特許第6192824号(P6192824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192824L−スレオニン産生微生物およびこれを用いたL−スレオニンの産生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192824
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】L−スレオニン産生微生物およびこれを用いたL−スレオニンの産生方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170828BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20170828BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170828BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20170828BHJP
   C12R 1/19 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N9/12
   C12N1/21
   C12P13/08 C
   C12N1/21
   C12R1:19
   C12P13/08 C
   C12R1:19
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-521184(P2016-521184)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-521763(P2016-521763A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】KR2014003613
(87)【国際公開番号】WO2014208884
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0072181
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM11368P
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,クォン ホ
(72)【発明者】
【氏名】コ,ウ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,グン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン ビン
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1996/026289(WO,A1)
【文献】 特表2009−509533(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/061429(WO,A1)
【文献】 米国特許第05200341(US,A)
【文献】 特表2010−512147(JP,A)
【文献】 特開2005−278645(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF BACTERIOLOGY,1988年,vol.170 no.8,pp.3479-3484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12P 1/00−41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体。
【請求項2】
請求項1のRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を含む核酸。
【請求項3】
前記塩基配列は、配列番号15に記載の塩基配列を有する、請求項2の核酸。
【請求項4】
請求項2の核酸を含むベクター。
【請求項5】
請求項1の変異体を発現させるL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物。
【請求項6】
前記発現は、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を含む組み換えベクターが形質導入されて行われるか、あるいは、前記塩基配列が染色体内にさらに挿入されて行われることを特徴とする、請求項5に記載のL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物。
【請求項7】
前記塩基配列は、配列番号15の塩基配列を有することを特徴とする、請求項6に記載のL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物。
【請求項8】
前記エシェリキア属微生物は、大腸菌であることを特徴とする、請求項6に記載のL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物。
【請求項9】
