特許第6192779号(P6192779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6192779
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】管の研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/40 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B24B5/40 C
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-136481(P2016-136481)
(22)【出願日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 守雄
(72)【発明者】
【氏名】沖野 洋三
(72)【発明者】
【氏名】吉井 宏之
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05233791(US,A)
【文献】 実公昭38−012694(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2013/114527(WO,A1)
【文献】 特開昭62−277252(JP,A)
【文献】 特開昭60−242902(JP,A)
【文献】 実開昭49−021689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/00 − 5/40
B24B 33/02
B24D 5/00 − 5/16
B28D 1/14
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管と研削部材との少なくとも一方を、他方に対して、管の軸心方向へ移動させながら管の内面を研削する研削装置であって、
複数の回転自在な研削部材が支軸に設けられ、
研削部材は、支軸に設けられた台盤部と、台盤部の外周に設けられた砥石部とを有し、
支軸の軸心方向において隣り合う研削部材の台盤部間にスペーサが設けられ
支軸の軸心方向において貫通する孔が台盤部に形成され、
スペーサは孔を塞がないように構成されていることを特徴とする管の研削装置。
【請求項2】
台盤部とスペーサとは金属製であることを特徴とする請求項1に記載の管の研削装置。
【請求項3】
砥石部は、台盤部の周方向において間隔をあけて複数設けられているとともに、台盤部の外周から径方向外側に突出していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管の研削装置。
【請求項4】
砥石部は、外周部に、山形状の突起を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管の研削装置。
【請求項5】
砥石部は、外周部に、多角形状の突起を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管の研削装置。
【請求項6】
突起は、支軸の軸心方向における端部に、角部を有していることを特徴とする請求項5に記載の管の研削装置。
【請求項7】
突起は、研削部材の回転方向における端部に、角部を有していることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の管の研削装置。
【請求項8】
管と研削部材との少なくとも一方を、他方に対して、管の軸心方向へ移動させながら管の内面を研削する研削装置であって、
複数の回転自在な研削部材が支軸に設けられ、
研削部材は、支軸に設けられた台盤部と、台盤部の外周に設けられた砥石部とを有し、
台盤部は支軸の軸心方向において複数設けられ、
支軸の軸心方向において隣り合う研削部材の台盤部間にスペーサが設けられ、
砥石部は、外周部に、多角形状の突起を有し、
突起は研削屑を砥石部から台盤部間に案内する案内面を有していることを特徴とする管の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の内面を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の研削装置としては、図16に示すように、回転自在に支持された管101に対して、研削部材102を管101の軸心方向Aへ移動させながら、管101の内面を研削するものがある。研削部材102は回転軸103の先端に設けられている。
【0003】
これによると、管101を軸心周りに回転させ、研削部材102を、回転軸103と共に回転させながら管101の内部に挿入し、管101の軸心方向Aへ移動させる。これにより、研削部材102が、管101の内面に当接し、管101の軸心方向Aへ移動しながら管101の内面を研削する。
【0004】
