(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192757
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】誘導型電源システム及びこのシステムでの侵入金属検出方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20170828BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20170828BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/60
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-30703(P2016-30703)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2016-96724(P2016-96724A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】104135327
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508167807
【氏名又は名称】富達通科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】蔡 明球
(72)【発明者】
【氏名】▲ちゃん▼ 其哲
【審査官】
早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0084857(US,A1)
【文献】
特開2010−213414(JP,A)
【文献】
特開2008−206305(JP,A)
【文献】
特開2013−132133(JP,A)
【文献】
特開2015−027172(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0054355(US,A1)
【文献】
特開2013−135518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
H02J7/00
H02J5/00
B60L11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出するための、誘導型電源システムに使用される方法であって、当該方法は:
前記誘導型電源システムの少なくとも1つの駆動信号を遮断して、前記誘導型電源システムの給電側コイルの駆動を停止するステップと;
前記給電側コイルの駆動が中断されたときに、前記給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出するステップと;
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含み、
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップは:
しきい値電圧を設定するステップと;
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断された後に、前記しきい値電圧に達する前記コイル信号のピーク数を計算するステップと;
前記ピーク数がしきい値よりも小さい場合に、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在すると判定するステップと;を含む、
方法。
【請求項2】
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップは、前記コイル信号の減衰速度がしきい値よりも大きい場合に、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの前記送電領域内に存在すると判定するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断された後に、前記しきい値電圧に達する前記コイル信号のピーク数を計算するステップは:
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断されたときに、カウンタを有効にするステップと;
前記カウンタを有効にした後に、前記コイル信号のピークが、前記コイル信号の振動サイクルの間に前記しきい値電圧に達しているか否かを検出するステップと;
前記コイル信号のピークが前記しきい値電圧に達したことを検出した場合に、カウンタを増やし、その後、前記コイル信号の別のピークが、前記コイル信号の次の振動サイクルの間に前記しきい値電圧に達しているか否かを検出するステップと;
前記しきい値電圧に達するのに至らない前記コイル信号のピークを検出した場合に、前記カウンタの計数結果を前記しきい値電圧に達する前記コイル信号のピーク数として取得するステップと;を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出するための、誘導型電源システムに使用される方法であって、当該方法は:
前記誘導型電源システムの少なくとも1つの駆動信号を遮断して、前記誘導型電源システムの給電側コイルの駆動を停止するステップと;
前記給電側コイルの駆動が中断されたときに、前記給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出するステップと;
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含み、
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップは:
しきい値電圧を設定するステップと;
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断された後に、前記コイル信号の減衰期間を測定するステップであって、該減衰期間は、前記少なくとも1つの駆動信号が遮断されときに、開始し、前記しきい値電圧に達するのに至らない前記コイル信号のピークが現れたときに、終了する、測定するステップと;
前記減衰期間がしきい値よりも短い場合に、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在すると判定するステップと;を含む、
方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断された後に、前記コイル信号の減衰期間を測定するステップは:
前記少なくとも1つの駆動信号が遮断されたときに、タイマーを有効にするステップと;
前記タイマーを有効にした後に、前記コイル信号のピークが、前記コイル信号の振動サイクルの間に前記しきい値電圧に達しているか否かを検出するステップと;
前記コイル信号のピークが前記しきい値電圧に達したことを検出した後に、前記コイル信号の別のピークが前記コイル信号の次の振動サイクルの間に前記しきい値電圧に達しているか否かを検出するステップと;