請求項5から請求項8のうちのいずれか一項に記載のL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物を培養するステップおよび前記培養液からL−スレオニンを分離するステップを含むL−スレオニンの産生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体およびこれを用いてL−スレオニンを産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−スレオニンは、必須アミノ酸の一種であり、飼料と、食品添加剤および動物成長促進剤として広く用いられ、医薬品の合成原料および医薬用輸液剤としても有用に用いられる。
【0003】
L−スレオニンは、主として人工変異法または遺伝子組み換え方法により開発された大腸菌またはコリネ型細菌(Corynebacterium)を用いた発酵法により産生される。大腸菌、コリネ型細菌、セラチア属細菌及びプロデンシア属細菌の野生型菌株から誘導された人工変異株がL−スレオニンの産生のために広く用いられている。
【0004】
遺伝子組み換え技術が発展することに伴い、無作為的突然変異法により開発されたL−スレオニン産生株を対象として部位特異的な遺伝子置換、遺伝子増幅および欠失などを導入してより向上したL−スレオニン産生株の開発に関する技術が報告されている。スレオニンの生合成に関連する遺伝子およびこれらの発現を増大させる様々な方法が開発されたが、より高い歩留まり率のL−スレオニンを産生する方法へのニーズが依然として存在する。
【0005】
広域転写機構は、全ての細胞システム(原核および真核生物)において転写体を制御する役割を果たす。広域転写機構操作は、広域転写調節子をコードする核酸、またはこの発現を調節するプロモーターを突然変異させて形質改良された広域転写調節子を含む組み換え細胞を提供し、この方法により向上した表現型を有する細胞を産生することができる。
【0006】
シグマファクターは、RNAポリメラーゼホロ酵素のプロモーター好みに焦点を合わせることにより、広域転写を調整するのに重要な役割を果たす広域転写調節子の一種である。シグマファクターは、原核生物の転写開始因子であり、遺伝子のプロモーターへのRNAポリメラーゼの特異的な結合を可能にする。異なるシグマファクターは、異なる環境条件に反応して活性化され、全てのRNAポリメラーゼ分子は一つのシグマファクターを含むことになる。大腸菌は、少なくとも八個のシグマファクターを有しており、シグマファクターの数は、バクテリアの種に応じて異なってくることが知られている。
【0007】
本発明者らは、L−スレオニン産生能を有する大腸菌の高温におけるストレスに対する耐性をさらに強化させることを目指して、熱衝撃反応を統制すると知られているシグマ32をコードするrpoH遺伝子に関する改良研究を行い、その結果、高温でもスレオニン生合成能が大幅に低減されないように転写機作を調節するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体を開発し、これをスレオニン産生株に導入してスレオニン産生株を製作することにより本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前記塩基配列を含むベクターを提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、前記変異体を発現するL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物を提供することを目的とする。
これらに加えて、本発明は、前記組み換えエシェリキア属微生物を用いてL−スレオニンを産生する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号17のアミノ酸配列を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体を提供する。
また、本発明は、前記RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を提供する。
さらに、本発明は、前記変異体を発現するL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物を提供する。
さらにまた、本発明は、前記組み換えエシェリキア属微生物を用いてL−スレオニンを産生する方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による高温によるストレスに耐性を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を含むベクターに形質転換された菌株は、温度への耐性が与えられているだけではなく、L−スレオニンの歩留まり率も向上して高温における培養時にも従来の菌株に比べて格段に高いスレオニンを産生することができるので、高い歩留まりにてスレオニンを産生する上で、好適に使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体を提供する。
【0012】
本願発明において用いられる用語「シグマ32(sigma−32、σ32)ファクター」とは、広域転写調節子であるシグマファクターであり、対数期において熱衝撃反応を統制する主なシグマファクターとして知られており、rpoH遺伝子によりコードされる。
【0013】
