(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体と、前記積層体の全部又は一部を封止する無機封止層と、前記無機封止層に別途成形されたシート部材が載置された断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域が存在する有機EL装置において、
前記発光領域を含む領域を囲む硬質壁部を有し、当該硬質壁部によって前記シート部材が支持された構造を有するものであり、
前記発光領域は、前記基材を平面視したときに、第1電極層と、前記有機発光層を含む機能層と、第2電極層が重畳した部位であり、
前記第1電極層は、前記発光領域から外側に延びており、
前記無機封止層は、前記発光領域の外側で第1電極層と直接接触しており、
前記硬質壁部は、前記無機封止層と第1電極層との接触部分の外側で、前記第1電極層と直接接触しており、
発光領域の投影面上であって、且つ無機封止層とシート部材との間には、密閉された空間が形成されており、
当該空間には、軟質樹脂が95パーセント以上を占めるように充填されており、
前記軟質樹脂は、シート状又は板状であって、その表面に粘着性加工が施されており、
前記軟質樹脂は、その周囲を前記硬質壁部が覆っており、
前記シート部材は、ポリエチレンテレフタレートとポリ塩化ビニリデンとポリテトラフルオロエチレンのうち、いずれかを材質としていることを特徴とする有機EL装置。
前記無機封止層は、1又は複数の層が積層されて形成されており、少なくとも1層は、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、引用文献1の有機EL装置は、一定以上の封止性能を有するものの、シリコン合金層のみでは封止が十分ではない。そのため、更なる封止性能を有した有機EL装置が求められており、未だ改良の余地が残されている。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、有機EL素子への水分の侵入を防止可能で短絡による不点灯等の不具合の発生の無い有機EL装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、発明者らは、特許文献1の構造を参考にしてシリコン合金層上にさらに封止層を被覆した構造を有する有機EL装置を試作した。すなわち、2重の封止構造を有する有機EL装置を試作して、封止性能の向上を図った。
具体的には、試作した有機EL装置100は、
図14(a)のように、ガラス基板102上に順次、透明電極層103と有機発光層105と裏面電極層106とを積層した構造を有する有機EL素子120を積層し、この裏面電極層106の上に、シリコン合金層107を積層し、さらにその外側を硬質のエポキシ樹脂層108で封止した。
この試作した有機EL装置100は、旧来のものに比べて、封止性能が各段に向上するはずであり、本発明者らは、ダークスポットの発生個数や、その成長が大幅に低減されて、装置の信頼性や寿命が大幅に向上するものと期待した。
しかしながら、試作した有機EL装置100は、予想したほどの効果は得られなかった。すなわち、試作した有機EL装置100は、旧来のものに比べて、ダークスポットの成長は抑制されるものの、短絡によるとみられる不点灯を引き起こすものが多数発生した。
そこで、この原因を検討した結果、有機EL装置100の内部で発生する局所的な熱膨張、破損等によって、電極層103,106や、有機発光層105が変形するのではないかと考えた。
すなわち、初期不良や環境、外的要因等の原因によって、有機EL素子120の一部が膨張したり、破損して飛散したりした場合、シリコン合金層107は、
図14(b)のように、その圧力や衝撃を受けて外側(有機EL素子120と反対側)に向けて応力が逃げるので、有機EL素子120側には応力がかかりにくい。
ところが、この試作した有機EL装置100の場合、シリコン合金層106の外側に覆われたエポキシ樹脂層107の剛性によって、
図14(c)のようにシリコン合金層106が有機EL素子120側に押し返されてしまう。そのため、シリコン合金層106が有機EL素子120の膨張部位を圧迫し、透明電極層103と裏面電極層106との距離が近接するため、新たな短絡を引き起こす。すなわち、この試作した有機EL装置100の構造では、封止性能は向上するが、一度ダークスポットが発生すると、それに付随してダークスポットが増加してしまったのではないかと考察した。また、ダークスポットの増加が引き金となり、有機EL装置100全体が不点灯になってしまったのではないかと考察した。
本発明者は、上記した仮説に基づき、実際に発光し発熱する発光領域が外部から圧迫されない構造を考えた。すなわち、実際に発光する発光領域以外の領域にエポキシ樹脂層を形成し、当該エポキシ樹脂層によってバックシートを支持することで、発光領域上に空間を形成する構造を試作した。試作した有機EL装置は、発光領域上にバックシートを取り付けることで、封止性を担保するとともに、発光領域の膨張に対しては、前記空間によって受け流す構造とすることで、シリコン合金層から受ける応力を緩和させる構造をとした。
その結果、予想を上回るダークスポットの発生個数の減少や、その成長の大幅な低減が見られた。また、この発光領域以外の領域をエポキシ樹脂で固めた有機EL装置は不点灯になりにくいこともわかった。
【0010】
以上の知見に基づいて、導き出された請求項1に記載の発明は、基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体と、前記積層体の全部又は一部を封止する無機封止層と、前記無機封止層に別途成形されたシート部材が載置された断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域が存在する有機EL装置において、
前記発光領域を含む領域を囲む硬質壁部を有し、当該硬質壁部によって前記シート部材が支持された構造を有するものであり、前記発光領域は、前記基材を平面視したときに、第1電極層と、前記有機発光層を含む機能層と、第2電極層が重畳した部位であり、前記第1電極層は、前記発光領域から外側に延びており、前記無機封止層は、前記発光領域の外側で第1電極層と直接接触しており、前記硬質壁部は、前記無機封止層と第1電極層との接触部分の外側で、前記第1電極層と直接接触して
おり、発光領域の投影面上であって、且つ無機封止層とシート部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、軟質樹脂が
95パーセント以上を占めるように充填されており、
前記軟質樹脂は、シート状又は板状であって、その表面に粘着性加工が施されており、前記軟質樹脂は、その周囲を前記硬質壁部が覆っており、前記シート部材は、ポリエチレンテレフタレートとポリ塩化ビニリデンとポリテトラフルオロエチレンのうち、いずれかを材質としていることを特徴とする有機EL装置である。
本発明は、基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体と、前記積層体の全部又は一部を封止する封止層と、前記封止層に別途成形された封止部材が載置された断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域が存在する有機EL装置において、前記発光領域を含む領域を囲む硬質壁部を有し、当該硬質壁部によって前記封止部材が支持された構造を有する有機EL装置に関連する。
【0011】
本発明の構成によれば、前記発光領域を含む領域を囲む硬質壁部を有している。すなわち、硬質壁部は、発光領域以外の領域に位置しており、少なくとも発光領域上には、硬質壁部が設けられていない。こうすることによって、発光領域上の封止は、封止部材を取り付けることで担保し、発光領域の膨張に対しては、硬質壁部が、封止層と封止部材との距離を一定に保った状態で封止部材を支持する構造となっている。そのため、発光領域上の封止層は封止部材によって押圧されない。また、硬質壁部の剛性によって、封止部材を所定の間隔に支持するため、発光領域に封止部材の外部から外圧が加わることを防止できる。さらに、硬質壁部は発光領域への堰として機能するため、有機EL素子への水分の進入も防止できる。
