(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0012]本明細書と図面中での参照数字の繰り返し使用は、本発明の要素の同一もしくは類似の特徴を示すように意図されている。
【0013】
[0013]本発明は、一般には、環状アセタールの製造方法に関する。特に有利なのは、環状アセタールを、あらゆる異なったタイプのホルムアルデヒド源から製造できるという点である。本明細書で使用している「ホルムアルデヒド源」は、ホルムアルデヒド、およびホルムアルデヒドから形成されるオリゴマーもしくはポリマーを含む。したがってホルムアルデヒド源は、パラホルムアルデヒド、オキシメチレンホモポリマー、およびオキシメチレンコポリマーを含んでよい。
【0014】
[0014]ホルムアルデヒド源と触媒とを非プロトン性化合物の存在下にて接触させて環状アセタールを形成させる。非プロトン性化合物は、転化率を大幅に高めるような仕方で、環状アセタールの生成を容易にする。特に有利なのは、本発明の方法に従って生成される環状アセタールは、非プロトン性化合物から簡単に分離することができるという点である。例えば、1つの実施態様では、環状アセタールは、単純な蒸留プロセスによって非プロトン性化合物から分離もしくは単離することができる。なぜなら、非プロトン性化合物は、環状アセタールよりはるかに高い沸点を有することがあるからである。
【0015】
[0015]本発明によれば、ホルムアルデヒドの環状アセタールへの転化時に使用される触媒は不均一触媒を含む。例えば、触媒は、非プロトン性化合物とホルムアルデヒド源に対して不混和性であってよい。1つの実施態様では、触媒は固体触媒を含む。本明細書で使用している「固体触媒」は、少なくとも1種の固体成分を含む触媒である。例えば、触媒は、固体担体に吸着されるか、さもなければ固定される酸を含んでよい。触媒はさらに、非プロトン性化合物に対して不混和性であるか又は少なくともある程度不混和性である液相中に存在してよい。
【0016】
[0016]不均一触媒を使用すると、種々のメリットと便益が得られる。例えば、不均一触媒を使用すると、触媒を、非プロトン性化合物、ホルムアルデヒド源、及び/又は生成される環状アセタールから簡単に分離することができる。さらに、1つの実施態様では、反応器中に残留する固体触媒が使用され、この固体触媒が環状アセタールを生成させるのに使用される。このように、触媒は、プロセスの進行時に何度も繰り返して使用することができる。
【0017】
[0017]さらに、固体触媒は、触媒の環境(例えば容器壁)に対する腐食性がより低い傾向がある。
【0018】
[0018]本発明の方法により、ホルムアルデヒド源を1種以上の環状アセタールに、極めて速い反応時間(例えば数分以内)にて転化させることができる。さらに、かなり高い転化率を達成することができる。例えば、1つの実施態様では、ホルムアルデヒド源の大部分を1種以上の環状アセタールに転化させることができる。
【0019】
[0019]1つの実施態様では、非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源と接触させるときに液体である。他方、ホルムアルデヒド源は、ガス状ホルムアルデヒド、液体、または固体を含んでよい。ホルムアルデヒド源は、非プロトン性化合物中に溶解してもよいし、あるいは非プロトン性化合物によって吸収させて均一相を形成させてもよい。1つの実施態様では、非プロトン性化合物と触媒が、液体反応混合物または液体媒体を構成してよい。
【0020】
[0020]ホルムアルデヒド源は、触媒の存在下で反応する(転化する)。
【0021】
[0021]本発明の意味の範囲内での環状アセタールは、ホルムアルデヒドから誘導される環状アセタールに関する。代表的な環状アセタールは下記の式
【0023】
(式中、aは1〜3の範囲の整数である)で示される。
【0024】
[0022]本発明の方法によって製造される環状アセタールは、トリオキサン(a=1)及び/又はテトラオキサン(a=2)であるのが好ましい。通常は、トリオキサンとテトラオキサンが、本発明の方法によって形成される環状アセタールの主要部分(少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%)を形成する。
【0025】
[0023]トリオキサン対テトラオキサンの重量比は、使用される不均一触媒に応じて変わる。トリオキサン対テトラオキサンの重量比は、一般には約3:1〜約40:1の範囲であり、好ましくは約4:1〜約20:1の範囲である。
【0026】
[0024]本発明の方法は、ホルムアルデヒド源を環状アセタールに転化させるための不均一触媒の存在下で行われる。好適な触媒は、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化を促進するあらゆる成分である。この不均一触媒は、ホルムアルデヒド源を環状アセタールに(好ましくはトリオキサン及び/又はテトラオキサンに)転化(反応)させるための触媒である。
【0027】
[0025]通常は、本発明の方法に対してカチオン性触媒を使用することができる。カチオン性触媒は、固体触媒であっても、不混和性の液体触媒であってもよい。代表的な液体不混和性触媒は液体酸性イオン交換樹脂である。「固体触媒」とは、該触媒が、反応条件下で少なくともある程度は、好ましくは完全に固体形態をとっている、ということを意味している。本発明の方法に対して使用できる代表的な固体触媒は、固体担体上に固定された酸性イオン交換物質、強酸性イオン交換物質、ルイス酸、及び/又はブレンステッド酸であり、ここで該担体は、SiO
2等の無機物質あるいは有機ポリマー等の有機物質であってよい。
【0028】
[0026]固体担体に固定することができる好ましい触媒は、ブレンステッド酸とルイス酸からなる群から選ばれる。触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸等のトリフルオロアルカンスルホン酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、およびこれらの誘導体(例えば、無水物、エステル、または反応条件下で対応する酸を生成する他の全ての誘導体)からなる群から選択することができる。三フッ化ホウ素や五フッ化ヒ素等のルイス酸も使用することができる。タングステンヘテロポリ酸(例えばタングストホスフェート)等のヘテロポリ酸も使用することができる。上記した全ての個々の触媒の混合物も使用することができる。
【0029】
[0027]1つの実施態様では、不均一触媒は、無機溶融塩中に溶解したルイス酸化学種やブレンステッド酸化学種を含んでよい。溶融塩は、200℃未満〔例えば約100℃未満(例えば約30℃未満)〕の融点を有してよい。溶融塩を上記固体担体上に不動化または固定することができる。固体担体は、例えばポリマーや固体酸化物であってよい。有機溶融塩の例としてはイオン性液体がある。例えば、イオン性液体は、1-n-アルキル-3-メチルイミダゾリウムトリフラートを含んでよい。他の例は、塩化1-n-アルキル-3-メチルイミダゾリウムである。
