(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192826
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】車両内の回転部材の回転角度を検出するセンサ装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
G01B7/30 H
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-524483(P2016-524483)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2016-533494(P2016-533494A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014070105
(87)【国際公開番号】WO2015055382
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】102013221193.7
(32)【優先日】2013年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン フライシャー
(72)【発明者】
【氏名】レミギウス ハース
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヘンリチ
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−220214(JP,A)
【文献】
特開2007−263693(JP,A)
【文献】
特開2001−349702(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/163333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の回転部材の回転角度を検出するセンサ装置であって、
前記回転部材(10)は、少なくとも1つの測定値検出部(20、30)と結合されており、
当該測定値検出部(20、30)は、少なくとも1つのセンサ(40、50)と協働して、前記回転部材(10)の前記回転角度を表す信号を生成する、センサ装置において、
前記回転部材(10)に相対回動不能に結合されている第1の測定値検出部(20)と、回転角度センサ(40、50)として構成されている少なくとも1つのセンサとを備えた回転角度検出器(3)が、360°の回転の範囲で前記回転部材(10)の角度位置を検出し、
軸方向に動くように前記回転部材(10)と結合されており、かつ、前記回転部材(10)の前記回転(12)を前記回転部材(10)に関連した第2の測定値検出部(30)の軸方向並進運動(14)に変換する運動変換器を前記回転部材(10)と共に形成する第2の測定値検出部(30)と、距離センサ(40、50)として構成されている少なくとも1つのセンサとを備えた回転検出器(5)が、前記回転部材(10)の回転数を表す、前記第2の測定値検出部(30)が軸方向に進んだ距離を求め、
前記回転部材(10)の現在の回転角度は、前記回転角度検出器(3)によって検出された前記角度位置と、前記回転検出器(5)によって求められた前記回転数とから求められ、
前記第1の測定値検出部(20)と前記第2の測定値検出部(30)とは入れ子状態で配置されている、
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記複数の測定値検出部(20、30)のうちの1つは、基体(22、32)を有する鉢状の窪みが設けられているディスク(20B、20C、30A)として構成されており、当該基体(22、32)は、中央開口部(26、36)と陥入部(24、34)とを有しており、
前記複数の測定値検出部(20、30)のうちの1つは、基体(22、32)を有するディスク(20A、30B、30C)として構成されており、当該基体(22、32)は中央開口部(26、36)を有しており、
ディスク(20A、30B、30C)として構成されている前記測定値検出部(20、30)は、鉢状の窪みが設けられているディスク(20B、20C、30A)として構成されている前記測定値検出部(20、30)の前記陥入部(24、34)内に少なくとも部分的に埋没することが可能であるように構成されている、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