請求項2に記載の発明は、前記シート部材の対向する両端面は、前記基材の対向する両端面と面一となっていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置である。
【0012】
発明者は、発光領域の上方が必ずしも空間ではある必要はなく、上記した膨らみによる応力を緩和できる程度の硬さであれば、積層体側に封止層を押し返し、積層体を圧迫することがないことを見出した。
【0013】
請求項
1に記載の発明は、発光領域の投影面上であって、且つ無機封止層とシート部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、軟質樹脂が充填されてい
る。
本発明は、発光領域の投影面上であって、且つ封止層と封止部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、軟質樹脂が充填されている有機EL装置に関連する。
【0014】
ここでいう「軟質」とは、柔軟性に優れた材質であることを表す。JIS K 6253に準じたショア硬さがA70以下であることが好ましく、A65以下であることがより好ましく、A63以下であることがさらに好ましい。
ここでいう「充填」とは、空間の90パーセント以上の領域を占める状態をいう。空間の95パーセント以上を占める状態であることが好ましく、99パーセント以上を占める状態であることが特に好ましい。
【0015】
上記の発明の構成によれば、発光領域の投影面上であって、且つ封止層と封止部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、軟質樹脂が充填されている。すなわち、封止層の外側を緩衝層が積層されているため、封止層の封止性能に加えて、緩衝層によって水分の進入を阻害でき、封止性能を補助することが可能である。そのため、上記の発明の有機EL装置は、封止性能が高い。
また、緩衝層は、樹脂製であって柔軟性を有しているため、たとえ、外部要因等の原因によって、積層体内部で短絡が起こり、当該短絡箇所が膨張したり、破損して飛散したりする場合であっても、その衝撃を緩衝層によって吸収できる。そのため、緩衝層によって封止層が押し返しにくく、積層体を圧迫することがない。それ故に、押し返しによって第1電極層と第2電極層との近接し、連鎖的に短絡することを防止できるため、耐久性が高く、信頼性も高い。また、不点灯にもなりにくい。
【0016】
勿論、空間内に反応に寄与しないガスが充填してもよい。
【0017】
すなわち、本発明は、発光領域の投影面上であって、且つ封止層と封止部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、不活性ガスが充填されていることとしてもよい。
【0018】
ここでいう「不活性ガス」とは、反応性がない又は極めて低いガスであり、例えば、アルゴンガスやヘリウムガス、窒素ガスなどである。
【0019】
この発明の構成によれば、発光領域の投影面上であって、且つ封止層と封止部材との間には、密閉された空間が形成されており、当該空間には、不活性ガスが充填されている。すなわち、封止層の外側を不活性ガスが充填されているため、封止層が空気にさらされることがない。そのため、この発明の有機EL装置は、ダークスポットが形成されにくい。
また、不活性ガスが充填されており、不活性ガスがクッションの役割を果たすため、たとえ、外部要因等の原因によって、積層体内部で短絡が起こり、当該短絡箇所が膨張したり、破損して飛散したりする場合であっても、その衝撃を空間内の不活性ガスによって吸収できる。そのため、空間内の内圧によって封止層が押し返されにくく、積層体を圧迫することがない。それ故に、押し返しによって第1電極層と第2電極層との近接し、連鎖的に短絡することを防止できるため、耐久性が高く、信頼性も高い。また、不点灯にもなりにくい。
【0020】
請求項
3に記載の発明は、硬質壁部は、熱硬化性を有した接着材料から形成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の有機EL装置である。
【0021】
本発明の構成によれば、硬質壁部は、封止層と封止部材を一体化する接着機能を有している。そのため、製造しやすい。
【0022】
上記した有機EL装置において、前記封止層は、1又は複数の層が積層されて形成されており、少なくとも1層は、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されることが好ましい。
請求項
4に記載の発明は、前記無機封止層は、1又は複数の層が積層されて形成されており、少なくとも1層は、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の有機EL装置である。
【0023】
上記した発明は、基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体と、前記積層体の全部又は一部を封止する封止層と、前記封止層に別途成形された封止部材が載置された断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、実際に発光する発光領域が存在する有機EL装置の製造方法において、前記積層体を形成する積層体形成工程と、前記封止層を形成する封止層形成工程と、封止層に硬質壁部を介して封止部材を接着する封止部材接着工程と、を有し、前記封止部材接着工程において、前記発光領域を含む領域の周りを囲むように接着材を塗布し、当該接着材が固化することによって硬質壁部を形成する有機EL装置の製造方法に関連する。
【0024】
この発明の構成によれば、容易に硬質壁部を形成できるため、製造しやすい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有機EL装置によれば、積層体への水分の進入を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、有機EL装置に係るものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、
図1の姿勢を基準に説明する。すなわち、有機EL装置1の駆動時における光取り出し側が下である。
【0028】
本実施形態の有機EL装置1は、
図2のように透光性を有した基板2(基材)上に有機EL素子12が積層されており、さらにその上に無機封止層7(封止層)と、軟質樹脂層8(緩衝層)と、硬質樹脂層10と、防湿部材11とを備えている。有機EL素子12は、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6から形成されている。
そして、本実施形態の有機EL装置1は、有機EL素子12の中で駆動時に主に発熱する発光領域30以外の領域に硬質樹脂層7で囲繞し、その上に防湿部材11を取り付けることによって、発光領域30への圧迫を防止し、ダークスポットの発生や発光不能状態(不点灯)に陥ることを防止する特徴を有している。
【0029】
このことを踏まえて、以下、有機EL装置1の詳細な構造について説明する。
有機EL装置1は、
図2,
図3のように駆動時において実際に発光する発光領域30と、発光領域30内の有機EL素子12に給電する給電領域31,32を有している。
発光領域30は、
図3のように第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が重畳した部位である。発光領域30は、
図2,
図5のように長手方向l及び短手方向w(長手方向lに直交する方向)の中央に位置しており、その長手方向lの両外側に給電領域31,32が位置している。
給電領域31,32の短手方向w(長手方向lに直交する方向)の中央には、
図5のように島状の取出部35,36を有している。取出部35,36は、平面視すると四角形状をしており、基板2の短辺(短手方向に延びる辺)に沿って形成されている。取出部35,36は、