【0030】
[0028]1つの実施態様では、触媒中に存在する酸性化合物は、水中にて18℃の温度で測定したときに、0未満〔例えば約−1未満(例えば約−2未満)〕のpK
aを有してよい。pK
aの数値は、酸の強さを表わしており、水溶液中の酸に対する解離定数に関する。
【0031】
[0029]本発明に従って使用できる不均一触媒の例としては、下記のようなものがある:
(1)通常の担体物質(例えば、シリカ、カーボン、シリカ-アルミナ組合せ物、またはアルミナ)上に担持させることができる、酸性金属酸化物組合せ物で代表される固体触媒。これらの金属酸化物組合せ物は、それ自体で使用することもできるし、あるいは無機酸もしくは有機酸をドーピングして使用することもできる。この種の触媒の好適な例は、非晶質シリカ-アルミナや酸性クレー(例えば、スメクタイト、無機もしくは有機の酸処理クレー、柱状クレー、または通常はプロトン型のゼオライト)、金属酸化物(例えば、約1:1のモル組合せのZrO
2-TiO
2)、および硫酸化金属酸化物(例えば硫酸化ZrO
2)である;
(2)幾つかのタイプのカチオン交換樹脂を酸触媒として使用して反応を行うことができる。最も一般的には、このような樹脂は、SO
3H基を芳香族基上にグラフトするように官能化された、スチレン、エチルビニルベンゼン、およびジビニルベンゼンのコポリマーを含む。これらの酸性樹脂は、種々の物理的構造形態にて(例えば、ゲル形態にて、マクロ網状構造形態にて、あるいはシリカ、カーボン、もしくはカーボンナノチューブ等の担体物質上に担持された形態にて)使用することができる。他のタイプの樹脂としては、カルボン酸基もしくはスルホン酸基を、またはカルボン酸基とスルホン酸基の両方を有するペルフッ化樹脂がある。このような樹脂の公知の例は、NAFION(商標)とAMBERLYST樹脂である。フッ化樹脂は、それ自体で使用することもできるし、あるいはシリカ、カーボン、または金属酸化物及び/又はシリカの高度分散網目中に捕捉されたカーボンナノチューブ等の不活性物質上に担持させることもできる;
(3)シリカ、シリカ−アルミナ組合せ物、アルミナ、ゼオライト、シリカ、活性炭、砂、及び/又はシリカゲル等の、通常は孤立電子対を有する不均一固体を、メタスルホン酸やp-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸触媒のための担体として、あるいはルイス酸部位を有する化合物(例えばSbF
5)のための担体として使用して、相互作用を起こさせ、強いブレンステッド酸性をもたらすことができる。ゼオライト、シリカ、メソポーラスシリカ、またはポリマー(例えばポリシロキサン)等の不均一固体を、ブレンステッド酸基もしくはその前駆体による化学グラフトによって官能化して、スルホン酸及び/又はカルボン酸等の酸性基もしくはその前駆体を組み込むことができる。官能化は、例えばシリカのSiOH基とクロロスルホン酸との反応による固体上への直接グラフト;あるいは、例えばパーフルオロアルキルシラン誘導体であってよい有機スペーサーによって固体に結びつけることができる;等の、当業界に公知の種々の方法にて導入することができる。ブレンステッド酸官能化シリカはさらに、中性またはイオン性のテンプレーティング法(その後に、チオールから対応するスルホン酸への酸化を行う)を使用して、Si(OR)
4と例えば3-メルカプトプロピル-トリ-メトキシシランとの共縮合によるゾル-ゲルプロセス(例えばチオール官能化シリカをもたらす)によって作製することもできる。官能化固体は、そのままの形態(すなわち粉末形態)でも、ゼオライト膜の形態(または、膜中の他のポリマーとの混合物等の他の多くの形態)でも、固体押出物の形態でも、あるいは例えば構造的無機担体(コージェライトのモノリス)のコーティングの形態でも使用することができる;および
(4)最も一般的には、式H
xPM
yO
zを有する不均一ヘテロポリ酸。式中、Pは中心原子(一般にはケイ素またリン)を表わす。周辺原子が中心原子を、一般には対称様式にて取り囲んでいる。最も一般的な周辺元素Mは、通常はMoまたはWであるが、V、Nb、およびTaも、当該目的に対して好適である。指数xyzは、公知の様式にて分子中の原子比を定めており、型通りの仕方で決定することができる。これらのポリ酸は、よく知られているように、多くの結晶形にて見出されるが、不均一化学種に対する最も一般的な結晶形はケギン構造と呼ばれている。このようなヘテロポリ酸は、熱安定性が高く、非腐食性である。不均一ヘテロポリ酸は、シリカゲル、珪藻土、カーボン、カーボンナノチューブ、およびイオン交換樹脂から選ばれる担体上に使用するのが好ましい。好ましい不均一ヘテロポリ酸は、ここでは式H
3PM
12O
40(式中、Mは、W及び/又はMoを表わす)で示すことができる。好ましいPM部分の例は、PW
12、PMo
12、PW
12/SiO
2、PW
12/炭素、およびSiW
12で示すことができる。
【0032】
[0030]前述したように、ホルムアルデヒド源と非プロトン性化合物および触媒とを接触させることによって、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド源が環状アセタールに転化される。ホルムアルデヒド源は、例えばガス状ホルムアルデヒドを含んでよい。ガス状ホルムアルデヒドは、約5重量%未満(例えば約2重量%未満、例えば約1重量%未満、例えば約0.5重量%未満)の含水量を有してよい。他の実施態様では、ホルムアルデヒド源は、5重量%未満(例えば2重量%未満、例えば約1重量%未満)の含水量を有することのあるパラホルムアルデヒドを含んでよい。
【0033】
[0031]さらに他の実施態様では、ホルムアルデヒド源は、ポリオキシメチレンホモポリマーまたはポリオキシメチレンコポリマーを含んでよい。ポリオキシメチレンポリマーは、ほぼ約2000ダルトン超の分子量を有してよい。ホルムアルデヒドを他の成分と組み合わせて収容する反応器に、ガスストリームまたは液体ストリームを送り込むことができる。例えば、ホルムアルデヒドは、トリオキサン、またはポリオキシメチレンポリマーを生成させるのに使用される他のモノマーと一緒になって存在してよい。さらに他の実施態様では、ホルムアルデヒド源はホルムアルデヒド水溶液を含んでよい。ホルムアルデヒド水溶液は、例えば、水を約30%超の量にて(例えば約50%超の量にて、例えば約40%〜約70%の量にて)含有してよい。
【0034】
[0032]本明細書で使用している「非プロトン性化合物」は、解離しうる実質的な量の水素原子を含有しない化合物である。1つの実施態様では、非プロトン性化合物は、反応条件下で液体である。したがって、非プロトン性化合物は、約180℃以下の、好ましくは約150℃以下の、さらに好ましくは約120℃以下の、特に約60℃以下の融点を有してよい。