前記しきい値電圧に達するのに至らない前記コイル信号のピークが存在することを検出したときに、前記タイマーを停止し、且つ前記タイマーの計時結果を前記コイル信号の減衰期間として取得するステップと;を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出するための、誘導型電源システムに使用される方法であって、当該方法は:
前記誘導型電源システムの少なくとも1つの駆動信号を遮断して、前記誘導型電源システムの給電側コイルの駆動を停止するステップと;
前記給電側コイルの駆動が中断されたときに、前記給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出するステップと;
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含み、
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップは:
複数のしきい値電圧を設定するステップと;
前記複数のしきい値電圧にそれぞれ減衰する前記コイル信号のピークの減衰期間に応じて、前記コイル信号の減衰パターンを取得するステップと;
前記減衰パターンに応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定し、且つ前記侵入金属の種類又は大きさを決定するステップと;を含む、
方法。
【請求項7】
侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出するための、誘導型電源システムに使用される方法であって、当該方法は:
前記誘導型電源システムの少なくとも1つの駆動信号を遮断して、前記誘導型電源システムの給電側コイルの駆動を停止するステップと;
前記給電側コイルの駆動が中断されたときに、前記給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出するステップと;
前記コイル信号の減衰状態に応じて、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含み、
前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定した後に、少なくとも2つの駆動信号を位相シフト方式で開始するステップをさらに含み、
前記少なくとも2つの駆動信号を位相シフト方式で開始するステップは:
前記少なくとも2つの駆動信号を開始するステップであって、前記少なくとも2つの駆動信号のうちの第1の駆動信号の位相と第2の駆動信号の位相とが同一である、開始するステップと;
第1の駆動信号の位相と第2の駆動信号の位相とが逆になるまで、第1の駆動信号の位相及び第2の駆動信号の位相の一方又は両方を徐々に調整するステップと;を含む、
方法。
【請求項8】
前記コイル信号のピーク電圧を検出し、且つ該ピーク電圧に応じて、少なくとも1つのしきい値電圧を設定するステップであって、該少なくとも1つのしきい値電圧は、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するために使用される、設定するステップをさらに含み、
前記少なくとも1つのしきい値電圧は、前記ピーク電圧よりも小さい、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
給電側モジュールを含む誘導型電源システムであって、前記給電側モジュールは:
給電側コイルと;
該給電側コイルに結合され、前記給電側コイルと共に共振するための共振コンデンサと;
前記給電側コイル及び前記共振コンデンサに結合され、給電側コイルを駆動して電力を発生させるために、少なくとも1つの駆動信号を前記給電側コイルに送信するための少なくとも1つの電力駆動ユニットと;
前記給電側コイルでのコイル信号を受信するための給電側プロセッサと;を備えており、
該給電側プロセッサは:
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行する、
誘導型電源システム。
【請求項10】
給電側プロセッサは:
前記少なくとも1つの電力駆動ユニットに結合され、前記少なくとも1つの電力駆動ユニットを制御して、前記少なくとも1つの駆動信号を送信する又は前記少なくとも1つの駆動信号を遮断するためのクロック発振器と;
前記コイル信号のピーク電圧を検出するための電圧検出器と;
前記電圧検出器に結合され、前記ピーク電圧に応じて少なくとも1つのしきい値電圧を設定するための処理装置であって、前記少なくとも1つのしきい値電圧は、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するために使用される、処理装置と;
該処理装置に結合され、それぞれ前記少なくとも1つのしきい値電圧を出力するための少なくとも1つの電圧発生器と;
各々が前記少なくとも1つの電圧発生器の1つに対応しており、比較結果を生成するために、対応する電圧発生器によって出力された前記少なくとも1つのしきい値電圧の1つと前記コイル信号を比較するための少なくとも1つの比較器と;を備えており、
前記処理装置は、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するために、前記比較結果に応じて前記コイル信号の減衰状態をさらに判定する、
請求項9に記載の誘導型電源システム。
【請求項11】
前記給電側モジュールは、前記コイル信号の分圧を行い、次に前記コイル信号を前記給電側プロセッサに出力するための分圧回路さらに備える、
請求項9に記載の誘導型電源システム。
【請求項12】
前記給電側プロセッサは、前記コイル信号の減衰速度がしきい値よりも大きい場合に、前記侵入金属が前記誘導型電源システムの送電領域内に存在すると判定する、
請求項9に記載の誘導型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導型電源システムで使用される方法に関し、具体的には、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導型電源システムにおいて、給電装置は、電磁波を送るために、駆動回路を適用して給電側コイルを駆動させ、共振を発生させる。受電装置のコイルは、この電磁波を受け取って電力変換を行い、受電側の装置に供給される直流電力を生成することができる。一般に、両方のコイルは、電磁波を送受信することが可能である。従って、磁性材料は、電磁エネルギーを誘導側に集約できるように、常にコイルの非誘導の側に配置される。コイルに近い磁性材料は、コイルインダクタンスを増大させることができ、電磁誘導能力をさらに増大させる。また、金属に作用する電磁エネルギーは、金属を加熱することができ、この原理は電磁調理器に似ている。このため、磁性材料の別の機能は、電磁エネルギーによってコイルの背後にある装置の動作が干渉されるのを防止するとともに、安全のために電磁エネルギーによって周囲の金属が加熱されるのを防止するために、電磁エネルギーを切り離すことである。
