特許第6192868号(P6192868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6192868
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20170828BHJP
【FI】
   H01M8/06 S
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-79321(P2017-79321)
(22)【出願日】2017年4月12日
【審査請求日】2017年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−212687(JP,A)
【文献】 特開平09−223510(JP,A)
【文献】 特開平08−293316(JP,A)
【文献】 特開2008−243591(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/081233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと改質水とを供給して発電を行うと共に、水分を含んだ排ガスを排出する燃料電池と、
前記燃料電池を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ前記筐体の外部から前記筐体の内部に外気を導入する外気導入用換気口と、前記筐体の内部の空気を前記筐体の外部に排出する換気ファンと、前記筐体の内部における前記換気ファンの上流側に配置され、前記筐体の内部の空気と前記排ガスとを混合する管形状、または両側が開放された箱状に形成された混合部と、前記混合部よりも小径とされて前記混合部の側部に接続され、前記燃料電池から排出される前記排ガスを前記混合部の内部に送る排ガス配管と、を有し、前記混合部内の空間で前記筐体の内部の空気と前記排ガスとを混合して前記筐体の外部に排出する排ガス排出装置と、
を有する燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力と湯の供給が可能な燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等に用いる従来の燃料電池システムとして以下のものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−002093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池システムでは、燃料電池から水蒸気を含んだ排気が排出されるため、システム外、即ち、大気に排気を排出すると、急激な温度低下によって排気中の水分が結露して目に見える白い湯気が発生する場合がある。湯気は、たとえば、パッケージ外壁への結露発生の原因等になる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、目に見える白い湯気の排出を抑制可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の燃料電池システムは、燃料ガスと改質水とを供給して発電を行うと共に、水分を含んだ排ガスを排出する燃料電池と、前記燃料電池を収容する筐体と、前記筐体に設けられ前記筐体の外部から前記筐体の内部に外気を導入する外気導入用換気口と、前記筐体の内部の空気を前記筐体の外部に排出する換気ファンと、前記筐体の内部における前記換気ファンの上流側に配置され、前記筐体の内部の空気と前記排ガスとを混合する管形状、または両側が開放された箱状に形成された混合部と、前記混合部よりも小径とされて前記混合部の側部に接続され、前記燃料電池から排出される前記排ガスを前記混合部の内部に送る排ガス配管と、を有し、前記混合部内の空間で前記筐体の内部の空気と前記排ガスとを混合して前記筐体の外部に排出する排ガス排出装置と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、燃料ガスと改質水とを燃料電池に供給することで、燃料電池は発電を行うと共に、水分を含んだ排ガスを排出する。
【0008】
排ガス排出装置は、筐体の内部の空気と排ガスとを混合して筐体の外部に排出する。なお、燃料電池から排出される排ガスは、外気と比べて高温であり、かつ水分を含んでいるが、排ガスに、排ガスに比べて低温で、かつ相対湿度の低い筐体の内部の空気を混合して排ガスの相対湿度を低下させるため、筐体の外部においては、温度を低下させ相対湿度の低下した排ガスと外気との温度差が小さくなり、筐体の外部に排出される排気中の水分が結露し難くなり、その結果、目に見える白い湯気の排出を抑制することができる。
【0010】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、筐体の外部の外気が外気導入用換気口から筐体の内部に導入され、排ガスは、筐体の内部の空気と混合部で混合されて温度が低下され相対湿度が低下され、その後、換気ファンによって筐体の外部へ排出される。
