(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192715
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】高速同期機器の電磁トルクを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/24 20160101AFI20170828BHJP
【FI】
H02P21/24
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-514551(P2015-514551)
(86)(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公表番号】特表2015-530059(P2015-530059A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】FR2013051066
(87)【国際公開番号】WO2013178906
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】1254908
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】メリエンヌ, リュドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】マローム, アドベルマレック
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−182398(JP,A)
【文献】
特開2000−050689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するための方法であって、
前記機器の3つの相に供給される電流を測定すること、
三相システムの変換に基づいて前記3つの測定された電流を直軸電流成分(Id)及び横軸電流成分(Iq)に転置すること、
前記横軸電流成分(Iq)に対する設定点(Iq_req)を受け取ること、及び
前記直軸電流成分(Id)が負の場合、前記三相システムの前記変換に関連付けられた平面内で決定される前記機器の直軸電圧成分(Vd)及び横軸電圧成分(Vq)に基づいて、前記機器が制御される減磁制御モードを起動することを含み、
前記同期機器の制御電圧の前記直軸電圧成分(Vd)及び前記横軸電圧成分(Vq)は、前記直軸電流成分(Id)の値をゼロの近傍に維持し、前記永久磁石の磁束による電磁力のゆらぎを補正する同一の制御パラメータ(θ)に依存し、
前記減磁制御モードは、前記直軸電流成分(Id)が正又はゼロの値に戻るときに終了する、
方法。
【請求項2】
前記同期機器は、前記三相システムの変換平面内の前記直軸と前記横軸との間で完全な対称性を有し、前記三相システムの変換平面内の各軸上の等価インダクタンス(Ld及びLq)を等しくすることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御電圧の前記直軸
電圧成分(V
d)及び前記横軸
電圧成分(V
q)は、好ましくは同一の最大振幅(V
bat)に比例し、正弦波による方法では、制御パラメータ(θ)に依存し、前記制御パラメータ(θ)は、
の範囲内で変動する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記直軸
電圧成分
(Vd)及び前記横軸
電圧成分
(Vq)は次の式
によって表される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記三相システムの変換がパーク変換である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するためのシステム(1)であって、
前記機器の3つの相に供給される電流を測定するための手段(2)、
三相システムの変換に基づいて前記測定された3つの電流を直軸電流成分(Id)及び横軸電流成分(Iq)に転置するための手段(3)、
前記横軸電流成分(Iq)に対する設定点(Iq_req)を受け取るための手段(4)、及び
前記直軸電流成分(Id)が負の場合、前記三相システムの前記変換に関連付けられた平面内で決定される前記機器の直軸電圧成分(Vd)及び横軸電圧成分(Vq)に基づいて、前記機器が制御される減磁制御モードを起動するための制御手段(5)を備え、
