特許第6192643号(P6192643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192643磁性モノフィラメント、磁性ブラシおよびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192643
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】磁性モノフィラメント、磁性ブラシおよびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20170828BHJP
   A46D 1/00 20060101ALI20170828BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20170828BHJP
   D01F 6/90 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   D01F1/10
   A46D1/00 102
   A46D1/00 101
   D01F6/92 301M
   D01F6/90 301
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-525855(P2014-525855)
(86)(22)【出願日】2013年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2013069449
(87)【国際公開番号】WO2014014038
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-158961(P2012-158961)
(32)【優先日】2012年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596072977
【氏名又は名称】ユニプラス滋賀株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595027549
【氏名又は名称】アラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】大植 一人
(72)【発明者】
【氏名】吉富 進吾
【審査官】 大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3165874(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3139764(JP,U)
【文献】 特開2004−292955(JP,A)
【文献】 特開平07−197311(JP,A)
【文献】 特開平02−193180(JP,A)
【文献】 特開2006−326322(JP,A)
【文献】 特開平03−199407(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3141161(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3151352(JP,U)
【文献】 特開2006−259588(JP,A)
【文献】 特開2005−338334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/10
A46D 1/00
D01F 6/90
D01F 6/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性モノフィラメントであって、
高分子モノフィラメントと、該高分子モノフィラメント中に含有される磁性体とを含み、
前記高分子モノフィラメントを構成する高分子物質が、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂であり、高分子モノフィラメントがポリブチレンテレフタレートで構成されるときの飽和磁化が8emu/g以上、高分子モノフィラメントがナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂で構成されるときの飽和磁化が7emu/g以上となるよう、前記高分子モノフィラメント中に前記磁性体を分散させてなることを特徴とする磁性モノフィラメント。
【請求項2】
前記磁性モノフィラメントの直径が0.1〜1.0mmであり、引張強度が1.5cN/dtex以上であり、伸度が15〜35%であることを特徴とする請求項1に記載の磁性モノフィラメント。
【請求項3】
前記磁性体がステンレスであり、無機顔料で着色されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性モノフィラメント。
【請求項4】
食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性ブラシであって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性モノフィラメントと、前記磁性モノフィラメントを植毛する植毛台とを含み、前記磁性モノフィラメントが前記植毛台に植毛されてなることを特徴とする磁性ブラシ。
【請求項5】
磁性モノフィラメントを植毛する植毛台が熱可塑性樹脂および磁性体を含むことを特徴とする請求項4に記載の磁性ブラシ。
【請求項6】
食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性ブラシであって、
請求項3に記載の無機顔料で着色された磁性モノフィラメントが、無機顔料および磁性体を含み、前記無機顔料で着色された熱可塑性樹脂の植毛台に植毛されてなることを特徴とする磁性ブラシ。
【請求項7】
請求項1に記載の磁性モノフィラメントの製造方法であって、
モノフィラメントを構成する高分子物質と、磁性体粉末とを、流動状態で混合する混合工程と、
前記混合工程で混合された高分子物質と磁性体粉末の混合物を紡糸する紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られたモノフィラメントを延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする磁性モノフィラメントの製造方法。
【請求項8】
前記混合工程において、高分子物質と、磁性体粉末とを、流動状態で混合するに先立って、高分子物質と磁性体粉末とを、予め混合することを特徴とする請求項7に記載の磁性モノフィラメントの製造方法。
【請求項9】
前記混合工程において、前記高分子物質と前記磁性体粉末に加えて、さらに無機顔料を流動状態で混合することを特徴とする請求項7または8に記載の磁性モノフィラメントの製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載の磁性モノフィラメントの製造方法であって、モノフィラメントを構成する高分子物質と磁性体粉末とを、流動状態で混合する磁性コンパウンド混合工程と、
モノフィラメントを構成する高分子物質と、無機顔料粉末とを、流動状態で混合する着色マスターバッチ混合工程と、
前記磁性コンパウンド混合工程で得られた磁性コンパウンドと、前記着色マスターバッチ製造工程で得られた着色マスターバッチとを、混合しつつ融紡糸する紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られたモノフィラメントを延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする磁性モノフィラメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性モノフィラメントおよび当該磁性モノフィラメントを用いた磁性ブラシならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中に異物が混入し、これを発見できずに販売して、販売後に異物が発見された場合には、食品メーカーにとっては、自社製品のイメージを損ない、ひいては自社製品の購買意欲の低下につながるので、食品産業においては、食品の安全性を維持するために、食品中への異物混入は絶対に避けなければならない。
【0003】
また、メーカーが製品出荷前に、異物を発見したとしても、発見時期によっては、異物の混入が疑われる多数の製品を廃棄せざるを得ないおそれもあり、やはり食品メーカーにとって大きな打撃となる。
