特許第6192729号(P6192729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192729熱交換器平板及びそのような熱交換器平板を備える平板熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192729
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】熱交換器平板及びそのような熱交換器平板を備える平板熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20170828BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20170828BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20170828BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F28F3/08 301Z
   F28F3/04 B
   F28D9/02
   F28F3/00 311
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-538364(P2015-538364)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公表番号】特表2015-532972(P2015-532972A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2013071150
(87)【国際公開番号】WO2014067758
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】12190496.5
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・ヘドベリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ニルソン
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03862661(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00464004(GB,A)
【文献】 特表2007−528978(JP,A)
【文献】 特表2009−500588(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01565817(GB,A)
【文献】 特表2011−524513(JP,A)
【文献】 特開平09−072685(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/013801(WO,A1)
【文献】 特開平11−051581(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106717(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/003496(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28D 9/02
F28F 3/00
F28F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器平板(4、6、8)であって、該熱交換器平板を、第1及び第2長側部(24、26)それぞれによって区切られた左半体及び右半体(20、22)に分割する垂直中心軸(y)と、前記熱交換器平板を、第1及び第2短側部(32、34)それぞれによって区切られた上半体及び下半体(28、30)に分割する水平中心軸(x)と、ポート孔部(36、38、42、44)であって、該ポート孔部の中にぴったり合うことができる最も大きな仮想の円(82)の中心点(C)に一致する基準点(80)を有する、前記ポート孔部(36、38、42、44)と、を有し、前記ポート孔部は前記左半体かつ前記上半体内に位置する、熱交換器平板において、
前記ポート孔部が、
仮想平面の幾何学的図形(72)の複数のコーナーポイント(66、68、70)であって、前記複数のコーナーポイントのうちの少なくとも1つが前記円の弧(92)からずれている、複数のコーナーポイントと、
前記コーナーポイントを接続する同数の曲線(74、76、78)と、
によって画定された形状を有し、