前記制御手段(5)は、前記直軸電流成分(Id)の値をゼロの近傍に維持し、前記永久磁石の磁束による電磁力のゆらぎを補正する同一の制御パラメータ(θ)であって、前記設定点(Iq_req)と前記横軸電流成分(Iq)の値との間の差分に依存する前記制御パラメータ(θ)に依存する前記同期機器の制御電圧の前記直軸電圧成分(Vd)及び前記横軸電圧成分(Vq)を決定し、
前記減磁制御モードは、前記直軸電流成分(Id)が正又はゼロの値に戻るときに終了する、
システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記直軸電流成分(Id)が負のときには、前記減磁制御モードを起動し、前記直軸電流成分(Id)が正のときには、前記減磁制御モードを停止するように適合された起動モジュールを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記直軸電流成分(Id)及び前記横軸電流成分(Iq)を取得するため、前記測定した電流にパーク変換を適用するように適合された転置手段(3)を更に備える、請求項6又は7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石を有する三相同期モータの電磁トルクを制御する方法に関し、より具体的には電圧が飽和したときのトルク制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車では、電気モータによって供給されるトルクは制御されなければならない。電気機器のトルクは機器を流れる電流に直接関連するため、この電流は正確な方法で制御されなければならない。
【0003】
同期機器、特に永久磁石及び軸フラックスを有する三相同期機器では、三つの固定子相の電流は正弦波でそれぞれ2π/3ラジアンずつずれている。これらの電流は電気機器内に回転磁場を生成する。回転子は、例えば、1〜5対の極を有する永久磁石で構成されている。方位磁石と同様に、回転子は当然ながら回転子によって作られる回転磁場の方向に揃う。したがって、回転子の回転周波数は、固定子電流の周波数に等しくなる(同期する)。固定子電流の振幅及び回転子磁石の力は、機器の回転に必要となるトルクの生成を担っている。正弦波電圧は、それぞれ2π/3ラジアンずつずれているため、これらの電流を制御するためには、固定子の各相に印加されなければならない。
【発明の概要】
【0004】
一般的に、正弦波信号よりも一定の値に制御を加えるほうが単純である。パーク変換は一般的に、等価な回転参照フレーム内での配置を目的として、三相システムを2次元空間へ射影するために使用される。この方法では、三相システムの3つの相に関連する3つの正弦波電流及び3つの正弦波電圧は、3つの正弦波電流又は電圧信号が2つの一定の電流又は電圧信号(直軸X
d上の1成分と横軸X
q上の1成分)の形で表現される空間に転置可能である。このため、パーク変換は回転磁場にリンクしている参照フレームに基づいており、同期機器の場合には、回転子にリンクしている参照フレームに基づいている。
【0005】
パーク空間内で表される電流及び電圧と連動することにより、制御対象の三相機器を調整するため、正弦波信号ではなく一定の電流又は電圧で動作することが可能になる。
【0006】
逆変換を実施することにより、機器の通常の参照フレームに戻ることが可能になり、その結果、機器の各相にどの電流又は電圧が印加されるかを正確に知ることができる。
【0007】
バッテリを三相電気機器の電源として使用することにより、印加されうる電圧がバッテリの容量によって制限されるという点で、付加的な制約が課せられる。実際に、これらの制限により幾つかの設定点を実現することが不可能になる。到達可能空間外の設定点は一般的に不安定をもたらす。
【0008】
目的は、電圧が制限される場合でも、機器が制御される間には機器内の電流の安定性を確保することにある。これらの制約によって、設定点に到達不可能な場合には、目的は可能な限り設定点に近づくこととなる。
【0009】
米国特許第3,851,234号は、トルクを提供するモータの速度を低減することによって、磁気飽和を防止する方法について記載している。
【0010】
米国特許第5,015,937号は、飽和を防止するためデータテーブルにより、オープンループモードにある巻線形回転子同期機器を制御する方法について記載している。
【0011】
米国特許第6,181,091号は、モータの各ブランチに電圧を供給する位相幅変調モジュールの動作を変更することによって飽和が防止される永久磁石により、同期機器を制御する方法について記載している。
【0012】
