特許第6192627号(P6192627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192627
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】シールド掘削機のカッタヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   E21D9/087 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-210697(P2014-210697)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-79632(P2016-79632A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】西 明良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−018778(JP,A)
【文献】 特開2000−104486(JP,A)
【文献】 特開平10−018776(JP,A)
【文献】 特開2003−336487(JP,A)
【文献】 特開2002−227592(JP,A)
【文献】 特開2002−256796(JP,A)
【文献】 米国特許第05437500(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103075159(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機のカッタヘッド中央にフィッシュテールビッが取り付けられると共に、該フィッシュテールビッの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットが取り付けられ、外側カッタビットは前記カッタヘッドの外周側に間隔をおいて配置され、
前記硬質切削物対応ビットは、切削対象土質の違いによって、前記フィッシュテールビッの切削高さより高い切削高さに変更出来る構成とされ、
前記変更出来る構成は、
前記硬質切削物対応ビットに可動フレームが連結されて、該可動フレームの後部には側面に間隔をおいて凹部が複数箇所形成された固定具が接続され、カッタヘッド側には固定ピンが固定され、該固定ピンが固定具の掘削部先端方向側に設けられた前記凹部に嵌め込まれて、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、
前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離し、フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとして構成してなり、
前記外側カッタビットの交換は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離した後の交換室に、前記外側カッタビットを前記ジャッキとは異なるジャッキを伸ばして握持し、該ジャッキを前記交換室へ引き戻し移動させて行う、
ことを特徴とするシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項2】
シールド掘削機のカッタヘッド中央にフィッシュテールビットが取り付けられると共に、該フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットが取り付けられ、外側カッタビットは前記カッタヘッドの外周側に間隔をおいて配置され、
前記硬質切削物対応ビットは、切削対象土質の違いによって、前記フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さに変更出来ると共に、該変更後には、前記フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さに変更出来る構成とされ、
前記変更出来る構成は、
前記硬質切削物対応ビットに可動フレームが連結されて、該可動フレームの後部には側面に間隔をおいて凹部が複数箇所形成された固定具が接続され、カッタヘッド側には固定ピンが固定され、該固定ピンが固定具の掘削部先端方向側に設けられた前記凹部に嵌め込まれて、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、
前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離し、フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、前記外側カッタビットの交換は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離した後の交換室に、前記外側カッタビットを前記ジャッキとは異なるジャッキを伸ばして握持し、該ジャッキを前記交換室へ引き戻し移動させて行う構成とし、
フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取付位置から、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取付位置への変更は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の後端側にジャッキを引き戻し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の切削部先端方向側凹部にし、前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離す構成としてなる、
