(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、無機物粒子をHansenの溶解度パラメータのδD、δP、δHがそれぞれδD=16±3MPa
1/2、δP=9±3MPa
1/2、δH=6±3MPa
1/2である溶媒1に分散した無機物粒子分散体である。無機物粒子は、無機酸化物や無機水酸化物等の無機化合物であり、例えば酸化チタン、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等の無機酸化物又は無機水酸化物が挙げられる。無機物粒子としては、ルチル型酸化チタンを主成分としたものが好ましく、酸化チタン以外に酸化チタン粒子の結晶内部には、コバルト、アルミニウム、ケイ素、マンガン、リン、ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バナジウム、鉄、ニッケル、スズ、ジルコニウムなどの元素を更に含有してもよく、コバルト、アルミニウム、ケイ素及びマンガンの群から選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有すると耐候性を抑制することができるためより好ましい態様である。結晶内部に含有する元素の含有量は任意に設定することができ、コバルト、アルミニウム、ケイ素又はマンガンの含有量は、二酸化チタンに対して、コバルトをCoO、アルミニウムをAl
2O
3、ケイ素をSiO
2、マンガンをMnO
2の酸化物に換算した総量で表して0.01〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.05〜15重量%である。また、酸化チタンは、後述するように、有機物や無機物で処理してもよい。酸化チタンは、ルチル型結晶形を持つ微粒子状二酸化チタンが好ましく、1〜100nmの平均粒子径を有するものがより好ましい。溶媒1の分散体中の無機物粒子の含有量は適宜設定することができ、例えば、0.5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0010】
前記の無機物粒子は、その表面にシランカップリング剤及び/又は有機表面修飾剤を被覆してもよい。シランカップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを用いることができる。また、有機表面修飾剤は、溶媒、塗料、プラスチックスへの分散性及び塗膜の耐久性を一層向上させるためなどに用いるものであって、その目的に応じて有機表面修飾剤の種類は適宜選定することができ、例えば、シリコーン、レシチン、樹脂、粘材、シラン化合物、フッ素化合物、紫外線吸収材、多価アルコール、アミノ酸、色素、脂肪酸、カルボン酸塩、金属石鹸、油剤、ワックスなどを用いるのが好ましく、更に、効果の異なる複数の処理剤を組み合わせることも可能である。シランカップリング剤及び/又は有機表面修飾剤の処理量は、目的に応じて適宜設定することができ、無機物粒子に対して、有機物総量で表して0.1〜100重量%の範囲が適当である。無機物粒子の表面にシランカップリング剤及び/又は有機表面修飾剤を被覆するには、無機物粒子の分散体にシランカップリング剤等を添加して被覆したり、無機物粒子の粉体とシランカップリング剤等とを混合して被覆したり、必要に応じて酸やアルカリで中和したり加水分解したりしてもよい。
【0011】
また、無機物粒子は、前記の有機物の被覆に先立ち、あるいは、有機物の被覆に代えて、その表面に無機物の表面処理、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、コバルト及びマンガンの群から選ばれる少なくとも一種の元素の含水酸化物及び/又は酸化物(それぞれの元素の水酸化物を含む)を付着してもよく、この無機物表面処理の効果により、更に耐候性を改善することができるため好ましい態様である。特に、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、スズ、コバルト及びマンガンの群から選ばれる少なくとも一種の元素の含水酸化物及び/又は酸化物(それぞれの元素の水酸化物を含む)を付着するのが好ましい。この無機物表面処理の量は、無機物粒子に対して、各元素の酸化物(Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、SnO、CoO、MnO
2など)に換算した総量で表して0.1〜100重量%の範囲であり、好ましくは5〜20重量%の範囲である。無機物粒子の表面に無機物を処理するには、無機物粒子の分散体に無機化合物を添加して処理し、必要に応じて酸やアルカリで中和したり加水分解したりしてもよい。
【0012】