これらの公知の制御方法では、電圧の飽和を防止するため、とりわけパーク空間内の電流成分を直接制御することによって、同期機器で利用可能な電磁トルクが低減される。
【0013】
実際には、対応する直軸電流成分のマップは通常、横軸電流成分の制御を維持するために算出され、それによって横軸成分に対する設定点が実現可能となる。この方法には、電流マップの調整過程が実行されなければならないという欠点がある。しかも、所定の電磁トルクに対して最適な電流が得られることを保証する方法はない。これは、電圧飽和状態が発現しないことを保証するため、このマッピング方法により、直軸電流成分の値によって安全マージンが提供されるからであり、言い換えるならば、機器の効率の損失に対してシステムの制御における飽和のリスクを回避するため、直軸電流成分は必要以上に低減されるからである。
【0014】
この直軸電流成分の低下は、電圧の低下を意味し、したがって、利用可能な電磁トルクの減少を意味する。
【0015】
本発明は、電圧が飽和した状態で同期機器が高速で動作しているときに、永久磁石を有する同期機器の電磁トルクを制御する方法を提供することを提示している。
【0016】
本発明の一態様に従い、一実施形態は永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するための方法を提示しており、この方法は機器の3つの相に供給される電流を測定すること、測定された3つの電流を三相システムの変換に基づいて直軸電流成分及び横軸電流成分に転置すること、並びに横軸電流成分に対する設定点を受け取ることを含む。
【0017】
本発明の一特徴に従い、直軸電流成分が負の場合には、減磁制御モードが起動され、機器はこのモードにおいて前記機器の直軸電圧成分及び横軸電圧成分に基づいて制御され、直軸電圧成分及び横軸電圧成分は三相システムの変換に関連付けられた平面内で決定される。
【0018】
三相システムの変換はパーク変換であってもよい。また、フォーテスキュー(Fortescue)変換、クラーク変換、或いはクー変換であってもよい。
【0019】
パーク空間では、制御されるシステムは、同期機器のパーク平面(直軸及び横軸)の2つの軸に印加される直軸電圧成分及び横軸電圧成分を含み、2つの電圧成分は同期機器の直軸電流成分及び横軸電流成分の関数として表され、2つの電流成分はパーク平面の2つの軸に印加される。同期機器の回転子が高速で動作するときには、直軸電流成分は負の値を有し、補償されない場合には損失を引き起こす。
【0020】
減磁制御モードは、永久磁石の磁束による項を補償することが可能で、これは回転子の回転速度に比例し、磁石の磁束は一定であるため、高速になると無視できなくなる。磁束による項は、機器の電磁力とも呼ばれるが、補償が必要となるゆらぎをもたらす高速で回転する同期機器の電圧制御により、磁束によるゆらぎを常に最大限まで補償することができる。
【0021】
有利には、減磁制御モードは、直軸電流成分が正又はゼロの値にも戻ると終了する。
【0022】
同期機器は、有利には、三相システムの変換平面内の直軸と横軸との間で完全な対称性を有し、三相システムの変換平面内の各軸上の等価インダクタンスを等しくすることができる。
【0023】
好ましくは、同期機器の制御電圧の直軸成分及び横軸成分は同一の制御パラメータに依存し、直軸電流成分の値をゼロ近傍に維持するように決定され、永久磁石の磁束による項が補償されるようにすることができる。
【0024】
直軸電流成分が負の値を有する場合には、この成分は機器に対する損失を表す。この損失を最小限に抑えるため、この直軸電流成分は取りうる最低の値に維持されなければならないが、一方、回転子の永久磁石によって生成される磁束による項に対応する電磁力を補償するため、前記直軸電流成分の値は十分なレベルに保たなければならない。
【0025】
制御電圧の直軸成分及び横軸成分は、好ましくは同一の最大振幅に比例し、正弦波による方法では、制御パラメータ(θ)に依存し、制御パラメータ(θ)は、例えば、
の範囲内で変動する。より一般的には、制御パラメータ(θ)は、π以下の振幅範囲内で変動する。
【0026】
別の態様によれば、永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するためのシステムは、一実施形態で提示されており、機器の3つの相に供給される電流を測定するための手段、3つの測定した電流をパーク変換に基づいて直軸電流成分及び横軸電流成分に転置するための手段、及び横軸電流成分に対する設定点を受け取るための手段を含み、直軸電流成分が負の場合、機器が直軸電圧成分及び横軸電圧成分に基づいて制御される減磁制御モードを起動するように適合された制御手段を備え、直軸電圧成分及び横軸電圧成分がパーク平面内で決定されることを特徴とする。