図2,
図3のように導電性の接着部材27,28によって、電極部材25,26と接着されている。
【0030】
軟質樹脂層8は、
図2のように無機封止層7上であって、少なくとも、発光領域30の部材厚方向の投影面全面を覆うように積層されている。言い換えると、軟質樹脂層8は、
図3のように後述する有機EL素子分離溝21と第1電極層分離溝15の外側まで延びており、電極接続溝16,17の外側まで延びていることが好ましく、取出電極分離溝22,23の近傍まで覆っていることが特に好ましい。すなわち、軟質樹脂層8は、面状に広がりをもって、無機封止層7の大部分を覆っている。
軟質樹脂層8の縁には
図2、
図3、
図4のように、硬質樹脂層10の一部が庇状に覆い被さっていることが好ましい。すなわち、硬質樹脂層10は、無機封止層7から軟質樹脂層8に跨がって覆っていることが好ましい。軟質樹脂層8の4縁から所定の範囲まで硬質樹脂層10が内側(発光領域30側)に延伸していることが好ましい。この場合、軟質樹脂層8は、硬質樹脂層10によって押さえつけられていることとなり、本発明の効果を奏しつつ、より信頼性が高い有機EL装置となる。軟質樹脂層8の4縁からの硬質樹脂層10の被覆長さ(重なり幅)は、非発光の額縁領域を減らして発光領域を増やす観点から、前記庇状の領域が無く、すなわち、重なり幅が無い場合を含んで、−1mm〜10mmとなっており、高い信頼性の有機EL装置とする観点から、0mm〜5mmとすることが好ましく、0.05mm〜2mmとすることがより好ましく、さらに好ましくは0.1mm〜1mmとすることである。
【0031】
硬質樹脂層10は、防湿部材11が有機EL素子12側に近接しないように防湿部材11を支持している。すなわち、硬質樹脂層10は、発光領域30を含む領域を囲むような壁を形成している。また、発光領域30の投影面上には、無機封止層7と防湿部材11と硬質樹脂層10によって密閉空間が形成されており、その内部に軟質樹脂層8が位置している。言い換えると、当該密閉空間内に軟質樹脂層8が充填されている。
ここでいう「充填」とは、空間の90パーセント以上の領域を占める状態をいう。空間の95パーセント以上を占める状態であることが好ましく、99パーセント以上を占める状態であることが特に好ましい。なお、本実施形態では、シート状の軟質樹脂層8を形成し、その周囲を硬質樹脂層10で覆っているため、充填率はほぼ100パーセントとなっている。
【0032】
さらに硬質樹脂層10は、
図4のように電極部材25,26の一部を被覆している。具体的には、硬質樹脂層10は、電極部材25,26の基板2からの張り出し部位を除いて電極部材25,26を覆っている。すなわち、有機EL装置1は、
図1のように硬質樹脂層10から電極部材25,26の一部のみが露出している。
【0033】
また、本実施形態の有機EL装置1は、深さの異なる複数の溝によって、複数の区画に分離されて区切られている。
具体的には、有機EL装置1は、
図3のように部分的に第1電極層3を除去した第1電極層分離溝15と、部分的に機能層5を除去した電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20と、部分的に機能層5と第2電極層6の双方を除去した有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23を有しており、これらの溝によって複数の区画に分離されている。
【0034】
各溝について詳説すると、第1電極層分離溝15は、
図3,
図6のように基板2上に積層された第1電極層3を2つの領域に分離する溝であり、有機EL素子12を発光領域30と給電領域32(電極部材26側)に分離する溝である。
また、第1電極層分離溝15内には
図6のように機能層5の一部が進入しており、機能層5は第1電極層分離溝15の底部で基板2と直接接触している。すなわち、発光領域30内の第1電極層3と給電領域32内の第1電極層3を、絶縁性を有した機能層5によって電気的に切り離している。
【0035】
電極接続溝16,17は、
図3,
図6のように第1電極層3上に積層された機能層5のみを3つの領域に分離する溝であり、給電領域31,32に位置する溝である。
すなわち、電極接続溝17は、給電領域32内であって、第1電極層分離溝15の長手方向外側に位置しており、電極接続溝16は、給電領域31内であって、有機EL素子分離溝21の長手方向外側に位置している。
【0036】
取出電極固定溝18,20は、
図3,
図6のように、取出電極分離溝22,23の外側であって、取出部35,36の機能層5のみに設けられた溝である。取出電極固定溝18,20は、
図6のように取出部35,36の長手方向中央に設けられており、短手方向に延伸している。
具体的には、取出電極固定溝18,20は、
図6のようにその周囲が取出電極分離溝22,23に囲まれるように形成されており、取出部35,36を長手方向に2等分するようにそれぞれ形成されている。
【0037】
また、電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20内には、いずれも第2電極層6の一部が進入しており、第2電極層6は電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20の底部で基板2と直接接触している。すなわち、給電領域31,32では電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20の内部を経由して第1電極層3と第2電極層6とが電気的に接続されている。
【0038】
有機EL素子分離溝21は、
図3,
図6のように第1電極層3上に積層された機能層5及び第2電極層6の双方に亘って分離する溝であり、有機EL素子12を発光領域30と給電領域31とに分離する溝である。
取出電極分離溝22,23は、
図3,
図5のように第1電極層3上に積層された機能層5及び第2電極層6を分離して、島状の取出部35,36の外形を形成する溝である。
具体的には、取出電極分離溝22,23は、平面視すると、「コ」の字状をした溝であり、その内側に取出電極固定溝18,20が位置している。すなわち、取出電極分離溝22,23は、基板2の短辺に対して平行な部位と、直交する部位(長辺に対して平行)から形成されている。
【0039】
また、有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23内には、
図3のように絶縁性を有した無機封止層7の一部が進入しており、無機封止層7は有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23の底部で第1電極層3と直接接触している。すなわち、発光領域30内の第2電極層6と給電領域31内の第2電極層6は、無機封止層7によって電気的に切り離されている。また、給電領域31内において、取出部35の第2電極層6とその他の部位の第2電極層6は、無機封止層7によって電気的に切り離されており、給電領域32内においても、取出部36の第2電極層6とその他の部位の第2電極層6は、無機封止層7によって電気的に切り離されている。
【0040】
続いて、有機EL装置1の各層構成について説明する。
上記したように、有機EL装置1は、
図3のように基板2上に、第1電極層3と機能層5と第2電極層6とがこの順に積層し、その上に、無機封止層7、軟質樹脂層8及び/又は硬質樹脂層10、防湿部材11が順に積層したものである。また、取出部35,36に接着部材27,28を介して電極部材25,26が固定されている。
【0041】
基板2は、透光性及び絶縁性を有したものである。基板2の材質については特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
基板2は、面状に広がりをもっている。具体的には、多角形又は円形をしており、四角形であることが好ましい。本実施形態では、長方形状のガラス基板を採用している。
【0042】
