特許第6192764号(P6192764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192764
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】組織結紮装置及びその操作
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】20
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-77468(P2016-77468)
(22)【出願日】2016年4月7日
(62)【分割の表示】特願2014-179551(P2014-179551)の分割
【原出願日】2010年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-163715(P2016-163715A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】61/165,828
(32)【優先日】2009年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506119073
【氏名又は名称】センターハート・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SentreHEART, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ダブリュー・フン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・エイ・セイバー
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド・セイガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・エイチ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ダグラス・ヘルマス
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド・エム・エスカノ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・トッド・エリソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・コーン
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/121278(WO,A2)
【文献】 特開平07−299073(JP,A)
【文献】 特開平06−319742(JP,A)
【文献】 特表2002−512071(JP,A)
【文献】 米国特許第05336229(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0294175(US,A1)
【文献】 特許第5612073(JP,B2)
【文献】 特許第5918321(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長体と、
前記細長体の末端部から延びるスネアループアセンブリであって、スネアと縫合糸とを備え、該縫合糸は縫合糸ループと結び目とを有し、前記縫合糸ループは前記スネアに解放可能に結合されている、スネアループアセンブリと、
余分な縫合糸が前記細長体から出るのを一時的に防ぐように構成された縫合糸管理機構と、を備え、
前記縫合糸管理機構の少なくとも一部は、前記細長体に対して相対移動可能とされている、組織閉鎖装置。
【請求項2】
前記余分な縫合糸は前記縫合糸ループの一部を形成する、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項3】
前記縫合糸管理機構は、前記縫合糸ループに所定以上の力が加えられたときに前記縫合糸管理機構から前記縫合糸ループを解放するように構成されている、請求項2に記載の組織閉鎖装置。
【請求項4】
前記縫合糸管理機構の一部は、前記縫合糸管理機構から前記縫合糸ループを解放させるように変形可能に構成されている、請求項2に記載の組織閉鎖装置。
【請求項5】
前記縫合糸管理機構は、変形可能な縫合糸フックを備えている、請求項2に記載の組織閉鎖装置。
【請求項6】
前記縫合糸管理機構は、前記変形可能な縫合糸フックが所定位置を越えて末端方向に動くことを阻止する停止体を更に備える、請求項5に記載の組織閉鎖装置。
【請求項7】
前記変形可能な縫合糸フックは、前記スネアループアセンブリが閉じられたときに前記細長体の中に余分な縫合糸を引き込むように構成されたばねを更に備える、請求項5に記載の組織閉鎖装置。
【請求項8】
前記ばねは、前記スネアの周囲に配置されている、請求項7に記載の組織閉鎖装置。
【請求項9】
前記変形可能な縫合糸フックは、前記スネアの移動量の半分だけ動くことで前記縫合糸ループの大きさを前記スネアループアセンブリと同じ大きさに維持するように構成されている、請求項5に記載の組織閉鎖装置。
【請求項10】
前記変形可能な縫合糸フックは、余分な縫合糸が前記細長体から引き出され得るように伸張可能に構成されている、請求項5に記載の組織閉鎖装置。
【請求項11】
前記変形可能な縫合糸フックは、伸縮性材料からなる、請求項10に記載の組織閉鎖装置。
【請求項12】
前記縫合糸管理機構は、前記細長体に対して相対移動可能とされている、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項13】
前記細長体は管腔を備え、
前記縫合糸管理機構と前記スネアの少なくとも一部とは、前記管腔内に収容されている、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項14】
前記縫合糸管理機構と前記スネアとの間の絡まりを抑制するように構成されたスリーブを更に備えた、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項15】
前記スリーブは、第1の管腔及び第2の管腔を備え、
前記縫合糸管理機構は、前記第1の管腔を通過し、
前記スネアは、前記第2の管腔を通過している、請求項14に記載の組織閉鎖装置。
【請求項16】
前記余分な縫合糸は、前記縫合糸ループを形成し、
前記スリーブは、前記縫合糸管理機構が該縫合糸管理機構から前記縫合糸ループを解放させるための停止体として機能するものである、請求項14に記載の組織閉鎖装置。
【請求項17】
前記スリーブは、前記スネアに取り付けられている、請求項14に記載の組織閉鎖装置。
【請求項18】
前記スネアループアセンブリは、前記スネアに前記縫合糸ループを解放可能に結合させる保持部材を更に備えた、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項19】
前記縫合糸管理機構は、ばねを有するフックを備え、
前記組織閉鎖装置は、第1の部材を更に備え、
前記スネアの自由端と前記ばねとは、前記第1の部材に結合されている、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【請求項20】
前記縫合糸管理機構は、プーリー縫合糸を備えた、請求項1に記載の組織閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関係出願への相互参照]
本願は、参照により全文が本願に援用される2009年4月1日に提出された米国仮特許出願第61/165,828号に対し優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般的に、外科的、低侵襲、または血管内アプローチにより左心耳等の組織を結紮する装置および方法と、かかる装置を作動させるハンドルとに、関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動は何百万もの患者を苦しめている一般的問題である。心房細動は左心房の心耳にて血栓や凝血塊の形成をしばしば招く。血栓が移動し遠隔臓器を閉塞すると卒中等の有害事象が起こり問題となる。このため、心房細動を患う患者のほとんどは血栓の形成を防ぐため1つ以上の抗凝血剤による治療を受けている。ただし抗凝血剤は、特に高齢者において健康上のリスクを投げかける。出血等のリスクのため、利用者にはライフスタイルの大幅な変化がしばしば要求される。
【0004】
左心耳における血栓形成の潜在的問題に対処するためいくつかの方法が開発されてきた。一方法では、左心耳を、その基部すなわち、左心耳が心房とつながる入口狭窄部に沿って縫合する。こうすることで心耳内への血流は遮断され、心耳における血栓形成リスクはなくなる。通常これは心臓切開手術によって行われるが、特に高リスクの人や心臓切開手技を別途受けている人への適用は制限される。加えて、心臓切開手術には全身麻酔が必要となるほか周知のリスクが数多くあるため、あまり望ましくない。
【0005】
他の方法も検討されてきた。これらの方法には、心耳の基部をステープルで留める方法や、空間を占拠または閉塞する部材で心耳を満たす方法がある。心耳は脆く破裂しやすいためステープリングは好ましくなく、閉塞装置は心耳内への全血流を効果的に防がない。
【0006】
したがって、左心耳や他の適切な組織を閉じるさらなる装置および方法が望まれる。特に、胸部を切開する必要を回避するためには、低侵襲技法、血管内技法、またはこれらの技法の組み合わせを使用し左心耳を閉じる装置および方法が望まれる。勿論、切開外科手技用のさらなる装置も、特にこれが標準的な装置を凌ぐさらなる利点を提供するなら、望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、1つ以上の組織を閉じる装置と、これらの装置を操作する機構とを、説明する。概して、ここで説明する装置は、スネアと縫合糸ループとを有するスネアループアセンブリと、細長体と、ハンドルに装着されたスネアループアセンブリを操作する機構とを、備える。いくつかの変形例において、スネアループアセンブリは、縫合糸ループとスネアとを解放可能に結合する保持部材を備える。別の変形例において、装置は、スネアループアセンブリから縫合糸ループが意図せず分離するのを防ぐのに役立つ1つ以上の減力縫合糸ロックを備える。
【0008】
一般的に、細長体はハンドルへ取り付けられ、1つ以上の管腔を備える。いくつかの変形例において、細長体は1つの管腔を備える。別の変形例において、細長体は2つの管腔を備える。さらに別の変形例において、細長体は3つ以上の管腔を備える。いくつかの変形例において、細長体は、1つ以上の管腔のサイズまたは形を変化させるか、または1つ以上の管腔を2つ以上の副管腔に分割する、1つ以上の分離管を、備える。加えて、いくつかの変形例において、細長体は先端部分を備える。いくつかの変形例において、先端部分は細長体から独立して形成され、細長体へ取り付けられる。別の変形例において、先端部分は細長体と一体的に形成される。先端部分は、その中を通過する適当数の管腔または副管腔を有する。いくつかの変形例において、先端部分は1つ以上の分離管を少なくとも部分的に収容する。いくつかの変形例において、先端部分は、縫合糸ループの縫合糸の結び目を少なくとも一時的に収容する結び目受入凹所を、備える。これらの変形例において、先端部分は、結び目受入凹所から縫合糸の結び目を排出する1つ以上の要素を、備える。これらの変形例では、結び目受入凹所から縫合糸の結び目を排出するため、結び目受入凹所にてバルーンまたは他の拡張可能構造が拡張される。別の変形例では、結び目受入凹所から縫合糸の結び目を排出するためプッシャが使用される。
【0009】
いくつかの変形例において、装置は、細長体の中で縫合糸ループの一部分を保持する1つ以上の縫合糸管理要素を、備える。さらに別の変形例において、装置は1つ以上の縫合糸フックを備える。いくつかの変形例において、1つ以上の縫合糸フックは、縫合糸フックへ取り付けられる1つ以上のばねを、備える。これらの変形例において、1つ以上のばねは、スネアループアセンブリのスネアの周りに同心円状に配置される。別の変形例では、細長体の中で余分な縫合糸を保持するため分離管が使用される。これらの変形例において、閉鎖装置は、縫合糸の一部を解放可能に保持する縫合糸管を、さらに備える。縫合糸管は、縫合糸ループが締められるときに縫合糸管の中に保持された縫合糸が縫合糸管の一部分の中で引き裂かれるか又はちぎれるように構成される。いくつかの変形例において、縫合糸管の一端は分離管へ取り付けられ、縫合糸管の他端はスネアループアセンブリの1つ以上の構成品(例えばスネア、保持部材、縫合糸ロック等)へ取り付けられる。いくつかの変形例において、縫合糸管はその側面に1つ以上の溝または切り込みを備える。別の変形例において、縫合糸管はその中に配置された1つ以上の強化部材を備える。
【0010】
別の変形例において、閉鎖装置はプーリー縫合糸を備える。これらの変形例において、プーリー縫合糸は、縫合糸ループの一部分に巻き付けられるか、または縫合糸ループの一部分にまたがって折り返される。別の変形例において、プーリー縫合糸は、1つ以上の変形可能要素により縫合糸ループの一部分へ一時的に取り付けられる。いくつかの変形例において、プーリー縫合糸の一端は縫合糸ロックによりスネアへ一時的に又は永久的に取り付けられる。プーリー縫合糸の他端は、装置ハンドルの1つ以上の構成品へ取り付けられる。これらの変形例において、プーリー縫合糸の一端は縫合糸フォブへ取り付けられる。これらの変形例において、縫合糸ループの一端は同じ縫合糸フォブへ取り付けられる。
【0011】
本明細書で説明するハンドルは、適当な要素の構成または要素の組み合わせを有する。いくつかの変形例において、ハンドルは1つ以上の装置導入部を備える。これらの変形例において、装置導入部はガイドワイヤ導入部である。別の変形例において、ハンドルは、ハンドルが閉鎖装置の残りの部分から分離するのを防ぐのに役立つ張力緩和部分を、備える。さらに別の変形例において、ハンドルは、縫合糸ループを締めるよう構成された1つ以上の要素を備える。縫合糸ループを締めることにより、縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くか、スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放するか、または標的組織を結紮する。例えばいくつかの変形例において、この要素はスネア操作部である。別の変形例において、この要素は縫合糸ノブである。いくつかの変形例において、装置は実際のハンドルなしで作動され且つ操作される。これらの変形例では、ユーザにより操作されるコンピュータを使用する外科用マスタースレーブシステム等、1つ以上の装置またはシステムが、装置を操作するため使用される。
【0012】
本明細書では1つ以上の組織を閉じる方法も説明される。いくつかの変形例において、該方法は、身体内へ閉鎖装置を導入するステップを備え、該閉鎖装置は、開形状と閉形状とを有し且つスネアと縫合糸ループとを備えるスネアループアセンブリを、備え、縫合糸ループは、スネアループアセンブリが閉形状になっているときにたるみを有する。スネアループアセンブリはその閉形状で標的組織まで前進させられ、その開形状に開かれ、標的組織上に前進させられ、標的組織の周辺で閉じられる。次に縫合糸ループからたるみが取り除かれ、スネアループアセンブリから縫合糸ループを分離し且つ標的組織を結紮するため、縫合糸は締められる。これらの方法の閉鎖装置が本明細書で説明するいずれかの適当な閉鎖装置であることは理解されたい。いくつかの変形例において、方法は、スネアループアセンブリの位置決めを支援するため、左心耳の入口に拡張可能構造をセットするステップを、備える。いくつかの変形例では、1つ以上の拡張可能構造が左心耳の内部で解放され、左心耳内に維持される。別の変形例では、左心耳にてボーラスまたは閉塞構造を形成することを支援するため、1つ以上の塞栓物質または止血材が左心耳へ送り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スネアループアセンブリを有する一例証的装置の末端の図である。
図2】縫合糸フックを含むスネアループアセンブリの末端の図である。
