材6をケース3に押し付けるための圧縮力をかけるとともに、ケース3にはこの圧縮力に対する反力をかける。
図3に示されるように、押圧部材4の圧縮力は、ケース3又は第2放熱部材6を介し第1放熱部材5と回路体2にもかかる。つまり押圧部材4は、ケース3の外面及び第2放熱部材6と接した状態で、第1放熱部材5と回路体2と第2放熱部材6を押圧する。
【0015】
押圧部材4は、第2放熱部材6のフィンが設置されていない部位に引っかかるように配置される。または第2放熱部材6のフィンは、押圧部材4を避けるように形成される。
【0016】
本実施形態においては、押圧部材4は、絶縁性のシート9の四隅にそれぞれ対応するように4つ設けられている。しかし、ケース3の第3開口部3Cに近い側に、押圧部材4が2つ設けられ、第3開口部3Cが形成された側とは反対側のケース3の底部に押圧部材4が1つ設けてもよい。
【0017】
樹脂部材7は、ケース3、第1放熱部材5及び第2放熱部材6と回路体2の隙間に充填され、この樹脂部材7が硬化することにより、ケース3、第1放熱部材5、第2放熱部材6及び回路体2が互いに固定される。
【0018】
ケース3は、第1放熱部材5と第2放熱部材6を挿入する第2開口部3Bを形成する。またケース3は、第1放熱部材5を位置決めするための第1開口部3Aを形成する。
【0019】
第1開口部3Aは、第1放熱部材5の外形より小さく形成され、かつ第1放熱部材5のフィンが設置された範囲より大きく形成される。
【0020】
第1シール部材8は、ケース3と第1放熱部材5の間に配置され、弾性体により構成される。第1シール部材8は、第1放熱部材5の外形より小さく形成されかつ第1開口部3Aより大きく形成される。
【0021】
ケース3の第1内壁面3Dは、第1開口3Aの開口面と略平行に形成される。第2開口部3Bは、第1放熱部材5の外形より大きく形成される。第1シール部材8は、第2開口部3Bから挿入され、第1放熱部材5と第1内壁面3Dの間に配置される。
【0022】
絶縁性部材で構成されるシート9は、第2開口部3Bから挿入され、第1放熱部材5の第1シール部材8が設置される面とは反対側の面に配置される。
【0023】
回路体2は、第3開口部3Cから挿入された後、シート9と接触する。他方のシート9は、回路体2の他方の1面に接触するように配置される。他方のシート9は、回路体2を挿入した後、第2開口部3Bから挿入される。
【0024】
第2放熱部材6は、第2開口部3Bより小さく形成される。第2放熱部材6は、他方のシート9に接触するように取付けられる。第2放熱部材6の側面には、第2シール部材10が設けられ、第2放熱部材6と第2シール部材10は第2開口部3Bに挿入される。
【0025】
なお第2シール部材10は、第2放熱部材6に取付けられた状態で第2開口部3Bより大きくなるように形成される。そして第2シール部材10は、第2放熱部材6と第2開口部3Bとの間で圧縮され配置される。
【0026】
上記のように構成されることにより、第1放熱部材5は、第2開口部3Bと干渉することなく通過する。第2放熱部材6は、第2開口部3Bに干渉することなく挿入される。第2シール部材10は、第2放熱部材6と第2開口部3Bとの間で圧縮され、回路体2、シート9及び第2放熱部材6の接触面方向には荷重が発生しない。これにより、第1放熱部材5は、ケース3との間で面シール構造を形成し、第2放熱部材6は、ケース3との 間で軸シールを生成することができるので、回路体2、シート9、第1放熱部材5、第2放熱部材6の接触面には、第1シール部材8の反発力と押圧部材の押圧による圧縮力が 印加される。
なお、第1放熱部材5の外周の側壁を斜めに形成し、さらに第1開口3Aを形成するケース3の厚み方向の壁を第1放熱部材5の側壁と同じ方向に斜めに形成して、第1放熱部材5を第1開口3Aに嵌め込むようにしてもよい。この場合、第1シール部材8はケース3の厚み方向の壁に形成された溝に収納する。また、このようにケース3の厚み方向の壁が斜めに形成された場合には、この厚み方向の壁は、ケース3の内壁側と定義される。
【0027】
押圧部材4は、ケース3と第2放熱部材6を挟み込むように3箇所以上に取付けられる(本実施形態では4箇所)。