軸方向に動くように前記回転部材(10)と結合されている前記測定値検出部(30)の前記基体(32)は、前記中央開口部(36)の内壁(36.1)で、及び/又は、前記基体(32)の外周(32.1)で、及び/又は、前記陥入部(34)の内側壁部(34.1)で、軸方向に誘導される、請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記回転部材(10)は雄ねじ(16.1)を有しており、軸方向に動くように前記回転部材(10)と結合されている前記測定値検出部(20、30)の前記基体(22、32)は、対応する、前記中央開口部(26、36)内に設けられている雌ねじ(26.2、36.2)を有しており、これによって、前記測定値検出部(20、30)は前記回転部材(10)にねじ嵌めされており、かつ、軸方向に誘導される、請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
鉢状の窪みが設けられているディスク(20B、20C、30A)として構成されている前記測定値検出部(20、30)の前記基体(22、32)は、前記陥入部(24、34)の前記内側壁部(24.1、34.1)に、雌ねじ(24.1、34.1)を有しており、
ディスク(20A、30B、30C)として構成されている前記測定値検出部(20、30)の前記基体(22、32)は、自身の外周(22.1、32.1)に、対応する雄ねじ(22.2、32.2)を有しており、これによって、複数の前記測定値検出部(20、30)の間の、誘導された軸方向相対運動が可能になる、請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項6】
少なくとも1つの係留手段(7)が設けられており、当該係留手段(7)は、軸方向に動く前記測定値検出部(30)の回転運動を阻止し、かつ、軸方向運動(14)を可能にする、請求項4又は5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ(40、50)は、所定数の検出用コイル(42、52)と所定数の対応する検出領域(44、54)とを備えた渦電流センサとして構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
回転角度センサ(40、50)として構成されている少なくとも1つの前記センサの前記コイル(42)と、距離センサ(40、50)として構成されている少なくとも1つの前記センサの前記コイル(52)とが、共通のコイル担体(60)上に配置されている、請求項7に記載のセンサ装置。
【請求項9】
複数の前記センサ(40、50)の複数の前記検出用コイル(42、52)は、複数の箇所に分散して、前記コイル担体(60)に配置されている、請求項7又は8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
評価及び制御ユニット(70)は、少なくとも1つの前記回転角度センサ(40、50)及び/又は少なくとも1つの前記距離センサ(40、50)の複数の前記コイル(42、52)を、同時に又は所定の順番で評価する、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載された、車両内の回転部材の回転角度を検出するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の操舵角センサでは、カウンタホイールが、ステアリングホイールの回転数を求めるために、無接触に、磁界センサによって走査される。このようなシステムは、次のような欠点を有している。即ち、点火装置がオフにされている時にステアリングホイールの回転を検出することを可能にするために、点火装置オフ時に、静電流が供給されなければならない、という欠点である。車両を長期間使用していない場合には、これによって、車載バッテリが空になってしまう。このような静電流が供給されない場合には、点火装置オフ状態、又は、バッテリ切り離し状態においてステアリングホイールの回転が行われても、操舵角度を明確に特定することはできない。
【0003】
独国特許出願公開第102008011448号には、例えば、回転角度を検出するための装置が記載されている。開示されたこの装置は、検出部とセンサとを含んでいる。センサは、回転部材の回転角度の変化に依存して、検出部によって生成された物理的な量の変化を、デジタル方式で評価可能な信号として検出する。この回転部材は、少なくとも1つの、自身の外周に結合された、回転部材が回転することによって回転する、より小さい円周の付属体を有している。この付属体は、有利には角度センサを備えている。この角度センサは、軸方向に結合されたハイポサイクロイドギアを介して同様に回転する、ハイパーサイクロイドディスク又はハイポサイクロイド歯車を駆動させる。ここで、これらのディスク又はギアの回転速度は、ハイポサイクロイドギアによって、この回転速度から、回転部材の回転数と、ステアリングシャフトの複数回の回転にわたる絶対的な操舵角度とが、回転センサシステムによって求められるように、減速されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008011448号