【0004】
そのため、食品製造の現場では、作業員に防止、作業着、マスク、手袋などの着用を義務つけ、体が外部に露出しないようにしている。
【0005】
一方、製品が食品であることから、製品を収容する容器、製造ライン、製造機械器具の清掃も定期的に実施されるが、その際には、各種ブラシを使用せざるを得ない。
【0006】
しかし、これらの各種ブラシでは、使用中にブラシに固定されている植毛部のフィラメントが毛抜けしたり、折損や断裂した場合、フィラメント断片が製造ラインや製造機械器具に付着して、食品製造中に食品に移行し、フィラメント断片を含んだまま製品化されてしまうおそれがある。
【0007】
加えて、このような各種ブラシは、合成樹脂製のものが多いので、一旦、食品中に散逸した場合には、目視で検知するか、場合によっては濾過や篩過する以外には検知することができない。
【0008】
特に、フィラメント断片が水平状態で混入している場合は、比較的発見しやすいが、食品が粉体状のものであるときには、フィラメント断片が垂直ないし斜め方向に立ったような状態で存在することも多く、このような場合には、極めて検知が困難である。
【0009】
このような状況のもとで、万一、ブラシのフィラメントが毛抜けや折損した場合でも、目視以外で、かつフィラメント断片が食品中に垂直ないし斜め方向に立ったような状態で存在した場合でも、高率で検知できる素材が望まれていた。
【0010】
またさらに、洗浄ブラシのフィラメントや植毛台やハンドル部が破損や断裂して食品中に混入した場合には、金属検知で検知されるが、食品工場にはいくつもの製造ラインがあり検知されたフィラメントや植毛台やハンドル部がどのラインで混入したか判ると、工場の品質・安全管理面から対策が取りやすくなる。
【0011】
そのため、フィラメントと植毛台、ハンドル部は同色相にした洗浄ブラシをライン毎に色分けして使用できる洗浄ブラシの開発が望まれている。
【0012】
かかる対策として、ブレードの合成樹脂層またはゴム層に黒色酸化鉄粉が混入された食品用ヘラ(特許文献1)、磁性体を含む樹脂材料により形成された部分を有することを特徴とする清掃用器具(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3151352号
【特許文献2】実用新案登録第3165874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1および2に記載された発明は、折損した部分が異物として食品中に混入した場合に、金属検知器で異物の存在を発見するためのものであり、異物発見に関してそれなりに効果的ではあるが、食品中に混入する異物の状況やサイズによっては、発見できない場合がある。たとえば小麦粉や粉ミルクなど、食品が粉体状の場合に、前記のようにフィラメント断片が該粉体状の食品中に直立したような状態で存在するときには金属検知機でも発見することは困難である。
【0015】
また、特許文献1および2に記載された発明では、磁性体を全体の20〜60重量%を配合するというものであり、このような高い含有率で磁性体を配合すれば、フィラメントの柔軟性などが十分ではなく、また強度においても十分なものとできず、さらに紡糸しても種々のブラシに適応した太さのものを得がたいという問題があった。
【0016】
本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、高分子モノフィラメント中に特定範囲の飽和磁化を有する磁性体を含有させれば、万一、毛抜けや折損し、当該フィラメント断片が食品中に垂直ないし斜め方向に立ったような状態や湾曲した状態で存在した場合でも、金属検知機で高率に検知することができ、しかもブラシのフィラメントとしての強度を維持し、かつ種々の太さのモノフィラメントとなるよう紡糸できることを見出し、本発明を完成したものである
【0017】
また、本発明者らは、磁性体を含有したモノフィラメントの飽和磁化と金属検知機で検知できるモノフィラメント長さとの関係を鋭意検討した結果、モノフィラメント中の飽和磁化が3emu/gであれば、垂直に直立している25mm程度のモノフィラメント断片を検知できること、さらには、飽和磁化が7emu/g近辺において、検知できるモノフィラメント長さの変曲点があり、飽和磁化が7emu/g以下の場合は、飽和磁化が少し変化するだけで、金属検知器で検知できる垂直に直立しているモノフィラメント断片の長さが大きく変化することを見出した。
【0018】
これらのことは、言い換えれば、モノフィラメント中の飽和磁化が3emu/gであれば、実用的には充分な異物検知が可能であることを意味している。というのは、金属検知機で検知される場合、モノフィラメントが水平方向にあれば、金属検知機の磁界を乱す磁性モノフィラメントの断面が大きくなるので、3emu/gの飽和磁化でも垂直状態にある25mmの磁性モノフィラメントよりも検知が容易であり、より小さい長さのものが検出できるからである。
【0019】
また、さらに、前記変曲点付近では、磁性体の含有量が少し変化するだけで金属検知機で検知されるモノフィラメントの長さが大きく変わるので、金属検知機で検知できるモノフィラメントの長さを小さくしなければならない場合には、飽和磁化を7emu/g以上とすれば、磁性体の含有量にバラツキが生じ飽和磁化の値に多少の変化があっても、検出長さは殆ど変化せず、折れたブラシ毛を安定的に検知することができ、異物混入事故を防ぐことができることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明は、食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性モノフィラメントであって、
高分子モノフィラメントと、該高分子モノフィラメント中に含有される磁性体とを含み、
前記高分子モノフィラメントを構成する高分子物質が、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂であり、高分子モノフィラメントがポリブチレンテレフタレートで構成されるときの飽和磁化が8emu/g以上、高分子モノフィラメントがナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂で構成されるときの飽和磁化が7emu/g以上となるよう、前記高分子モノフィラメント中に前記磁性体を分散させてなることを特徴とする磁性モノフィラメントである。
【0021】
また、本発明は、前記磁性モノフィラメントの直径が0.1〜1.0mmであり、引張強度が1.5cN/dtex以上であり、伸度が15〜35%であることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明は前記磁性体がステンレスであり、無機顔料で着色されてなることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性ブラシであって、前記の磁性モノフィラメントと、前記磁性モノフィラメントを植毛する植毛台とを含み、前記磁性モノフィラメントが前記植毛台に固定されてなることを特徴とする磁性ブラシである。
【0025】
また、本発明は、磁性モノフィラメントを植毛する植毛台が熱可塑性樹脂および磁性体を含むことを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明は、食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性ブラシであって、前記の無機顔料で着色された磁性モノフィラメントが、無機顔料および磁性体を含み、前記無機顔料で着色された熱可塑性樹脂の植毛台に植毛されてなることを特徴とする磁性ブラシである。
【0027】
また、本発明は、前記磁性モノフィラメントの製造方法であって、
モノフィラメントを構成する高分子物質と、磁性体粉末とを、流動状態で混合する混合工程と、
前記混合工程で混合された高分子物質と磁性体粉末の混合物を紡糸する紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られたモノフィラメントを延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする磁性モノフィラメントの製造方法である。
本発明は、前記混合工程において、前記高分子物質と前記磁性体粉末に加えて、さらに無機顔料を流動状態で混合することを特徴とする。
