【文献】
Guo Shirui,et.al.,Assembled graphene oxide and single-walled carbon nanotube ink for stable supercapacitors,Journal of Materials Research,米国,2013年,28(7),918-926
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフェンオキシドシートが、前記伝導性ポリマー溶液の総重量に基づいて、0.005重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲内の濃度で前記伝導性ポリマー溶液中に存在する、請求項1に記載の伝導性インク。
前記伝導性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリピレン、ポリアズレン、及びポリナフタレン、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の伝導性インク。
前記伝導性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の伝導性インク。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の伝導性インクは、水系媒体に溶解している伝導性ポリマーを有し得る伝導性ポリマー溶液と、伝導性ポリマー溶液に分散している、カーボンナノチューブ及びグラフェンオキシドシートの混合物とを含む。カーボンナノチューブ及びグラフェンオキシドシートの混合物は、伝導性インクを配合し、本開示の伝導性コーティングを形成するために有用な特性を有するハイブリッドナノフィラーとして機能し得る。
【0011】
用語「水系媒体」とは、水系媒体の全重量に対して、少なくとも10重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも55重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、又は更には少なくとも95重量パーセントの濃度の水を含む伝導性ポリマー溶液用の液体媒体を指す。
【0012】
水系媒体は、任意で、好適な水混和性有機溶媒を含んでよい。好適な水混和性有機溶媒は、1気圧(0.1メガパスカル)で150℃以下の沸点を有する極性有機溶媒を含んでよい。幾つかの実施形態では、水混和性有機溶媒は、少なくとも1.4デバイ(4.7×10
−30クーロンメートル)の双極子モーメントを有する。幾つかの実施形態では、好適な水混和性有機溶媒の例としては、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エーテル、ケトン、ニトリル、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。好適な水混和性有機溶媒の具体例としては、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、ジメトキシエタン、ギ酸、メタノール、エタノール、1ープロパノール、2ープロパノール、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。水混和性有機溶媒は、含まれる場合、水系媒体の全重量に対して最高50重量パーセント、最高40重量パーセント、最高30重量パーセント、最高20重量パーセント、最高10重量パーセント、又は更には最高5重量パーセントの濃度で水系媒体中に存在し得る。水系媒体の残りは、典型的に水である。
【0013】
本開示の伝導性インクは、伝導性ポリマーを含む。伝導性ポリマーは、本開示の伝導性インクを塗布し、アニールすることから得られる伝導性コーティングにおいて、あるレベルの導電性をもたらすことができる。用語「伝導性」とは、本明細書で使用するとき、導電性を指し、用語「伝導性コーティング」は、10
4オーム/スクエア未満のシート抵抗値を有するコーティングを指す。平均シート抵抗値は、典型的に、4点プローブ法を用いて薄膜について決定される(例えば、Smits,F.,「Measurement of Sheet Resistivities with the Four−Point Probe」,The Bell System Technical Journal,pp.711〜718(1958)を参照)。
【0014】
伝導性ポリマー、又はより正確には、本質的に伝導性であるポリマーは、電気を伝導する有機ポリマーである。これらは、交互に単結合及び二重結合を有する共役構造、又は原子(例えば、N、S)と結合している共役セグメントを有して、連続する軌道の重なりのためのp−軌道を提供する傾向がある。伝導性ポリマーとしては、ポリチオフェン(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン(例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン))、ポリフェニレンスルフィド(例えば、ポリ(p−フェニレンスルフィド))、ポリピレン、ポリアズレン、及びポリナフタレン、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。幾つかの実施形態では、特に有用な伝導性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、より好ましくは、ポリスチレンスルホネートをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT:PSS」)である。PEDOT:PSSは、空気又は熱に対する優れた安定性、良好な透明性を有し得、且つ従来のITOよりも軽い。
【0015】
伝導性ポリマーは、伝導性ポリマー溶液の全重量に対して、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、又は更には少なくとも0.5重量パーセントの濃度で伝導性ポリマー溶液中に存在し得る。幾つかの実施形態では、伝導性ポリマーは、伝導性ポリマー溶液の全重量に対して、最高10重量パーセント、最高5重量パーセント、又は更には最高2重量パーセントの濃度で伝導性ポリマー溶液中に存在する。幾つかの実施形態では、伝導性ポリマーは、伝導性ポリマー溶液の全重量に対して、0.05重量パーセント〜10重量パーセント、0.1重量パーセント〜5重量パーセント、0.5重量パーセント〜5重量パーセント、又は更には0.5重量パーセント〜2重量パーセントの範囲内の濃度で伝導性ポリマー溶液中に存在する。