【発明の概要】
【0005】
本発明の開示
これに対して、独立請求項1の特徴部分に記載された構成を有する、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置は、次のような利点を有している。即ち、回転部材の現在の回転角度が、2つの別個の無接触測定方法によって求められる、という利点である。これらの測定方法は、有利には、渦電流作用に基づいている。第1の測定方法は360°の回転を検出し、第2の測定方法は「ラップカウンタ」として機能し、これは、距離の変化を介して、回転部材の数回の回転を検出する。求められるべき回転角度を回転と距離変化とに区分することによって、本発明に係るセンサ装置の実施形態は極めて容易に、比較的高い分解能を得ることができる。さらに、機械的な回転での回転運動のこの変化とこのレベル変化とによって、回転部材の回転が繰り返される場合でも、一義的な回転位置が常に得られる。有利には、回転運動は、変化した機械的な回転及びレベル変化において得られ続ける。従って、点火装置がオフにされた後若しくはバッテリが切り離された後にも、又は、電子回路の故障時にも、正しい、絶対的な回転角度が供給される。これによって、渦電流作用を用いた、特に確実な動作又は回転角度の特に確実な識別が可能になる。さらなる利点は、コストの削減につながり得る機械的な簡素化である。なぜなら、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置の実施形態では、相互に噛み合っている歯の構造を有する歯車又は磁石が不必要だからである。これはコストの削減につながり得る。さらに、可動部品の低減によって、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置の実施形態が動作時に出す騒音は極めて小さくなる。有利には、本発明に係るセンサ装置は、車両の操舵角度を求めるために使用される。ここで、回転部材は有利には、車両のステアリングコラムとして、又は、捻れないようにステアリングコラムと接続されているスリーブとして構成されている。
【0006】
本発明の実施形態は、車両内の回転部材の回転角度を検出するセンサ装置を提供する。この回転部材は、少なくとも1つの測定値検出部と結合されている。この測定値検出部は、少なくとも1つのセンサと協働して、回転部材の回転角度を表す信号を生成する。本発明では、相対回動不能に回転部材と結合されている第1の測定値検出部と、回転角度センサとして構成されている少なくとも1つのセンサとを備えた回転角度検出器が、回転部材の角度位置を360°の回転の範囲で検出する。さらに、第2の測定値検出部と、距離センサとして構成されている少なくとも1つのセンサとを備えた回転検出器が、回転部材の回転数を表す、第2の測定値検出部の軸方向に進んだ距離を求める。ここで、この第2の測定値検出部は、軸方向で運動するように回転部材と結合されており、この回転部材と共に運動変換器を形成する。この運動変換器は、回転部材の回転を、回転部材に関連した、第2の測定値検出部の軸方向並進運動に変換する。このような場合には、回転部材の現在の回転角度が、回転角度検出器によって検出された角度位置と、回転検出器によって求められた回転数とから求められる。
【0007】
従属請求項に記載された措置と、発展形態とによって、車両内の回転部材の回転角度を検出する、独立請求項1に記載されたセンサ装置を有利に改良することができる。
【0008】
特に有利には、測定値検出部の1つが、中央開口部と陥入部とを有している基体を伴う、鉢状の窪みが設けられているディスクとして構成されており、測定値検出部の1つが、中央開口部を有している基体を伴うディスクとして構成されている。ここで、このディスクとして構成されている測定値検出部は次のように構成されている。即ち、鉢状の窪みが設けられているディスクとして構成されている測定値検出部の陥入部内に少なくとも部分的に埋没することが可能であるように構成されている。有利には、第1の測定値検出部と第2の測定値検出部とは、入れ子状態で配置される。これによって有利には、車両内の回転部材の回転角度を検出する、本発明に係るセンサ装置の構造をコンパクトにすることができる。
【0009】