本発明の変異体は、前記変異体のアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上、特に好ましくは、99%以上の相同性を有する変異体を含む。前記アミノ酸配列に対する相同性は、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST[参照:KarlinおよびAltschul, Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やPearsonによるFASTA[参照:Methods Enzymol., 183, 63(1990)]を用いて決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている[参照:www.ncbi.nlm.nih.gov]。本発明の変異体は、前記変異体のアミノ酸配列に対して欠失、挿入、アミノ酸置換などを有する突然変異体を含み、且つ、コドン置換を有する突然変異体も含む。
【0014】
本発明の好適な実施形態においては、大腸菌野生株であるW3110の無作為的突然変異が取り込まれたrpoHよりなるDNAプールから変異体を抽出してrpoH2−G6と命名した。この塩基配列の分析を行ったところ、野生型RNAポリメラーゼシグマ32ファクターのアミノ酸配列(配列番号16)と比較してアミノ酸配列上の突然変異が生じたことを確認することができた(実施例3)。
【0015】
また、本発明は、前記変異体をコードする塩基配列を提供する。
本発明の好適な実施形態において、前記RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体は、好ましくは、配列番号15の塩基配列を有していてもよい。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、前記変異体をコードする塩基配列は、遺伝暗号が退歩されていてもよい。遺伝コードの 縮重 とは、遺伝暗号中の文字のうち最後の字の意味がない現象のことをいい、前の二つの塩基さえ同じであれば、 最後 の位置の暗号は異なっていても同じ暗号の役割を果たす。
このため、本発明の塩基配列は、配列番号15に記載の塩基配列と80%以上の相同性、好ましくは、90%以上の相同性、さらに好ましくは、95%以上の相同性、最も好ましくは、99%以上の相同性を有していてもよい。
【0017】
さらに、本発明は、前記塩基配列を含むベクターを提供する。
本発明において用いられるベクターは、宿主中において複製可能なものであれば特に限定されるものではなく、当業界における公知の任意のベクターを用いることができる。通常のベクターの例としては、天然状態や組み換え状態のプラスミド、コスミド、ウィルスおよびバクテリオファージが挙げられる。例えば、把持ベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、λMBL3、λMBL4、λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4AおよびCharon21Aなどが使用可能であり、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系およびpET系などが使用可能である。本発明において使用可能なベクターは、特に制限されるものではなく、公知の発現ベクターが使用可能である。好ましくは、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどが使用可能である。最も好ましくは、pACYC177、pACYC184、pCL、pCC1BACベクターが使用可能である。
【0018】
また、本発明は、前記変異体を発現するL−スレオニン産生能を有する組み換えエシェリキア属微生物を提供する。
本発明において、前記変異体の発現は、前記変異体をコードする遺伝子を作動可能に含む組み換えベクターに形質転換されて達成されるか、あるいは、前記変異体を暗号化させるポリヌクレオチドが染色体内に挿入されて達成されるが、本発明はこれに特に限定されない。
本発明における用語「形質転換」とは、目的タンパク質を暗号化させるポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に取り込んで宿主細胞内において前記ポリヌクレオチドが暗号化させるタンパク質を発現させることを意味する。取り込まれたポリヌクレオチドは、宿主細胞内において発現可能である限り、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、あるいは、染色体外に位置する。また、前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質を暗号化させるDNAおよびRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に取り込まれて発現可能である限り、いかなる形で取り込まれても構わない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自体的に発現されるのに必要なあらゆる要素を含むポリヌクレオチド構造体である発現カセットの形で宿主細胞に取り込まれてもよい。前記発現カセットは、通常、前記遺伝子のオープンリーディングフレーム(open readingframe、以下、「ORF」と略称する。)に作動可能に連結されているプロモーター、転写終結信号、リボソーム結合部位および翻訳終結信号を含む。前記発現カセットは、自体的に複製可能な発現ベクターの形であってもよい。なお、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形で宿主細胞に取り込まれて、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記形質転換は、RNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体をコードする塩基配列を含むベクターが形質導入されて行われるか、あるいは、前記塩基配列が染色体内に挿入されて行われることを特徴とするが、本発明はこれに特に制限されない。