第1電極層3の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、ITOを採用している。
【0043】
機能層5は、第1電極層3と第2電極層6との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層5は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層5は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層5は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
本実施形態では、機能層5は、
図12に示すように、第2電極層6側から第1電極層3側に向けて順に、電子注入層60、電子輸送層61、発光層62、正孔輸送層63、正孔注入層64がこの順番に積層された構造を有している。電子注入層60、電子輸送層61、発光層62、正孔輸送層63、正孔注入層64のいずれも公知の材料を採用している。
【0044】
また、これらの機能層5を構成する層は、真空蒸着法やスパッタ法、CVD法、ディッピング法、ロールコート法(印刷法)、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、フローコート法など適宜公知の方法によって成膜できる。
【0045】
第2電極層6の材料は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。本実施形態の第2電極層6は、Alで形成されている。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
また、第2電極層6の電気伝導率及び熱伝導率は、第1電極層3よりも大きい。言い換えると、第2電極層6は、第1電極層3よりも電気伝導性及び熱伝導性が高い。
【0046】
無機封止層7の材質は、絶縁性及び封止性を有していれば、特に限定されるものではないが、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されていることが好ましく、Si−O、Si−N、Si−H、N−H等の結合を含む窒化珪素や酸化珪素、及び両者の中間固溶体である酸窒化珪素であることが特に好ましい。
また、無機封止層7は、所定の条件で有機EL素子と離反する方向に圧縮応力が発生する層であることが好ましい。
ここでいう「所定の条件」とは、有機EL素子12の熱膨張などに起因して発生する押圧力を受けた場合などである。
そして、本実施形態では、多層構造の無機封止層を使用している。
具体的には、無機封止層7は、
図3のように有機EL素子12側から乾式法によって形成される第1無機封止層50と、湿式法によって形成される第2無機封止層51がこの順に積層されて形成されている。
第1無機封止層50は、化学気相蒸着によって形成される層であり、さらに詳細にはシランガスやアンモニアガス等を原料としてプラズマCVD法で成膜される層である。第1無機封止層50は、後述するように有機EL装置1の製造工程において、水分含量が少ない雰囲気下で、有機EL素子12の形成工程に連続して成膜できるため、空気や水蒸気に晒さずに成膜でき、使用直後の初期ダークスポットの発生を低減することができる。
【0047】
第2無機封止層51は、液体状又はゲル状の原料を塗布した後、化学反応を介して成膜される層である。第2無機封止層51は、より詳細には、緻密性を有したシリカを素材としている。また、第2無機封止層51はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いてシリカ転化によって第2無機封止層51を成膜した場合、シリカ転化時に重量増加を生じ、体積収縮が小さい。また、シリカ膜転化時(固化時)に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができるという利点を有する。
なお、ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4、及び両者の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。
ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、珪素と結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。
【0048】
また、このポリシラザン誘導体は、有機溶媒に溶解した溶液状態で塗布し使用することが好ましい。この溶解する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0049】
第2無機封止層51は、第1無機封止層50とは異なる材料を封止層として積層したものであり、相互の欠陥を補完することにより、封止性能を高め、経時的な新たなダークスポットの発生を防止したり、発生したダークスポットの拡大化を抑制したりすることができる。
【0050】
また、無機封止層7の成膜位置は、基板2の長手方向の少なくとも電極接続溝16,17の外側まで形成しており、本実施形態の無機封止層7の成膜位置は、
図3,
図4のようにさらに取出電極分離溝22,23の近傍まで至っている。無機封止層7は、少なくとも発光領域30の全面に成膜されており、さらに給電領域31,32の一部まで至っている。
【0051】
無機封止層7の平均厚みは、1μm〜10μmであることが好ましく、2μm〜5μmであることがより好ましい。
無機封止層7の一部を担う第1無機封止層50の厚みは、1μm〜5μmであることが好ましく、1μm〜2μmであることがより好ましい。
また、無機封止層7の一部を担う第2無機封止層51の厚みは、好ましくは1μm〜5μmであることが好ましく、1μm〜3μmであることがより好ましい。
【0052】
軟質樹脂層8に目を移すと、軟質樹脂層8は、柔軟性を有し、所定の条件によって塑性変形又は弾性変形する層である。本実施形態では、軟質樹脂層8は、無機封止層7の圧縮応力などを受けた場合に、その応力にほとんど逆らわずに、塑性変形可能となっている。
JIS K 6253に準じた軟質樹脂層8のショア硬さは、ショア硬さがA30以上A70以下であり、A40以上A65以下であることが好ましく、A45以上A63以下であることがより好ましい。
緩衝層のショア硬さがA70より大きい場合、緩衝層の剛性が大きすぎて、膨らみや衝撃が十分吸収できない。また、防湿部材11として例えばフィルム等の剛性が低いものを採用する際に、軟質樹脂層8のショア硬さがA30より小さい場合には、防湿部材11の形状を維持できない。
軟質樹脂層8の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25Pa以下であることがより好ましく、3.9MPa以上、23MPa以下であることが特に好ましい。
軟質樹脂層8の具体的な材質としては、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が使用できるが、一定の水蒸気バリア性を有し、安価に入手可能である点から、アクリルゴム系樹脂、エチレンプロピレンゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、及びブチルゴム系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でもフィルムとして入手が容易な、ブチルゴム系樹脂がより好ましい。
また、本実施形態の軟質樹脂層8は、接着性を有しており、複数部材を互いに接着可能となっている。具体的には、本実施形態の軟質樹脂層8は、シート状又は板状の部材であり、表面に粘着性加工を施されている。
【0053】
