【実施例】
【0064】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0065】
[実験例1:BN1001菌単体と、BN1001菌及び納豆菌の混合物との比較]
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)BN1001菌(受託番号 FERM P−11132)単体と、BN1001菌及び納豆菌の混合物との特性を比較した。
【0066】
(カタラーゼ活性の比較)
表1に示す組成の培地を用いて、BN1001菌単体並びにBN1001菌及び納豆菌の混合物をそれぞれ培養した。対数増殖期に各培養液を回収し、新しい培地を用いて菌の濃度(OD
600)が0.5となるように調整した。
【0067】
【表1】
【0068】
続いて、3%過酸化水素水を5mLずつ入れた試験管を2本用意し、一方に上記のBN1001菌単体の培養液1mLを添加し、もう一方に上記のBN1001菌及び納豆菌の混合培養液1mLを添加した。その結果、菌が産生したカタラーゼにより過酸化水素が分解されて酸素の泡が発生した。
図1は、カタラーゼ活性試験の結果を示す写真である。図中、右側の試験管はBN1001菌単体の結果を示し、左側の試験管は、BN1001菌及び納豆菌の混合物の結果を示す。
【0069】
その結果、BN1001菌及び納豆菌の混合物は、BN1001菌単体と比較して、カタラーゼ活性が格段に高いことが明らかとなった。
【0070】
また、この結果は、BN1001菌単体とBN1001菌及び納豆菌の混合物とが、異なる菌学的性質を有することを示す。
【0071】
(生育速度の比較)
上述した表1に示す組成の培地に1.5質量%の寒天を加えてシャーレ内で固化させ、寒天培地を調製した。
【0072】
また、上述した表1に示す組成の培地を用いて、BN1001菌単体並びにBN1001菌及び納豆菌の混合物をそれぞれ培養した。対数増殖期に各培養液を回収し、新しい培地を用いて菌の濃度(OD
600)が0.5となるように調整した。
【0073】
上記の寒天培地にこれらの培養液をそれぞれ50μLずつ接種し、30℃のインキュベーター内で6時間培養し、菌の増殖の度合いを検討した。
図2は、培養6時間後の寒天培地の写真である。図中、左側のシャーレはBN1001菌単体の結果を示し、右側のシャーレは、BN1001菌及び納豆菌の混合物の結果を示す。
【0074】
その結果、BN1001菌及び納豆菌の混合物は、BN1001菌単体と比較して、増殖速度が格段に速いことが明らかとなった。
【0075】
(排水処理能力の比較)
魚貝類、海藻類の佃煮を製造している食品工場から排出された排水を試料として、排水処理能力を比較した。
【0076】
まず、上述した表1に示す組成の培地を用いて、BN1001菌単体並びにBN1001菌及び納豆菌の混合物をそれぞれ培養した。対数増殖期に各培養液を回収し、新しい培地を用いて菌の濃度(OD
600)が0.5となるように調整した。
【0077】
500mLの三角フラスコ2個に、それぞれ、上記の排水200mLを入れた。これらの三角フラスコに、上記の培養液をそれぞれ1mLずつ添加し、室温で、マグネチックスターラーを用いて連続撹拌することにより排水処理を行った。
【0078】
排水処理前の排水(排水原水)及び排水処理48時間後の排水について、pH、生物学的酸素要求量(BOD)、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)を測定した。pHは、JIS K0102.12.1にしたがって測定した。BODは、JIS K0102.21及び32.3にしたがって測定した。n−ヘキサン抽出物質量は、環境庁告示64号(「排水基準を定める省令の規定に基づく環境大臣が定める排水基準に係る検定方法」公布日:昭和49年9月30日)の付表4に記載された方法にしたがって測定した。
【0079】
結果を表2に示す。表2中、pHについては処理率としてpHの上昇量を記載した。排水原水のpHは3.7であった。BN1001菌を用いて48時間排水処理を行った結果、pHは1.5上昇し、5.2となった。一方、BN1001菌及び納豆菌の混合物を用いて48時間排水処理を行った結果、pHは3.1上昇し、6.8となった。
【0080】
また、排水原水のBODは2200mg/Lであった。BN1001菌を用いて48時間排水処理を行った結果、BODは730mg/Lに減少した。BODの処理率は67%であった。一方、BN1001菌及び納豆菌の混合物を用いて48時間排水処理を行った結果、BODは450mg/Lに減少した。BODの処理率は80%であった。
【0081】
また、排水原水のn−ヘキサン抽出物質量は110mg/Lであった。BN1001菌を用いて48時間排水処理を行った結果、n−ヘキサン抽出物質量は75mg/Lに減少した。n−ヘキサン抽出物質の処理率は32%であった。一方、BN1001菌及び納豆菌の混合物を用いて48時間排水処理を行った結果、n−ヘキサン抽出物質量は30mg/Lに減少した。n−ヘキサン抽出物質量の処理率は73%であった。
【0082】
このように、BN1001菌及び納豆菌の混合物は、BN1001菌単体と比較して、pH上昇率、BOD処理率、n−ヘキサン抽出物質の処理率のいずれにおいても格段に高い排水処理能力を示した。
【0083】
【表2】
【0084】
(その他の性質について)
BN1001菌及び納豆菌の混合物の菌学的性質を解析した結果、BN1001菌及び納豆菌の混合物は、pH3〜9で生育可能であることが明らかとなった。また、BN1001菌及び納豆菌の混合物は、10〜50℃で生育可能であることが明らかとなった。
【0085】
[実験例2:組成物及び担体の製造]
(製造例1:液状の組成物)
水道水15Lに、グルコース75g、肉エキス105g、ペプトン150g、塩化ナトリウム45gを溶解させ、pHを7.2に調整して培地を調製した。調製した培地を容量30Lのジャーファーメンターに入れ、121℃で30分間滅菌した。続いて、滅菌後の培地を冷却させた後に、あらかじめ前培養しておいたバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)BN1001菌(受託番号 FERM P−11132)及び納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)を接種し、30℃で24時間通気撹拌培養した。得られた培養液を、液状形態の組成物とした。
