特許第6192942号(P6192942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192942
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20170828BHJP
   A61G 5/08 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A61G5/10 703
   A61G5/08 702
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-15803(P2013-15803)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-144212(P2014-144212A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年1月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、2012年9月26日−28日に行われた第39回 国際福祉機器展 H.C.R.2012に展示
(73)【特許権者】
【識別番号】598026851
【氏名又は名称】株式会社カワムラサイクル
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】石脇 和幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 治人
(72)【発明者】
【氏名】香川 有希
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−270436(JP,A)
【文献】 特開2001−299821(JP,A)
【文献】 特開2012−231840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00−5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に背シートが取り付けられるとともに下端部に第1の座シートが取り付けられる背フレーム部と、該背フレーム部を支持するとともに前方に前輪及び後方に後輪が取り付けられるメインフレーム部とを有する一対の本体フレームと、
上記メインフレーム部に設けられ、第2の座シートが取り付けられるシートフレームとを備え、
上記背フレーム部は、人の臀部及び背中に沿うように下端部から上端部に向けて後方に湾曲形成され、連続して、前方に湾曲形成されて、側面視略S字状となるように湾曲して設けられ
上記シートフレームは、人の大腿部に沿うように上方に湾曲して設けられていることを特徴とする車椅子。
【請求項2】
上記シートフレームは、上記メインフレーム部に設けられた、上記一対の本体フレームを幅方向に折り畳むクロスフレームの上端部に設けられていることを特徴とする請求項に記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子は、身体障害者、高齢者及び負傷者等の歩行困難な人が移動するための手段として使用されており、例えば、介護者の手押し又は使用者による自力走行によって移動がなされる(例えば特許文献1参照)。このような従来の車椅子では、使用するにつれ使用者の体、例えば臀部等が前方へずれてしまい、仙骨座りや滑り座り等の所謂ずっこけ座り状態となることがある。したがって、従来の車椅子では、座シート上の前方側にクッションを敷いたり、座シートの張り調整等を行って、前ずれを防止していた。しかしながら、このような従来の車椅子では、クッションがずれたり、クッションや座シートが経年変化したりすることで、前ずれを防止する効果が減退する虞がある。更に、座シートの張り調整を行ったり、乗る毎にクッションで調整したりすることは、煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2004−242895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、容易に前ずれを防止することが可能な車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車椅子は、上端部に背シートが取り付けられるとともに下端部に第1の座シートが取り付けられる背フレーム部と、背フレーム部を支持するとともに前方に前輪及び後方に後輪が取り付けられるメインフレーム部とを有する一対の本体フレームと、メインフレーム部に設けられ、第2の座シートが取り付けられるシートフレームとを備え、背フレーム部は、人の臀部及び背中に沿うように下端部から上端部に向けて後方に円弧状に湾曲形成され、連続して、前方に円弧状に湾曲形成されて、側面視略S字状となるように湾曲して設けられ、シートフレームは、人の大腿部に沿うように上方に湾曲して設けられている。