無機物粒子を分散させる溶媒1は、Hansenの溶解度パラメータのδD、δP、δHがそれぞれδD=16±3MPa
1/2、δP=9±3MPa
1/2、δH=6±3MPa
1/2であり、好ましくはδD=16±2MPa
1/2、δP=9±2MPa
1/2、δH=6±2MPa
1/2である。Hansenの溶解度パラメータは、ある物質がある物質にどのくらい溶けるのかを示す溶解性の指標であり、分散項δ
D、極性項δP、水素結合項δHの3つのベクトルで表される。分散項δ
Dはファンデルワールスの力、極性項δPはダイポール・モーメントの力、水素結合項δHは水、アルコールなどが持つ力である。無機物と溶媒の関係では、無機物のHansen溶解度パラメータのδD、δPが溶媒のそれらと近い値であるほど分散しやすいと考えられる。しかしながら、溶媒のHansen溶解度パラメータは概ね測定され文献(例えば、 Energy & Fuels 2008, 22, 3395-3401(以下文献1という)、Ind. Eng. Chem. Res. 2003, 42, 6511-6517(以下文献2という))に報告されている一方で、無機物のHansen溶解度パラメータを定義することは難しく、無機物がよく分散する溶媒の溶解度パラメータから、間接的に求める方法が知られているものの、一意的に決定されているものではない。しかしその中で例えば二酸化チタンのHansen溶解度パラメータとして、δD=17.02MPa
1/2、δP=9.2MPa
1/2、δH=13.2MPa
1/2が報告されており、他の無機酸化物や水酸化物などを表面被覆あるいは複合化させても大きく値は異ならない。このδD、δPはケトン系溶媒に近いことから、溶媒1としてケトン系溶媒が好ましい。また、二酸化チタン以外の無機物粒子に対してもケトン系溶媒が好ましい。具体的にはメチルエチルケトン及び/又はアセトンがより好ましい。メチルエチルケトンのHansen溶解度パラメータ(文献1)は、δD=16MPa
1/2、δP=9MPa
1/2、δH=5.1MPa
1/2である。アセトンのHansen溶解度パラメータ(文献1)は、δD=15.5MPa
1/2、δP=10.4MPa
1/2、δH=7MPa
1/2である。また、環状ケトンのシクロヘキサノンでもよく、そのHansen溶解度パラメータは、δD=17.8MPa
1/2、δP=8.5MPa
1/2、δH=5.1MPa
1/2である。また、前記の溶媒1はグリコールエステル系溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、そのHansenの溶解度パラメータは、δD=16.1MPa
1/2、δP=6.1MPa
1/2、δH=6.6MPa
1/2である。
【0013】
次に、本発明は、無機物粒子をHansenの溶解度パラメータのδD、δP、δHがそれぞれδD=16±3MPa
1/2、δP=9±3MPa
1/2、δH=6±3MPa
1/2である溶媒1に分散した後に溶媒置換して、前記の使用した溶媒1とは異なる溶媒2に分散した無機物粒子分散体である。溶媒2としては前記の工程1で使用した溶媒以外のものが使用でき、溶媒1として使用可能な溶媒を溶媒2として用いてもよい。溶媒2としては具体的には、アルコール系溶媒及び/又はエーテル系溶媒がより好ましい。アルコール系溶媒として例えば、メタノールのHansenの溶解度パラメータは、δD=14.7MPa
1/2、δP=12.3MPa
1/2、δH=22.3MPa
1/2であり、エタノールのそれ(文献1、2)は、δD=15.8MPa
1/2、δP=8.8MPa
1/2、δH=19.4MPa
1/2であり、2−アミノエタノールのそれは、δD=17.5MPa
1/2、δP=6.8MPa
1/2、δH=18MPa
1/2であり、エタノールがより好ましい。水のHansenの溶解度パラメータ(文献2)は、δD=19.5MPa
1/2、δP=17.8MPa
1/2、δH=17.6MPa
1/2である。溶媒2としてはHansenの溶解度パラメータのδHが10MPa
1/2より大きいものがより好ましく、有機溶媒に限らず、水溶媒あるいは有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。また、溶媒2としてグリコールエステル系溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。溶媒2分散体中の無機物粒子の含有量は適宜設定することができ、例えば、0.5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0014】
本発明は、無機物粒子分散体の製造方法であって、無機物粒子をHansenの溶解度パラメータのδD、δP、δHがそれぞれδD=16±3MPa
1/2、δP=9±3MPa