【0086】
(製造例2:粉末形態の組成物(担体))
水道水15Lに、グルコース75g、肉エキス105g、ペプトン150g、塩化ナトリウム45gを溶解させ、pHを7.2に調整して培地を調製した。調製した培地を121℃で30分間滅菌した。続いて、滅菌後の培地を冷却させ、あらかじめ前培養しておいたバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)BN1001菌(受託番号 FERM P−11132)及び納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)を接種し、30℃で24時間通気撹拌培養した。続いて、得られた培養液に、パーライトを加えて混合し、更にこれを乾燥後粉砕することにより、粉末形態の組成物(担体)1.3kgを得た。この組成物(担体)に含まれる生菌数は8×10
9個/gであった。
【0087】
(製造例3:粉末形態の組成物(担体))
市販大豆粕1kgにpHを7に調整したコーンスティープリカー500g、水道水300gを加え、よく混合して培地を調製した。調製した培地を121℃で60分間滅菌した。続いて、滅菌後の培地を冷却させ、あらかじめ前培養しておいたバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)BN1001菌(受託番号 FERM P−11132)及び納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)を接種し、30℃で120時間通気撹拌培養した。続いて、得られた培養液に、炭酸カルシウムを加えて混合し、粉末形態の組成物(担体)1.6kgを得た。この組成物(担体)に含まれる生菌数は8×10
9個/gであった。
【0088】
(製造例4:担体)
製造例2の粉末形態の組成物(担体)を、プラスチック製の容器に封入して、ボール形状の担体を製造した。プラスチック製の容器は、粉末形態の組成物(担体)を容器内に留めることが可能な大きさの多数の穴を有しており、生物処理槽に添加した場合には、排水と担体が接触するようにした。
【0089】
[実験例3:本発明の方法と活性汚泥法との比較]
表3に示す生分解性人工原水を試料として、本発明の方法と活性汚泥法について生分解性バッチテストを行い、人工原水処理能力を比較した。
【0090】
【表3】
【0091】
まず、本発明の方法を用いて実験を行った。表3に示す組成の人工原水に製造例1の組成物を添加して10ppmとし、固定接触曝気槽(容量500L)に導入した。
【0092】
人工原水及び3週間後の処理水について、pH、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)を測定した。
【0093】
次に、活性汚泥法を用いて実験を行った。表3に示す組成の人工原水を活性汚泥槽(容量500L)に導入した。
【0094】
3週間後の処理水について、pH、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)を測定した。
【0095】
結果を表4に示す。表4中、pHについては処理率としてpHの上昇量を記載した。人工原水のpHは5.5であった。本発明の方法を用いて3週間処理を行った結果、pHは1.7上昇し、7.2となった。一方、活性汚泥法を用いて3週間処理を行った結果、pHは1.5上昇し、7.0となった。
【0096】
また、人工原水のBODは2400mg/Lであった。本発明の方法を用いて3週間処理を行った結果、BODは41mg/Lに減少した。BODの処理率は98.3%であった。一方、活性汚泥法を用いて3週間処理を行った結果、BODは150mg/Lに減少した。BODの処理率は93.8%であった。
【0097】
また、人工原水のCODは1600mg/Lであった。本発明の方法を用いて3週間処理を行った結果、CODは130mg/Lに減少した。CODの処理率は91.9%であった。一方、活性汚泥法を用いて3週間処理を行った結果、CODは300mg/Lに減少した。CODの処理率は81.3%であった。
【0098】
また、人工原水のn−ヘキサン抽出物質量は280mg/Lであった。本発明の方法を用いて3週間処理を行った結果、n−ヘキサン抽出物質量は5mg/Lに減少した。n−ヘキサン抽出物質の処理率は98.2%であった。一方、活性汚泥法を用いて3週間処理を行った結果、n−ヘキサン抽出物質量は19mg/Lに減少した。n−ヘキサン抽出物質量の処理率は93.2%であった。
【0099】
このように、本発明の方法は、活性汚泥法と比較して、pH上昇率、BOD処理率、COD処理率、n−ヘキサン抽出物質の処理率のいずれにおいても高い人工原水処理能力を示した。
【表4】
【0100】
[実験例4:排水処理システムへの適用]
実際の食品工場の排水処理システムに、上述した組成物または担体を適用し、排水処理能力を検討した。
【0101】
(適用例1)
粉末調味料を製造している食品工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0102】
図3Aは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり600m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、調整槽(容量100m
3)に導入した。続いて、調整槽から排出された排水を固定接触槽(容量200m
3)に導入した。固定接触槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、固定接触槽から排出された排水を2つの回分槽(容量はいずれも500m
3)に導入した。続いて、回分槽から排出された処理水を河川に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は2.2日であった。