【0016】
カーボンナノチューブ(「CNT」)を伝導性ポリマーに添加すると、場合によっては、幾つかの伝導性コーティングの導電性を向上し得ることが観察されている。本開示の伝導性インクは、CNTを含む。幾つかの実施形態では、CNTは、グラファイトに類似しており、且つ約1ナノメートルから最高100ナノメートルの範囲内の平均外径及び0.5マイクロメートルから最高100マイクロメートル又はそれ以上の範囲内の平均長さを有する管状分子を含み得る。CNTは、例えば、管状形状の一原子厚さの炭素原子の1枚のシートであり、且つ直径はわずか約1ナノメートルである単壁カーボンナノチューブ(「SWCNT」);管状形態の一原子厚さの炭素原子の2枚のシートであり、且つ直径はわずか約2ナノメートル〜約4ナノメートルである二重壁カーボンナノチューブ(「DWCNT」);及び管状形態の一原子厚さの炭素原子のシートの同心円筒の外観を有し、且つ直径は約4ナノメートル〜約100ナノメートルである多壁カーボンナノチューブ(「MWCNT」)を含む様々な形態を有し得る。
【0017】
幾つかの典型的な実施形態では、CNTは、「手付かず(pristine)」であり、即ち、合成及び/又は精製後に化学的又は他の方法で任意の表面改質処理を受けていないCNTである。
【0018】
本開示で用いるCNTは、商業的に入手することもでき、当業者に公知の方法によって調製することもできる。SWCNTは、例えば、不活性雰囲気中におけるカーボンカソード及びカーボンアノードを通じたアーク放電(例えば、米国特許出願公開第2011/0262341号(Samaranayakeら)を参照)を含む様々な方法によって調製することができる。DWCNTは、例えば、マグネシア触媒においてメタンを好適な鉄と接触させること(例えば、米国特許出願公開第2011/0127472号(Satoら)を参照)を含む任意の好適な手段によって得ることができる。MWCNTは、担持触媒の存在下における蒸着(例えば、米国特許出願公開第2004/0234445号(Serpら)を参照)によって得ることができる。このようなMWCNTは、10nm〜50nmの直径及び70マイクロメートルに達し得る長さを有し得る。SWCNT、DWCNT、及びMWCNTは、これらから残留有機及び金属不純物を取り除くために、酸溶液(例えば、硫酸、塩酸)で洗浄することによって精製することができる。
【0019】
CNTの好適な例は、商業的供給元から入手することができる。例えば、8〜15nmの公称外径及び10〜30マイクロメートルの公称長さを有するMWCNTは、Cheap Tubes,Inc.(Brattleboro,VT)から商品名「MWCNTS SKU−030102」として市販されている。
【0020】
向上された導電性を有する伝導性コーティングを得るために、CNT及び伝導性ポリマーを含む水系伝導性インクを提供することが望ましい。しかし、CNTを含む水系伝導性インクを配合するための試みは、典型的に、CNTの凝集及び/又は沈殿に起因して、困難を伴う。この凝集及び/又は沈殿は、有用な伝導性コーティングの形成にとって有害であることがある。典型的に、CNTを含むコーティングの良好な導電性の必須条件は、コーティングにCNTが微細に分散していることである。CNTが次第に互いに結合すると、CNTは、CNTが微細に分散しているときよりも伝導性を向上しないと考えられる。例えば、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)を添加する等、水系媒体にCNTを分散させるために様々な試みが行われてきたが、このような材料の添加は、時に、得られる伝導性コーティングにおける望ましい材料特性(例えば、透明性)への干渉を含む他の問題を引き起こす場合がある。
【0021】
CNTは、本開示の伝導性コーティング中CNTが少なくとも約0.001重量パーセントになるのに十分な量で伝導性インク中に存在し得る。しかし、典型的には、伝導性インク及び得られる伝導性コーティング中にCNTを微細に分散させるために、他の成分(具体的には、グラフェンオキシド材料)と好適な比率で伝導性インク中にCNTを提供することも望ましい。幾つかの実施形態では、CNTは、伝導性コーティングの全重量に対して、0.05重量パーセント〜30重量パーセント、0.1重量パーセント〜20重量パーセント、0.2重量パーセント〜10重量パーセント、又は更には0.4重量パーセント〜5重量パーセントの範囲内でCNTが存在する伝導性コーティングが得られる(即ち、基材上に伝導性インクを塗布し、アニールした後)のに十分な量で伝導性インク中に存在し得る。
【0022】
本開示の伝導性インクは、グラフェンオキシド(GO)を含む。グラフェンオキシドは、典型的に、グラファイトに類似している層状構造に配置されている炭素原子を有し、且つグラファイトにおいてみられる層間空間よりも約2倍大きな層間空間を有する平面状グラフェンオキシドシート(「GOシート」)を含む。GOシートがxyz座標系に配向されていると考えると、個々のGOシートについて、x及びy寸法は、典型的に、最高約5マイクロメートル(又は更には最高100マイクロメートル)であり得るが、平均z寸法(即ち「厚さ」)は、典型的に、5ナノメートル未満(例えば、約0.7〜2ナノメートル)である。GOシートは、重なっていてもよく、積み重ねられていてもよく(例えば、数層のグラフェンオキシドシートが、最高約10ナノメートル以上の厚さに積み重なって存在していてよい)、折り畳まれていてよく、また重要なことに、カーボンナノチューブを含む他の形態の炭素と結合していてよい。
【0023】
グラフェンの酸化形態であるGOシートは、典型的に、GOシートの縁部周辺及び主表面に広がる、例えば、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH、フェノール性−OH基を含む)、カルボニル基(−C(=O))、及びエポキシ基(架橋酸素原子)を含む酸化官能基を有する。酸化官能基は、GOシートの極性(及び親水性)を高める傾向がある。
【0024】