尚、上記のような管の研削装置は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−219344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来形式では、研削部材102で管101の内面を研削している際、研削部材102と管101の内面との摩擦熱によって研削部材102が高温になり、このため、研削部材102が劣化して脆くなり、研削部材102の研削性能が大幅に低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、摩擦熱による研削部材の研削性能の低下を防止することが可能な管の研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明は、管と研削部材との少なくとも一方を、他方に対して、管の軸心方向へ移動させながら管の内面を研削する研削装置であって、
複数の回転自在な研削部材が支軸に設けられ、
研削部材は、支軸に設けられた台盤部と、台盤部の外周に設けられた砥石部とを有し、
支軸の軸心方向において隣り合う研削部材の台盤部間にスペーサが設けられ
支軸の軸心方向において貫通する孔が台盤部に形成され、
スペーサは孔を塞がないように構成されているものである。
【0009】
これによると、管を軸心周りに回転させ、研削部材を、回転させながら管の内面に当接させ、管の軸心方向へ移動させる。これにより、研削部材が管の軸心方向へ移動しながら管の内面を研削する。
【0010】
この際、研削部材の砥石部と管の内面との摩擦によって摩擦熱が発生するが、この摩擦熱は、研削部材の砥石部から台盤部に伝わって、台盤部から放散されるとともに、台盤部からスペーサに伝わり、スペーサからも放散される。これにより、摩擦熱の放散(放熱)が促進され、研削部材の砥石部の温度上昇が抑制されるため、砥石部が高温になり劣化して脆くなるのを防止することができ、研削部材の研削性能の低下を防止することができる。
【0011】
また、支軸の軸心方向において隣り合う研削部材同士はスペーサを介して離間しているため、管の内面を研削している際に発生する研削屑が、互いに隣り合った研削部材間から容易に排出される。これにより、研削屑の排出性能が向上するため、研削部材の研削性能の低下をさらに防止することができる。
【0013】
さらに、摩擦熱は台盤部の孔からも放散されるため、摩擦熱の放散がより一段と促進される。
本第発明における管の研削装置は、台盤部とスペーサとは金属製である。
【0014】
これによると、摩擦熱が研削部材の砥石部から台盤部を経てスペーサに伝わり易く、摩擦熱を台盤部とスペーサとから放散させることができる。
本第発明における管の研削装置は、砥石部は、台盤部の周方向において間隔をあけて複数設けられているとともに、台盤部の外周から径方向外側に突出しているものである。
【0015】
これによると、複数の砥石部が台盤部の周方向において間隔をあけて離間した状態で設けられているため、管の内面を切削している際に発生する研削屑が、台盤部の周方向において隣り合った砥石部間から容易に排出される。これにより、研削屑の排出性能が向上するため、研削部材の研削性能の低下を防止することができる。
【0016】
本第発明における管の研削装置は、砥石部は、外周部に、山形状の突起を有しているものである。
これによると、回転している研削部材の砥石部の山形状の突起が管の内面を切削することにより、管の内面の切削性能が向上する。
【0017】
本第発明における管の研削装置は、砥石部は、外周部に、多角形状の突起を有しているものである。
これによると、回転している研削部材の砥石部の多角形状の突起が管の内面を切削することにより、管の内面の切削性能が向上する。
【0018】
本第発明における管の研削装置は、突起は、支軸の軸心方向における端部に、角部を有しているものである。
これによると、研削部材が回転しながら管の軸心方向へ移動し、砥石部の突起が管の内面を切削することにより、管の内面が研削される。この際、突起は、支軸の軸心方向における端部に角部を有しているため、角部を先頭にして管の軸心方向に移動する。このため、管の軸心方向への研削部材の移動が円滑に行える。
【0019】
本第発明における管の研削装置は、突起は、研削部材の回転方向における端部に、角部を有しているものである。
これによると、研削部材が回転しながら管の軸心方向へ移動し、砥石部の突起が管の内面を切削することにより、管の内面が研削される。この際、突起は、研削部材の回転方向における端部に角部を有しているため、角部を先頭にして回転する。このため、研削部材の回転が円滑に行える。
【0020】
本第8発明は、管と研削部材との少なくとも一方を、他方に対して、管の軸心方向へ移動させながら管の内面を研削する研削装置であって、
複数の回転自在な研削部材が支軸に設けられ、
研削部材は、支軸に設けられた台盤部と、台盤部の外周に設けられた砥石部とを有し、
台盤部は支軸の軸心方向において複数設けられ、
支軸の軸心方向において隣り合う研削部材の台盤部間にスペーサが設けられ、
砥石部は、外周部に、多角形状の突起を有し、