【0028】
押圧部材4は、第2放熱部材6を押圧する第1押圧部4Aと、ケース3を押圧する第2押圧部4Bと、第1押圧部4Aと第2押圧部4Bを繋ぐ結合部4Cと、により構成される。
【0029】
本実施形態では、第1シール部材8は、第1押圧部4Aと第2押圧部4Bの間に挟まれる位置に配置される。言い換えると、第2放熱部材6のフィン形成面(放熱面)の直角方向から見た場合、第1押圧部4Aと第2押圧部4Bは、第1押圧部4Aと第2押圧部4Bの射影部が第1シール部材8の射影部と重なるように形成される。これにより第1押圧部4Aと第2押圧部4Bによって第1シール部材8が押し付けられ、シール性が向上する。なお、第1シール部材8は、第1押圧部4Aと第2押圧部4Bの間の空間の近傍であってもよい。
【0030】
押圧部材4は、取付時に発生する荷重と取付け数の積が、第1シール部材8を全周に渡り10%以上圧縮する荷重にする。
【0031】
ケース3の外側の側面には、凸部3Gが形成される。この凸部3Gは、押圧部材4の結合部4Cを係り止めることにより、押圧部材4が脱落することを防止している。またケース3の外側の側面の底部付近には、突起部3Hが形成される。この突起部3Hは、押圧部材4の結合部4Cを係り止めることにより、押圧部材4が脱落することを防止している。
【0032】
図3に示されるように、第1放熱部材5は、シート9を介し回路体2と面する第1内面5Bと、第1内面5Bと対向する面に第1外面5Aと、を有する。
第1外面5Aには、複数の第1フィン5Dが配置される。さらに第1外面5Aには、外周に第1平面5Cを有する。
【0033】
第1開口内面3Dは、溝形状を形成する。第1シール部材8は、第1開口内面3Dと第1平面5Cの間で圧縮され第1開口3Aを塞ぐ。
【0034】
第2放熱部材6の側面には、溝6Bが形成される。第2シール部材10は、溝6Bに挿入される。そして第2シール部材10は、溝6Bと第2開口3Bの間で圧縮され第2開口3Bを塞ぐ。
【0035】
第2放熱部材6は、シート9を介し回路体2に面する第2内面6Dと、第2内面6Dと対向する面に第2外面6Aと、を有する。
【0036】
第2外面6Aは、複数の第2フィン6Eが配置される。さらに第2外面6Aは、外周に第2平面6Cを有する。第2平面6Cは、ケース3に対し同一平面か、低くなるように形成される。また第2平面6Cは、第2フィン6E先端より低くなるように形成される。
【0037】
押圧部材4は、第2平面6Cと第1開口外面3Eを挟み込む。第1開口外面3Eは、第1フィン5D先端より低くなるようにする。
押圧部材4は、第2放熱部材6と回路体2に対しシート9を介し圧縮力をかける。さらに押圧部材4は、回路体2と第1放熱部材5に対しシート9を介し圧縮力をかける。
【0038】
また押圧部材4は、第1放熱部材5と第1開口内面3Dの間に配置された第1シール部材8を圧縮する。
【0039】
押圧部材4は、第1フィン5D先端より低くなるように形成される。また押圧部材4は、第2フィン6E先端より低くなるように形成される。
【0040】
第1フィン5Dは、第2フィン6Eと同一高さにする。第1フィン5Dは、第2フィン6Eとフィン軸方向から見た時、同一範囲にする。ケース3は、第3開口部3Cと垂直を成すケース上面3Fを有する。
【0041】
なお
図2に示されたシート9に接着性を有する絶縁性部材を用い、ケース3に挿入前の回路体2に予めシート9を接着し、シート9と一体になった回路体2をケース3に挿入するように構成してもよい。これにより、シート9は、回路体2の両面に固定され、外力による位置ずれが生じ難くなり、シート9の位置を精度良く所定の位置に配置することが出来る。
図4は、本実施形態に係るパワー半導体モジュールを用いた電力変換装置の流路構成例を示した断面図である。
パワー半導体モジュール1は、上側流路形成体11と下側流路形成体12により形成された収納空間に配置される。上側流路形成体11は開口部11Aを備え、回路体2のインターフェース部2Aは、開口部11Aから突出するようにする。
【0042】