前記複数のコーナーポイントのうちの第1コーナーポイント(66)は、前記第1短側部と前記第1長側部との間の遷移部(84)の最も近くに、前記基準点から第1の距離(d1)で位置し、前記複数のコーナーポイントのうちの第2コーナーポイント(68)は、時計回りの方向において前記第1のコーナーポイントの最も近くに、前記基準点から第2の距離(d2)で位置し、前記複数のコーナーポイントのうちの第3コーナーポイント(70)は、反時計回りの方向において前記第1のコーナーポイントの最も近くに、前記基準点から第3の距離(d3)で位置し、前記ポート孔部(36、38、42、44)が、前記第1のコーナーポイント(66)と、前記基準点(80)と、を通じて延びるただ1つの対称軸を有することを特徴とする、熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項2】
前記複数のコーナーポイント(66、68、70)及び前記曲線(74、76、78)の数は、3であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項3】
前記曲線(74、76、78)は、前記ポート孔部の基準点(80)から見たときに窪んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項4】
前記第1コーナーポイント(66)と前記基準点(80)との間の前記第1の距離(d1)は、前記第コーナーポイント(68)と前記基準点(80)との間の前記第2の距離(d)より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項5】
前記第1コーナポイント(66)と前記基準点(80)との間の前記第1の距離(d1)は、前記第3コーナーポイント(70)と前記基準点(80)との間の前記第3の距離(d3)より小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項6】
前記熱交換器平板の前記上半体(28)は、第2波型パターン(60)を設けられた第2領域(48)と、第3波型パターン(62)を設けられた第3領域(50)と、を備え、前記第2領域及び前記第3領域は、前記第2領域が前記第1側部(32)に最も近く、前記第2領域が前記第領域に第2境界線(58)に沿って隣接し、第2波型パターンと第3波型パターンとが互いに異なる状態で、前記熱交換器平板の垂直中心軸に沿って順に配置されており、
第4の仮想の直線(94)は、前記基準(80)から、前記コーナーポイント(66、68、70)のうちの1つを通じて、前記第1長側(24)の最も近くに位置する前記第2境界線の端点96まで延びることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の熱交換器平板(4、6、8)。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱交換器平板(4、6、8)を備える平板熱交換器(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きによる熱交換平板に関する。また、本発明はそのような熱交換器平板を備える平板熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
平板熱交換器は通常、2つの端部平板と、これら端部平板間に整列した状態で配置されている複数の伝熱平板とからなる。既知の1つのタイプの平板熱交換器である、いわゆるガスケット式平板熱交換器では、ガスケットが伝熱平板間に配置されている。したがって、端部平板及び伝熱平板はたがいに向かって押し付けられ、それによってガスケットが熱交換平板の間をシールする。ガスケットは伝熱平板の間に流路を画定し、これら流路を通じて当初は異なる温度の2つの流体が交互に流れて一方の流体から他方の流体へ熱を移動することができる。
【0003】
流体は入口ポート及び出口ポートをそれぞれ通じて流路に入出し、これら流路は平板熱交換器を通じて延び、それぞれ位置合わせされたポート孔部が伝熱平板に形成されている。入口ポート及び出口ポートは、平板熱交換器の入口及び出口とそれぞれ連通する。ポンプのような機器が2つの流体を、平板熱交換器を通じて供給するために必要とされる。入口と出口とが小さいほど、平板熱交換器の内部が受ける圧力損失は大きく、より強力になり、高価な機器が平板熱交換器の適正な作動に必要となる。必然的に、入口ポート及び出口ポートの直径は、流体の圧力損失を軽減し、より強力でない機器の使用を可能にするように大きくされる場合がある。しかし、入口ポート及び出口ポートの直径を大きくすることは、伝熱平板のポート孔部の直径を大きくすることを意味する。