1/2、δH=6±3MPa
1/2である溶媒1に分散する工程1、次いで、前記の使用した溶媒1とは異なる溶媒2に溶媒置換する工程2を含む。本発明で用いる無機物粒子は、従来公知の方法で製造したものを用いることができ、例えば、無機塩やアルコキシドを加熱加水分解したり、中和したりして製造したろ過湿潤ケーキ、乾燥粉体や焼成粉体あるいは水等に分散した分散体を用いることができる。前記の無機物粒子がろ過湿潤ケーキ、乾燥粉体や焼成粉体の場合は、それを易分散の溶媒1に直接分散させることができる。無機物粒子を溶媒1に分散させるには、従来公知の分散機を用いた方法を用いることができ、撹拌分散機、ミキサー、ミル等の湿式分散機、超音波分散機等を用いる。例えば、湿式分散機として寿工業社製のウルトラアペックスミルが好ましい。無機物粒子が水に分散している場合は、水溶媒を溶媒1に置換して、無機物粒子を溶媒1に分散させることができる。水溶媒を溶媒1に置換するには、従来公知の溶媒置換の方法を用いることができ、水溶媒の分散体に溶媒1を混合し、加熱蒸留、真空蒸留、減圧濃縮等により水溶媒を除去する。分散体を製造する際には、必要に応じて湿式粉砕や分級処理してもよい。また、分散させる際に高分子分散剤等の分散剤を適宜添加してもよい。
【0015】
次に、溶媒1に分散させた分散体を前記の溶媒1とは異なる、難分散の溶媒2に溶媒置換する(工程2)。溶媒2に置換するには、従来公知の溶媒置換の方法を用いることができ、溶媒1の分散体に溶媒2を混合し、加熱蒸留、真空蒸留、減圧濃縮等により溶媒1を除去する。溶媒置換した後に、必要に応じて湿式粉砕や分級処理してもよい。また、溶媒置換した後に高分子分散剤等の分散剤を適宜添加してもよい。更に必要に応じて、このようにして製造した溶媒2の分散体を別の溶媒2に1〜3回程度置換してもよい。このように溶媒2から別の溶媒2に溶媒置換を行うことにより、より難分散の溶媒に分散することができるため好ましい。実施態様として、前記の溶媒1がケトン系溶媒であり、溶媒2がアルコール系溶媒及び/又はエーテル系溶媒であるのが好ましく、更に、前記の溶媒1がメチルエチルケトン及び/又はアセトンであり、溶媒2がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであるのが好ましい。
【0016】
なお、必要に応じて前記の工程1の後、及び/又は工程2の後に、無機物粒子の表面にケイ素含有化合物を処理してもよい(工程3)。ケイ素化合物としては、前記のシランカップリング剤、シラン化合物、シリコーンのほかに、ポリシロキサン、あるいは、前記のケイ素の含水酸化物及び/又は酸化物(水酸化物を含む)が好ましい。シランカップリング剤等の有機ケイ素化合物の処理量は、目的に応じて適宜設定することができ、無機物粒子に対して、有機物総量で表して0.1〜100重量%の範囲が適当である。また、無機ケイ素化合物の処理量は、無機物粒子に対してSiO
2に換算した量で表して0.1〜100重量%の範囲であり、好ましくは5〜20重量%の範囲である。なお、ケイ素含有化合物の処理のほかに、前記の有機物や無機物を処理してもよい。無機物粒子の表面にケイ素含有化合物を処理するには、無機物粒子の分散体にケイ素含有化合物を添加して処理したり、無機物粒子の粉体とケイ素化合物とを混合し被覆したり、必要に応じて酸やアルカリで中和したり加水分解したりしてもよい。
【0017】
このようにして製造した無機物粒子分散体は、それぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、更に各種の添加剤を配合して、例えばコーティング組成物(塗料、インキ組成物を含む)やフィルム等のプラスチック成形物などに使用することができる。コーティング組成物やインキ組成物の場合は、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合する。塗膜形成材料としては例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネートなどの無機系成分を用いることができ、インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂、塩素化プロピレン樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを用いることができ特に制限はないが、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。また、プラスチック成形物の場合は、プラスチック、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の無機物粒子とともに練り込み、フィルム状などの任意の形状に成形する。プラスチック成形物としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。各組成物中の無機物粒子の含有量は任意の量、好ましくは20重量%以上を配合するのが好ましい。