本発明に係るセンサ装置の有利な構成では、軸方向に動くように、回転部材と結合されている測定値検出部の基体を、中央開口部の内壁及び/又はその外周及び/又は陥入部の内側壁部で、軸方向に誘導することができる。回転部材は、例えば、雄ねじを有することができ、回転部材に軸方向に動くように結合されている測定値検出部の基体は、例えば、対応する、中央開口部内に設けられている雌ねじを有することができる。従って、測定値検出部は回転部材にねじ嵌めされており、軸方向に誘導可能である。雄ねじを、例えば、直接的に、回転部材に刻むことができる。このように回転部材に雄ねじを直接的に刻み込むことによって、有利には、回転運動を直線運動に変換するために必要な部品の数を低減させることができる。これは、コストの節約につながる。択一的に、雄ねじが設けられたスリーブを、軸方向で、回転部材上にスライドさせて嵌めることができる。また、このスリーブを相対回動不能に回転部材と接続させることができる。このスリーブによって、有利には、回転部材又はステアリングコラムに、測定値検出部のサイズを合わせることが可能になる。択一的に、鉢状の窪みが設けられているディスクとして形成されている測定値検出部の基体が陥入部の内側壁部に雌ねじを有し、ディスクとして形成されている測定値検出部の基体が、自身の外周に、対応する雄ねじを有することができる。従って、これらの測定値検出部の間で、軸方向の相対運動を誘導することが可能である。
【0010】
有利には、軸方向に運動可能な測定値検出部の回転運動を阻止し、かつ、この測定値検出部の軸方向運動を可能にする少なくとも1つの係留手段を設けることができる。この測定値検出部の回転を回避するために、例えば、ガイドバーとして形成されている少なくとも2つの係留手段を、軸方向に運動可能な測定値検出部の基体内の、相応に間隔が空けられた複数の貫通部に通すことができる。これらのガイドバーは、この測定値検出部を軸方向に誘導し、かつ、この測定値検出部の回転運動を阻止する。
【0011】
本発明に係るセンサ装置の別の有利な構成では、センサを、渦電流センサとして構成することができる。ここでこの渦電流センサは、所定数の検出用コイルと、対応する、所定数の検出領域とを有している。この渦電流センサは、距離又は回転角度を、属する磁界の変化を介して求める。有利には、少なくとも1つの、回転角度センサとして構成されているセンサのコイルと、少なくとも1つの、距離センサとして構成されているセンサのコイルとを、共通のコイル担体上に配置することができる。検出領域は導電性材料又は強磁性材料から形成されており、ここでは、対応するコイルが渦電流を生起させる。コイル及び検出領域の数及び形状を、有利には、手元にある構造条件に合わせることが可能である。
【0012】
本発明に係るセンサ装置のさらに有利な構成では、センサの検出用コイルは、複数の箇所に分散されて、コイル担体に配置される。これによって有利には、より高い感度、即ち、複数の箇所にわたって直列接続されているより大きなコイルインダクタンスが得られる。
【0013】
本発明に係るセンサ装置の別の有利な構成では、評価及び制御ユニットが、少なくとも1つの回転角度センサ及び/又は少なくとも1つの距離センサの複数のコイルを、同時に又は所定の順番で評価することができる。これによって有利には、ノイズの影響、例えば温度変化等が補償される。さらに、複数のセンサ又はコイルを用いることによって、有利には、回転部材の回転角度を冗長的に求めることが可能になる。
【0014】
本発明の実施形態を図示し、後続の明細書で詳細に説明する。図面では、同一の参照番号は、同一の又は同様の機能を有する部品又は部材を表している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の位置にある、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置の第1の実施例の概略的な斜視断面図。
【
図2】第2の位置にある、本発明に係るセンサ装置の第1の実施例の概略的な斜視断面図。
【
図3】
図1及び
図2に示された本発明に係るセンサ装置のコイル担体の第1の実施例の概略的な平面図。
【
図4】
図1及び
図2に示された本発明に係るセンサ装置の第1の測定値検出部及び第2の測定値検出部の第1の実施例の概略的な底面図。
【
図5】
図1及び
図2に示された本発明に係るセンサ装置のコイル担体の第2の実施例の概略的な平面図。
【
図6】
図1及び
図2に示された本発明に係るセンサ装置の第1の測定値検出部及び第2の測定値検出部の第2の実施例の概略的な底面図。
【
図7】第1の位置にある、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置の第2の実施例の概略的な斜視断面図。
【
図8】第2の位置にある、
図7に示されている本発明に係るセンサ装置の第2の実施例の概略的な斜視断面図。
【
図9】
図7及び