図3A】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの一変形例の斜視図である。
図3B図3Aに図示されたハンドルの底断面図である。
図4】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図5】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図6】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図7】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図8】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図9】本明細書で説明する装置との使用に適したハンドルの変形例の斜視図である。
図10】本明細書で説明する閉鎖装置の2つの変形例の部分の側断面図である。
図11】本明細書で説明する閉鎖装置の2つの変形例の部分の側断面図である。
図12】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適したスネアループアセンブリの2つの変形例を示す。
図13A】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適したスネアループアセンブリの2つの変形例を示す。
図13B】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適したスネアループアセンブリの2つの変形例を示す。
図13C】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適したスネアループアセンブリの2つの変形例を示す。
図14】本明細書で説明する閉鎖装置の一例証的変形例の斜視図を示す。
図15】プーリー縫合糸を備える、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例の一部分の側断面図を示す。
図16A】スネアが細長体へ解放可能に接合される、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
図16B】スネアが細長体へ解放可能に接合される、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
図17A】スネア構成の種々の例証的変形例を示す。
図17B】スネア構成の種々の例証的変形例を示す。
図17C】スネア構成の種々の例証的変形例を示す。
図17D】スネア構成の種々の例証的変形例を示す。
図18A】スネアの一変形例の斜視図を示す。
図18B】スネアの一変形例の側面図を示す。
図18C図18Aおよび18Bのスネアを使って組織を捕捉する方法を示す。
図18D図18Aおよび18Bのスネアを使って組織を捕捉する方法を示す。
図19A】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19B】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19C】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19D】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19E】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19F】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図19G】本明細書で説明する閉鎖装置との使用に適した結び目遮蔽機構の数通りの変形例を示す。
図20A】本明細書で説明する装置で使用される保持部材を示す。
図20B】本明細書で説明する装置で使用される保持部材を示す。
図20C】本明細書で説明する装置で使用される保持部材を示す。
図21】本明細書で説明する装置との使用に適した細長体の一例証的変形例を示す。
図22A】本明細書で説明する装置との使用に適した分離管の一変形例の斜視図を示す。
図22B】本明細書で説明する装置との使用に適した分離管の一変形例の上面図を示す。
図22C】本明細書で説明する装置との使用に適した分離管の別の変形例の斜視図を示す。
図22D】本明細書で説明する装置との使用に適した分離管の別の変形例の上面図を示す。
図23A】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の一例証的変形例の正面図を示す。
図23B図23Aの先端部分の側断面図を示す。
図23C図23Aの先端部分の側断面図を示す。
図24A】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の2つの変形例の部分を示す。
図24B】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の2つの変形例の部分を示す。
図25A】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の一変形例の斜視図を示す。
図25B】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の一変形例の正面図を示す。
図25C】本明細書で説明する装置との使用に適した先端部分の一変形例の側断面図を示す。
図25D図25A〜25Cに図示された先端部分を組み込んだ閉鎖装置の一変形例の側断面図を示す。
図26A】分離管を備える閉鎖装置の一例証的変形例を示す。
図26B】分離管を備える閉鎖装置の一例証的変形例を示す。
図27】分離管と縫合糸管とを備える閉鎖装置の一例証的変形例を示す。
図28A】本明細書で説明する装置との使用に適した縫合糸管の一変形例を示す。
図28B】本明細書で説明する装置との使用に適した縫合糸管の一変形例を示す。
図29】本明細書で説明する装置との使用に適した縫合糸管の側断面図を示す。
図30A】プーリー縫合糸を備える、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
図30B】プーリー縫合糸を備える、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
図30C】プーリー縫合糸を備える、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
図30D】プーリー縫合糸を備える、本明細書で説明する閉鎖装置の一変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態では、閉鎖装置と、閉鎖装置を作動させるハンドルと、1つ以上の閉鎖装置を使用し組織を閉じる方法とを、説明する。概して、前記閉鎖装置は、参照により全文を本願に援用する2008年3月5日に提出された米国特許出願第12/055,213号、表題「Devices, Systems, and Methods for Closing the Left Atrial Appendage(左心耳を閉じる装置、システム、および方法)」に記載されたものと同様の、スネアと縫合糸ループとを有するスネアループアセンブリを備える。ここで説明する装置は、(例えば胸郭の上方、下方若しくは中の小さい切開を通じた、肋軟骨または剣状突起内の切開を通じた、穴を通じた、又は、血管系を通じた)左心耳への低侵襲アクセス用に適している。
【0015】
概して、ここで説明する閉鎖装置は、細長体とスネアループアセンブリとを、備える。いくつかの変形例において、閉鎖装置はハンドルをさらに備える。後ほど詳述するように、細長体を通じてスネアループアセンブリを操作し且つ作動させるには、ハンドルや他の操作機構(外科用マスタースレーブロボットシステム等)が使用される。スネアループアセンブリは、組織を一時的または永久的に閉じるか、締めるか、結紮するか、あるいは制限するために使用される。これを達成するため、スネアループアセンブリは、後ほど詳述するように、送出すなわち「閉」形状と、展開すなわち「開」形状との間で変化させることができる。スネアループアセンブリを閉形状にすることにより、標的位置へのスネアループアセンブリの地道な(low-profile)前進が可能になるほか、標的組織の周辺でスネアループアセンブリを閉じることが可能となる。逆に、スネアループアセンブリを開形状にすることにより、1つ以上の標的組織の周辺にスネアループアセンブリを配置することが可能となるほか、スネアループアセンブリによって閉じられた1つ以上の標的組織を解放することが可能となる。
【0016】
細長体の末端は使用中に身体内の標的組織(左心耳等)に向けて前進させられる。この前進は低侵襲方式で行われる。前進中はスネアループアセンブリを閉形状にすることで、組織や他の障害物にスネアループアセンブリがひっかかったりつかえたりするのを防ぐことができる。細長体の末端が標的組織または標的組織の近くに到達したら、スネアループアセンブリを展開形状に開く。次に、スネアループアセンブリを前進、移動、または操作することで標的組織の少なくとも一部分を取り囲む。次に、取り囲まれた組織の周辺でスネアループアセンブリを閉じることにより標的組織を閉じるか、結紮するか、または制限する。必要に応じスネアループアセンブリを再び開き、移し、再び閉じることもできる。いくつかの例では、標的組織を閉じた状態に保つため、縫合糸ループ(図示せず)または他の制限装置が閉められ、閉鎖装置から解放される。閉鎖装置を身体から取り除くには、スネアループアセンブリを再び開いて標的組織を解放し(縫合糸ループまたは他の閉鎖装置はその場所にとどまる)、スネアループアセンブリと細長体を引き込む。ひとたび標的組織が解放されたら、地道な(low-profile)引き込みを促進するためスネアループアセンブリを閉じる。
【0017】
後ほど詳述するように、閉鎖装置は1つ以上のさらなる機能を含む。いくつかの変形例において、スネアループアセンブリは1つ以上の減力縫合糸ロックを備える。後ほど詳述するように、これらの要素はスネアループアセンブリの種々構成品を解放可能に又は永久的に接合する働きをする一方で、スネアループアセンブリの1つ以上の部分へ伝達される力を減少させる。別の変形例において、閉鎖装置は、装置が開および/または閉形状になっているときに細長体の内部で縫合糸ループの少なくとも一部分を維持するのに役立つ1つ以上の機能を、備える。これらの変形例において、閉鎖装置は、スネアループアセンブリの一部分を係止する縫合糸フックを、備える。別の変形例において、細長体は1つ以上の分離管を備える。この分離管はさらに、分離管へ取り付けられ縫合糸ループの少なくとも一部分を解放可能に保持する縫合糸管を、備える。さらに別の変形例において、細長体は、スネアループアセンブリの1つ以上の部分を係止するプーリー縫合糸を、備える。これらの機能は後ほど詳述するが、ここで説明する閉鎖装置がこれらの機能の任意の組み合わせを備え得ることは理解されたい。
【0018】
閉鎖装置(1400)の一例証的変形例を図14に示す。この図には、スネアループアセンブリ(1402)と、細長体(1404)と、ハンドル(1406)とが、図示されている。上述したように、ハンドル(1406)は、細長体(1404)を通じてスネアループアセンブリ(1402)を操作し且つ作動させ、閉形状(図14に図示)と展開形状(図示せず)との間で、および、その逆で、スネアループアセンブリ(1402)を動かすため、使用される。
【0019】
[スネアループアセンブリ]
上述したように、ここで説明する閉鎖装置のスネアループアセンブリは1つ以上の標的組織を一時的に閉じるため、または制限するため、使用される。一般的に、スネアループアセンブリは、スネアと、縫合糸ループと、スネアと縫合糸ループとを少なくとも一時的に接合する保持部材と、を備える。スネアループアセンブリはまた、後ほど詳述する1つ以上の減力縫合糸ロックを備える。スネア(102)と、縫合糸ループ(104)と、保持部材(106)とを備えるスネアループアセンブリ(100)の一例証的変形例を図1に示す。スネアループアセンブリ(100)は、先端(110)を有する細長体(108)の中に少なくとも部分的に配置される。図1には、スネアループアセンブリ(100)が開形状において図示されており、細長体(108)の外に延出するスネアループアセンブリ(100)の部分は途切れのない開口を画定する。この開口はスネアループアセンブリ(100)の1つ以上の構成品(スネア等)によって画定され、左心耳等の組織を取り囲むのに適している。一般的に、スネア(102)は、後ほど詳述するようにスネアループアセンブリ(100)を開き且つ閉じるために使用される。いくつかの例において、保持部材(106)は縫合糸ループ(104)とスネア(102)とを解放可能に結合するよう構成され、且つ縫合糸ループ(104)に十分な力がかかるとスネアループアセンブリ(100)から縫合糸ループ(104)を解放するよう構成される。
【0020】
[スネア]
スネアを備えるスネアループアセンブリの変形例において、スネアは、スネアループアセンブリを開形状と閉形状との間で変化させるように少なくとも部分的に可動である。一般的に、スネアの一部分は細長体内に収容され、スネアの別の部分は細長体の末端の外に延出し、スネアループアセンブリの開口を少なくとも部分的に画定する。いくつかの変形例において、スネアの一端は閉鎖装置の1つ以上の部分に対し固定され、他端は細長体の中で前進または後退させることができる。スネアの自由端の動きにより細長体の外に配置されるスネアループアセンブリの量は変化し、その結果、開口のサイズは変化する。具体的に、細長体の中でスネアを前進させるとスネアループアセンブリ開口のサイズは増加し、スネアを後退させるとスネアループアセンブリ開口のサイズは減少し、スネアループアセンブリは閉じる。スネアの自由端は適切に操作できる。いくつかの変形例において、スネアは、後ほど詳述するようにハンドルの1つ以上の部分に直接取り付けられる。別の変形例では、ハイポチューブ、ロッド、または他の剛性構造がスネアの自由端へ取り付けられる。この構造がハンドルにより動かされることにより、細長体内でのスネアの前進または引き込みは容易となる。
【0021】
閉鎖装置に対しスネアの一端が固定される変形例では、装置の適切な部分にスネアが固定される。例えばいくつかの変形例では、スネアの一端が細長体の先端またはこれの近くに固定状態に保持される。別の変形例では、細長体の1つ以上の管腔内でスネアの固定端が添着される。さらに別の変形例では、スネアの固定端が少なくとも一時的に装置のハンドルへ取り付けられる。スネアの一端は閉鎖装置に対し一時的に固定されるが、この固定端を解放可能および/または移動可能に構成できることは理解されたい。解放可能および/または移動可能に構成されたスネアの固定端は数々の有用機能を果たす。場合によっては、一時的または永久的な装置の故障によりスネアの可動部分が行き詰ったりつっかえたりすることがある。このような場合、スネアにより捕捉された組織を解放するには固定端を解放することが必要になることがある。他の例では、両端を使ってスネアを調整するために自由端を動かすことが望まれることがある。
【0022】
スネアの一端が細長体に対し一時的に固定される場合は、適切な方法によりスネアの一端をその固定関係から解放することができる。例えばいくつかの変形例では、スネアの一端が可壊部材により一時的に固定状態に保持される。スネア(1600)の一端が可壊部材(1604)により細長体(1602)に解放可能に固定される一変形例を図16Aおよび16Bに示す。具体的に、図16Aおよび16Bは少なくとも1つの管腔(1605)を有する細長体(1602)の一部分を示している。この変形例で、管腔(1605)の一部分は少なくとも第1および第2の副管腔(それぞれ(1606)および(1608))に分割される。図16Aに見られるように、第1の副管腔(1606)は、第1の断面積を持つ第1の区域(1610)と、第2の断面積を持つ第2の区域(1612)とを、有する。スネア(1600)の一端は第1の副管腔(1606)の第1の区域(1610)内にセットされ、図16Aに見られるように可壊部材(1604)の末端に取り付けられる。可壊部材(1604)は第1の副管腔(1606)の第2の区域(1612)を通過し、さらに管腔(1605)を通過する。