【0007】
更に、シートフレームは、メインフレーム部に設けられた、一対の本体フレームを幅方向に折り畳むクロスフレームの上端部に設けられるようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、背フレーム部が人の臀部及び背中に沿うように下端部から上端部に向けて後方に湾曲形成され、連続して、前方に湾曲形成されて、側面視略S字状となるように湾曲して設けられているので、使用者の身体との接触面を増やすことができ、従来のようにクッション等を用いなくとも、容易に前ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用した車椅子を示した斜視図である。
図2】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームを示した斜視図である。
図3】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームを示した側面図である。
図4】本発明を適用した車椅子を示した側面図である。
図5】上部フレーム部材を後方に折り畳んだ状態の車椅子を示した側面図である。
図6】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームに、背シート、第1の座シート及び第2の座シートを取り付けた状態を示した斜視図である。
図7】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームを示した背面図である。
図8】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームを示した底面図である。
図9】本発明を適用した車椅子を示した底面図である。
図10】本体フレーム、クロスフレーム及びシートフレームを示した上面図である。
図11】フットレストを示した斜視図である。
図12】(A)は、アームレストを示した斜視図であり、(B)は、アームレストの縦断面図である。
図13】(A)は、側板を示した正面斜視図であり、(B)は、側面を示した裏面斜視図である。
図14】幅方向に折り畳んだ状態の車椅子を示した斜視図である。
図15】背シートを示した展開図である。
図16】本発明を適用した車椅子を示した縦断面図である。
図17】第1の座シートを示した展開図である。
図18】第2の座シートを示した展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した車椅子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。更に、以下の順で説明を行う。
1.車椅子の構成の説明
1−1.本体フレーム
1−1−1.背フレーム部
1−1−2.メインフレーム部
1−1−3.サイドフレーム部
1−2.クロスフレーム
1−3.シートフレーム
1−4.シート
1−4−1.背シート
1−4−2.第1の座シート
1−4−3.第2の座シート
1−5.その他の構成
2.変形例
【0011】
<1.車椅子の構成の説明>
図1に示すように、本発明を適用した車椅子1は、背シート2及び第1の座シート3が取り付けられ、幅方向に相対する左右一対の本体フレーム10,10と、一対の本体フレーム10,10を幅方向に折り畳むクロスフレーム11と、クロスフレーム11の上端部に設けられ、第2の座シート4が取り付けられるシートフレーム12とを備えている。なお、以下、背シート2、第1の座シート3及び第2の座シート4をまとめて単にシート5とも言う。
【0012】
<1−1.本体フレーム>
図2に示すように、本体フレーム10は、例えば、スチール、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属材料やカーボン等で形成された断面円形状や多角形状のパイプ等からなるフレーム部材で形成されている。具体的に、本体フレーム10は、側面視略S字状に形成された背フレーム部20と、背フレーム部20を支持するとともに、前輪36及び後輪34が取り付けられるメインフレーム部30と、背フレーム部20とメインフレーム部30とに亘って設けられ、アームレスト41が取り付けられるサイドフレーム部40とを有している。
【0013】
<1−1−1.背フレーム部>