【0020】
本発明の微生物は、L−スレオニンが産生可能である限り、いかなる原核微生物も含む。例えば、エシェリキア属、エルウイニア属、セラチア属、プロビデンシア属、コリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属の微生物菌株を含む。好ましくは、エシェリキア属の微生物であり、さらに好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)である。
【0021】
本発明の好適な実施形態において、本発明は、母菌株としてスレオニン産生菌株を活用することができる。前記スレオニン産生菌株は、メチオニン要求性、スレオニン類似体に対する耐性、リシン類似体に対する耐性、イソロイシン類似体に対する耐性およびメチオニン類似体に対する耐性を有する大腸菌であってもよい。また、スレオニン産生菌株は、スレオニン生合成遺伝子などを操作した組み換え大腸菌であってもよく、例えば、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenol pyruvate carboxylase;ppc)遺伝子およびアスパルトキナーゼL−ホモセリンデヒドロゲナーゼ(aspartokinase L−homoserine dehydrogenase;thrA)、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase;thrB)、スレオニンシンターゼ(threonine synthase;thrC)を含むオペロンがそれぞれ1コピー取り込まれた組み換え大腸菌またはL−スレオニン分解過程に与るオペロン遺伝子(tdcBC)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEP carboxykinase;pckA)がいずれも不活性化された組み換え大腸菌であってもよい。
【0022】
好ましくは、大腸菌FTR2533 KCCM 10541P(大韓民国登録特許番号第10−0576342号)、大腸菌ABA5G/pAcscBAR'−M、pC−Ptrc−scrAB(大韓民国登録特許番号第10−1145943号)および大腸菌KCCM11167P(大韓民国公開特許番号第10−2012−0083795号)よりなるから選ばれた菌株が使用可能である。
【0023】
本発明の好適な実施形態において、本発明により形質転換された微生物は、好ましくは、大腸菌FTR2700であってもよい。
【0024】
本発明の好適な実施形態において、本発明の微生物は、L−スレオニン産生性の向上のための一つ以上の好適な表現型を有する大腸菌であってもよい。好ましくは、一つ以上の好適な表現型は、温度耐性型である。
【0025】
また、本発明は、前記形質転換された菌株を用いてL−スレオニンを産生する方法を提供する。
本発明の前記培養過程は、当業界における公知の適当な培地および培養条件により行われる。このような培養過程は、当業者であれば、選択される菌株に応じて手軽に調整して用いることができる。前記培養方法としては、回分式培養、連続式培養および流加式培養が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の微生物培養に用いられる培地およびその他の培養条件は、通常のエシェリキア属微生物の培養に用いられる培地であれば、いかなるものも使用可能であるが、本発明の微生物の要求条件を適切に満たさなければならない。
【0026】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明の微生物を適当な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを含有する通常の培地内において好気性条件下において温度、pHなどを調節しながら培養する。