【0023】
可壊部材(1604)へのスネア(1600)の取り付けは、スネア(1600)の一端を定位置に一時的にロックするのに役立つ。可壊部材(1604)の基端(図示せず)は装置ハンドル(図示せず)の1つ以上の部分に一時的に固定状態に取り付けられる。可壊部材(1604)の基端は定位置に保持されるため、可壊部材(1604)は、スネアが末端方向へ細長体(1602)の端部から引き出されるのを阻止する。加えて、スネア(1600)の端部が第1の区域(1610)から第2の区域(1612)の中へ進むことができないように、第1の区域(1610)の断面積が第2の区域(1612)の断面積と異なっている。このため、スネア(1600)が基端方向に動いて細長体(1602)の中に入ることは阻止される。加えて、いくつかの変形例では、第1の区域(1610)内に収容されたスネア(1600)が第1の区域(1610)に対し回動できないように、スネア(1600)の少なくとも一部分と第1の区域(1610)が非円形断面(例えば楕円形、三角形、正方形、多角形、または不規則な幾何学形状を持つ形)を有する。スネア(1600)の端部が基端方向に動くこと、末端方向に動くこと、あるいは第1の副管腔(1606)の第1の区域(1610)に対し回動することは阻止されるため、スネアの端部は細長体(1602)に対し実質的に不動化される。
【0024】
可壊部材(1604)は、可壊部材(1604)に十分な力がかかると可壊部材(1604)とスネア(1600)との取り付けが破断するよう、構成される。スネア(1600)をその固定位置から解放するため、ユーザは可壊部材(1604)の基端を直接的に又は間接的に(1つ以上のハンドル構成品により)引く。スネア(1600)が基端方向に動いて第2の区域(1612)の中に入ることは阻止されるため、可壊部材(1604)に十分な基端方向の力がかかると可壊部材(1604)とスネア(1600)との係合は破断し、結果的には図16Bに見られるようにスネア(1600)は解放される。
【0025】
ここで説明するスネアは何らかの適当な材料で、あるいは材料の組み合わせで、作られる。例えばいくつかの変形例において、スネアは、形状記憶合金(例えばニッケルチタン合金等)等の形状記憶材料で作られ、あるいはステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの組み合わせ等で作られる。スネアが形状記憶材料から作られる変形例において、スネアは、スネアループアセンブリが開形状に設定されるときに特定の形状または構成をおびるよう構成されが、スネアループアセンブリを閉形状に設定する際には少なくとも部分的に細長体の中に引き込まれる。例えば図1に見られるように、スネア(102)はスネアループアセンブリ(100)が開形状に設定されるときに概ね円形の輪を形成する。図1には概ね円形のものが図示されているが、スネア(102)は任意の形の輪を形成し得る。いくつかのスネア構造を図17A〜17Dに示す。図17Aに見られる変形例で、スネア(1700)は展開形状のときに涙滴形の輪(1702)を形成する。図17Bに見られる変形例で、スネア(1704)は展開形状のときに楕円形または長円形の輪(1706)を形成する。図17Cに見られる変形例で、スネア(1708)は展開形状のときに概ね三角形の輪(1709)をなす。さらにいくつかの変形例では、細長体に対しスネアループに角度を付けることができる。例えば図17Dに示す閉鎖装置(1710)の側面図で、スネア(1712)は、細長体の縦軸(1716)に対し一定の角度(θ)で細長体(1714)から出る。この角度(θ)は何らかの適当な角度でよい。例えば角度(θ)は、約5°、約15°、約30°、約45°、約60°、約75°、約90°、約40°乃至約50°、約35°乃至約55°、約30°乃至約60°等でよい。角度を付けることで、身体内で閉鎖装置が動かされるときに組織に対しスネア(1712)を位置決めしやすくなるため、細長体(1714)に対し角度が付いたスネア(1712)はスネア(1712)で組織を捕捉するのに役立つ。
【0026】
スネア(1800)のさらに別の変形例を図18A〜18Dに示す。この変形例において、スネア(1800)は、スネア(1800)が開形状で細長体(1804)から延出するときに鉤形の輪(1802)を形成する。図18Aはスネア(1800)の斜視図を示しており、18Bはスネア(1800)の側面図を示している。輪(1802)は折れ曲がって鉤形を形成するため(図18Bの側面図で強調)、スネア(1800)は、開形状のときに身体組織間にスペースを作るのに役立つ。例えば図18Cに見られるように、心膜腔内で開いたスネア(1800)は心臓(1808)から心膜を持ち上げる。心膜内にスペースができると、図18Dに見られるように左心耳(1810)等の組織をスネア(1800)で捕捉することが容易になる。
【0027】
[縫合糸ループ]
ここで説明するスネアループアセンブリはまた、組織を閉じた状態に保つ縫合糸ループを備える。一般的に縫合糸ループは、例えば後ほど詳述するように保持部材により、スネアへ解放可能に取り付けられる。さらに、縫合糸ループは縫合糸の結び目を備えるが、必ずしも縫合糸の結び目を備えるとは限らない。この縫合糸の結び目は、引き結び(一方向引き結び等)を含みただしこれに限定されない、何らかの適当な結び目でよい。いくつかの変形例では、後ほど詳述するように結び目の少なくとも一部分は細長体の先端の中で保持される。別の変形例では、後ほど詳述するように縫合糸の結び目が細長体に対し固定関係で一時的に保持される。
【0028】
縫合糸ループが引き結びを備える変形例では、引き結びを通じて縫合糸を前進させるか又は引き込むことにより縫合糸ループの大きさは変化する。縫合糸の結び目が細長体の先端に保持される場合は、縫合糸ループの大きさが変化しても縫合糸の結び目は動かない。後ほど詳述するように、これは閉鎖装置が組織を損傷するのを防ぐのに役立つ。
【0029】
いくつかの変形例において、縫合糸ループは単方向繋止構造をさらに備える。これらの変形例において、単方向繋止構造は、縫合糸に沿って一方向に前進させることができ、ただし第2の方向での動きには逆らうことができる、構造である。これらの変形例において、繋止構造は縫合糸ループの一部分にわたって前進させることができ、縫合糸の結び目を定位置に繋止するのに役立つ。例えばいくつかの変形例において、単方向繋止構造は、縫合糸を少なくとも部分的に取り囲むビードを備える。これらの変形例において、ビードは1つ以上の歯または突起を備え、歯または突起は、縫合糸に沿って一方向にビードが前進することを許すが、反対方向での動きは阻止するか、あるいは反対方向の動きに逆らう。繋止構造は、ここで説明する閉鎖装置のいずれかひとつにより前進させられ、あるいは縫合糸ループが閉鎖装置から解放された後に独立した装置により前進させられる。
【0030】
縫合糸ループは締出しまたは閉鎖に役立つ何らかの適当な材料から作られる。例えばこれは、生分解性材料(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクティックコグリコリック酸等)から作られ、あるいは非生分解性材料(例えば金属、スチール、ポリエステル、ナイロン、プロピレン、絹、これらの組み合わせ等)から作られる。
【0031】
組織を閉じるため縫合糸ループが締められると、縫合糸ループの縫合糸の結び目に組織が引き込まれる可能性がある。あまりにも多くの組織が縫合糸の結び目に引き込まれると縫合糸の結び目がつかえ、縫合糸ループをさらに締めることができなくなる。いくつかの変形例において、縫合糸ループは、縫合糸の結び目の一部分を遮蔽するため1つ以上のプレジェットまたは管部分を備える。結び目遮蔽要素を備える縫合糸ループの変形例を図19A〜19Gに示す。図19Aでは、縫合糸ループ(1900)の2本の脚がプレジェット(1902)の中に通されている。プレジェットは、例えばポリウレタンフォーム、フェルト、テフロン布、ダクロン、コラーゲン等、何らかの適当な材料から作られる。図19Bに見られる縫合糸ループ(1904)の別の変形例では、プレジェット(1905)が折り畳まれ、その中に縫合糸ループ(1904)の2本の脚が通されている。縫合糸の結び目(1906)と組織(図示せず)との間に配置されるプレジェット(1905)の厚みを増すことにより、縫合糸の結び目(1906)に引き込まれる組織の量はさらに減る。図19Cに見られるプレジェット(1910)を備える縫合糸ループ(1908)のさらに別の変形例では、プレジェット(1910)の一部分のみ折り畳まれている。この変形例では、縫合糸ループ(1908)の一方の脚(1912)がプレジェット(1910)の折り返された部分に通されており、他方の脚はプレジェット(1910)の単層部分に通されている。
【0032】
図19Dに見られる縫合糸ループ(1914)のさらに別の変形例では、縫合糸ループ(1914)の一方の脚(1916)と縫合糸ループ(1914)の自由端(1918)がプレジェット(1920)に通されている。図19Eに見られる縫合糸ループ(1922)の変形例では、縫合糸ループ(1922)の両脚と自由端(1924)がプレジェット(1926)に通されている。これらの変形例で、細長体の1つ以上の部分、管腔、または凹所にフィットする大きさにプレジェット(1926)の1つ以上の部分を形成もしくは構成できることは理解されたい。図19Fに見られる縫合糸ループ(1928)の変形例では、縫合糸の結び目(1930)が管(1932)によって少なくとも部分的に遮蔽される。この変形例で、縫合糸ループ(1928)の脚は管(1932)の両端を通過し、縫合糸の結び目(1930)は管(1932)の側部の開口部(1934)から外に出ている。図19Gに見られる縫合糸ループ(1936)の別の変形例では、縫合糸の結び目(図示せず)が管(1938)によって遮蔽される。この変形例では、縫合糸ループ(1936)の脚が管(1938)の側部の溝穴(1940)から外に出ており、縫合糸ループ(1936)の自由端は管(1938)の一端から外に出ている。
【0033】
[保持部材]
ここで説明する装置に使用できる例証的保持部材を図20A〜20Cに示す。図20Aに見られる保持部材(2014)の端面図で、保持部材(2014)は閉鎖要素と縫合糸ループとを保持する第1および第2の管腔(2016、2018)を有する。この変形例で、第2の管腔(2018)はその長さに沿って細隙または他の開口部(2020)を有し、展開される縫合糸をここに通すことができる。勿論、第1および第2の管腔を互いに適切に配置または配向でき、また同様に、第2の管腔の細隙または他の開口部を第1の管腔に対し適切に配置または配向できることは理解されたい(例えばこれを第1の管腔(2016)から約180°、約150°、約120°、約90°、約60°、約30°等にできる)。図20Bは、第1の管腔(2022)と、第2の管腔(2024)と、細隙(2026)とを、有する保持部材の図解を提供している。この変形例で、細隙(2026)は図20Aの細隙より第1の管腔(2022)の近くに配置されている。細隙開口部の幅または間隔は、任意に、あるいは適切に、選択できる。同様に、細隙は、必ずしも保持部材の全長に沿って延在するとは限らない、あるいは必ずしも保持部材の全長に沿って連続するとは限らない。いくつかの変形例において、細隙は、縫合糸を捕捉し且つ保持するため、その長さに沿ってプロングまたはアームを有する。別の変形例におい、細隙は、縫合糸を留めるため、あるいは保持するため、一時的に使用される生分解性ポリマーにより、間隔を置いて覆われる。勿論、さらに別の変形例おいては保持部材は細隙を備えず、代わりに、上述したプロングや鋲等、タイプの異なる保持機構を備える。さらに別の変形例では保持部材に細隙や開口部はなく、縫合糸ループは、保持部材を除去または引き込んで装置を閉じるときに解放される。
【0034】
図20Cは保持部材の別の変形例を提供する。この変形例で、保持部材は、第1の管腔(2028)と、第2の管腔(2030)と、分離領域(2032)とを、有する。例えば分離領域は、力がかかることにより穿孔し縫合糸を解放するよう構成された穿孔領域を備える。あるいは分離領域は、壊れて縫合糸を解放するよう構成された、薄い壁からなるか、あるいはタイプの異なる、脆弱領域である。保持部材が何らかの適当な形状または形を有し、また何らかの適当な材料から作られることは理解されたい。同様に、管腔は必ずしも完全な円であるとは限らず、また必ずしも円形の断面形状を有するとは限らない。これらの保持部材やタイプの異なる保持部材が使用される場合、縫合糸ループは、適切に配置され締められた後、保持部材から引き離される、引き出されるか、あるいは解放される。
【0035】
[細長体]
上で簡単に述べたように、ここで説明する閉鎖装置の細長体は、スネアループアセンブリの末端とハンドルまたは作動機構とを接続し、細長体を通じてスネアループアセンブリの操作を可能にする。具体的に、スネアループアセンブリの構成品の少なくとも一部分は細長体の中に収容され、細長体を通じてハンドルへ接続される。いくつかの変形例において、細長体の少なくとも一部分は可撓性であり、これにより組織における細長体の移動は容易になる。
【0036】
ここで説明する閉鎖装置との使用に適した細長体の一例証的変形例を図21に示す。そこには、ハンドル部分(2102)へ取り付けられた細長体(2100)が見られる。細長体(2100)は、先端部分(2103)と、湾曲部(2104)と、第1の管腔(2106)と、第2の管腔(2108)と、第3の管腔(2100)とを、備える。図21には単一の湾曲部(2104)を有するものが図示されているが、細長体(2100)は、湾曲部を有さないこともあれば、細長体(2100)の各部分に多数の湾曲部を有することもある。さらに、いくつかの変形例において、閉鎖装置は、細長体(2100)の形を変える働きをする1つ以上の機構を、備える。細長体(2100)が1つ以上の湾曲部(2104)を備える場合は、細長体を一時的に真っすぐに伸ばすため、管、心棒、または他の伸展機構(図示せず)が使用される。例えば、細長体(2100)の1つ以上の管腔内に剛性の管または心棒がセットされ、これが湾曲した部分を一時的に真っすぐに伸ばす。送出時(例えば左心耳に使用される場合なら心膜腔に到達する前)は真っすぐに伸ばされ、伸展機構が引き込まれると細長体(2100)は元の構成に戻る。伸展機構は何らかの適当な材料で作られる(例えば剛性プラスチック、ステンレス鋼、これらの組み合わせ等)。
【0037】
別の変形例では、あらかじめ曲げられた1つ以上の管または心棒を細長体(2100)の中に挿入することで、1つ以上の湾曲した部分を作る。さらに別の変形例では、細長体(2100)内、細長体(2100)上、または細長体(2100)の周辺に、1つ以上のプルワイヤが配置され、1つ以上のプルワイヤが引かれるか、押されるか、あるいは操られると、細長体(2100)は撓むか、または曲がる。ここで説明する装置が操縦性のため構成され得ること、あるいはロボット用に構成(例えば1つ以上のロボット装置または自動装置用に構成)され得ることは、理解されたい。
管腔
【0038】
ここで説明する細長体は適当数の管腔を有する。ここで用語「管腔」が使われる場合、それは、細長体又は閉鎖装置の他の部分の中に延在する穴または通路を表すため使われていることを理解されたい。管腔が必ずしも全面的に密閉されるとは限らないことを理解されたい(つまり管腔は、その長さの一部または全部にわたって1つ以上の溝穴、細隙、間隙、または他の開口部を備えることがある)。細長体は1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の管腔を備えることがある。いくつかの管腔が、あるいは全ての管腔が、細長体の全体にわたって延在することがある(すなわち細長体の基端から細長体の末端まで延在)。他の管腔は細長体の一部分の中だけを通過することもある(例えば細長体沿いの一端から中間点まで通過、あるいは細長体沿いの2つの中間点の間を通過)。例えば図21に見られる変形例で、第3の管腔(2110)は細長体(2100)の長さに沿って細長体(2100)の基端から中間点まで通っている。この変形例では、1つ以上のガイドワイヤ、視覚化装置、または作業装置(図示せず)を、第3の管腔(2110)の中に通すことができる。
【0039】