典型的に、GOシートは、グラファイト粉末を強い酸化条件に曝露する(硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、五酸化リン、又はこれらの組み合わせ等の酸化剤に曝露することを含む)ことによって調製することができ、Hummers法の変法(例えば、Hummersら、「Preparation of Graphite Oxide」,J.Am.Chem.Soc.,80,p.1339(1958);米国特許第2,798,878号(Hummers);及びMcAllisterら、「Single Sheet Functionalized Graphene by Oxidation and Thermal Expansion of Graphite」,Chem.Mater.,19,pp.4396〜4404(2007))を用いるが、当業者に公知の他の酸化法を用いてもよい。
【0025】
グラフェンオキシドシートは、まずグラファイトの炭素層に酸化官能基を導入し、次いで、水中で穏やかに超音波処理して、グラフェンオキシドのシートを剥離させることによる、水溶液中におけるグラファイトの化学的剥離を介して作製することができる。酸化グラファイト層間の層間結合は、酸による処理及び/又は水との水素結合によって弱くなり、GOシートを剥離させると考えられる(例えば、Zhangら、「Size−Controlled Synthesis of Graphene Oxide Sheets on a Large Scale Using Chemical Exfoliation」,Carbon,47,pp.3365〜3380(2009);及びSinitskiiら、「Chemical Approaches to Produce Graphene Oxide and Related Materials」,in Graphene Nanoelectronics:From Materials to Circuits,pp.205〜234(2012)を参照)。
【0026】
伝導性インクの幾つかの実施形態では、GOシートは、伝導性ポリマー溶液の総重量に対して、少なくとも約0.001重量パーセント、少なくとも0.005重量パーセント、少なくとも0.01重量パーセント、又は更には少なくとも0.02重量パーセントの濃度で存在し得る。幾つかの実施形態では、GOシートは、伝導性ポリマー溶液の総重量に対して、最高0.5重量パーセント、最高0.2重量パーセント、又は更には最高0.1重量パーセントの濃度で伝導性インク中に存在する。幾つかの実施形態では、GOシートは、伝導性ポリマー溶液の総重量に対して、0.005重量パーセント〜0.5重量パーセント、又は0.01重量パーセント〜0.2重量パーセント、又は更には0.02重量パーセント〜0.1重量パーセントの範囲内の濃度で伝導性インク中に存在する。
【0027】
GOシートは、疎水性ドメインと親水性ドメインとの組み合わせを有する両親媒性であると考えることができる。本開示の伝導性インクの実施形態は、CNTの分散を向上するために、CNT及び水系媒体の両方と結合するGOシートの両親媒特性を利用する。理論に縛られるものではないが、GOシート同士の及びGOシートとCNTとの結合は、少なくとも部分的には、それぞれの疎水性ドメインのパイ−スタッキング相互作用を通じて生じると考えられる。水系媒体におけるGOシートとCNTとの結合により、GOシートを有さない水系分散液に比べて、得られる伝導性コーティングにおけるCNTの分散が向上されることが観察されている(例えば、実施例の項を参照)。この分散の向上により、伝導性コーティングの伝導性が向上される。
【0028】
本開示の伝導性インクについては、CNTとGOシートとの混合物が提供される。CNT及びGOシートは、カーボンナノチューブ:グラフェンオキシド(「CNT:GO」)複合体、即ち、ハイブリッドを形成することができ、これは、水系媒体におけるCNTの分散に役立ち得る。幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブのグラフェンオキシドシートに対する重量比は、0.25〜2.5、又は0.5〜2、又は0.5〜1.5、又は更には1〜1.5の範囲内であり得る。カーボンナノチューブのグラフェンオキシドシートに対する重量比は、CNT、GOシート、又はこれら両方の沈殿が形成されない範囲内になるように選択すべきである。本開示の伝導性インクに分散している、CNT:GO複合体の形成は、水系媒体においてCNTを微細に分散させる能力を向上して、基材上に伝導性インクを塗布し、アニールすることによって形成される伝導性コーティングの導電性を向上すると考えられる。
【0029】
理論に束縛されるものではないが、GOシートの非存在下でCNTが低濃度であると、伝導性ポリマーのマトリクス全体に伝導性経路を提供することにより伝導性ポリマーの薄膜の伝導性を向上することができると考えられ、理論的には、CNT濃度を高めると、伝導性を改善することができる。しかし、GOシートの非存在下においてCNTの量が増加するにつれて、CNTの高度に結合した凝集体及び/又は沈殿が形成され得ることが観察されている(例えば、実施例の項の比較例Bを参照)。
【0030】
幾つかの実施形態では、本開示の伝導性インクは、伝導性インクを基材に塗布することから得られるコーティングの導電性を更に向上するのに好適な「伝導性向上剤」(又は「ドーパント」)材料を含んでよい。伝導性向上剤は、水系媒体に分散することができ、更にCNTが凝集するのを防ぐのに役立つように選択される。幾つかの実施形態では、伝導性向上剤は、水系媒体に溶解している。典型的な実施形態では、伝導性向上剤は、1気圧(0.1メガパスカル)で少なくとも150℃の沸点を有する。好適な伝導性向上剤の例としては、スルホキシド、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオール、フェノール、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。幾つかの実施形態では、好適な伝導性向上剤の具体例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、2ーメトキシフェノール、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0031】
伝導性向上剤を含む伝導性インクの幾つかの例については(例えば、伝導性ポリマーがPEDOT:PSSであるとき)、伝導性向上剤としてDMSOを有することにより、最終コーティングにおける導電性が著しく向上され得ることが観察されている。理論に束縛されるものではないが、伝導性向上剤の添加は、伝導性ポリマーにおける伝導性領域間の界面結合を増加させるのに役立つことがあり、場合により、伝導性コーティングを形成するために伝導性インクを乾燥させている間、伝導性種を整列させることができると考えられる。