【0035】
[0033]実際的な理由から、約50℃未満の、約40℃未満の、約30℃未満の、そして約20℃未満の優先順位(融点が低いほど好ましい)の融点を有する非プロトン性化合物を使用するのが有利である。特に、約25℃または約30℃にて液体である非プロトン性化合物が好適である。なぜなら、これらの非プロトン性化合物は、製造プラント内のポンプによって簡単に移送できるからである。
【0036】
[0034]非プロトン性化合物はさらに、1バールでの測定にて約120℃以上の、好ましくは約140℃以上の、さらに好ましくは約160℃以上の、そして特に約180℃以上の沸点を有してよい。さらなる実施態様では、非プロトン性化合物の沸点は、約200℃以上、好ましくは約230℃以上、さらに好ましくは約240℃以上、さらに好ましくは約250℃以上、そして特に約260℃以上または270℃以上である。沸点が高いほど、本発明の方法によって形成される環状アセタール(特にトリオキサン及び/又はテトラオキサン)は、より良好に蒸留によって分離することができる。したがって、本発明の特に好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物の沸点は、形成される環状アセタールの沸点より少なくとも約20℃高く、特にトリオキサン及び/又はテトラオキサンの沸点より少なくとも約20℃高い。
【0037】
[0035]さらに、環状アセタールとの共沸混合物を形成しない、特にトリオキサンとの共沸混合物を形成しない非プロトン性化合物が好ましい。
【0038】
[0036]本発明の好ましい実施態様によれば、反応器40中の反応混合物または液体媒体は、反応混合物の総重量を基準として少なくとも約20重量%の、好ましくは少なくとも約40重量%の、さらに好ましくは少なくとも約60重量%の、最も好ましくは少なくとも約80重量%の、そして特に少なくとも約90重量%の非プロトン性化合物を含む。液体媒体または反応混合物または液体混合物(A)は、1種以上の非プロトン性化合物を含んでよい。
【0039】
[0037]好ましい実施態様では、液体媒体は、実質的に非プロトン性化合物からなる。「実質的に〜からなる」とは、液体媒体が、少なくとも約95重量%の、好ましくは少なくとも約98重量%の、さらに好ましくは少なくとも約99重量%の、特に少なくとも約99.5重量%の、そしてとりわけ少なくとも約99.9重量%の非プロトン性化合物を含む、ということを意味する。本発明のさらなる実施態様では、液体媒体は非プロトン性化合物である(すなわち、液体媒体が非プロトン性化合物からなる)。
【0040】
[0038]ホルムアルデヒド源を少なくともある程度は溶解するか又は吸収する液体非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源の所望する環状アセタールへの転化に関して優れた結果をもたらす、ということが見出された。
【0041】
[0039]したがって、反応条件下でホルムアルデヒド源を少なくともある程度は溶解するか又は吸収する非プロトン性化合物が好ましい。好ましいのは、パラホルムアルデヒド(98重量%のホルムアルデヒド、2重量%の水)[Pn=ホルムアルデヒドのモル数/水のモル数=(98/30)/(2/18)=約29と表示することもできる]を反応温度で、溶液の総重量を基準として少なくとも約0.1重量%の量にて溶解する非プロトン性化合物である。
【0042】
[0040]本発明の方法において使用される非プロトン性化合物は、極性非プロトン性化合物(特に双極性化合物)であってよい。極性非プロトン性溶媒は、ホルムアルデヒド源を溶解するのにより一層適している。未置換の炭化水素(例えば、シクロヘキサン等の環状炭化水素、あるいはヘキサン、オクタン、またはデカン等の非環式炭化水素)、未置換の不飽和炭化水素、または未置換の芳香族化合物は、あまり好適ではない。したがって、好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物は、未置換の炭化水素、未置換の不飽和炭化水素、または未置換の芳香族化合物ではない。反応混合物はさらに、未置換の炭化水素、及び/又は未置換の不飽和炭化水素、及び/又は未置換の芳香族化合物を、好ましくは約50重量%未満の、さらに好ましくは約25重量%未満の、さらに好ましくは約10重量%未満の、そして特に約5重量%未満(例えば、約1重量%未満または約0重量%)の量にて含む。
【0043】
[0041]ハロゲン含有化合物は、環境面から、そしてホルムアルデヒド源を溶解する能力が限られていることからあまり好ましくない。さらに、ハロゲン化脂肪族化合物は、プラントの容器や配管の腐食を引き起こすことがあり、形成された環状アセタールをハロゲン化化合物から分離するのが困難である。
【0044】
[0042]1つの実施態様によれば、非プロトン性化合物はハロゲン非含有である。さらなる好ましい実施態様では、反応混合物は、約50重量%未満の、さらに好ましくは約25重量%未満の、さらに好ましくは10重量%未満の、さらに好ましくは5重量%未満の、そして特に1重量%未満または50ppm未満のハロゲン化化合物を含む。
【0045】
[0043]同様に、(液体)二酸化イオウを使用すると、環状アセタールの単離が困難となる。したがって、非プロトン性化合物は二酸化イオウを含有しないのが好ましい。さらなる好ましい実施態様では、反応混合物は、約50重量%未満の、さらに好ましくは約25重量%未満の、さらに好ましくは約10重量%未満の、さらに好ましくは約5重量%未満の、そして特に1重量%未満または0重量%の二酸化イオウを含む。
【0046】
[0044]極性非プロトン性化合物が特に好ましい。本発明の好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物は、25℃での測定にて約15超の、好ましくは約16超または約17超の、さらに好ましくは約20超の、さらに好ましくは約25超の、そして特に約30超の相対静的誘電率を有し、あるいは非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合、相対誘電率は、非プロトン性化合物の融点にて測定される。
【0047】
[0045]相対静的誘電率(ε
γ)は、静電場に対して下記のように測定することができる。すなわち、最初に、試験コンデンサのキャパシタンスC
0を、プレート間を減圧にして測定する。次いで、同じコンデンサとプレート間距離を使用して、プレート間の非プロトン性化合物が有するキャパシタンスC
xを測定する。次に、相対誘電率を、ε
γ=C
x/C
0から算出することができる。
【0048】
[0046]本発明の意味の範囲内にて、相対誘電率は25℃にて測定されるか、あるいは非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合は、相対誘電率は、非プロトン性化合物の融点にて測定される。