図3に示すように、背フレーム部20は、下部フレーム部材21と、背折れ金具22を介して下部フレーム部材21に対して後方に回動可能に支持された上部フレーム部材23とを有している。図4に示すように、背フレーム部20は、使用時には上部フレーム部材23が背折れ金具22のロック機構よってロックされることで、下部フレーム部材21に対して折り畳み不可なロック状態とされる。その一方で、背フレーム部20は、背折れ金具22のロック機構のロック状態を解除することで、折り畳み可能な状態に設けられる。したがって、車椅子1は、使用者100が例えば車椅子1を自動車等に乗せて移動する場合の保管時等に、図5に示すように、上部フレーム部材23を後方に折り畳むことで、小型化することができる。
【0014】
更に、図3に示すように、背折れ金具22は、使用者100がシート5に座った際に使用者100の背中100aに干渉しない位置に配置されている。例えば、背折れ金具22は、使用者100の背中100aのくぼみに対応する高さに配置されている。したがって、車椅子1は、使用者100がシート5に座った際に、背中100aに背折れ金具22が当たり難くなるので、乗り心地の向上を図ることができる。
【0015】
また、図3に示すように、背フレーム部20は、全体が側面視略S字状となるように湾曲されて設けられている。具体的には、背フレーム部20は、下部フレーム部材21が前方に湾曲され、上部フレーム部材23が後方に湾曲されるように設けられている。更に、背フレーム部20は、下部フレーム部材21自体も側面視略S字状に設けられており、下部フレーム部材21の下端側が人100の臀部100bに沿った形状となるように、後方に凹円弧状に湾曲形成され、連続して、下部フレーム部材21の上端側が人100の背中100aに沿った形状となるように、前方に凸円弧状に湾曲形成されている。
【0016】
この際、下部フレーム部材21の上端側の曲率半径R1は、80〜140mmとなるように設けられている。下部フレーム部材21の上端側の曲率半径R1が80mm未満であれば、下部フレーム部材21の曲率半径が小さくなりすぎるため、背中の形状に沿うことができず、使用者100の背中100aに下部フレーム部材21の曲率部(凸部)が当たり、使用者100が不快に感じる。また、下部フレーム部材21の上端側の曲率半径R1が140mmより大きいと、使用者の背中の形状に沿うことができなくなり、使用者100が不快に感じる。
【0017】
更に、下部フレーム部材21の下端側の曲率半径R2は、60〜100mmとなるように設けられている。すなわち、下部フレーム部材21の上端側の曲率半径R1は、下部フレーム部材21の下端側の曲率半径R2よりも、大きくなるように設けられている。下部フレーム部材21の下端側の曲率半径R2が60mm未満であれば、下部フレーム部材21の曲率半径が臀部100bの曲率半径よりも小さくなることから、臀部100bと下部フレーム部材21との接触が線接触となり、使用者100に対する体圧が大きくなり、使用者が不快に感じる。また、下部フレーム部材21の下端側の曲率半径R2が100mmより大きいと、下部フレーム部材21の曲率半径が臀部100bの曲率半径よりも大きくなることから、臀部100bの形状と下部フレーム部材21との形状がマッチせず、下部フレーム部材21の一部分で臀部100bを支えることになり、使用者100に対する体圧が大きくなり、使用者100が不快に感じる。
【0018】
したがって、背フレーム部20は、人100の背中100a及び臀部100bに沿った形状を有しているので、使用者100がシート5に座った際に使用者100との接触面を増やすことができる。よって、車椅子1は、従来の車椅子のようにクッション等を用いて調整することなく、単にシート5に座るだけで、使用者100が前すべりすることを防止することができる。更に、背フレーム部20は、使用者100がシート5に座った際に使用者100との接触面を増やすことができ、背フレーム部20の全体で荷重を受けることができるので、体圧分散をクッションなしで行うことができる。したがって、車椅子1は、乗り心地の向上を図ることができる。更に、背フレーム部20は、上部フレーム部材23が後方に湾曲されており、上部フレーム部材23においても、使用者100の背中100aにフィットするので、より乗り心地の向上を図ることができる。更に、背フレーム部20は、人100の背中100a及び臀部100bに沿った形状を有しているので、使用者100の姿勢を安定させることができ、より乗り心地の向上を図ることができる。
【0019】