【0032】
他の添加剤は、任意で、伝導性インク組成物の総重量に対して、0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの範囲内で提供され得る。他の添加剤としては、例えば、有機分散剤、界面活性剤、安定剤、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
本開示の伝導性インクは、水系媒体に伝導性ポリマーを溶解させて伝導性ポリマー溶液を形成し、グラフェンオキシドシートとカーボンナノチューブとの混合物を該伝導性ポリマー溶液に分散させることによって形成することができる。超音波処理を用いて、水系媒体にGO及びCNTを分散させることができる。超音波処理時間(例えば、5分間〜120分間)及び出力(例えば、20W〜150W)は、超音波処理時間が長いか又は出力条件が高いことによってCNTの断片化を誘導することがないように注意しながら、伝導性ポリマー溶液におけるGO及びCNTの分散液を得るのに役立つように調整することができる。
【0034】
伝導性インクは、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、ドクターナイフコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、及びロールコーティングのうちの1つ以上等の任意の好適な技術によって基材に塗布することができる。
【0035】
本開示の好適な基材は、セラミック、ポリマー、金属、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む広範な材料のうちの1つ以上から選択してよい。幾つかの実施形態では、基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、二軸延伸ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上等の可撓性である材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、二軸延伸ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上の層を含む可撓性多層ポリマーフィルムを挙げることができる。また、可撓性ガラスを基材として、単独で又はポリマー材料と組み合わせて用いてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、基材は、透明、可撓性、又はこれらの両方であるように選択される。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングと基材との組み合わせは、可撓性、透明、又は可撓性且つ透明である物品が提供されるように選択される。用語「可撓性」は、本明細書では、フィルムを破壊することなく、直径1センチメートルのロッドの周囲に巻き付くことができる最高125マイクロメートルの厚さのフィルムを指す。用語「透明」は、約400nm〜約700nmの入射電磁放射線の少なくとも一部の少なくとも75%が層を通過することができる層を指す。用語「光透過率」は、約400nm〜約700nmの範囲内の特定の波長における、サンプルを通過する、入射電磁放射線の比率を指す。幾つかの実施形態では、物品は、550nmにおいて少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は更には少なくとも90%の光透過率値を有する。
【0037】
典型的な実施形態では、伝導性インクは、基材上でアニールされる。アニールは、好適な期間約80℃〜約150℃の範囲内の温度に基材上の伝導性インクを曝露して、典型的に、伝導性コーティングから水及び水混和性有機溶媒(存在する場合)の大部分又は実質的に全てを除去することを含んでよい。アニールは、例えば、10分間〜120分間の範囲内の任意の好適な期間実施してよい。好適なアニール条件の実施形態では、目に見える滴(即ち、1マイクロメートルを超えるサイズの滴)は観察されない。幾つかの実施形態では、伝導性向上剤材料の一部もアニールプロセス中に除去されることがあるが、アニール工程は、典型的に、伝導性コーティング中に残る伝導性向上剤の濃度を低下させることを含む必要はない。アニールは、例えば、赤外線加熱、誘電乾燥、対流乾燥、超臨界乾燥、真空乾燥、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上等の任意の好適な技術によって実施してよい。アニールプロセスは、水系媒体の少なくとも一部を除去するが、アニールプロセスは、伝導性コーティングが形成されるときに伝導性コーティング中の伝導性ポリマー鎖の立体構造を変化させることも可能である。主な立体構造は、コイル状及び拡張コイル(expanded-coil)状から拡張コイル状及び直鎖状に変化し得、この立体構造の変化が、鎖内及び鎖間電荷担体移動度を高め、それによって伝導性コーティングの伝導性を向上することができると考えられる。
【0038】
幾つかの実施形態では、伝導性インクを基材に塗布し、次いでアニールすることは、基材が、基材フィルムロールに巻き取られている連続基材フィルムとして提供される「ロール−ツー−ロール」装置において実施してよい。基材フィルムを、基材フィルムロールから広げ(即ち、巻き出し)、その長手方向に輸送し、次いで、輸送中に、任意の好適な方法(例えば、噴霧)によって伝導性インクを基材フィルムに塗布する。次いで、伝導性インクが塗布された基材フィルムを、輸送中にアニール条件に供して、基材上に伝導性コーティングを形成する。次いで、伝導性コーティングを有する基材フィルムを巻き取ってよい。ライン速度、伝導性インクの塗布速度、及びアニール条件等のパラメータは、所望のコーティング厚さ及び所望のアニール時間等の変数を考慮して、当業者が選択することができる。
【0039】