【0049】
[0047]本発明のさらなる態様によれば、非プロトン性化合物は双極性非プロトン性化合物である。
【0050】
[0048]本発明の意味の範囲内での非プロトン性化合物は、一般には、25℃での測定にて15超の、好ましくは25超または30超の上記相対誘電率を有する双極性の非プロトン性化合物であり、あるいは非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合は、相対誘電率は、非プロトン性化合物のその融点にて測定される。
【0051】
[0049]本発明のプロセスは、ホルムアルデヒド源を、液体媒体または反応混合物または液体混合物(A)中に完全に溶解もしくは吸収させる、という仕方で行うことができる。
【0052】
[0050]したがって1つの実施態様では、ホルムアルデヒド源と非プロトン性化合物は、反応条件下で均一相を形成する。好適な非プロトン性化合物は、有機スルホキシド、有機スルホン、有機スルホン酸エステル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0053】
[0051]好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物はイオウ含有有機化合物から選ばれる。
【0054】
[0052]さらに、非プロトン性化合物は、環式もしくは脂環式有機スルホキシド、脂環式もしくは環式スルホン、およびこれらの混合物からなる群から得ればれるのが好ましい。次の式(I)
【0056】
(式中、nは1〜6の整数であって、好ましくは2または3であり;環炭素原子が、好ましくは分岐鎖または非分岐鎖であってよいC
1-C
8アルキルから選ばれる1つ以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい)で示される非プロトン性化合物によって極めて良好な結果を得ることができる。式(I)の好ましい化合物は、スルホラン、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、エチルスルホラン、ジエチルスルホラン、プロピルスルホラン、ジプロピルスルホラン、ブチルスルホラン、ジブチルスルホラン、ペンチルスルホラン、ジペンチルスルホラン、ヘキシルスルホラン、およびオクチルスルホランである。
【0057】
[0053]最も好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物はスルホラン(テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド)である。
【0058】
[0054]スルホランは、ホルムアルデヒド源に対する優れた溶媒であり、酸性条件下で安定であり、触媒を失活させず、トリオキサンとの共沸混合物を形成しない。さらに、スルホランは、反応条件下で不活性な溶媒である。
【0059】
[0055]特に明記しない限り、「反応混合物」は、ホルムアルデヒド源を反応させて環状アセタールを得るのに使用される混合物を表わす。反応混合物の個々の成分の濃度と量は、反応の開始時における濃度と量である。言い換えると、反応混合物は、その出発物質の量(すなわち初期成分の量)によって規定される。
【0060】
[0056]同様に、「液体混合物(A)」に対して規定される量は、反応の開始時(すなわち反応の前)における成分の量を表わす。
【0061】
[0057]ホルムアルデヒド源が反応して環状アセタールになる。したがって、ホルムアルデヒド源の濃度は、環状アセタールの濃度が増大すると同時に減少する。
【0062】
[0058]反応の開始時において、本発明の典型的な反応混合物は、スルホラン中に少なくともある程度は、好ましくは完全に溶解するか又は吸収されるホルムアルデヒド源を含む。
【0063】
[0059]さらに、本発明の特に好ましい実施態様は、ホルムアルデヒド源を触媒の存在下で反応させることを含み、このとき反応がスルホラン中で行われる、という環状アセタールの製造方法、あるいは触媒とスルホランの存在下にてホルムアルデヒド源から環状アセタールを製造する方法である。
【0064】
[0060]さらなる好ましい非プロトン性化合物は式(II)
【0066】
(式中、R
1とR
2は独立して、分岐鎖または非分岐鎖であってよいC
1-C
8アルキルから選ばれ、好ましくはR
1とR
2は独立して、メチルまたはエチルである)で示される。特に好ましいのはジメチルスルホンである。
【0067】
[0061]さらなる好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物は、式(III)
【0069】
(式中、nは1〜6の整数であって、好ましくは2または3であり;環炭素原子が、好ましくは分岐鎖または非分岐鎖であってよいC
1-C
8アルキルから選ばれる1つ以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい)で示される。
【0070】
[0062]好適な非プロトン性化合物はさらに、式(IV)
【0072】
で示され、
[0063]このときR
3とR
4は独立して、分岐鎖または非分岐鎖であってよいC
1-C
8アルキルから選ばれ、好ましくはR
3とR
4は独立して、メチルまたはエチルである。
【0073】
[0064]特に好ましいのはジメチルスルホキシドである。
【0074】
[0065]好適な非プロトン性化合物は脂肪族ジニトリル(好ましくはアジポニトリル)から選ぶことができる。
【0075】
[0066]本発明のさらなる態様では、2種以上の非プロトン性化合物の混合物が使用される。非プロトン性化合物の混合物を使用して、非プロトン性媒体の融点を下げることができる。好ましい実施態様では、非プロトン性化合物は、スルホランとジメチルスルホキシドとの混合物を含むか、又は該混合物からなる。
【0076】
[0067]非プロトン性化合物は、触媒を実質的には失活させないのが有利である。反応条件下にて、非プロトン性化合物は、本発明のプロセスにおいて使用される触媒を実質的には失活させないのが好ましい。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはN-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性溶媒は塩基性が強すぎ、したがって触媒を失活させることがあるため、あまり好適ではない。本発明の好ましい実施態様によれば、液体反応混合物はアミドを実質的に含有せず、アクリル酸アミドや環状アミドを実質的に含有しないのが好ましい。「実質的に含有しない」とは、アミドが、液体反応混合物の総重量を基準として約5重量%未満の、好ましくは約2重量%未満の、さらに好ましくは0.5重量%未満の、特に約0.01重量%未満の、そしてとりわけ0.001重量%未満または約0重量%の量にて存在してよいということを意味している。
