(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192691
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】改善された機械的特性、特に、高められた破断伸びを有するポリメタクリルイミドフォーム
(51)【国際特許分類】
C08F 220/06 20060101AFI20170828BHJP
C08F 220/44 20060101ALI20170828BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20170828BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20170828BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20170828BHJP
C08L 33/20 20060101ALI20170828BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F220/44
C08F220/20
C08L33/02
C08L33/06
C08L33/20
C08J9/14CER
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-153327(P2015-153327)
(22)【出願日】2015年8月3日
(62)【分割の表示】特願2013-526376(P2013-526376)の分割
【原出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2015-193855(P2015-193855A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】102010040286.9
(32)【優先日】2010年9月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010040010.6
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(72)【発明者】
【氏名】カイ ベアンハート
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヘンプラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー ガイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス バーテル
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ヤーン
【審査官】
大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5905008(JP,B2)
【文献】
特開昭54−003875(JP,A)
【文献】
特開2010−132860(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/050863(WO,A1)
【文献】
特表2007−513213(JP,A)
【文献】
特開昭63−275647(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0263746(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0204349(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0077442(US,A1)
【文献】
米国特許第04139685(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 −301/00
C08J 9/00 − 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性の架橋されたポリマーの製造方法において、前記ポリマーが(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、および少なくとも250g/molの分子量を有するポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールの(メタ)アクリル酸ジエステルを含んでいる混合物から得られるポリマーであり、前記混合物を塊状重合させて板状にし、場合により熱処理して、引き続き150〜250℃の温度にて発泡させることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
発泡性の架橋されたポリマーの製造方法において、前記ポリマーが(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、および少なくとも250g/molの分子量を有するポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールの(メタ)アクリル酸ジエステルを含んでいる混合物から得られるポリマーであり、前記混合物を塊状重合させて板状にし、熱処理して、引き続き150〜250℃の温度にて発泡させることを特徴とする前記方法。
【請求項3】