スネアループアセンブリの種々の構成品は細長体の管腔の中に収容される。例えばいくつかの変形例では、1本の管腔内にスネアループアセンブリの全構成品が収容される。別の変形例では、スネアループアセンブリの各部分が少なくとも部分的に別々の管腔内に収容される。例えばいくつかの変形例において、細長体は少なくとも2つの管腔を備える。これらの変形例では、縫合糸ループの自由端が第1の管腔を通ってハンドル部分に至り、スネアの自由端は第2の管腔を通ってハンドル部分に至る。後ほど詳述するように、縫合糸ループの余分な縫合糸が細長体の中に収容される変形例では、この余分な縫合糸が適切な管腔内に収容される。例えばいくつかの変形例において、余分な縫合糸は、縫合糸ループの自由端と同じ管腔内に、あるいはスネアの自由端と同じ管腔内に、あるいはまったく異なる管腔内に、収容される。
【0040】
いくつかの変形例では、細長体の1つ以上の管腔が少なくとも部分的に1つ以上の副管腔に分割される。具体的に、管腔は、これの長さの一部分に沿って2つ以上の副管腔に分割される。これらの変形例では、管腔を2つ以上の副管腔に分割するため分離管が使用される。ここで説明する閉鎖装置との使用に適した分離管のいくつかの変形例を図22A〜22Dに示す。具体的に、図22Aおよび22Bは分離管(2200)の一変形例の斜視図と上面図とをそれぞれ示している。この変形例で、分離管(2200)はその中に延在する第1(2202)および第2(2204)の管腔を備える。細長体(図示せず)の管腔の内側にセットされた分離管(2200)の第1(2202)および第2(2204)の管腔は、細長体の管腔の中で副管腔として機能する。分離管(2200)により、1本の管腔から細長体の一部分に沿って1本の通路ができ、さらに細長体の別の部分に沿って2本以上の独立した通路ができる。
【0041】
図22Aおよび22Bでは2つの管腔((2202)および(2204))を有するものが図示されているが、分離管(2200)が適当数(例えば1つ、2つ、3つ、または4つ以上)の管腔を含み得ることは理解されたい。こうして細長体の管腔は分離管の長さに沿って適当数の副管腔に分割される。尚、いくつかの変形例においては、分離管はその中を通過する1本の管腔のみ有する。これらの変形例において、分離管は管腔を複数の副管腔に分割しないが、管腔の一部分に沿って管腔のサイズおよび/または形を変化させる。また、分離管(2200)のいくつかの管腔が、あるいは全ての管腔が、分離管の一部分のみ通過する場合もあることを理解されたい。
【0042】
別の変形例において、分離管は1つ以上の溝または経路を含む。これらの溝または経路は、細長体の管腔の内側にセットされたときに完全に密閉された副管腔を形成する。例えば、分離管(2206)の一変形例を図22Cおよび22Dに示す。具体的に、図22Cに見られる分離管(2206)の斜視図で、分離管(2206)は、管腔(2208)を備え、且つその外面に沿って経路(2210)を備える。図22Dの上面図に見られるように細長体(2212)の管腔(2211)の内側に分離管(2206)がセットされると、経路(2210)は、部分的に分離管(2206)により画定され且つ部分的に管腔壁により画定される、密閉された管腔を、形成する。ここで説明する分離管が適当数の経路および/または管腔を備えること、また経路および/または管腔の適当な組み合わせを備えることは、理解されたい。
【0043】
いくつかの変形例においては、分離管を通じてスネアループアセンブリの1つ以上の構成品を解放できるよう分離管を構成することが望まれる。例えばいくつかの例では、後ほど詳述するように、分離管の一区間の2つ以上の管腔/経路の中に縫合糸ループの一部分を通す。装置から縫合糸ループを解放するには、縫合糸ループをはずしたりちぎったりせずに分離管から余分な縫合糸を取り除く必要がある。そこでいくつかの変形例においては、分離管は、2つ以上の管腔、経路、またはこれらの組み合わせの間に1つ以上の分離領域(図示せず)を備える。保持部材について上述したように、分離領域は何らかの適当な方法で構成される。例えばいくつかの変形例において、分離領域は、縫合糸ループが締められるときに穿孔し縫合糸を引き出すよう構成された穿孔領域を備える。あるいはいくつかの変形例において、分離領域は、縫合糸又は他の装置構成品から力がかかると裂けるか、または壊れるよう構成された、薄い壁からなるか、あるいはタイプの異なる、脆弱領域である。
【0044】
[先端]
細長体は一般的に、その末端に先端部分を備える。いくつかの変形例では、細長体の先端が細長体とは別に形成され、装置を組み立てるときに細長体へ取り付けられる。別の変形例では、先端部分が細長体と一体的に単一装置として形成される。先端部分は閉鎖装置のため数々の有用機能を果たす。いくつかの例において、先端は非外傷性となるよう構成され、細長体の基端が身体内で動かされるときに組織を損傷するリスクを緩和する。後ほど詳述するように、先端は別の例において、スネアの特定の部分が細長体内を通過することを可能とし、他の部分は細長体に対し定位置に保持する。
【0045】
先端部分は細長体と同数の管腔を有するが、必ずしも細長体と同数の管腔を有するとは限らない。実際いくつかの変形例では、細長体の1つ以上の管腔が先端部分により2つ以上の副管腔に分割される。これらの変形例で、先端部分は分離管の少なくとも一部分を収容する。別の変形例において、先端部分は細長体の1つ以上の管腔のサイズまたは形を変化させる。
【0046】
閉鎖装置(2300)の一例証的変形例の末端を図23A〜23Cに示す。具体的に、図23Aは細長体(2304)の先端(2302)の正面図を示している。そこに見られるように、先端(2302)は、第1の副管腔(2305)と、第2の副管腔(2306)と、第3の副管腔(2308)とを、備える。図23Bは細長体(2304)と先端(2302)の側断面図を示している。そこに図示されているように、第1(2305)および第2(2306)の副管腔は細長体の第1の管腔(2310)に至り、第3の副管腔は第2の管腔(2312)に至る。
【0047】
いくつかの変形例において、1本の副管腔は縫合糸ループの縫合糸の結び目を少なくとも部分的に収容するよう構成される。例えば図23Bに見られる第2の副管腔(2306)は、第1の断面積を持つ結び目受入凹所(2316)と、第2の断面積を持つ第2の区域(2318)とを、備える。図23Cに見られるように、縫合糸ループ(2330)の縫合糸の結び目(2320)は第2の副管腔(2306)の結び目受入凹所(2316)内にセットされる。縫合糸ループ(2330)の自由端は第2の区域(2318)を通って細長体(2304)の第1の管腔(2310)内に至る。加えて、縫合糸の結び目(2320)が結び目受入凹所区域(2316)から第2の区域(2318)に入ることができないように、結び目受入凹所区域(2316)の断面積が第2の区域(2318)の断面積と異なる(例えば小さい、および/または形が異なる)。このため、縫合糸の結び目(2320)が基端方向に細長体(2304)の中に入ることは阻止される。加えて、縫合糸の結び目(2320)は第2の副管腔(2306)の結び目受入凹所(2316)内に少なくとも部分的に収容されるため、後ほど詳述するように、余分な縫合糸が細長体(2304)の中に引き込まれるときに、縫合糸の結び目が第3の副管腔(2308)の中に引き込まれることは阻止される。
【0048】
図23Cはまた、スネアループアセンブリ(2324)の他の構成品が先端(2302)に対しどのように配置されるかを示している。そこに図示されているように、スネアループアセンブリ(2324)は、スネア(2326)と、縫合糸ループ(2330)と、保持部材(2328)とを、備える。保持部材(2328)は、スネア(2326)の一部分と縫合糸ループ(2330)とを解放可能に接合する。縫合糸ループ(2330)の自由端は第2の副管腔(2306)と第1の管腔(2310)を通ってハンドル部分(図示せず)へ至り、余分な縫合糸(2330)は先端の第3の副管腔(2308)と細長体の第2の管腔(2312)の中に収容される。この余分な縫合糸(2330)の少なくとも一部分は、後述する1つ以上の縫合糸管理機構(図示せず)によって細長体内に保持される。加えて、スネアの一端は少なくとも部分的に第1の副管腔(2305)の中で一時的に又は永久的に固定され、スネアループアセンブリ(2324)を開閉するため、スネア(2326)の自由端は、少なくとも部分的に先端の第3の副管腔(2308)と細長体の第2の管腔(2312)を通じて動かされる。
【0049】
細長体の先端が結び目受入凹所を備える変形例では、縫合糸ループを締めるときに、または縫合糸ループを締める前に、凹所から縫合糸の結び目を排出または移動させることが望ましい。凹所の外に縫合糸の結び目を出すと、組織に対する結び目の配置が向上することにより、組織の周辺で縫合糸ループを締める能力が向上する。縫合糸の結び目は何らかの適当な方法で凹所から出すことができる。例えば、結び目受入凹所から縫合糸の結び目を前進させる2つの好適な変形例を図24Aおよび24Bに示す。第1の変形例では、図24Aに図示されているように、バルーン(2402)または他の拡張可能構造が結び目受入凹所(2406)内に配置される。バルーンが縮小すると、縫合糸ループ(2410)の縫合糸の結び目(2408)は少なくとも部分的に結び目受入凹所(2406)内に収容される。バルーン(2402)が膨張すると、縫合糸の結び目(2408)の少なくとも一部分は結び目受入凹所(2406)から出る。別の変形例では、図24Bに見られるように、閉鎖装置(2412)は、少なくとも部分的に結び目受入凹所(2416)内に配置されるプッシャ(2414)を、備える。この変形例で、結び目受入凹所(2416)の中でプッシャ(2414)が前進すると、縫合糸の結び目(2418)の少なくとも一部分が、場合によっては縫合糸の結び目(2418)全体が、結び目受入凹所(2416)から押し出される。
【0050】
ここで説明する閉鎖装置の別の変形例において、先端部分は末端凹所を備える。そのような先端(2500)の一変形例を図25A〜25Dに示す。図25A〜25Cは、先端(2500)の斜視図、正面図、および断面図を示している。そこには、細長体(図示せず)の末端を受け入れる基端凹所(2502)と、末端凹所(2504)と、第1の副管腔(2506)と、第2の副管腔(2508)と、第3の副管腔(2510)とが、見られる。図25A〜25Cには細長体から独立して形成されたものが図示されているが、先端を細長体と一体的に形成できることは理解されたい。
【0051】
先端(2500)が閉鎖装置(2512)に組み込まれる一例の側断面図を図25Dに示す。そこには細長体(2514)に取り付けられた先端(2500)が見られる。そこに見られるように、細長体(2514)は、第1の管腔(2516)と第2の管腔(2518)とを、備え、先端(2500)の基端凹所(2502)の中にセットされる。第1(2506)および第2(2508)の副管腔は第1の管腔(2516)に至り、第3の副管腔は第2の管腔(2518)に至る。
【0052】
閉鎖装置(2512)は分離管(2520)をさらに備え、分離管(2520)は、少なくとも部分的に先端(2500)の第3の副管腔(2510)と細長体(2514)の第2の管腔(2518)の中に配置され、これにより管腔は副管腔(2522)および(2524)に分割される。図25Dにはまた、スネア(2522)と、縫合糸ループ(2530)と、保持部材(2532)とを備える、スネアループアセンブリ(2526)が見られる。スネア(2528)の一端(2534)は第1の副管腔(2506)を通って先端(2500)へ固定状態に取り付けられ、あるいは副管腔(2506)を通って管腔(2516)内に取り付けられ、スネアの自由端は分離管(2520)の副管腔(2524)の中で前進するか又は引き込まれる。同様に、縫合糸ループ(2530)の自由端(2536)は先端(2500)の第2の副管腔(2508)を通過し、縫合糸ループ(2530)の余分な縫合糸の一部分は分離管(2520)の副管腔(2522)および(2524)内に収容される。
【0053】
縫合糸の結び目(2538)は末端凹所(2504)内に収容される。加えて、先端(2500)の第2の副管腔(2508)と分離管(2520)の副管腔(2522)とは、縫合糸の結び目(2538)がどちらの副管腔にも入ることができないようなサイズであってもよく、これにより、縫合糸の結び目(2538)が細長体(2514)の中に引き込まれること、あるいは押し込まれることが阻止される。縫合糸の結び目の端部はこれらの副管腔の入口に当たるため、組織の周辺で縫合糸ループ(2530)が締められるときに縫合糸の結び目(2538)に引き込まれる組織の量は、縫合糸ループ(2530)が締められるので最小限に抑えられる。
【0054】
[余分な縫合糸の管理]
閉鎖装置の操作にあたっては、スネアアセンブリから縫合糸ループを尚早に解放することなくスネアループアセンブリを開閉できることが望まれる。スネアループアセンブリによって画定される連続開口の大きさはスネアループアセンブリの開閉にともない変化するため、この開口の大きさの変化に対応し、スネアループアセンブリから縫合糸が尚早に解放されるのを防ぐため、縫合糸ループの大きさは変化する必要がある。いくつかの変形例では、スネアループアセンブリを開くと引き結びを通じて縫合糸が引かれ、縫合糸ループは大きくなる。ただし縫合糸ループに十分な力がかかると縫合糸は破断するか、あるいは切れる。この望ましくない結果を防ぐため、縫合糸ループのサイズは、開形状になったスネアループアセンブリによって画定される開口と同じくらいか、又は、該開口よりも大きくしてもよい。これにより、スネアループアセンブリが開いて展開形状になるときには、縫合糸の結び目を通じてさらなる縫合糸を前進させずとも、縫合糸ループはほぼ同じ大きさになる。ただし、あらかじめ縫合糸ループのサイズをそのようなサイズに設定すると、スネアループアセンブリが閉形状になったときに縫合糸ループに余分なたるみができる。解剖学的構造、器具、または他の障害物に余分な縫合糸がからんだりつっかえたりするのを防ぐため、スネアループアセンブリが開くおよび/または閉じるときには、縫合糸ループのたるみの一部または全部が細長体の中で保持される。
【0055】
そこで、ここで説明する閉鎖装置は、適切な方法で使用できる1つ以上の余剰縫合糸管理機構を、備える。いくつかの例において、この機構は、装置が開形状および/または閉形状になっているときに余分な縫合糸に力をかけるよう構成される。この力は細長体の中に余分な縫合糸を引き込む働きをする。あるいは余分な縫合糸が細長体から出るのを一時的に防ぐ。加えて、この力は、余分な縫合糸がからまったりもつれたりして装置の性能に悪影響がおよぶのを防ぐ働きをする。これ以降、ここで説明する閉鎖装置の使用に適したいくつかの縫合糸管理機構を説明する。ここで説明する閉鎖装置がこれらの縫合糸管理機構の任意の組み合わせを備え得ることは理解されたい。
【0056】
[縫合糸フック]
いくつかの変形例では、細長体の中で余分な縫合糸を保持するため縫合糸フックが使用される。図2は、そのような縫合糸フック(202)を有するスネアループアセンブリ(200)の一変形例を示している。そこには、スネア(204)と、縫合糸の結び目(208)を有する縫合糸ループ(206)と、保持部材(210)とが、見られる。図2に図示されているように、縫合糸フック(202)は縫合糸ループ(206)の余分な縫合糸を細長体(図示せず)の中で保持する。細長体が多数の管腔を有する変形例では、縫合糸フック(202)はいずれかの適当な管腔内で余分な縫合糸を保持する。
【0057】
いくつかの変形例では、スネアが細長体から前進するときに、あるいはスネアが細長体の中に引き込まれるときに、縫合糸フックの基端は細長体に対し動くことができる。図10に示す閉鎖装置(1000)の一部分の断面図で、細長体(1002)はその中に管腔(1004)を有し、ハンドル(図示せず)の相互接続部(1006)へ接続される。図10にはただ1つの管腔(1004)を有する細長体(1002)が図示されているが、上述した管腔の数と構成が任意であることは理解されたい。図10にはまた、ハイポチューブ(1009)に取り付けられたスネア(1008)の一部分と、縫合糸ループ(1012)の一部分を係止する縫合糸フック(1010)とが、見られる。上述したように、細長体(1002)の中でスネア(1008)が前進するか又は引き込まれるとスネアループアセンブリ(図示せず)は開閉する。
【0058】