硬質樹脂層10は、軟質樹脂層8よりも剛性が高く硬い材料となっている。具体的には、JIS K 6253に準じた硬質樹脂層10のショア硬さ(及び対応する曲げ弾性率の概算値)は、ショアA80以上、即ち、ショアD30以上(25MPa以上)であることが好ましく、より高信頼性の有機EL装置とする観点からショアD55以上(250MPa以上)、ショアD95以下(6000MPa以下)とすることがより好ましく、ショアD80以上(1500MPa以上)、ショアD90以下(4000MPa以下)とすることがさらに好ましい。
また、本実施形態の硬質樹脂層10は、防水性及び接着性(粘着性)を有しており、複数部材を互いに接着可能となっている。具体的には、本実施形態の硬質樹脂層10は、溶液又はゲル状の流動体を固化して形成されるものである。
硬質樹脂層10の具体的な材質としては、例えば、エポキシ樹脂などが採用できる。なお、本実施形態では、エポキシ樹脂を採用している。
このような硬質樹脂層10から構成される本発明に係る硬質壁部は、本発明に係る封止部材を十分な強度で支持し、また、水分の有機EL素子への侵入を十分に防止し、かつ、硬質壁部が存在する非発光領域となる額縁領域を狭くする観点から、その基板2の面に平行な方向の硬質接着層10の幅(硬質壁部の厚み)が、0.05mm以上、10mm以下とすることが好ましく、0.1mm以上、5mm以下とすることがより好ましく、0.5mm以上、2mm以下とすることがさらに好ましい。
【0054】
防湿部材11は、防湿性を有した板状又はシート状の部材である。
防湿部材11の材質は、防湿性を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ箔によって形成された層やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成された層、Si
aAl
bO
cN
d(サイアロン)によって形成された層などが採用できる。
【0055】
また、防湿部材11は、複数層によって形成されていてもよい。具体的には、防湿部材11は、
図3のように金属箔55と、金属箔55の少なくとも無機封止層7側の片面全体をコーティングする絶縁性樹脂膜52又は絶縁性樹脂膜53から形成されている。本実施形態では、金属箔55の両面に絶縁性樹脂膜52,53がコーティングされている。
金属箔55の表面は、絶縁性樹脂膜52,53によってあらかじめラミネート加工されていてもよい。
金属箔55の平均厚みは2μm以上、200μm以下とすることが好ましく、トータル厚みがこの範囲であれば、複数の樹脂層等を介在させて複数の金属箔から構成することもできる。例えば、2μm〜20μmの厚みの金属箔と、10μm〜100μmの厚みの金属箔を併用することが考えられる。トータル厚みのより好ましい範囲は、5μm〜100μmであり、より好ましい範囲は、20μm〜60μmである。
金属箔55の材質は、均熱性又は放熱性と、水蒸気バリア性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、銅やアルミニウム、ステンレスなどが採用でき、その中でもアルミニウムで形成されていることが好ましい。また、アルミニウムは、耐腐食性があり、伝熱性が高いので伝熱機能が高く、かつ、水分の透過性が低いので封止機能も高い。そのため、本実施形態では金属箔55としてアルミニウムを採用している。
【0056】
絶縁性樹脂膜52,53の材質は、絶縁性を有していれば特に限定されるものではないが、封止性が高い観点からポリエチレンテレフタレート(PET)とポリ塩化ビニリデン(PVDC)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちいずれかであることが好ましい。本実施形態では、無機封止層7側の絶縁性樹脂膜52にPTFEを採用し、反対側の絶縁性樹脂膜53にPETを採用している。
絶縁性樹脂膜52,53の平均厚みは、5μmから100μmであり、10μmから50μmであることが好ましい。
【0057】
防湿部材11の設置領域は、少なくとも軟質樹脂層8全体を覆っており、さらに、硬質樹脂層10の一部又は全部を覆っている。すなわち、防湿部材11は、少なくとも発光領域30を覆っており、さらに給電領域31,32まで至っている。
そのため、金属箔55の均熱機能によって発光領域30全体の熱を均等にすることができ、発光領域内の有機EL素子12の輝度ムラを防止することができる。また、給電領域31,32まで延在しているため、外部と、発光領域内の有機EL素子12との距離を遠くすることができ、発光領域30内の有機EL素子12内への水等の進入を効果的に防止することができる。
【0058】
本実施形態では、防湿部材11は、
図1のように基板2全面に敷設されている。すなわち、電極部材25,26の一部も覆っている。
【0059】
電極部材25,26は、外部電源と有機EL素子12の第1電極層3又は第2電極層6とを電気的に接続する部材である。電極部材25,26は、電気伝導性を有した箔状体又は板状体であり、取出部35,36に載置可能となっている。
【0060】
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0061】
まず、有機EL素子を積層する有機EL素子形成工程を行う。
具体的には、まず、スパッタ法やCVD法によって基板2の一部又は全部に第1電極層3を成膜する(
図7(a)から
図7(b))。
このとき、本実施形態では、基板2の長辺(長手方向に延伸する辺)の近傍には第1電極層3を積層していない。ここでいう「長辺近傍」とは、長辺からの距離が1mm以下のものを表し、500μm以下であることが好ましい。
また、形成される第1電極層3の平均厚さは、50nmから800nmであることが好ましく、100nmから400nmであることがより好ましい。
【0062】
その後、第1電極層3が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第1電極層分離溝15を形成する(
図7(b)から
図7(c))。
このとき、第1電極層分離溝15は、基板2の短辺に平行に形成されており、短手方向全体に亘っている。
第1電極層分離溝15は、有機EL装置1が形成された際に給電領域32と発光領域30との境界部位に形成されている。すなわち、第1電極層分離溝15は、長手方向において、第1電極層3を2つの領域に分割している。
また、この基板上には第1電極層分離溝15を除いてほぼ全面に第1電極層3が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記第1電極層3を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0063】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に電子注入層60、電子輸送層61、発光層62、正孔輸送層63、正孔注入層64などを順次積層し、機能層5を成膜する(
図7(c)から
図7(d))。
このとき、第1電極層分離溝15内に機能層5が積層され、第1電極層分離溝15内に機能層5が満たされるとともに、この基板のほぼ全面に機能層5が積層される。
【0064】
その後、機能層5が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20をそれぞれ形成する(
図7(d)から
図7(e))。
このとき、電極接続溝16,17は、基板の短辺に平行になるように形成されており、基板の短手方向全体に亘って形成されている。すなわち、第1電極層分離溝15と平行となっている。また、電極接続溝16,17は、基板上の機能層5を少なくとも3つの領域に分離している。
取出電極固定溝18,20は、有機EL装置1が完成した時の取出部35,36の中央に形成されており、長手方向に均等に2分割するように設けられている。
そして、この基板上には電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20を除いて機能層5が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記機能層5を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0065】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に第2電極層6を成膜する(