【0077】
[0068]ニトロ基含有化合物は、望ましくない副生物をもたらすことがあるか、あるいはさらにはホルムアルデヒド源に対する溶解性が不十分の場合がある。
【0078】
[0069]したがって、非プロトン性化合物は、ニトロ基及び/又は窒素原子を含まないのが好ましい。さらに、本発明の好ましい実施態様によれば、非プロトン性化合物は非芳香族の非プロトン性化合物である。特に、非プロトン性化合物はニトロベンゼンや芳香族ニトロ化合物ではない。さらに、非プロトン性化合物はエーテルを含まないのが好ましい。
【0079】
[0070]本発明の意味の範囲内では、非プロトン性化合物は、反応条件下において、使用されるブレンステッド酸触媒の約95%未満、好ましくは約50%未満、さらに好ましくは約10%未満が非プロトン性化合物をプロトン化するとしても触媒を失活させない。ルイス酸触媒が使用される場合、非プロトン性化合物は、反応条件下において、ルイス酸触媒の約90%未満、好ましくは約50%未満、さらに好ましくは約10%未満が非プロトン性化合物との錯体を形成するとしても触媒を失活させない。
【0080】
[0071]プロトン化と錯体形成の程度は、
1H-NMRや
13C-NMR等のNMR分光法によって決定することができる。プロトン化と錯体形成の程度は、25℃にて、好ましくはd
6-DMSO中で測定される。
【0081】
[0072]触媒の失活は、下記の方法でも決定することができる。
【0082】
[0073]市販のパラホルムアルデヒド(95重量%)10gを、ガス状ホルムアルデヒドが逃げ出さないような仕方で、パラホルムアルデヒドを溶解するに足る温度にて100gのスルホラン中に溶解する。得られる透明溶液を90℃に保持し、0.1重量%のトリフリン酸を加える。トリオキサンの形成速度を測定する(トリオキサンの濃度を時間の関数として測定することによって)。
【0083】
[0074]10gのスルホランを、試験しようとする非プロトン性化合物10gで置き換えること以外は同じ実験を繰り返す。トリオキサン形成速度が、最初の実験のときの速度と比較してまだ約1%超、好ましくは約5%超、さらに好ましくは約10%超であれば、当該非プロトン性化合物は触媒を失活させない(たとえ触媒の活性を低下させることがあるとしても)、と結論づけられる。
【0084】
[0075]非プロトン性化合物は、触媒の失活を防ぐために塩基性が強すぎてはならない。他方、非プロトン性化合物は、反応条件下にてホルムアルデヒド源と化学的に反応しない(すなわち不活性の非プロトン性化合物である)のが好ましい。
【0085】
[0076]好ましくは、非プロトン性化合物は、反応条件下にてホルムアルデヒド源または本発明のプロセスによって得られる環状アセタールと化学的に反応してはならない。水やアルコールのような化合物は、ホルムアルデヒドと反応するので好適ではない。本発明の意味の範囲内にて、非プロトン性化合物は、下記の試験基準に適合するときはホルムアルデヒド源と化学的に反応しない。
【0086】
[0077]市販のパラホルムアルデヒド(95重量%)5gを、0.1重量%のトリフルオロメタンスルホン酸を含有する100gの非プロトン性化合物に加え、ガス状ホルムアルデヒドが逃げ出さないよう密閉容器中で撹拌しながら120℃にて1時間加熱する。約1重量%未満の、好ましくは約0.5重量%未満の、さらに好ましくは約0.1重量%未満の、そして最も好ましくは約0.01重量%未満の非プロトン性化合物が化学的に反応したとしても、該非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源と反応していないと見なされる。非プロトン性化合物がこの基準に適合すれば、該非プロトン性化合物を不活性であると見なされる。
【0087】
[0078]さらに、非プロトン性化合物は、酸性反応条件下で実質的に安定でなければならない。したがって、脂肪族エーテルや脂肪族アセタールは、非プロトン性化合物としてはあまり好適ではない。非プロトン性化合物は、下記の試験基準に適合すれば、本発明の意味の範囲内にて酸性条件下で安定であると見なされる。
【0088】
[0079]0.5重量%のトリフルオロメタンスルホン酸を含有する、試験しようとする非プロトン性化合物100gを120℃で1時間加熱する。約0.5重量%未満の、好ましくは約0.05重量%未満の、さらに好ましくは約0.01重量%未満の、そして最も好ましくは約0.001重量%未満の非プロトン性化合物が化学的に反応したとしても、該非プロトン性化合物は、酸性条件下にて安定であると見なされる。
【0089】
[0080]さらに、本発明の方法を使用して、ホルムアルデヒドから誘導される環状アセタールの比率を変えることができる。したがってホルムアルデヒド源はさらに、トリオキサン、テトラオキサン、およびホルムアルデヒドから誘導される環状オリゴマーからなる群から選ばれる環状アセタールを含んでよい。
【0090】
[0081]本発明の反応混合物は、ホルムアルデヒド源を、反応混合物の総重量を基準として好ましくは約0.1〜60重量%または約1〜30重量%未満、さらに好ましくは約5〜15重量%、さらに好ましくは約7〜13重量%、最も好ましくは約8〜12重量%、そして特に約30〜60重量%含む。
【0091】
[0082]ホルムアルデヒド源のホルムアルデヒド/水の重量比が、4超、好ましくは10超、そして最も好ましくは20超であるときに、転化率に関して特に良好な結果が得られるということが見出された。
【0092】
[0083]反応は、一般には約0℃超の、好ましくは約30℃〜約170℃の、さらに好ましくは約40℃〜約140℃の、さらに好ましくは約40℃〜約120℃の、そして最も好ましくは約50℃〜約110℃の温度で行われる。
【0093】
[0084]反応進行時の圧力は、一般には約10ミリバール〜約20バール(例えば約0.5バール〜約10バール、例えば約0.5バール〜約2バール)である。
【0094】
[0085]本発明の方法のさらなる利点は、環状アセタールを反応混合物から簡単に分離することができるという点である。環状アセタール(特にトリオキサン)は、反応混合物から蒸留によって高純度品質にて分離することができる。特に、環状アセタールの沸点より約20℃高い沸点を有する非プロトン性化合物(例えばスルホラン)が使用される場合、形成される環状アセタールは容易に蒸留することができる。スルホランが非プロトン性化合物として使用される場合、形成されるトリオキサンは、スルホランとトリオキサンとの共沸混合物を形成することなく蒸留することができる。本発明の方法は、バッチ方式でも、あるいは連続プロセスとしても行うことができる。
【0095】
[0086]好ましい実施態様では、本発明の方法は連続プロセスとして行われ、このとき触媒を含む液体媒体にホルムアルデヒド源を連続的に供給し、環状アセタール(例えばトリオキサン)を蒸留等の分離法によって連続的に分離(単離)する。
【0096】