更に、図4に示すように、後方に湾曲された背フレーム部20の上端部には、介助者が車椅子1を操作するときに把持するグリップ24が取り付けられる押手部25が設けられている。この押手部25は、図3に示すように、背フレーム部20の上部フレーム部材23の上部を、使用者100がシート5に座った状態での肩甲骨の位置よりも下部の位置から例えば10度後傾させた後に、後方に湾曲させるように、設けられている。したがって、車椅子1は、車椅子1が使用者100によって駆動及び操作される自走式の場合、駆動時に使用者100の肘や肩甲骨周辺が背フレーム部20に干渉することを防止することができ、漕ぎ易い。また、車椅子1は、車椅子1が介助者によって駆動及び操作される介助式の場合、シート5に座っている使用者100の肩甲骨周辺が背フレーム部20に干渉しないので、乗り心地の向上を図ることができる。なお、押手部25は、上部フレーム部材23の上部を10度後傾することに限定されるものではなく、シート5に座っている使用者100の肩甲骨周辺が背フレーム部20に干渉しない程度であれば良く、後傾する角度は適宜変更可能である。
【0020】
更に、図4に示すように、押手部25には、介助者が車椅子1の後輪34の回転を制動する後輪ブレーキ35aを作動させるための後輪ブレーキレバー26が取り付けられている。この後輪ブレーキレバー26は、車椅子1の後輪34に設けられた後輪ブレーキ35aにブレーキワイヤ27を介して連結されている。したがって、車椅子1は、介助者が後輪ブレーキレバー26を握ることによって、ブレーキワイヤ27を介して後輪ブレーキ35aが作動されて、後輪34の回転が制動されるようになっている。
【0021】
更に、後輪ブレーキレバー26は、グリップ24と略平行となるように、ブレーキワイヤ27を横向きに出すのではなく、グリップ24に対して所定の角度を付けてブレーキワイヤ27を斜め下向き又は下向きに出すようにしている。したがって、車椅子1は、ブレーキワイヤ27を横向きに出す場合よりも、ブレーキワイヤ27が背シート2に当たらなくなり、ブレーキワイヤ27への負担を少なくすることができる。また、車椅子1は、ブレーキワイヤ27が背シート2に当たらなくなり、ブレーキワイヤ27が利用者100の背中、特に肩甲骨周辺に当たらなくなるので乗り心地の向上を図ることができる。
【0022】
また、図6に示すように、背フレーム部20は、上部フレーム部材23に背シート2が取り付けられている。更に、背フレーム部20は、下部フレーム部材21の凹円弧状に湾曲された凹部湾曲部21aに第1の座シート3が取り付けられている。すなわち、車椅子1は、使用者100が座る座シートが第1の座シート3及び第2の座シート4と分離されており、更に、それぞれ異なるフレームで支持される構成を有している。したがって、車椅子1は、第1の座シート3を支持する凹部湾曲部21aを、クロスフレームに設けられた1つのシートフレームだけに座シートが取り付けられている従来の車椅子のそのシートフレームよりも、短く設けることができ、フレームの高剛性化を図ることができる。よって、車椅子1は、耐久性を高めることができる。なお、背シート2及び第1の座シート3については、後述する。
【0023】
更に、図6に示すように、背フレーム部20には、第1の座シート3下であって、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a上に、第1の座シート3の弛みを調整する調整ベルト28が取り付けられている。換言すると、第1の座シート3は、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a上に取り付けられた調整ベルト28上に設けられている。この調整ベルト28は、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a,21a間に亘って設けられたベルト28aと、ベルト28aの全長が調整可能な長さ調整部材28bとを有している。したがって、調整ベルト28は、例えば、第1の座シート3の張りがなくなり、弛んだ際に長さ調整部材28bによってベルト28aの全長を短くしてベルト28aを張ることで、第1の座シート3の弛み量を調整することができる。なお、調整ベルト28を凹部湾曲部21a上に複数個設けて、それぞれのベルト28aの全長を調整することで、より詳細に第1の座シート3の弛み量を調整するようにしても良い。
【0024】
<1−1−2.メインフレーム部>
メインフレーム部30は、図2及び図3に示すように、背フレーム部20の下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aに連結されるとともに凹部湾曲部21aから下方向に延設された後部メインフレーム部材31と、後部メインフレーム部材31の下端部に連結されて前方向に延設された下部メインフレーム部材32と、下部フレーム部材21の下端部近傍から前方向に延設された後に下方に湾曲されて、下部メインフレーム部材32の前端部と連結された上部メインフレーム部材33とを有している。