ことを特徴とするシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項3】
前記ジャッキは、油圧ジャッキで構成され、該油圧ジャッキと硬質切削物対応ビットに連結された可動フレームに接続された固定具とは、切り離し可能にして接続される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項4】
前記硬質切削物対応ビットは、岩盤、巨礫地盤を有する土質を切削するローラーカッタビット、切削幅の狭い刃先の鋭利なカッタビットで、掘削発進時と到達時の両者において、あるいはいずれかにおいてコンクリート製仮壁の切削を行う、切削幅の狭い刃先の鋭利な専用のカッタビットで切削ピッチが細かくなるように配置され、推進速度を落として少しずつ削りとるように掘削すべく構成された仮壁切削用カッタビット、あるいは掘削区間中においてシートパイルや杭などの障害物の掘削を行う障害物切削用カッタビットである、
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のシールド掘削機のカッタヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド工法で用いられるシールド掘削機のカッタヘッドに関するものである。
【0002】
いわゆるシールド工法はコスト縮減の要求からその長距離掘削化が進んでおり、そのため、土砂を切削するためのカッタビットの耐久性の向上、地中でのカッタビッ交換技術の進展が求められている。
【0003】
特に機械式によるカッタビットの交換は厳しい掘削条件において環境面、安全面、経済面での有利性が認識されている。
【背景技術】
【0004】
長距離シールドを経済的に施工するには、シールド掘削機のカッタビットを機内から容易に交換できる機械式カッタビット交換システムが有効である。
なぜなら、掘削対象土質は全て同じ土質ではなく、岩盤であったり、巨礫地盤であったり、土砂山であったりして、同じカッタビッでは過酷な掘削条件に対応できないものであり、もって、掘削対象土質にあったカッタビットに交換して掘削することが要求されるからである。
【0005】
ここで、本発明者らは、連結したカッタビットを外周部から中心部に向かってスライドさせて機内に引き込み交換するトレール工法を既に確立している。該トレール工法により、まったく性能の異なる、土砂山用カッタビットと岩盤用ローラーカッタビットを適時交換することが可能になり、途中に岩盤や大きな玉石を有するシールド長距離工事に適用され、国内初の機械式による複数のローラーカッタビットの交換実績をあげている。しかしながら、該トレール工法は、カッタビットを外周部から中心部に向かってスライドさせて機内に引き込み交換する機構のため、カッタヘッド中央部に装備されたカッタビット(これをセンタカッタという)については交換することができないという弱点が判明している。従来技術では、このセンタカッタに、硬質な砂礫地盤まで切削できる土砂山用フィッシュテールビット(刃先に超硬チップを埋め込んだ山形になった板状の大型のカッタビット)を装備し、超硬チップの埋込量や板厚を増加させる補強によって対応していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−272487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述したフィッシュテールビットの補強では、摩耗の進行を遅らせる効果しか望めず、適用した工事の土質条件において、岩盤、玉石の量がきわめて多い場合や岩強度が高い場合には、摩耗が急速に進行し、最悪の場合はカッタヘッドの本体まで破損する。そこで、フィッシュテールビットに代わり、センタカッタに岩盤用のローラーカッタビットを装備することも考えられるが、ローラーカッタビットは、フィッシュテールビットに比べて土砂山における摩耗の進行が早く、さらに粘土質を多く含む場合には切削能力がほとんど得られないという欠点がある。そのため、土質が土砂山から岩盤へと変化する長距離工事においては、摩耗による交換、土砂山用カッタビットへの交換が必要になる。
【0008】
以上のことから解決しようとする課題は以下である。
カッタヘッド中央部は、従来のカッタビット交換装置の構造上、カッタビットの交換ができなかった。そのため、ローラーカッタビットを装備することができず、補強したフィッシュテールビットで対応できる土質にしか適用できなかった。
【0009】
かくして、本発明では、土質に応じてビット交換が難しいいわゆるセンタカッタの土砂山用フィッシュテールビットと、例えば硬質切削物対応ビットの一つである岩盤用ローラーカッタビットとを土質に合わせて自在に切り替える構成とし、もってビット交換やビットの保護を不要とし、全地盤対応型長距離シールド達成を可能としたシールド掘削機のカッタヘッドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
シールド掘削機のカッタヘッド中央にフィッシュテールビッが取り付けられると共に、該フィッシュテールビッの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットが取り付けられ、外側カッタビットは前記カッタヘッドの外周側に間隔をおいて配置され、