図7(e)から
図7(f))。
このとき、電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20内に第2電極層6が積層され、電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20内に第2電極層6が満たされるとともに、この基板全面に第2電極層6が積層される。すなわち、電極接続溝16,17及び取出電極固定溝18,20の底部で第1電極層3と第2電極層6が接触した状態で固着し、第1電極層3と第2電極層6が電気的に接続される。
そのため、第1電極層3と第2電極層6の間に機能層5が介在する場合に比べて、当該3つの層間の剥離強度を向上させることができる。
【0066】
その後、第2電極層6が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、機能層5及び第2電極層6に亘って延伸した有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23を形成する(
図7(f)から
図7(g))。
このとき、有機EL素子分離溝21は、電極接続溝16,17と平行に形成されており、第2電極層6が積層された領域の短手方向全体に亘って形成されている。すなわち、有機EL素子分離溝21は、第1電極層分離溝15とも平行の関係になっている。
有機EL素子分離溝21は、有機EL装置1が形成された際に給電領域31と発光領域30との境界部位に形成されている。すなわち、有機EL素子分離溝21は、長手方向において、機能層5及び第2電極層6を2つの領域に分割している。
具体的には、有機EL素子分離溝21は、第2電極層6を、発光領域30内の第2電極層6と、給電領域31内の第2電極層6とに分割している。
また、取出電極分離溝22,23は、機能層5と第2電極層6を島状に切り離しており、取出部35,36を形成している。
この基板上には有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23を除いて第2電極層6が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記第2電極層6を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
以上が、有機EL素子形成工程である。
【0067】
続いて、無機封止層7を形成する無機封止層積層工程を行う。
具体的には、まず、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、第1無機封止層50を成膜する(
図7(g)から
図7(h))。
このとき、第1無機封止層50は、少なくとも発光領域30内の第2電極層6を覆っており、さらに、電極接続溝16,17の部材厚方向の投影面上まで延伸している。すなわち、有機EL素子分離溝21内に第1無機封止層50が積層され、有機EL素子分離溝21内に第1無機封止層50が満たされる。そのため、封止機能を十分に確保することができる。
さらに、本実施形態の第1無機封止層50は、長手方向においては、取出電極分離溝22,23まで延伸しており、短手方向においては、基板の長辺まで至っている。そのため、伝熱性及び封止性をさらに向上させることができる。
【0068】
その後、第1無機封止層50を成膜したCVD装置から取り出して、第2無機封止層51の原料を塗布し、第2無機封止層51を形成し、無機封止層7が形成される。
このとき、第1無機封止層50上の全面を第2無機封止層51が覆っている。
このようにして、第1無機封止層50上に第2無機封止層51が積層されて無機封止層7が形成される。
【0069】
その後、電極部材25,26を取出部35,36に導電性の接着材によって接着する。
このとき、導電性の接着材が塗布した取出部35,36上に電極部材25,26を載置した後、真空ラミネーターで、接着部材27,28を形成する。
また、導電性の接着材が塗布される領域は、長手方向においては取出電極固定溝18,20の部材厚方向の投影面上を含み、取出部35,36の露出部位全面となっている。
【0070】
接着部材27,28の材料たる導電性の接着材料としては、導電性及び接着機能を有していれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着材料やアクリル系接着材料、低温半田などが採用できる。
導電性の接着材の塗布量は、固化後に形成される接着部材27,28の厚みが500nm以上50μm以下となっており、1μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることが特に好ましい。
以上が、封止層積層工程の説明である。
【0071】
上記した手順によって形成された無機封止層7に防湿部材11を接着する防湿部材接着工程を行う。
防湿部材接着工程では、無機封止層7に防湿部材11を接着するとともに、軟質樹脂層8及び硬質樹脂層10を形成する。
具体的には、無機封止層7上に軟質樹脂層8を真空ラミネーターで貼り合わせる(
図8(a)から
図8(b))。
このとき、軟質樹脂層8を形成するに当たって、軟質樹脂層8の両面に絶縁性のセパレーターが被覆したものを用いる。また、貼り合わせ時には、軟質樹脂層8の片面のセパレーターを剥離して、剥離面を無機封止層7上に貼り合わせる。
そして、この貼り合わせた状態では、軟質樹脂層8は発光領域30全体を覆っており、さらに、電極接続溝16,17まで延伸している。軟質樹脂層8は、取出電極分離溝22,23まで至っていない。すなわち、電極接続溝16,17から外側には、軟質樹脂層8が被覆しておらず、無機封止層7が露出している。言い換えると、無機封止層7上には、無機封止層7が露出した部位と、軟質樹脂層8が被覆した部位が混在し、軟質樹脂層8が被覆した部位は短手方向及び長手方向の中央に位置している。
【0072】
その後、前記剥離面の反対側の面のセパレーターを剥離する(
図8(b)から
図8(c))。
【0073】
続いて、この基板に、硬質樹脂層10の原料をディスペンサー70によって塗布し、硬質樹脂層10を成膜する(
図9(d)から
図9(e))。
硬質樹脂層10は、軟質樹脂層8の一部又は全面を覆っている。なお、本実施形態では、硬質樹脂層10は、軟質樹脂層8の一部を覆っており、
図11のように軟質樹脂層8と無機封止層7に跨がって塗布されて形成されている。発光領域30に位置する軟質樹脂層8の大部分は、硬質樹脂層10が覆われていない。すなわち、軟質樹脂層8が露出する開口が形成されている。当該開口の面積は、発光領域30の面積に比べて一回り大きくなっている。当該開口の面積は、軟質樹脂層8の形成面積の90パーセント以上98パーセント以下となっており、95パーセント以上98パーセント以下であることが好ましい。
また、硬質樹脂層10は、電極部材26,27の一部(基板2の部材厚方向の投影面)を覆っている。言い換えると、電極部材26,27の一部は、硬質樹脂層10内に埋没している。すなわち、共に接着性を有した軟質樹脂層8と硬質樹脂層10が被っており、オーバーラップしている。
【0074】
続いて、この基板上であって、軟質樹脂層8及び硬質樹脂層10上に防湿部材11を載置し、真空ラミネーターで貼り合わせる(
図10(f)から
図10(g))。
【0075】
このとき、防湿部材11は、軟質樹脂層8及び硬質樹脂層10の全面を覆っており、軟質樹脂層8及び硬質樹脂層10の接着機能によって無機封止層7又は電極部材26,27に一体化される。すなわち、防湿部材11は、有機EL素子12の全面を間接的に覆っている。
【0076】
このようにして防湿部材接着工程を終了し、有機EL装置1が完成する。
【0077】
有機EL装置1の機能について説明する。