このことは、伝熱平板の貴重な伝熱表面を犠牲にせざるを得ないこととなり、通常は平板熱交換器の伝熱効率を低下させることに結果的につうじる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、比較的低い圧力損失と関連し、したがって比較的強力でない周辺機器に関連して使用することができる熱交換器平板を提供することである。本発明の基本的なコンセプトは、従来の円形状のポート孔部の代わりに少なくとも1つの非円形状のポート孔部を有する熱交換器平板を提供することである。ポート孔部は熱交換器平板の設計に適用することができ、ポート孔部の領域は、熱交換器平板の伝熱性能にそれほど貢献しない熱交換器平板の犠牲表面(sacrificing surface)によって拡大することができる。本発明の別の目的は、そのような熱交換器平板を備える平板熱交換器を提供することである。上述の目的を達成するための熱交換器平板と平板熱交換器とが、特許請求の範囲に規定され、以下に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る熱交換器平板は、熱交換器平板を第1及び第2長側部〈long side〉それぞれによって区切られた左右の半体(half)に分割する垂直中心軸と、熱交換器平板を第1及び第2短側部(short side)それぞれによって上下の半体に分割する水平中心軸とを有する。さらに、熱交換器平板は基準点を有するポート孔部を有し、この基準点は、ポート孔部の中にぴったり合うことができる最も大きな仮想の円の中心点に一致する。ポート孔部は熱交換器平板の左半体及び上半体内に配置される。熱交換器平板は、ポート孔部が仮想平面の幾何学的図形の(imaginary plane geometric figure)多くのコーナーポイント(corner point)によって画定された形状を有し、仮想平面の幾何学的図形の少なくとも1つのコーナーポイントは円の弧から変位され、同数の曲線すべてがこれらコーナーポイントを接続する。コーナーポイントのうちの第1コーナーポイントは、第1短側部と第1長側部との間の変わり目の最も近くに、かつ基準点から第1の距離に配置される。コーナーポイントのうちの第2コーナーポイントは、時計回りの方向で第1コーナーポイントの最も近くに、かつ基準点から第2の距離に配置される。さらに、コーナーポイントのうちの第3コーナーポイントは、反時計方向で第1コーナーポイントの最も近くに、かつ基準点から第2の距離に配置される。
【0006】
ここで使用されている「熱交換器平板」との用語は、ここでの焦点が伝熱平板であるとしても、端部平板と伝熱平板との両方を意味する。
【0007】
平面の幾何学的図形は、例えば三角形状、四角形状、五角形状等の多くの異なるタイプとすることができる。したがって、コーナーポイント(corner points or extreme points)の数及び曲線の数は2からそれ以上と異なる。
【0008】
完全な曲線とは、真直ぐな部分を有さない線を意味する。したがって、ポート孔部は、いかなる真直ぐな部分も有さない外形を有する。これは、ポート孔部の周りに比較的低い曲げ応力をもたらすので有益である。ポート孔部を貫流する流体は、ポート孔部を円形形状に曲げようとする。したがって、ポート孔部が真直ぐな部分を有していたならば、熱交換器平板に比較的高い曲げ応力をもたらしてしまうだろう。
【0009】
曲線のそれぞれは2つのコーナーポイントを接続する。
【0010】
コーナーポイントのうちの1つは仮想の円の弧から変位しているので、ポート孔部は非円形である。
【0011】
第2コーナーポイント及び第3コーナーポイントが時計回りの方向及び反時計回りの方向のそれぞれで第1コーナーポイントに最も近いという特徴は、ポート孔部の外形に従う第1、第2、及び第3コーナーポイントの相対的位置を表現する。
【0012】
基準点と第1、第2、及び第3コーナーポイントそれぞれとの間の第1、第2及び第3の距離について言えば、視野内の最も短い距離である。
【0013】
本発明の熱交換平板の一実施形態によれば、コーナーポイントの数と曲線の数とは同一であり3つである。これに関して、対応する平面の幾何学的図形は三角形であり得る。この実施形態は本質的に長方形形状を有し、ポート孔部が熱交換器平板のコーナーに配置された多くの従来の熱交換器平板に好適である。
【0014】
曲線は、ポート孔部の基準点から見ると窪んでいるか、または外側に膨出することができる。このような設計は、比較的小さい圧力損失に関連する比較的大きなポート孔部の面積を可能にする。
【0015】