このとき、炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、ソルビトールなどの炭水化物、糖アルコール、グリセロール、ピルビン酸、乳酸およびクエン酸などのアルコールおよび有機酸、グルタミン酸、メチオニンおよびリシンなどのアミノ酸などが挙げられ、澱粉加水分解物、糖みつ、廃糖みつ、米糠、カッサバ、バガスおよびトウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源が使用可能であり、好ましくは、グルコースおよび殺菌済みの前処理糖みつ(すなわち、還元糖に転換された糖みつ)などの炭水化物であり、その他の適正量の様々な炭素源が制限なしに使用可能である。窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムなどの無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのアミノ酸およびペプトン、NZ−アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物など有機窒素源が使用可能である。これらの窒素源は、単独でまたは組み合わせられて使用可能である。前記培地には、リン源として、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウムおよび対応するナトリウム含有塩が挙げられる。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガンおよび炭酸カルシウムなどが使用可能であり、これらに加えて、アミノ酸、ビタミンおよび適切な前駆体などが使用可能である。これらの培地または前駆体は、培養物に回分式または連続式により添加可能である。
【0027】
培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸および硫酸などの化合物を培養物に適切な方式を用いて添加して、培養物のpHを調整してもよい。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡の生成を抑えてもよい。さらに、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有ガスを注入してもよく、嫌気および未好気状態を維持するために、ガスの注入なしに、あるいは、窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。培養物の温度は、普通、27℃〜37℃、好ましくは、30℃〜37℃である。培養期間は、所望の有用物質の生成量が得られるまで続いてもよく、好ましくは、10〜100時間である。
【0028】
本発明の前記培養ステップにおいて産生されたL−スレオニンに対しては、さらに精製または回収が行われてもよく、このとき、本発明の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式の培養方法などに応じて当該分野における公知の好適な方法を用いて培養液から目的とするL−スレオニンを精製または回収してもよい。
【0029】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されることはない。
【実施例】
【0030】
実施例1:組み換えベクターpCC1BAC−rpoHの製作
(1)rpoH遺伝子断片の準備
rpoH遺伝子(配列番号14、アミノ酸配列番号16)を含むDNA断片約1.0kbを得るために、キアゲン社製のGenomic−tipシステムを用いて大腸菌野生株であるW3110の染色体DNA(gDNA)を抽出し、前記gDNAを鋳型としてPCRHLプレミックスキット(BIONEER社製、以下、同じ。)を用いて重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction、以下、「PCR」と略称する。)を行った。
rpoH遺伝子を増幅させるための重合酵素連鎖反応(PCR)は、配列番号1および2のプライマーを用いて、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における1分間の伸張よりなるサイクルを27回繰り返し行った。
前記重合酵素連鎖反応(PCR)結果物をEcoRIで切断して1.0Kbの大きさのDNA断片(以下、「rpoH断片」と命名する。)を0.8%のアガロースゲルにおいて電気泳動した後、溶離して得た。
【0031】
(2)組み換えベクターpCC1BAC−rpoHの製作
複製数調節pCC1BAC EcoRIクローニングレディベクター(Copycontrol pCC1BAC EcoRI cloning−ready vector;EPICENTRE(USA))および実施例1−(1)において得られたrpoH断片をそれぞれ制限酵素EcoRIで処理し、結さつしてpCC1BAC−rpoHプラスミドを製作した。
【0032】
実施例2:組み換えベクターpCC1BAC−rpoHの変異体ライブラリーの製作
(1) エラープローン 重合酵素連鎖反応(PCR)を用いたrpoH変異体の準備
無作為的突然変異が取り込まれたrpoH変異体断片よりなるDNAプールを得るために、実施例1−(1)において抽出したW3110のgDNAを鋳型としてクローンテック社製のdiversifyPCRrandommutagenesiskit(カタログ番号K1830−1)のユーザーマニュアルに提示されている表3の突然変異反応4の条件で重合酵素連鎖反応(PCR)を行った。重合酵素連鎖反応(PCR)は、配列番号1および2のプライマーを用いて、94℃における30秒間の変性、68℃における1分間の伸張よりなるサイクルを25回繰り返し行った。
前記重合酵素連鎖反応(PCR)結果物をEcoRIで切断して1.0Kbの大きさのDNA断片(以下、「rpoH断片」と命名する。)を0.8%のアガロースゲルにおいて電気泳動した後、溶離して得た。
【0033】
(2)組み換えベクターpCC1BAC−rpoHの変異体ライブラリーの製作
