特許第6192922号(P6192922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6192922-車両の緊急制動制御装置及びその方法 図000002
  • 特許6192922-車両の緊急制動制御装置及びその方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192922
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】車両の緊急制動制御装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20170828BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20170828BHJP
   B60W 10/188 20120101ALI20170828BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B60T7/12 C
   B60T7/12 B
   B60W30/09
   B60W10/188
   B60W10/06
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-247501(P2012-247501)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2013-119388(P2013-119388A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0129737
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 壯 燮
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/116558(WO,A1)
【文献】 特開2011−126319(JP,A)
【文献】 特開2007−210592(JP,A)
【文献】 特開2004−224262(JP,A)
【文献】 特開2011−065235(JP,A)
【文献】 特開2010−023769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60W 30/09
B60W 10/188
B60W 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアブレーキシステムと油圧ブレーキシステムを備える車両の状態情報に基づき緊急制動を制御する車両の緊急制動制御装置であって、
車両の前方道路上に位置した障害物を感知する障害物感知手段と、
車両用ネットワークを介し車両の状態情報を収集する情報収集手段と、
前記障害物感知手段が障害物を感知するに伴い、前記情報収集手段が収集した状態情報を分析して緊急制動の可否を判断したあと、前記車両の緊急制動を制御する制御手段と、
前記制御手段の制御に従い警報を鳴らす警報手段とを含み、
前記車両の状態情報は、車両の重量、ブレーキエア圧力、タイヤ空気圧、ステアリングホイールの操向角、加速ペダルの押圧程度、エンジントルク、エンジンRPM(Revolution Per Minute)を含み、
前記制御手段は、
前記車両の重量が第1臨界値を超過すれば、普通の状態より1秒乃至2秒速やかに緊急制動モードに進入するが、
前記車両のブレーキエア圧力が第2臨界値を超過しなければ、警報を鳴らすよう前記警報手段を制御すると共にブレーキエア圧力が第2臨界値を超過するようエア注入部を制御し、且つ油圧ブレーキシステムを併用して緊急制動モードに移行し、エア注入部の制御により第2臨界値を超過するまでの時間差を補うことを特徴とする車両の緊急制動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記タイヤ空気圧が第3臨界値を超過しないか、前記ステアリングホイールの操向角が第4臨界値の範囲を外れれば、緊急制動モードに進入せず警報を鳴らすよう前記警報手段を制御することを特徴とする請求項に記載の車両の緊急制動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記加速ペダルの押圧程度が第5臨界値を超過するか、前記エンジントルクが第6臨界値を超過するか、前記エンジンRPMが第7臨界値を超過すれば、緊急制動モードに進入せず警報を鳴らすよう前記警報手段を制御することを特徴とする請求項に記載の車両の緊急制動制御装置。
【請求項4】
燃料噴射機をさらに含み、
前記制御手段は、前記加速ペダルの押圧程度が第5臨界値を超過するか、前記エンジントルクが第6臨界値を超過するか、前記エンジンRPMが第7臨界値を超過すれば、燃料噴射を遮断するよう前記燃料噴射機を制御することを特徴とする請求項に記載の車両の緊急制動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の車両の緊急制動制装置が実行する車両の緊急制動制御方法であって、
障害物感知手段が車両の前方道路上に位置した障害物を感知する段階と、
情報収集手段が車両用ネットワークを介し車両の状態情報を収集する段階と、
制御手段が前記障害物感知手段で障害物を感知するに伴い、前記情報収集手段が収集した状態情報を分析して緊急制動の可否を判断する段階と、
前記判断結果、緊急制動が可能であれば緊急制動モードに進入する段階と、
