【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、少なくとも一方の表面に、多数の微細な凹部と多数の微細な凸部とが形成されており、上記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する上記凹部が平行して規則的に形成されており、隣接する上記凹部の間隔が750μm未満である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜の表面に形成する凹凸のパターンを工夫することにより、2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラスの製造時における優れた脱気性と、多重像の発生の防止とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも一方の表面に、多数の微細な凹部と多数の微細な凸部とが形成されている。
本発明の合わせガラス用中間膜においては、上記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する上記凹部が平行して規則的に形成されている。一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を予備圧着及び本圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。中間膜の少なくとも一方の面の凹凸の形状を、底部が連続した溝形状である凹部が平行して規則的に形成することにより、上記の底部の連通性はより優れ、予備圧着及び本圧着の際に著しく脱気性が向上する。
なお、「規則的に形成されている」とは、隣接する上記凹部が平行して等間隔に形成されていてもよく、隣接する上記凹部が平行して形成されているが、すべての隣接する上記凹部の間隔が等間隔でなくともよいことを意味する。
図1及び
図2に、表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜においては、隣接する上記底部が連続した溝形状である凹部の間隔(以下、「凹部の間隔」ともいう。)が750μm未満である。凹部の間隔を750μm未満とすることにより、予備圧着及び本圧着の際の脱気性を維持したまま、合わせガラスとしたときの多重像の発生を防止することができる。これは、凹部の間隔を750μm未満とすることにより、合わせガラス用中間膜を構成する各樹脂層間にまで凹凸が転写されてしまうのを防止できるためと考えられる。上記凹部の間隔の好ましい上限は600μm、より好ましい上限は500μm、更に好ましい上限は400μm、特に好ましい上限は200μmである。
なお、特に多重像の発生をより一層防止するという観点からは、上記凹部の間隔の好ましい上限は400μmであり、より好ましい上限は300μmであり、更に好ましい上限は200μmである。多重像の発生は、外部から入射する光線の輝度が高いほど発生しやすいが、上記凹部の間隔の好ましい上限は400μm以下とすることにより、極めて高輝度の光線が入射した場合にでも、多重像の発生を確実に防止することができる。
上記凹部の間隔の下限については特に限定されないが、合わせガラス製造時の作業性の観点から実質的には10μmが下限であることが好ましく、50μmが下限であることがより好ましく、100μmが下限であることが更に好ましい。
なお、本明細書において凹部の間隔とは、隣接する底部が連続した溝形状である凹部において、該2つの凹部の最底部間の最短距離を意味する。具体的には、上記凹部の間隔は、光学顕微鏡(例えば、SONIC社製「BS−8000III」)を用いて、合わせガラス用中間膜の表面(観察範囲20mm×20mm)を観察し、観察された隣接する凹部の最底部間の最短距離をすべて測定する。次いで、測定された最短距離の平均値を算出することにより、凹部の間隔が得られる。また、測定された最短距離の最大値を凹部の間隔としてもよい。凹部の間隔は最短距離の平均値であってもよく、最短距離の最大値であってもよいが、最短距離の平均値であることが好ましい。
【0016】
上記凹部の溝深さ(Rzg)の好ましい下限は10μm、好ましい上限は40μmである。上記凹部の溝深さ(Rzg)を10μm以上とすることにより、予備圧着及び本圧着の際の脱気性をより向上させることができ、40μm以下とすることにより、予備圧着及び本圧着の際の温度を低くすることができる。上記凹部の溝深さ(Rzg)のより好ましい下限は15μm、より好ましい上限は35μmであり、更に好ましい下限は18μm、更に好ましい上限は30μmであり、特に好ましい下限は20μm、特に好ましい上限は28μmである。
なお、本明細書において凹部の溝深さ(Rzg)とは、JIS B−0601(1994)「表面粗さ−定義及び表示」に規定される、粗さ曲線の平均線(粗さ曲線までの偏差の2乗和が最小になるように設定した線)を基準とする溝深さを算出し、測定した溝数の溝深さの平均値を意味する。また、上記凹部の溝深さ(Rzg)は、表面粗さ測定器(小坂研究所製「SE1700α」)を用いて測定されるデジタル信号をデータ処理することによって容易に得られる。
【0017】
上記凹凸の形状は、例えば、刻線状、格子状、半球状等の、一般的に合わせガラス用中間膜の表面に付与される凹凸の形状を用いることができる。上記凹凸の形状はエンボスの形状であってもよい。上記凹凸の形状は、刻線状であることがより好ましい。
また、上記凸部も、
図1に示したように頂上部が平面形状であってもよく、
図2に示したように平面ではない形状であってもよい。なお、上記凸部の頂上部が平面形状である場合には、該頂上部の平面に更に微細な凹凸が施されていてもよい。
更に、各凹凸の凸部の高さは、同一の高さであってもよいし、異なる高さであってもよく、これらの凸部に対応する凹部の深さも、該凹部の底辺が連続していれば、同一の深さであってもよいし、異なる深さであってもよい。
【0018】
本発明において合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面に多数の微細な凹部と多数の微細な凸部とを形成する方法としては、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法等が挙げられる。なかでも、隣接する上記凹部が平行して規則的に凹部を形成でき、又は、平行して等間隔に凹部を形成できることから、エンボスロール法が好適である。また、予備圧着及び本圧着の際に著しく脱気性が向上することから、合わせガラス用中間膜の両面に多数の微細な凹部と多数の微細な凸部とが形成されていることが好ましい。
【0019】
上記エンボスロール法で用いられるエンボスロールとしては、例えば、金属ロール表面に酸化アルミニウムや酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削などを用いてラッピングを行うことにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール、彫刻ミル(マザーミル)を用い、この彫刻ミルのエンボス模様(凹凸模様)を金属ロール表面に転写することにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール、エッチング(蝕刻)によりロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール等が挙げられる。
【0020】
本発明の合わせガラス用中間膜は、2層以上の樹脂層が積層されている。例えば、2層以上の樹脂層として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。一方、2層以上の樹脂層が積層されている場合、多重像の問題が発生する。
【0021】
上記樹脂層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
【0022】
上記樹脂層は、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0023】