【0103】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。BOD及びn−ヘキサン抽出物質量は上述したものと同様にして測定した。SSは、環境庁告示59号(「水質汚濁に係る環境基準について」公布日:昭和46年12月28日)の付表8に記載された方法にしたがって測定した。CODは、JIS K0102.17にしたがって測定した。T/Nは、JIS K0102.45.2にしたがって測定した。T/Pは、JIS K0102.46.3.1にしたがって測定した。
【0104】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(a)に示す。表5中、pHについては処理率としてpHの上昇量を記載した。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、余剰汚泥の発生が減少した。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0105】
(適用例2)
洋菓子を製造している食品工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0106】
図3Bは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり120m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、流動調整槽(容量58m
3)に導入した。流動調整槽は、スポンジ状の担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または流動床方式用の担体を含んでおり、前記担体は、調整槽内で流動するようにした。続いて、流動調整槽から排出された排水を固定接触槽(容量16m
3)に導入した。固定接触槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、固定接触槽から排出された排水を活性汚泥槽(容量221m
3)に導入した。続いて、活性汚泥槽から排出された排水を沈殿槽(容量33m
3)に導入した。続いて、沈殿槽から排出された処理水を河川に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は2.8日であった。
【0107】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0108】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(b)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、汚泥の発生が減少した。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0109】
(適用例3)
牛豚惣菜を製造している食品工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0110】
図3Cは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり60m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、調整槽(容量40m
3)に導入した。続いて、調整槽から排出された排水を流動接触曝気槽(容量96m
3)に導入した。流動接触曝気槽は、スポンジ状の担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または流動床方式用の担体を含んでおり、前記担体は、流動接触曝気槽内で流動するようにした。続いて、流動接触曝気槽から排出された排水を回分槽(容量112m
3)に導入した。続いて、回分槽から排出された処理水を河川に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は4.2日であった。
【0111】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0112】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(c)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、余剰汚泥の発生が減少した。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0113】
(適用例4)
和惣菜を製造している食品工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0114】
図3Dは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり500m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、流動調整槽(容量200m
3)に導入した。流動調整槽は、スポンジ状の担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または流動床方式用の担体を含んでおり、前記担体は、調整槽内で流動するようにした。続いて、流動調整槽から排出された排水を第1の固定接触槽(容量200m
3)に導入した。第1の固定接触槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、第1の固定接触槽から排出された排水を第2の固定接触槽(容量200m
3)に導入した。第2の固定接触槽の構成は第1の固定接触槽の構成と同様であった。続いて、第2の固定接触槽から排出された処理水を下水に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は1.2日であった。
【0115】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0116】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(d)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、沈殿汚泥が減少し、搬出の必要がなくなった。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0117】