【0003】
誘導型電源システムは、給電端末(terminal)と、受電端末とを含み、誘導コイルが、電力エネルギー及び制御信号を送信するために、各端末に含められる。このシステムでは、安全性の問題について考慮すべきである。しかしながら、誘導型電源システムを使用する場合に、ユーザは、意図的に又は意図せずに、これら誘導コイル同士の間に金属を挿入し得る。侵入金属が送電中に現れた場合に、コイルによって生成された電磁エネルギーは、侵入金属を急速に加熱し、出火や爆発等の事故の原因となり得る。そのため、工業界は、この安全性の問題に多くの注意を払っており、関連製品は、侵入金属が存在するか否かを検出する能力を有するようにしている。侵入金属が存在する場合に、保護のために電源出力を切るべきである。
【0004】
従来技術の特許文献1は、侵入金属が給電端末と受電端末との間に存在するか否かを検出する方法を提供する。この方法は、販売中の製品に適用されている。しかしながら、この従来技術は、依然として、少なくとも以下の欠点を有している。
【0005】
第1に、従来技術は、給電端末の出力パワーと受電端末の入力電力とを測定することにより電力損失を計算し、この計算した電力損失と所定のしきい値とに基づいて、侵入金属の存在を判定する。電力損失がしきい値を超えた場合に、侵入金属が存在すると判定する。この方法の最大の問題は、しきい値の設定である。しきい値の制限が厳し過ぎる場合に、このシステムは、通常動作中に侵入金属が存在すると誤って判断し得る。しきい値の制限が緩過ぎる場合に、ある種類の侵入金属が存在する場合に、保護がトリガされないことがあり得る。コイン、キー又はペーパークリップ等のより小さな侵入金属が、給電端末の送電領域内に存在する場合に、明らかな電力損失は現れないかもしれないが、侵入金属は依然として著しく加熱され得る。また、しきい値の設定は、多数の物理的なサンプルに基づいて、データ分析を行うことによって決定すべきであり、これは、多大な時間と労力とを消費する。
【0006】
第2に、誘導型電源システムにおいて、給電端末と受電端末との間の送電損失に影響を与える要因は、非常に複雑である。電力損失は、回路素子の機能、コイルと磁性材料とのマッチング、両方の端末におけるコイルの相対距離及び水平方向の位置オフセット、及びコイル同士、例えばコイル上の金属塗料同士等の間の媒体特性等の様々なイベントによって影響を受け得る。多数の影響要因があるので、素子オフセットに起因する製品の電力損失は、異なる。従って、しきい値は、厳しくし過ぎることができず、限定された保護効果となる。
【0007】
第3に、誘導型電源システムに関連した産業では、誘導型電源システムの給電端末と受電端末とは、異なる製造業者によって製造され及び/又は商業的流通に基づいて異なる期間に製造され得る。上記しきい値の設定は、通常給電端末で実施されるが、関連する電力設定を、様々なタイプの受電回路について調整しなければならない。全ての種類の受電回路の特性を十分に考慮することは困難であるので、互換性の問題が避けられない。
【0008】
第4に、電力測定を行うための回路を、給電端末と受電端末とのそれぞれに配置しなければならず、関連する回路コストが必要となる。高精度で電力測定を行うために、より複雑な回路を実装する必要があり、従ってコストがより高くなる。実装の難しさも高くなる。
【0009】
第5に、電力設定が異なると、異なる電力損失を有し得る。例えば、誘導型電源システムは、5ワット(W)に等しい出力パワーを有する。その基本的な電力損失が実質的に0.5W〜1Wの範囲であると仮定すると、電力損失が1W内である場合に、侵入金属によって生成された電力損失が検出されないことがあり得る。出力パワーが50Wに増大した場合に、その基本的な電力損失は、同じ回路設計で5W〜10Wの間の範囲に大幅に増加する。侵入金属を判定するための電力しきい値も、同じ割合で増加しなければならない。このような状態では、多くの種類の侵入金属が検出されないことがあり得る。例えば、ペーパークリップによって生成された電力損失は、非常に小さく、このような電力損失は、従来の侵入金属検出方法では容易に無視されるが、ペーパークリップが受け取った電磁誘導エネルギーは、依然として、高温を発生し且つ事故を引き起こすのに十分な大きさである。換言すれば、従来の侵入金属検出方法は、誘導型電源システムが電力を供給しているときに、特に供給される電力が高い場合に、適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0196544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、誘導型電源システムの保護効果を改善するために、侵入金属を検出する別の方法を提供する必要がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、より効果的な侵入金属の検出を実現し、且つ誘導型電源システムの保護効果をさらに高めるために、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出する方法及びこの方法を用いた誘導型電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを検出するための、誘導型電源システムに使用される方法について開示する。この方法は、誘導型電源システムの少なくとも1つの駆動信号を遮断して、誘導型電源システムの給電側コイルの駆動を停止するステップと;給電側コイルの駆動が中断されたときに、給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出するステップと;コイル信号の減衰状態に応じて、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含む。
【0014】
本発明は、誘導型電源システムについてさらに開示する。誘導型電源システムは、給電側モジュールを含む。給電側モジュールは、給電側コイル、共振コンデンサ、少なくとも1つの電力駆動ユニット、及び給電側プロセッサを含む。給電側コイルに結合された共振コンデンサは、給電側コイルと共に共振を行うために使用される。給電側コイル及び共振コンデンサに結合された少なくとも1つの電力駆動ユニットは、給電側コイルを駆動して電力を発生させるために、少なくとも1つの駆動信号を給電側コイルに送信するために使用される。給電側プロセッサは、給電側コイルでのコイル信号を受信し、次のステップを実行するために使用される。そのステップは、少なくとも1つの電力駆動ユニットを制御して少なくとも1つの駆動信号を遮断し、給電側コイルの駆動を停止するステップと;給電側コイルの駆動が中断されたときに、コイル信号の減衰状態を検出するステップと;コイル信号の減衰状態に応じて、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定するステップと;を含む。