本開示の伝導性コーティングは、伝導性ポリマーと、該伝導性ポリマー中に分散している、GOシート及びCNTの混合物と、を含む。幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のGOシート材料の量は、伝導性コーティングの総重量に対して、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.2重量パーセント、少なくとも0.25重量パーセント、少なくとも0.5重量パーセント、又は更には少なくとも1重量パーセントである。幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のGOシート材料の量は、伝導性コーティングの総重量に対して、最高15重量パーセント、最高10重量パーセント、又は更には最高5重量パーセントである。幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のGOシート材料の量は、伝導性コーティングの総重量に対して、0.25重量パーセント〜15重量パーセント、0.5重量パーセント〜10重量パーセント、又は更には1重量パーセント〜5重量パーセントの範囲内である。
【0040】
幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のCNTの量は、伝導性コーティングの総重量に対して、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.2重量パーセント、又は更には少なくとも0.4重量パーセントである。幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のCNTの量は、伝導性コーティングの総重量に対して、最高30重量パーセント、最高20重量パーセント、最高10重量パーセント、又は更には最高5重量パーセントである。幾つかの実施形態では、伝導性コーティング中のCNTの量は、伝導性コーティングの総重量に対して、0.05重量パーセント〜30重量パーセント、0.1重量パーセント〜20重量パーセント、0.2重量パーセント〜10重量パーセント、又は更には0.4重量パーセント〜5重量パーセントの範囲内である。
【0041】
幾つかの実施形態では、本開示の伝導性コーティングは、CNTのGOシートに対する重量比が、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.7、少なくとも0.9、又は更には少なくとも1であってよい。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングは、CNTのGOシートに対する重量比が、最高2.5、最高2、最高1.5、最高1.2、又は更には最高1.1であってよい。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングは、CNTのGOシートに対する重量比が、0.25〜2.5、0.5〜2、0.5〜1.5、1〜1.5、又は更には1〜1.2の範囲内であってよい。
【0042】
本開示の伝導性コーティングの様々な実施形態は、最高3000オーム/スクエア、最高2800オーム/スクエア、最高2500オーム/スクエア、最高2000オーム/スクエア、最高1500オーム/スクエア、最高1000オーム/スクエア、最高900オーム/スクエア、又は更には最高800オーム/スクエアの平均シート抵抗値を有し得る。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングは、800オーム/スクエア〜2800オーム/スクエア、900オーム/スクエア〜2800オーム/スクエア、又は更には800オーム/スクエア〜1000オーム/スクエアの範囲内の平均シート抵抗値を有する。
【0043】
幾つかの実施形態では、伝導性ポリマーは、伝導性コーティング中で透明であることが望ましい。幾つかの実施形態では、導電性コーティングは、550nmにおいて、少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は更には少なくとも95%の光透過率値を有する。
【0044】
伝導性コーティングは、少なくとも20ナノメートル、少なくとも30ナノメートル、少なくとも40ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、又は更には少なくとも60ナノメートルの厚さを有するフィルムであってよい。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングは、最高250ナノメートル、最高200ナノメートル、最高150ナノメートル、又は更には最高120ナノメートルの厚さを有するフィルムである。幾つかの実施形態では、伝導性コーティングは、20ナノメートル〜250ナノメートル、40ナノメートル〜150ナノメートル、又は更には60ナノメートル〜120ナノメートルの範囲内の厚さを有するフィルムである。
【0045】
伝導性ポリマーは、可撓性基材上に可撓性伝導性コーティングを形成できることが、時に望ましい。最高1cmもの可撓性基材については、コーティングされた基材を、基材の厚さの80倍である直径を有するロッドの周囲に巻き付けたとき、可撓性コーティングの伝導性の少なくとも95%が残存し得る。
【0046】
アニールされた伝導性コーティングは、伝導性コーティングの総重量に対して、最高5重量パーセント、最高4重量パーセント、最高3重量パーセント、最高2重量パーセント、最高1重量パーセント、最高0.5重量パーセント、又は更には最高0.1重量パーセントの濃度の水を含んでよい。しかし、導電性にするために、伝導性コーティングは、必ずしもこれら濃度のいずれか1つ以下の量の水を含む必要はない。
【0047】
本開示の伝導性コーティングにおけるCNTの堆積は、好ましくは、小さな領域においてGOシートと結合しているCNTの相互接続である「ドメインネットワーク」を含む。典型的なドメインネットワーク寸法は、約10マイクロメートル×10マイクロメートルであると考えてよい。ドメインネットワークにおけるCNTは、好ましくは、伝導性ポリマー中に均一に分布している。
【0048】
本開示の物品は、本開示の伝導性インクを基材の表面の少なくとも一部に塗布し、次いで、該基材の表面上の伝導性インクをアニールして、伝導性コーティングを有する物品を形成することによって調製することができる。有用な物品としては、例えば、電磁遮蔽フィルム/布テープ、無線周波数認識(EFID)タグ/ラベル、静電気防止ラベル/フィルム、並びに可撓性光電池、エレクトロクロミック素子、可撓性ディスプレイ、タッチスクリーン、及び有機発光ダイオード(OLED)用の透明電極を、挙げることができる。
【0049】
例示的実施形態の一覧
実施形態1.