即ち、燃料電池によって暖められた筐体の内部の空気と排ガスとが換気ファンによって筐体の外部へ排出されるので、筐体の内部の空気を外部へ排出するための換気ファンと、排ガスを外部へ排出するための換気ファンの2つの換気ファンを用いなくて済み、換気ファンの数が増えて構成が複雑にならない。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の燃料電池システムによれば、目に見える白い湯気の排出を抑制可能となる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す構成図である。
図2】燃料電池モジュールの構成を示す構成図である。
図3】東京都の1年間(12ヶ月)における外気温と外気相対湿度との関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム10を図1乃至図3にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池システム10は、一例として住宅に適用されるものである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム10は、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12、及び冷媒タンク付き燃料電池ユニット12とは別体とれたバックアップ熱源機ユニット14の2ユニットで構成されている。冷媒タンク付き燃料電池ユニット12、及びバックアップ熱源機ユニット14は、一例として、屋外のコンクリート等で形成された基礎の上、ベランダ等に設置することができる。
【0015】
(冷媒タンク付き燃料電池ユニットの構成)
冷媒タンク付き燃料電池ユニット12は、筐体16の内部に、発電を行うと共に排ガスを排出する発電部17、排ガスによって冷媒W2を加熱する冷媒加熱部19、及び冷媒W2によって上水を加熱する上水加熱部21が設けられている。
【0016】
冷媒タンク付き燃料電池ユニット12は、第2の筐体としての筐体16の内部に、都市ガス、空気(酸素)、及び改質水W1が供給されて発電を行う燃料電池モジュール18、都市ガスを燃料電池モジュール18に供給する燃料ガス管20、燃料ガス管20の中間部に設けられ都市ガス中に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫器22、燃料電池モジュール18に供給する改質水W1を貯留する改質水タンク24、改質水タンク24の改質水W1の液面レベルを測定する液面レベルセンサ24A、改質水タンク24と燃料電池モジュール18とを連結する改質水供給管26、改質水タンク24の改質水W1を燃料電池モジュール18に供給するための改質水ポンプ28、空気ブロワ86が設けられた酸化ガス管88等が収容されており、発電部17は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0017】
また、筐体16の内部には、冷媒W2を貯留する冷媒タンク30、燃料電池モジュール18から排出された排ガスと冷媒W2との間で熱交換を行う排気熱交換器31、燃料電池モジュール18と排気熱交換器31とを接続する第1排ガス管32、排気熱交換器31を通過した排ガスを排出するための第2排ガス管34、排気熱交換器31の内部で生成された水分(排気熱交換器31の内部で凝集された排ガス中の水分)を改質水タンク24へ排出するための排水管35、冷媒タンク30の底部と排気熱交換器31とを連結し冷媒タンク30の冷媒W2を排気熱交換器31へ供給するための第1送出し側配管36、冷媒タンク30の天井壁30Aと排気熱交換器31とを連結し、排気熱交換器31を通過した冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための第1戻し側配管38、第1送出し側配管36に設けられて冷媒タンク30の冷媒W2を排気熱交換器31側へ送り出すための熱回収ポンプ40、第1送出し側配管36に設けられて冷媒W2の熱を外部に放出可能とするラジエータ42、ラジエータ42に送風を行うラジエータファン43が収容されており、冷媒加熱部19は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0018】
また、筐体16の内部には、冷媒タンク30の冷媒W2と外部から供給された上水との間で熱交換を行う上水熱交換器44、冷媒タンク30の上部に連結され冷媒タンク30と上水熱交換器44とを連結する第2送出し側配管46、上水熱交換器44を通過した冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための第2戻し側配管48、第2戻し側配管48に設けられて冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための予熱ポンプ50、外部(上水道)から供給された上水を上水熱交換器44に供給する上水供給配管52、上水供給配管52の中間部から分岐された上水分岐配管54、上水熱交換器44を通過した上水を排出する給湯配管56、給湯配管56の中間部から分岐され、上水熱交換器44を通過した上水を冷媒タンク30へ供給する給湯分岐配管58、給湯分岐配管58に設けられ冷媒タンク30へ供給する上水の量を調整する補水弁60、給湯配管56から供給された暖められた上水と上水分岐配管54から供給された上水(冷たい)とを混合する混合弁62、混合弁62から筐体16の外部へ上水を排出する上水排出配管64等が収容されており、上水加熱部21は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0019】