外的要因等によって、有機EL素子12が破損し、その一部が飛散した場合について説明する。なお、本実施形態の有機EL装置1は、無機封止層7と軟質樹脂層8と硬質樹脂層10と防湿部材11によって水等の進入を防止しているため、封止機能が高く、基本的には、ダークスポットが発生しないが、外的要因等によって、短絡等が発生し、ダークスポットが発生したものとして説明する。
図13のように、外的要因等の理由により、有機EL素子12内で短絡し、有機EL素子12が破損して飛散すると、無機封止層7を介して軟質樹脂層8が押圧され、塑性変形する。この押圧力は、軟質樹脂層8の弾性変形又は塑性変形によって受け流されて分散される。そのため、この押圧力は硬質樹脂層10にほとんど伝わらない。それ故に、硬質樹脂層10からの剛性によって、軟質樹脂層8が押し返されず、有機EL素子12がストレスを受けにくい。すなわち、第1電極層3と第2電極層6との間隔が狭まりにくく、ストレスによる短絡が起こりにくい。
また、硬質樹脂層10と防湿部材11によって、封止機能を維持しているため、たとえ、無機封止層7が破損しても、水等の進入を防止でき、水等の進入に伴うダークスポットの発生も抑制できる。
【0078】
上記した実施形態では、無機封止層7上に軟質樹脂層を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軟質樹脂層の代わりに空間が形成していてもよい。
具体的には、第2実施形態として説明する。
【0079】
第2実施形態の有機EL装置100は、
図15,
図16のように、硬質樹脂層10が無機封止層7上に被覆した被覆領域105と、無機封止層7上に硬質樹脂層10が被覆されていない露出領域106を有している。露出領域106においては、防湿部材11と無機封止層7との間に密閉された緩衝空間101が形成されている。
露出領域106は、発光領域30の全面に亘っており、基板2の大部分を占めている。
緩衝空間101は、無機封止層7と、硬質樹脂層10と、防湿部材11に囲まれた空間である。緩衝空間101には、不活性ガスが充填されている。
【0080】
ここでいう「不活性ガス」とは、反応性がない又は極めて低いガスであり、例えば、窒素ガスや、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが採用できる。
不活性ガスは、水分がほぼ含有していない不活性ガスであることが好ましい。すなわち、不活性ガスの含水量は、少なければ少ないほど好ましい。不活性ガスの含水量は、1ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以下であることが特に好ましい。
【0081】
次に、第2実施形態に係る有機EL装置100の製造方法について説明する。
無機封止工程までは、第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と同様の工程については説明を省略する。
【0082】
続いて、この基板に、硬質樹脂層10の原料をディスペンサー70によって塗布し、硬質樹脂層10を成膜する(
図17(d)から
図17(e))。
このとき、硬質樹脂層10は、
図18のように緩衝空間101の内壁を形成するように形成されている。言い換えると、緩衝空間101上には、硬質樹脂層10が覆われていない。すなわち、緩衝空間101は、上方に向けて開放しており、外部と緩衝空間101とを挿通する開口が形成されている。当該開口の面積は、発光領域30の面積に比べて一回り大きくなっている。
また、硬質樹脂層10は、電極部材26,27の一部(基板2の部材厚方向の投影面)を覆っている。言い換えると、電極部材26,27の一部は、硬質樹脂層10内に埋没している。
【0083】
続いて、この基板上であって、緩衝空間101及び硬質樹脂層10上に防湿部材11を載置し、不活性ガス条件下で貼り合わせる(
図18(f)から
図18(g))。
【0084】
このとき、防湿部材11は、緩衝空間101及び硬質樹脂層10の全面を覆っており、緩衝空間101及び硬質樹脂層10の接着機能によって無機封止層7又は電極部材26,27に一体化される。すなわち、防湿部材11は、有機EL素子12の全面を間接的に覆っている。また、緩衝空間101は不活性ガス条件下で密閉され、不活性ガスが密閉された密閉空間となる。
【0085】
このようにして有機EL装置100が完成する。
【0086】
上記した実施形態では、基板2として長方形状のガラス基板を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく正方形状であってもよい。
【0087】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
本発明の具体的な実施例及び実施例に対する比較例の有機EL装置の作製手順と、これらの評価結果を説明する。
【0089】
〔実施例1〕
有機EL装置を形成するための基板としては、縦60mm×横60mmの基板を用い、片面である一方の面の全面に第1電極層3としてITO(インジウム・錫酸化物、膜厚150nm)が積層されている無アルカリガラス(厚さ0.7mm)を用いた。
次に、この基板を真空蒸着装置に移動させ、真空中で以下のように材料を成膜した。
【0090】
第1電極層3上に、一方の面の全面に亘って、正孔注入層として4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルーアミノ]ビフェニル(以下、NPBともいう)と三酸化モリブデンの混合層を用い、真空蒸着法にて10nmの膜厚で成膜した。正孔注入層のNPBと三酸化モリブデンは共蒸着法にて膜厚比率で9:1となるように成膜した。
【0091】
次いで、正孔輸送層としてNPBを、真空蒸着法により50nm(蒸着速度0.08nm/sec.〜0.12nm/sec.)の膜厚で成膜した。
【0092】
次いで、発光層兼電子輸送層としてトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(以下、Alq3と略す)を、真空蒸着法により、70nm(蒸着速度0.24nm/sec.〜0.28nm/sec.)の膜厚で成膜した。
【0093】
次いで、電子注入層としてLiFを用い、真空蒸着法にて1nm(蒸着速度0.03nm/sec.〜0.05nm/sec.)の膜厚で成膜した。
【0094】
この電子注入層上に機能層5の一部としてアルミニウム(Al)を真空蒸着法にて300nm(蒸着速度0.3nm/sec.〜0.5nm/sec.)の膜厚で成膜した。
このように機能層5を形成した。
この基板にレーザースクライブ装置を用いて、電極接続溝16,17を形成した。具体的には、基板の他方の面側からYAGレーザーの第2高調波(532nm)のレーザー光を照射して溝幅60μmで電極接続溝16,17を形成した。また同時に溝幅60μmで取出電極固定溝18,20も形成した。
【0095】
続いて、第2電極層6としてAlを真空蒸着法にて150nm(蒸着速度0.3nm/sec.〜0.5nm/sec.)の膜厚で成膜した。
この基板にレーザースクライブ装置を用いて、有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23を形成した。具体的には、基板の他方の面側からYAGレーザーの第2高調波(532nm)のレーザー光を照射して溝幅40μmで有機EL素子分離溝21及び取出電極分離溝22,23を形成した。
【0096】
その後、プラズマCVD装置に移動させて、第1無機封止層50として2μmの窒化珪素膜を形成し、そして、この有機EL素子12を真空雰囲気から窒素雰囲気で満たされたグローブボックスに移動させて、ポリシラザン誘導体であるクラリアント社製アクアミカNL120A−05を固化時の膜厚が1μmとなるように塗布して固化し、第2無機封止層51を形成し、合計厚み3μmの無機封止層7を形成することで1次封止を行った。
【0097】