【0025】
後部メインフレーム部材31は、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aから下方向に向けて延設されており、図1に示すように、幅方向の外側の面の下端部近傍に後輪34が回転自在に取り付けられている。更に、この後輪34には、外側に後輪34よりも一回り小さなリング状のハンドリム34aが取り付けられている。更に、この後輪34には、バンド型ブレーキ等の後輪ブレーキ35aが設けられており、押手部25の後輪ブレーキレバー26が作動されることによって、回転が制動されるようになっている。なお、後輪ブレーキ35aは、バンド型ブレーキに限定されるものではなく、その他公知のブレーキを用いるようにしても良い。
【0026】
更に、図7に示すように、後部メインフレーム部材31は、後部メインフレーム部材31,31間の幅W1が下部フレーム部材21,21間の幅W2よりも狭くなるように設けられている。具体的には、後部メインフレーム部材31は、後輪34が取り付けられる直線部31aと、直線部31aと下部フレーム部材21とを連結する連結部31bとを有している。ここでは、連結部31bが内側に湾曲されて、直線部31a,31a間の幅W1が下部フレーム部材21,21間の幅W2よりも狭くなるように設けられている。したがって、車椅子1は、後部メインフレーム部材31が直線部31aだけからなる場合よりも、後輪34,34間の幅を狭くすることができ、全幅を小さくすることができる。更に、後部メインフレーム部材31の連結部31bと下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aとの間には、強度を補強する補強部31cが設けられている。なお、直線部31aと連結部31bとの間に補強部31cを設けるようにしても良く、直線部31aと連結部31bとの間及び連結部31bと凹部湾曲部21aとの間に補強部31cを設けるようにしても良い。
【0027】
下部メインフレーム部材32は、図2に示すように、後部メインフレーム部材31の下端部近傍に連結されるとともに、車椅子1の前方向に延設されている。更に、下部メインフレーム部材32は、下部メインフレーム部材32,32間の前方側の幅W3が後方側の幅W4よりも幅広となるように設けられている。具体的には、図8に示すように、下部メインフレーム部材32は、後部メインフレーム部材31の下端部と連結される直線状の後方部32aと、後方部32a,32a間の幅W4よりも幅広の幅W3を有するように設けられた前方部32bと、後方部32aと前方部32bとを連結する連結部32cとを有している。したがって、車椅子1は、下部メインフレーム部材32の前方側が後方側よりも幅広に設けられているので、使用者100がシート5に座った状態で容易に足漕ぎすることができる。更に、車椅子1は、フレーム間口を従来よりも広げたことにより、介助者が使用者100の移乗動作を行う際に介助者が下部メインフレーム部材32,32間に容易に踏む込みことができる。したがって、容易に介助者が使用者100の移乗動作を行うことができ、容易に介護することができる。
【0028】
また、連結部32cは、後輪34よりも前方に配置されるように設けられている。更に、前方部32bは、最大幅が後輪34,34間の幅と略同じ又はそれよりも小さくなるように設けられている。更に、前方部32bには、下方向に向けて前輪36が回転自在に取り付けられている。ここでは、前輪取付部36aが前方部32bと連結部32cとの境界部に設けられて、前輪36と後輪34とが、図9に示すように、平面視で位相が一致するように設けられている。すなわち、左右それぞれの前輪36と後輪34は、互いに平行な略同一直線上に並ぶように設けられている。したがって、車椅子1は、例えば段差部等に設けられたスロープの幅が狭いものであっても対応することができる。
【0029】
上部メインフレーム部材33は、図3に示すように、上端部が背フレーム部20の下部フレーム部材21の下端部近傍の下方側に連結されるとともに、下部フレーム部材21の下端部近傍から車椅子1の前方向に下部メインフレーム部材32と略平行に延設された後に、下方に向けて湾曲されて、下端部が下部メインフレーム部材32の前端部よりも更に下方向に延設するように、下端部近傍が下部メインフレーム部材32の前端部に連結されている。したがって、図10に示すように、上部メインフレーム部材33は、下部メインフレーム部材32の前方側が後方側よりも幅広に設けられているので、それに沿って平面視略ハの字状に形成されている。