熱交換器平板は、第1、第2、及び第3コーナーポイントが、ポート孔部の基準点から延びる第1、第2、及び第3の仮想の直線それぞれ上に位置するようにすることができる。第1の仮想の直線と第2の仮想の直線との間の第1の角度は第3の仮想の直線と第1の仮想の直線との間の第3の角度に本質的に等しい。さらに、熱交換器平板は、第2コーナーポイントと基準点との間の第2の距離が第3コーナーポイントと基準点との間の第3の距離に等しいようにすることができる。これら設計は、対称軸が第1の仮想の直線に平行である、対称的なポート孔部を可能にする。対照的なポート孔部は熱交換器平板の製造を容易にする。
【0016】
本発明によれば、第1コーナーポイントと基準点との間の第1の距離は、第2コーナーポイントと基準点との間の第2の距離及び/又は第3コーナーポイントと基準点との間の第3の距離より小さい。それによって、ポート孔部の形状を残りの熱交換器平板の設計に適用することができる。より具体的には、熱交換器平板の設計によっては、第1コーナーポイントを変位させることより、第2及び第3のコーナーポイントを変位させることの方がポート孔部の面積を増加させるための多くのスペースが得られる。
【0017】
熱交換器平板のポート孔部は、曲線のうちの第1コーナーポイントと第2コーナーポイントとを接続する第1の曲線と、曲線のうちの第3コーナーポイントと第1コーナーポイントとを接続する第3の曲線とが、類似ではあるが互いに対して鏡面反転するようにすることができる。そのような同一の曲線は、対称軸が第1の仮想の直線に平行である、対称的なポート孔部を可能にする。上述したように、対照的なポート孔部は熱交換器平板の製造を容易にする。
【0018】
最後に、熱交換器平板の上半体は、第2波型パターンを設けられた第2領域と第2波型パターンを設けられた第3領域とを備えることができる。第2領域と第3領域とは、第2領域が第1短側部に最も近く、第2領域が第3領域に第2境界線に沿って接する状態で、熱交換器平板の垂直中心軸に沿って順に配置される。第2及び第3波型パターンは互いに異なる。さらに、第4の仮想の直線は基準点から、コーナーポイントのうちの1つを通じて、第1長側部に最も近くに位置する第2境界線の端点まで延びる。この設計は、熱交換器平板の伝熱能力への影響を最小化する方法でポート孔部の拡張を可能にするので、多くの従来型の熱交換器平板に好適である。このことは、図面を参照しつつ詳細な説明の部に示される。
【0019】
本発明による平板熱交換器は、上述のような熱交換器平板を備える。
【0020】
本発明のさらに他の目的、特徴、態様、及び利点が、以下の詳細な説明及び図面から現れるだろう。
【0021】
本発明は添付の図面を参照してさらに詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】平板熱交換器の正面図である。
図2図1の平板熱交換器の側面図である。
図3】伝熱平板の平面図である。
図4図3の伝熱平板の一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2を参照すると、ガスケット式の平板熱交換器2が図示されている。この平板熱交換器2は、第1端部平板4、第2端部平板6、及び第1端部平板4と第2端部平板6との間にそれぞれ配置された複数の伝熱平板の形の熱交換器平板を備える。伝熱平板は2つの異なるタイプからなる。しかし、本発明が関連する伝熱平板部品はすべての伝熱平板で類似している。したがって、2つの伝熱平板のタイプ間の違いは、ここでさらに述べることはしない。伝熱平板のうちの1つは、符号8で示され、図3にさらに詳細に図示されている。異なるタイプの伝熱平板は、一方の伝熱平板の正面側(図4に示されている)が隣の伝熱平板の背面側に対向する状態で、平板パック9中に交互に配置されている。すべての第2の伝熱平板は基準方向(図3に示されている)に対して、図3の紙面の法線方向の周りに180度回転されている。
【0024】
伝熱平板は、(図示されていない)ガスケットによって互いから離間されている。伝熱平板はガスケットと一緒に、熱を一方の液体から他方の液体に移動するための2つの流体を受け取るように配置された平行チャネルを形成している。このために、第1の流体はすべての第2チャネル内を流れるように配置され、第2の流体は残りのチャネルの中を流れるように配置されている。第1の流体は、入口10及び出口12をそれぞれ通じて平板熱交換器2に入出する。同様に、第2の流体は、入口14及び出口16をそれぞれ通じて平板熱交換器2に入出する。チャネルを漏れないようにするために、伝熱平板は互いに対して押し付けられなければならず、それによってガスケットが伝熱平板間をシールする。このために平板熱交換器2は、第1及び第2の端部平板4、6をそれぞれ互いに向かって押しつけるように配置された多くの締め付け手段18を備えている。
【0025】