突起は研削屑を砥石部から台盤部間に案内する案内面を有しているものである。
これによると、回転している研削部材の砥石部の突起が管の内面を切削している際、研削屑が発生するが、この研削屑は、突起の案内面によって砥石部から台盤部間に案内されて、研削部材間から容易に排出される。このため、研削屑の排出性能が向上し、研削部材の研削性能の低下をさらに防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によると、管の内面を研削している際、研削部材の砥石部と管の内面との摩擦によって摩擦熱が発生するが、この摩擦熱は、研削部材の砥石部から台盤部に伝わって、台盤部から放散されるとともに、台盤部からスペーサに伝わり、スペーサからも放散される。これにより、摩擦熱の放散が促進され、研削部材の砥石部の温度上昇が抑制されるため、砥石部が高温になり劣化して脆くなるのを防止することができ、研削部材の研削性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態における管の研削装置の側面図である。
図2】同、研削装置の要部の側面図である。
図3】同、研削装置の要部の分解図である。
図4図2におけるX−X矢視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態における研削装置の研削部材の側面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態における研削装置の要部の側面図である。
図7】同、研削装置の研削部材の斜視図である。
図8図6におけるX−X矢視図である。
図9】同、研削装置の研削部材の側面図である。
図10】同、研削装置の研削部材の突起の拡大図である。
図11】本発明の第4の実施の形態における研削装置の研削部材の一部拡大斜視図である。
図12】本発明の第5の実施の形態における研削装置の要部の側面図である。
図13図12におけるX−X矢視図である。
図14】同、研削装置の砥石部の拡大斜視図である。
図15】表1に記載した比較例1における研削装置の要部の側面図である。
図16】従来の管の研削装置の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図4に示すように、1はダクタイル鋳鉄製の直管(ダクタイル鋳鉄管)であり、一端部に挿口2を有し、他端部に受口3を有している。10は管1を回転自在に支持する支持装置である。支持装置10は、水平姿勢の管1を下方から支持する複数の支持ローラ11と、管1を上方から押圧して管1の飛び跳ねを防止する昇降自在な押圧ローラ12と、支持ローラ11上に支持された管1を軸心周りに回転させる回転駆動手段(図示省略)とを有している。
【0024】
20は管1の内面を研削する研削装置である。研削装置20は、管1の軸心方向Aに移動可能な台車21と、台車21上に設けられた昇降自在なフレーム22と、フレーム22を昇降させるジャッキ装置(図示省略)と、フレーム22上に設けられた軸受装置23と、軸受装置23に回転自在に設けられた支軸24と、支軸24を回転させるモータ等の回転駆動装置25と、支軸24の先端部に設けられた複数の研削部材26とを有している。
【0025】
支軸24は、軸本体部28と、軸本体部28の先端に設けられた取付軸部29と、取付軸部29の先端部に設けられたキャップ30とを有している。取付軸部29は軸本体部28の先端にねじを介して着脱自在に螺合して取り付けられている。また、キャップ30は取付軸部29の先端部にねじを介して着脱自在に螺合して取り付けられている。
【0026】
尚、支軸24の軸心方向Bは支持装置10に支持された管1の軸心方向Aと同方向である。
各研削部材26は、支軸24に着脱自在に設けられた円板状の台盤部31と、台盤部31の外周に設けられた複数の砥石部32とを有している。支軸24の軸心方向Bにおいて隣り合う研削部材26の台盤部31間にはそれぞれスペーサ34が設けられている。また、研削部材26と支軸24の軸本体部28の端部との間および研削部材26と支軸24のキャップ30との間にも、それぞれ、スペーサ35が設けられている。
【0027】
台盤部31の中央部とスペーサ34,35の中央部とにはそれぞれ軸孔37が形成され、支軸24の取付軸部29が軸孔37に挿入されている。また、取付軸部29には、植込キー等の回り止め部材(図示省略)が設けられ、この回り止め部材によって、研削部材26とスペーサ34,35とが取付軸部29に対して相対的に周方向へ空転するのを阻止しており、これにより、支軸24の回転力が回り止め部材を介して研削部材26とスペーサ34,35とに伝えられ、研削部材26とスペーサ34,35とが支軸24と一体に回転する。
【0028】
台盤部31には、支軸24の軸心方向Bにおいて貫通する複数の孔38が形成されている。各孔38は、軸孔37の周囲に、所定角度(例えば図4では60°)おきに形成されている。
【0029】