請求項2に記載の発泡性の架橋されたポリマーの製造方法において、
(A)(メタ)アクリル酸30〜70質量%、
(メタ)アクリロニトリル30〜60質量%、
さらなるビニル性不飽和モノマー0〜35質量%、
(B)少なくとも250g/molの分子量を有するジオールの(メタ)アクリル酸ジエステル0.01〜15質量%、
(C)発泡剤0.01〜15質量%、
(D)さらなる架橋剤0〜10質量%、
(E)重合開始剤0.01〜2.0質量%、および
(F)通常の添加剤0〜20質量%
からなる混合物を、塊状重合させて板状にすることを特徴とする前記方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の発泡性の架橋されたポリマーの製造方法において、
(A)メタクリル酸30〜70質量%、
メタクリロニトリル30〜60質量%、
さらなるビニル性不飽和モノマー0〜30質量%、
(B)250〜1500g/molの分子量を有するジオールのメタクリル酸ジエステル0.01〜15質量%、
(C)発泡剤0.01〜15質量%、
(D)さらなる架橋剤0.01〜10質量%、
(E)重合開始剤0.01〜2.0質量%および
(F)通常の添加剤0〜20質量%
からなる混合物を、塊状重合させて板状にすることを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に優れた機械的特性、とりわけ特に有利な破断伸びを有するポリメタクリルイミドフォーム材(PMIフォーム)の製造のための組成物に関する。本発明はさらに、その製造方法、前記フォーム材の加工および適用に関する。特に、本発明は、先行技術に比べて亀裂形成の傾向が明らかに低下している新規材料に関する。これは、先行技術に比べてより高い破断伸びであることと同義である。
【背景技術】
【0002】
先行技術
PMIフォーム、例えばEvonik Roehm社のROHACELL(登録商標)は、ストラクチュラルフォームとして複合物に使用され、そのためには繊維、多くの場合炭素繊維もしくはガラス繊維と樹脂とからなるカバー層と一緒に加工される。前記複合物の構成が、多くの場合180℃の温度で行われる一方、その構成部材は−55℃の温度でも使用される。前記カバー層およびPMIフォームの異なる熱膨張率(CTE)によって、冷却時に亀裂がコア部に生じ、これはこのような構成部材でのPMIフォームの使用に対する1つの除外基準である。一般に、航空機産業の相応の試験に合格しない。したがって、加工を行う産業、例えば航空機および宇宙産業において、しかし道路車両または鉄道車両のメーカーでも、改善された破断伸びを有するフォーム材料に高い関心が持たれている。
【0003】
PMIフォームは、すでにずっと以前から公知である。このフォーム材は、ROHACELL(登録商標)という商用名で、特に積層材料の分野で多く使用されている(積層体、複合物、フォーム材複合体、サンドイッチ構造物、サンドイッチ)。積層材料は、外側にあるカバー層と内側にあるコア材とから形成されている成形体である。カバー層として、一軸または多軸の極めて高い張力を受けることができる材料が使用される。その例は、ガラス繊維織物および炭素繊維織物またはアルミニウムプレートでもあり、これらを接着樹脂でコア材に固定する。コア材として、好ましくは、小さい密度、典型的に30kg/m
3〜200kg/m
3の範囲にある材料が使用される。
【0004】
このような等方性のフォームは、あらゆる空間方向への押し付け力を吸収できる。木材では一般の工具および機械で行うことができる容易な機械加工性が有利である。さらに、特定の硬質フォーム、例えばROHACELL(登録商標)は、熱により付形できる。独立気泡の硬質フォームの重要な利点は、総質量を高める樹脂が入り込めないことである。
【0005】
DE2726260では、高い温度でも抜群の機械的特性を有するPMIフォームの製造が記載されている。このフォームの製造は、注型法で行われる、すなわちモノマーと必要な添加剤とが混合され、室中で重合される。このポリマーは、第二工程で加熱により発泡される。しかし、この標準材料は、特に高い破断伸びを示すものではない。
【0006】
アリルメタクリレートで架橋された、機械的に安定したPMIフォームは、EP356714に記載されている。これらの非常に固いフォームも、非常にわずかな破断伸びを示すにすぎない。JP2006045532で開示されている、金属塩でイオン架橋されたPMIフォームにも同じことが当てはまる。
【0007】
近年の発展の特別な分野は、PMIベースの微孔性のフォームである。これらは、例えばEP532023に記載されている。しかし、そこに記載された方法は、種々の深刻な欠点を有している。結果として生じる、架橋剤を含まないフォームは、ただ耐熱保形性が低く、不十分なクリープ挙動を有するにすぎない。
【0008】
架橋剤を含んでいる微孔性のフォーム材は、同じく公知であり、EP1678244に記載されている。これらの微孔性の材料は、5.5%までの破断伸びを有することができる。発泡剤のバリエーションによって、または不溶性の核形成剤の添加によって微孔性を得ることが可能である。より微孔性の材料は、不溶性の核形成剤の使用によって製造できるが、その核形成剤は、高められた費用を製造において要する沈降防止剤の使用を必要とする。しかし、総じて、5.5%よりも大きい破断強度を有する小孔性のフォームは記載されていない。
【0009】