スネア(1008)を前進させスネアループアセンブリを開くと、縫合糸ループ(1012)が細長体(1002)の末端に向かって縫合糸フック(1010)を引っ張り、余分な縫合糸の一部は細長体(1002)から放出されるか、あるいは余分な縫合糸の一部は細長体(1002)の中で前進する。いくつかの変形例において、縫合糸フック(1010)はばね(1014)を備える。縫合糸フック(1010)が細長体(1002)の末端に向かって動くと、ばね(1014)は伸びる。逆に、スネアループアセンブリを閉じると縫合糸ループ(1012)から縫合糸フック(1010)にかかる力が減り、ばね(1014)の復帰力により縫合糸フック(1010)は基端方向に引かれる。その結果、余分な縫合糸は細長体(1002)の一部分の中に引き戻される。余分な縫合糸は、スネアループアセンブリが開くと細長体(1002)から放出され、スネアループアセンブリが閉じると細長体(1002)の中に引き込まれるため、縫合糸ループ(1012)はスネアループアセンブリと同じ大きさに保たれる。加えて、縫合糸フック(1010)により保持された余分な縫合糸は細長体の中で折り畳まれているため、縫合糸フック(1010)がスネア(1008)の半分動くだけで縫合糸ループ(1012)はスネアループアセンブリと同じ大きさに保たれる。
【0059】
図10には一端が縫合糸フック(1010)に取り付けられ他端が相互接続部(1006)(後ほど詳述)に取り付けられたものが図示されているが、ばね(1014)を閉鎖装置(1000)の適当な部分に取り付けられることは理解されたい。いくつかの変形例では、後ほど詳述するように、ハンドルの1つ以上の要素にばねが取り付けられる。別の変形例では、細長体(1002)の1つ以上の部分にばねが取り付けられる。さらに別の変形例では、縫合糸フック(1010)はばねをまったく備えない。これらの変形例で、縫合糸フック(1010)の少なくとも一部分は、余分な縫合糸を細長体(1002)から引き出すため伸びることができるか、または変形することができる。例えば縫合糸フック(1010)は、伸びることができ且つ伸ばされていない状態に戻ることができる伸縮性の材料または材料の組み合わせを、備える。これらの例では、スネアループアセンブリが開くと伸縮性材料が伸び、余分な縫合糸は細長体(1002)の外に引き出されるか、あるいは細長体(1002)の一部分の中で引っ張られる。スネアループアセンブリが閉じると縫合糸フック(1010)は伸びていない状態に戻り、余分な縫合糸は細長体(1002)の中に引き戻されるか、あるいは細長体(1002)の一部分の中で引っ張られる。
【0060】
縫合糸ループ(1012)の余分な縫合糸が細長体の中で縫合糸フック(1010)により保持される変形例で、スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)を解放するにはさらなるステップが要求される。スネアループアセンブリが標的組織まで前進し組織上で閉じられると、縫合糸フック(1010)により細長体に保持された縫合糸ループ(1012)には余分な縫合糸がある。スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)を解放するにはまず、このたるみを取り除く必要がある。それには、縫合糸の結び目(図示せず)を通じて余分な縫合糸を引いて縫合糸ループ(1012)を小さくする。いくつかの変形例において、縫合糸フック(1010)は、これに十分な力がかかると変形するよう構成される。さらにいくつかの変形例において、縫合糸フック(1010)は、縫合糸フック(1010)が一定の場所を越えて末端方向に動くことを阻止する停止体(1016)を、備える。縫合糸の結び目を通じて縫合糸が引かれ縫合糸ループ(1012)のサイズが減少すると、縫合糸ループ(1012)は縫合糸フック(1010)に増加する力をかける。縫合糸フック(1010)は、停止体(1016)が相互接続部(1006)と係合するまで細長体(1002)の末端に向かって動く。尚、停止体(1016)は閉鎖装置(1000)のいずれかの適当な構造と係合し得る。停止体(1016)が相互接続部(1006)と係合すると縫合糸フック(1010)は定位置に保持され、最終的に縫合糸ループ(1012)によってかかる力により縫合糸フック(1010)の端部は変形し、残っている余分な縫合糸を解放する。
【0061】
縫合糸フック(1010)から縫合糸ループ(1012)が解放され縫合糸ループ(1012)から余分な縫合糸が取り除かれた後に、縫合糸の結び目を通じてさらなる縫合糸が引かれると、スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)が解放され始める。縫合糸ループ(1012)を解放する前にスネアループアセンブリが組織の周辺で閉じられる場合は、余分な縫合糸が細長体(1002)の中で保持される。縫合糸ループ(1012)から取り除かれる余分な縫合糸は細長体(1002)の中に収容される。この縫合糸は細長体(1002)の中に収容されているため、細長体(1002)の外にある組織に当たって擦れたり組織に接触したりすることはない。加えて、スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)が解放されると、縫合糸は解放され組織と直接接触する。ユーザが縫合糸ループ(1012)から余分な縫合糸を取り除き、スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)を解放するときに、縫合糸が組織に当たって擦れたり滑ったりすることはない。縫合糸が組織に当たって滑ったり擦れたりすると組織は損傷するため、ここで説明する閉鎖装置は、このような組織の損傷を最小限に抑える。スネアループアセンブリから縫合糸ループ(1012)が完全に分離されたら、標的組織を結紮するため縫合糸ループは締められる。
【0062】
図10に見られるように、スネア(1008)と縫合糸フック(1010)は細長体(1002)の同じ管腔(1004)内に配置されているが、必ずしもそうであるとは限らない。スネア(1008)と縫合糸フック(1010)が同じ管腔(1004)内に配置される変形例では、スネア(1008)が縫合糸フック(1010)にからむおそれがある。加えて、スネアループアセンブリを開閉するときに縫合糸フック(1010)はスネア(1008)の半分しか動かないため、スネア(1008)はばね(1014)に当たって擦れ、その結果、ばね(1014)が管腔(1004)の内壁に当たって擦れることがある。この摩擦は閉鎖装置(1000)の作動を妨げるため、ユーザは装置を作動させるため強い力を与えなければならない。
【0063】
いくつかの変形例において、閉鎖装置は縫合糸フックがスネアにからむのを防ぐよう構成される。そのような閉鎖装置(1100)の中間部分の一変形例を図11に示す。そこには、相互接続部(1104)に取り付けられた細長体(1102)と、ハイポチューブ(1106)と、スネア(1108)と、ばね(1110)と、縫合糸フック(1112)と、スリーブ(1114)と、縫合糸ループ(1116)とが、見られる。上述したように、スネア(1108)の自由端はハイポチューブ(1106)に取り付けられる。加えて、縫合糸フック(1112)はばね(1110)を介してハイポチューブ(1106)に取り付けられる。加えて、スネア(1108)の周辺にばね(1110)を配置することにより、ばね(1110)がスネア(1108)にからむのを防ぐ。加えて、スネア(1108)とばね(1110)によって占められるスペースは減少するため、より小さい管腔の中にスネアとばねを置いても、ばねと管腔の内壁との摩擦は増加しない。
【0064】
スリーブ(1114)は、縫合糸フック(1112)とスネア(1108)がからむのを防ぐ働きもする。スリーブ(1114)は2つ以上の管腔を有する。縫合糸フック(1112)は一方の管腔を通過し、スネア(1108)は別の管腔を通過する。いくつかの変形例において、スリーブ(1114)はスネア(1108)へ取り付けられる。スリーブ(1114)は何らかの適切な方法(例えば接着、溶接、機械的取り付け等)で取り付けられる。これらの変形例で、スリーブ(1114)は縫合糸フック(1112)から縫合糸ループ(1116)を解放する停止体の働きをする。上述したように縫合糸ループ(1116)から余分な縫合糸が取り除かれると、ばね(1110)はスリーブ(1114)と接触するまで伸びる。スリーブと接触したばね(1110)は定位置に保持され、縫合糸ループ(1116)から縫合糸フック(1112)にかかる力により縫合糸フック(1112)は変形し、縫合糸フック(1112)から縫合糸ループ(1116)が解放される。
【0065】
[分離管]
いくつかの例では、縫合糸フックを必要とせず余分な縫合糸を細長体の中で維持するのが望ましい。場合によっては、細長体の一部分を細長体内へ、または、細長体内で前進させ、スネアループアセンブリを標的位置に到達させるため、細長体の1つ以上の部分が曲がることがあるか、または撓むことがある。ただし細長体の曲げまたは撓みは縫合糸フックやばねの動きを妨げ、細長体の中で余分な縫合糸ループを維持する縫合糸フックの能力を妨げる可能性がある。そこで、細長体の末端部分に縫合糸維持機能を配置することが望まれる。
【0066】
ここで説明する閉鎖装置のいくつかの変形例では、細長体の中に余分な縫合糸を維持し、余分な縫合糸が細長体の外に露出または放出されるのを制限するため、分離管が使用される。そのような閉鎖装置(2600)の一変形例の断面図を図26Aおよび26Bに示す。そこには管腔(2602)が見られ、管腔(2602)の中には分離管(2604)が配置されている。分離管(2604)は管腔(2602)を第1の副管腔(2606)と第2の副管腔(2608)とに分割する。閉鎖装置(2600)はスネアループアセンブリ(2610)を備え、スネアループアセンブリ(2610)は、スネア(2612)と、縫合糸ループ(2614)と、保持部材(2616)とを、備える。図26Aおよび26Bに見られるように、縫合糸ループ(2614)の縫合糸は第1の副管腔(2606)を通って管腔(2602)内に至り、そこで保持部材(2616)によりスネア(2612)へ接合される。第2の副管腔(2608)の中でスネア(2612)を前進させるか又は引き込むことでスネアループアセンブリは開閉する。図26Aに見られるように、スネアループアセンブリ(2610)が閉形状になっているときには、スネア管腔(2602)と第1の副管腔(2606)の中で縫合糸ループ(2614)の余分な縫合糸が保持される。スネアループアセンブリを開くためスネアを前進させると、スネア管腔の中で保持された縫合糸の一部が第2の副管腔(2608)の中に入り、図26Bに示されるとおりスネアループアセンブリを開くことが可能となる。ただし分離管が存在するため、閉鎖装置の先端から余分な縫合糸が押し出されること、または引き出されることは、阻止される。
【0067】
細長体の中で余分な縫合糸を維持するため分離管が使用される場合は、細長体から余分な縫合糸を解放するため、分離管は1つ以上の分離領域を備える必要がある。先に詳述したように、縫合糸ループを解放するときに縫合糸は分離領域を通る。具体的に、縫合糸ループから余分な縫合糸が取り除かれるとき(すなわち、縫合糸ループを締めるため縫合糸の結び目を通じて縫合糸が引かれるとき)、縫合糸は分離領域に通されて引かれ、余分な縫合糸は分離管の副管腔間の空間にまたがる。
【0068】
細長体の中で余分な縫合糸を維持するため、先に詳述したいずれかの好適な分離管を使用できることは理解されたい。また、上述した縫合糸フックと併せて、あるいは1つ以上のさらなる余剰縫合糸管理機構と併せて、分離管を使用できることは理解されたい。例えばいくつかの例では、分離管が1つ以上の縫合糸管と併せて使用される。一般的に、縫合糸管は、分離管へ接続される第1の端部と、スネアループアセンブリの一部分へ接続される第2の端部とを、有し、その中に余分な縫合糸を一時的に保持する。縫合糸管は何らかの適当な材料(例えばペバックス、テコタン、ナイロン等)から作られ、縫合糸管から余分な縫合糸を除去することを可能にする1つ以上の分離領域を備える。
【0069】
細長体(2701)と、分離管(2704)と、縫合糸管(2705)とを備える閉鎖装置(2702)の一変形例の部分切断図を図27に示す。そこに見られる分離管(2704)は、管腔(2700)を第1の副管腔(2706)と第2の副管腔(2708)とに分割する。そこに見られるスネアループアセンブリは、スネア(2712)と、縫合糸ループ(2714)と、スネア(2712)と縫合糸ループ(2714)とを少なくとも一時的に接合する保持部材(2716)とを、備える。図27に見られるように、縫合糸管(2705)は縫合糸ループ(2714)の一部分を解放可能に収容する。縫合糸管(2705)の一端は分離管(2704)へ取り付けられ、他端はスネアループアセンブリの一部分へ取り付けられる(例えばスネア(2712)または保持部材(2716)へ取り付けられる)。この取り付けにより、縫合糸管(2705)の一端は閉鎖装置(2702)に対し固定され、他端は、スネアループアセンブリが閉形状と開形状との間で動かされるときに、スネア(2712)および保持部材(2716)とともに動く。
【0070】
管腔(2700)内にセットされた縫合糸管(2705)は折曲部(2718)で折り返される。縫合糸管(2705)内に一時的に収容される縫合糸ループ(2714)の一部分は折り返された縫合糸管(2705)内に保持されるため、管腔(2700)の中で保持される余分な縫合糸のからみは防止される。スネアループアセンブリが開形状と閉形状との間で変化すると、折曲部(2718)の位置は動く。加えて、いくつかの例では縫合糸管(2705)は折り曲げられていない形に戻る性質を有するため、縫合糸管(2705)は折曲部(2718)以外の場所でねじれたりよじれたりする性質を有する。このため縫合糸管は、ねじれやよじれを緩和する1つ以上の機能を備える。例えばいくつかの変形例において、管は緩和領域として機能する複数の切り込みまたは切れ目を備える。そのような縫合糸管(2800)の一変形例を図28Aおよび28Bに示す。図28Aに見られる縫合糸管(2800)は、その一側面に沿ってV字形の切り込み(2802)を備える。V溝形切り込み(2802)により当該側面に沿って縫合糸管(2800)の剛性は低減され、縫合糸管(2800)は切り込み(2802)のところで折れ曲がりやすくなるか、または撓みやすくなる。このため、図28Bに見られるように縫合糸管(2800)が管腔(2804)の中にセットされ折曲部(2806)のところで折り返されると、いくつかのV字形切り込み(2802)は実質的に閉ざされる。V字形切り込み(2802)により縫合糸管(2800)が真っすぐになる力は低減し、縫合糸管(2800)がよじれたりねじれたりする性質は変化する。図28Aおよび28BではV字形の切り込みが図示されているが、切り込みは何らかの適当な形(例えば半円形、半楕円形等)であってよい。
【0071】
別の変形例において、縫合糸管は、縫合糸管の1つ以上の部分の剛性に作用する1つ以上の強化部材を、備える。そのような縫合糸管(2900)の一変形例の断面図を図29に示す。そこに見られる縫合糸管(2900)は、縫合糸管腔(2902)と、2つの強化部材(2904)と、分離領域(2906)とを、備える。強化部材(2904)は縫合糸管(2900)の一部分に追加の剛性を与える。スネア管腔内にセットするために縫合糸管(2900)が折り畳まれると、強化部材(2904)を含む縫合糸管(2900)の側は折り曲げに抵抗し、ねじれやよじれに対する縫合糸管(2900)の抵抗は向上する。加えて、スネアが前進または後退されるときに管が動きやすくなるように、強化部材(2904)が縫合糸管(2900)のコラム強さを高めるようにしてもよい。強化部材は何らかの適当な構造であってよく、例えばニッケルチタン合金、スチール、ポリマー等から作られたワイヤであってよい。図29には2つの強化部材(2904)を有するものが図示されているが、縫合糸管が適当数の(例えば1つ、2つ、または3つ以上の)強化部材を備え得ることは理解されたい。
【0072】
[プーリー縫合糸]