その後、表面に接着剤が塗布された厚み25μmのブチルゴム系樹脂フィルム(ショアA60、曲げ弾性率25MPa)を第2無機封止層51上に貼り合わせて軟質樹脂層8を形成し、ディスペンサーで熱硬化型エポキシ樹脂(硬化後の硬さショアD87、曲げ弾性率2500MPa)を軟質樹脂層の縁に沿ってこれらの層の平均重なり幅が1mmとなるように、また、このようにして形成される硬質壁部の厚みが1mmとなるように、即ち、2mmの幅で塗布した。その後、防湿部材11を真空ラミネーターで接着した。ここで用いた防湿部材11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂膜(厚み16μm)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂膜(厚み16μm)と、に挟まれた圧延アルミニウム箔(厚み50μm)であり、また、PET樹脂膜を無機封止層側に隣接させた。こうして2次封止を行って有機EL装置を作製し実施例1とした。
【0098】
〔実施例2〕
実施例1において、軟質樹脂層として厚みが100μmのアクリルゴム系樹脂粘着樹脂(ショアA55、曲げ弾性率23MPa)を用いたこと以外は同様として有機EL装置を作製し実施例2とした。
【0099】
〔実施例3〕
実施例1において、軟質樹脂層として厚み50μmのブチルゴム系樹脂フィルム(ショアA60、曲げ弾性率25MPa)を用いたこと以外は同様として有機EL装置を作製し実施例3とした。
【0100】
〔実施例4〕
実施例1において、軟質樹脂層8を形成せず、熱硬化型のシート状エポキシ樹脂(硬化後の硬さショアD88、曲げ弾性率3800MPa)を2mm幅にカットしたものを、発光領域にかからないように十分に注意して、発光領域の周囲全周に貼り付けた後、窒素雰囲気中で防湿部材を硬質壁部で支持するために硬質樹脂層に接着し、さらに、その後の有機EL装置の取り扱いにつき、硬質壁部と防湿部材との間にできる中空空間に圧力を加えないように十分に注意したこと以外は同様として有機EL装置を作製し実施例4とした。
【0101】
〔比較例1〕
実施例1において、第2無機封止層を形成せず、また、軟質樹脂層を形成せず、さらに、第1無機封止層の全面に熱硬化型エポキシ樹脂(硬化後の硬さショアD88、曲げ弾性率3800MPa)を塗布したこと以外は同様として有機EL装置を作成し比較例1とした。
【0102】
〔比較例2〕
実施例1において、軟質樹脂層を形成せず、また、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布せず、さらに、防湿部材11の代わりに接着剤が塗布された厚み50μmのPETフィルムを接着したこと以外は同様として有機EL装置を作製し比較例2とした。
【0103】
〔比較例3〕
実施例1において、軟質樹脂層8を形成した後、熱硬化型エポキシ樹脂を塗布しなかったこと以外は同様として有機EL装置を作製し比較例3とした。
【0104】
このようにして作製した7水準(実施例1〜4、並びに比較例1〜3)について、ダークスポットの個数及びサイズを観察し、さらに、60℃、相対湿度85%、通電有りの加速試験時の経時変化を評価した。
なお、ダークスポットの個数及びサイズの評価方法、加速試験の方法は以下の通りである。
【0105】
(ダークスポットの個数及びサイズの評価方法)
作製した有機EL装置を、下記(加速試験の方法)により1〜1600時間加速試験した後のダークスポットの個数及びサイズをNikon顕微鏡Eclipse L300にて測定した。
【0106】
(加速試験の方法)
作製した有機EL装置を、恒温恒湿槽にて60℃、相対湿度85%に維持しつつ、YOKOGAWA製ソースメジャーユニットGS610にて250mA(1000cd/m
2相当)の電流を流した。
【0107】
実施例1として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表1に示す。
ここで後述する表1〜表7中の、ダークスポットの種類の、「NDS(円)」は円のダークスポット(NDS)、「BDS(焼)」は焼けのダークスポット(BDS)を表す。ダークスポットの各々の顕微鏡写真、及び当該写真をスケッチした図面を
図20及び
図21に示す。
NDS(円)は、非点灯時には確認できず、点灯時に不点灯部位として確認できるダークスポットである。BDS(焼)は、非点灯時にも黒点として確認でき、中央に焼けた跡が観察され、通電時に突然発生するダークスポットである。
図20に示されるNDSは、非点灯時には確認できず、点灯時に不点灯部位として確認できるダークスポットである。
図21に示されるBDSは、非点灯時にも黒点として確認でき、中央に焼けた跡が観察され、通電時に突然発生するダークスポットである。
【0108】
【表1】
【0109】
評価した3つの装置共に、780時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。また、ダークスポットの大きさは種類によらず500時間まで大きくならなかった。
【0110】
続いて、実施例2として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
評価した3つの装置共に、500時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。ダークスポットの大きさは基本的に500時間まで大きくならなかったが、一部のダークスポットでその大きさが大きくなるものが観察された。
【0113】
続いて、実施例3として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
評価した3つの装置共に、500時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。ダークスポットの大きさは基本的に500時間まで大きくならなかったが、一部のダークスポットでその大きさが大きくなるものが観察された。
【0116】
続いて、実施例4として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
評価した装置で、500時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。また、ダークスポットの大きさは基本的に500時間まで大きくならなかった。
【0119】
続いて、比較例1として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
3つの装置の内、2つの装置で、200時間経過時点で装置全体が不点灯となっていた。また、ダークスポットの大きさは種類によらず500時間まで大きくならなかった。
なお、測定数を増やすと、CVD後にポリシラザン無で発光領域全面にエポキシ樹脂を塗布した後、圧延アルミフィルムで封止した装置では、33装置中、22装置で装置全体が不点灯となった。
上記で、圧延アルミフィルムの代わりに、ガラス板で封止した装置では、33装置、全部の33装置で装置全体が不点灯となった。
【0122】
続いて、比較例2として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表6に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
評価した2つの装置共に、500時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。また、円のダークスポット(NDS)については、50時間経過時点から顕著にその直径が増大する結果となった。
【0125】
続いて、比較例2として3個の有機EL装置を作成して評価した10μm以上のダークスポットの種類、及び直径(μm)の加速試験時の経時変化の結果を表6に示す。
【0126】
【表7】
【0127】
評価した3つの装置共に、1589時間経過時点までで装置全体が不点灯となることはなかった。ダークスポットの大きさは基本的に751時間まで大きくならなかったが、一部のダークスポットでその大きさが大きくなるものが観察された。また、幾つかのダークスポットでは751時間経過後から急激にその径が大きくなった。緩衝層の縁を被覆するように硬質樹脂層積層されていないため、長時間経過後に水分が有機EL素子に侵入したためと考えられる。