複製数調節pCC1BAC EcoRIクローニングレディベクターを実施例2−(1)において得られたrpoH断片と結さつしてpCC1BAC−rpoHベクターを製作した。
これをトランスフォーマックスEPI300エレクトロコンピテント大腸菌(TransforMax EPI300 Electrocompetent E.coli;EPICENTRE(USA))に形質転換し、LBプレート+15μg/mlクロラムフェニコール+40μg/ml X−Gal+0.4mM IPTGにおいて選別して青いコロニーが出ないことを確認し、取得されたコロニーを集めてプラスミドプレップを行ってpCC1BAC−rpoHの変異体ライブラリーを製作した。
【0034】
(3) pCC1BAC−rpoHの変異体ライブラリーのスレオニン産生菌株の取り込み
前記実施例1−(2)において得られたpCC1BAC−rpoHおよび実施例2−(2)において得られたpCC1BAC−rpoHの変異体ライブラリーをコンピテントな状態で製造したスレオニン産生菌株である大腸菌KCCM 10541にそれぞれ形質転換して取り込み、得られた菌株をそれぞれKCCM10541/pCC1BAC−rpoHおよびKCCM 10541/pCC1BAC−rpoH変異体ライブラリーと命名した。
この実施例において用いられた母菌株である大腸菌KCCM 10541は、メチオニン栄養要求性、イソロイシン漏出型要求性、L−スレオニン類似体(例えば、α−アミノ−β−ヒドロキシヒドロキシ酪酸;AHV)に対する耐性、L−リシン類似体(例えば、S−(2−アミノエチル)−L−システイン;AEC)に対する耐性、イソロイシン類似体(例えば、α−アミノ酪酸)に対する耐性、メチオニンの類似体(例えば、エチオニン)に対する耐性などの特性を有する母菌株である大腸菌(Escherichia coli)KCCM 10236の染色体の内部に存在するtyrR遺伝子およびgalR遺伝子を不活性化させることにより向上したL−スレオニン産生能を有する菌株である(大韓民国特許登録番号第10−0576342号)。
【0035】
実施例3:温度に耐性を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体の選別
この実施例においては、温度に耐性を有するRNAポリメラーゼシグマ32ファクター変異体を選別するための実験を行った。
前記実施例2−(3)において製造した大腸菌KCCM10541/pCC1BAC−rpoHおよび大腸菌KCCM 10541/pCC1BAC−rpoH変異体ライブラリーを37℃、33℃の培養器においてLB固体培地中に一晩培養し、これをそれぞれ下記表1の25mLの力価培地に一白金耳ずつ接種した後、これを37℃、33℃の震とう培養器において200rpmにて48時間それぞれ培養した。
【表1】
【0036】
rpoH変異体ライブラリーが取り込まれたそれぞれのコロニーを37℃で培養してKCCM 10541/pCC1BAC−rpoHに比べてスレオニンの濃度が上昇する変異体を選別し、これを33℃で培養して評価する過程を繰り返し行ってrpoH変異体ライブラリーに対する評価を行った。このような過程を通して、温度への耐性及び歩留まり率の向上が両立されたクローンを選別した。前記クローンからベクターを抽出してpCC1BAC−rpoH2−G6と命名した。
前記pCC1BAC−rpoH2−G6の変異を確認するために、複製数調節pCC1BAC EcoRIクローニングレディベクターキットに確認用プライマーとして提供されるpIBFP(配列番号3)およびpIBRP(配列番号4)を用いてpCC1BAC−rpoH2−G6の重合酵素連鎖反応(PCR)を行い、得られた重合酵素連鎖反応(PCR)結果物の配列を分析した。配列を分析したところ、rpoHの変異体であるrpoH2−G6(配列番号15)は、配列番号17のアミノ酸配列を有することを確認した。
【0037】
実施例4:組み換え菌株のL−スレオニン産生能の比較
前記実施例3において得られたベクターpCC1BAC−rpoH2−G6を大腸菌KCCM 10541に形質転換して大腸菌KCCM 10541/pCC1BAC−rpoH2−G6を製造した。
母菌株である大腸菌KCCM 10541、大腸菌KCCM 10541/pCC1BAC−rpoHおよび大腸菌をKCCM 10541/pCC1BAC−rpoH2−G6をそれぞれ上記表1のスレオニン力価培地を用いて三角フラスコにおいて培養してL−スレオニン産生性を確認した。その結果を下記表2に示す。
【表2】
【0038】
上記表2に記載されているように、母菌株である大腸菌KCCM 10541と対照 群菌株であるKCCM 10541/pCC1BAC−rpoH菌株は、48時間培養した場合、30.6g/L、30.5g/LのL−スレオニンを産生したが、上記のようにして得た大腸菌KCCM 10541/pCC1BAC−rpoH2−G6菌株は31.1g/LのL−スレオニンを産生して母菌株に比べて約1%向上したL−スレオニン産生能を示した。
37℃では母菌株(KCCM 10541)および対照群菌株(KCCM10541/pCC1BAC−rpoH)の歩留まり率が下がる様相を示すのに対し、KCCM 10541/pCC1BAC−rpoH2−G6菌株は温度による濃度低下現象を示さず、31.8g/LのL−スレオニンを産生して高温における培養時に対照群に比べて約8%向上したスレオニン産生能が与えられたことを確認することができた。