【0015】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、種々の図面及び図に示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明を理解した後に、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る誘導型電源システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る侵入金属の判定プロセスの概略図である。
【
図3】コイル信号を安定して発振させるように給電側コイルを駆動する駆動信号の波形図である。
【
図4】駆動信号が遮断されたときのコイル信号の減衰振動の波形図である。
【
図5A】侵入金属が存在しない場合で駆動信号が遮断されたときのコイル信号の正常な減衰の波形図である。
【
図5B】侵入金属が存在する場合で駆動信号が遮断されたときのコイル信号の減衰の波形図である。
【
図5C】侵入金属が存在する場合で駆動信号が遮断されたときのコイル信号の減衰の波形図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るしきい値電圧を使用してコイル信号の減衰速度を決定するための概略図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る侵入金属を判定する詳細なプロセスを示す概略図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る侵入金属を判定する別の詳細なプロセスを示す概略図である。
【
図9A】駆動信号が遮断されたときに、如何なる侵入金属も含まない状態のコイル信号の減衰の波形図である。
【
図9B】駆動信号が遮断されたときに、侵入金属が存在する状態のコイル信号の減衰の波形図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る駆動信号を遮断することにより、コイル信号の減衰速度を検出する波形図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る位相シフト方式で駆動信号を開始する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照されたい。
図1は、本発明の実施形態に係る誘導型電源システム100の概略図である。
図1に示されるように、誘導型電源システム100は、給電側モジュール1と、受電側モジュール2とを含む。給電側モジュール1は、電源装置10から電力を受け取る。給電側モジュール1は、給電側コイル142と、共振コンデンサ141とを含む。給電側コイル142は、電磁エネルギーを受電側モジュール2に伝えて電力を供給するために使用される。給電側コイル142に結合された共振コンデンサ141は、給電側コイル142と共に共振を行うために使用される。さらに、給電側モジュール1において、給電側コイル142の電磁誘導能力を高め且つ電磁エネルギーがバックエンド回路に影響を与えるのを防ぐために、磁性材料から構成される磁性導体143を選択的に配置してもよい。給電側モジュール1は、電力駆動ユニット121及び122、給電側プロセッサ11、及び分圧回路130をさらに含む。給電側コイル142及び共振コンデンサ141に結合された電力駆動ユニット121及び122は、駆動信号D1及びD2それぞれを給電側コイル142に送信するために使用される。電力駆動ユニット121及び122は、給電側コイル142を駆動して電力を生成して送るように、給電側プロセッサ11によって制御することができる。電力駆動ユニット121及び122の両方がアクティブである場合に、フルブリッジ駆動が行われる。一実施形態では、電力駆動ユニット121及び122の一方のみがアクティブであるか、又は電力駆動ユニット121又は122の一方のみが配置される場合に、ハーフブリッジ駆動がもたらされる。給電側プロセッサ11は、コイル信号C1(すなわち、給電側コイル142と共振コンデンサ141との間の電圧信号)を給電側コイル142から受信し、このコイル信号C1に応じて、侵入金属3が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定することができる。分圧抵抗器131及び132を含む分圧回路130は、給電側コイル142のコイル信号C1を減衰させ、その後、そのコイル信号C1を給電側プロセッサ11に出力することができる。いくつかの実施形態では、給電側プロセッサ11の許容電圧が十分に高い場合に、分圧回路130を適用しなくてもよく、給電側プロセッサ11は、コイル信号C1を給電側コイル142から直接的に受信してもよい。信号解析回路、電源ユニット及び表示ユニット等の他の可能なコンポーネント又はモジュールを、含めてもよく、又はシステム要件に応じて含めなくてもよい。これらのコンポーネントは、本発明の実施形態の例示に影響を与えないので、省略されている。
【0018】
図1を引き続き参照されたい。受電側モジュール2は、給電側コイル142から電力を受け取るために使用される受電側コイル242を含む。受電側モジュール2では、受電側コイル242の電磁誘導能力を高め且つ電磁エネルギーがバックエンド回路に影響を与えるのを防ぐために、磁性材料から構成される磁性導体243を選択的に配置してもよい。受電側コイル242は、受け取った電力をバックエンドの負荷ユニット21に送ることができる。受電側モジュール2における調整回路、共振コンデンサ、整流回路、信号フィードバック回路、及び受電側プロセッサ等の他の可能なコンポーネント又はモジュールを、含めてもよく、又はシステム要件に応じて含めなくてもよい。これらのコンポーネントは、本発明の実施形態の例示に影響を与えないので、省略されている。
【0019】
給電端末(terminal)及び受電端末の両方が、電力測定を行って電力損失の検出によって侵入金属を判定する必要がある従来技術とは異なり、本発明は、給電端末におけるコイル信号のみを読み取ることにより、侵入金属が給電側コイルの送電領域内に存在するか否かを判定する。
図2を参照されたい。
図2は、本発明の実施形態に係る侵入金属の判定プロセス20の概略図である。
図2に示されるように、侵入金属の判定プロセス20は、誘導型電源システム(例えば、
図1に示される誘導型電源システム100の給電側モジュール1)の給電端末に使用され、以下のステップを含む:
ステップ200:開始する;
ステップ202:誘導型電源システム100の駆動信号D1及びD2を遮断して、給電側コイル142の駆動を停止する;
ステップ204:給電側コイル142の駆動が中断されたときに、給電側コイル142でのコイル信号C1の減衰状態を検出する;
ステップ206:コイル信号C1の減衰状況に応じて、侵入金属3が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定する;