スペーサ34,35は円環状の部材であり、スペーサ34,35は同じ内径および同じ外径を有し、図2に示すように、軸心方向Bにおけるスペーサ34の幅Cがスペーサ35の幅Dよりも大きい。また、図4に示すように、各スペーサ34,35の中心から外周までの距離L1は台盤部31の中心から孔38の最も近い縁部までの距離L2以下に設定されている。これにより、各スペーサ34,35は台盤部31の孔38を塞がない構成を有している。
【0030】
台盤部31とスペーサ34,35とはそれぞれ、鉄やステンレス鋼等の金属製である。尚、台盤部31とスペーサ34,35との材質は、熱伝動性が良好であり、十分な強度が確保されるのであれば鉄やステンレス鋼以外の材質であってもよい。
【0031】
各砥石部32は、ダイヤモンドの砥粒を含んでおり、台盤部31の周方向において所定角度(図4では20°)ごとに所定間隔をあけて形成されているとともに、台盤部31の外周から径方向外側に突出している。
【0032】
各砥石部32は、外周部に、複数の山形状の突起41を有している。これら突起41の先端の稜線42は研削部材26の周方向に延びている。尚、図2図3に示すように、研削部材26の周方向において隣り同士の関係にある一方の砥石部32と他方の砥石部32との各突起41の山部41aは軸心方向Bにおいて同じ位置であり、同様に、各突起41の谷部41bも軸心方向Bにおいて同じ位置である。
【0033】
尚、図2に示すように、軸心方向Bにおける研削部材26の幅Eはスペーサ34の幅Cと同じ又は、それ以下である。また、研削部材26の外径は管1の内径よりも小さい。
以下、上記構成における作用を説明する。
【0034】
図1に示すように、管1を、支持装置10の支持ローラ11上に載せて、上方から押圧ローラ12で押圧し、回転駆動手段で軸心周りに回転させる。研削装置20のフレーム22を昇降させて研削部材26の高さを調節し、回転駆動装置25によって支軸24を回転させて、研削部材26を管1と同方向へ回転させる。
【0035】
この状態で台車21を前進させ、研削部材26を管1の一端部から内部へ挿入し、フレーム22を下降して、研削部材26を適切な力で管1の内面に押し当てる(当接させる)。この状態でさらに台車21をゆっくりと前進させ、管1内で、研削部材26を軸心方向Aへ移動させる。これにより、研削部材26が回転しながら管1の軸心方向Aへ移動して管1の内面を研削するため、管1の内面の酸化スケール等が除去される。
【0036】
この際、研削部材26の砥石部32と管1の内面との摩擦によって摩擦熱が発生するが、この摩擦熱は、砥石部32から台盤部31に伝わって、台盤部31の孔38から放散されるとともに、台盤部31からスペーサ34,35に伝わり、スペーサ34,35からも放散される。これにより、摩擦熱の放散(放熱)が促進され、砥石部32の温度上昇が抑制されるため、砥石部32が高温になり劣化して脆くなるのを防止することができ、研削部材26の研削性能の低下を防止することができる。
【0037】
また、台盤部31とスペーサ34,35とは金属製(例えば鉄やステンレス鋼等)であるため、摩擦熱が砥石部32から台盤部31を経てスペーサ34,35に伝わり易く、摩擦熱を台盤部31とスペーサ34,35とから放散させることができる。
【0038】
また、軸心方向Bにおいて隣り合う研削部材26同士はスペーサ34を介して離間しているため、管1の内面を研削している際に発生する研削屑が、互いに隣り合った研削部材26間から管1内に容易に排出される。これにより、研削屑の排出性能が向上するため、研削部材26の研削性能の低下をさらに防止することができる。
【0039】
さらに、複数の砥石部32は台盤部31の周方向において所定間隔をあけて離間した状態で設けられているため、管1の内面を切削している際に発生する研削屑が、台盤部31の周方向において隣り合った砥石部32間から容易に排出される。これにより、研削屑の排出性能がさらに向上するため、研削部材26の研削性能の低下を防止することができる。
【0040】
また、回転している研削部材26の砥石部32の山形状の突起41が管1の内面を切削することにより、管1の内面の切削性能が向上する。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、図5に示すように、研削部材26の周方向において隣り同士の関係にある一方の砥石部32と他方の砥石部32との各突起41の山部41aの位置と谷部41bの位置とが軸心方向Bにおいてずれている。すなわち、上記隣り同士の関係にある一方の砥石部32の突起41の山部41aの位置と他方の砥石部32の突起41の谷部41bの位置とが軸心方向Bにおいて一致し、一方の砥石部32の突起41の谷部41bの位置と他方の砥石部32の突起41の山部41aの位置とが一致している。
【0041】
