(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータケースと、前記モータケースに固定されたステータと、前記モータケースに回転自在に支持されたロータシャフトと、前記ステータの内側に配置され前記ロータシャフトに固定されたロータと、を備えてなるブラシレスモータであって、
前記ロータは、磁性材料にて形成されたロータコアと、前記ロータコア内に周方向に沿って等間隔に配置された複数個のマグネット収容孔と、前記マグネット収容孔に収容され接着剤にて固定された複数個のマグネットと、前記ロータコアの端面に装着されるキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記接着剤の残余分を封止する接着剤回避部を有し、
前記接着剤回避部は、前記マグネット収容孔に臨んで該マグネット収容孔を塞ぐ状態で設けられ、前記接着剤の残余分が溜まる周方向に沿って延びる周回溝状の凹部を有してなることを特徴とするブラシレスモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着剤をロータコアに注入したり、接着剤塗布済みのマグネットをマグネット収容孔に挿入したりする際、余分な接着剤がコア端面に残ってしまう場合がある。このような接着剤の残余分がロータコアから剥がれると、モータ内に異物が発生してしまうことになり、モータ動作に支障を来すおそれがある。特に、IPMモータは、ロータコア表面にマグネットを配したSPMモータに比して、ロータとステータとの間の隙間が小さく、そこに剥がれた接着剤の粒などが入り込むと、モータ故障の原因となるおそれがあった。また、接着剤が硬化するまである程度の時間がかかるため、それまではマグネットの位置ずれや脱落を防ぐために、マグネット収容孔内にマグネットを押さえておかなければならず、加工性にも課題があった。
【0006】
本発明の目的は、IPMモータにおけるマグネット固定用の接着剤を封止することにより、残余分の剥がれによるモータ故障を防止し、モータの信頼性向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブラシレスモータは、モータケースと、前記モータケースに固定されたステータと、前記モータケースに回転自在に支持されたロータシャフトと、前記ステータの内側に配置され前記ロータシャフトに固定されたロータと、を備えてなるブラシレスモータであって、前記ロータは、磁性材料にて形成されたロータコアと、前記ロータコア内に周方向に沿って等間隔に配置された複数個のマグネット収容孔と、前記マグネット収容孔に収容され接着剤にて固定された複数個のマグネットと、前記ロータコアの端面に装着されるキャップ部材と、を有し、前記キャップ部材は、前記接着剤の残余分を封止する接着剤回避部を有し、前記接着剤回避部は、前記マグネット収容孔に臨んで該マグネット収容孔を塞ぐ状態で設けられ、前記接着剤の残余分が溜まる周方向に沿って延びる周回溝状の凹部を有してなることを特徴とするブラシレスモータ。
【0008】
前記ブラシレスモータにおいて、前記ロータの回転角度検出手段としてレゾルバを設けるとともに、前記キャップ部材の前記凹部とは反対側の端面に、前記レゾルバのロータと接続されるレゾルバロータ取付部を設けても良い。
【0009】
また、前記キャップ部材の前記レゾルバロータ取付部とは反対側の端面に、前記レゾルバとの位置決めをするための突起部を設けるとともに、前記ロータコアに、前記突起が嵌合する嵌合孔を設け、前記レゾルバロータ取付部を、前記突起と前記嵌合孔とが嵌合した状態にて、前記ロータコアと所定の角度位置関係に配置しても良く、これにより、キャップ部材によってレゾルバロータとマグネットの位置関係が機械的に設定され、治具等を用いることなく、両者の位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラシレスモータによれば、ロータコアの端面にキャップ部材を装着し、このキャップ部材にマグネット収容孔に臨んで凹部を設けたので、マグネット固定用の接着剤がマグネット収容孔内からはみ出ても凹部内に封止される。従って、接着剤の残余分がロータコアから剥がれ落ちて、モータ内に異物が発生してしまうことがない。このため、異物によるモータ故障を防止することができ、モータの信頼性向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である電動パワーステアリング装置用モータの断面図である。
図1のモータ1は、例えば、コラムアシスト式EPSの動力源として使用され、自動車のステアリングシャフトに対し動作補助力を付与する。モータ1は、
図1に示すように、外側にステータ(固定子)2、内側にロータ(回転子)3を配したインナーロータ型のブラシレスモータである。モータ1は、ステアリングシャフトに設けられた図示しない減速機構部に取り付けられ、モータ1の回転は、この減速機構部によってステアリングシャフトに減速されて伝達される。
【0013】
ステータ2は、有底円筒形状のハウジング4と、ステータコア5、後述するステータコア5のティースに巻装された界磁コイル6(以下、コイル6と略記する)及びステータコア5に取り付けられるバスバーユニット7とから構成されている。ハウジング4は、鉄等にて有底円筒状に形成されており、モータヨークを兼ねている。ハウジング4の開口部には、固定ネジ10によって合成樹脂製のブラケット8が取り付けられる。ステータコア5には合成樹脂製のインシュレータ11が取り付けられており、インシュレータ11の外側にはコイル6が巻装されている。ステータコア5の一端側には、コイル6の端部6aが引き出されている。