破断伸びが低すぎるという問題の唯一の公知の解決は、ROHACELL(登録商標)FXという製品によってなされる。可塑化効果は、前記製品において添加処理を用いて生じた高められた吸水率によってもたらされた。しかし、高い含水率を有するPMIフォームは、他方では明らかに悪化した機械的、もしくは熱機械的な特性を示す。
【0010】
CN100420702では、アクリロニトリルベースのPMIフォームが記載されている。これらは、確かに一方で優れた破断強度値を示すが、同時に標準材料に比べてわずかに低下した熱機械的特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE2726260
【特許文献2】EP356714
【特許文献3】JP2006045532
【特許文献4】EP532023
【特許文献5】EP1678244
【特許文献6】CN100420702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
課題
したがって、本発明の課題は、特に高い破断強度を有するPMIフォーム材の製造のための配合物を見出すことであった。このフォーム材はさらに、公知のPMIフォームと同様に優れた、またはさらに改善された熱機械的特性を有するものである。
【0013】
特に、6.0%よりも大きい、殊に9.0%よりも大きい破断伸びを有するPMIフォームを提供することが課題であった。
【0014】
さらに、本発明の課題は、減少した亀裂形成を伴うPMIフォームを提供することであった。この減少した亀裂形成は、とりわけ−60℃〜200℃の温度範囲において保証されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
解決
前記課題は、発泡性の架橋されたポリマー、特にPMIフォームの新しい製造方法によって解決され、この方法では、前記ポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、および少なくとも250g/molの分子量を有するジオールの(メタ)アクリル酸ジエステルを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に、本発明による方法における前記ポリマーの製造のための混合物は、少なくとも、(メタ)アクリル酸30〜70質量%、(メタ)アクリロニトリル30〜60質量%、少なくとも250g/molの分子量を有するジオールの(メタ)アクリル酸ジエステル0.01〜15質量%、発泡剤0.01〜15質量%、および重合開始剤0.01〜2.0質量%で構成されている。
【0017】
(メタ)アクリル酸という表現は、メタクリル酸、アクリル酸または両方からなる混合物を表す。(メタ)アクリロニトリルという表現は、メタクリロニトリル、アクリロニトリルまたは両方からなる混合物を表す。相応のことがアルキル(メタ)アクリレートという表現に当てはまる。これは、メタクリル酸、アクリル酸または両方からなる混合物のアルキルエステルを表す。
【0018】
前記(メタ)アクリル酸ジエステルを形成するジオールは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、両末端OH官能性オリゴ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンジオールであり、好ましくはポリエーテルジオールである。この(メタ)アクリル酸ジエステルは、公知の方法、例えば(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換、または(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸ハロゲン化物でのエステル化によってジオールから製造することができる。
【0019】
前記ジオールは、250g/mol、好ましくは400g/molの最小分子量を有している。前記ジオールの最大分子量は5000g/molであり、好ましくは2000g/mol、特に好ましくは1500g/molである。
【0020】
前記ポリエーテルジオールは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチレンオキシドまたはポリテトラヒドロフランであってよい。
【0021】
前記ポリエステルジオールは、好ましくは、二酸およびジオールから製造される短鎖の非晶質のポリエステルジオールであり、開環重合により製造可能のポリエステルジオール、例えばポリラクチドもしくはポリグリコライドであり、またはポリ乳酸である。
【0022】
両末端官能性オリゴ(メタ)アクリレートは、例えば制御ラジカル重合、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)により提供可能である。
【0023】
本発明により使用可能なポリオレフィンは、非結晶性の短鎖のポリオレフィン、例えばアタクチックポリプロピレン、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、EPDM、EPM、またはAPAOS(非晶質ポリ−α−ポリオレフィン)である。
【0024】
最初はわずかな架橋が、発泡工程の間にPMIフォームを安定させ、こうして均質のフォームの製造を可能にする。同時に、前記フォームの耐熱保形性およびクリープ挙動が架橋剤によって改善される。驚くべきことに、長鎖の架橋剤の排他的な、または部分的な使用によって、特に優れた破断伸びを有するPMIフォームがもたらされることが判明した。クリープ挙動(クリープ)は、本発明によればDIN53425、ASTM D621およびD2990にしたがい、180℃、2時間の測定時間、かつ材料の密度に応じた好適な圧力で測定される。