(適用例5)
米飯工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0118】
図3Eは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり200m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、調整槽(容量63m
3)に導入した。続いて、調整槽から排出された排水を第1の固定接触槽(容量72m
3)に導入した。第1の固定接触槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、第1の固定接触槽から排出された排水を第2の固定接触槽(容量107m
3)に導入した。第2の固定接触槽の構成は第1の固定接触槽の構成と同様であった。続いて、第2の固定接触槽から排出された排水を第3の固定接触槽(容量49m
3)に導入した。第3の固定接触槽の構成は第1の固定接触槽の構成と同様であった。続いて、第3の固定接触槽から排出された処理水を下水に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は1.4日であった。
【0119】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0120】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(e)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、沈殿汚泥が減少し、搬出の必要がなくなった。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0121】
(適用例6)
米飯工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0122】
図3Fは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり60m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、調整槽(容量55m
3)に導入した。続いて、調整槽から排出された排水を第1の固定接触槽(容量62m
3)に導入した。第1の固定接触槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、第1の固定接触槽から排出された排水を活性汚泥槽(容量62m
3)に導入した。続いて、活性汚泥槽から排出された排水を第2の固定接触槽(容量41m
3)に導入した。第2の固定接触槽の構成は第1の固定接触槽の構成と同様であった。続いて、第2の固定接触槽から排出された処理水を下水に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は3.7日であった。
【0123】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0124】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(f)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、沈殿汚泥が減少し、搬出の必要がなくなった。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0125】
(適用例7)
麺工場の排水処理システムに、製造例1の組成物を適用した。
【0126】
図3Gは、本適用例の排水処理システムの概要を示すフロー図である。本工場では、1日あたり220m
3の排水を排出していた。排水処理システムの構成は次の通りとした。まず、排水原水に製造例1の組成物を添加し、固定接触調整槽(容量140m
3)に導入した。固定接触調整槽は、固定された担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または固定床方式用の担体を含んでいた。続いて、固定接触調整槽から排出された排水を流動接触曝気槽(容量280m
3)に導入した。流動接触曝気槽は、スポンジ状の担体に保持されたBN1001菌及び納豆菌、または流動床方式用の担体を含んでおり、前記担体は、流動接触曝気槽内で流動するようにした。続いて、流動接触曝気槽から排出された排水を沈殿槽(容量50m
3)に導入した。続いて、沈殿槽から排出された処理水を河川に放流した。本排水処理システムでは、排水の滞留期間は2.1日であった。
【0127】
排水原水及び処理水について、pH、BOD、n−ヘキサン抽出物質量(n−Hex)、浮遊物質濃度(SS)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T/N)、全リン(T/P)を測定した。
【0128】
各項目の測定値及び排水処理の処理率を表5(g)に示す。本組成物の適用により、適用前と比較して、排水からの悪臭が減少した。また、沈殿汚泥が減少し、搬出の必要がなくなった。また、排水のpH調整が不要となった。
なお、製造例2または3の粉末形態の組成物(担体)を水に溶解させて得られた液状の組成物を適用しても、同様の結果が得られた。
【0129】
【表5】
【0130】
[実験例5:消臭]
レストランの排水処理システムにおいて、硫化水素が発生し、問題となっていた。そこで、前記排水処理システムに、製造例1の組成物と製造例4の担体を併用して適用し、発生する硫化水素濃度の変化を測定した。
【0131】
図4は、排水処理システムから発生する硫化水素の濃度、及び排水処理システムの生物処理槽の温度の変化を示すグラフである。
図4中の矢印は、排水処理システムに、製造例1の組成物と製造例4の担体を併用して適用した時点を示す。製造例1の組成物と製造例4の担体を併用して適用した後、約8時間で硫化水素の発生がほとんど消失した。この結果は、BN1001菌及び納豆菌を含有する組成物、またはBN1001菌及び納豆菌を担持させた担体が、消臭に高い効果を有することを示す。