本発明は、前記混合工程において、高分子物質と、磁性体粉末とを、流動状態で混合するに先立って、高分子物質と磁性体粉末とを、予め混合することを特徴とする。
本発明は、前記混合工程において、前記高分子物質と前記磁性体粉末に加えて、さらに無機顔料を流動状態で混合することを特徴とする。
さらに、本発明は、前記磁性モノフィラメントの製造方法であって、モノフィラメントを構成する高分子物質と磁性体粉末とを、流動状態で混合する磁性コンパウンド混合工程と、
モノフィラメントを構成する高分子物質と、無機顔料粉末とを、流動状態で混合する着色マスターバッチ混合工程と、
前記磁性コンパウンド混合工程で得られた磁性コンパウンドと、前記着色マスターバッチ製造工程で得られた着色マスターバッチとを、混合しつつ融紡糸する紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られたモノフィラメントを延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする磁性モノフィラメントの製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、磁性モノフィラメントは、食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性モノフィラメントであって、高分子モノフィラメントと、該高分子モノフィラメント中に含有される磁性体とを含み、前記高分子モノフィラメントを構成する高分子物質が、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂であり、高分子モノフィラメントがポリブチレンテレフタレートで構成されるときの飽和磁化が8emu/g以上、高分子モノフィラメントがナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂で構成されるときの飽和磁化が7emu/g以上となるよう、磁性体が該高分子モノフィラメント中に含有されているので、種々の状態で存在するモノフィラメント断片でも金属検知機で検知できる。
【0029】
また、本発明によれば、磁性モノフィラメントの直径が0.1〜1.0mmであり、引張強度が1.5cN/dtex以上であり、伸度が15〜35%であるので、目的に応じた糸径を選択することができるほか、糸径に関わらず優れた弾力性、耐久性および耐薬品性を有し、かつ10〜5mm程度という小さな断片でも金属検知機で検知することができる。
【0030】
また、本発明によれば、モノフィラメントを構成する高分子物質が、ポリブチレンテレフタレート(以下、ポリエステル系樹脂ともいう)またはナイロン6/ナイロン66共重合ポリアミド樹脂(以下、ポリアミド系樹脂ともいう)であり、磁性体がステンレスであり、無機顔料で着色されているので、磁性モノフィラメントとした場合でも、優れた弾力性、耐久性および耐薬品性を有し、磁性体は比較的低含有量で、磁性モノフィラメントとして所望の飽和磁化を達成することができる。
また、金属検知器で検知された磁性モノフィラメント断片がどのラインで混入したかわかり、工場の品質・安全管理面から対策が取りやすくなる。
【0031】
また、本発明によれば、磁性モノフィラメントが植毛された磁性ブラシであるので、該磁性ブラシを包装資材、食品製造機器、食品製造ラインの清掃用ブラシとして使用することができ、万一磁性モノフィラメントが毛抜けや折損して、食品中にモノフィラメント断片が混入した場合でも金属検知機で検知することができ、断片を除去することができる。
【0032】
また、本発明によれば、磁性モノフィラメントを植毛する植毛台が熱可塑性樹脂および磁性体を含み、前記植毛台中に、磁性体が含有されてなるので、フィラメントのみならず、ブラシ保持部分が万一破損して、食品中に混入した場合でも、その断片を金属検知器で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1】実施例1で得られた磁性モノフィラメントの飽和磁化の値と検知されるフィラメントの長さの関係を示したグラフである。
図2】実施例2で得られた磁性モノフィラメントの飽和磁化の値と検知されるフィラメントの長さの関係を示したグラフである。
図3】本発明の磁性モノフィラメントと、植毛台からなる磁性ブラシを示す図である。
図4】無機顔料で着色された本発明の磁性モノフィラメントと、磁性体および無機顔料を含有するハンド部および植毛台からなる磁性ハンドブラシを示す図である。
図5】本発明の磁性モノフィラメントと、磁性体を含有する植毛台と、長柄部とからなる長柄付き磁性ブラシを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参考にして本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明の磁性モノフィラメントは、食品の収容容器、製造ライン、製造機械器具の清掃に使用される磁性モノフィラメント(以下、単に磁性フィラメントという)であって、高分子モノフィラメントと、該モノフィラメント中に含有される磁性体とを含み、前記高分子モノフィラメントを構成する高分子物質が、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂であり、高分子モノフィラメントがポリエステル系樹脂で構成されるときの飽和磁化が8emu/g以上、前記高分子モノフィラメントがポリアミド系樹脂で構成されるときの飽和磁化がemu/g以上となるよう磁性体が分散されてなる磁性モノフィラメントである。
【0035】
本発明において、磁性モノフィラメントの長さというときは、特に断らない限り、すべて垂直方向に直立した磁性モノフィラメントの垂直方向の長さである。
前記のとおり、垂直方向に直立した磁性モノフィラメントは、金属検知機が検知する磁界に影響する面積が小さいが、水平方向で検知される磁性モノフィラメントは同じ飽和磁化であっても、その長さは垂直方向よりも大幅に短い。
【0036】
図1は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いた本発明の磁性モノフィラメント2の飽和磁化の値と検知される磁性モノフィラメント2の長さの関係を示したグラフである。同図から明らかなように金属検知機で検知されるモノフィラメント2繊維の最小長さと飽和磁化の関係は、検知されるモノフィラメントの長さ5.5mm、飽和磁化は8emu/gの所に変曲点があり、飽和磁化が8emu/gでは、5.5mmという非常に小さなモノフィラメント断片でも検出できることを示している。
【0037】
飽和磁化が8emu/g以上では、検知される最小長さに極端な変化が生じており、飽和磁化が8emu/g以上になると金属検知機で検知されるモノフィラメント繊維の長さが5.5mmからさらに短くなることがわかる。
【0038】
モノフィラメント中に磁性体粉末を含有させた場合には、該モノフィラメントが示す飽和磁化の値は、含有される磁性体粉末濃度に依存し、ほぼ比例関係にあるので、上記の変曲点の存在はまったく予想外のことといえる。
【0039】
図2は、ナイロン6とナイロン66共重合ポリアミド樹脂を用いた本発明の磁性モノフィラメントの飽和磁化の値と検知されるフィラメントの長さの関係を示したグラフである。同図から明らかなように前記ナイロンの場合には、飽和磁化が7emu/g近辺に検知できるモノフィラメント長さの変曲点があり、飽和磁化が7emu/gの場合には6.5mmという非常に小さなモノフィラメント断片でも検出できることを示している。
【0040】
言い換えれば、磁性体の含有量が少し変化するだけで金属検知機での検知される長さが大きく変わる為、20mm以上の折れた磁性モノフィラメントを検知する設定をしたとしても、磁性体の含有量にバラツキが生じ飽和磁化の値が5emu/gから4emu/gになれば検知できる長さが25mmとなることを示している。
【0041】
したがって、飽和磁化の値が7emu/g以上とすれば、飽和磁化の値に少し変化があっても検出長さは殆ど変化しないので、もし非常に小さい磁性モノフィラメント断片を確実に検知するためには、飽和磁化が7emu/g以上とすべきことになる。
【0042】
図1および図2において、変曲点における飽和磁化がわずかに異なっているのは、モノフィラメントに用いたポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の比重の差によるものである。