水系媒体に溶解している伝導性ポリマーを含む伝導性ポリマー溶液と、
前記伝導性ポリマー溶液に分散している、カーボンナノチューブ及びグラフェンオキシドシートの混合物とを含み、前記カーボンナノチューブの前記グラフェンオキシドシートに対する重量比が、0.25〜2.5の範囲内である、伝導性インク。
【0050】
実施形態2.前記伝導性ポリマーが、前記伝導性ポリマー溶液の総重量に基づいて、0.05重量パーセント〜10重量パーセントの範囲内の濃度で前記伝導性ポリマー溶液中に存在する、実施形態1に記載の伝導性インク。
【0051】
実施形態3.前記グラフェンオキシドシートが、前記伝導性ポリマー溶液の総重量に基づいて、0.005重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲内の濃度で前記伝導性ポリマー溶液中に存在する、実施形態1又は2に記載の伝導性インク。
【0052】
実施形態4.前記伝導性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリピレン、ポリアズレン、及びポリナフタレン、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0053】
実施形態5.前記伝導性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0054】
実施形態6.前記伝導性ポリマーが、ポリスチレンスルホネートをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0055】
実施形態7.前記水系媒体が、水混和性有機溶媒を含み、前記水混和性有機溶媒が、1気圧(0.1メガパスカル)で150℃以下の沸点を有する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0056】
実施形態8.前記伝導性ポリマー溶液に溶解している伝導性向上剤を更に含み、前記伝導性向上剤が、1気圧(0.1メガパスカル)で少なくとも150℃の沸点を有する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0057】
実施形態9.前記伝導性向上剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、2ーメトキシフェノール、又はこれらの混合物のうちの1つ以上である、実施形態8に記載の伝導性インク。
【0058】
実施形態10.前記カーボンナノチューブの前記グラフェンオキシドシートに対する重量比が、0.25〜2の範囲内である、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の伝導性インク。
【0059】
実施形態11.
伝導性ポリマーと、
前記伝導性ポリマー中に分散している、グラフェンオキシドシート及びカーボンナノチューブの混合物とを含み、前記カーボンナノチューブの前記グラフェンオキシドシートに対する重量比が、0.25〜2.5の範囲内であり、550nmにおいて少なくとも75%の光透過率値を有する、伝導性コーティング。
【0060】
実施形態12.前記グラフェンオキシドシートが、前記伝導性コーティングの総重量に対して、0.1重量パーセント〜5重量パーセントの範囲内で存在する、実施形態11に記載の伝導性コーティング。
【0061】
実施形態13.前記カーボンナノチューブの前記グラフェンオキシドシートに対する重量比が、0.25〜2の範囲内であり、550nmにおいて少なくとも80%の光透過率値を有する、実施形態11又は12に記載の伝導性コーティング。
【0062】
実施形態14.前記コーティングが、20nm〜250nmの範囲内の厚さを有する、実施形態11〜13のいずれか1つに記載の伝導性コーティング。
【0063】
実施形態15.前記伝導性コーティングが、800オーム/スクエア〜2800オーム/スクエアの範囲内の平均シート抵抗値を有する、実施形態11〜14のいずれか1つに記載の伝導性コーティング。
【0064】
実施形態16.水が、前記伝導性コーティングの総重量の5重量パーセント以下で存在する、実施形態11〜15のいずれか1つに記載の伝導性コーティング。
【0065】
実施形態17.基材上に伝導性コーティングを提供する方法であって、
実施形態1に記載の伝導性インクを基材に塗布する工程と、
前記基材上の前記伝導性インクをアニールして、前記基材上に前記伝導性コーティングを形成する工程と、を含む方法。
【0066】
実施形態18.前記アニールが、80〜150℃の範囲内の温度で実施される、実施形態17に記載の方法。
【0067】
実施形態19.前記基材が、可撓性である、実施形態17又は18に記載の方法。
【0068】
実施形態20.前記基材が、透明である、実施形態17又は18に記載の方法。
【0069】
実施形態21.前記基材が、可撓性且つ透明である、実施形態17又は18に記載の方法。
【0070】
実施形態22.前記塗布工程が、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、ドクターナイフコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、及びロールコーティングのうちの1つ以上を含む、実施形態17〜21のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態23.グラファイトの化学的剥離を実施することにより、実施形態17に記載の伝導性インク中に前記グラフェンオキシドシートを提供する工程を更に含む、実施形態17〜22のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態24.前記アニールが、赤外線加熱、誘電乾燥、対流乾燥、超臨界乾燥、真空乾燥、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、実施形態17〜23のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態25.前記基材が、基材フィルムロールに巻き取られている連続基材フィルムであり、前記基材フィルムを、前記基材フィルムロールから巻き出しれ、その長手方向に輸送し、輸送中に前記塗布及びアニール工程に供し、前記伝導性コーティングを有する前記基材フィルムを巻き取る、実施形態17〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態26.前記基材が、実施形態11に記載の伝導性コーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、表面を有する基材を含む物品。