伝熱平板8は、図3及び図4を参照してさらに説明される。伝熱平板8は、ステンレス鋼からなる本質的に長方形状のシートである。伝熱平板8は、図3及び4の紙面に平行、かつ伝熱平板8の長手方向中心軸yに平行な中央延長面c−c(図2参照)を有する。垂直中心軸yは伝熱平板8を、第1長側部24及び第2長側部26をそれぞれ有する第1半体20及び第2半体22に分割する。水平中心軸xは伝熱平板8を、第1端側部32及び第2短側部34をそれぞれ有する上半体28と下半体30に分割する。伝熱平板8の上半体28は、平板熱交換器の入口10及び出口16にそれぞれ接続された第1の流体のための入口ポート孔部36及び第2の流体のための出口ポート孔部38を備える。同様に、伝熱平板8の下半体30は、平板熱交換器の入口14及び出口12にそれぞれ接続された第2の流体のための入口ポート孔部42及び第1の流体のための出口ポート孔部44を備える。以下では、上半体及び下半体の構造が、本発明が関連する伝熱平板部品になる場合には同じであるが鏡面反転されているので、平板熱交換器2の上半体のみが説明される。
【0026】
上半体28の入口ポート孔部36及び出口ポート孔部38は、第1半体20及び第2半体22それぞれ内に配置されている。さらに、それらは類似しているが鏡面反転されており、このことがそれらのうちの1つ、入口ポート36のみがさらに後述される理由である。また、伝熱平板8の上半体28は、第1領域46、第2領域48、第3領域50、並びに第4領域52a及び52bを備える。第1、第2、及び第3領域46、48、及び50はそれぞれ、第1短側部43から見たときに、垂直中心軸yに沿って順に配置されている。第1領域46は入口ポート孔部と出口ポート孔部38との間に延び、第1境界線54に沿って第2領域に隣接する。さらに、第1領域46には、中央延長平面c−cに対して凸部及び凹部からなる分配パターンの形の第1波型(corrugation)パターン56が設けられている。第2領域48は、第2境界線58に沿って第3領域50に隣接する。さらに、第2領域48には、中央延長平面c−cに対して凸部及び凹部からなる遷移パターンの形の第2波型パターン60が設けられている。第3領域50には、中央延長平面c−cに対して凸部及び凹部からなる伝熱パターンの形の第3波型パターン62が設けられている。第4領域52a及び52bは、入口及び出口ポート孔部36、38のうちのそれぞれ一方から第1及び第2領域46及び48に向かって延びる。さらに、第4領域52a及び52bには、中央延長平面c−cに対して凸部及び凹部からなる断熱曲線(adiabatic)パターンの形状の第4波型パターン64a及び64b(類似であるが鏡面反転)が設けられている。第1領域46の主な役割は、伝熱平板8の幅全体に亘って流体を拡げることである。第3領域50の主な役割は、伝熱平板8の一方の面の流体からの熱を、伝熱平板の他方の面の流体に移動することである。第2領域48は、拡散機能と伝熱機能との両方を有する。第4領域52a及び52bの主な役割は、流体を入口及び出口ポート孔部36、38と、第1及び第2領域46、48との間に導くことであり、すなわち、第4領域52a及び52bは単に流体の輸送のための領域である。上述の領域及び波型パターンは、ここでは詳細に説明することはしない。むしろ、本出願と同日に出願され、ここに組み込まれる、出願人の同時継続の特許出願「伝熱平板及び、そのような伝熱平板を備える平板熱交換器」が参照される。
【0027】
入口ポート孔部36は図4に図的に示されている。入口ポート孔部36は、仮想の三角形72(破線)の第1コーナーポイント66、第2コーナーポイント68、及び第3コーナーポイント70それぞれによって画定された形状を有する。さらに、これらコーナーポイントは第1の完全な曲線74、第2の完全な曲線76、及び第3の完全な曲線78それぞれによって接続され、これら完全な曲線は入口ポート孔部内から見たときに窪んでいる。入口ポート孔部36の基準点80は、最も大きな仮想の円82(ゴーストライン)の中心点Cに一致し、この中心点は入口ポート孔部の中に位置してもよい。第1コーナーポイント66は、伝熱平板8の第1端側部32と第1長側部24との間の変わり目84に近接している。さらに、第1コーナーポイント66は、基準点80から延びる第1の仮想の直線86上の、基準点80から第1の距離d1に位置する。第2コーナーポイント68は、時計回りの方向において第1のコーナーポイントに近接している。さらに、第2コーナーポイント68は、基準点80から延びる第2の仮想の直線88上の、基準点から第2の距離d2に位置する。第3コーナーポイント70は、反時計回りの方向において第1のコーナーポイントに近接している。さらに、第3コーナーポイント70は、基準点80から延びる第3の仮想の直線90上の、基準点から第3の距離d3に位置する。