前記判断結果、緊急制動が不可能であれば緊急制動モードに進入せず警報を鳴らす段階とを含むことを特徴とする車両の緊急制動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の緊急制動制御装置及びその方法に係り、より詳しくは、車両用ネットワーク通信を介し収集した車両の状態情報に基づき緊急制動を制御する車両の緊急制動制御装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には走行中減速又は停止させる役割を果たす制動装置が備えられている。このような制動装置は、エンジンの動力により発生する真空圧(エンジン吸入圧)を利用し、ブレーキペダルの踏力(Foot effort)を倍加させるブースター(Booster)と、このブースターにより倍加された圧力に従い、ブレーキ回路にブレーキオイル油圧を形成させるマスターシリンダー(Master Cylinder)と、ブレーキオイル圧力によりホイールの回転速度を減速又は停止させるホイールシリンダー(Wheel Cylinder)とで構成されている。ここで、上述のブースターは、通常、エンジン吸気マニフォールドの負圧を利用する真空式と、エンジンで駆動される圧縮機(compressor)から提供される圧力を利用する空気式とに区分される。
【0003】
上述のような制動装置は、その構成に関係なくドライバーがブレーキペダルを踏む行為が行われた以後車両の制動を開始するため、反応時間に問題のあるドライバーの場合に限界がある。これを補完するため提案されたAEBS(Advanced Emergency Brake System)は、レーダー(Radar)を備えて走行中の車両の前方に物体が存在する場合、この物体との相対速度及び隔離距離に基づき、ドライバーの制動可否に関係なく急制動を行う。
【0004】
しかし、このような従来のAEBSは、車両の状態を反映しないまま、物体の存在有無に従い急制動を行うため、急制動をしてはならない状況でさえ急制動を行い、却ってさらに大きい被害を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−348747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためのものであって、車両用ネットワークから収集した車両の状態情報に基づき緊急制動の可否を判断し、それに基づき緊急制動を行うことにより、急制動をしてはならない状況では急制動を行わないのでさらに大きい被害を防ぐ、車両の緊急制動制御装置及びその方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る緊急制動制御装置は、車両の前方道路上に位置した障害物を感知する障害物感知手段と、車両用ネットワークを介し車両の状態情報を収集する情報収集手段と、前記障害物感知手段が障害物を感知するに伴い、前記情報収集手段が収集した状態情報を分析し緊急制動の可否を判断したあと、前記車両の緊急制動を制御する制御手段と、前記制御手段の制御に従い警報を鳴らす警報手段とを含むことを特徴とする。また、上記目的を達成するための本発明に係る緊急制動制御方法は、障害物感知手段が車両の前方道路上に位置した障害物を感知する段階と、情報収集手段が車両用ネットワークを介し車両の状態情報を収集する段階と、制御手段が前記障害物感知手段で障害物を感知するに伴い、前記情報収集手段が収集した状態情報を分析して緊急制動の可否を判断する段階と、前記判断結果、緊急制動が可能であれば緊急制動モードに進入する段階と、前記判断結果、緊急制動が不可能であれば警報を鳴らす段階とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用ネットワークから収集した車両の状態情報に基づき緊急制動の可否を判断し、それに基づき緊急制動を行うことにより、急制動をしてはならない状況では急制動を行わないので、さらに大きい被害を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る車両の緊急制動制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明に係る車両の緊急制動制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両用ネットワーク通信を介し収集した車両の状態情報に基づき緊急制動を制御する車両の緊急制動制御装置及び方法の好ましい実施形態を詳しく説明する。本実施形態に係る車両の緊急制動制御装置の構成を図1に示したとおり、車両の緊急制動制御装置は、障害物感知部10、情報収集部20、警報部30及び制御部40を含む。なお、車両は、エアコンプレッサなどで発生させた圧縮エアによってブレーキを作動させるエアブレーキシステムを備えており、このエアブレーキシステムの他に油圧ブレーキシステムを有していても良い。
【0011】
障害物感知部10は、赤外線センサー、超音波センサー、レーダー(Radar)のうち何れか一つによって具現され、車両の前方に取り付けられて車両が走行する道路上に位置した障害物を感知する。情報収集部20は、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、フレックスレイ(FlexRay)などのような車両用ネットワークから車両の状態情報を収集する。ここで、車両の状態情報は、車両の重量、ブレーキエア圧力、タイヤ空気圧、ステアリングホイールの操向角、加速ペダルの押圧程度、エンジントルク、エンジンRPM(Revolution Per Minute)などを含む。タイヤ空気圧は、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)センサーが測定(検知)して測定したタイヤ空気圧測定値を車両用ネットワークへ伝達する。ステアリングホイールの操向角は、操向角センサーが測定(検知)して測定したステアリングホイールの操向角測定値を車両用ネットワークへ伝達する。また、この実施形態の緊急制動制御装置は、車両の重量、ブレーキエア圧力、加速ペダルの押圧程度、エンジントルク、エンジンRPMを夫々測定(検知)する各センサーを備えており、各センサーが測定した車両の重量測定値、ブレーキエア圧力測定値、加速ペダルの押圧程度測定値、エンジントルク測定値、エンジンRPM測定値を車両用ネットワークへ伝達する。