【0075】
実施形態27.550nmで少なくとも75%の光透過率値を有する、実施形態26に記載の物品。
【0076】
実施形態28.前記基材が、可撓性である、実施形態26又は27に記載の物品。
【0077】
実施形態29.前記基材が、透明である、実施形態26又は27に記載の物品。
【0078】
実施形態30.前記基材が、可撓性且つ透明である、実施形態26又は27に記載の物品。
【0079】
実施形態31.前記基材が、セラミック、ポリマー、金属、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上である材料を含む、実施形態26〜30のいずれか1つに記載の物品。
【0080】
実施形態32.前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、二軸延伸ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、実施形態26〜31のいずれか1つに記載の物品。
【0081】
実施形態33.前記基材が、可撓性ガラスを含む、実施形態26〜32のいずれか1つに記載の物品。
【実施例】
【0082】
【表1】
【0083】
グラフェンオキシド(GO)シートの調製
以下の詳細に記載の通り、天然グラファイト粉末からHummers変法を用いてGOシートを合成した。まず、グラファイト粉末(3グラム)を、濃縮されたH
2SO
4(97重量パーセント、12mL)、K
2S
2O
8(2.5グラム)、及びP
2O
5(2.5グラム)からなる80℃の溶液に入れた。ホットプレートを用いて80℃で6時間混合物を維持した。次いで、混合物を室温に冷却し、次いで、0.5Lの脱イオン水で希釈し、一晩放置した。次いで、0.2マイクロメートルのナイロンフィルタ(Waterman International Ltd.(Maidstone,England)から商品名「WATERMAN」として入手)を用いて混合物を濾過し、回収した固体を脱イオンで洗浄して残留酸を除去した。生成物を、周囲条件下で一晩乾燥させて、予酸化グラファイトを得た。次いで、予酸化グラファイトを、以下の工程に従って更なる酸化に供した。簡潔に述べると、1グラムの予酸化グラファイト及び0.5グラムの硝酸ナトリウムをフラスコに入れた。濃縮されたH
2SO
4(97重量パーセント、25mL)を撹拌しながら氷水浴に添加し、3gのKMnO
4を約1時間かけてゆっくり添加した。氷水浴中で2時間撹拌を続けた。混合物を室温で2日間激しく撹拌した後、100mLの5重量パーセントH
2SO
4水溶液を撹拌しながら約1時間かけて添加し、温度を98℃で維持した。得られた混合物を98℃で2時間更に撹拌した。温度を60℃に低下させ、3mLのH
2O
2(30重量パーセント水溶液)を添加し、次いで、混合物を室温で2時間撹拌した。酸化産物を別の0.2マイクロメートルのナイロンメンブレンで回収し、10% w/vHCl水溶液ですすぎ、次いで、多量の脱イオン水で繰り返し洗浄して、GOシート材料を得た。
【0084】
GO−MWCNT複合体の調製及び特性評価
直上に記載した通り調製したGOシート材料を、30Wの出力で30分間超音波装置(QSonica,LLC.(Newton,CT)から商品名「SONICATOR 3000」として入手)における超音波処理によって水に分散させて(0.2mg/mL)、GOコロイド懸濁液を生成した。MWCNTのサンプルを、得られたGOコロイド懸濁液に入れ(MWCNTのGOに対する比率は1:2であり、得られたMWCNTのサンプルは、最初、粒塊の形態であった)、混合物を更に1時間30Wで超音波処理して、GO−MWCNT複合体の懸濁液を得た。GOシート材料を含まないことを除いて、同じ方法でMWCNTの対照懸濁液も調製した。GO−MWCNT複合体の懸濁液及びMWCNTの対照懸濁液を、それぞれ、AFM機器(Asylum Research(Goleta,CA)から商品名「MODEL MFP−3D−BIO」として入手)を用いて、様々なモードで原子力顕微鏡(「AFM」)測定によって調べた。AFM用のサンプルは、新たなシリコンウエハ上に懸濁液のアリコートを滴下し、次いで、周囲条件下で乾燥させることによって調製した。
図1A及び1BにおけるAFMデジタル画像は、各デジタル画像の右側の陰影付きのバーに示されている通り、マイクロメートル単位のx及びy寸法と、ナノメートル単位のz寸法と、を有する。
図1AにおけるAFM画像では、超音波処理の助けを借りても、GOシートを有さないMWCNT 111は、安定な水懸濁液を形成せずに、互いに絡まっているように見え、沈殿及び凝集(例えば、凝集体110)が観察されることが示された。MWCNT材料を添加しなかったGOシート材料は、水及び様々な他の極性有機溶媒における安定且つ均質なコロイド懸濁液を形成したことが別個に観察された(例えば、GOシート材料は、2mg/mL以下でN,N−ジメチルホルムアミドに均質に分散した)。
図1Bは、
図1BにおけるAFM画像に示されている通り、乾燥AFMサンプル中でGOシート120とランダムに結合しているスパゲッティ状のMWCNT 115であると観察されたGO−MWCNT複合体のAFMデジタル画像であり、重大なMWCNT凝集は観察されなかった。
【0085】
実施例1〜6:GO−MWCNT/PEDOT:PSS伝導性インク及び伝導性コーティングの調製及び特性評価
