(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192816
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】超音波センサを備えた液体タンク
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
G01N29/024
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-517352(P2016-517352)
(86)(22)【出願日】2014年9月23日
(65)【公表番号】特表2016-539318(P2016-539318A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014070163
(87)【国際公開番号】WO2015044096
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】102013219643.1
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロニー シュタングル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】デニー シェートリヒ
【審査官】
横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−108507(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0038394(US,A1)
【文献】
特開2004−317125(JP,A)
【文献】
特開昭61−247959(JP,A)
【文献】
特開2002−022712(JP,A)
【文献】
特開2001−208595(JP,A)
【文献】
特開2002−131298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
G01F 23/00,23/296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンク内に存在する液体中での伝播時間を測定する超音波センサを備えた、液体タンクであって、
前記超音波センサは、送信器/受信器(1)と、筒状体の形態に構成されている第1及び第2の反射器(4,5)とを有しており、
前記超音波センサが、前記液体タンクの底部(8)に配置されており、
前記2つの反射器(4,5)は、前記液体タンクの底部(8)の底面に垂直に延在する軸線を備え、当該底面から上方に直立した筒状体として構成されており、かつ、前記2つの反射器(4,5)は、前記送信器/受信器(1)から放射された超音波を、前記送信器/受信器(1)に反射させるように構成されており、前記送信器/受信器(1)から放射された超音波の中心軸線はほぼ水平方向に延在していることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
前記2つの反射器(4,5)は、共通のプレート(6)上に配置され、前記共通のプレートは、前記反射器(4,5)と同じ材料からなっている、請求項1記載の液体タンク。
【請求項3】
前記液体タンクは、超音波経路内で前記2つの反射器(4,5)の下流側に配置された超音波変向用ミラー(7)を有している、請求項1または2記載の液体タンク。
【請求項4】
前記超音波センサは、液体充填レベルの測定にさらに用いられる、請求項3記載の液体タンク。
【請求項5】
前記超音波センサは、液体の濃度の測定に用いられる、請求項1から4いずれか1項記載の液体タンク。
【請求項6】
前記超音波センサは、前記液体タンク内の尿素溶液の濃度の測定に用いられる、請求項1から5いずれか1項記載の液体タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された特徴を有する、超音波センサを備えた液体タンクに関している。
【0002】
超音波を用いた伝播時間の測定では、超音波が送信器から放射され、不定区間を伝播され、最終的に受信器に入射される。伝播速度と対象までの距離とが既知であるならば、それらによって超音波の伝播時間を求めることが可能である。送信器(超音波トランスデューサ)は、送信器と受信器の組み合わせからなっているので、放射された音波を、再び捕捉できるようにするためには反射を受けさせる必要がある。この目的のために、音波経路に配置された複数の反射器が用いられる。
【0003】
測定システムが、複数の異なる材料からなっている場合には、多くの問題が生じる。それらの材料の種々異なる熱膨張係数の結果として、変動する温度に起因する膨張は複数の箇所において同一ではなくなる。このことは、測定距離を変化させ、それに伴って基準距離の改ざんも引き起こされる。例えばステンレスからなる反射器が、プラスチック製のハウジングに固定されているならば、温度が変化した場合に、送信器/受信器の組み合わせと反射器との間の距離が変化する。さらに、構成部品の経年劣化により、システムの問題のない機能は保証できなくなる。機械的構造部の耐用期間に亘って、膨張、捻れ、応力または個々の構成部品のその他の摩耗が個々の場所で発生した場合には、測定ユニットへの悪影響を排除することができなくなる。これらの悪影響を抑制するために、2つの反射器(基準部)を用いた測定が実施される。この場合、前述したような悪影響、例えば単一材料に対する熱、膨張または経年劣化などの悪影響を抑制するために、2つの反射器面若しくは基準面が、同じ材料若しくは固定的に結合された同じ部品からなることに留意すべきである。ここではもはや送信器−反射器−受信器間の距離の伝播時間は測定されず、その代わりに異なる距離だけ離れた2つの反射器面(基準面)の間の伝播時間の差が測定される。