[0087]本発明の方法は、ホルムアルデヒド源の所望の環状アセタールへの転化に対し、極めて高い転化率をもたらす。
【0097】
[0088]好ましい実施態様によれば、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの最終転化率は、初期ホルムアルデヒド源を基準として10%超である。
【0098】
[0089]最終転化率は、液体系中における、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化率を表わす。最終転化率は、液体系において達成される最大転化率に相当する。
【0099】
[0090]ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの最終転化率は、反応の終了時における反応混合物中の環状アセタールの量(反応混合物の総重量を基準として重量%にて表示)を、反応の開始時(t=0)におけるホルムアルデヒド源の量(反応混合物の総重量を基準として重量%にて表示)で除することによって算出することができる。
【0100】
[0091]例えば、ホルムアルデヒド源のトリオキサンへの最終転化率は次のように算出することができる:
[0092]最終転化率=(反応の終了時における、重量%で表示される反応混合物中のトリオキサンの量)/(t=0における、重量%で表示される反応混合物中のホルムアルデヒド源の量[反応混合物中のホルムアルデヒド源の初期量])
[0093]本発明の方法のさらなる好ましい実施態様によれば、ホルムアルデヒド源の環状アセタール(好ましくはトリオキサン及び/又はテトラオキサン)への最終転化率は、12%超、好ましくは14%超、さらに好ましくは16%超、さらに好ましくは20%超、特に30%超、とりわけ50%超(例えば80%超または90%超)である。
【0101】
[0094]本発明に従って環状アセタールを製造する方法は、連続的に行うこともできるし、あるいはバッチ方式で(不連続的に)行うこともできる。
図1を参照すると、本発明に従って環状アセタールを製造するための連続プロセスの1つの実施態様が示されている。
図1に示すプロセスは、無水のホルムアルデヒドガスをトリオキサン等の環状アセタールに転化させるのに特によく適している。しかしながら、理解しておかねばならないことは、
図1のプロセスは、上記ホルムアルデヒド源のいずれを処理するのにも使用できるという点である。
【0102】
[0095]
図1を参照すると、該プロセスは、ホルムアルデヒド源を第1の固定床反応器12に送るための入口ストリーム10を含む。1つの実施態様では、入口10は、ガス状ホルムアルデヒドまたはガス状ホルムアルデヒド/パラホルムアルデヒド流体ストリームを反応器12に送るためのものである。該プロセスはさらに、入口ストリームのほかに、非プロトン性化合物を、ホルムアルデヒド源と組み合わせて反応器12に送るための非プロトン性化合物ストリーム14を含む。反応器に送られる非プロトン性化合物は、例えば液体スルホランを含んでよい。1つの実施態様では、例えば、液体非プロトン性化合物を、加熱されていない〔すなわち、約50℃未満(例えば約40℃未満、例えば約15℃〜約25℃)の温度である〕反応器に送る。
【0103】
[0096]1つの実施態様では、固定床反応器12が固体触媒を収容してよい。触媒床は、不活性物質(例えば、固体酸化物や固体酸化物の混合物)の上、下、または間に配置することができる。不活性物質は、気体/液体ストリームのラジカル分布を改良し、触媒の損失を防ぐことがある。しかしながら、不活性物質の使用は任意である。
【0104】
[0097]1つの実施態様では、固定床反応器12は、連続的な液体トリクルベッド反応器として操作される。例えば、気体と液体の速度は、トリクルフローレジームまたはパルスレジームが達成されるように選定することができる。空塔液体速度は、約5m/時〜約20m/時(例えば約15m/時〜約100m/時)であってよい。反応器入口での液体-気体質量比は、約2kg/kg〜約30kg/kg(例えば約5kg/kg〜約10kg/kg)であってよい。
【0105】
[0098]反応器12内の温度は、約30℃〜約200℃(例えば約80℃〜約120℃)であってよい。
【0106】
[0099]反応器12内の圧力は、一般には約0.15バール〜約5バール(絶対)(例えば約1バール〜約2バール)であってよい。
【0107】
[00100]固定床反応器12内にて、ホルムアルデヒド源が環状アセタールに転化される。気体/液体ストリーム15が生成され、これが気体/液体フラッシュドラム18に送られる。フラッシュドラム18内にて気体-液体の分離が行われる。フラッシュドラムのほかに、該プロセスはさらに、反応器内に統合気体-液体沈静化ゾーン(an integrated gas-liquid calming zone)を含んでよい。
【0108】
[00101]フラッシュドラム18から高温液体出口ストリーム22がつくり出され、熱交換器20に送られる。熱交換器20は、解離熱と反応熱を取り除くことができる。さらに、蒸気/未転化ホルムアルデヒドストリーム26もフラッシュドラム18によってつくり出される。
【0109】
[00102]
図1に示すように、1つの実施態様では、高温液体出口ストリーム22(環状アセタールを含有する)を、第1の液体ストリーム28と第2の液体ストリーム16に分割することができる。第2の液体ストリーム16は、第1の固体床反応器12に戻される再循環の液体生成物ストリームを含む。他方、液体ストリーム28は、第2の固定床反応器24に送られる。さらに、蒸気ストリーム26も第2の固定床反応器24に送られる。第2の固定床反応器24は、第1の固定床反応器12と同様に操作することができる。第2の固定床反応器は、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化率をさらに増大させるよう設計された「ポリッシング(polishing)」反応器である。
図1に示すプロセスにより、例えば、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化率は約50%超(例えば約70%超、例えば約90%超)であってよい。1つの実施態様では、ホルムアルデヒド源の例えば95%超(例えば98%超、例えば99%超)を環状アセタールに転化させることができる。
【0110】
[00103]第2の固定床反応器24は気体/液体出口ストリーム30をもたらし、次いでこのストリームが第2のフラッシュドラム32に送られる。フラッシュドラム32が、オフガスストリーム36と生成物ストリーム34をもたらす。生成物ストリーム34は、環状アセタール(例えばトリオキサン)、非プロトン性化合物、水、およびホルムアルデヒドを含有する。生成物ストリーム34は、環状アセタールを分離して取り出すための蒸留プロセスに送ることができる。非プロトン性化合物も、分離して第1の固定床反応器12に戻すことができる。
【0111】
[00104]