【0018】
このようにして製造した無機物粒子分散体あるいはコーティング剤、インキ組成物、プラスチック成形物は、種々の用途に用いることができる。例えば、優れた透明性を有するものであり、溶媒への分散安定性などにも優れていることから、透明塗料、保護皮膜形成用塗料、メタリック塗料、光学フィルム、光学部材、日焼け止め化粧料など種々の用途に利用することができる。無機物粒子に応じて高屈折率材料、中屈折率材料あるいは低屈折率材料を適宜選択することができ、透明性を有することから、種々の光学フィルム、光学部材として用いることができる。無機物粒子を配合した光学フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT等の表示装置、特に好適に液晶ディスプレイに用いられ、具体的には、反射防止性及び視認性に優れた反射防止フィルム、偏光フィルム等として用いられる。また、視野角によりカラーシフトする偽造防止フィルム、紫外線を遮蔽するフィルムなどにも適用することができる。また、光学部材は、カメラ、ビデオカメラ、カメラ付携帯電話、テレビ電話を始めとする撮像モジュール等の固体撮像素子、眼鏡レンズなどのレンズ等に用いることができる。あるいは、種々の固体撮像素子、眼鏡レンズなどのレンズ等の光学基材の表面に、その部材の機能を更に強化したり、保護したりするために種々の機能を備えた層(膜)の形成に用いることができる。例えば、レンズ基材の耐久性を確保するためのハードコート層、ゴーストやちらつきを防止するための反射防止層などの形成に用いることができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
(1)炭酸ナトリウム水溶液に四塩化チタンを添加して中和し、熟成してルチル型酸化チタンナノ粒子のスラリーを得た。スラリーを中和し、ろ過水洗脱水した後120℃で乾燥した。
次いで、前記のルチル型酸化チタンナノ粒子を粗粉砕した後、ルチル型酸化チタンに対して50重量部のシランカップリング剤(信越化学社製KBM503)を溶解したメチルエチルケトンをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業社製、0.03mmジルコニアビーズ400g)に投入し、周速:8m/s、10kg/hrの条件で循環運転しながら、前記ルチル型酸化チタンナノ粒子を徐々に添加して分散を行った。得られたルチル型酸化チタンナノ粒子メチルエチルケトン分散体を濃縮し、酸化チタンとして10重量%に調整して、ルチル型酸化チタンナノ粒子メチルエチルケトン分散体(試料A)を得た。
(2)次いで、試料Aをエタノールで希釈し、減圧濃縮することを繰り返して溶媒置換を行い、酸化チタンとして10重量%に濃度調整したルチル型酸化チタンナノ粒子エタノール分散体(試料A−1)を得た。
【0021】
実施例2
(1)実施例1の(1)と同様にして、酸化チタンメチルエチルケトン分散体を得、次いで、この分散体にエタノールを加えて希釈し、更にアンモニア水を添加し40℃に加熱した後、テトラエトキシシランを加え、48時間熟成して、シリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子を得た。テトラエトキシシランの添加量はSiO
2/TiO
2として10/100であった。
得られたシリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子に、塩酸水を加え粒子を凝集させた後、遠心分離で沈降させ、上澄みを除いて洗浄を行った。充分洗浄を行った後、120℃で乾燥させシリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子を得た。
次いで、前記のシリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子を粗粉砕した後、酸化チタンに対して50重量部のシランカップリング剤(信越化学社製KBM503)を溶解したメチルエチルケトンをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業社製、0.03mmジルコニアビーズ400g)に投入し、周速:8m/s、10kg/hrの条件で循環運転しながら、前記シリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子を徐々に添加して分散を行った。得られたシリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子メチルエチルケトン分散体を濃縮し、酸化チタンとして10重量%に調整して、シリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子メチルエチルケトン分散体(試料B)を得た。