【0039】
実施例5:選別されたrpoH変異体(rpoH2−G6)のスレオニン産生菌株別の効果の比較
(1) ABA5G/pAcscBAR'−M、pC−Ptrc−scrAB菌株におけるrpoH変異体(rpoH2−G6)効果の確認
前記実施例4において効果が確認されたベクターpCC1BAC−rpoH2−G6をスレオニン産生菌株であるABA5G/pAcscBAR'−M、pC−Ptrc−scrAB(大韓民国特許登録番号第10−1145943号)に取り込んでABA5G/pAcscBAR'−M、pC−Ptrc−scrAB、pCC1BAC−rpoH2−G6を製作し、下記表3に示す力価培地を製造して力価評価を行った。その結果を下記表4に示す。
この実施例において用いられた母菌株であるABA5G/pAcscBAR'−M、pC−Ptrc−scrABは、スレオニン産生菌株であるABA5G菌株(母菌株である大腸菌W3110のN−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)突然変異の誘起により製作された菌株であり、メチオニン要求性、イソロイシン漏出、α−アミノ−β−ヒドロキシヒドロキシ酪酸に対する耐性、2−アミノエチル−1−システインに対する耐性、1−アゼチジン−2−カルボン酸に対する耐性を有する)にpAcscBAR'−M遺伝子群およびpC−Ptrc−scrAB遺伝子群を含むベクターに形質転換して得られたL−スレオニン産生能を有する大腸菌である。
【表3】
【表4】
【0040】
上記表4に記載されているように、大腸菌KCCM 10541を除く他のスレオニン産生菌株に取り込んだ場合にも、上記表2から確認されたところと同様に、ベクターpCC1BAC−rpoH2−G6を取り込むと、33℃ではスレオニンの歩留まり率が維持され、37℃でもスレオニンの歩留まり率が33℃の歩留まり率と略同じレベルに維持されることを確認することができた。
【0041】
(2) 大腸菌KCCM11167P菌株におけるrpoH変異体(rpoH2−G6)効果の確認
さらに他のスレオニン産生菌株である大腸菌KCCM11167P(大韓民国特許出願番号第2011−0005136号)にベクターpCC1BAC−rpoH2−G6を取り込んで大腸菌KCCM11167P/pCC1BAC−rpoH2−G6を製作し、上記表1の力価培地を製造してスレオニン産生能を評価した。その結果を下記表5に示す。
この実施例において用いられた母菌株である大腸菌KCCM11167Pは、KCCM 10541菌株(大韓民国特許登録番号第10−0576342)にtdcBを不活性化させ、nadKを2copyに強化させてNADキナーゼ活性を強化させた菌株である。
【表5】
【0042】
上記表5の力価評価の結果から、前記実施例5−(1)に示す他のスレオニン産生菌株に取り込まれたときと同様に、スレオニン産生能を有する菌株にpCC1BAC−rpoH2−G6が取り込まれると、33℃ではスレオニンの歩留まり率が維持され、37℃ではスレオニンの歩留まり率が33℃における歩留まり率と略同様に維持されることを確認することができた。
【0043】
実施例6:選別されたrpoH変異体(rpoH2−G6)の染色体への追加挿入
(1) rpoH2−G6挿入用カセット断片の準備
前記実施例3において選別されたrpoH2−G6変異体を染色体に追加的に挿入するために線形挿入用カセットを製作した。線形挿入用カセットは、下記の方法に従い製作した。
配列番号5および6のプライマーを用いて、大腸菌W3110 gDNAを鋳型として重合酵素連鎖反応(PCR)を行った。重合酵素連鎖反応(PCR)は、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における30秒間の伸張よりなるサイクルを27回繰り返し行った。このようにして得られたDNA断片を相同性部位1と命名した。
配列番号7および8のプライマーを用いて、pMloxCmtを鋳型として変異体loxP−Cm−loxPカセットを増幅させるための重合酵素連鎖反応(PCR)を行い、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における1分間の伸張よりなるサイクルを27回繰り返し行った。このようにして得たDNA断片を相同性部位1と命名した。ここで、鋳型として用いられたpMloxCmtは、鈴木らがlox71およびlox66と命名した変異体loxPを用いた改善された遺伝子の欠失方法について報告した内容を応用して当業者が製作したベクターである(Suzuki N. et al., Appl. Environ. Microbiol. 71:8472, 2005)。
このようにして得た相同性部位1および変異体loxP−Cm−loxPカセット部分を配列番号5および8を用いて重複伸長重合酵素連鎖反応(PCR)を行い、相同性領域1−変異体loxP−Cm−loxPを得た。このとき、重合酵素連鎖反応(PCR)は、プライマーがない状態で、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における1分30秒間の伸張よりなるサイクルを5回繰り返し行った後、プライマーを入れて23サイクルをさらに行った。