ステップ208:終了する;ステップを含む。
【0020】
侵入金属の判定プロセス20によれば、誘導型電源システム100の給電側モジュール1では、駆動プロセス中に駆動信号D1及びD2をしばらくの間遮断してもよい。このとき、電力駆動ユニット121及び122は、給電側コイル142の駆動を停止してもよい(ステップ202)。一般的に、給電側コイル142が正常に駆動されるときに、電力駆動ユニット121及び122によって出力される駆動信号D1及びD2は、互いに反対向きの2つの矩形波である。このような状況では、給電側コイル142でのコイル信号C1は、
図3に示されるように、安定して振動するように見える。給電側コイル142の駆動が中断されたときに、コイル信号C1は、振動を維持するが、給電側コイルと共振コンデンサとの間に残っているエネルギーによって徐々に減衰する。
図4は、コイル信号C1の減衰振動の状況を示す図である。駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、本来矩形波である駆動信号D1及びD2は、それぞれ、高電圧レベルと低電圧レベルとに留まり、給電側コイル142の駆動を停止させる。このとき、コイル信号C1は、減衰を開始するが、振動を維持することができる。その後、給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の減衰状態を検出し(ステップ204)、コイル信号C1の減衰状態に応じて、侵入金属3が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定する(ステップ206)。具体的には、給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の減衰速度に応じて、侵入金属3が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定することができる。
【0021】
図5A、
図5B、及び
図5Cを参照されたい。
図5Aは、侵入金属が存在しない場合で駆動信号D1及びD2が遮断されたときのコイル信号C1の正常な減衰の波形図である。
図5B及び
図5Cは、侵入金属が存在する場合で駆動信号D1及びD2が遮断されたときのコイル信号C1の減衰の波形図である。
図5A〜
図5Cに示される波形は、以下のように比較される。
図5Aでは、駆動信号D1及びD2が再起動されるまで侵入金属が存在しない場合に、コイル信号C1は緩やかに減衰し、ここで減衰速度が、コイルの減衰係数に依存する。
図5Bに示されるように、侵入金属が存在する場合に、コイル信号C1の減衰速度が大幅に増加し得る。つまり、侵入金属は、給電側コイル142によって送られたエネルギーを吸収しながら、コイル信号C1の減衰の減衰係数を著しく増大させ、それによってコイル信号C1の振動振幅が急激に縮小する。
図5Cは、侵入金属がより大きい状態を示しており、コイル信号C1により急激な減衰をもたらしている。上述した特性によれば、しきい値は、給電側プロセッサ11によって、コイル信号C1の減衰速度を決定するために設定してもよい。例えばコイル信号C1の減衰速度がしきい値よりも大きい場合に、給電側プロセッサ11は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在すると判定することができ、それによって電源を切る又は他の保護動作を実行することができる。
【0022】
コイル信号C1の減衰速度を決定する上記方法は、しきい値電圧の設定によって実現することができる。
図6を参照されたい。
図6は、本発明の実施形態に係るしきい値電圧を使用してコイル信号C1の減衰速度を決定するための概略図である。
図6に示されるように、波形Aは、侵入金属が存在しない場合のコイル信号C1のピークの正常な減衰を示しており、波形Bは、侵入金属が存在する場合のコイル信号C1のピークの減衰を示している。コイル信号C1は、時刻t1で減衰し始める。給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の最大電圧よりも小さいしきい値電圧Vthを設定することができる。時刻t2後にコイル信号C1のピーク値がしきい値電圧Vthに減衰する場合に、減衰速度はより遅くなり、給電側プロセッサ11は、侵入金属が存在しないと判断することができる。時刻t2前にコイル信号C1のピーク値がしきい値電圧Vthに減衰する場合に、減衰速度がより速くなり、給電側プロセッサ11は、侵入金属が存在すると判断することができる。
【0023】
図1と共に
図6を引き続き参照されたい。給電側プロセッサ11は、処理装置111、クロック発振器112、電圧発生器113、比較器114、及び電圧検出器115を含む。電力駆動ユニット121及び122に結合されたクロック発振器112は、電力駆動ユニット121及び122を制御して、駆動信号D1及びD2を送信する又は駆動信号D1及びD2を遮断するために使用される。クロック発振器112は、クロック信号を電力駆動ユニット121及び122に出力するパルス幅変調(PWM)発振器又は他のタイプのクロック発振器であってもよい。電圧検出器115は、コイル信号C1のピーク電圧を検出するとともに、検出された電圧情報を処理装置111に送信するために使用される。電圧検出器115は、給電側コイル142でのアナログ電圧をデジタル電圧情報に変換して、この電圧情報を処理装置111に出力するアナログ−デジタル変換器(ADC)であってもよい。電圧検出器115に結合された処理装置111は、次に、ピーク電圧情報に応じてしきい値電圧Vthを設定し、しきい値電圧Vthの情報を電圧発生器113に出力する。こうして、しきい値電圧Vthは、侵入金属3が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定するために使用することができる。電圧発生器113は、しきい値電圧Vthを出力するために使用される。電圧発生器113は、処理装置111からしきい値電圧情報を受信し、この情報をアナログ電圧に変換して出力するようなデジタル−アナログ変換器(DAC)であってもよい。比較器114の入力端子は、しきい値電圧Vthを受信することができ、比較器114の別の入力端子は、給電側コイル142からコイル信号C1を受信することができ、それによって比較器114は、コイル信号C1をしきい値電圧Vthと比較して比較結果を生成することができる。次に、処理装置111は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在するか否かを判定するために、この比較結果に応じて、コイル信号C1の減衰速度を決定する。換言すると、本発明は、しきい値電圧Vthまで減衰するコイル信号C1のピーク電圧の継続時間を取得することにより、侵入金属が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定することができる。
【0024】