【0043】
磁性モノフィラメントの有する飽和磁化は高分子モノフィラメントがポリエステル系樹脂で構成されるときが8emu/g以上、前記高分子モノフィラメントがポリアミド系樹脂で構成されるときが7emu/g以上である。好ましくは飽和磁化が、7または8〜22emu/gであり、さらに好ましくは飽和磁化が7または8〜15emu/gである
【0044】
飽和磁化が3emu/g未満の場合には、金属検知機によって検知される磁性モノフィラメント断片の長さが大きくなり、20mm未満の断片が検知できないおそれがある。また飽和磁化が40emu/gを越えると、磁性体にもよるが、高分子モノフィラメント中の磁性体含有量が多くなりすぎて、磁性モノフィラメントに紡糸できないか、または紡糸できたとしても、引張強度や耐久性などの点で、ブラシ用モノフィラメントとして十分なものが得られない。
【0045】
図3は、本発明の磁性モノフィラメントと、植毛台とからなる磁性ブラシを示す図である。磁性ブラシ1は、磁性モノフィラメント2と、磁性モノフィラメント2が植毛される植毛台3とから形成される。
【0046】
前記磁性モノフィラメント2の糸径は、直径が0.1〜1.0mmであり、好ましくは0.2〜0.8mmであり、とりわけ好ましくは0.3〜0.8mmである。
【0047】
前記磁性モノフィラメント2における単位長さあたりの飽和磁化は、磁性体の含有量と磁性モノフィラメント2の糸径によっても異なるが、たとえば通常、フィラメント1cmあたり、0.02〜0.13emu、好ましくは0.03〜0.1emuである。
【0048】
また、磁性モノフィラメント2の引張強度は、1.5cN/dtx以上である。
このうち、好ましい強度は1.5〜4.5cN/dtx、とりわけ好ましい強度は1.7〜4.0cN/dtx、最も好ましい強度が1.7〜3.7cN/dtxである。
【0049】
さらに、伸度は15〜35%であり、好ましくは15〜35%、とりわけ好ましくは20〜35%、最も好ましくは20〜30%である。
【0050】
磁性モノフィラメント2の形状は、その断面が円形であってもよく、楕円形であってもよく、さらには四角形、五角形、星型などの多角形であってもよく、目的のブラシおよび清掃対象の装置、器具の清掃に最も適した形状とすることができる。
【0051】
さらに磁性モノフィラメント2は、芯部を磁性モノフィラメントとし、鞘部は磁性体を含まない高分子物質で紡糸した2層糸モノフィラメントであってもよく、さらに、紡糸された磁性体を含むモノフィラメントの表面を水分散性樹脂や溶剤系樹脂で表面被覆することにより物性向上や磁性体の脱落防止を図ったものでもよい。
【0052】
表面被覆する樹脂は磁性モノフィラメント2に使用する熱可塑性樹脂に対し相溶性、接着性のよい樹脂を適宜選定すればよく、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン・アクリル共重合樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、水分散ポリエステル共重合樹脂、アルコール可溶性ポリアミド変性樹脂、シリコン系樹脂、ポリアミド共重合樹脂等が用いられる。これらの樹脂の付着方法は、一旦巻き取った後または巻き取ることなく樹脂溶液に接触させてから乾燥機内で乾燥することによりモノフィラメント表面に樹脂を被覆することができる。
【0053】
本発明の磁性モノフィラメント2は、磁性体が均一に分散するように分散剤が含まれていてもよく、さらには視認性を向上させるための着色剤を含んでいてもよい。
【0054】
本発明において、磁性体を含有させる高分子モノフィラメントは、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる高分子モノフィラメントがあげられ、磁性体を含有させて紡糸した場合に、磁性モノフィラメント2として、前記の各性状を発揮できるものが好ましい。
【0055】
ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂は、紡糸してフィラメントとした場合に、延伸処理などによって、その引張強度が1.5cN/dtx以上となるものが好ましい。このうち、さらに好ましくは強度が1.7〜4.0cN/dtx、とりわけ好ましくは強度が1.7〜3.7cN/dtxのフィラメントとなるものである。
【0056】
また、伸度は15%以上のものが好ましく、このうち、さらに好ましくは伸度が15〜35%、とりわけ好ましくは伸度が20〜35%、最も好ましくは伸度が20〜30%となるものである。
【0059】
本発明で用いられる磁性体としては、前記フィラメント2の紡糸の際に、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂(以下、ポリエステル系樹脂とポリアミド系樹脂を含めて高分子物質という)に分散可能であり、かつ常磁性または強磁性を有するものであれば、用いることができる。
【0060】
かかる磁性体としては、遷移金属磁性体、遷移合金磁性体、金属間化合物磁性体、酸化物磁性体があげられる。
【0061】
また、遷移金属磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属があげられる。遷移金属合金磁性体としてはたとえば、鉄−コバルト、鉄−ニッケル、鉄−ニッケル−コバルト−アルミニウム、マンガン−アルミニウム−カーボン磁石、マルテンサイト系、フェライト系またはオーステナイト・フェライト系のステンレスがあげられる。かかるステンレスとしては、たとえば、SUS403、410、410S,420J1,420J2、440Aなどのマルテンサイト系ステンレス、SUS405、410L、429、430(LX、J1L含む)、434、436L,445J1,445J2,444、447J1、XM27などのフェライト系ステンレス、SUS329J1、329J3Lおよび329J4Lなどのフェライト系ステンレスがあげられる。酸化物磁性体としては、たとえば、γ―酸化鉄、四酸化三鉄、マグヘマイト、バリウム磁石、フェライト磁石があげられる。
【0062】
このうち、酸化鉄が好ましく、酸化鉄のなかでも四酸化三鉄がもっとも好ましい。四酸化三鉄は、古くから黒顔料の一つとして使用されており、耐熱性が高く、酸化物なので酸化して錆びることがなく、紡糸時に分解がなく、水と接触する清掃ブラシであっても錆びないという特徴があり、本発明においても好適に用いられる。
【0063】
また、マルテンサイト系、フェライト系またはオーステナイト・フェライト系のステンレスは灰色色相であり磁性モノフィラメント2を構成する樹脂に分散させた場合、磁性モノフィラメント2の色相は薄い灰色を呈するので、顔料添加による磁性モノフィラメント2の着色が容易になると云う特徴がある。
このため、本発明の磁性モノフィラメント2、該モノフィラメント2が植毛された植毛台3など、磁性ブラシ全体を着色したい場合には、前記ステンレスは特に好適に用いられる。
これら磁性体は、単品で用いることもでき、適宜2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
磁性体は、粉体状で用いるのが好ましく、平均粒径が0.01〜150μm、好ましくは0.01〜50μm、とりわけ好ましくは0.01〜10μmである。
【0065】
磁性体として四酸化三鉄を例にあげると、粒径が0.01〜10μmの範囲のものが好ましい。粒径が5μm以上になると高分子物質に配合した場合、紡糸時の糸切れが多く、工業的に製造が困難となると共に糸の強力が低く、清掃用ブラシ毛とした場合には、洗浄中にブラシ毛が開き、洗浄性が悪くなったり、またブラシ毛が折れやすいという問題が生じる。
【0066】

上記の磁性体は、機械的粉砕方法、ミル粉砕方法、メカニカルアロイイング法などの機械的方法、還元、電気分解などの化学的方法、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法などのアトマイズ法によって、製造することができる。
【0067】
本発明において、磁性体が前記ステンレスであるときには、水アトマイズ法にて粒子化した球状粉末が好ましい。球状粉末の粒子径は低い方が好ましいが、3μm以下の粒子径になると生産効率が悪く非常に高価なものになる。水アトマイズ法にて粒子化した球状粉末は、金属粉末同士の凝集がおこり難く高分子モノフィラメントを構成する樹脂の中に均一分散されるので、平均粒径が3〜10μmであれば本発明の磁性モノフィラメントの直径が0.1〜1.0mmの範囲での紡糸性の低下が無く、強度低下も少ない磁性モノフィラメント2が得られる。