図8に示されている本発明に係るセンサ装置のコイル担体の第1の実施例の概略的な平面図。
【
図10】
図7及び
図8に示された本発明に係るセンサ装置の第1の測定値検出部及び第2の測定値検出部の第1の実施例の概略的な底面図。
【
図11】
図7及び
図8に示されている本発明に係るセンサ装置のコイル担体の第2の実施例の概略的な平面図。
【
図12】
図7及び
図8に示された本発明に係るセンサ装置の第1の測定値検出部及び第2の測定値検出部の第2の実施例の概略的な底面図。
【
図13】第1の位置にある、車両内の回転部材の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置の第3の実施例の概略的な斜視断面図。
【
図14】第2の位置にある、
図13に示されている本発明に係るセンサ装置の第3の実施例の概略的な斜視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至
図14に示されているように、車両内の回転部材10の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置1、1A、1B、1Cの実施形態は、少なくとも1つの測定値検出部20、30を含んでいる。この測定値検出部は、少なくとも1つのセンサ40、50と協働して、回転部材10の回転角度を表す信号を形成する。
【0017】
本発明では、回転部材10と相対回動不能に結合されている第1の測定値検出部20と、回転角度センサ50として形成されている少なくとも1つのセンサとを有する回転角度検出器3が、回転部材10の角度位置を360°の回転範囲で検出する。さらに、第2の測定値検出部30と、距離センサ40として構成されている少なくとも1つのセンサとを有する回転検出器5が、第2の測定値検出部30が軸方向に進んだ距離を求める。この距離は、回転部材10の回転数を表す。ここでこの第2の測定値検出部30は、回転部材10と、軸方向に運動するように結合されており、かつ、回転部材10と共に運動変換器を形成する。この運動変換器は、回転部材10の回転12を回転部材に関する、第2の測定値検出部30の軸方向並進運動に変換する。回転部材10の現在の回転角度は、回転角度検出器3によって検出された回転角度と、回転検出器5によって求められた回転数とから求められる。
【0018】
本発明に係るセンサ装置1、1A、1B、1Cの実施形態は、例えば、車両の操舵角度を特定するための操舵角度センサとして使用される。ここでは例えば、車両のステアリングコラムの現在の回転角度が求められるべきである。図示の実施例では、回転部材10は、スリーブ16、16A、16B、16Cに相当する。このスリーブは例えば、軸方向にスライドして、回転部材であるステアリングコラム上に嵌められ、相対回動不能にステアリングコラムと接続されている。
【0019】
さらに
図1乃至
図14から見て取れるように、測定値検出部20、30の1つは、中央開口部26、36と陥入部24、34とを備えた基体22、32を備えた鉢状の窪みが設けられているディスク20B、20C、30Aとして形成されており、測定値検出部20、30の1つは、中央開口部26、36を備えた基体22、32を備えたディスク20A、30B、30Cとして形成されている。ここでは、ディスク20A、30B、30Cとして形成されている測定値検出部20、30は次のように構成されている。即ち、鉢状の窪みが設けられているディスク20B、20C、30Aとして構成されている測定値検出部20、30の陥入部24、34内に少なくとも部分的に埋没することが可能であるように構成されている。これによって、第1の測定値検出部20と第2の測定値検出部30とは、構造空間を省いて、入れ子状態で配置されている。従って、有利には、車両内の回転部材10の回転角度を検出する本発明に係るセンサ装置1、1A、1B、1Cの構造をコンパクトにすることができる。
【0020】
図示の実施例では、センサ40、50は、渦電流センサとして構成されている。この渦電流センサは、共通のコイル担体60上に配置されている所定数の検出用コイル42、52と、所定数の、対応する検出領域44、54とを有している。これらの検出領域は、第1又は第2の測定値検出部20、30で、実質的に、対応する検出用コイル42、52と面一に構成されている。
【0021】