【0028】
上述の第1、第2、及び第3の距離に対しては、d2=d3の関係と、d2>d1の関係とが成立する。さらに、第1の仮想の直線と第2の仮想の直線との間の第1角度α1は、第2の仮想の直線と第3の仮想の直線との間の第2角度α2より小さく、かつ第3の仮想の直線と第1の仮想の直線との間の第3角度α3と本質的に同一である。言い換えると、第1、第2、及び第3の角度に対しては、α1=α3の関係と、α1<α2の関係とが成立する。この特定の例においては、α1=α3=115度である。さらに、第1及び第2のコーナーポイント66、68を接続する第1の曲線74は、第3及び第1のコーナーポイント70、66を接続する第3の曲線78と本質的に同一である。全体としてこれは、入口ポート孔部36が第1コーナーポイント及び基準点80を通じて延びる対称軸sに対して対象であることを意味している。
【0029】
図面及び上述の説明から明らかであるように、入口ポート孔部36は従来の円状の形状を有していない。代わりに、入口ポート孔部36は、ここでは3つである複数のコーナーポイントによって画定された形状と、同数の(ここでは3つ)の曲線を有し、複数のコーナーポイントのうちの少なくとも1つ、ここではすべてが円82の弧92から変位している。もしも入口ポート孔部が円形であったならば、それは好ましくは円82に対応する形状を有するだろう。圧力損失の観点から、この関連で前述を参照すると、もっと大きな入口ポート孔部が好ましいだろう。しかし、伝熱平板8の残りの部分の設計が入口ポート孔部の可能な大きさを制限する。例えば、より大きな円状の入口ポート孔部は、入口ポート孔部の外径が第1端側部32及び。又は第1長側部24に近接して配置されることを意味し、伝熱平板8の強度の問題をもたらすだろう。さらに、より大きな円状の入口ポート孔部は、ガスケットがこの業界で知られているように通常は配置される、入口ポート孔部と第1領域46(図3)との間の領域を、ガスケットを配置するにはあまりにも狭くしてしまう場合があることをも意味する。そのような狭い中間領域は、上述に参照した波型パターンを有する伝熱平板を押し付ける際に問題をも生じさせるだろう。当然、伝熱平板8の第1領域46は、大きな円状の入口ポート孔部36のためのスペースを作るために、伝熱平板の下方へさらに変位されるだろう。しかしこれは、通常はより小さな第2領域50に、よって伝熱平板の悪化した伝熱容量に関連してしまうだろう。
【0030】
上述し、図面に図示したように、入口ポート孔部の領域は、伝熱平板の残りの部分の設計を補正する必要なく増加させることができる。入口ポート孔部に、円82に対応する形状を有する円状の入口孔部より広い、伝熱平板8の断熱的な第4領域52a及び52bを占有させることによって、小さな圧力損失に関連する、より大きな入口ポート孔部を実現することができる。この拡大によって影響を受けるのは第4の断熱的な第4領域のみであるので、伝熱平板8の分配能力及び伝熱能力は、本質的に影響を受けないで維持される。より具体的には、入口ポート孔部の拡張のためのほとんどのスペースは、基準点80から伝熱平板8の第1長側部24に最も近い第2境界線の端点96まで延びる第4の仮想の直線94に一致する方向に存在する。したがって、伝熱平板8は、第3コーナーポイント70がこの第4の仮想の直線94上に位置するように設計される。さらに、入口ポート孔部36が真直ぐな部分を有していないので、この入口ポート孔部の周りの曲げ応力は比較的少ない。
【0031】
上述の1つに対応する説明は、伝熱平板のすべての入口ポート孔部及び出口ポート孔部にも当てはまる。
【0032】
上述の円形の入口ポート孔部に関する別の利点はガスケットおよびフィルターに関する。導入部の形で記載されているように、ガスケット式平板熱交換器ではガスケットは伝熱平板間のチャネルを画定しシールするために使用される。通常、ガスケットは、すべての入口及び出口ポート孔部を取り囲むように伝熱平板の周囲に沿って、及び個々の入口及び出口ポート孔部の周りの両方に延在する。ガスケットは、ガスケットを伝熱平板に固定するために、伝熱平板の縁部に係合するように配置された把持手段を備える。いくつかの平板熱交換器の用途に関連して、例えば何らかの方法で汚染された流体の処理に関する用途では、フィルター挿入物が使用されて伝熱平板間のチャネルへの汚染物の侵入を防止する。これらフィルター挿入物は通常、円筒状の形状を有し、平板熱交換器の入口及び/又は出口ポート孔部を通じて、すなわち伝熱平板の入口及び出口ポート孔部を通じて延在する。もしも、従来のように、伝熱平板の入口及び出口ポート孔部が円形であると、これら伝熱平板の入口及び出口ポート孔部は円形であって、したがってガスケットの把持手段はフィルター挿入物に干渉する場合がある。しかし、もし入口及び出口ポート孔部が、」代わりに上述の形状を有するならば、ガスケットは、ガスケットの把持手段が伝熱平板に入口及び出口ポート孔部のコーナーポイントで係合するように適用することができる。それによって、ガスケットと円柱状フィルター挿入物との間の干渉のリスクがなくなる。