【0027】
有利には、制御手段は、直軸電流成分が負のときには、減磁制御モードを起動し、直軸電流成分が正のときには、減磁制御モードを停止するように適合された起動モジュールを備えうる。
【0028】
好ましくは、制御手段は、横軸電流成分に対する設定点と横軸電流成分の値との間の差分に基づいて、直軸電圧成分及び横軸電圧成分に関連付けられた同一制御パラメータを決定するように適合された比例積分コントローラ、並びに制御パラメータに基づいて直軸電圧成分及び横軸電圧成分を決定するように適合されたモジュールを備える。
【0029】
制御システムは、直軸電流成分及び横軸電流成分を取得するため、測定した電流にパーク変換を適用するように適合された転置手段を備えうる。
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、いかなる意味でも限定的ではない一実施形態の詳細な記載及び下記の添付図面を参照することにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一実施形態による同期機器の電磁トルクを制御するための方法のフロー図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による同期機器の電磁トルクを制御するためのシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態による、端子での電圧が飽和するときに同期機器の電磁トルクを制御するための方法のフロー図を示している。
【0033】
第1のステップ110では、永久磁石を有する三相同期機器の3つの各相に対して電流が測定される。
【0034】
第2のステップ120では、直軸電流成分I
d及び横軸電流成分I
qを得るため、3つの測定された電流に対してパーク変換が適用される。
【0035】
パーク空間内では、同期機器に対して管理される連立方程式は次のようになる。
ここで、V
d及びV
qは2つの軸、すなわち機器のパーク平面内の直軸及び横軸にそれぞれ印加される電圧で、I
d及びI
qは2つの軸、すなわちパーク平面内の直軸及び横軸それぞれの上で機器内を流れる電流で、R
sは機器の固定子の等価抵抗で、L
d及びL
qは機器のパーク平面内の直軸及び横軸それぞれの上でのインダクタンスで、ω
rは機器の磁場の回転速度(すなわち、回転子の回転速度に機器の極の対の数を乗じた値)、さらにφ
fは回転子磁石によって生成される磁束である。
【0036】
電圧V
d及びV
qはバッテリ式インバータによって生成される。したがって、満たされるべき制約条件は次にようになる。
ここでV
batは、バッテリがインバータ及びチョッパに供給する電圧である。
【0037】
目的は、既知の速度範囲で同期機器に対して可能となる最高の効率で、また高速でより正確に電磁トルクを生成することである。モータが高速で回転するときには、機器の制御電圧は飽和し、パーク平面内の直軸電流成分I
dは負となる。
【0038】
そのため、直軸電流成分が負の値かどうかを判断するため、ステップ130でチェックが行われる。パーク空間内の直軸電流成分I
dが負の値を有する場合には、ステップ140で減磁制御モードが起動される。
【0039】
同期機器によって生成される電磁トルクは次の式に基づいて算出可能である。
C
em=p(φ
dI
q−φ
qI
d) (3)
ここで、C
emは機器によって生成される電磁トルクで、pは機器の回転子の極の対の数で、φ
d及びφ
qは機器の直軸及び横軸それぞれの上で生成される磁束成分で、次の形式で表される。
φ
d=L
dI
d+φ
f 及び φ
q=L
qI
q (4)
【0040】
この場合、同期機器はパーク空間の直軸と横軸との間に完全な対称性を有する。これにより、L
d=L
qという注目すべき特性が与えられ、その結果、次のように記述することができる。
C
em=pφ
fI
q (5)
【0041】
したがって、この種の機器では、電磁トルクに寄与するのは横軸成分I
qだけであるため、直軸電流成分I
dによって発生するジュール損失を最小限に抑えつつトルクを制御するには、直軸電流成分I
dを可能な限りゼロに近づけるように設定しなければならない。
【0042】
本発明はL
d=L
qの場合にも適用可能であるが、L
dがL
qよりも大きい場合には、一定のトルクを供給するため、横軸成分I
qの設定点は存在する直軸電流成分I