筐体16には、筐体16の外部から筐体16の内部に外気を導入する外気導入用換気口142が設けられている。外気導入用換気口142は、例えば、筐体16の側部下方に設けることができるが、他の部位に設けてもよい。また、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12は、筐体16の内部の空気を筐体16の外部に排出する換気ファン140を備えている。換気ファン140は、例えば、外気導入用換気口142とは反対側の側壁の上部に設けることができるが、他の部位に設けてもよい。
【0020】
筐体16の内部には、換気ファン140の上流側に、筐体16の内部の空気と排ガスとが混合される混合部170が設けられている。混合部170は、例えば、大径の管形状に形成されていてもよく、両側が開放された箱状に形成されていてもよく、筐体16の内部の空気と排ガスとを混合可能な空間を有していれば特に形状は問わない。
【0021】
この混合部170には、排気熱交換器31を通過した排ガスが排出される第2排ガス管34が接続されており、混合部170の内部で、排ガスと筐体16の内部の空気とを混合することができる。したがって、換気ファン140は、排ガスに筐体16の内部の空気を混合して筐体16の外部に排出することになる。
【0022】
なお、筐体16の内部には、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12に設けられた各種電装部品の制御を行う制御装置70が収容されている。
【0023】
また、筐体16の外部には、制御装置70に接続されて、外気温を測定する温度センサ65が設けられている。
【0024】
筐体16の内部には、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第1送出し側配管36、及び第1戻し側配管38で第1の循環経路118が形成されている。筐体16の内部には、冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第2送出し側配管46、及び第2戻し側配管48で第2の循環経路120が形成されている。また、筐体16の内部には、給湯配管56、及び上水排出配管64で給湯経路121が形成されている。
【0025】
本実施形態では、冷媒タンク30の冷媒W2として水(一例として水道水等)が用いられている。冷媒タンク30の天井壁30Aには、冷媒タンク30の内外を貫通し、空気の出入を可能とする連通部としての開口部33が形成されている。また、冷媒タンク30には、上部に空間が設けられるように冷媒W2が貯留されており、タンク内の冷媒W2が熱膨張して体積が増加した場合においても、開口部33から冷媒W2が溢れ出ないように、冷媒タンク30に注入する冷媒W2の体積が決められている。
【0026】
なお、本実施形態では、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第1送出し側配管36、及び第1戻し側配管38で第1の循環経路118が形成されている。冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2する経路、即ち、第2送出し側配管46、及び第2戻し側配管48で第2の循環経路120が形成されている。また、給湯配管56、及び上水排出配管64で給湯経路121が形成されている。
【0027】
図2に示すように、燃料電池モジュール18は、筐体71の内部に、改質触媒72、バーナ74、及び燃料電池スタック76を主要な構成として備えている。
【0028】
改質触媒72は、燃料ガス管20と接続されている。この改質触媒72には、脱硫器22にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスが燃料ガス管20を通じて供給される。この改質触媒72は、供給された都市ガス(原料ガス)を、改質水供給管26を通じて供給された改質水(凝縮水)W1を利用して水蒸気改質する。
【0029】
バーナ74には、後述するスタック排ガス管80が接続されている。このバーナ74は、スタック排ガス管80を通じて供給されたバーナガス(未反応の水素ガスを含むスタック排ガス)を燃焼し、改質触媒72を加熱する。そして、この改質触媒72では、脱硫器22から供給された都市ガス(原料ガス)から、水素ガスを含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、燃料ガス管75を通じて後述する燃料電池スタック76の燃料極78に供給される。
【0030】
燃料電池スタック76は、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セル81(図2では1つのみ図示)を有している。各燃料電池セル81は、電解質層82と、この電解質層82の表裏面にそれぞれ積層された燃料極78及び空気極84とを有している。
【0031】
空気極84(カソード極)には、空気ブロワ86が設けられた酸化ガス管88を通じて酸化ガス(筐体16の外部の空気)が供給される。この空気極84では、下記式(1)で示されるように、酸化ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層82を通って燃料極78に到達する。