前記硬質切削物対応ビットは、切削対象土質の違いによって、前記フィッシュテールビッの切削高さより高い切削高さに変更出来る構成とされ、
前記変更出来る構成は、
前記硬質切削物対応ビットに可動フレームが連結されて、該可動フレームの後部には側面に間隔をおいて凹部が複数箇所形成された固定具が接続され、カッタヘッド側には固定ピンが固定され、該固定ピンが固定具の掘削部先端方向側に設けられた前記凹部に嵌め込まれて、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、
前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離し、フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとして構成してなり、
前記外側カッタビットの交換は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離した後の交換室に、前記外側カッタビットを前記ジャッキとは異なるジャッキを伸ばして握持し、該ジャッキを前記交換室へ引き戻し移動させて行う、
ことを特徴とし、
または、
シールド掘削機のカッタヘッド中央にフィッシュテールビットが取り付けられると共に、該フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットが取り付けられ、外側カッタビットは前記カッタヘッドの外周側に間隔をおいて配置され、
前記硬質切削物対応ビットは、切削対象土質の違いによって、前記フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さに変更出来ると共に、該変更後には、前記フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さに変更出来る構成とされ、
前記変更出来る構成は、
前記硬質切削物対応ビットに可動フレームが連結されて、該可動フレームの後部には側面に間隔をおいて凹部が複数箇所形成された固定具が接続され、カッタヘッド側には固定ピンが固定され、該固定ピンが固定具の掘削部先端方向側に設けられた前記凹部に嵌め込まれて、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、
前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離し、フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取り付けとし、前記外側カッタビットの交換は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の先端側にジャッキを押し出し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の後端側凹部にして前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離した後の交換室に、前記外側カッタビットを前記ジャッキとは異なるジャッキを伸ばして握持し、該ジャッキを前記交換室へ引き戻し移動させて行う構成とし、
フィッシュテールビットの切削高さより高い切削高さの硬質切削物対応ビットの取付位置から、フィッシュテールビットの切削高さより低い切削高さの硬質切削物対応ビットの取付位置への変更は、前記固定具の後端にジャッキを接続し、掘削部の後端側にジャッキを引き戻し、前記固定ピンの凹部での嵌め込み位置を固定具の切削部先端方向側凹部にし、前記硬質切削物対応ビットをカッタヘッドに固定して前記ジャッキを固定具の後端から切り離す構成としてなる、
ことを特徴とし、
または、
前記ジャッキは、油圧ジャッキで構成され、該油圧ジャッキと硬質切削物対応ビットに連結された可動フレームに接続された固定具とは、切り離し可能にして接続される、
ことを特徴とし、
または、
前記硬質切削物対応ビットは、岩盤、巨礫地盤を有する土質を切削するローラーカッタビット、切削幅の狭い刃先の鋭利なカッタビットで、掘削発進時と到達時の両者において、あるいはいずれかにおいてコンクリート製仮壁の切削を行う、切削幅の狭い刃先の鋭利な専用のカッタビットで切削ピッチが細かくなるように配置され、推進速度を落として少しずつ削りとるように掘削すべく構成された仮壁切削用カッタビット、あるいは掘削区間中においてシートパイルや杭などの障害物の掘削を行う障害物切削用カッタビットである、
ことを特徴とするものである。
【0011】
掘削対象土質が土砂山の場合は固定のフィッシュテールビットで掘削する。
【0012】
掘削対象土質が岩盤、巨礫地盤を有する土質となった場合、フィッシュテールビットの後方に装備したローラーカッタビットの切削高さを例えば、油圧ジャッキ等で押し出し、フィッシュテール部の切削高さより高くなるように突き出して装備する。
【0013】
この突き出す量は、シールド掘削機のカッタ回転速度と掘進速度により異なるが、フィッシュテールビットを完全に保護できる量であり、例えば50mmから100mmである。
【0014】
掘削対象土質が土砂山となった場合は、ローラーカッタビットを油圧ジャッキ等でフィッシュテールビットの切削高さより低くなるように進行方向の後方に引き戻す。この引き戻す量は、硬質切削物対応ビットを完全に保護できる量であり、例えば50mmから100mmである。
【0015】