【0004】
液体で満たされた閉鎖された容器(タンク)内に存在する超音波センサは公知である。このセンサの目的は、伝播時間の測定によって、液体の濃度を求めることにある。さらにここでは、現下の充填レベルも測定される。ここでは機械的構造部が次のように配置されている。すなわち、送信器/受信器から放射された音波の一部が、2つの反射器を有する基準構造部において反射されるように配置されている。この場合音波の他の部分は、充填レベルを求めるために、ミラーを介して液面に偏向される。
【0005】
基準構造部は、この場合、水平方向に(平面状に)配置されており、ここでは2つの反射器が、送信器/受信器から異なる距離を有する、共通の基準構造部の平坦な表面によって形成される。この水平方向に延在する基準構造部は、自身が音波経路内に直接存在しない利点を有しており、そのため信号の非常に広範な部分が遮蔽されることはなく、従って、充填レベルの測定が可能である。
【0006】
但しこの種の超音波センサの基準構造部の全高は比較的低いので、測定誤差につながる恐れのある汚れの堆積する危険性は非常に高い。また、超音波トランスデューサの音波ビームの異なる放射角度につながりかねない製造誤差は、このように構成された比較的平坦な基準構造部のもとでは、測定精度により強い影響を及ぼす。最後に、そのような平坦な反射面を有する基準構造部のもとでは次のような問題が生じる。すなわち、容器の燃料補給の際に、多くの気泡が一緒に運び込まれるかまたは発生し、これらの気泡が様々な構成部品に付着し、このことは、測定が改ざんされたり、完全に損なわれたりすることにつながりかねない。またそのようなことが燃料補給過程によってまだ起こっていない場合であっても、温度が上昇する場合には、脱ガスによってたくさんの気泡がシステム内で発生する恐れもある。そのような気泡は、測定システムを妨げる恐れがあり、とりわけ多重反射や不所望な信号の偏向をもたらし、それらは測定結果を改ざんしかねない。
【0007】
請求項1の上位概念による液体タンクは、独国特許出願公開第1548930号明細書からも公知である。この刊行物には、液体の高さレベルを測定するための超音波装置が記載されている。この場合の超音波経路は、液体のレベルに対して垂直方向に延在し、さらに複数の反射器が、水平シリンダの形態で配置されている。
【0008】
米国特許第6360599号明細書からは、液体レベルを測定するための装置及び方法が公知である。この装置でも、超音波経路は、液体のレベルに対して垂直方向に延在し、水平に配置された円筒状の複数の反射器が設けられている。
【0009】
独国特許出願公開第102006017284号明細書は、液体タンクの底部に配置された超音波センサを有する管路内の液体の充填レベルを測定する装置に関している。ここでは平面状の反射器が使用されている。
【0010】
国際公開第2009/074428号に記載された、容器内の液体の充填レベルを測定する装置は、相応に管状に形成された伝音体を有し、容器の底部に配置された超音波センサを備えている。
【0011】
本発明が基礎とする課題は、請求項1の上位概念による液体タンクにおいて、その超音波センサの製造が容易でかつ特に優れた高い測定精度を有するように改善を行うことである。
【0012】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載された態様の液体タンクによって解決される。
【0013】
本発明において「筒状体」とは、信号が入射するその外装面の少なくとも一部が湾曲して構成されている場合の、任意に構成可能な底面を有する物体と理解されたい。好ましくは円筒体や(底面に対して垂直に延在する軸線を備えた)直立した筒状体である。
【0014】
反射した信号の高い強度によって特徴付けられる平坦な面状の反射器は公知である。それとは対照的に、本発明によれば、使用される筒状体、特に円筒体に基づいて、比較的低い信号強度しか有さない信号も許容され得る。なぜならそのような筒状の反射器によって別の多くの利点が獲得できるからである。本発明により構成されたセンサは、例えばタンクの底部に堆積する汚染物に対しても比較的不感である。なぜなら反射器が、水平方向に延在するような構造ではなく、比較的高い全高を有する直立した筒状形態に構成されているからである。これに関連して、送信器製造時のばらつきに対する所定の不感も達成される(音波ビーム)。また筒状体の湾曲した表面によって、さらに気泡の付着も阻止される。なぜなら平坦な面が存在しないからである。
【0015】
特別な利点は、本発明によるセンサが、反射器の回動や位置誤差によって引き起こされる機械的な許容誤差に対し比較的不感であることによって達成される。特に、反射器が円筒状の形態を有している場合には、平面状の基準体に比べて極僅かな角度依存性しか有さないか、あるいは角度依存性自体を全く有さない。なぜなら円筒体の回転対称性によって、あらゆるビーム入射角度からも幾何学的反射領域が同一となるからである。
【0016】
この反射領域に関しては、反射性筒状体の直径は従属的な役割しか果たさない。比較的小さな直径が使用されるのであれば、但しそのためには所定の全高が用いられるが、筒状体は、放射された音波を必要以上に遮ることなく、該音波の主要ビームの領域に非常に近付けて配置することが可能になる。反射性筒状体の全高は任意に選択可能であるので、反射器の底部における粒子堆積物は、上述したように問題ない。そのため、システム全体が汚染に対して不感となる。