【0012】
警報部30は、制御部40の制御に従い警報を鳴らす。制御部40は、障害物感知部10が障害物を感知するに伴い直ちに緊急制動モードに進入せず、情報収集部20が収集した車両の状態情報を分析し、緊急制動の可否を判断したあと緊急制動モードに進入する。ここで、緊急制動モードは、一般のAEBSで用いられている周知慣用技術を採用することができ、その詳細な説明を省略する。このような制御部40の機能は、ECU(Electronic Control Units)が行うこともできる。
【0013】
以下、制御部40が各状態情報を分析して緊急制動の可否を判断する過程について説明する。この実施形態では、各状態情報の分析順序は以下に述べる順で行うことが好ましいが、例えば、車両の重量の分析を除き、各状態情報を順不同で分析し、障害物感知部10が感知する障害物の大きさ、障害物との離隔距離や離隔距離の変化などに応じて、緊急制動モードに進入(移行)することを優先するか、或いは、緊急制動モードに進入(移行)せず警報を鳴らすことを優先するかを判断した上で、緊急制動の可否を判断することもでき、このような分析順序例は、より多く緊急制動モードに進入しないで対処することを可能とする場合がある点では好ましい。
【0014】
車両の重量測定値が予め設定した第1臨界値を超過すれば車両が積載重量を超過するものと判断し、普通の状態より一定の時間(一例として1秒乃至2秒)速やかに緊急制動モードに進入する。これは、車両の重量が重いほど制動距離が長くなるため、これを補完するための過程である。
【0015】
車両のブレーキエア圧力測定値が予め設定した第2臨界値を超過しなければ、圧力が低いので制動が困難であると判断し、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。このとき、制御部40が、ブレーキエア圧力が第2臨界値を超過するようエア注入部(図示省略)を制御する。エア注入部は、エアブレーキシステムのエアコンプレッサを用いても良く、エアブレーキシステムのエアコンプレッサ以外に別途設けたエアコンプレッサを用いるか、又はこれら二つのエアコンプレッサを併用することもできる。また、車両が油圧ブレーキシステムを有している場合には、例えば、警報部30を介し警報を鳴らすと共に油圧ブレーキシステムを併用して緊急制動モードに移行し、エア注入部の制御により第2臨界値を超過するまでの時間差を補うこともできる。
【0016】
タイヤ空気圧測定値が予め設定した第3臨界値を超過できなければ、空気圧が低いので急制動時パンクの危険があるものと判断し、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。
【0017】
ステアリングホイールの操向角測定値が予め設定した第4臨界値の範囲(一例として直進する操向角に対し±5度)を外れると、緊急制動時に車両の転覆が発生するものと判断し、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。
【0018】
加速ペダルの押圧程度測定値が予め設定した第5臨界値(一例としてフルアクセルの80%)を超過すれば衝突の危険がないものと判断し、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。このとき、制御部40は燃料噴射を遮断するよう燃料噴射機(図示省略)を制御し不要な燃料の消耗を防ぐ。
【0019】
エンジントルク測定値が予め設定した第6臨界値(一例として100Nm)を超過する場合、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。このとき、制御部40は燃料噴射を遮断するよう燃料噴射機を制御し不要な燃料の消耗を防ぐ。
【0020】
エンジンRPM測定値が予め設定した第7臨界値(一例として1600)を超過する場合、緊急制動モードに進入せず警報部30を介し警報を鳴らす。このとき、制御部40は燃料噴射を遮断するよう燃料噴射機を制御し不要な燃料の消耗を防ぐ。なお、制御部40は、上述した各状態情報に対する緊急制動可否の判断過程を、少なくとも1つ以上組み合わせて最終の緊急制動可否を判断することもできる。
【0021】
本実施形態に係る車両の緊急制動制御方法のフローチャートを図2に示したように、先ず、障害物感知部10が車両の前方道路上に位置した障害物を感知する(201)。続いて、情報収集部20が車両用ネットワークを介し車両の状態情報を収集する(202)。制御部40が障害物感知部10で障害物を感知するに伴い、情報収集部20が収集した状態情報を上述のように分析して緊急制動の可否を判断する(203)。この判断結果(203)、緊急制動が可能であれば緊急制動モードに進入し(204)し、緊急制動が不可能であれば緊急制動モードに進入せず警報を鳴らす(205)。このような過程を介し、急制動をしてはならない状況では急制動を行わないので、さらに大きい被害を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0022】
10 障害物感知部
20 情報収集部
30 警報部
40 制御部
図1
図2