これは次のことを意味している。即ち、回転角度センサ40の検出用コイル42が軸方向に、対応する検出領域44に重畳して、コイル担体60上に配置されている、又は、距離センサ50の検出用コイル52が軸方向に、対応する検出領域54に重畳して、コイル担体60上に配置されていることを意味する。図示の実施例では、コイル担体60は、中央開口部62を有する、位置が固定されたディスクとして構成されている。この、中央開口部62を通って回転部材10が延在する。第1の測定値検出部20の回転運動又は軸方向運動14及びこれと結び付いている第2の測定値検出部30の距離変化によって、検出用コイル42、52と検出領域44、54との間に、渦電流センサ40、50によって形成された磁界46、56に影響が与えられる。従って、例えば、図示されていない各固定容量と協働して、対応する周波数変化が検出され、評価及び制御ユニット70によって、回転角度検出及び/又は距離検出のために評価される。渦電流センサ40、50のコイル42、52は、マイクロメカニカル方法でシリコン内に製造され得る、又は、直接的に、有利にはプリント回路基板として構成されているコイル担体60上に実現される。ここで、プリント回路基板上へのこの直接的な配置は、さらなるコスト上の利点を有し得る。この場合には、種々のコイル形状が実現可能である。これは例えば円形又は矩形である。しかし、より複雑なコイル形状も有利であることが判明している。これに加えて、コイル42、52を、より大きな形状(センチメートルの範囲)で製造することもできる。さらに、渦電流センサ40、50のコイル42、52をプリント回路基板及びシリコンにおいて、複数の箇所に分散させることができる。これによってより高い感度が得られる。即ち、複数の箇所にわたって直列接続されたより大きいコイルインダクタンスが得られる。評価及び制御ユニット70は、少なくとも1つの回転角度センサ40及び/又は少なくとも1つの距離センサ50のこれらのコイル42、52を同時に又は所定の順番で評価することができる。
【0022】
図1及び
図2から見て取れるように、本発明に係るセンサ装置1Aの第1の実施例では、第1の測定値検出部20はディスク20Aとして構成されている。ここで、このディスク20Aは、相対回動不能に、スリーブ16Aとして構成されている回転部材10と接続されている。図示の実施例では、ディスク20Aとして構成されている第1の測定値検出部20の基体22Aは、中央開口部26との相対回動不能の接続を形成するために、スリーブ16Aとして構成されている回転部材10に押圧されている。第2の測定値検出部30は、本発明に係るセンサ装置1Aの第1の実施例では、鉢状の窪みが設けられているディスク30Aとして構成されている。
図1及び
図2からさらに読み取れるように、スリーブ16Aとして構成されている回転部材10に、雄ねじ16.1が刻み込まれている。この雄ねじに、鉢状の窪みが設けられているディスク30Aとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Aが、中央開口部36の内壁36.1に設けられている雌ねじによってねじ嵌めされており、軸方向に誘導される。本発明に係るセンサ装置1Aの
図1に示された第1の位置は、回転部材10の右側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部30の端面38と、コイル担体60Aの表面との間に、最大距離h1を有している。本発明に係るセンサ装置1Aの、
図2に示された第2の位置は、回転部材10の左側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部20の端面38と、コイル担体60Aの表面との間に、最短距離h2を有している。
図2に示された、本発明に係るセンサ装置1Aの位置では、ディスク20Aとして構成された第1の測定値検出部20Aの基体22Aが、鉢状の窪みが設けられているディスク30Aとして構成されている第2の測定値検出部30の陥入部34内に埋没している。問題のない埋没を可能にするために、第1の測定値検出部20の基体22Aの外周22.1は、所定の間隔を、第2の測定値検出部30の基体32A内の陥入部34の内側壁部34.1に対して有している。軸方向に運動する第2の測定値検出部30の回転運動を阻止し、かつ、軸方向運動14を可能にするために、少なくとも1つの、図示されてない係留手段が設けられている。
【0023】
図3から見て取れるように、コイル担体60Aの第1の実施例は、ディスクとして構成されているコイル担体60Aの中央開口部62の周囲に分散して配置されている、回転角度センサ40A用の、4つの第1の検出用コイル42Aと、コイル担体60Aの縁部に配置されている、距離センサ50A用の、周囲を囲んでいる1つの検出用コイル52Aとを含んでいる。
図4から見て取れるように、第1の測定値検出部20Aの第1の実施例は、基体22Aの中央開口部26に接している、円形リングセグメントとして構成されている、回転角度センサ40A用の第1の検出領域44Aを含んでいる。第2の測定値検出部30の第1の実施例は、周囲を囲んでいる円形リングとして構成されている、距離センサ50A用の第2の検出領域54Aを含んでいる。
【0024】