図2を参照すると、本発明の方法の他の実施態様が示されている。
図2に示す実施態様では、該プロセスは、固定床反応器の代わりに懸濁反応系を含む。特に、
図2に示すように、該プロセスは、懸濁固体触媒物質を収容する撹拌タンク反応器50を含む。反応器内の触媒濃度は約75重量%未満(例えば約50重量%未満、例えば約5重量%未満、例えば約3重量%未満)であってよい。懸濁触媒は、反応器の内側の濾過によって、あるいは反応器の外側のクロスフロー濾過によって保持される。ホルムアルデヒド源を、インプット52を介して反応器50に送る。ホルムアルデヒド源(ホルムアルデヒドガスを含んでよい)を、撹拌によって反応器内に分散させる。系に対する撹拌電源入力は、約0.01kW/m
3〜約20kW/m
3(例えば、約0.1kW/m
3〜約3kW/m
3)であってよい。
【0112】
[00105]ホルムアルデヒド源のほかに、非プロトン性化合物も、非プロトン性化合物供給ライン54を介して反応器50に供給する。反応器50により、液体生成物ストリーム58とアウトガスストリーム56がもたらされる。反応器50は、一般には、前述したのと同じ圧力と温度にて作動する。環状アセタールを含有する液体生成物ストリーム58を熱交換器60に送って熱を除去する。1つの実施態様では、液体生成物ストリーム58を、反応器50に戻される再循環ストリーム64と生成物ストリーム62とに分けることができる。生成物ストリーム62は、主として液体非プロトン性化合物と環状アセタール(例えばトリオキサン)を含有する。液体生成物ストリーム62は、トリオキサンを取り除いて分離するための蒸留プロセスに送ることができる。非プロトン性化合物は反応器に戻すことができる。
【0113】
[00106]本発明は、下記の実施例を参照すればより理解が深まるであろう。
【0114】
[00107]本発明に従って製造される環状アセタールは、多くのさまざまな用途にて使用することができる。1つの実施態様では、例えば、本発明によって製造される環状アセタールは、オキシメチレンポリマーを製造するのに使用することができる。
【0115】
[00108]オキシメチレンポリマー製造プロセスは、オキシメチレンホモポリマー及び/又はオキシメチレンコポリマーを製造するための任意の適切なプロセスを含んでよい。ポリマー製造プロセスは、例えば、アニオン重合プロセスまたはカチオン重合プロセスを含んでよい。オキシメチレンポリマーを製造するためのプロセスは、ポリマーが液体中にて沈殿するという不均一プロセスを含んでもよいし、溶融ポリマーを形成するバルク重合プロセス等の均一プロセスを含んでもよいし、あるいは不均一相と均一相の両方を含むポリマープロセスであってもよい。
【0116】
[00109]オキシメチレンポリマーを製造するには、-CH
2-O-単位を形成するモノマーまたは種々のモノマーの混合物を、開始剤の存在下にて反応させる。-CH
2-O-単位を形成するモノマーの例は、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー〔例えば、1,3,5-トリオキサン(トリオキサン)または1,3,5,7-テトラオキソカン〕である。
【0117】
[00110]オキシメチレンポリマーは、一般には非分岐線状ポリマーであり、通常は少なくとも80モル%の、好ましくは少なくとも90モル%の、特に少なくとも95モル%のオキシメチレン単位(-CH
2-O-)を含む。これらと共に、オキシメチレンポリマーは-(CH
2)
x-O-単位(式中、xは2〜25の値を想定してよい)を含有する。必要であれば、少量の分岐剤を使用することができる。使用される分岐剤の例は、官能価が3以上であるアルコールまたはそれらの誘導体(好ましくは、三価もしくは六価アルコールまたはそれらの誘導体)である。好ましい誘導体は、それぞれ2つのOH基をホルムアルデヒドと反応させて得られる化合物であり、他の分岐剤としては、単官能及び/又は多官能グリシジル化合物(例えばグリシジルエーテル)がある。分岐剤の量は、オキシメチレンポリマーの製造のために使用されるモノマーの総量を基準として通常は1重量%以下であり、好ましくは0.3重量%以下である。
【0118】
[00111]オキシメチレンポリマーはさらに、メトキシ末端基と共にヒドロキシアルキレン末端基-O-(CH
2)
x-OHを含有してよく、ここでxは2〜25の値を想定してよい。これらのポリマーは、一般式HO-(CH
2)
x-OH(式中、xは2〜25の値を想定してよい)のジオールの存在下で重合を行うことによって製造することができる。ジオールの存在下で重合すると、連鎖移動を介して、ヒドロキシアルキレン末端基を有するポリマーがもたらされる。反応混合物中のジオールの濃度は、-O-(CH
2)
x-OHの形で存在させようとする末端基のパーセント値に依存し、10重量ppm〜2重量%である。
【0119】
[00112]これらポリマーの分子量(体積メルトインデックスMVRによって表示)は、広い範囲内で調整することができる。ポリマーは通常、式-(CH
2-O-)
n-の繰り返し構造単位を有し、ここでnは平均重合度(数平均)を示しており、好ましくは100〜10000の、特に500〜4000の範囲で変わる。
【0120】
[00113]全末端基の少なくとも80%が、好ましくは少なくとも90%が、特に好ましくは少なくとも95%がアルキルエーテル基(特に、メトキシ基やエトキシ基)であるオキシメチレンポリマーを製造することができる。
【0121】
[00114]オキシメチレンコポリマーを製造するのに使用できるコモノマーは、環状エーテルや環状ホルマールを含む。例えば、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、エチレンオキシド、プロピレン-1,2-オキシド、ブチレン-1,2-オキシド、ブチレン-1,3-オキシド、1,3-ジオキサン、および1,3,6-トリオキソカンなどがある。一般には、上記コモノマーの1種以上は、トリオキサンの重量を基準として約0.1〜20モル%(例えば約0.2〜10モル%)の量にて存在してよい。
【0122】
[00115]得られるホモポリマーとコポリマーの分子量は、ホルムアルデヒドのアセタール(連鎖移動剤)を使用することによって調整することができる。これらはさらに、ポリマーのエーテル化末端基の生成をもたらし、したがってキャッピング剤との別個の反応を省くことができる。使用される連鎖移動剤は、ホルムアルデヒドのモノマーアセタールまたはオリゴマーアセタールである。好ましい連鎖移動剤は式I
R
1-(O-CH
2)
q-O-R
2 (I)
(式中、R
1とR
2は、互いに独立して一価の有機基であって、好ましくはブチル、プロピル、エチル、そして特にメチル等のアルキル基であり;qは1〜50の整数である)の化合物である。
【0123】
[00116]特に好ましい連鎖移動剤はq=1である場合の式Iの化合物であり、特に好ましいのはメチラールである。
【0124】