【0033】
上述に説明した本発明の実施形態は、例としてのみ理解されるべきである。当業者であれば、説明された実施形態を本発明の概念から乖離することなく多くの方法で変化させられることを理解する。
【0034】
上述の平板熱交換器2の端部平板4及び6は、円状の入口及び出口を有して従来通り設計される。しかし、端部平板には、上述の入口及び出口ポート孔部と同様の非円形状の入口及び出口を設けることもまた可能である。
【0035】
さらに、上述の入口ポート孔部の形状は、三角形の形状の仮想平面の幾何学的図形、3つのコーナーポイント、及び3つの曲線によって画定されている。当然、他の仮想平面の幾何学的図形、並びに別の数のコーナーポイント及び曲線を、代替的な実施形態において入口ポート孔部を画定するために使用することができるだろう。
【0036】
上述の入口ポート孔部は対称軸sに対して対象である。勿論、入口ポート孔部は代わりに完全に非対称、又は1つ以上の対称軸に対して対象であってもよい。例として、曲線はすべてが同じ形でも異なる形でもよく、及び/又はすべてのコーナーポイントに対する基準点の距離は同じでも異なってもよい。また、曲線は窪んでいなくてもよい。1つ以上の曲線は別の形状を有することができる。
【0037】
上述の伝熱平板の上半体は、第1、第2、第3、及び第4波型パターンを設けられた第1、第2、第3、及び第4領域を備える。当然、本発明は、より多くの、又はより少ない領域を備える上半体を有する伝熱平板に関しても同様に適用可能である。例として、伝熱平板の上半体は、第2、第3、及び第4の異なる波型パターンを設けられた第2、第3、及び第4のみを備え、第2領域は第3領域から入口及び出口ポート孔部36、38の間に延在することができる。例えば、第2領域には分配パターンが設けられ、第3領域には伝熱パターンが設けられ、第4領域には断熱パターンが設けられるが、遷移パターンは省略することができる。
【0038】
上述の平板熱交換器は平行逆流タイプ、すなわち流体それぞれのための入口及び出口が平板熱交換器の同じ半体に配置され、流体流れが伝熱平板間のチャネルを通じて反対方向に流れるタイプである。当然、平板熱交換器は代わりに、斜流タイプ及び/又は並交流タイプとすることができる。
【0039】
2つの異なるタイプの伝熱平板が平板熱交換器に設けられる。当然、平板熱交換器は代替的に、ただ1つの平板タイプ又は2つ以上の異なる平板タイプを備えることができる。さらに、伝熱平板は、ステンレス鋼以外の別の材料から作ることができる。
【0040】
最後に、本発明は、永久的に取り付けられた伝熱平板を備える平板熱交換器のような、ガスケットタイプ以外の平板熱交換器の別のタイプに関連して使用することができる。
【0041】
第1、第2、第3等の属性は、ここでは同じ類の種を区別するためだけに使用されており、これら種間の相互の順序をなんら示すものではないことが強調されるべきである。
【0042】
本発明に関連しない詳細な説明は省略されたこと、及び図面が単に概略図であって、縮尺通りに描かれていないことが強調されるべきである。また、図面のいくつかは他の図面よりも単純化されていることもまた強調されるべきである。したがって、いくつかの構成要素は、1つの図面には記載されているが他の図面には記載されていない場合がある。
【符号の説明】
【0043】
2 平板熱交換器
4 第1端部平板
6 第2端部平板
8 伝熱平板
10、14 入口
12、16 出口
18 締め付け手段
y 長手方向中心軸
c−c 中央延長面
24 第1長側部
26 第2長側部
20 第1半体
22 第2半体
x 水平中心軸
32 第1端側部
34 第2短側部
28 上半体
30 下半体
36、42 入口ポート孔部
38、44 出口ポート孔部
46 第1領域
48 第2領域
50 第3領域
52a、52b 第4領域
54 第1境界線54
58 第2境界線58
72 仮想の三角形
66 第1コーナーポイント
68 第2コーナーポイント
70 第3コーナーポイント
74 第1の曲線
76 第2の曲線
78 第3の曲線
80 基準点
82 最も大きな仮想の円
C 中心点
86 第1の仮想の直線
d1 第1の距離
88 第2の仮想の直線
d2 第2の距離
90 第3の仮想の直線
d3 第3の距離
α1 第1角度
α2 第2角度
α3 第3角度
s 対称軸
92 弧
図1
図2
図3
図4