配列番号9および10のプライマーを用いて、pCC1BAC−rpoH2−G6を鋳型として重合酵素連鎖反応(PCR)を行った。94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における1分間の伸張よりなるサイクルを27回繰り返し行った。
配列番号11および12のプライマーを用いて、大腸菌W3110 gDNAを鋳型として重合酵素連鎖反応(PCR)を行った。94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における30秒間の伸張よりなるサイクルを27回繰り返し行った。このようにして得たDNA断片を相同性部位2と命名した。
上記のrpoH2−G6および相同性部位2の部分に対して配列番号9および12を用いて重複伸長重合酵素連鎖反応(PCR)を行ってrpoH2−G6−相同性部位2を得た。このとき、重合酵素連鎖反応(PCR)は、プライマーがない状態で、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における1分30秒間の伸張よりなるサイクルを5回繰り返し行った後、プライマーを入れて23サイクルをさらに行った。
このようにして得た相同性部位1−変異体loxP−Cm−loxP、rpoH2−G6−相同性部位2を鋳型として、配列番号5および12を用いて重複伸長重合酵素連鎖反応(PCR)を行ってrpoH2−G6挿入用カセットを製作した。このとき、重合酵素連鎖反応(PCR)は、プライマーがない状態で、94℃における30秒間の変性、55℃における30秒間のアニーリングおよび72℃における3分間の伸張よりなるサイクルを5回繰り返し行った後、プライマーを入れて23サイクルをさらに行った。このような過程を経て配列番号13に記載のrpoH2−G6挿入用カセットを製作した。
【0044】
(2) 染色体の上にrpoH2−G6変異体がさらに挿入された組み換え菌株の製造
染色体の上に既に選別されたrpoH2−G6変異体を挿入するために、大腸菌KCCM 10541に前記実施例6−(1)において製作したrpoH2−G6挿入用カセットDNA断片を分離精製して公知の1段階不活性化(Warner et al., PNAS, 6;97(12):6640, 2000)の方法と同様にして既存の内在されたrpoHの後ろの染色体部分にrpoH2−G6変異体をさらに挿入した。次いで、抗生剤耐性標識遺伝子を除去してrpoH2−G6変異体がさらに挿入された菌株を製作し、塩基配列の分析を行って重合酵素連鎖反応(PCR)エラーが導入されていないことを確認した。製作されたrpoH2−G6の追加挿入菌株をFTR2700と命名し、前記形質転換された大腸菌FTR2700を2013年2月5日付けで韓国微生物保存センター(KoreanCulture Center of Microorganisms、以下、「KCCM」と略称する。)に寄託した(受託番号KCCM 11368P)。
【0045】
(3) L−スレオニン産生性の確認
前記実施例6−(2)において製造した組み換え微生物を上記表1のスレオニン力価培地を用いて三角フラスコにおいて培養してL−スレオニン産生性を確認した。
33℃、37℃の培養器においてLB固体培地中に一晩培養した大腸菌KCCM 10541および大腸菌KCCM 11368Pをそれぞれ上記表1の25mLの力価培地に一白金耳ずつ接種した後、これを33℃、37℃の震とう培養器において200rpmにて48時間培養した。
下記表6に記載されているように、母菌株である大腸菌KCCM 10541菌株は、48時間培養した場合に30.3g/LのL−スレオニンを産生し、本発明の前記実施例6−(2)において製作されたKCCM11368P大腸菌菌株は30.0g/LのL−スレオニンを産生して母菌株と略同じL−スレオニン産生性を示した。37℃では母菌株(KCCM 10541)の歩留まり率が下がる様相を示すのに対し、KCCM 11368P菌株は温度による濃度低下現象を示さず、濃度が上がる様相を示した。
これにより、ベクターの形で取り込まれて形質転換された菌株と同様に、37℃の培養時にも33℃の培養時と略同じレベルのスレオニン産生能あるいはこれを上回るレベルのスレオニン産生能が与えられたことを確認することができた。
【表6】
【0046】
以上の説明から、本発明が属する技術分野における当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく他の具体的な形態にて実施可能であるということが理解できる筈である。これと関連して、上述した実施例はあらゆる面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味および範囲並びにその等価概念から導き出されるあらゆる変更例または変形例が本発明の範囲に含まれるものと解釈さるべきである。
【0047】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(海外)
受託番号:KCCM 11368P
受託日:2013年02月05日
寄託機関の名称
韓国微生物保存センター
寄託機関の住所(郵便番号および国名を含む)
〒120-091 韓国ソウル特別市西大門区弘済1洞361-221番地ユリムビル 寄託日
2013年02月05日
寄託番号
KCCM 11368P
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]