(2)次いで、実施例1の(2)と同様にして、試料Bをエタノールに溶媒置換して、酸化チタンとして10重量%に濃度調整したシリカ処理ルチル型酸化チタンナノ粒子エタノール分散体(試料B−1)を得た。
【0022】
比較例1
炭酸ナトリウム水溶液に四塩化チタンを添加して中和し、熟成してルチル型酸化チタンナノ粒子のスラリーを得た。スラリーを中和し、ろ過水洗脱水した後、酸化チタンに対して50重量部のシランカップリング剤(信越化学社製KBM503)を溶解したエタノールを添加し、次いで、ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業社製、0.03mmジルコニアビーズ400g)に投入し、周速:8m/s、10kg/hrの条件で循環運転して分散を行った。得られたルチル型酸化チタンナノ粒子エタノール分散体を濃縮し、酸化チタンとして10重量%に調整して、ルチル型酸化チタンナノ粒子エタノール分散体(試料C)を得た。
【0023】
可視光透過率の測定結果1
試料A〜Cの可視光透過率を日立分光光度計にて測定した結果を表1に示す。実施例の試料A−1、試料B−1は、可視光透過率が高く、メチルエチルケトン分散時の高い分散状態を損ねることなく、溶媒置換されたことがわかった。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例3
(1)炭酸ナトリウム水溶液に四塩化チタンと四塩化スズの混合水溶液を添加して中和し、熟成してスズ含有ルチル型酸化チタンナノ粒子のスラリーを得た。スラリーを中和しろ過水洗し、純水に再分散して固形分10重量濃度に調整したものをビーズミルにて分散し、ケイ酸ソーダを添加した後に中和してSiO
2被覆スズ含有ルチル型酸化チタンナノ粒子水分散体を得た。この組成はSnO
2/SiO
2/TiO
2=0.05/0.10/1.00(重量)であった。前記の水分散体をろ過水洗乾燥し、実施例1と同様にしてメチルエチルケトンに分散して、SiO
2被覆スズ含有ルチル型酸化チタンナノ粒子メチルエチルケトン分散体(試料D)を得た。
(2)前記のメチルエチルケトン分散体(試料D)を実施例1の(2)と同様にしてエタノールに溶媒置換した(試料D−1)。
(3)次いで前記のエタノール分散体(試料D−1)にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、減圧蒸留によってエタノールを留去してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶媒置換した(試料D−2)。
【0026】
実施例4
SiO
2被覆スズ含有ルチル型酸化チタンナノ粒子水分散体の組成をSnO
2/SiO
2/TiO
2=0.10/0.10/1.00(重量)とする以外は実施例3と同様にして、メチルエチルケトン分散体(試料E)、これを溶媒置換したエタノール分散体(試料E−1)、これを更に溶媒置換したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散体(試料E−2)を得た。
一方、メチルエチルケトン分散体(試料E)にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、減圧蒸留によってメチルエチルケトンを留去してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶媒置換した(試料E−3)
【0027】
実施例5
SiO
2被覆スズ含有ルチル型酸化チタンナノ粒子水分散体の組成をSnO
2/SiO
2/TiO
2=0.20/0.10/1.00(重量)とする以外は実施例3と同様にして、メチルエチルケトン分散体(試料F)、これを溶媒置換したエタノール分散体(試料F−1)、これを更に溶媒置換したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散体(試料F−2)を得た。
【0028】
可視光透過率の測定結果2
前記のナノ粒子溶剤分散体(試料D〜F)を無機物濃度として5重量%に調整し、日立分光光度計で可視光透過率を測定した結果を表2に示す。メチルエチルケトンからエタノールに溶媒置換しても、可視光透過率は70%以上あり、また、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶媒置換しても可視光透過率は60%以上維持できることがわかった。
【0029】
【表2】