【0068】
本発明の磁性モノフィラメント2は、モノフィラメントを構成する高分子物質と、磁性体粉末とを、流動状態で混合する混合工程と、前記高分子物質と磁性体粉末の混合物を紡糸する紡糸工程と、前記紡糸工程で得られたモノフィラメントを延伸する延伸工程とを順次実施することによって、製造することができる。
【0069】
混合工程では、高分子物質と磁性体とを流動状態で混合する。具体的には、高分子を加熱して溶融させ、これに磁性体粉末を加えて混合し、高分子と磁性体の溶融物とするか、または高分子と磁性体粉末とを混合しつつ加熱して溶融し混合して前記溶融物とすることができる。
また、混合工程では、たとえば、二軸混練押出機等で高分子物質と磁性体を混練成形して高濃度マスターバッチを製造し、紡糸時に磁性体が所定の濃度なるように、高分子物質で希釈する方法や、磁性体を所定濃度に含有させたマスターバッチを製造して紡糸する方法があり、本発明においては、これらの方法を使用することができる。
【0070】
高分子物質と磁性体とを混練する場合には、種々の分散剤を添加すると酸化鉄の分散性が良好になる。またさらに、高分子物質と磁性体との接着性を増すために、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等で表面処理された磁性体を使用することもできる。
【0071】
高分子物質を加熱溶融する場合の温度は、当該高分子物質の重合度や架橋の有無によっても異なるが、高分子物質がたとえばポリブチレンテレフタレートである場合には、たとえば250〜280℃で容易に混合することができる。
【0072】
高分子物質と磁性体の配合比率は、高分子物質と磁性体の組合せによって変動するが、磁性モノフィラメント2として所定の飽和磁化を有するものとなるような比率であればよく、特に限定されないが、高分子物質に対して、5〜33wt%、好ましくは6〜24wt%、さらに好ましくは7〜20wt%、とりわけ好ましくは8〜20wt%である。
【0073】
また、高分子物質がポリエステル樹脂である場合と、ポリアミド樹脂である場合とで、比重の差があるので、これを含めると、高分子物質がポリエステル樹脂である場合には、磁性体の含有量は、5〜33wt%、好ましくは8〜20wt%、さらに好ましくは9〜20wt%、とりわけ好ましくは10〜20wt%である。
【0074】
また、高分子物質がポリアミド樹脂である場合には、磁性体の含有量は、5〜30wt%、好ましくは6〜20wt%、さらに好ましくは7〜20wt%、とりわけ好ましくは8〜20wt%である。
【0075】
高分子モノフィラメントと磁性体との配合例の具体例をあげるとすれば、高分子物質がポリブチレンテレフタレートであり、磁性体が四酸化三鉄である場合には、高分子物質に対して10%の磁性体を配合することによって、飽和磁化が7emu/gの磁性モノフィラメント2(直径0.5mm)とすることができる。
【0076】
また、高分子物質がナイロン6/ナイロン66共重合であり、磁性体が四酸化三鉄である場合には、高分子物質に対して12%の磁性体を配合することによって、飽和磁化が7emu/gの磁性モノフィラメント2(直径0.5mm)とすることができる。
【0077】
さらに、紡糸工程では、高分子物質の紡糸において使用される方法で紡糸することができる。
【0078】
紡糸方法としては、溶融紡糸方法、乾式紡糸方法、湿式紡糸方法、ゲル紡糸方法、液晶紡糸方法などをあげることができる。
【0079】
溶融紡糸するときは、高分子を加熱して溶融させ、これに磁性体粉末を加えて混合し、高分子と磁性体の溶融物とするか、または高分子と磁性体粉末とを混合しつつ加熱して溶融し混合して前記溶融物とする。ついで前記溶融物を口金から押し出して繊維状にし、冷却して固化することにより、本発明の磁性モノフィラメント2を製造することができる。冷却は空冷、液体浴等の方法で行うことができ冷却方法は高分子物質、フィラメント2の太さ、粘度等の設定によって選択すればよい。また、二軸混練押出機で高分子物質と磁性体を混合して、そのまま押出し紡糸する方法があり、この方法によって紡糸してもよい。
【0080】
紡糸速度20〜100m/分で引き取られたモノフィラメントは一旦巻き取った後または巻き取ることなく連続して延伸される。延伸工程では、紡糸された磁性モノフィラメント2を延伸処理して、磁性モノフィラメント2として適切な強度等を有するモノフィラメントとなるように延伸処理を行う。延伸は一段または多段で行うことができ、さらに糸状に延伸に必要な熱を与える方法としてはロール加熱、スチーム可決、熱液加熱、乾熱加熱等の公知の方法を用いればよい。高分子物質がポリブチレンテレフタレートの場合には、2.0〜5.0倍の条件で延伸するのが好ましい。
【0081】
本発明の磁性モノフィラメント2には、前記高分子以外にも、たとえば平滑剤、着色剤などの成分を添加することができる。
【0082】
平滑剤としては、たとえばステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウムなどがあげられる。
【0083】
さらに着色剤としては、たとえば、この技術分野において常用ないし汎用される無機顔料などがあげられる。
本発明者らが得た知見によれば、着色剤として有機顔料を用いた場合には、延伸時に延伸斑が生じコブ糸となり、均一なフィラメントが得られないので、ブラシ毛としては不適である。
【0084】
無機顔料としては、たとえば、白色無機顔料、赤色無機顔料、褐色無機顔料、黄色無機顔料、黒色無機顔料、紫色無機顔料、緑色無機顔料、青色無機顔料があげられ、白色無機顔料としては、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、酸化亜鉛、モリブデンホワイト、リトポン、バライト、炭酸カルシウム、鉛白、タルクなどがあげられる。
赤色無機顔料としては、酸化鉄(ベンガラ)、モリブデン赤、チタン酸鉄、銀朱、カドミウムレッド、アンチモン赤などがあげられる。褐色無機顔料としては、γ−酸化鉄などがあげられる。黄色無機顔料としては、黄酸化鉄、黄土、チタニウムイエロー、カドミウムイエロー、ストロンチウムイエロー、ジンククロメートなどがあげられる。
【0085】
黒色無機顔料としては、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、チタンブラックなどがあげられる。紫色無機顔料としては、マンゴバイオレット、コバルトバイオレットなどがあげられる。緑色無機顔料としては、エメラルド・グリーン、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルトなどがあげられる。青色無機顔料としては、群青、紺青などがあげられる。
【0086】
さらに、上記の無機顔料に加え、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料も使用することができる。
これら無機顔料は、1種を単独で用いてもよく、または所望の色調となるよう2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
これらの無機顔料は、磁性体を含有した高分子物質チップを溶融紡糸する際に、顔料マスターバッチチップを適量ブレンドして溶融押出紡糸することによって、着色した磁性モノフィラメント2を得ることができる。
【0088】
また無機系顔料マスターバッチに用いる樹脂は、磁性モノフィラメント2に用いられる樹脂と同じ樹脂で顔料を分散させたマスターバッチを用いることが好ましく、例えば、磁性モノフィラメント2を構成する高分子物質がポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートの場合はマスターバッチに使用する樹脂はポリエステル系樹脂での顔料マスターバッチが相溶性の面から好ましく、紡糸時の糸切れや顔料の着色斑等が発生し難いと云う特徴を有する。
【0089】
本発明の磁性モノフィラメント2を用いた磁性ブラシ1としては、前記磁性モノフィラメント2を植毛台3に植毛したブラシがあげられる。ここで、植毛とは、磁性モノフィラメント2を植毛台3に接着、固着、融着、植え込みなど、磁性モノフィラメント2が容易に脱離しないように保持することを云い、その手段、方法、順序は問わない。
【0090】