さらに別の変形例において、スネアループアセンブリは、第2の縫合糸を、すなわちプーリー縫合糸を、備える。これは、余分な縫合糸を保持するため縫合糸ループの一部分を係止する。一般的に、プーリー縫合糸の一端は閉鎖装置の一部分(例えばハンドルまたは細長体)へ固定状態に取り付けられ、他端はスネアループアセンブリへ一時的に又は永久的に取り付けられる。いくつかの変形例において、プーリー縫合糸の本体は、縫合糸ループの一部分を細長体内で保持するため、縫合糸ループの一部分に巻き付けられるか、または縫合糸ループの一部分にまたがって折り返される。図30A〜30Dに示す閉鎖装置(3000)の一変形例で、プーリー縫合糸(3002)は、細長体(3006)の管腔(3004)の中で縫合糸ループ(3010)の一部分を保持するため使用される。図30Aに見られるスネアループアセンブリ(3008)は、縫合糸ループ(3010)と、スネア(3012)と、保持部材(3014)と、第1の縫合糸ロック(3016)と、第2の縫合糸ロック(3018)と、第1の分離管(3020)と、第2の分離管(3022)とを、備える。図30Aには第1(3020)および第2(3022)の分離管を有するものが図示されているが、閉鎖装置(3000)は適当数(例えばゼロ、1つ、2つ、または3つ以上)の分離管を備え得る。加えて、明瞭にするため、第1(3020)および第2(3022)の分離管は図30Bおよび30Cに図示されていない。
【0073】
上述したように、プーリー縫合糸(3002)の一端(図示せず)はハンドルの一部分(例えば後ほど詳述する縫合糸フォブ)へ固定状態に取り付けられ、他端は第2の縫合糸ロック(3018)によりスネア(3012)へ一時的に取り付けられる(縫合糸ロックについては後ほど詳述する)。プーリー縫合糸(3002)はまた、図30A〜30Cに見られるように、結び目(3024)と第1の縫合糸ロック(3016)との間で縫合糸ループ(3010)の一部分にまたがり折り返される。この係止により、スネア(3012)が前進すると細長体(3006)の中で余分な縫合糸が前進させられ(図30Bに図示)、スネア(3012)が後退すると細長体の中に余分な縫合糸が基端方向に引き込まれる(図30Cに図示)。縫合糸ループ(3010)とプーリー縫合糸(3002)はいずれも(それぞれ第1(3016)および第2(3018)の縫合糸ロックにより)スネア(3012)へ一時的に取り付けられているため、スネア(3012)が動かされると、縫合糸は同じ距離だけ動かされる。この動きにより、スネアが前進または後退するときには、2つの縫合糸が重なり合う部分もそれぞれ前進または後退する。
【0074】
閉鎖装置(3000)から縫合糸ループ(3010)を解放するには、プーリー縫合糸(3002)と縫合糸ループ(3010)との係合を解く必要がある。この係合は任意の方法で解くことができる。いくつかの変形例では、プーリー縫合糸(3002)の一端を引くことによりプーリー縫合糸は縫合糸ロックから解放され、細長体から除去される。実際に、プーリー縫合糸(3002)は、プーリー縫合糸に一定の力がかかると第2の縫合糸ロック(3018)から引き出されるように、あるいは分離されるように構成される。図30A〜30Cに見られるように、プーリー縫合糸(3002)は折り畳まれて第2の縫合糸ロック(3018)に入る。方向の変化によりプーリー縫合糸(3002)から第2の縫合糸ロック(3018)にかかる剪断力は増すため、プーリー縫合糸(3002)は第2の縫合糸ロック(3018)から解放される。加えて、第1の縫合糸ロック(3016)は、縫合糸ループに一定の力がかかったときに縫合糸ループ(3010)を解放するよう構成される。保持部材(3014)からの縫合糸ループ(3010)の早すぎる解放を防ぐため、閉鎖装置(3000)は、第2の縫合糸ロック(3018)の解放力が第1の縫合糸ロック(3016)の解放力を下回るよう構成されてもよいが、必ずしもそのように構成されるとは限らない。
【0075】
スネア(3012)からプーリー縫合糸(3002)を解放するため、プーリー縫合糸(3002)の一端は装置のハンドルの1つ以上の部分へ取り付けられる。例えば、閉鎖装置(3000)のハンドル(3024)の一部分の一変形例を図30Dに示す。そこに見られるように、プーリー縫合糸(3002)の一端と縫合糸ループ(3010)の一端は縫合糸フォブ(3026)へ取り付けられる。図30Dでは同じ縫合糸フォブへ取り付けられているが、プーリー縫合糸(3002)と縫合糸ループ(3010)は必ずしも同じハンドル構成品へ取り付けられるとは限らない。プーリー縫合糸(3002)と縫合糸ループ(3010)が同じハンドル構成品へ取り付けられる変形例では、例えば図30Dに見られる変形例では、縫合糸ループ(3010)はハンドル(3024)の内部でたるみ/余分な縫合糸をなす。このため、ハンドル(3024)から縫合糸フォブ(3026)が引き離されると、縫合糸ループ(3010)に張力がかかる前にプーリー縫合糸(3002)に張力がかかる。このように縫合糸フォブ(3026)が引かれ、閉鎖装置(3000)は、縫合糸ループ(3010)を締めて解放する前に、第2の縫合糸ロック(3018)からプーリー縫合糸(3002)を解放するよう、構成される。
【0076】
プーリー縫合糸(1504)を備える閉鎖装置(1502)の別の変形例を図15に示す。この変形例で、プーリー縫合糸(1504)は変形可能連結部(1508)により縫合糸ループ(1506)へ解放可能に接合される。プーリー縫合糸(1504)の一端は第2の縫合糸ロック(1512)を介してスネア(1510)へ取り付けられ、プーリー縫合糸(1504)の他端は装置の適当な部分(例えば細長体またはハンドルの1つ以上の部分)へ固定状態に取り付けられる。上述した他の変形例と同様、細長体(1514)の内側で縫合糸ループ(1506)の一部分を保持するため、プーリー縫合糸(1504)はスネア(1510)とともに前進するか又は引き込まれる。
【0077】
プーリー縫合糸(1504)と縫合糸ループ(1506)との係合を解くため、縫合糸ループ(1506)はプーリー縫合糸(1504)から引き離される。これは何らかの適当な方法により、例えば縫合糸ループ(1506)を締めることにより、あるいは縫合糸ループ(1506)に対しプーリー縫合糸(1504)の一端を引くことにより、果たすことができる。縫合糸ループ(1506)とプーリー縫合糸(1504)とが互いに引き離されると、2本の縫合糸から変形可能連結部(1508)に1つ以上の力がかかる。これらの力により変形可能連結部(1508)は変形し、その結果、縫合糸ループ(1506)とプーリー縫合糸(1504)との係合は解かれる。
【0078】
[減力]
いくつかの例において、縫合糸フックまたは他の縫合糸維持機能が細長体の中で余分な縫合糸を引き且つ保持すると、縫合糸ループに1つ以上の力がかかる。場合によっては、縫合糸ループにかかるこの力により、スネアループアセンブリからの縫合糸ループの早すぎる分離が生じることがある。このことは、図12に図示されている。そこには、スネアループアセンブリ(1202)と縫合糸フック(1204)とを備える閉鎖装置(1200)の末端が見られる。スネアループアセンブリは縫合糸ループ(1206)を備え、縫合糸ループ(1206)は縫合糸の結び目(1208)を有し、保持部材(1212)によりスネア(1210)へ解放可能に結合される。縫合糸フック(1204)により縫合糸ループ(1206)が細長体(図示せず)の中に引き込まれると、縫合糸フック(1204)は縫合糸ループ(1206)の縫合糸に1つ以上の引張力(1214)をかける。これらの引張力は、スネアループアセンブリ(1202)の中に配置された縫合糸ループ(1206)部分で内向きの力(1216)に変換される。これらの内向きの力(1216)により縫合糸ループ(1206)は保持部材(1212)から分離し、その結果、あまりにも早く縫合糸ループ(1206)がスネアループアセンブリ(1202)から解放されることがある。
【0079】
この問題を防ぐため、スネアループアセンブリは1つ以上の縫合糸ロックを備える。そのような閉鎖装置(1300)の一変形例を図13A〜13Cに示す。図13Aは、スネアループアセンブリ(1302)と、縫合糸フック(1304)と、縫合糸ロック(1306)とを備える閉鎖装置(1300)の側断面図を示している。スネアループアセンブリ(1302)は縫合糸ループ(1308)を備え、縫合糸ループ(1308)は縫合糸の結び目(1310)を有し、保持部材(1314)によりスネア(1312)へ結合される。図13Bは縫合糸ロック(1306)の正面図を示している。そこには、第1の管腔(1316)と、第2の管腔(1318)と、細隙(1320)とを備える縫合糸ロック(1306)が、見られる。一般的に、スネア(1312)の少なくとも一部分は第1の管腔(1316)を通過し、縫合糸ループ(1308)の少なくとも一部分は第2の管腔(1318)を通過する。いくつかの変形例において、減力要素(1306)は第1の管腔(1316)によりスネア(1312)へ取り付けられる。
【0080】
一般的に、減力要素(1306)の第2の管腔(1318)は、縫合糸ループ(1308)の少なくとも一部分を圧縮するよう構成される。縫合糸は通常、強化部材に編組材が巻き付けられているため、縫合糸部分が圧縮されてもその強度に著しく影響することはない。第2の管腔(1318)は、縫合糸の断面積より小さい断面積を有する。したがって、縫合糸ループ(1308)の一部分が第2の管腔(1318)の中で前進させられるか、あるいは第2の管腔(1318)の中に入れられると、図13Cに見られるように、第2の管腔(1318)の狭い断面積のため、第2の管腔の中に配置された縫合糸ループ(1308)部分は圧縮される。縫合糸ループ(1308)の圧縮された部分により、減力要素(1306)の中では、縫合糸ループ(1308)が引かれること又は押されることが妨げられる。より具体的に、縫合糸ループ(1308)の圧縮されていない部分は減力要素の外面に当接し、この当接により第2の管腔(1318)内での縫合糸の動きは妨げられる。
【0081】
縫合糸ループ(1308)の一部分の圧縮は、縫合糸ループ(1308)がスネアループアセンブリ(1302)から尚早に解放されるのを防ぐのに役立つ。図12との関係で上述したように、縫合糸ループにかかる引張力は、スネアループアセンブリから縫合糸ループを分離する1つ以上の力に変換される。減力縫合糸ロック(1306)は、スネアループアセンブリ(1302)により保持された縫合糸ループ部分にかかる力を減少させるか又は除去するのに役立つ。より具体的に、第2の管腔(1318)の中に配置された縫合糸ループ(1308)部分の圧縮により、減力要素(1306)を介した引張力の伝達は阻止されるか、または緩和される。上述したように、縫合糸ループ(1308)の圧縮により、減力要素(1306)内での縫合糸ループ(1308)の動きは妨げられる。このため、上述したように縫合糸フック(1304)から縫合糸ループ(1308)に引張力がかかると、この引張力は減力縫合糸ロック(1306)を通じて縫合糸を引こうとするが、そのような動きは減力要素(1306)による圧縮により妨げられる。結果的に、減力縫合糸ロックを通じて縫合糸を引こうとすると引張力の一部または全部は実質的に消散する。このため、減力要素の反対側にある縫合糸にかかる力は減少するか、または完全に除去される。したがって減力縫合糸ロック(1306)は、スネアループアセンブリ(1302)から縫合糸ループ(1308)を尚早に解放する力を減少させるか、または除去する。
【0082】
減力縫合糸ロック(1306)は1つ以上の細隙(1320)または他の開口部を備える。展開されようとする縫合糸ループ(1308)はこれらの細隙の中を通る。これらの細隙は、米国特許出願第12/055,213号に記載されたもの等、何らかの適当な構成を有する。一般的に、縫合糸ループ(1308)が締められ縫合糸ループ(1308)から余分な縫合糸が取り除かれた後に、縫合糸ループ(1308)がさらに締められると、縫合糸ループ(1308)の一部分は細隙または他の開口部を通過する。縫合糸が細隙を通過すると、減力縫合糸ロック(1306)から縫合糸ループ(1308)が解放される。
【0083】
いくつかの変形例において、減力縫合糸ロックは1つ以上の収縮管から作られる。これらの変形例では、縫合糸ループとスネアの一部分が収縮管の1つ以上の管腔に通される。収縮管に1つ以上の刺激(例えば熱)が加えられると、収縮管は小さくなる。このサイズ減少は縫合糸ループとスネアを保持し且つ接合する働きをする。
【0084】
[ハンドル]
縫合糸ループからの余分な縫合糸の除去とスネアループアセンブリからの縫合糸ループの解放を促進することが可能なハンドルまたは基端操作部が提供される。ハンドルの取り扱いを促進し改善するのに役立つ1つ以上の人間工学的機能または構成を有するハンドルもここで説明される。ハンドル(300)の好適な一変形例を図3Aおよび3Bに示す。図3Aは、細長体(302)へ取り付けられたハンドル(300)の斜視図を示している。そこにはまた、張力緩和部分(304)と、スネアロック(306)と、スネア操作部(308)と、縫合糸フォブ(310)と、ガイドワイヤ導入部(312)とが、見られる。図3Bはハンドル(300)の底断面図を示している。そこにはまた、相互接続部(314)と、ロッキングカラー(316)と、縫合糸(318)と、スネア(320)とが、見られる。一般的に、縫合糸(318)は縫合糸フォブ(310)へ取り付けられる。縫合糸フォブ(310)はハンドルから引き離される。縫合糸フォブ(310)を引くと縫合糸ループ(図示せず)は締まり、縫合糸ループから余分なたるみが引っ張られる。縫合糸ループから余分なたるみが取り除かれた後に、ユーザが引き続き縫合糸ループを締めると、スネアループアセンブリ(図示せず)から縫合糸ループが解放される。同様に、スネア(320)はスネア操作部(308)へ取り付けられる。スネア操作部(308)はスネアおよび/またはスネアループアセンブリを操作するため使用される。スネア操作部(308)がハンドル(300)に対し基端方向又は末端方向に動かされると、細長体(302)の中でスネア(320)の一部分が基端方向又は末端方向に動かされる。その結果、先に詳述したように開形状と閉形状との間でスネアループアセンブリが動かされる。
【0085】
図3Bにはロッキングカラー(316)を有するハンドル(300)が図示されているが、ハンドル(300)は必ずしもロッキングカラー(316)を有するとは限らない。ロッキングカラー(316)を含む変形例では、細長体(302)がハンドル(300)から分離されるのを防ぐため、ロッキングカラー(316)は細長体(302)へ取り付けられ、且つハンドル(300)により保持される。同様に、図3Aおよび3Bには張力緩和部分(304)を有するハンドル(300)が図示されているが、ハンドル(300)は必ずしも張力緩和部分(304)を有するとは限らない。張力緩和部分(304)を含む変形例では、ハンドル(300)により細長体(302)にかかる緊張を緩和するため、張力緩和部分(304)は伸びるか、縮むか、または変形する。この変形は可逆であるか、または可逆でない。一般的に、張力緩和部分(304)はハンドル(300)と細長体(302)の両方へ取り付けられる。力が細長体(302)をハンドル(300)に対し押すか、引くか、またはねじると、張力緩和部分(304)はこの動きに逆らい、力の一部分により張力緩和部分は上述したように伸びるか、縮むか、または変形する。張力緩和部分(304)の変形は、細長体(302)とハンドル(300)との相対的動きを緩和する働きをし、細長体(302)がハンドル(300)から分離する見込みを最小限に抑える。張力緩和部分(304)は適当なサイズ、形、または構成を有する。
【0086】
加えて、図3Aには相互接続部(314)を有するハンドル(300)が図示されているが、ハンドル(300)は必ずしも相互接続部(314)を有するとは限らない。相互接続部(314)を含む変形例において、相互接続部(314)は、細長体(302)へ取り付けられ、ハンドル(300)の中で細長体(302)の種々の管腔を位置合わせしてもよい。例えばハンドル(300)がガイドワイヤ導入部(312)を備える変形例では、相互接続部(314)は細長体(302)内の作業管腔(図示せず)にガイドワイヤ導入部(312)を位置合わせしてもよい。相互接続部(314)は、細長体(302)内の任意の数の管腔に任意の数の装置構成品を位置合わせしてもよい。
【0087】