一実施形態では、給電側プロセッサ11は、駆動信号D1及びD2が遮断された後に、しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数に応じて、コイル信号C1の減衰速度を決定することができる。
図7を参照されたい。
図7は、本発明の実施形態に係る侵入金属を判定する詳細なプロセス70の概略図である。
図7に示されるように、しきい値電圧Vthに達するピーク数を用いてコイル信号C1の減衰速度を決定するために給電側プロセッサ11により実現される詳細なプロセス70は、以下のステップを含む:
ステップ700:開始する;
ステップ702:しきい値電圧Vthを設定する;
ステップ704:駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、カウンタを有効にする;
ステップ706:コイル信号C1のピークが、コイル信号C1の振動サイクルの間にしきい値電圧Vthに達したか否かを検出する。検出した場合には、ステップ708に進み、それ以外の場合は、ステップ710に進む;
ステップ708:1だけカウンタを増やし、次の振動サイクルを入力する。その後、ステップ706に進む;
ステップ710:カウンタの計数結果を取得する。計数結果は、しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数を指す;
ステップ712:しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数がしきい値よりも小さいか否かを判定する。小さい場合には、ステップ714に進み、それ以外の場合には、ステップ716に進む;
ステップ714:誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在すると判定する;
ステップ716:誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在しないと判定する;
ステップ718:終了する;ステップを含む。
【0025】
侵入金属を判定する詳細なプロセス70によれば、給電側プロセッサ11は、しきい値電圧Vthの値を設定することができる。例えば、給電側プロセッサ11の処理装置111は、電圧検出器115からの電圧情報に応じて、しきい値電圧Vthの値を設定することができる。その後、駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、給電側プロセッサ11は、カウンタを有効にし、コイル信号C1のピーク値を検出し始めることができる。給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の各振動サイクル中に、コイル信号C1のピーク値を検出することができる。ピーク値が依然としてしきい値電圧Vthを超える場合に、給電側プロセッサ11は、次の振動サイクルにおけるピーク値の大きさを検出し、1だけカウンタを増やす。コイル信号C1のピーク減衰に伴って、ピーク値がしきい値電圧Vthまで徐々に下がる。しきい値電圧Vthよりも小さいピークが生じるまで、給電側プロセッサ11は、カウンタの計数結果を取得することができる。この計数結果は、しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数を指す。
【0026】
このような状況では、給電側プロセッサ11は、しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数を用いて、コイル信号C1の減衰速度を決定することができる。しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数が多いほど、侵入金属が存在しないことを意味するようにコイル信号C1の減衰速度がより遅くなる。しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数が少ないほど、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在し得ることを意味するようにコイル信号C1の減衰速度がより速くなる。給電側プロセッサ11は、しきい値を設定することができる。しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数がしきい値よりも小さい場合に、給電側プロセッサ11は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在すると判断することができ、それにより電源を切る又は他の保護動作を行うことができる。対照的に、しきい値電圧Vthに達するコイル信号C1のピーク数がしきい値よりも大きい場合に、給電側プロセッサ11は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在しないと判断することができる。
【0027】
別の実施形態では、給電側プロセッサ11は、駆動信号D1及びD2が遮断された後のコイル信号C1の減衰期間に応じて、コイル信号C1の減衰速度を決定することができる。
図8を参照されたい。
図8は、本発明の実施形態に係る侵入金属を判定する別の詳細なプロセス80の概略図である。
図8に示されるように、コイル信号C1の減衰期間を用いてコイル信号C1の減衰速度を決定するために給電側プロセッサ11により実現される詳細なプロセス80は、以下のステップを含む:
ステップ800:開始する;
ステップ802:しきい値電圧Vthを設定する;
ステップ804:駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、タイマーを有効にする。
ステップ806:コイル信号C1のピークが、コイル信号C1の振動サイクルの間にしきい値電圧Vthに達したか否かを検出する。検出した場合には、ステップ808に進み、それ以外の場合には、ステップ810に進む。
ステップ808:次の振動サイクルを入力する。その後、ステップ806に進む;
ステップ810:タイマーを停止し、タイマーの計時結果を取得する。この計時結果は、コイル信号C1の減衰期間を指す;
ステップ812:コイル信号C1の減衰期間がしきい値よりも短いか否かを判定する。短い場合には、ステップ814に進み、それ以外の場合には、ステップ816に進む;
ステップ814:誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在すると判定する;
ステップ816:誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在しないと判定する。
ステップ818:終了する;ステップを含む。
【0028】