図5から見て取れるように、コイル担体60Aの第2の実施例は4つの、コイル担体60Aの中央開口部62の周りに分散して配置されている、回転角度センサ40A用の第1の検出用コイル42Aと、コイル担体60Aの縁部に配置されている、距離センサ50A用の、6つの検出用コイル52Aとを含んでいる。
図6から見て取れるように、第1の測定値検出部20Aの第2の実施例は、基体22Aの中央開口部26Aに接している、円形リングセグメントとして構成されている、回転角度センサ40A用の3つの第1の検出領域44Aを含んでいる。それら相互の角度関係は、整数倍に相当しない。第2の測定値検出部30の第2の実施例は、円形リングセグメントとして構成されている、距離センサ50A用の6つの第2の検出領域54Aを含んでいる。
【0025】
図7及び
図8からさらに見て取れるように、本発明に係るセンサ装置1Bの第2の実施例では、第1の測定値検出部20は鉢状の窪みが設けられているディスク20Bとして構成されている。ここでこの鉢状の窪みが設けられているディスクは、相対回動不能に、スリーブ16Bとして構成されている回転部材10と接続されている。図示の実施例では、鉢状の窪みが設けられているディスク20Bとして構成されている第1の測定値検出部20の基体22Bが、中央開口部26との、相対回動不能の接続を形成するために、スリーブ16Bとして構成されている回転部材10に押圧されている。第2の測定値検出部30は、本発明に係るセンサ装置1Bの第2の実施例では、ディスク30Bとして構成されている。
図7及び
図8からさらに読み取れるように、スリーブ16Bとして構成されている回転部材10に、雄ねじ16.1が刻み込まれている。この雄ねじに、ディスク30Bとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Bが、中央開口部36の内壁36.1に設けられている雌ねじ36.2によって、ねじ嵌めされており、軸方向に誘導される。本発明に係るセンサ装置1Bの
図7に示された第1の位置は、回転部材10の右側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部30の端面38と、コイル担体60Bの表面との間に、最大距離h1を有している。本発明に係るセンサ装置1Bの、
図8に示された第2の位置は、回転部材10の左側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部30の端面38と、コイル担体60Bの表面との間に、最短距離h2を有している。
図7及び
図8からさらに見て取れるように、ディスク30Bとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Bは、位置とは無関係に、鉢状の窪みが設けられているディスク20Bとして構成されている第1の測定値検出部20の陥入部24内に埋没している。問題のない埋没又は軸方向の移動を可能にするために、第2の測定値検出部30の基体32Bの外周32.1は、所定の間隔を、第1の測定値検出部20の基体22B内の陥入部24の内側壁部24.1に対して有している。軸方向に運動する第2の測定値検出部30の回転運動を阻止し、かつ、軸方向運動14を可能にするために、少なくとも1つの係留手段7が設けられている。図示の実施例では、この係留手段7は、2つのピンを有している。これらのピンは、第2の測定値検出部30の基体32B内の対応する開口部を通って延在している。
【0026】
図9から見て取れるように、コイル担体60Bの第3の実施例は、ディスクとして構成されているコイル担体60Bの縁部に分散して配置されている、回転角度センサ40B用の6つの第1の検出用コイル42Bと、コイル担体60Bの中央開口部62の周囲に、周囲を囲んで配置されている、距離センサ50B用の、1つの第2の検出用コイル52Bとを含んでいる。
図4から見て取れるように、第1の測定値検出部20の第3の実施例は、円形リングセグメントとして構成されている、回転角度センサ40B用の第1の検出領域44Bを含んでいる。第2の測定値検出部30の第3の実施例は、基体32Bの中央開口部36に接している、周囲を囲んでいる円形リングとして構成されている、距離センサ50B用の第2の検出領域54Bを含んでいる。
【0027】
図11から見て取れるように、コイル担体60Bの第4の実施例は、コイル担体60Bの縁部に分散して配置されている、回転角度センサ40B用の6つの第1の検出用コイル42Bと、コイル担体60Bの中央開口部62の周囲に配置されている、距離センサ50B用の、4つのコイル52Bとを含んでいる。