図3Aおよび3Bでは1つのガイドワイヤ導入部(312)を有するハンドル(300)が図示されているが、ハンドル(300)は、装置、流体、その他構成品を細長体(302)内に導入する導入部またはガイドをいくつでも有することができる。実際に、ハンドル(300)は、組織把持器、組織除去器、切断器具、視覚化装置、これらの組み合わせ等、1つ以上の作業装置を、細長体(302)の管腔内に導入するガイドを有する。別の変形例において、ハンドル(300)は細長体(302)内の管腔を通じてフラッシング、薬物送達、真空等を提供する導入部を含む。
【0088】
さらに、図3Bにはスネアロック(306)を有するハンドル(300)が図示されているが、ハンドル(300)は必ずしもスネアロック(306)を有するとは限らない。スネアロック(306)を含む変形例において、スネアロック(306)は、スネア操作部(308)がハンドル(300)に対し動かされるのを防ぐため使用される。このように、スネアループアセンブリ(図示せず)を操作するには、ユーザはまずスネアロック(306)を押してスネア操作部(308)を解放しなければならない。スネア操作部(308)が解放されたら、ユーザはスネア操作部を末端方向に押すか又はスネア操作部を基端方向に引くことにより、スネアループアセンブリを開閉する。ユーザがスネアロック(306)を押すのを止めると、スネア操作部(308)とスネアループアセンブリは再び繋止される。別の変形例において、ハンドル(300)は、スネア操作部(308)が誤って作動されるのを防ぐため、1つ以上の機能を有する。これらの変形例において、スネア操作部(308)は、ユーザが最初にスネア操作部そのものを押さない限りハンドルに対し滑動できないように構成される。別の変形例において、スネア操作部(308)はボタンまたは他の操作部を備え、スネア操作部(308)を作動させるには先にこれを操作しなければならない。さらに別の変形例において、スネア操作部(308)は自由に作動させられるが、ボタン、他の操作部、またはスネア操作部(308)そのものを、押すことにより繋止される。
【0089】
スネアループアセンブリが適切に閉じられると、縫合糸ループ(図示せず)を締めるため、縫合糸フォブ(310)はハンドルから外される。ハンドル(300)から縫合糸フォブ(310)が引き離されると縫合糸の結び目(図示せず)を通じて縫合糸が引かれ、縫合糸ループは締まる。縫合糸ループが締まると、細長体内に保持された余分な縫合糸が縫合糸ループから取り除かれる。このたるみが取り除かれ、ユーザが引き続き縫合糸フォブ(310)を引くと、縫合糸ループはスネアループアセンブリから分離される。スネアループアセンブリから縫合糸ループが分離されたら、包囲された組織を結紮するため、縫合糸ループはさらに締められる。縫合糸フォブ(310)は縫合糸(318)へ直結されているため、手術者には閉鎖手技の各段階を知らせる触覚フィードバックが提供される。より具体的に、ユーザは縫合糸フォブ(310)を引くときに、縫合糸ループを締める各段階に応じて異なる抵抗を経験する。例えばユーザは、縫合糸ループから余分な縫合糸(318)が取り除かれるときに一定の抵抗を経験する。閉鎖装置が縫合糸フック(図示せず)を備える変形例では、縫合糸フックから縫合糸(318)が解放されるときに抵抗は変化する。加えて、縫合糸ループからすべての余分な縫合糸が取り除かれたときと、スネアループアセンブリから縫合糸ループが解放され始めたときと、スネアループアセンブリから縫合糸ループが完全に解放されたときにも、抵抗は変化する。
【0090】
加えて、いくつかの変形例においては、ユーザが縫合糸ループにかける力を一定にすることが望ましい。縫合糸ループが過剰に締められると、スネアにより捕捉された組織を損傷するおそれがある。そこで、いくつかの変形例において、縫合糸フォブ(310)は、縫合糸フォブ(310)に所定の力(例えば約8ポンド乃至約10ポンド)がかかると縫合糸(318)からちぎれるよう構成される。このように、縫合糸フォブ(310)は組織を損傷する前に縫合糸から分離するように構成されるため、ユーザが縫合糸フォブ(310)を使って縫合糸ループを締めてもスネアで捕捉された組織を損傷することがないように、装置が構成される。
【0091】
縫合糸(318)はさらに、縫合糸ループから余分な縫合糸(318)が取り除かれたことを知らせるため、1つ以上の可視マーカー(例えばカラーコーティング)を含む。例えば、縫合糸(318)の一部分は縫合糸フォブ(310)から一定の距離をおいた部分にカラーマーカーを有する。カラーマーカーと縫合糸フォブ(310)との距離は、スネアループアセンブリが閉じられているときの縫合糸ループの余分な縫合糸の量に一致する。ユーザは縫合糸フォブ(310)を使ってハンドル(300)から縫合糸(318)を引き出す。ハンドル(300)の外で(またはハンドル(300)の窓を通して)カラーマーカーが見えたら、ユーザは余分な縫合糸が取り除かれたことを知る。余分な縫合糸の量はスネアループアセンブリによって形成されるループの大きさに左右されるため、またスネアループアセンブリによって形成されるループの大きさはスネア操作部(308)によって変化するため、いくつかの例においては、縫合糸(318)上の1つ以上の可視マーカーはスネア操作部(308)上の1つ以上の可視マーカーに一致する。
【0092】
加えて、縫合糸(318)は何らかの適当な方法で縫合糸フォブ(310)へ接合される。図3Bに見られるような変形例では、縫合糸(318)の一端が縫合糸フォブ(310)へ直結される。これらの変形例において、縫合糸(318)は縫合糸フォブ(310)内の経路に通され、結ばれ、その結び目により縫合糸フォブ(310)を係止する。別の変形例において、縫合糸(318)は縫合糸フォブ(310)にクリップで留められるか、掴持されるか、または別の方法で取り付けられる。別の変形例において、縫合糸フォブ(310)は縫合糸(318)を係止する滑車(図示せず)を備える。これらの変形例において、縫合糸(318)の一端はハンドル(300)内の他の構造へ、例えば相互接続部(314)へ、取り付けられ、滑車は縫合糸(318)を滑動可能状態に係止する。縫合糸は滑車にまたがって折り返されるため、ユーザは同じ締め付け量を達成するにあたってより短い距離だけ縫合糸フォブ(310)を引けばよい。例えばユーザが縫合糸フォブを1インチ後退させると、滑車も1インチ後退する。滑車が後退すると、より多くの縫合糸(318)がハンドル(300)に引き込まれる。滑車が1インチ動くたびに約2インチの縫合糸がハンドル内に引き込まれるため(滑車の両側の縫合糸(318)の各部分につき1インチ)、ユーザは同レベルの締め付けを達成するにあたって縫合糸フォブ(310)を半分の距離だけ動かせばよい。
【0093】
場合によっては、先に縫合糸フォブを分離せずとも、余分な縫合糸の少なくとも一部分を取り除くことが望まれる。例えば、細長体(402)へ取り付けられたハンドル(400)の一変形例の斜視図を図4に示す。そこには、張力緩和部分(404)と、縫合糸フォブ(406)と、ガイドワイヤ導入部(408)と、スネア操作部(410)と、縫合糸フォブ操作部(412)とが、見られる。一般的に、スネア操作部(410)は、上述したようにスネアループアセンブリ(図示せず)を操作するため、スネア(図示せず)へ取り付けられる。いくつかの変形例において、スネア操作部(410)は、作動していないときに定位置で繋止されるよう構成される。これらの例において、スネア操作部(410)は、例えばスネア操作部(410)を押すこと、またはスネアロック(図示せず)を押すことなど、数通りの方法により解除される。これらの変形例において、スネア操作部(410)又はスネアロックが押されなくなると、スネア操作部(410)は再び定位置に繋止される。
【0094】
図4に見られる変形例において、縫合糸フォブ(406)は縫合糸フォブ操作部(412)によってハンドル(400)から出し入れされる。縫合糸フォブ(406)は上述したいずれかの方法で縫合糸(図示せず)へ取り付けられる。一般的に、閉鎖装置は、縫合糸フォブ操作部(412)がハンドル(400)の末端部の近くに位置するときに、縫合糸フォブ(406)がハンドル(400)の中に完全に収容されるよう、構成される。縫合糸フォブ操作部(412)は、スネア操作部(410)に関し上述したような1つ以上の繋止機能を有する。スネア操作部(410)を使ってスネアループアセンブリが標的組織の周辺で閉じられると、縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くため、縫合糸フォブ操作部(412)は図4に見られる位置まで基端方向に引かれる。縫合糸フォブ操作部(412)の動きはそれが座するその軌道の長さによって制限されるため、縫合糸ループから取り除かれる縫合糸の量はこの軌道の長さによって決まる。別の変形例において、ハンドル(400)は、縫合糸フォブ操作部(412)が動く量を制限する1つ以上の機能(例えば停止体)を備える。よって、縫合糸フォブ操作部(412)によって引かれる縫合糸の量は、縫合糸フォブ操作部(412)の軌道と、縫合糸が縫合糸フォブ(406)へ取り付けられる方法によって決まる。このように、ハンドル(400)は、縫合糸フォブ操作部(412)が作動されたときに縫合糸ループ(図示せず)から所定量の余分な縫合糸を取り除くよう、構成される。縫合糸フォブ操作部(412)が図4に見られる位置まで動かされると、縫合糸フォブ(406)はハンドル(400)の端部から突出し、ハンドル(400)から分離される。分離されると、縫合糸フォブ(406)が引かれ、縫合糸ループから残っている余分な縫合糸が取り除かれる。そして、さらに引かれるとスネアループアセンブリから縫合糸ループが外される。スネアループアセンブリから縫合糸ループが解放されたら、縫合糸フォブ(406)を使って縫合糸ループをさらに締め、組織を結紮する。
【0095】
いくつかの変形例において、縫合糸フォブ操作部は、縫合糸フォブ操作部の作動を促進する1つ以上の機能を有する。そのようなハンドル(500)の一変形例を図5に示す。そこには、スネア操作部(502)と、縫合糸フォブ(504)と、延長部(508)を備える縫合糸フォブ操作部(506)とを、備えるハンドル(500)が、見られる。スネア操作部(502)と縫合糸フォブ操作部(506)は上述した適切な要領で機能する。延長部(508)は、1つ以上の縫合糸フォブ操作部(502)へ取り付けられるか、1つ以上の縫合糸フォブ操作部(502)内に形成されるか、または1つ以上の縫合糸フォブ操作部(502)上に形成された、何らかの適当な構造または突出部であり、縫合糸フォブ操作部(506)の作動を容易にするため、ユーザによって握られるか、掴まれるか又は接触される表面を提供する。延長部は適当なサイズ、形、構成、および向きを有する。例えば図5に見られる変形例において、延長部(508)は、ユーザがハンドル(500)を注射器のように保持し作動させるよう構成されている。
【0096】
別の変形例において、ハンドルは縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くため1つ以上の代替機構を有する。そのようなハンドル(600)の一変形例を図6に示す。ハンドル(600)は、スネア操作部(602)と、縫合糸フォブ(604)と、スクイーズグリップ(606)とを、備える。縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くため、ユーザはスクイーズグリップ(606)を繰り返し圧迫する。ユーザがスクイーズグリップ(606)を繰り返し圧迫すると、スクイーズグリップ(606)は縫合糸ループの縫合糸をハンドル(600)の中に引き込む。これらの変形例では、スクイーズグリップ(606)を圧迫すると縫合糸リール(図示せず)が回転し、回転する縫合糸リールが縫合糸を回収する。十分な量の縫合糸が縫合糸ループから取り除かれたら、上述したようにスネアループアセンブリから縫合糸ループを解放するため、縫合糸フォブ(604)は分離される。
【0097】
ハンドル(700)の別の変形例を図7に示す。そこには、スネア操作部(702)と、縫合糸フォブ(704)と、縫合糸ノブ(706)とを備えるハンドル(700)が、見られる。これらの変形例において、縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くには縫合糸ノブ(706)を回す。いくつかの変形例において、縫合糸ノブ(706)は縫合糸リールを回転させ、回転する縫合糸リールが縫合糸を回収する。別の変形例では、縫合糸ノブ(706)を回すと、図4との関係で上述したようにハンドル(700)から縫合糸フォブ(704)が出入りする。縫合糸ノブ(706)は、縫合糸ループから縫合糸がどれくらい取り除かれたかを指示する1つ以上の可視標識を有する。例えば、縫合糸ノブ(706)の1つ以上の表面には距離マークが配置される。ハンドル(700)は1つ以上の基準マーカー(図示せず)を有する。縫合糸ノブ(706)の距離マークは、縫合糸ノブ(706)の距離マークがハンドル(700)の基準マーカーに揃ったときに、縫合糸ループから取り除かれた縫合糸の量に一致するよう、構成される。例えば、縫合糸ノブが回される前は縫合糸ノブ(706)の距離マーク「0」が基準マーカーに揃い、縫合糸ループから縫合糸が取り除かれていないことを指示する。縫合糸ノブが半回転だけ回されると縫合糸ノブ(706)の距離マーク「3」がハンドル(700)の基準マーカーに揃い、3センチメートルの縫合糸が縫合糸ループから取り除かれたことを指示する。縫合糸ノブ(706)のこの具体的な距離マークは、縫合糸ノブ(706)を回して縫合糸ループから縫合糸がどれくらい取り除かれるかに左右される。
【0098】
別の変形例において、ユーザは縫合糸ノブ(706)を一定の箇所より先に回すことができない。この機能は、ユーザが縫合糸ループを締めすぎるのを防ぐ、あるいはスネアループアセンブリから縫合糸ループを意図せず解放するのを防ぐ。これらの変形例のいくつかにおいて、縫合糸ノブ(706)が回転できる量は、縫合糸ループの余分な縫合糸の量に一致する。一般的に、ユーザは縫合糸ノブ(706)を一定の距離しか回すことができないため、縫合糸ループから所定量の縫合糸を取り除いたことを知る。ハンドル(700)の構成しだいでは、ユーザは縫合糸ループから余分な縫合糸がすべて取り除かれ、スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放できることを知る。次に、ハンドルから縫合糸フォブ(704)を解放し、これを利用して、スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放する。縫合糸フォブ(704)は何らかの適当な方法でハンドル(700)から解放される。いくつかの変形例では、1つ以上のボタン、ノブ、または他の操作部を作動させることによりハンドル(700)から縫合糸フォブ(704)を解放する。ユーザに縫合糸ノブ(706)を一定量しか回せないようにすることにより、縫合糸ループを締めるステップと縫合糸ループを解放するステップは2つの別個のステップに分かれるため、ユーザが縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除いた直後に縫合糸ループを解放することはなくなる。したがってユーザは、縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除き、その後ユーザの都合の良いときに縫合糸ループを解放することができる。これは、縫合糸を締めてからスネアループアセンブリから縫合糸を解放するまでの間に別の作業に従事することを望むユーザに、さらなる自由度を提供する。
【0099】
いくつかの変形例では、ハンドルから分離された縫合糸ノブが縫合糸フォブとして機能する。そのようなハンドル(800)の一変形例を図8に示す。ハンドル(800)は、スネア操作部(802)と、縫合糸ノブ(804)とを、備える。縫合糸ノブ(804)は、米国特許出願第12/055,213号に記載された適当な構成を有する。一般的に、縫合糸ループから余分な縫合糸を取り除くには縫合糸ノブ(804)を回す。いくつかの変形例において、縫合糸ノブは上述したように一定量しか回すことができない。これは縫合糸ループにある余分な縫合糸の量に一致する。いくつかの変形例では、上述したような1つ以上の可視標識が縫合糸ループから縫合糸がどれくらい取り除かれたかをユーザに知らせる。いくつかの変形例において、縫合糸ノブ(804)は、ユーザが一定量の力をかけることにより回るよう構成される。別の変形例において、縫合糸ノブ(804)を回すのに要求される力は縫合糸ループからの抵抗によって決まる。この場合は、ノブを回しているときにユーザに触覚フィードバックが提供される。