具体的には、たとえば、樹脂、金属、皮革、ゴム、木など孔をあけることができる植毛台3に、本発明の磁性モノフィラメント2を植え込んだ植え込みブラシがあげられ、さらには、植え込みロールブラシ、植え込み板ブラシであってもよい。これらブラシは、シャフトとフィラメント2と植毛台3とが一体化しているシャフト方式のロールブラシであってもよく、あるいはフィラメント2の植毛台3が二つに分割される分割方式のロールブラシであってもよい。
【0091】
これら磁性ブラシにおける磁性モノフィラメント2の配列は、使用目的の製造機器などに適したものであれば、通常この技術分野において汎用される配列、たとえば並列植え、千鳥植え、千鳥植えよりも磁性モノフィラメント2間の間隔を詰めた千鳥崩し植え、スパイラル植え、格子植えなどが採用できる。
【0092】
本発明において、植毛台が熱可塑性樹脂である場合には、植毛台、ハンドブラシの場合はハンド部材、にも磁性体を含有させて、磁性モノフィラメントおよび植毛台やハンド部材が共に磁性を有するブラシとすることもできる。
【0093】
磁性モノフィラメント2を、植毛台3に植毛させるには、たとえば、磁性モノフィラメント2の長さを目的に合わせて切断し、所望の形状に射出成型した熱可塑性樹脂に植毛台3の植毛部穴に磁性モノフィラメント2を植毛、金属フックでモノフィラメント2を樹脂に固定し、モノフィラメント2植毛台3に植え込まれた磁性モノフィラメント2の高さや外径を調整することによって、製造することができる。
【0094】
図4は、無機顔料で着色された本発明の磁性モノフィラメントと、磁性体および無機顔料を含有するハンド部および植毛台からなる磁性ハンドブラシを示す図である。図4において、磁性ブラシ11は、植毛台31とハンド部材4とからなり、植毛台31とハンド部材4は、磁性体と無機顔料を含有する熱可塑性樹脂で構成され、ブラシ全体が無機顔料で着色された磁性ハンドブラシである。
【0095】
かかる熱可塑性樹脂としては射出成型可能な樹脂で有ればよく、成型性に優れ衝撃強度に優れた熱可塑性樹脂が好ましい。さらに磁性モノフィラメント2を植毛した場合、熱可塑性樹脂を熱溶融させて磁性モノフィラメント2と接着させることが好ましいので、磁性モノフィラメント2を構成する高分子物質の融点に近い樹脂を適宜選択して使用することがさらに好ましい。
【0096】
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン系樹脂等があげられる。
【0097】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンがあげられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート 、ポリトリメチレンテレフタレート、 ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合ポリエステルなどがあげられる。
【0098】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6 、ナイロン11、 ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、共重合ナイロンなどがあげられる。
【0099】
フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などがあげられる。
【0100】
上記以外にも、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル樹脂であってもよい。
【0101】
ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアクリル、ABS、ポリスチレンも熱可塑性樹脂であり、好適に使用することができる。さらには、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)も使用することができる。
【0102】
これらの熱可塑性樹脂は、混合して用いてもよく、さらにはそれぞれの高分子を構成するモノマーを共重合したものであってもよく、あるいはポリマーアロイとしたものであっても、熱可塑性を失わないものであれば、好適に使用することができる。
【0103】
かかるものとしては、たとえば、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体(商品名:ビニヨンHH,同:クレハロン)、アクリロニトリルー塩化ビニル共重合体があげられる。
【0104】
本発明においては、ポリエスエル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂が好ましく、とりわけ、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。
【0105】
また、これらの樹脂にはさらに前記無機顔料を添加して、ブラシ毛と同色にブラシの保持部材の色を変えることができ、これにより、食品工場等ではライン毎に色の違う洗浄ブラシを使い分けて使用することができ、万一ブラシ毛が抜けたり、折れたり、ハンドル部が破損して食品に混入した場合は、金属探知機検査により検知され、混入した折れたブラシ毛や破損したハンドル部の色相によりどのラインで混入したが可能になり、食品工場での、異物混入対策が取りやすくなる。
【0106】
また、熱可塑性樹脂植毛台31に磁性モノフィラメント21を植毛した磁性ブラシ11は、次のようにして製造することができる。
【0107】
本発明の磁性モノフィラメント21は、紡糸後ブラシ毛とする為にブリッスル加工を行う。まずモノフィラメント2は原糸の巻き癖を直す為に、原糸を走行させながら連続的に乾熱セット機でセットされた後、綛巻き機にて四角形の綛にトウ状の繊維束に巻かれる。所定のトウ状の繊維束になったら、四角形の2端面を切断して綛巻き機から下ろして、トウ状の繊維束を竿に吊り下げて櫛を用い磁性モノフィラメント2を真っ直ぐなトウ状の繊維束になるように櫛通しを行う。次に、このトウ状の繊維束を紙巻き機にて糊付き紙で繊維束外周部をスパイラル状に巻いて1本の紙巻き繊維束(ハンク)を作成する。ハンクを乾燥後ブラシ毛の長さに応じた長さにハンクを裁断してブラシ製造工程へと送られる。
【0108】
ブラシ製造工程では、自動植毛機にてカットハンクを植毛台31に植毛する。植毛は通常ブラシ製造で行われている公知の方法を用いれば良く、ブラシ毛と植毛台31を構成する樹脂との接合は、例えば、平線と呼ばれる抜け止め部材(真鍮片、ステンレス片、硬質樹脂片など)で毛束を2つ折りにして植毛する平線植毛法、毛束の一端を熱などの手段によって溶融結合し、この結合部を金型内に臨ませた状態でヘッド部樹脂を充填して固定するインモールド植毛法、毛束の一端とヘッド部を熱などの手段で溶融結合する熱溶融植毛法などを利用すればよい。
【0109】
図5は、本発明の磁性モノフィラメント22と、磁性体を含有する植毛台32と、長柄部5とからなる長柄付き磁性ブラシ13を示す図である。
この長柄付き磁性ブラシ13の磁性モノフィラメント22と植毛台32は、前記と同じ素材および方法によって製造することができ、長柄部分5は高分子物質、木、金属などで構成される。植毛台32と長柄部分5とは固定されてもよく、または回動自在に接合されていてもよい。
植毛台32と長柄部分5との固定、または接合は、この技術分野において汎用される部材と方法を採用することによって行うことができる。
【0110】
本発明の磁性モノフィラメント、植毛台などには、さらに防かび成分や抗菌成分を樹脂中に練り込むことによって、防かび効果、抗菌効果を有する磁性モノフィラメント、磁性ブラシとすることもできる。
これらの防かび成分や抗菌成分は、前記樹脂に練り込む際の加熱によって、著しく効果が低下するものを除き、食品分野において使用されるものをいずれも好適に使用することもできる。
さらには、使用中に散逸しない態様で用いるときは、前記樹脂への練り込み以外に、磁性モノフィラメントや植毛台、さらには磁性ブラシに防かび成分や抗菌成分を塗布してもよい。
かかる防かび成分や抗菌成分としては、たとえば、無機系抗菌・防かび剤として、銀、亜鉛、銅金属を無機物坦持体に坦持した抗菌剤やリン酸塩系のリン酸カルシウム銀、ケイ酸塩系の銀ゼオライト、シリカゲル銀、粘土鉱物、溶融性ガラス、酸化物光触媒系のチタン、有機系抗菌・防かび剤として、チオシアン系、イソチアゾリン系、アルデヒド系、ニトリル系、ハロゲン系やイミダゾール系、チアゾール系、ピリジン系、ニトリル系などの防かび・抗菌成分があげられる。