【0025】
先行技術からの方法に比べて、本発明による方法はさらなる利点を提供する:
・密度が30〜300kg/m
3の所望の範囲にある微孔性のPMIフォームが得られる。
・所望の高い破断伸びは、−60℃〜200℃の幅広い温度範囲において保証されている。
・重合のためには、工業的に容易な方法で製造でき、かつさらなる加工ができる、均質で流動性の混合物が使用される。
・破断伸び、耐熱保形性およびクリープ挙動以外のその他の機械的特性は、商業的に入手可能な製品におけるよりも明らかに優れている。
【0026】
発泡剤として、以下の化合物またはそれらからなる混合物を使用してよい:ホルムアミド、ギ酸、尿素、イタコン酸、クエン酸、ジシアンジアミド、水、モノアルキル尿素、ジメチル尿素、5,5’−アゾ−ビス−5−エチル−1,3−ジオキサン、2,2’−アゾ−ビス−イソ酪酸ブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス−イソ酪酸−N−ジエチルアミド、2,2’4,4,4’4’−ヘキサメチル−2,2’−アゾペンタン、2,2’−アゾ−ビス−2−メチルプロパン、ジメチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、アセトンシアノヒドリンカーボネート、オキシイソ酪酸メチルエステルカーボネート、N−メチルウレタン、N−エチルウレタン、N−tert−ブチルウレタン、ウレタン、シュウ酸、マレイン酸、オキシイソ酪酸、マロン酸、シアノホルムアミド、ジメチルマレイン酸、メタンテトラカルボン酸テトラエチルエステル、オキサミド酸−n−ブチルエステル、メタントリカルボン酸トリメチルエステル、メタントリカルボン酸トリエチルエステル、ならびに3〜8個の炭素原子からなる1価のアルコール、例えば1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールおよびイソブタノールを使用してもよい。
【0027】
開始剤として、ラジカル重合を開始することができる化合物および開始剤系が使用される。公知の化合物クラスは、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソ二硫酸塩、過炭酸塩、ペルケタール、ペルオキシエステル、過酸化水素およびアゾ化合物である。開始剤の例は、過酸化水素、ジベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキソジカーボネート、ジラウリルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオクタノエート、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルネオデカノエート、tert−アミルペルピバレート、tert−ブチルペルピバレート、tert−ブチルペルベンゾエート、ペルオキソ二硫酸リチウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウムならびにペルオキソ二硫酸アンモニウム、アゾイソブチロニトリル、2,2−アゾビスイソ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、および4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)である。同じくレドックス開始剤も好適である(H.Rauch−Puntigam,Th.Voelker,Acryl− und Methacrylverbindungen,Springer,Heidelberg,1967、またはKirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.1,286ページ以下、John Wiley & Sons,1New York,1978)。時間および温度に対して異なる分解特性を有する、複数の開始剤および開始剤系を組み合わせることが有利なことがある。好ましくは、前記開始剤は、前記モノマーの総質量に対して0.01〜2質量%、特に好ましくは0.15〜1.5質量%の量で使用される。
【0028】
さらに、前記混合物はさらなるビニル性不飽和モノマー0〜35質量%、さらなる架橋剤0〜10質量%、および一般の添加剤0〜20質量%を含有していてよい。前記混合物は、本発明によれば塊状重合させて板状にする。これは、断続的に室法(Kammerverfahren)で、または好適な形成工具への充填もしくは押出によって連続的に行われてよい。
【0029】
前記さらなるビニル性不飽和モノマーの例は以下のもの:アクリル酸もしくはメタクリル酸、ならびに1〜4個の炭素原子を含んでいる低級アルコールを有する前記酸のエステル、スチレン、マレイン酸もしくはその無水物、イタコン酸もしくはその無水物、ビニルピロリドン、塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンである。環化して無水物またはイミドにならない、またはなりにくい前記コモノマーの割合は、前記モノマーの質量に対して30質量%を、好ましくは20質量%を、特に好ましくは10質量%を越えるべきではない。
【0030】