【0100】
縫合糸ノブ(804)を回して縫合糸ループから余分な縫合糸が取り除かれたら、上述したように縫合糸ノブはハンドル(800)から分離され、縫合糸フォブとして機能する。いくつかの変形例では、縫合糸ノブ(804)が一定量回されると、縫合糸ノブ(804)はハンドル(800)から自動的に分離する。これらの変形例において、縫合糸ノブ(804)はハンドル(800)を係止するねじ山(図示せず)を備える。縫合糸ノブ(804)が一定量回されるとねじが外れ、ハンドル(800)から縫合糸ノブ(804)が解放される。別の変形例では、縫合糸ループが所定の力を受けるとハンドル(800)から縫合糸ノブ(804)が自動的に分離する。これらの変形例のいくつかでは、縫合糸ループが締められると1つ以上のスイッチ、レバー、または他の操作部が引っ張られ、ハンドル(800)から縫合糸ノブ(804)が分離される。さらに別の変形例において、ハンドル(800)は1つ以上のボタン、ノブ、またはレバーを備え、これを作動させるとハンドル(800)から縫合糸ノブ(804)が解放される。加えて、図8には正方形の縫合糸ノブ(804)が図示されているが、縫合糸ノブ(804)は適当なサイズまたは形(例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形等)であってよい。
【0101】
ここでは人間工学的に改善されたハンドルも提供される。いくつかの変形例において、ハンドル本体はユーザの手の1つ以上の部分の輪郭を描くよう成形される。別の変形例において、ここで説明するハンドルはその高さより大きい幅を有する。これらの変形例は、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3等を含みただしこれらに限定されない、適当な高さ対幅比を有する。これらのハンドルのいずれか1つを表面上に置くユーザは、狭い側面のいずれか1つではなく広い底面を下にしてハンドルを置く見込みが高い。これは、手技中のスネアループアセンブリ、細長体、またはハンドルの回転等、標的組織を損傷したり閉鎖装置の機能に支障をきたす装置問題を防ぐのに役立つ。ユーザがトレーや他の表面にハンドルを置くときにハンドルの狭い側面のいずれか1つを下にして置く見込みが低ければ、ユーザが手技中にハンドルを過度に回転させる見込みは低くなる。
【0102】
別の変形例において、ハンドルは、装置が特定の向きで横たえられるようにするための1つ以上の突出部を備える。そのようなハンドル(900)の一変形例を図9に示す。ハンドル(900)は、スネア操作部(902)と、縫合糸ノブ(904)と、縫合糸ノブ解放部(906)と、突出部(908)とを、備える。突出部(908)は、ハンドル(900)が特定の側面を下にして置かれるようにする働きをする。4つの独立した突出部(908)を有するものが図示されているが、ハンドル(900)は適当数の突出部(908)を有することができ、それぞれの突出部は適当なサイズおよび形を有することができる。
【0103】
明確さと理解のため、図解と例により発明をある程度詳しく説明してきたが、いくらかの変更および修正を行うことはでき、それらの変更および修正が添付の請求項の範囲内にあることは明白であろう。加えて、ここで説明する閉鎖装置が上述した装置構成品および機能の任意の組み合わせを備え得ることは理解されたい。
【0104】
[方法]
ここでは左心耳を閉じる方法も説明する。ここで説明する装置のいずれかを、ここで説明する1つ以上の方法と併せて、あるいは米国特許出願第12/055,213号で説明されている1つ以上の方法と併せて、使用できることは理解されたい。一般的に、ここで説明する方法は、左心耳にアクセスすることを備える。アクセスが達成されたら、左心耳まで閉鎖装置(上述したもの等)を前進させる。いくつかの変形例において、閉鎖装置は、1つ以上の誘導装置および/または1つ以上の安定化/位置決め装置(例えば拡張可能部材等)の助けを借りて、前進され、位置決めされる。閉鎖装置は、左心耳をスネアにより捕捉し、閉じるため、使用される。左心耳を閉形状に保持するため、縫合糸ループ等の閉鎖要素が締められ、閉鎖装置から解放される。閉鎖装置は引き込まれ、縫合糸の一部分は切断される。これらのステップは後ほど詳述する。
【0105】
上述したように、ここで説明する方法のいくつかの変形例は、左心耳へのアクセスを得ることを備える。いくつかの変形例では、左心耳を閉じる方法は、心臓の内部と心臓の外部から左心耳にアクセスすることを含む。心臓の内部にアクセスするには、血管系が通常使用される。例えば、1つ以上の種々の静脈または動脈(頚静脈、大腿脈、または頚動脈など)を経由しアクセスを得る。いくつかの変形例においては、標準セルジンガー技法とニードルを使用し総大腿静脈(例えば左総大腿静脈)を経由し心臓の内部にアクセスする。次に、ニードルを通じてイントロデューサワイヤを前進させ、その後イントロデューサシースを前進させる。次に、イントロデューサワイヤは取り除かれる。いくつかの変形例においては、イントロデューサシースの代わりにガイディングカテーテルシースがセットされるか、あるいは最初のシースがガイディングカテーテルシースに差し替えられる。
【0106】
蛍光透視法を使用し、シース、シースの中にセットされたカテーテル、ガイディングカテーテルシース、またはこれらの任意の組み合わせを通じて血管造影を行い、左心房への経中隔アクセスのためアクセス経路の解剖学的特徴と検討材料を観察する(例えばねじれ、凝血塊、大静脈フィルタ等の装置等)。蛍光透視法、超音波、心内心エコー法、心外心エコー法、経食道心エコー法、またはこれらの組み合わせを左心房への経中隔アクセスを視覚化するのに役立て、標準的な経中隔アクセス技法を用いて左心房へのアクセスを得る。
【0107】
外部から心臓にアクセスする場合はサブソラシックアクセスポイントを使用する。このアクセスポイントは通常、患者の解剖学的特徴に基づいて特定される。いくつかの変形例において、アクセスポイントは何らかの適当な場所である(例えば胸骨切開術、胸郭開口術、または開胸術による肋間アクセス、剣状突起の右、患者左肩向き、または肋軟骨または剣状突起そのもの)。アクセスポイントが決まったら、蛍光透視下で標準的な心膜穿刺技法を使用しニードル(例えば17Gチューヒーニードル)を前進させる。心膜へのアクセスが得られたら、心膜嚢の中で蛍光透視映像のもとニードルを通じてガイドワイヤを前進させる。その後ニードルは取り除かれる。こうして心膜腔へのアクセスが得られる。
【0108】
別の変形例においては、上述したアクセス手順は実行せず、ここで説明するシステムおよび装置を使用し左心耳は閉じられる。例えばいくつかの変形例において、方法は、基端と末端とを有する第1のガイドを左心耳の中へ前進させることを備え、左心耳を通って左心耳の外にガイドを出すことにより、基端または末端のいずれか一方は血管系の中にセットされ、基端または末端のいずれか一方はサブソラシックスペースの中にセットされる。
【0109】
左心耳へのアクセスを得ることにより、アラインメント部材を有する1つ以上のガイドを左心耳まで前進させる。これらのガイドは、米国特許出願第12/055,213号に記載されたもの等、何らかの適当なガイドでよい。例えば、アラインメント部材を有する第1および第2のガイドが手技を誘導するため使用される。アラインメント部材は何らかの適当なアラインメント部材でよい(例えば相互接続要素、1つ以上の真空部材、放射線不透過性またはエコー発生性マーカー、可聴応答を発するよう構成された部材、磁石等)。いくつかの変形例において、アラインメント部材はガイドの末端に位置する磁石である。磁石は、ネオジム鉄ボロン、コバルトサマリウム等の希土類磁石、または他の強力な固定磁石要素等、適当な磁性物質から作られるか、あるいは適当な磁性物質を備える。これらのガイドは、さらなる器具および/または装置を左心耳へ誘導するため使用される。
【0110】
例えばいくつかの変形例では、第1のガイドを左心耳の中へ前進させ、第2のガイドは左心耳に近接する心膜腔の中へ前進させる。これらのガイドは、例えば蛍光透視視覚化、超音波視覚化、これらの組み合わせ等、様々な視覚化技法のいずれかにより前進させる。第1および第2のガイド部材を左心耳まで前進させたら、1つ以上の位置決めおよび/または安定化要素(例えばバルーン等の拡張可能構造)を、第1のガイドに沿って前進させ、あるいは第1のガイドとともに前進させ(例えば、位置決めおよび/または安定化要素は第1のガイドに結合されるか、または第1のガイドの一部をなす)、左心耳へ入れる。同様に、閉鎖装置を第2のガイドに沿って左心耳の外側まで前進させる。閉鎖装置がここで説明する閉鎖装置のいずれかであることは理解されたい。
【0111】
左心耳内にセットされたら、位置決め要素を使用し閉鎖装置のスネアループアセンブリを位置決めする。いくつかの変形例においては、左心耳の開口部又はこれの近くで拡張可能構造を膨張または拡張させ、拡張可能構造の末端で閉鎖装置のスネアループアセンブリを左心耳の周辺で閉じる。これらの変形例において、拡張可能構造は閉鎖装置をクマジン稜から離して位置決めするのに役立つ。別の変形例において、拡張可能部材は左心耳の中で拡張される。これらの変形例において、拡張可能部材が拡張されると左心耳は膨らみ、その形をほぼ円錐形からほぼ球形に変えるため、左心耳と左心房との接合部は明瞭になる。加えて、拡張した状態の拡張可能部材の圧力は左心房そのもののそれより大きいため、左心耳と左心房との間に大きな張力の差が生じる。これらの変形例において、拡張可能部材は左心耳の基部の近くで閉鎖装置を位置決めするのに役立つ。さらに別の変形例においては、左心耳の開口部又はこれの近くで1つの拡張可能構造を拡張させ、左心耳の中で第2の拡張可能構造を拡張させる。これらの変形例では、2つの拡張可能構造の間で閉鎖装置のスネアループアセンブリが左心耳の周辺で閉じられるため、正確な装置の位置決めを助長する。
【0112】
拡張可能構造が何らかの適当な拡張可能構造であることは理解されたい。いくつかの変形例において、1つ以上の拡張可能構造はバルーン等の膨張可能構造である。これらの変形例において、バルーンはカテーテルへ取り付けられる。いくつかの変形例において、バルーンまたは膨張可能構造は、左心耳の中で膨張した状態で分離されるよう構成される。別の変形例において、拡張可能構造は拡張可能メッシュまたはケージ構造を備える。このメッシュは自己拡張型であるか又は機械的に拡張可能であって、何らかの適当な材料(例えばプラチナ、ニチノール、ステンレス鋼、ダクロンウール、PTFE、これらの組み合わせ等)から作られる。拡張可能メッシュまたはケージ構造は左心耳の中で拡張した状態で分離されるよう構成され、ただし必ずしもそのように構成されるとは限らない。
【0113】
拡張可能部材が拡張状態になっているときに、スネアループアセンブリは開形状になるまで動かされ、左心耳の一部分の周辺にセットされる。左心耳の周辺にセットされたスネアループアセンブリは、左心耳の周辺で閉じられる。いくつかの変形例では、バルーンがしぼんだ状態または拡張していない状態になっているときにスネアループアセンブリを左心耳の周辺にセットし、スネアループアセンブリを閉じた後にバルーンを拡張する。場合によっては、縫合糸を締める前に心耳が適切に閉じられていることを確認することが望まれる。適切にまたは所望状態に閉じられていない場合はスネアループアセンブリを開き、再配置し、閉じ、もう一度確認する。
【0114】
適切に閉じられたら、スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放するため縫合糸ループは締められる。いくつかの変形例において、スネアループアセンブリはこのとき開形状に戻され、縫合糸ループは再び締められる。こうすることで縫合糸ループは左心耳の周辺で確実に締められる。いくつかの変形例において、ユーザはある程度の時間待った後に縫合糸ループを再度締める。この待ち時間により縫合糸ループの中で組織がなじんで落ち着き、組織をよりしっかりと閉じることができる。この時間は適当な時間であってよく、例えば約30秒超、約1分超、または約2分超であってよい。スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放した後には、閉鎖装置を引き込む。いくつかの変形例においては、閉鎖装置が引き込まれた後に縫合糸ループをさらに締めることが望まれる。これは1つ以上のさらなる装置(例えば結び目プッシャ)により達成される。
【0115】
ガイド部材または位置決め要素の一部または全部が、方法が行われている間の適当な時点で左心耳から除去されることは理解されたい。例えばいくつかの変形例において、これらの構造の一部または全部は、スネアループアセンブリを閉じてからスネアループアセンブリから縫合糸ループを解放する前に、左心耳から取り除かれる。別の変形例において、これらの構造の一部または全部は、スネアループアセンブリから縫合糸ループを解放した後に取り除かれる。縫合糸ループは、これらの要素の一部または全部が取り除かれた後にさらに締められる。さらに別の変形例においては、1つ以上の拡張可能部材が分離され、左心耳に残る。これらの変形例において、拡張した部材は左心耳から血液を変位させ、さらなる血液が左心耳に入るのを防ぐ働きをする。拡張可能部材がバルーンまたは膨張可能構造を備える場合、バルーンは、何らかの適当な物質で、例えば生理食塩水や1つ以上の親水性ポリマー(例えばメタクリル酸ヒドロキシエチル)で、満たされる。
【0116】
さらに別の変形例において、左心耳内にセットされるガイド部材または他の要素のいずれか1つは、除去に先立ち、閉じられた左心耳へ1つ以上の物質を放出するよう構成される。この物質は閉じられた左心耳を止血または塞栓する働きをし、閉じられた左心耳での血液の出入りを防ぐ。好適な物質の例は、ゼラチン(例えばゲルフォーム)、液体塞栓剤(例えばn−ブチル−2−シアノアクリレート、エチドル)、ゼラチンミクロスフェア(例えばポリビニールアルコールアクリルミクロスフェア)、または血栓性物質(例えばプラチナ、ステンレス鋼、ダクロンウール、これらの組み合わせ等)を含み、ただしこれらに限定されない。
【0117】
いくつかの変形例においては、左心耳の周辺で縫合糸ループが締められた後に縫合糸の結び目を定位置に繋止することが望まれる。いくつかの変形例において、縫合糸の結び目は、先に詳述した1つ以上の単方向繋止構造を用いて繋止される。別の変形例において、結び目は、1つ以上のバイオグルー又は他の生体適合性接着剤(例えばシアノアクリレート)により定位置に繋止される。さらに別の変形例においては、結び目を定位置で溶かすためエネルギー(例えばRFエネルギー、熱エネルギー、光エネルギー等)が使用される。さらに別の変形例において、縫合糸の結び目の1つ以上の部分は、1つ以上の刺激を受けて拡張するよう構成される。例えばいくつかの変形例において、縫合糸はコラーゲンフィラメントを備え、このコラーゲンフィラメントは縫合糸が切断されると水分に晒される。水分に晒されたコラーゲンは拡張し、縫合糸の結び目を定位置に繋止する。
【0118】
縫合糸ループが適切に配置されたら、縫合糸は、その長さ(左心耳にある結び目のすぐ近くから皮膚表面の近位または遠位まで)に沿った適当な場所で適当な方法により切断される。場合によっては、結び目のところで縫合糸を切断することが望まれる(例えば縫合糸にかかる張力を完全に解放することが望まれる場合)。縫合糸は何らかの適当な方法により、例えば機械的に切ることにより、あるいはエネルギーの印加により、切断される。例えば光エネルギー、熱エネルギー、RFエネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、運動エネルギー、化学エネルギー、これらの組み合わせの印加により、縫合糸は切断される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図20A
図20B
図20C
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図27
図28A
図28B
図29
図30A
図30B
図30C
図30D