【0032】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2− ・・・(1)
【0033】
一方、燃料極78では、下記式(2)及び式(3)で示されるように、電解質層82を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極78で生成された電子は、外部回路を通って空気極84に到達する。そして、このようにして電子が燃料極78から空気極84に移動することにより、各燃料電池セル81において発電される。また、各燃料電池セル81は、発電時に上記反応に伴って発熱する。
【0034】
(燃料極反応)
+O2− →HO+2e ・・・(2)
CO+O2− →CO+2e ・・・(3)
【0035】
燃料電池スタック76に接続されたスタック排ガス管80の上流側は、燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92に分岐されており、この燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92は、燃料極78及び空気極84にそれぞれ接続されている。燃料極78から排出された燃料極排ガスと、空気極84から排出された空気極排ガスとは、燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92を通じて排出されると共に、スタック排ガス管80内にて混合されてスタック排ガスとされる。このスタック排ガスは、燃料極排ガスに含まれる未反応の水素ガスを含んでおり、上述の通り、バーナ74にバーナガスとして供給される。なお、このバーナ74に、バーナ排ガスを排気熱交換器31へ排出する第1排ガス管32が接続されている。
【0036】
なお、図1に示す制御装置70は、インバーター68より電力が供給され、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の電装部品、例えば、改質水ポンプ28、熱回収ポンプ40、ラジエータファン43、予熱ポンプ50、補水弁60、混合弁62等の制御を行うことができる。
【0037】
(バックアップ熱源機ユニットの構成)
本実施形態のバックアップ熱源機ユニット14は、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12から供給された湯を更に加熱して排出可能とした潜熱回収型の熱源機である。図1に示すように、バックアップ熱源機ユニット14の第1の筐体93の内部には、二次熱交換器91、一次熱交換器94、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12からの湯を二次熱交換器91、一次熱交換器94に供給する配管96、一次熱交換器94を加熱する加熱装置としてのバーナ100、バーナ100に燃料ガスを供給する燃料ガス管102、熱交換器94を通った湯を排出する配管98、配管96の途中に接続された分岐管104と配管98とに接続された混合弁106、混合弁106から湯を排出する配管108、排出される湯の温度を計測する温度センサ109、制御装置110等が設けられている。制御装置110は、混合弁106、バーナ100等を制御する。なお、潜熱回収型の熱源機は、バーナ100の排気中の水蒸気を水(凝縮水)にすることにより、排気中の潜熱を回収して、熱効率を向上させたタイプの熱源機である。
【0038】
なお、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の燃料ガス管20、及びバックアップ熱源機ユニット14の燃料ガス管102には、都市ガスのガス供給管112が接続されている。
また、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の上水排出配管64とバックアップ熱源機ユニット14の配管96とは、接続配管114で接続されている。さらに、バックアップ熱源機ユニット14の配管108には、住宅の水機器に向けて湯を送る配管116が接続されている。
【0039】
(作用、効果)
次に、本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。
第一実施形態に係る燃料電池システム10では、改質触媒72から燃料ガスが燃料電池スタック76の燃料極78に供給されると共に、空気ブロワ86が作動して酸化ガス管88から酸化ガスとしての空気が燃料電池スタック76の空気極84に供給されると、この燃料電池スタック76において燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。
【0040】
この発電に伴い燃料電池スタック76からは、未反応の水素ガスを含むスタック排ガスが排出され、このスタック排ガスは、バーナガスとしてバーナ74にて燃焼され、このバーナ74からは、バーナ排ガスが排出される。このバーナ排ガスは、水蒸気を含んでおり、第1排ガス管32を通じて排気熱交換器31に供給される。
【0041】