図12から見て取れるように、第1の測定値検出部20の第4の実施例は、円形リングセグメントとして構成されている、回転角度センサ40B用の4つの第1の検出領域44Bを含んでいる。それらの相互の角度関係は、整数倍に相当しない。第2の測定値検出部30の第4の実施例は、基体22Bの中央開口部26に接している、円形リングセグメントとして構成されている、距離センサ50B用の4つの第2の検出領域54Bを含んでいる。
【0028】
図13及び
図14からさらに見て取れるように、本発明に係るセンサ装置1Cの第3の実施例では、第1の測定値検出部20は、第2の実施例と同様に、鉢状の窪みが設けられているディスク20Cとして構成されている。ここで、この鉢状の窪みが設けられているディスクは、相対回動不能に、スリーブ16Cとして構成されている回転部材10と接続されている。図示の実施例では、鉢状の窪みが設けられているディスク20Cとして構成されている第1の測定値検出部20の基体22Cは、中央開口部26との、相対回動不能の接続を形成するために、スリーブ16Cとして構成されている回転部材10に押圧されている。第2の測定値検出部30は、本発明に係るセンサ装置1Cの第3の実施例では、第1の実施例と同様に、ディスク30Cとして構成されている。第2の実施例とは異なり、スリーブ16Cとして構成されている回転部材10は、雄ねじを有していない。ディスク30Cとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Cは、中央開口部36の内壁36.1で、遊びを伴って、スリーブ16Cとして構成されている回転部材10で誘導される。さらに、鉢状の窪みが設けられているディスク20Cとして構成されている第1の測定値検出部20の基体22Cは、陥入部24の内側壁部24.1で雌ねじ24.2を有している。この中に、ディスク30Cとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Cの外周32.1に配置されている雄ねじ32.2がねじ嵌めされており、軸方向に誘導される。本発明に係るセンサ装置1Cの、
図13に示された第1の位置は、回転部材10の右側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部30の端面38と、コイル担体60Cの表面との間に、最大距離h1を有している。本発明に係るセンサ装置1Cの、
図14に示された第2の位置は、回転部材10の左側ストッパに相当する。これは、第2の測定値検出部30の端面38と、コイル担体60Cの表面との間に、最短距離h2を有している。
図13及び
図14からさらに見て取れるように、ディスク30Cとして構成されている第2の測定値検出部30の基体32Cは、位置とは関係なく、鉢状の窪みが設けられているディスク20Cとして構成されている第1の測定値検出部20の陥入部24内に埋没している。軸方向に動く第2の測定値検出部30の回転運動を阻止し、軸方向運動14を可能にするために、少なくとも1つの係留手段7が設けられている。図示の実施例では、この係留手段7は、第2の実施例と同様に、2つのピンを有している。これらのピンは、第2の測定値検出部30の基体32C内の対応する開口部を通って延在している。
【0029】
距離センサによって、複数回の回転に対する距離情報を検出するためのねじ山を極めて粗く設計することができる。なぜなら、正確な角度位置(0°乃至360°)が、回転角度センサによって回転から特定されるからである。それにも拘わらず、この距離情報を介して、求められた回転角度をさらに妥当性検査することも可能である。さらに、コイル装置が複数の検出領域と重なっていること、並びに、評価ユニット及び制御ユニットによって、複数の検出用コイルを別個に読み出し、評価することが可能であることによって、回転角度情報の冗長性が得られる。これによって、多数のバリエーションが生じる。従って、例えば、距離変化に関する情報を角度情報と組み合わせることができる。さらに、様々な数のコイルを用いることができる。さらに、これらのコイルを同時に又は順次連続して(多重化)読み出すことができる。これらのコイルは例えばそれぞれ個々に、評価及び制御ユニットと接続可能である。択一的に、これらのコイルを、それらの接続端子を介して全体で、又は、部分的にまとめて、評価及び制御ユニットに案内することができる。
【0030】
本発明の実施形態は、回転運動を機械的な距離変化に移行させることによって、回転部材の複数回の回転時にも常に明確な回転位置を提供する、車両内の回転部材の回転角度を検出するセンサ装置を実現する。有利には、電子回路の故障時に、変化した機械的な距離位置の形態で回転運動が継続して得られる。この機械的な距離変化に基づいて、点火装置オフ後にも又はバッテリの切り離し後にも、正確で絶対的な回転角度が得られる。ここでは同時に、特に確実な動作又は回転角度の特に確実な識別が可能である。