侵入金属を判定する詳細なプロセス80によれば、給電側プロセッサ11は、しきい値電圧Vthの値を設定することができる。同様に、給電側プロセッサ11の処理装置111は、電圧検出器115からの電圧情報に応じて、しきい値電圧Vthの値を設定することができる。駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、給電側プロセッサ11は、タイマーを有効にして、コイル信号C1のピーク値を検出し始める。給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の各振動サイクル中にコイル信号C1のピーク値を検出することができる。ピーク値が依然としてしきい値電圧Vthを超える場合に、給電側プロセッサ11は、次の振動サイクルにおいてピーク値の大きさを検出する。コイル信号C1のピーク減衰に伴って、ピーク値がしきい値電圧Vthまで徐々に下がる。しきい値電圧Vthよりも小さいピークが生じるまで、給電側プロセッサ11は、タイマーを停止し且つタイマーの計時結果を取得することができる。この計時結果は、しきい値電圧Vthまで減衰するコイル信号C1の減衰期間を指す。換言すれば、コイル信号C1の減衰期間は、駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、開始し、しきい値電圧Vthに達するのに至らないコイル信号C1のピークが現れたときに、終了する。
【0029】
このような状況では、給電側プロセッサ11は、しきい値電圧Vthに達するためにコイル信号C1のピーク値に必要とされる減衰期間を用いて、コイル信号C1の減衰速度を決定することができる。しきい値電圧Vthに達するためのコイル信号C1のピーク値の時間が長くなるほど、侵入金属が存在しないことを意味するようにコイル信号C1の減衰速度がより遅くなる。しきい値電圧Vthに達するためのコイル信号C1のピーク値の時間が短くなるほど、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在し得ることを意味するようにコイル信号C1の減衰速度がより速くなる。給電側プロセッサ11は、しきい値を設定することができる。コイル信号C1の減衰期間がしきい値Vthよりも短い場合に、給電側プロセッサ11は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在すると判断することができ、それにより電源を切る又は他の保護動作を行うことができる。対照的に、コイル信号C1の減衰期間がしきい値Vthよりも長い場合に、給電側プロセッサ11は、誘導型電源システム100の送電領域内に侵入金属が存在しないと判断することができる。
【0030】
コイル信号C1の減衰速度を用いて侵入金属を判定する上記方法は、受電端末における負荷の影響を受けるために困難性を伴うことに注意されたい。すなわち、給電側モジュール1が電力を供給している場合でも、侵入金属の検出は、駆動信号D1及びD2を少しの間遮断することによって依然として行うことができる。受電端末の負荷は、コイル信号C1の減衰状態及び減衰速度を変化させない。
図9A及び
図9Bを参照されたい。
図9A及び
図9Bは、受電端末が負荷を有するような状況を示す。コイル信号C1の波形に示されるように、給電側コイル142は、受電端末からフィードバック信号を受信する。
図9Aは、駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、如何なる侵入金属も含まない状態のコイル信号C1の減衰の波形図である。
図9Bは、駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、侵入金属が存在する状態のコイル信号C1の減衰の波形図である。
図9A及び
図9Bから分かるように、給電側モジュール1が電力を供給している場合でも、給電側プロセッサ11は、駆動信号D1及びD2が遮断されたときに、侵入金属が存在することによってコイル信号C1の減衰速度の明らかな変化を依然として検出することができる。減衰速度は、給電端末が電力を供給しているか否かによって影響されない。また、コイル信号C1の減衰速度は、給電側コイル142の出力パワーを大きくした場合でも、影響されない。受電端末が負荷を有する場合に、コイル信号C1の振幅が駆動プロセス中に変化することがあり得るので注意されたい。このような状況では、電圧検出器115は、コイル信号C1のピーク電圧を直ちに取得することができ、それによって給電側プロセッサ11は、コイル信号C1の減衰速度を正確に検出するために、電圧検出器115によって受信されたピーク電圧の大きさに応じてしきい値電圧Vthを調整することができる。具体的には、給電側プロセッサ11は、通常の運転下でしきい値電圧Vthを給電側コイル142のピーク電圧よりも小さくなるように設定することができ、それによってしきい値電圧Vthを、信号減衰を検出するために使用することができる。
【0031】
また、駆動信号D1及びD2を遮断することによりコイル信号C1の減衰速度を検出する方法は、電力出力プロセスの間に非常に短い時間に亘って遮断のみを行う必要があり、送電に影響を及ぼすべきではない。
図10を参照されたい。
図10は、本発明の実施形態に係る駆動信号D1及びD2を遮断することにより、コイル信号C1の減衰速度を検出する波形図である。
図10に示されるように、V1は、誘導型電源システム100により負荷に出力された出力電圧を表す。受電端末は、大きな調整コンデンサを常に有しているので、駆動信号D1及びD2の短期間の遮断による出力電圧V1への影響は、非常に小さくなる。
【0032】
侵入金属が存在するか否かを判定するためにコイル信号C1の減衰速度を検出することに加えて、給電側プロセッサ11は、侵入金属の種類や大きさをさらに決定できるということに注意されたい。実施形態では、給電側プロセッサ11は、複数のしきい値電圧を設定し、複数のしきい値電圧までそれぞれ減衰するコイル信号C1のピークの減衰期間に応じて、コイル信号C1の減衰パターンを取得することができる。その後、給電側プロセッサ11は、侵入金属が誘導型電源システム100の送電領域内に存在するか否かを判定する、及びコイル信号C1の減衰パターンに応じて侵入金属の種類やサイズも決定することができる。例えば、2つのしきい値電圧Vth1,Vth2が設定されたときに、給電側プロセッサ11は、しきい値電圧Vth1まで減衰するコイル信号C1のピークの減衰期間(又はしきい値電圧Vth1を超えるピーク数)を取得することができ、及びしきい値電圧Vth2まで減衰するコイル信号C1のピークの減衰期間(又はしきい値電圧Vth2を超えるピーク数)も取得することができる。給電側プロセッサ11は、侵入金属の大きさや種類を決定するために、同様にコイル信号C1の減衰勾配を計算することができる。異なる種類の金属は、異なる減衰パターンを有すると考えられる。例えば、鉄や銅は、より速い減衰するので、コイル信号C1の測定された減衰勾配が大きくなる。対照的に、アルミニウムは、比較的遅い減衰となり得る。加えて、より大きなサイズの侵入金属も、大きな勾配を生じ得る。様々な種類の侵入金属の決定によれば、システムは、異なる種類の侵入金属によって生成された危険な兆候のレベルに応じて、適切な保護動作を行うことができる。