【0014】
ステータコア5には、径方向に沿って中心方向に延びるティースが周方向に沿って複数個形成されている。各ティースの間には、ティースに巻装されたコイル6が収容される。ステータコア5の一端側には、コイル6と電気的に接続されるバスバーユニット7が取り付けられている。バスバーユニット7は、合成樹脂製の本体部内に銅製のバスバー9がインサート成形された構成となっている。バスバー9には複数個の給電用端子12が径方向に突設されており、バスバーユニット7の周囲にはこの給電用端子12が放射状に突出している。
【0015】
一方、バスバー9の端部は、バスバーユニット7の端面から軸方向に延出され、バスバー端子33を形成している。バスバーユニット7の取り付けに際し、コイル端部6aは給電用端子12と溶接される。バスバーユニット7では、バスバー9は、モータ1の相数に対応した個数(ここでは、U相,V相,W相分の3個と各相同士の接続用の1個の計4個)設けられており、各コイル6は、その相に対応した給電用端子12と電気的に接続される。ステータコア5は、バスバーユニット7を取り付けた後、ハウジング4内に圧入固定される。
【0016】
ステータ2の内側にはロータ3が挿入されている。ロータ3は、モータ回転軸となるシャフト13を有している。シャフト13は、ボールベアリング(以下、ベアリングと略記する)14a,14bによって回転自在に支持されている。リヤ側のベアリング14aは、ハウジング4の底部中央に形成されたベアリング収容部4aに圧入固定されている。フロント側のベアリング14bは、金属製のベアリングホルダ15によって、ブラケット8の中央部に固定されている。
【0017】
シャフト13には、電磁鋼板を積層して形成したロータコア16(16a,16b)が固定されている。
図2は、ロータコア16の構成を示す分解斜視図である。モータ1はIPM型の構成となっており、ロータコア16には、周方向に沿ってマグネット収容孔17(17a,17b)が複数個等分に形成されている。各マグネット収容孔17内には、セグメント型のマグネット(永久磁石)18が収容固定されている。マグネット18は、前述同様、マグネット収容孔17内に接着剤にて固定される。
【0018】
モータ1では、マグネット18は、周方向に沿って6個×軸方向に2列(マグネット18a,18b)配置されている。モータ1では、マグネット18aと18bは周方向に所定角度ずれた形で配置されており、ロータ3はステップスキュー構造となっている。また、ロータコア16の軸方向長Lcは、マグネット18の軸方向長Lmよりも長くなっている。マグネット18をマグネット収容孔17内に収容すると、マグネット18の両端にはオーバーハング部19による空隙部20が形成される。
【0019】
ロータコア16の軸方向端部には、非磁性体(例えば、合成樹脂製)のロータキャップ(キャップ部材)41,42が取り付けられている。また、ロータコア16aと16bの間にも、同じく非磁性体のコアスペーサ(スペーサ部材)43が介装されている。ロータキャップ41の
図2において左端側には、ロータ3の回転角度検出手段であるレゾルバ21のロータ(レゾルバロータ)22が取り付けられる。ロータキャップ41の端部にはレゾルバロータ取付片(レゾルバロータ取付部)44が突設されており、レゾルバロータ22は、このレゾルバロータ取付片44に装着される。
【0020】
これに対し、レゾルバ21のステータ(レゾルバステータ)23は、金属製のレゾルバホルダ24内に圧入され、合成樹脂製のブラケットホルダ25に収容されている。レゾルバホルダ24は有底円筒形状に形成されており、ブラケット8の中央部に設けられたリブ26の端部外周に軽圧入される。ブラケットホルダ25は、後述するレゾルバ固定ネジ28によって、ブラケット8の内側に固定される。
【0021】
ブラケットホルダ25とブラケット8は、両者間にレゾルバホルダ24のフランジ部24aを介在させた形で、レゾルバ固定ネジ28にて固定される。なお、フランジ部24aは、ブラケットホルダ25とブラケット8との間にて、周方向に若干移動可能に取り付けられており、レゾルバホルダ24は、ステータ23の位置調整後、前述のレゾルバ固定ネジ28によってブラケットホルダ25に固定される。
図1に示すように、ブラケットホルダ25には、金属製のレゾルバ固定ナット27が取り付けられている。レゾルバ固定ナット27には、ブラケット8の外側からレゾルバ固定ネジ28がねじ込まれ、ベアリングホルダ15とレゾルバホルダ24がブラケット8に共締めされる。これにより、レゾルバホルダ24は、周方向の位置が調整された状態でブラケット8の内側に固定される。
【0022】
ブラケット8にはまた、パワーターミナル31がインサート成形されている。パワーターミナル31はU,V,Wの各相ごとに設けられ、その一端側31aが開口部32内に配置されている。パワーターミナル31の他端側31bは、パワーコネクタ34内に配置されている。ブラケット8をハウジング4に組み付けると、バスバーユニット7から軸方向に延びるバスバー端子33がパワーターミナル31と並列に対向する。モータ1では、ハウジング4にブラケット8を取り付けた後、開口部32内にてバスバー端子33とパワーターミナル31を溶接固定する。