この様に、硬質切削物対応ビットであるローラーカッタビットの前後移動によりフィッシュテールと硬質切削物対応ビットとを土質に併せて可変装備できるため、土質に応じたスムーズな掘進ができ、また、シールドカッタヘッドスポーク部へのビット交換技術(トレール工法)を併用すると、いわゆる全地盤対応型長距離シールド掘進が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、土質に応じてビット交換が難しいセンタカッタの土砂山用フィッシュテールビットと岩盤など硬質切削物を切削するローラーカッタービットなどの硬質切削物対応ビットとを自在に切り替える構成とし、もってビット交換やビットの保護を不要とし、全地盤対応型長距離シールドを達成できるとの優れた効果を奏する。
【0017】
すなわち、ローラーカッタビットの前後移動によりセンタカッタを土質に併せて可変装備できるため、本発明者らが既に発明した技術との併用により、全地盤対応型長距離シールド掘進が可能となった。
【0018】
そして、簡易にローラーカッタビットに切り換えることができるため、巨礫出現など想定外の土質変化にも容易に対応できる。
さらに、100m程度の短距離であれば全断面岩盤に遭遇した場合でも対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の動作を説明する説明図(1)である。
図2】本発明の動作を説明する説明図(2)である。
図3】本発明の動作を説明する説明図(3)である。
図4】本発明の動作を説明する説明図(4)である。
図5】本発明の動作を説明する説明図(5)である。
図6】本発明の動作を説明する説明図(6)である。
図7】本発明の動作を説明する説明図(7)である。
図8】本発明の動作を説明する説明図(8)である。
図9】本発明の動作を説明する説明図(9)である。
図10】本発明の動作を説明する説明図(10)である。
図11】本発明の動作を説明する説明図(11)である。
図12】本発明の動作を説明する説明図(12)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0021】
ここで、図1乃至図4は、ローラーカッタビットを突き出す工程を示している。また、図4乃至図9は、外側ローラーカッタビットの従来交換工程を示している。さらに、図9乃至図12は、ローラーカッタビットを引き戻す工程を示している。
【0022】
図において、符号1は、シールド掘削機の掘削部を示す。符号2は、カッタヘッドを示し、該カッタヘッド2の中央部には、フィッシュテールビット3が取り付けられている。また、符号4は、ローラーカッタビットであり、前記フィッシュテールビット3に隣接してカッタヘッド2の中央部に取り付けられている。説明を容易にするため、図1から図12の断面図では、フィッシュテールビットとローラーカッタビットのカッタ回転面上の取付位置を同一に記載しているが、実際は異なる位置に取り付けられている。
【0023】
図1は、フィッシュテールビット3の切削高さよりローラーカッタビット4の切削高さは低くして設置された状態を示している。
符号5は、外側カッタビットを示し、該外側カッタビット5は、カッタヘッド2の外周側に複数個、間隔をおいて配置されている。
【0024】
前記カッタヘッド2の中央部には、その後端側可動フレーム6が取り付けられ、該可動フレーム6の後部には固定具7が接続されている。そして、この固定具7の側面には間隔をおいて凹部8が複数箇所形成されている。
符号9は固定ピンであり、該固定ピン9はカッタヘッド2側に固定されている。
【0025】
図1に示す状態で、固定ピン9は固定具7の掘削部先端方向側に設けられた凹部8に嵌め込まれて装着されており、もって、ローラーカッタビット4はフィッシュテールビット3の切削高さより低くしてカッタヘッド2の中央部に設置されるものとなる。
【0026】
そして、図3に示すように、ローラーカッタビット4の切削高さをフィッシュテールビット3の切削高さより高く変更するには、図2に示す様に、固定具7の後端に油圧ジャッキなどのジャッキ11を接続し、固定ピン9を解除すると共に、掘削部1の先端側にジャッキ11を押し出す。
【0027】
図3のように、ローラーカッタビット4を押し出した後、固定ピン9を固定具7の後端側凹部8に嵌め込んでローラーカッタビット4をカッタヘッド2に固定する。そして、ジャッキ11を固定具7の後端から切り離して作業は終了する。
【0028】
以上により、ローラーカッタビット4の切削高さをフィッシュテールビット3の切削高さより高く変更できるものとなる。
【0029】
ところで、図4乃至図9は、摩耗の激しい外側カッタビット5の交換工程を説明したものである。ここでカッタビット5は、土砂山用カッタビット、岩盤用ローラーカッタビットのいずれでも良く、互いの交換も可能である。本発明による掘削部1のカッタヘッド2についてもカッタヘッド2外周側に存する外側カッタビット5を簡単に交換することが出来る。
【0030】
すなわち、図4に示す様に、ジャッキ12を伸ばし、図5に示すように、外側カッタビット5を握持し、図6のように、交換室13内に移動させる。その後、図7に示すように、交換室13内で新しい外側カッタビット5に交換し、図8に示すように、新しい外側カッタビット5をジャッキ12によって、元の位置に設置するのである。
この様に、本発明においても簡単に外側カッタビット5の交換が行えるものとなる。
【0031】
しかして、本発明によってシールド工法を行う概略につき説明する。
【0032】
図1に示す様に、カッタヘッド2の中央部に配置されているフィッシュテールビット3の切削高さをローラーカッタビット4より高くした状態では、掘削対象土質が土砂山のときに、その掘削作業が行われる。