この排気熱交換器31では、バーナ排ガスと冷媒タンク30から供給された冷媒W2との間で熱交換がなされ、冷媒W2が加熱されると共にバーナ排ガスに含まれる水蒸気が凝縮される。排気熱交換器31で生成された凝縮水(蒸留水)は、改質水W1として排水管35を介して改質水タンク24に回収される。改質水タンク24に回収された改質水は、改質水供給管26を通じて改質触媒72に供給され、この改質触媒72にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。
【0042】
ここで、燃料電池スタック76で発電をしている際には、換気ファン140が駆動される。換気ファン140が駆動されると、筐体16の内部の空気が外部に排出されて筐体16の内部が負圧になり、これにより、外気導入用換気口142を介して筐体16の内部に外気が流入する。
【0043】
このとき、排気熱交換器31から排出されたバーナ排ガスは、第2排ガス管34を介して混合部170に導入され、筐体16の内部の空気と混合されることで温度、及び相対湿度が低下する。そして、筐体16の内部の空気と混合されて温度、及び相対湿度の低下したバーナ排ガスは、換気ファン140によって筐体16の外部へ排出される。
【0044】
筐体16の外部へ排出されるバーナ排ガスは、混合部170に導入されるバーナ排ガスよりも温度が低下しているので、外気との温度差が小さくなる。したがって、筐体16の外部に排出されるバーナ排ガス中の水分は結露し難くなり、その結果、目に見える白い湯気の排出を抑制することができる。このように、目に見える白い湯気の排出を抑制することが出来るので、筐体16の外壁の結露の発生も抑制することができる。
【0045】
本実施形態の燃料電池システム10では、一例として、定格運転時において、燃料電池セル81から排出されるバーナ排ガスの温度が205℃、排気熱交換器31から排出されるバーナ排ガスの温度が48℃、外気の気温が9.8℃、外気の相対湿度が52%の、混合部170に吸引される筐体16内の空気の温度が25°C、混合部170に吸引される空気の量が0.75m/minである場合、バーナ排ガスに筐体16内の空気を混合することで、バーナ排ガスの温度を26℃まで低下させることができ、目に見える白い湯気の排出が抑制できた。
【0046】
図3は、東京都の1年間(12ヶ月)における外気温と外気相対湿度との関係を表したグラフである。白丸は各月の日平均気温であり、黒丸はその月の日最高気温である。
図3において、点の密度の濃い領域(排気相対湿度:100.00〜150.00RH%)、点の密度の薄い領域(排気相対湿度:0.0〜50.0RH%)、点の密度が中間の領域(50.0〜100.0RH%)の3つの領域が記載されているが、外部に排出される排気の排気相対湿度が0.0〜100.0RH%に収まっていれば、目に見える白い湯気が生じないことを表している。
【0047】
本実施形態の燃料電池システム10では、排気熱交換器31から排出されるバーナ排ガスの相対湿度が比較的高い場合であっても、排気熱交換器31から排出されるバーナ排ガスに筐体内の空気と混合することで、目に見える白い湯気の排出を抑制するように相対湿度を下げることができる。
【0048】
また、熱回収ポンプ40を作動させることで、第1の循環経路118は、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2を循環させるため、冷媒タンク30内の下側の冷媒W2は第1送出し側配管36を介して排気熱交換器31へ供給され、排気熱交換器31で加熱された後、冷媒タンク30の上側に戻り、これによって冷媒タンク内の冷媒W2の温度が上側から下側に向けて徐々に上昇する。
【0049】
ここで、本実施形態の燃料電池システム10では、発電に用いる改質水W1は、水蒸気を含んだバーナ排ガスから回収するため、バーナ排ガスを冷却する必要がある。その際、十分な量の水を回収するために、バーナ排ガスを一定温度以下まで冷却する必要がある。バーナ排ガスの冷却には、熱回収水(冷媒W2)と熱交換する方法をとるが、例えば、発電を行っており、かつ湯の使用利用が少ない場合などで、冷媒タンク30が満蓄になる等の状況により熱回収水温が上昇してくると、バーナ排ガスを十分には冷却できなくなり、十分な量の改質水W1を確保できなくなる。そのため、熱回収水の温度は一定温度以下に保つ必要があり、第1送出し側配管36に冷媒W2の熱を外部に放出可能とするラジエータ42、及びラジエータ42に送風を行うラジエータファン43を配置し、必要に応じて冷媒W2の冷却を行う。
【0050】
本実施形態の燃料電池システム10では、外気温を測定する温度センサ65からの温度測定データ、及び改質水タンク24の改質水W1の液面レベルを測定する液面レベルセンサ24A等からの測定データに基づいて、制御装置70は、外気温や、改質水W1の量に応じて熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を制御することができる。熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を作動させることで、排気熱交換器31に流入させる冷媒W2の温度を低下させることができ、これにより、排気熱交換器31で生成される改質水W1の量を増加させることができる。
【0051】
本実施形態の燃料電池システム10では、熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を制御することで、効率の良い熱回収を行うことができる。熱回収温度、即ち、排気熱交換器31から排出される冷媒W2の温度が高いほど、多くの熱を冷媒タンク30に蓄えることができるが、排気熱交換器31とバーナ排ガスとの温度差が小さくなるため、単位時間当たりの熱回収量は低下する。