【0033】
この場合に、給電側プロセッサ11は、2つの電圧発生器と、2つの比較器とを含むことができ、2つの電圧発生器は、しきい値電圧Vth1及びVth2をそれぞれ出力し、及び2つの比較器は、それに対応して、コイル信号C1をしきい値電圧Vth1及びVth2とそれぞれ比較する。誘導型電源システム100の製造業者は、複数のしきい値電圧を用いて侵入金属の大きさや種類を決定するために、実際の要件に応じて複数の電圧発生器及び比較器を給電側プロセッサ11に配置してもよい。
【0034】
駆動信号D1及びD2が遮断された後であって、誘導型電源システム100の送電領域に侵入金属が存在するか否かが判定された後に、駆動信号D1及びD2は、コイル信号C1の振幅の瞬間的な且つ著しい立ち上がりによって回路部品が焼き切れるのを防止するために、位相シフト方式で再起動し得ることがあるのを注意されたい。
図11を参照されたい。
図11は、本発明の実施形態に係る位相シフト方式で駆動信号D1及びD2を開始する概略図である。
図11に示されるように、駆動信号D1及びD2は、遮断されたときに、高電圧レベルと低電圧レベルとにそれぞれ留まる。駆動信号D1及びD2が再起動されるときに、駆動信号D1は、低電圧レベルに切り替えられ、その後、駆動信号D1及びD2は、高電圧レベルに同時に切り替えられる。このとき、駆動信号D1及びD2は、共振効果を生成しないような同位相であり、従って、コイル信号C1の振幅が大幅に立ち上がらないようにすることができる。続いて、クロック発振器112は、駆動信号D1の位相と駆動信号D2の位相とが逆になるまで、駆動信号D1及びD2の位相のいずれか一方又は両方を徐々に調整する。例えば、クロック発振器112は、駆動信号D1又はD2を切り替える時点を微調整することができ、これら2つの駆動信号D1又はD2が徐々に逆位相に達することを可能にする。位相調整を開始した後に、駆動信号D1及びD2の駆動能力を徐々に増大させることができ、給電側コイル142の共振回路で実現される駆動効果を徐々に高めることができる。これは、コイル信号C1の振幅を増大させる。結果として、位相シフト方式によって、コイル信号C1の振幅の瞬間的で且つ大幅な立ち上がりによって回路部品が焼き切れるのを防止することができる。
【0035】
上記説明から分かるように、本発明は、コイル信号の減衰状態を検出することによって実現されるように、誘導型電源システムの送電領域内に侵入金属が存在するか否かを判定することができる。当業者であれば、修正及び変更を同様に行うことができる。例えば、
図1に示される給電側プロセッサ11の構造は、様々な実装形態のうちの1つのみを示す。実際には、クロック発振器112、電圧発生器113、比較器114、及び電圧検出器115等のモジュールは、給電側プロセッサ11に含めてもよく、又は給電側モジュール1にそれぞれ配置してもよい。各モジュールの実装態様を、本開示に記載の範囲に限定すべきではない。上記のように、給電側モジュール1は、侵入金属を感知する要件に応じて、複数の電圧発生器及び比較器を含むことができる。例えば、感知要件が侵入金属の存在のみを判定する場合に、1つの電圧発生器及び1つの比較器は、この要件を満たすのに十分である。感知要件が侵入金属の大きさや種類を決定する必要がある場合に、この決定を行うために、複数の電圧発生器及び比較器を配置することができる。この決定の精度を高めるために、複数の電圧発生器及び比較器を使用してもよい。また、上記実施形態では、2つの駆動信号D1及びD2は、コイルの駆動が中断されたときに、異なる電圧レベルに留まり、別の実施形態では、2つの駆動信号D1及びD2は両方とも、コイルの駆動が中断されたときに、高電圧レベル又は低電圧レベルに留まることができる。これは、本明細書で限定されるものではない。また、上記実施形態は、侵入金属が存在するか否かを判定するために、コイル信号の減衰速度を検出することを狙いとしている。実際には、減衰速度を検出する代わりに、本発明の実施形態は、ピーク値の下降勾配又は減衰加速度等の他の減衰特性を検出することにより侵入金属を判定することもできる。実施形態では、給電側プロセッサ11は、検出した減衰パターンとの比較及びマッチングを行うために使用される種々の侵入金属の減衰パターンを記憶するメモリも含むことができる。
【0036】
侵入金属が非常に小さい場合であっても、コイルの駆動が中断されたときに、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域に入る限り、侵入金属は、依然としてコイル信号の減衰状態に影響を与え得るということに注意されたい。従って、本発明は、コイン、キー又はペーパークリップ等の小さな侵入金属を検出することができる。また、出力パワーが変化しても、同一の侵入金属は、依然として同様のパターン及び同様の速度の信号減衰をもたらし得る。このような状態では、本発明の侵入金属検出方法は、あらゆる出力パワー値を含む誘導型電源システムに適用することができる。従って、誘導型電源システムの電力設定値の増加は、侵入金属検出の電力損失のしきい値が従来技術のように容易に決定できないような問題に制限されるものではない。また、本発明の侵入金属検出方法は、給電端末のみで実現することができ、異なる製造業者によって製造されたあらゆる受電側モジュールに適合させることができる。つまり、給電端末で実現される本発明の侵入金属検出方法は、受電端末との互換性の問題を有していない。また、コイル信号の駆動の中断によるコイル信号の減衰が、受電側負荷、出力パワーの大きさ、及び/又はその他の干渉によって容易に影響を受けず、対応するしきい値を正確に設定することができ、小さな貫入金属の存在を効果的に判定することが可能になる。本発明の別の利点は、侵入金属検出方法が、追加のハードウェア回路を必要とせず、給電側プロセッサのソフトウェア制御のみで実現できることである。従って、回路のコストは、管理下に置くことができる。
【0037】
要約すれば、本発明は、給電側コイルでのコイル信号の減衰状態を検出することにより、侵入金属が誘導型電源システムの送電領域内に存在するか否かを判定することができる。侵入金属の正確な検出を実現するために、駆動信号は、コイル駆動の動作中に給電側コイルの駆動を停止するために遮断してもよい。コイル信号の減衰状態は、駆動が中断されたときに、検出することができ、それによって侵入金属が存在するか否かを判定することができる。その結果、侵入金属検出方法をより高い精度で実現することができる。これは、誘導型電源システムでの保護効果を高める。また、本発明の侵入金属検出方法により小さな侵入金属でも検出することができる。
【0038】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置及び方法の多くの修正及び変更がなされ得ることを容易に理解するだろう。従って、上記開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ制限されるものとして解釈すべきである。