長鎖のジオールの(メタ)アクリル酸ジエステルの他に考えうるさらなる架橋剤は、2つのグループに分類することができる:共有結合性架橋剤(D1)、つまり重合導入可能な多価不飽和化合物。このようなモノマーとして、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレンビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールジアクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートまたはジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートまたはトリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートまたはトリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレートまたは1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレートまたは1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルジオールジアクリレートまたはネオペンチルジオールジメタクリレート、ヘキサンジオール−1,6−ジアクリレートまたはヘキサンジオール−1,6−ジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートまたはトリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートまたはペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートまたはペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトール誘導体をそれぞれ場合により三官能性化合物と四官能性化合物とからなる工業的混合物としても、ならびにトリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートが使用されてよい。さらなるグループとしてイオン性架橋剤(D2)が考慮される。これらは、前記コポリマーの酸基の間にイオン性架橋を形成する多価の金属カチオンである。その例は、とりわけアルカリ土類金属または亜鉛のアクリレートまたはメタクリレートである。好ましくは、Zn(メタ)アクリレートおよびMg(メタ)アクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸塩は、例えばモノマーバッチ中にZnOまたはMgOを溶解することによっても製造することができる。
【0031】
通常の添加剤は、例えば、静電気防止剤、酸化防止剤、離型助剤、潤滑剤、染料、防火剤、流動性向上剤、充填剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスファイトもしくはホスホネート、顔料、離型剤、耐候安定剤および/または可塑剤であってよい。
【0032】
好ましくは、発泡性の架橋されたポリマーを塊状重合により板状にする製造のための、本発明による方法で使用される混合物は、メタクリル酸30〜70質量%、メタクリロニトリル30〜60質量%、少なくとも250g/molの分子量を有し、特にポリエーテルジメタクリレートであるジオールのメタクリル酸ジエステル0.01〜15質量%、発泡剤0.01〜15質量%、さらなる架橋剤0.01〜10質量%、重合開始剤0.01〜2質量%、およびさらなるビニル性不飽和モノマー0〜30質量%、ならびに通常の添加剤0〜20質量%からなる混合物である。
【0033】
前記混合物を塊状重合させて板状にした後、このポリマーを場合により熱処理して、引き続き150〜250℃の温度で発泡させる。
【0034】
同じく本発明の構成要素は、前記ポリマーの発泡により得られるポリ(メタ)アクリルイミドフォーム材である。このPMIフォーム材は、7.0%よりも大きい、特に9.0%よりも大きい、殊に10.0%よりも大きい、ISO527−2に準拠した破断伸びを有する。
【0035】
本発明によるフォーム材は、引き続き積層材料に加工することができる。これらの積層材料は、好ましくは、発泡されていないポリマーまたは他の材料、例えばテキスタイルもしくは木材に囲まれている中間層に、PMIフォーム材の1つの層を含有しているものである。
【0036】
前記フォーム材またはそれから製造される積層材料は、例えば、チューブ、スピーカー、アンテナ、X線透視台、機械部品、自動車、鉄道車両、船舶、航空機、宇宙船の構成に使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に挙げる例は、本発明をより具体的に説明するために記載するが、本発明をここに開示された特徴に限定するには適していない。
【0038】
実施例
破断伸びおよび破断強度を、引張試験を用いてISO527−2に準拠して測定した。
密度をISO845に準拠して測定する。
耐熱保形性をDIN53424に準拠して測定した。
クリープ挙動(クリープ)を、DIN53425、ASTM D621およびD2990にしたがい、180℃、2時間の測定時間かつ0.7MPaの圧力にて測定した。
【0039】
例1:
メタクリル酸2487g、メタクリロニトリル2538g、およびtert−ブチルメタクリレート102gからなる混合物に、発泡剤としてtert−ブタノール355gを添加した。さらに、この混合物にtert−ブチルペルピバレート2g、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.8g、tert−ブチルペルベンゾエート5.1g、クミルペルネオデカノエート5.2g、酸化マグネシウム11.2gおよび離型剤(Moldwiz INT 20E)15.2gを添加した。架橋剤として、ポリエチレングリコール400のメタクリル酸ジエステル77.2gを添加した。
【0040】
前記混合物を、39℃にて89時間、大きさ50×50cmのガラス板2枚と28mm厚みのエッジシールとから形成される室中で重合させた。引き続き、このポリマーを32時間、40℃から115℃までに至る熱処理プログラムにかけて最終重合させた。
【0041】
後続の熱風法における発泡は、217℃にて2時間行った。こうして得られたフォーム材は、105kg/m
3の密度を有している。破断伸びは7.2%であり、破断強度は6.0MPaである。0.7MPa(2h/180℃)でのクリープ試験に、0.07%の圧縮歪みで合格した。さらなる試料を205℃にて2時間発泡させた。こうして得られたフォーム材は、145kg/m
3の密度を有している。破断伸びは8.3%であり、破断強度は9.0MPaである。
【0042】
例2:
メタクリル酸2421g、メタクリロニトリル2471gからなる混合物に、発泡剤としてtert−ブタノール593gを添加した。さらに、この混合物にtert−ブチルペルピバレート2g、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.8g、tert−ブチルペルベンゾエート4.9g、クミルペルネオデカノエート5.1g、酸化マグネシウム10.9gおよび離型剤(Moldwiz INT 20E)14.8gを添加した。架橋剤として、ポリエチレングリコール400のメタクリル酸ジエステル75.1gを添加した。
【0043】
前記混合物を、39℃にて118時間、大きさ50×50cmのガラス板2枚と28mm厚みのエッジシールとから形成される室中で重合させた。引き続き、このポリマーを32時間、40℃から115℃までに至る熱処理プログラムにかけて最終重合させた。
【0044】
後続の熱風法における発泡は、188℃にて2時間行った。こうして得られたフォーム材は、150kg/m
3の密度を有していた。破断伸びは9.7%であり、破断強度は9.1MPaである。0.7MPa(2時間/180℃)でのクリープ試験に、0.36%の圧縮歪みで確実に合格した。
【0045】
例3:
メタクリル酸2379g、メタクリロニトリル2428g、およびtert−ブチルメタクリレート97gからなる混合物に、発泡剤としてtert−ブタノール340gを添加した。さらに、この混合物にtert−ブチルペルピバレート1.9g、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.8g、tert−ブチルペルベンゾエート4.8g、クミルペルネオデカノエート5.0g、酸化マグネシウム10.7gおよび離型剤(Moldwiz INT 20E)14.5gを添加した。架橋剤として、ポリエチレングリコール400のメタクリル酸ジエステル73.8gを添加した。
【0046】
前記混合物を、39℃にて90時間、大きさ50×50cmのガラス板2枚と28mm厚みのエッジシールとから形成される室中で重合させた。引き続き、このポリマーを32時間、40℃から115℃までに至る熱処理プログラムにかけて最終重合させた。
【0047】
後続の熱風法における発泡は、212℃にて2時間行った。こうして得られたフォーム材は、99kg/m
3の密度を有していた。破断伸びは13.0%であり、破断強度は6.0MPaである。さらなる試料を210℃にて2時間発泡させた。こうして得られたフォーム材は、114kg/m
3の密度を有していた。0.7MPa(2時間/180℃)でのクリープ試験に、わずか0.45%の圧縮歪みで確実に合格した。
【0048】
比較例1:
メタクリル酸2520g、メタクリロニトリル2572g、およびtert−ブチルメタクリレート103gからなる混合物に、発泡剤としてtert−ブタノール360gを添加した。さらに、この混合物にtert−ブチルペルピバレート2.1g、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.9g、tert−ブチルペルベンゾエート5.1g、クミルペルネオデカノエート5.3g、酸化マグネシウム10.3gおよび離型剤(Moldwiz INT 20E)15.4gを添加した。架橋剤として、アリルメタクリレート5.1gを添加した。
【0049】
前記混合物を、39℃にて88時間、大きさ50×50cmのガラス板2枚と28mm厚みのエッジシールとから形成される室中で重合させた。引き続き、このポリマーを32時間、40℃から120℃までに至る熱処理プログラムにかけて最終重合させた。
【0050】
後続の熱風法における発泡は、200℃にて2時間行った。こうして得られたフォーム材は、114kg/m
3の密度を有している。破断伸びは、5.5%であり、破断強度は3.7MPaである。さらなる試料を190℃にて2時間発泡させた。こうして得られたフォーム材は、148kg/m
3の密度を有している。破断伸びは5.4%であり、破断強度は7.6MPaである。