【0023】
ここで、ロータキャップ41の
図2において右端側には、各マグネット収容孔17に嵌合する複数の突起部45が突設されている。また、ロータキャップ42の
図2において左端側にも、同様の複数の突起部46が突設されている。ロータキャップ41では、突起部45とレゾルバロータ取付片44は、所定の角度位置関係に配置されている。従って、各突起部45を対応するマグネット収容孔17に嵌合させることにより、レゾルバロータ22とマグネット18との位置関係が機械的に設定され、治具等を用いることなく、両者の位置決めを行うことが可能となる。
【0024】
さらに、コアスペーサ43の軸方向両端面にも、複数の突起部47a,47bが突設されている。これらの各突起部47a,47bも、ロータコア16の対応するマグネット収容孔17に嵌合する。突起部47a,47bは、所定の角度位置関係にて配置されている。従って、突起部47a,47bを17a,17bにそれぞれ嵌合させることにより、マグネット18a,18bの位置関係が機械的に設定される。これにより、ロータ3は、所定のスキュー角を有するステップスキュー構造となる。
【0025】
一方、前述のように、マグネット収容孔17内では、マグネット18の両端にはロータコア16のオーバーハング部19によって空隙部20が形成されている。
図3は、モータ1におけるマグネット18の収容構造を示す説明図である。
図3に示すように、ロータキャップ41,42の突起部45,46や、コアスペーサ43の突起部47a,47bは、このオーバーハング部19による空隙部20内に挿入される。モータ1においても、マグネット18は、接着剤40にてマグネット収容孔17内に固定され、前述のように、余分な接着剤がマグネット18の軸方向端部から溢れ出てしまう場合がある。
【0026】
これに対し、当該モータ1では、空隙部20が設けられているため、その中に接着剤の残余分40aが溜まる。また、ロータコア16の端部には、ロータキャップ41,42やコアスペーサ43が取り付けられ、それらの突起部45,46,47a,47bが空隙部20を塞ぐように嵌合する。このため、接着剤40は、マグネット収容孔17内に封止される形となり、その残余分40aもロータコア16の外部には現れない。従って、接着剤の残余分がロータコアから剥がれ落ちて、モータ内に異物が発生してしまうことがなく、異物によるモータ故障を防止することができ、モータの信頼性向上を図ることが可能となる。
【0027】
さらに、当該モータ1では、ロータキャップ41,42とコアスペーサ43の各突起部45,46,47a,47bによって、マグネット収容孔17内にマグネット18が軸方向においてある程度位置決めされるため、接着剤40の接着強度不足によるマグネット18の不用意な移動や脱落も防止でき、加工時間の短縮が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0028】
また、
図4は、オーバーハングの有無によるトルクと回転数及び電流値との関係を示したグラフであり、発明者らの実験によれば、同一マグネットを用いてオーバーハング部19を片側1.5mmずつ設けた場合、モータトルクが約7%向上した。これは、オーバーハング部19を設けることにより、マグネット端部の磁束を有効活用できたためと考えられる。
【0029】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、回転角度検出手段としてレゾルバを用いた構成を示したが、回転角度検出手段はレゾルバには限定されず、ホールセンサ等の他の回転角度検出手段を用いても良い。その際、ステップ角のみを設定する仕様であれば、片側のみ(コアスペーサ側のみ)を接着剤封止仕様としても良い。この場合、ロータコア両端にはロータキャップは設けず、マグネット収容孔は開放仕様となるので、コアスペーサ側に接着剤を押し込むような設定とすることが好ましい。一方、ステップスキュー仕様ではない場合には、片側のみ(ロータキャップ41側のみ)を接着剤封止仕様とすることも可能である。この場合も、ロータコアの他端側にはロータキャップを設けず開放仕様となるため、ロータキャップ41側に接着剤を押し込むような設定とすることが好ましい。
【0030】
また、前述の実施形態では、レゾルバとの位置決めやステップ角の設定のため、ロータキャップやコアスペーサに突起を設け、これを空隙部に嵌合させる構成としたが、接着剤の残余分をカバーしその飛散を防止するという趣旨であれば、ロータキャップ等に、マグネット収容孔17に臨んで
図5のような凹部(周回溝)48を刻設し(接着剤回避部)、レゾルバとの位置決めやステップ角の設定を、例えば、ロータキャップに突起を設け、ロータコアにその突起が嵌合する嵌合孔を設けるようにして行っても良い。ロータキャップやコアスペーサにこのような凹部48を設けることにより、マグネット固定用の接着剤40がマグネット収容孔17内からはみ出ても、それは凹部48内に封止される。従って、接着剤の残余分がロータコアから剥がれ落ちて、モータ内に異物が発生してしまうことがなく、異物によるモータ故障を防止することができ、モータの信頼性向上を図ることが可能となる。
【0031】
さらに、前述の実施形態では、本発明によるブラシレスモータを電動パワーステアリング装置の駆動源として使用した場合について説明したが、本発明は、他の車載電動装置や、ハイブリッド自動車、電気自動車、エアコン等の電気製品等に広く適用可能である。