上記樹脂層は、接着力調整剤を含有することが好ましい。特に、合わせガラスを製造するときに、ガラスと接触する樹脂層は、上記接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。合わせガラスを製造するときに、ガラスと樹脂層との接着力を容易に調製できることから、ガラスと接触する樹脂層は、接着力調整剤として、マグネシウム塩又はカリウム塩を含むことが好ましい。
【0024】
上記樹脂層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変成シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜では、2層以上の樹脂層として、少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールAという。)の水酸基量が、上記第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールBという。)の水酸基量と異なることが好ましい。
ポリビニルアセタールAとポリビニルアセタールBとの性質が異なるため、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より低い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より高い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0026】
更に、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が可塑剤を含む場合、上記第1の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Aという。)が、上記第2の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Bという。)と異なることが好ましい。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより多い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより少ない場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0027】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する2層以上の樹脂層の組み合わせとしては、例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、上記第1の樹脂層として遮音層と、上記第2の樹脂層として保護層との組み合わせが挙げられる。合わせガラスの遮音性が向上することから、上記遮音層はポリビニルアセタールXと可塑剤とを含み、上記保護層はポリビニルアセタールYと可塑剤とを含むことが好ましい。更に、2層の上記保護層の間に、上記遮音層が積層されている場合、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜(以下、遮音中間膜ともいう。)を得ることができる。本願発明では、上記遮音層と上記保護層のように、性質が異なる樹脂層が積層されていても、多重像の発生を防止できる合わせガラス用中間膜を得ることができる。以下、遮音中間膜について、より具体的に説明する。
【0028】
上記遮音中間膜において、上記遮音層は遮音性を付与する役割を有する。
上記遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0029】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。
上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0031】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや合わせガラスの白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0032】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、合わせガラスの白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は6モル%、最も好ましい下限は8モル%であり、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0033】
特に、上記遮音層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。
【0034】
上記遮音層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。
【0035】
上記遮音層の厚さの好ましい下限は0.05mmである。上記遮音層の厚さを0.05mm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の厚さのより好ましい下限は0.08mmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は0.3mmである。
【0036】
上記保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0037】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0038】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0039】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0040】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記保護層とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0041】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールA、B、及び、Yの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0042】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。
【0043】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層及び上記保護層における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0044】
上記保護層の厚さとしての好ましい下限は0.2mm、好ましい上限は3mmである。上記保護層の厚さを0.2mm以上とすることにより、耐貫通性を確保することができる。
上記保護層の厚みのより好ましい下限は0.3mm、より好ましい上限は1.5mmであり、更に好ましい上限は0.5mm、特に好ましい上限は0.4mmである。
【0045】
上記遮音中間膜を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記遮音層と保護層とを、押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜した後、積層する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスもまた、本発明の1つである。本発明の合わせガラスに用いられるガラス板としては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス等の無機ガラスが挙げられる。
【0047】
本発明の合わせガラスの製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。