【0033】
しかし、掘削対象土質が岩盤や巨礫地盤を有する土質になったとき、前記フィッシュテールビット3による掘削では、該フィッシュテールビット3が摩耗あるいは破損してしまう。
【0034】
そこで、フィッシュテールビット3よりもローラーカッタビット4の切削高さを高くして切削するものとする。ここで、切削高さの変更は簡単に行うことが出来る。
【0035】
すなわち、図1乃至図4の方法で行う。そして、ローラーカッタビット4の切削高さはフィッシュテールビット3の切削高さより50mm乃至100mm前に突き出した状態となる。この状態で切削すると、ローラーカッタビット4が先行して岩盤や巨礫地盤を破砕することになり、フィッシュテールビット3に直接当たることなく完全に保護できるものとなる。
【0036】
そして、掘削対象土質が土砂山となったときには、図10乃至図12に示すように、ローラーカッタビット4をジャッキ11に繋いで後方へ引き戻し、フィッシュテールビット3を前に突き出す状態とする。この状態で切削すると、フィッシュテールビット3が先行して土砂山を切削することになり、ローラーカッタビット4に直接当たることなく完全に保護できるものとなる。
【0037】
この様に、掘削対象土質が土砂山の場合は、固定のフィッシュテールビット3で掘削する。
掘削対象土質が岩盤、巨礫地盤を有する土質となった場合には、フィッシュテールビット3の後方に装備したローラーカッタビット4を例えば、油圧ジャッキ等のジャッキ11で押し出し、フィッシュテールビット3の切削高さより、前方に突き出して装備する。
掘削対象土質が土砂山となった場合は、ローラーカッタビット4を油圧ジャッキ等のジャッキ11でフィッシュテールビット3の後方に引き戻すものとする。
【0038】
この様に、ローラーカッタビット4の前後移動によりフィッシュテールビット3とローラーカッタビット4とを土質に併せて可変装備できるため、土質に応じたスムーズな掘進ができ、また、いわゆるシールドカッタヘッドスポーク部へのビット交換技術(トレール工法)を併用すると、全地盤対応型長距離シールド掘進が可能となる。
【0039】
そして、簡易に切削高さを調整出来るローラーカッタビット4を装備できるため、巨礫出現など想定外の土質変化にも容易に対応できることとなる。
さらに、100m程度の短距離であれば全断面岩盤に遭遇した場合でもスムーズに対応可能となる。
【0040】
ところで、掘削到達時に、例えばコンクリート製の仮壁を切削する場合がある。
コンクリート製の仮壁は、全面が均一な高強度であり、自然地盤のように切削時に緩みが生じることもないため、切削幅の狭い刃先の鋭利な専用のカッタビット(以後、仮壁切削用カッタビットという)を、切削ピッチが細かくなるように配置し、推進速度を落として少しずつ削りとるように掘削する必要がある。
【0041】
NOMST工法と言われる炭素繊維筋を用いたシールド機掘削用コンクリート壁の場合、コンクリート強度800kgf・cm2、切削ビット幅20mm、切削ピッチ50mm、掘進速度1mmが推奨されている。
【0042】
従来このような仮壁の掘削は、立坑からシールド機が発進する場合にのみ用いられ、仮壁切削用カッタビットを他の土砂山切削用カッタビットや岩盤破砕用ローラーカッタビットよりも切削高さを高く配置することで可能にしている。仮壁切削用カッタビットは刃先が鋭利で小型のため、自然地盤の掘削において早期に摩耗し、ほとんど影響を及ぼさない。しかし、その反面、到達時の仮壁掘削においては全く使用することができなくなる。
【0043】
そこで、従来のトレール工法を用いることで外周部のカッタビットについては仮壁切削用カッタビットと交換することが可能になった。しかし、中央部については交換することができないため到達時の仮壁掘削は実現できなかった。
【0044】
しかして本発明では、切削高さを変更する側に仮壁切削用カッタビットを装備することで可能になる。
【0045】
すなわち、掘削対象土質がコンクリート製仮壁となった場合、フィッシュテールビットの後方に装備した仮壁切削用カッタビットの切削高さを例えば、油圧ジャッキ等で押し出し、フィッシュテール部の切削高さより高くなるように突き出して装備する。
【0046】
この突き出す量は、シールド掘削機のカッタ回転速度と掘進速度により異なるが、フィッシュテールビットを完全に保護できる量である。
【0047】
掘削対象土質が土砂山となった場合は、仮壁切削用カッタビットを油圧ジャッキ等でフィッシュテールビットの切削高さより低くなるように進行方向の後方に引き戻す。この引き戻す量は、仮壁切削用カッタビットを完全に保護できる量である。
【0048】
これにより、発進時と到達時の両者においてコンクリート製仮壁の切削が可能になる。
また、トンネル施工区間の途中にシートパイルや杭等の障害物の存在があらかじめ確認されている場合には、同様に切削高さを変更する側に障害物切削用カッタビットを装備し、さらに従来トレール工法を用いて外周部のカッタビットを障害物切削用カッタビットと交換することにより、障害物の切削も可能になる。
【符号の説明】
【0049】
掘削部
2 カッタヘッド
3 フィッシュテールビット
4 ローラーカッタビット
5 外側カッタビット
可動フレーム
7 固定具
8 凹部
9 固定ピン
11 ジャッキ
12 ジャッキ
13 交換室
図1
図2
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図4
図5
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図12