【0052】
逆に、熱回収温度を低くすると、冷媒タンク30に蓄える熱は少なくなるが、排気熱交換器31においてバーナ排ガスと冷媒W2との温度差が大きくなるため、単位時間当たりに多くの熱を回収することができる。
【0053】
よって、冷媒タンク30の蓄熱量が少ないときには熱回収温度を低めに設定し、素早くバーナ排ガスの熱を回収し、冷媒タンク30が満蓄に近づいてきたら熱回収温度を上げて冷媒タンク30の蓄熱量を増やすことで、バーナ排ガスからの熱をより多く利用することが可能となる。
【0054】
本実施形態の燃料電池システム10では、冷媒タンク30の冷媒W2を給湯に用いておらず、冷媒W2と、給湯に用いる上水とを分離しているため、従来の燃料電池システムの様に湯の使用によって冷媒タンク30内の冷媒W2の量が変化することは無く、冷媒タンク30内の冷媒W2の量を制御する必要が無い。
【0055】
なお、冷媒タンク30の天井壁30Aには、内部と外部とを連通する開口部33が設けられているため、冷媒タンク30内の冷媒W2が温度上昇に伴って膨張しても、冷媒W2の上の空気は開口部33から外部へ排出されるので、タンク内の圧力上昇を抑制することができる。
【0056】
したがって、冷媒タンク30内の圧力上昇を抑えるために、冷媒タンク30内の冷媒W2を外部へ排出する必要が無い。即ち、冷媒タンク30から外部への排水が無いため、冷媒W2を外部へ排水するための経路を必要とせず、燃料電池システム10のコンパクト化を図ることができる。また、冷媒W2を外部へ排水するための経路を排水配管(下水)に繋ぐ現場工事も必要としない。
【0057】
また、暖められた冷媒タンク30の冷媒W2は、上水熱交換器44で、外部より供給された上水との間で熱交換を行うことができる。予熱ポンプ50を作動させることで、第2の循環経路120は、冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2を循環させるため、外部の上水道から供給された上水は、上水熱交換器44で加熱されて暖められる。
【0058】
混合弁62は、上水熱交換器44で加熱された上水に、外部の上水道から供給された冷たい上水を混合して排出することができ、また、上水熱交換器44で加熱された上水をそのまま排出することもできる。混合弁62は、制御装置70からの制御信号に基づいて、上水熱交換器44で加熱された上水と、外部の上水道から供給された冷たい上水との混合比を調整して排出することができる。
【0059】
なお、バックアップ熱源機ユニット14は、例えば、冷媒タンク30の冷媒W2の温度が低く、上水熱交換器44から排出される上水の温度が低い場合等に、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12から供給される上水を更に加熱することができる。また、バックアップ熱源機ユニット14は、図示しない住宅の風呂の追い炊きをする場合に使用することもできる。
【0060】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0061】
上記実施形態では、混合部170の中でバーナ排ガスと筐体16の内部の空気とを混合したが、バーナ排ガスと筐体16の内部の空気とを混合して外部に排出できれば、混合部170は設けなくてもよい。
【0062】
また、外気温が低くなると目に見える白い湯気が生じ易くなるので、例えば、外気温が低下した場合には、換気ファン140の回転数を上げて換気量を増やし、バーナ排ガスと混合する筐体16内の空気量を相対的に増やすことで、排出するバーナ排ガスの温度、及び相対湿度をより低下させる制御を行ってもよい。
【0063】
また、排気熱交換器31から排出されるバーナ排ガスの温度、湿度、排出量、外気の温度、湿度等をセンサーで検出し、センサーで得た情報に基づいて目に見える白い湯気の排出を抑制するように換気ファン140の回転数(送風量)を制御してもよい。これにより、目に見える白い湯気の抑制効果を高めることができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、燃料電池スタック76に供給する燃料ガスに都市ガスを用いた例を示したが、燃料ガスとしてプロパンガス等、都市ガス以外の可燃性ガスを用いることもできる。
【符号の説明】
【0065】
10 燃料電池システム
16 筐体
81 燃料電池セル(燃料電池)
140 換気ファン(排ガス排出装置)
142 外気導入用換気口(排ガス排出装置)
170 混合部(排ガス排出装置)


【要約】
【課題】目に見える白い湯気の排出を抑制可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料ガスと改質水とを供給して発電を行うと共に水分を含んだ排ガスを排出する燃料電池セル81と、燃料電池セル81を収容する筐体16と、筐体16の外部から取り入れた外気と排ガスとを混合して筐体16の外部に排出する混合部170、及び換気ファン140によって構成される排ガス排出装置と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3