これによると、先述した第1の実施の形態と同様の作用および効果が得られる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、図6図10に示すように、各砥石部32は、外周部に、径方向外側から見て菱形(多角形の一例)状の突起50を有している。すなわち、研削部材26の径方向における突起50の外端面50aが菱形状に形成されている。また、突起50は、支軸24の軸心方向Bにおける両端部に、第1の角部50bを有し、研削部材26の回転方向Jにおける両端部に、第2の角部50cを有している。これら第1および第2の角部50b,50cはそれぞれV形状に尖っており、第1の角部50bの頂角が鋭角、第2の角部50cの頂角が鈍角である。
【0042】
さらに、突起50は、研削屑52を砥石部32から隣り合った両台盤部31間に案内する案内面51を有している。案内面51は、研削部材26の回転方向Jにおいて、第2の角部50cから支軸24の軸心方向BにV字状に延びている。
【0043】
尚、図9に示すように、突起50の対角線のうち、長い方の対角線53が支軸24の軸心24aに平行な直線54に対して所定角度Gで交差するように、突起50の向きを研削部材26の周方向に傾斜させている。
【0044】
以下、上記構成における作用を説明する。
研削部材26が回転しながら管1の軸心方向Aへ移動して管1の内面を研削している際、回転している研削部材26の砥石部32の菱形状の突起50が管1の内面を切削することにより、管1の内面の切削性能が向上する。
【0045】
図10に示すように、このとき発生する研削屑52は、突起50の第2の角部50cから両案内面51に掻き分けられ、案内面51によって研削部材26から隣り合った両台盤部31間に案内されるため、研削部材26間のスペースに容易に排出される。このため、研削屑52の排出性能が向上し、研削部材26の研削性能の低下をさらに防止することができる。
【0046】
また、突起50は第1の角部50bを先頭にして管1の軸心方向Aに移動するため、軸心方向Aへの研削部材26の移動が円滑に行える。さらに、突起50は第2の角部50cを先頭にして回転するため、研削部材26の回転が円滑に行える。
【0047】
(第4の実施の形態)
上記第3の実施の形態では、図7に示すように、各砥石部32は、外周部に、多角形の一例である菱形状の突起50を有しているが、第4の実施の形態では、図11に示すように、各砥石部32は、外周部に、多角形の別の例である長方形状の突起60を有している。すなわち、研削部材26の径方向における突起60の外端面60aが、径方向外側から見て、長方形状に形成されている。
【0048】
以下、上記構成における作用を説明する。
研削部材26が回転しながら管1の軸心方向Aへ移動して管1の内面を研削している際、回転している研削部材26の砥石部32の長方形状の突起60が管1の内面を切削することにより、管1の内面の切削性能が向上する。
【0049】
上記第3および第4の実施の形態では、多角形の一例として、菱形状又は長方形状の突起50,60を設けたが、菱形状や長方形状以外の四角形でもよく、或いは、三角形、五角形以上であってもよい。
【0050】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態では、図12図14に示すように、各砥石部32は、外周部に、先端が尖った四角錐状の突起65を有している。突起65は、支軸24の軸心方向Bにおける両端部に、第1の角部65aを有し、研削部材26の回転方向Jにおける両端部に、第2の角部65bを有している。
【0051】
以下、上記構成における作用を説明する。
研削部材26が回転しながら管1の軸心方向Aへ移動して管1の内面を研削している際、回転している研削部材26の砥石部32の四角錐状の突起65が管1の内面を切削することにより、管1の内面の切削性能が向上する。
【0052】
また、突起65は第1の角部65aを先頭にして管1の軸心方向Aに移動するため、軸心方向Aへの研削部材26の移動が円滑に行える。さらに、突起50は第2の角部65bを先頭にして回転するため、研削部材26の回転が円滑に行える。
【0053】
上記第5の実施の形態では、四角錐の突起65を設けたが、四角錐に限定されるものではなく、例えば、三角錐や五角錐以上などの多角錐形状或いは円錐形状であってもよい。
以下の表1は、5種類(比較例1、実施例1〜実施例4)の研削部材26,91を用いて管1の内面を研削した評価を示す試験結果である。このうち、比較例1は、図15に示すように、1個の研削部材91の幅Eを50mm、研削部材91の取付数を2個、研削部材91の幅Eの合計を100mm(=研削部材91の幅E×個数)、砥石部92の突起93の形状を長方形状とし、両研削部材102間には、スペーサを設けず、スペースを形成していない。
【0054】
また、実施例1は、上記第1の実施の形態(図2参照)で示したように砥石部32の突起41の形状を山形状に形成したものであり、1個の研削部材26の幅Eを20mm、研削部材26の取付数を3個とし、各スペーサ34,35を設けて各研削部材26間にスペースを形成したものである。
【0055】
実施例2は上記第3の実施の形態(図6参照)で示したように砥石部32の突起50の形状を菱形状に形成したものである。
実施例3と実施例4とは上記第4の実施の形態(図11参照)で示したように砥石部32の突起60の形状を長方形状に形成したものであり、実施例3と実施例4とでは、研削部材26の幅Eと取付数とが異なっている。