【0017】
任意に選択可能な全高によって、トランスデューサの製造時のばらつきに起因する音波ビームの放射角度偏差の悪影響が低減される。音波が水平方向には放射されない場合、従来の水平方向に延在する基準構造部においてはサウンドコーン内にある面の大きさが減少する。このことは受信音波の減衰をもたらす。この影響は、棒状反射器として説明した前記反射器を用いることによって実質的に中和される。
【0018】
さらに、平面状反射器としての基準構造部の製造は、技術的に複雑である。なぜなら複数の部品が、それらの配向と許容誤差について一定のルールに規制されるからである。目下のところそれらは、フライス加工、打ち抜き加工または折り曲げ加工される。ここで円筒体が用いられた線形の反射器を使用する場合には、技術的な複雑性はより低くなる。なぜなら任意の直径の丸い材料は、棒状材料として仕上げられて入手されるからである。直径に依存しない度合いが比較的大きいことにより、ここでは許容誤差に基づく特段の問題も発生しない。
【0019】
本発明の改善例によれば、2つの反射器が、これらの反射器と同じ材料からなる共通のプレート上に配置される。これにより、異なる熱膨張係数に伴う特段の問題が回避される。この超音波センサは、さらに音波を変向させるための1つのミラーを有しており、このミラーは前記2つの反射器の下流側に配置されている。既に述べたように、前記2つの反射器は、好ましくは、比較的小さな直径を有しており、そのためこれらの2つの反射器は、音波変向用ミラーまでの音波の伝播をそれほど妨げない。
【0020】
この超音波センサは、好ましくは、液体の濃度を測定するために使用される。さらにこのセンサは、液体の充填レベルの測定に用いることができる。それに対してはミラーを用いた相応の音波の変向が組み込まれる。このセンサは、液体タンクの底部に配置され、この場合好ましくは、伝播時間測定を介して実施されるタンク内にある液体の濃度の測定に使用される。さらに付加的に、タンク内の液体の充填レベルも、対応する伝播時間測定を介して測定可能である。
【0021】
とりわけ、本発明により構成された超音波センサは、タンク内の尿素溶液の濃度を測定するために使用することができる。そのようなタンクは、自動車内に配置され、自動車の排気ガス中の窒素酸化物濃度を低下させるために、当該排気ガスに供給される尿素溶液の運搬に用いられる。
【0022】
以下では、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】送信器/受信器および反射器の概略図、ここでの反射器は一方では、平坦な反射面を有し、他方では円形の反射面を有する
【
図2】直立した筒状体の形態の2つの反射器を有する超音波センサの概略的構造図
【0024】
発明を実施するための形態
図1の上方図には、送信器/受信器1と、平坦な反射面を有する反射器2とが概略的に示されている。この上方図では、反射器2は、その正確な位置をとり、それによって、反射ビームは、入射ビームに対して平行に延在する。この装置では、超音波伝播時間の正確な測定が可能である。
【0025】
中央図では、反射器2は、上方図の位置付けに対して回動させられている。そのため反射されたビームは偏向され、もはや受信器には正確に入射されない。このことは信号の強い遮蔽性を伴う。このような作用は、
図1の下方図にあるような棒状反射器3においては発生しない。この種の直立した筒状体の形態の棒状反射器3では、そのような角度依存性は存在しない。なぜなら筒状体の回転対称性によって幾何学的な反射領域は、どの角度のビームからも同一となるからである。この種の直立した筒状体の形態の棒状反射器は、本発明によって構成される超音波センサに適用される。
【0026】
図2には、液体タンク、例えば尿素溶液を収容しているタンクの底部8に配置された超音波センサの構造が概略的に示されている。送信器/受信器1は、図示していない音声ビームの形態の超音波を放射し、その中心軸線はほぼ水平方向に延在している。超音波は、タンク内に存在する液体を通って伝播し、その際には、それぞれ直立した筒状体の形態を有する2つの反射器4,5を備えた基準構造部に入射する。この2つの反射器4,5は、共通のプレート6上に取り付けられている。これらの反射器4,5とプレート6とは、同じ材料からなっている。
【0027】
これらの反射器4,5は、次のように超音波経路内に配置されている。すなわち、これらの反射器は、放射された音波の主要ビームの領域に非常に近接して配置されるが、ただし放射された音波を必要以上に遮ることがないように配置される。直立した筒状体として構成された反射器4,5は、回動や位置誤差、並びに汚染(底部近傍の粒子状堆積物)に対して比較的不感であり、さらに送信器/受信器の製造誤差にも比較的不感である。さらにこれらの反射器は気泡の付着も阻止し、製造も容易である。
【0028】
送信器/受信器1から放射された音波は、直線状に2つの反射器4,5に入射する。反射した音波は、送信器/受信器1によって受信される。測定された伝播時間から、タンク内にある液体の濃度が算出可能である。
【0029】
送信器/受信器1から放射された音波は、さらにミラー7にも入射し、そこからは上方に向けて偏向される。それらの音波は液面に当たり、そこで逆反射されてミラー7を介して前記送信器/受信器1に戻される。測定された伝播時間からは液体の充填レベルを求めることができる。