伝導性インクを作製するために、水に分散している、GOシート材料の3mLのサンプル(1.0mg/mL;超音波処理を用いて、水にGOシート材料を分散させた)を、12mLのPEDOT:PSS溶液(水中1.3重量パーセント)に分散させて、一定濃度のGOシート材料(PEDOT:PSS溶液中、分散液1mL当たり0.2ミリグラムのGOシート材料)を得た。GO/PEDOT:PSS分散液の6つのサンプルそれぞれに、選択した量のMWCNTを添加して、以下の表1に示す通り、実施例1〜6について特定の範囲内のMWCNT対GO重量比を得た。これら混合物をそれぞれ、30Wの出力で1時間超音波処理して、GO−MWCNT/PEDOT:PSS分散液を生成した。
【0086】
【表2】
NA=「適用せず」
【0087】
超音波処理工程後、ジメチルスルホキシド(5%体積比)を各GO−MWCNT/PEDOT:PSS分散液に配合して、実施例1〜6の伝導性インクを得た。これらインクを、前処理したガラス基材(各30分間、アセトン、2ープロパノール、及び脱イオン水に浸漬及び超音波処理することによって前処理)にエアブラシを用いて噴霧し、得られた伝導性コーティングを100℃で20分間アニールした。圧縮窒素ガスの圧力(80p.s.i.(0.55メガパスカル)、噴霧角度(45°)及び距離(30cm)、並びにインクの体積(2mL)等のパラメータは、全ての噴霧プロセス中一定に維持した。乾燥コーティングの厚さは、60〜120nmの範囲内であった。得られ伝導性コーティングを、対応するインクの配合中のMWCNTのGOに対する初期比率に従って実施例1〜6のサンプルと命名した。本質的に同じプロトコールを用いて、比較のためにPEDOT:PSS、MWCNT/PEDOT:PSS、及びGO/PEDOT:PSS複合コーティングの対照サンプル(それぞれ、比較例A、比較例B、及び比較例Cと示す)も調製した。表1は、実施例1〜6及び比較例A〜Cについてのサンプル及び測定した特性を要約する。
【0088】
ガラス基材上に配置された伝導性コーティングの光透過性を、直入射でUV−Vis分光計(Varian Australia(Mulgrave,VIC,Australia)から商品名「CARY 50 BIO SPECTROMETER」として入手)を用いて特性評価した。実施例1〜6についての550nmにおける光透過率値を表1に要約する。GO濃度は、実施例1〜6の全てのサンプルにわたって一定であったので、MWCNT濃度は、光透過率に対して直接の効果を有すると考えられた。また、より高いMWCNT濃度を有するコーティングは、透明性が低いようであることも目視で観察された。
【0089】
実施例1〜6のサンプルについての4点シート抵抗測定値を、マルチメーター(Agilent Technologies(Santa Clara,CA)から商品名「MODEL 34401A DIGITAL MULTIMETER」)を用いて得、結果を表1に要約した。示す通り、GO−MWCNT/PEDOTコーティングの抵抗は、MWCNT:GOの重量比が0.25:1から1:1に増加したときに低下したが、該比が1:1から2.5:1に更に増加したときには上昇した。MWCNT:GOの重量比が1:1である実施例3は、900±100オーム/スクエアという最低シート抵抗値を有していた。
【0090】
MWCNTのGOシート材料に対する初期比率が低い場合、MWCNTは、
図2の例示的なSEM画像における実施例3について示されている通り、よく分散しているように見えた。よく分散しているMWCNT 201は、伝導性ネットワークを形成し、低シート抵抗が観察されたと考えられた。
【0091】
実施例5は、MWCNT:GOシートの比(即ち、2:1)がより高く、分散しているMWCNTがSEMを介して観察された(図示せず)が、ポリマーマトリックスに小さな束も観察された。実施例5の伝導性コーティングは、実施例3よりも抵抗が高いことが明らかになった。MWCNTのGOシートに対する比率が更に増大すると、実施例6について観察された抵抗の上昇によって反映されている通り、PEDOT:PSSコーティングの伝導性が更に低下した。
【0092】
実施例3におけるGOシートの驚くほど良好な分散剤の役割を更に理解するために、比較例A〜Cのサンプルについても対照実験を実施した。比較例BにおけるMWCNT及び比較例CにおけるGOの濃度は、実施例3と同じに維持し、観察された結果を表1に要約する。
【0093】
比較例Bのシート抵抗は、約2700オーム/スクエアであり、これは、比較例Aよりも低かった;恐らく、MWCNTの存在は、MWCNTの固有の伝導性に起因してPEDOT:PSSの伝導性を改善した。しかし、比較例Bのシート抵抗は、実施例3のほぼ3倍高かったが、それにもかかわらず、MWCNTの濃度(即ち、0.2mg/mL)は等しかった。これは、実施例3においてGOシートが強い分散剤としての役割を果たしていることを示唆する。
【0094】
実施例3及び比較例Bの表面形態をSEMを介して調べた。実施例3のサンプル(例えば、
図2の201)では微細に分散しているMWCNTが観察されたが、比較例Bのサンプルでは大きなMWCNTの束が可視であった(図示せず)。これは、恐らく比較例BにおけるMWCNTの分散した部分のみが、観察された伝導性に寄与していたことを示唆する。MWCNTの束は、実施例6のサンプルでも観察され、ここでは、伝導性インクにおけるMWCNT濃度は、0.5重量パーセントであると計算された。
【0095】
表1に要約する通り、比較例Cのサンプルは、4000±225オーム/スクエアのシート抵抗を有し、これは、比較例Aの純粋なPEDOT:PSSコーティング(4100±300オーム/スクエア)に非常に近かった。これは、MWCNTの非存在下におけるGOシートが、PEDOT:PSSのみを超える著しい更なる伝導性を提供しなかったことを示唆する。
【0096】
上述の試験及び試験結果は予測ではなく例示のみを意図したものであり、試験方法が変われば異なる結果が生じ得ると考えられる。実施例の項における定量的な値は全て、用いられる手順に伴う一般的に既知の許容誤差を考慮した近似的な値であるものと理解される。上記の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を助ける明確さのために示したものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。