[00117]連鎖移動剤の使用量は、モノマー(混合物)を基準として最大で5000ppmであり、好ましくは100〜3000ppmである。
【0125】
[00118]本発明は、下記の実施例を参照することでより理解を深めることができる。
【0126】
実施例1
[00119]本実施例では、強酸性のイオン交換樹脂〔Amberlyst15(登録商標)、湿潤形、DOW CHEMICAL社から市販〕を触媒として使用した。使用前に、樹脂をスルホランに対して状態調節した(樹脂の細孔中の水をスルホランで交換)。
【0127】
[00120]約4重量%の含水率を有する市販パラホルムアルデヒド9gを、91gのスルホランに145℃にて撹拌しながら加えた。パラホルムアルデヒドが溶解するにつれて、温度が122℃に低下した。得られた透明溶液を100℃に自然冷却した。100℃にて10gのAmberlyst15(登録商標)を加えた。100℃にて10分後、反応混合物を50℃に自然冷却したが、沈殿物は生じなかった。このことは、パラホルムアルデヒドがトリオキサンに転化したことを示している。反応混合物中のトリオキサンの濃度は、6重量%超であると推定された。
【0128】
[00121]本発明に対するこれらの改良形や変形ならびに他の改良形や変形は、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に詳細に説明されている本発明の要旨を逸脱することなく実施することができる。さらに、理解しておかねばならないことは、種々の実施態様の態様は、全体的にも部分的にも置き換え可能であるという点である。さらに、当業者には言うまでもないことであるが、上記の説明は、単に例示しただけであって、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するようには意図されていない。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1] 液体非プロトン性化合物を含む液体媒体とホルムアルデヒド源とを、固体触媒を含む不均一触媒の存在下で接触させる工程;および
ホルムアルデヒド源を少なくともある程度は環状アセタールに転化させる工程;
を含む環状アセタールの製造方法。
[2] 不均一触媒が酸性イオン交換物質を含む、[1]に記載の製造方法。
[3] 不均一触媒が、固体担体上に固定されたルイス酸またはブレンステッド酸を含む、[1]に記載の製造方法。
[4] 固体担体が無機物質である、[3]に記載の製造方法。
[5] 固体担体が、ポリマーを含む有機物質である、[3]に記載の製造方法。
[6] ホルムアルデヒド源がガス状ホルムアルデヒドを含む、[1]に記載の製造方法。
[7] ホルムアルデヒド源が、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー、ホルムアルデヒド水溶液、またはこれらの混合物を含む、[1]に記載の製造方法。
[8] ホルムアルデヒド源が、ホルムアルデヒドとトリオキサンとの混合物を含む、[1]に記載の製造方法。
[9] 不均一触媒が、固体担体上に固定化された、有機溶融塩中に溶解したルイス酸またはブレンステッド酸を含む、[1]に記載の製造方法。
[10] 製造方法が連続的な製造方法である、[1]に記載の製造方法。
[11] ホルムアルデヒド源が、約30℃〜約200℃の、例えば約80℃〜約120℃の温度、および約0.15バール〜約5バールの、例えば約1バール〜約2バールの圧力にて環状アセタールに転化される、[1]に記載の製造方法。
[12] 不均一触媒が固定床に収容され、ホルムアルデヒド源と液体媒体が固定床を、約5m/時〜約200m/時の、例えば約15m/時〜約100m/時の空塔液体速度で流れる、[1]に記載の製造方法。
[13] ホルムアルデヒド源が、ホルムアルデヒド源と液体媒体とが供給される入口を有する反応器中にて環状アセタールに転化され、反応器が、反応器入口にて、約2kg/kg〜約30kg/kgの、例えば約5kg/kg〜約10kg/kgの液体-気体質量比を有する、[12]に記載の製造方法。
[14] ホルムアルデヒド源が、撹拌タンク反応器中にて環状アセタールに転化され、このとき不均一触媒が該タンク反応器内で懸濁されている、[1]に記載の製造方法。
[15] 非プロトン性化合物が極性非プロトン性化合物である、[1]に記載の製造方法。
[16] 非プロトン性化合物が、1バールでの測定にて140℃以上の、さらに好ましくは160℃以上の、特に180℃以上の沸点を有する、[1]〜[15]の一項以上に記載の製造方法。
[17] 非プロトン性化合物が、25℃での測定にて15超の、好ましくは20超の、さらに好ましくは25超の、そして特に30超の相対静的誘電率を有する、[1]〜[16]の一項以上に記載の製造方法。
[18] ホルムアルデヒド源の30%超、好ましくは50%超、そして特に80%超が、反応進行時に1種以上の環状アセタールに転化される、[1]〜[17]の一項以上に記載の製造方法。
[19] 非プロトン性化合物がイオウ含有有機化合物を含む、[1]〜[18]の一項以上に記載の製造方法。
[20] 非プロトン性化合物が、式(I):
【化6】
(式中、nは1〜6の整数であって、好ましくは2または3であり;環炭素原子が、好ましくは分岐鎖または非分岐鎖であってよいC1-C8アルキルから選ばれる1つ以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい)
で示される、[1]〜[19]の一項以上に記載の製造方法。
[21] 非プロトン性化合物がスルホランである、[1]〜[20]の一項以上に記載の製造方法。
[22] 非プロトン性化合物が、式(II):
【化7】
(式中、R1とR2は独立して、分岐鎖または非分岐鎖であってよいC1-C8アルキルから選ばれ、好ましくはR1とR2は独立して、メチルまたはエチルである)
で示され、好ましくはジメチルスルホンである、[1]〜[21]の一項以上に記載の製造方法。
[23] 非プロトン性化合物が、式(III):
【化8】
(式中、nは1〜6の整数であって、好ましくは2または3であり;環炭素原子が、好ましくは分岐鎖または非分岐鎖であってよいC1-C8アルキルから選ばれる1つ以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい)
で示されるか、あるいは式(IV):
【化9】
(式中、R3とR4は独立して、分岐鎖または非分岐鎖であってよいC1-C8アルキルから選ばれ、好ましくはR3とR4は独立して、メチルまたはエチルである)
で示され、好ましくはジメチルスルホキシドである、[1]〜[22]の一項以上に記載の製造方法。
[24] 蒸留によって環状アセタールを液体媒体から分離する工程をさらに含む、[1]〜[23]の一項以上に記載の製造方法。
[25] 環状アセタールからポリオキシメチレンを製造する工程をさらに含む、[1]〜 [24]の一項以上に記載の製造方法。