上側流路形成体11は、流路内に開口部11Aと直角を成す上側流路外面11Bを形成する。接合部13は、上側流路外面11Bとケース上面3Fを接続させる。また接合部13は、開口部11Aを塞ぐ。
【0043】
開口部11Dは、開口部11Aと対向する側に上側流路外面11Eに形成される。上側流路外面11Eには、溝11Fが形成される。また開口部11Dは、第1放熱部材5及び第2放熱部材6と接触しない近傍の位置に形成される。
【0044】
下側流路形成体12は、流路凹部12Aを形成する。下側流路形成体12は、上側流路外面11Eと対面する下側流路外面12Bを有する。
【0045】
第3シール部材14は、溝11Fに挿入され下側流路外面12Bとの間で圧縮され、第3シール部材14は、第1流路下開口部11Dを塞ぐ。
【0046】
第1流路15は、第1放熱部材5と隣接する開口部11Dの面によって形成される。第1流路15は、第1フィン5D同士の隙間と第1フィン5D先端と開口部11Dの面の隙間から構成される。第1フィン5D同士の隙間面積は、第1フィン5D先端と開口部11Dの面の隙間面積の2倍以上確保する。
【0047】
第2流路16は、第2放熱部材6と隣接する開口部11Dの面によって形成される。第2流路16は、第2フィン6E同士の隙間と第2フィン6E先端と開口部11Dの面の隙間から構成される。第2フィン6E同士の隙間面積は、第2フィン6E先端と開口部11Dの面の隙間面積の2倍以上確保する。
【0048】
本実施形態においては、1つの流路を流れる冷媒は、パワー半導体モジュール1の押圧部材4側に衝突すると第1流路15と第2流路16に分流される。分流された冷媒は、第1放熱部材5の外面及び第2放熱部材6の外面を流れ、第1放熱部材5の外面及び第2放熱部材6の外面から熱量を奪う。これにより、半導体素子で発熱した熱量は、回路体2の両面から効率良く放熱される。半導体素子の熱量が放熱されることから、半導体素子の温度上昇は抑制される。
【0049】
流路凹部12Aは、第2平面6Cと第1開口外面3Eと隣接するように形成する。第1流路15と第2流路16は、下側流路形成体12近傍で合流する。流路凹部12Aは、第1流路15と第2流路16の合流した流路を形成する。
【0050】
開口部11Dの開口面の垂直方向から投影したとき、開口部11Dは、開口部11Dの射影部が第1放熱部材5のフィン部の射影部と第2放熱部材6のフィン部の射影部と重なるように形成される。
【0051】
同様に、開口部11Dの開口面の垂直方向から投影したとき、流れ迂回防止壁面11Cは、流れ迂回防止壁面11Cの射影部が第1放熱部材5のフィン部の射影部と第2放熱部材6のフィン部の射影部と重なるように形成される。そして、流れ迂回防止壁面11Cは、開口部11Dで形成される形状より小さく形成される。
【0052】
図5は、パワー半導体モジュールの流路への別の取付け例を示した断面図である。
【0053】
パワー半導体モジュール1は、上側流路形成体11と下側流路形成体12の内部に配置される。上側流路形成体11は、開口部11Aを備える。回路体2の端子を構成するインターフェース部2Aは、開口部11Aから突出する。つまりケース3は、端子を開口部11Aから突出させた状態で開口部11Aを覆う。上側流路形成体11は、上側流路内面11Gを形成する。上側流路内面11Gには、上流路溝11Hを形成する。
【0054】
第4シール部材17は、上流路溝11Hに挿入されケースシール面3Gとの間で圧縮される。つまりケース3は、当該ケース3と上側流路形成体11との間に第4シール部材17を挟んだ状態で、固定ネジ18(固定部材)によって上側流路形成体11に固定される
固定ネジ18は、上側流路形成体11にケース3を固定する。固定ネジ18は、第4シール部材17を圧縮させる軸力を発生させる。固定ネジ18は、ケース3の両端の2箇所に設置する。固定ネジ18は、第4シール部材17の内側に設置する。言い換えると、第4シール部材17は、固定ネジ18を囲む環状に形成される。
【0055】
ケース3は、固定ネジ18を締付ける為のネジ穴3Iを形成する。ネジ穴3Iは、流路19に貫通しないように設置する。
【0056】
これにより、パワー半導体モジュールは、流路からの冷媒漏れ発生を抑制しながら、流路形成体に強固に固定される。