【0056】
また、管1としては、口径150mmで全長5mのダクタイル鋳鉄製の直管(ダクタイル鋳鉄管)であって、その内面に、100ミクロンの鉄の酸化被膜が生成されたものを使用した。
【0057】
評価としては、管1の内面の酸化被膜を完全に除去するまでに要した時間(以下、除去時間と言う)を比較例1および実施例1〜実施例4ごとに測定し、比較例1の除去時間を1として、実施例1〜実施例4の除去時間の比を記載した。
【0058】
また、所定本数の管1の内面をそれぞれ一定時間研削し、次に、各管1の内面に粉体塗装を行って、膜厚が400μmの塗膜を形成した後、粉体塗装のピンホール検査を行ったときの不合格率を比較例1および実施例1〜実施例4ごとに測定し、比較例1の不合格率を1として、各実施例1〜実施例4の不合格率の比を記載した。
【0059】
また、上記粉体塗装のピンホール検査を行って合格した管1について、塗膜の密着力を測定し、比較例1の塗膜密着力を1として、実施例1〜実施例4の塗膜密着力の比を記載した。
【0060】
下記表1によると、実施例1〜実施例4では、研削部材26の幅Eの合計が比較例1よりも小さいが、スペーサ34,35を設けているため、摩擦熱の放散と研削屑の排出とが促進される。これにより、研削部材26の研削性能の低下が防止され、実施例1〜実施例4の除去時間の比が1よりも小さくなり、比較例1よりも短時間で管1の内面の酸化被膜を完全に除去することができると考えられる。
【0061】
また、実施例4の研削部材26の幅Eの合計は実施例3のものよりも小さいが、実施例4は実施例3と同じ評価が得られている。これは、実施例4は、実施例3よりも、各研削部材26の幅Eが狭く且つスペーサ34,35の総数が多く、摩擦熱の放散と研削屑の排出とが促進されるためであると考えられる。
【0062】
また、除去時間の比については、実施例1および実施例2が実施例3および実施例4よりも短くなっている。これについては、砥石部32の突起41の形状を山形状又は菱形状とすることによって、突起41と管1の内面との接触面積が小さくなり、突起41が管1の内面に接触するときの面圧が向上することで、研削性能が向上したためであると考えられる。
【0063】
また、塗膜密着力の比については、実施例1〜実施例4の全てが比較例1よりも大きな値になっており、実施例1〜実施例4における塗膜が、比較例1のものよりも、強固に管1の内面に固着している。尚、管1の内面に酸化スケールが残存していると、塗膜が酸化スケールの箇所から剥がれ易くなり、塗膜密着力が低下する。従って、上記のように塗膜密着力の比について実施例1〜実施例4が比較例1よりも大きな値になっているということは、管1の内面の酸化スケールを除去する性能に関して、実施例1〜実施例4が比較例1よりも優れていることを証明している。
【0064】
【表1】
【0065】
上記各実施の形態では、図1に示すように、軸心方向Aにおいて管1を固定し、管1に対して、研削部材26を軸心方向Aへ移動させながら管1の内面を研削したが、軸心方向Aにおいて研削部材26を固定し、研削部材26に対して、管1を軸心方向Aへ移動させながら管1の内面を研削してもよい。或いは、管1と研削部材26とを共に軸心方向Aにおいて互いに反対方向(接近離間方向)に移動することにより、管1の内面を研削してもよい。尚、管1を軸心方向Aに移動させる場合は、例えば、支持装置10を軸心方向Aに移動可能な構造にすればよい。
【0066】
上記各実施の形態では、図4図8図13に示すように、各孔38は、スペーサ34,35と重複していないが、スペーサ34,35の一部分と重複して、各孔38の一部分のみがスペーサ34,35で塞がれていてもよい。すなわち、各孔38の全面がスペーサ34,35で塞がれていなければよい。
【0067】
上記各実施の形態では、研削部材26、スペーサ34,35、砥石部32、突起41,50,60,65の各個数等は図示されたものに限定されるものではない。また、ダクタイル鋳鉄製の管1を挙げたが、ダクタイル鋳鉄製に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 管
20 研削装置
24 支軸
26 研削部材
31 台盤部
32 砥石部
34 スペーサ
38 孔
41,50,60,65 突起
50b 第1の角部
50c 第2の角部
51 案内面
52 研削屑
65a 第1の角部
65b 第2の角部
A 管の軸心方向
B 支軸の軸心方向
J 研削部材の回転方向
【要約】
【課題】摩擦熱による研削部材の研削性能の低下を防止することが可能な管の研削装置を提供する。
【解決手段】複数の回転自在な研削部材26が支軸24に設けられ、研削部材26は、支軸24に設けられた台盤部と、台盤部の外周に設けられた砥石部32とを有し、支軸24の軸心方向Bにおいて隣り合う研削部材26の台盤部間にスペーサ34が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16