これらの防かび成分や抗菌成分は、その成分の効果を奏する用量となるように、樹脂に練り込むか、または塗布することにより、所定の効果を奏する。
【0111】
本発明の磁性モノフィラメント2および磁性ブラシ1は、この食品分野において常用される市販の金属検知機と組合せて用いることができ、金属探知機としてはたとえば、周波数800Hzで高周波コイルとの距離が75mm高さで鉄球を通過させた時、0.4mmФ球を検出できる感度を有する金属探知機であることが好ましい。
【0112】
かかる金属探知機としては、たとえば金属検出機ID3G−3000(株式会社イシダ製)があげられる。
【0113】
<金属検知機による検知評価法>
金属検出機「ID3G−3000−PB」(株式会社イシダ製)を用い、スポンジに本発明の磁性ブラシ用モノフィラメントを垂直に刺してベルトから30mmの高さで、ベルトスピード38m/分の速度で、金属検知器を通過させた時に、検知されるモノフィラメントの最小長さを計測した。
【0114】
<飽和磁化の測定方法>
測定用試料:実験例で製作したモノフィラメントを用いた。
長さ約5mmに切断したモノフィラメント8本を横に並べテープで固定させたものを測定用試料とした。
【0115】
測定法:振動試料型磁力計(VSM)「BHV−50H」(理研電子株式会社製)を用い、外部磁場(最大磁場5KOe)を掃引して印加することで、試料の磁化曲線を室温で測定した。外部磁場の印加方向は繊維と垂直方向で測定した。得られた飽和磁化を繊維1g当たりの値に規格化した。
【0116】
実施例1
磁性粉体として平均粒子径0.27μmの四酸化三鉄「KN−320」(商品名、戸田工業株式会社製)とポリブチレンテレフタレート樹脂「NOVADURAN5020」(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)を用い二軸押出機で四酸化三鉄を50wt%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンドを製造した。
【0117】
このコンパウンドを用い、表1に示す四酸化三鉄含有wt%になるように、コンパウンドと同じポリブチレンテレフタレート樹脂チップとブレンド希釈して、110℃で12時間の真空乾燥した後、エクストルーダー型紡糸装置のホッパーに投入して溶融紡糸を行った。押出機のポリマーを260℃で溶融し、250℃に加熱した紡糸パックによって紡出した。紡糸口金は口径2.4mmの紡糸孔から押出して、紡出糸を60℃の温水中で冷却して未延伸糸を得た。この未延伸糸を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で3.5倍に第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.5倍となるように、150℃の乾熱槽を通過させながら第2段延伸し、さらに180℃の乾熱槽を通過させて0.9倍の弛緩熱処理を行い、直径0.5mmのモノフィラメントを得た。
【0118】
得られたモノフィラメントについて、飽和磁化と金属検知機での検知されるモノフィラメントの最小長さを測定した。
【0119】
[結果]
結果は、表1および図1に示すとおりである。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例2
磁性粉体として平均粒子径0.27μmの四酸化三鉄KN−320とナイロン6とナイロン66共重合ポリアミド樹脂「NOVAMID2030A8」(商品名、DSM社製))を用い二軸押出機で四酸化三鉄を50wt%含有するポリアミド樹脂コンパウンドを作成した。
【0122】
このコンパウンドを用い、表2に示す四酸化三鉄含有量になるように、コンパウンドを作成したポリアミド樹脂チップとブレンド希釈して、110℃で12時間の真空乾燥した後、エクストルーダー型紡糸装置を使用して溶融紡糸を行った。押出機のポリマーを250℃で溶融し、250℃に加熱した紡糸パックによって紡出した。紡糸口金は口径2.4mmの紡糸孔から押出して、紡出糸を30℃の温水中で冷却して未伸糸を得た。この未延伸糸を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で3.5倍に第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.7倍となるように、150℃の乾熱槽を通過させながら第2段延伸し、さらに180℃の乾熱槽を通過させて0.9倍の弛緩熱処理を行い、直径0.5mmのモノフィラメントを得た。
【0123】
得られたモノフィラメントの飽和磁化と金属検知機での検知されるモノフィラメントの最小長さを測定した。
【0124】
[結果]
結果は、表2および図2に示すとおりである。
【0125】
【表2】
【0126】
実施例3
モノフィラメント用樹脂として、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂「SORONA」(商品名、デュポン株式会社製)を用い、磁性体として、平均粒子径0.8μmのフェライト粉末「Ni−ZnフェライトKNI−106」(商品名、JFEケミカル株式会社製)を用い二軸押出機でフェライト粉末を20wt%含有するポリトリメチレンテレフタレート樹脂コンパウンドを製造した。このコンパウンド用い、温水温度を40℃とする以外は実施例1と同様に実施することにより、0.5mm径の磁性モノフィラメントを得た。得られた磁性モノフィラメントは強度1.6cN/dtx、伸度20%、飽和磁化が20emu/gであった。
【0127】
実施例4
熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂「ノバテックPPMA3H」(商品名、日本ポリプロ株式会社製)を用い、磁性体として平均粒子径0.27μmの四酸化三鉄「KN−320」を用いて、磁性体を15wt%含有したポリプロピレン樹脂コンパウンド樹脂を製造した。
【0128】
このコンパウンド樹脂を200℃で溶融させ、射出成型機にセットしたハンドブラシの金型に、射出押し出しを行いハンドブラシの形状に成型した。
【0129】
実施例1で製造した四酸化三鉄20wt%含有するパーンに巻き取られた磁性モノフィラメントを、パーン巻の巻き癖を熱セットにより真っ直ぐな糸にする目的で、クリルスタンドに40本パーンを設置してパーンを回転しながらモノフィラメントに撚りが入らない様に解舒しながら、糸に滑り性を付与する目的で第一ロール前に設置された噴霧装置にシリコン油剤としてSM7025EX(東レダウコーニング社製)の1wt%水分散液を1kg/cm圧力で磁性モノフィラメントに噴霧しながら、第一ロール速度26m/min、第二ロール速度25m/minの速度で第一ロールと第二ロールの間に設置した熱風熱処理機を150℃でセットを行いながら、四角形の綛巻き機にて連続的にトウ状の繊維束(以下ハンクと云う)径が50mmになるまで巻きあげた。
【0130】
四角形の綛枠に巻き取られたハンクの対角2ヵ所を切断して、綛枠からハンクを取り出し竿に吊り下げ、櫛によりハンクの櫛通しを繰り返し行いモノフィラメントが真っ直ぐなハンクを得た。このハンクを半分に切断して、ハンクの外に紙巻き機にて糊付き紙で繊維束等の外周部をスパイラル状に巻いて一本の紙巻き繊維束(ハンク)を作成した。乾燥したハンクをハンクカッターにて長さ10cmにカットして、前記成型された植毛台に自動植毛機を用い金属平線と同時に押し込んでブラシ毛を固定し、磁性モノフィラメントを有する食品工場向け洗浄用ブラシを製造した。
【0131】
実施例5
磁性粉体として平均粒子径4μmのSUS410L「PF−5F」(商品名、エプソンアトミックス株式会社製)とポリブチレンテレフタレート樹脂「NOVADURAN5020」(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)を用い二軸押出機でPF−5Fを25wt%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンドを製造した。
【0132】