dの関数として訂正されなければならない。この場合、これは直軸電流成分I
dが負になることが原因であり、機器によって生成されるトルクの減少を引き起こす。したがって、直軸電流成分I
dを可能な限りゼロに近づけることによって、トルクの損失を最小にすることができる。
【0043】
高速では、電磁力と呼ばれる項ω
rφ
fは永久磁石の磁束によって、補償しなければならないほど大きくなるため、直軸電流成分I
dを完全に打ち消すことはできない。最適な操作は、次のように利用しうるすべての電圧の使用を要求する。
【0044】
V
d及びV
qは、次の変換によって算出される制御変数θを用いることによって表される。
【0045】
高速での定常状態条件における電流は、次の形式で表される。
【0046】
高速では、R
s<<ω
rL
d=ω
rL
qにより、方程式(8)は次のように表すことができる。
【0047】
磁束は一定であるため、制御の役割を果たさない。したがって、これはゆらぎとして理解される。したがって、方程式(7)に基づいて、一定の高速条件では、次のようになることがわかる。
ここで、
且つ
且つ
且つ
である。
【0048】
高速では、もはや電磁力を完全に補償することはできず、そのため
となり、
であるため、結果的にG
d<perturbation
d且つG
q>perturbation
qであることを示している。
【0049】
次にステップ140で減磁制御モードを起動することにより、
の範囲内で変化する制御パラメータθ基づいて、モータの電圧制御がステップ150で行われる。この範囲内で制御パラメータθを変えることにより、横軸電流成分I
qは正と負の領域内で変化するようになり、これにより同期機器をモータモードと発電機モードで動作させ、一方でperturbation
dの項に対して最大の補償をもたらし、これによりジュール損失を引き起こす直軸成分I
dを制限する。したがって、同期機器は最大の電磁トルクを得ることを可能にする飽和電圧で維持され、一方で電流は、制御パラメータθを介した機器の電圧制御の手段によって制御される。
【0050】
直軸電流成分I
dが負でなくなったかどうかを判断するため、ステップ160でチェックが行われる。依然として負の場合には、同期機器は制御パラメータθに基づいて引き続き電圧が制御される。制御パラメータθが使用される場合、横軸電流成分I
qを増やすためには、機器によって取得可能な最大出力を実現するように、制御パラメータθは最大値π/2まで増やさなければならず、直軸電流成分I
dは制御パラメータθが増加するにつれて自動的に減少する。反対に、横軸電流成分I
qを減らすためには、最大電磁トルクを実現するように、制御パラメータθは最小値−π/2まで減らさなければならない。したがって、本発明により直軸電流成分I
dの自動適合がもたらされる。
【0051】
しかしながら、直軸電流成分が負でなくなると直ちに、減磁制御モードはステップ170で終了する。
図2は、本発明の一実施形態による永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するためのシステムを示す。
【0052】
永久磁石を有する三相同期機器の電磁トルクを制御するためのシステム1は、機器の3つの相に供給される電流I
1、I
2、I
3を測定するための手段2を備える。これらの測定手段2は、測定した3つの電流をパーク変換に基づいて直軸電流成分I
d及び横軸電流成分I
qに転置するための転置手段3に結合されている。制御システムはまた、横軸電流成分I
qに対する設定点I
q_reqを受け取るための手段4を備える。
【0053】
制御システム1は、入力で直軸電流成分I
dを受け取り、直軸電流成分I
dが負のとき、前記機器のパーク空間で機器が直軸電圧成分及び横軸電圧成分に基づいて制御される減磁制御モードを起動するように適合されている、起動モジュール6を含む制御手段5を備える。
【0054】
制御手段5は、同一の制御パラメータであって、その直軸電圧成分及び横軸電圧成分が、減算器8によって計算される、横軸電流成分に対する設定点I
q_reqと横軸電流成分I
qの値との間の差分に依存する、同一制御パラメータを決定するように適合された比例積分コントローラ7を備える。制御手段はまた、制御パラメータθに基づいて、直軸電圧成分V
d及び横軸電圧成分V
qを決定するように適合されたモジュール9を備える。
【0055】
したがって、本発明は、電圧が飽和した状態で同期機器が高速で動作しているときに、同期機器内の電流を安定に保ちつつ、永久磁石を有する同期機器の電磁トルクを制御することを可能にする。