このコンパウンドを110℃で10時間の真空乾燥した後、エクストルーダー型紡糸装置を使用して溶融紡糸を行った。押出機のポリマーを240℃で溶融し、240℃に加熱した紡糸パックによって紡出した。紡糸口金は口径2.4mm、口数が20個の丸型の口金および400メッシュフィルターを設置して紡糸孔から吐出量が13.2g/分・口金で押出し、紡出糸をエアーギャップ55mmで65℃の温水中で冷却して未延伸糸を得た。この未延伸糸を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で3.7倍に第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.3倍となるように、120℃の乾熱槽を通過させながら第2段延伸し、さらに150℃の乾熱槽を通過させて0.9倍の弛緩熱処理を行い、直径0.5mmの磁性モノフィラメントを得た。
【0133】
得られた磁性モノフィラメントは、強度1.8cN/dtx、伸度19%、飽和磁化17emu/gであった。
【0134】
実施例6
実施例5で得られたPF−5Fを25%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンド樹脂チップ90部に、PBT樹脂にウルトラマリン40%配合した無機青色顔料マスターバッチチップ「PBTM(F)27821」(商品名、大日精化工業株式会社製)を10部添加して、実施例5と同様に紡糸して直径0.5mmの青色に着色された磁性モノフィラメントを得た。
【0135】
得られた青色に着色された磁性モノフィラメント2繊維は、強度1.7cN/dtx、伸度18%、飽和磁化19emu/gであった。
【0136】
また同様にPF−5Fを25%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンド樹脂チップ97部に、PBT樹脂にベンガラ(酸化第二鉄)60%を配合した無機赤色顔料マスターバッチチップ「PBTM(F)27820」(商品名、大日精化工業株式会社製)を3部添加して、実施例5と同様に紡糸して直径0.5mmの赤色に着色された磁性モノフィラメントを得た。
【0137】
得られた赤色に着色された磁性モノフィラメントは、強度1.6cN/dtx、伸度18.9%、飽和磁化18.5emu/gであった。
【0138】
実施例7
熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂「ノバテックPPMA3H」(商品名、日本ポリプロ株式会社製)を用い、磁性体として平均粒子径4μmのSUS410L「PF−5F」(商品名、エプソンアトミックス株式会社製)を添加率が25wt%となるように添加し、さらに青色無機顔料としてウルトラマリン「MILORI BLUE N650」(商品名、大日精化工業株式会社製)を2.0wt%添加し混練して青色に着色したポリプロピレン樹脂コンパウンド樹脂を製造した。
【0139】
また、同様にポリプロピレン樹脂「ノバテックPPMA3H」(商品名、日本ポリプロ株式会社製)を用い、磁性体として平均粒子径4μmのSUS410L「PF−5F」(商品名、エプソンアトミックス株式会社製)を添加率が25wt%となるように添加し、さらに赤色無機顔料としてベンガラ(酸化第二鉄)「MR−120」(商品名、森下弁柄工業株式会社製)を1.2wt%添加し混練青色に着色したポリプロピレン樹脂コンパウンドを得た。得られた二つの着色コンパウンドの飽和磁化は18emu/gであった。
【0140】
これら二つのコンパウンド樹脂をそれぞれ200℃の温度で溶融させ、射出成型機にセットしたハンドブラシの金型に、射出押し出しを行いハンドブラシの形状に成型して、赤色および青色にそれぞれ着色したハンドブラシ植毛用成型品を得た。
【0141】
実施例6で製造したSUS410L粉末を25wt%含有する青色と赤色磁性モノフィラメントを、それぞれ別に170℃の乾熱セット機でセットを行いながら、綛巻き機にてトウ状の繊維束に巻きあげた。このトウ状繊維束を竿に吊り下げ、櫛により真っ直ぐなトウ状繊維束を得た。このトウ状繊維束を紙巻き機にて糊付き紙で繊維束等の外周部をスパイラル状に巻いて一本の紙巻き繊維束(ハンク)を作成した。乾燥したハンクをハンクカッターにて長さ10cmにカットして、前記青色、赤色に着色成型された植毛台をベルギーBOUCHERIE製自動植毛機にセットして、自動的に植毛台に植毛穴を開け、ステンレス片で毛束を2つ折りにして植毛する平線植毛法にてブラシ毛を押しこんで固定し植毛した、植毛後ロータリーカッターにて毛先を揃え、赤色および青色の2種類の磁性モノフィラメントの食品工場向け洗浄用ブラシを製造した。
【0142】
実施例8
洗浄用ブラシをモデル耐久試験機にセットし、刷掃回数増加によるブラシ毛の開き度合いとブラシ毛の折れが生じるか評価した。
試験方法は洗浄ブラシヘッド部を金属製の波板上に位置してブラシ毛先端が波板表面に接するように波板と平行に対向配置し、この状態で洗浄ブラシヘッド部と波板の全体を水に浸漬し、洗浄ブラシヘッド部を波板の波と直交する向きに往復運動する。試験条件は、洗浄ブラシヘッド部に500gの荷重を掛けた状態で、往復速度150回/分、刷掃ストローク40mmで2万回まで刷掃して、洗浄ブラシの毛開き状態とブラシ毛の折れが無いかの試験を行った。
【0143】
その結果、実施例7で得られた、赤色着色および青色着色の食品工場向け洗浄用ブラシともブラシ毛の折れは無く、ブラシ毛の開きも殆ど無く、洗浄ブラシとして優れた耐久性を有することを確認した。
【0144】
比較例1
実施例5で得られたPF−5Fを25%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンド樹脂チップ95部に、PBT樹脂にフタロシアニンブル20%配合した有機青色顔料マスターバッチチップ「PBTM(F)27885」(商品名、大日精化工業株式会社製)を5部添加して、実施例5と同様に紡糸して直径0.5mmの青色に着色された磁性モノフィラメントを得た。得られた青色に着色された磁性モノフィラメントは、糸の長さ方向に繊径が均一で無く凹凸のあるモノフィラメントであり、強度0.8cN/dtx、伸度10%であり、ブラシ毛として使用するには強度が低く、タフネスも低く、毛折れし易い磁性モノフィラメントであった。
【0145】
また同様にPF−5Fを25%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンド樹脂チップ90部にPBT樹脂に、アンスラキノン系イエロー30%を配合した有機黄色顔料マスターバッチチップ「PBTM(F)27860」(商品名、大日精化工業株式会社製)を5部添加して、実施例5と同様に紡糸して直径0.5mmの黄色に着色された磁性モノフィラメント2を得た。得られた黄色に着色された磁性モノフィラメントは、青色に着色されたモノフィラメントと同様に糸の長さ方向に繊径が均一で無く凹凸のあるモノフィラメントであり、強度1.0cN/dtx、伸度8%であり、ブラシ毛として使用するには強度が低く、タフネスも低く、毛折れし易い磁性モノフィラメントであった。
【0146】
比較例2
実施例5で使用したPF−5Fを25wt%含有するポリブチレンテレフタレート樹脂コンパウンドを用い、115℃で8時間の真空乾燥した後、エクストルーダー型紡糸装置を使用して溶融紡糸を行った。押出機のポリマーを240℃温度で溶融し、240℃に加熱した紡糸パックによって紡出した。紡糸口金は口径2.4mm、口数が20個の丸型の口金および400メッシュフィルターを設置して紡糸孔から吐出量が9.2g/分・口金で押出し、紡出糸をエアーギャップ55mmで60℃の温水中で冷却して未延伸糸を得た。
【0147】
この未延伸糸を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で2.5倍に第1段延伸し、次いで全延伸倍率が3.0倍となるように、120℃の乾熱槽を通過させながら第2段延伸し、さらに150℃の乾熱槽を通過させて0.8倍の弛緩熱処理を行い、直径0.5mmの磁性モノフィラメントを得た。
【0148】
得られた磁性モノフィラメントは、強度1.0cN/dtx、伸度38.2%、飽和磁化18emu/gであった。
【0149】
得られた磁性モノフィラメントを実施例7と同様にして洗浄ブラシを製造した。
この洗浄ブラシを実施例8と同様にしてモデル耐久試験を行った結果、ブラシ毛の折れは生じなかったが、ブラシ毛の開きが大きく、洗浄性に劣る洗浄ブラシであった。
【0150】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0151】
1、11、13 本発明の磁性モノフィラメントを用いた磁性ブラシ
2、21、22 本発明の磁性モノフィラメント
3、31、32 植毛台
4 ハンド部
5 長柄
図1
図2
図3
図4
図5