【0030】
更に、図1に示すように、上部メインフレーム部材33の下端部には、例えば使用者100が車椅子1に乗った際に足を支えるフットレスト37が上部メインフレーム部材33の軸線方向と略直交するように内側に向けて取り付けられている。具体的に、このフットレスト37は、例えば、樹脂材料等で形成され、図11に示すように、例えば板状に形成されており、一方(外側)の側面に上部メインフレーム部材33の下端部が挿通される挿通部37aが形成されている。更に、挿通部37aの周囲には、挿通部37aを前後方向から挟み込むように、フットレスト37を上部メインフレーム部材33の下端部に締結するボルト38aが挿通される貫通部37bを有する一対の取付部37c,37cが形成されている。更に、取付部37cの挿通部37a側の面には、上部メインフレーム部材33に当接する半月ワッシャー39が配設されている。この半月ワッシャー39は、略中央部にボルト38aが挿通される貫通孔39aを有する円筒状に形成されており、一端面39bが上部メインフレーム部材33の下端部の外形に対応するように凹円弧状に形成され、他端面39cが平坦に形成されている。
【0031】
したがって、フットレスト37は、半月ワッシャー39を他端面39cを取付部37cの挿通部37a側の面に向けて配設させた状態で、挿通部37aに上部メインフレーム部材33の下端部を挿通させて、半月ワッシャー39の一端面39bを上部メインフレーム部材33に当接させつつ、取付部37cの貫通部37bと上部メインフレーム部材33の下端部近傍に形成された複数の貫通孔33aの中から一の貫通孔33aとを一致させた後に、ボルト38aを取付部37cの貫通部37bと半月ワッシャー39の貫通孔39aと上部メインフレーム部材33の貫通孔33aとに挿通されてナット38bに締結させることで、上部メインフレーム部材33の下端部に取り付けることができる。更に、フットレスト37は、ボルト38a及びナット38bの締結状態を緩めることで、ボルト38a(貫通部37b、貫通孔39a)の軸方向を中心にして、上方(外側)に回動することができ、上部メインフレーム部材33に近接するように跳ね上げることができる。更に、フットレスト37は、ボルト38a及びナット38bの締結状態を解除して取り外した後に、上部メインフレーム部材33に沿って上下方向に移動させて、取付部37cの貫通部37bを他の貫通孔33aと一致させることで、高さ調整(位置変更)することができる。
【0032】
更に、半月ワッシャー39の他端面39cには、取付部37cの貫通部37bに挿通される突起39dが形成されている。この突起39dは、取付部37cの貫通部37bよりも一回り小さな外径を有し、例えば半月ワッシャー39の他端面39cの貫通孔39aの周囲に形成されている。したがって、フットレスト37は、半月ワッシャー39の突起39dが取付部37cの貫通部37bに挿通されているので、フットレスト37の高さ調整(位置変更)する際に、上部メインフレーム部材33に沿って上下方向に移動させても、半月ワッシャー39も追従して上下方向に移動する。よって、この車椅子1は、容易にフットレスト37を高さ調整(位置変更)することができる。
【0033】
更に、メインフレーム部30には、図4に示すように、後部メインフレーム部材31の直線部31aと上部メインフレーム部材33とに亘って、駐車時に使用する駐車ブレーキ35bを取り付ける駐車ブレーキ取付フレーム部材30aを設けるようにしても良い。
【0034】
更に、メインフレーム部30は、上部メインフレーム部材33の下端部近傍のフットレスト37よりも上方に、足が後方へ落ちないように支える足ベルトを更に設けるようにしても良い。この場合、足ベルトは、ヒールループ式にすることで、車椅子1を幅方向に折り畳む際に邪魔とならず、容易に折り畳むことができる。
【0035】
<1−1−3.サイドフレーム部>
サイドフレーム部40は、図3及び図4に示すように、上方側にアームレスト41が取り付けられる第1のアームサポート部材42と、第1のアームサポート部材42の中途部とメインフレーム部30の上部メインフレーム部材33とに亘って設けられ、第1のアームサポート部材42を支持する第2のアームサポート部材43とを有している。
【0036】
第1のアームサポート部材42は、図3に示すように、背フレーム部20の下部フレーム部材21の上端部の近傍から前方向に下部メインフレーム部材32や上部メインフレーム部材33と略平行に延設されている。更に、第1のアームサポート部材42は、例えば背折れ金具22と略同じ高さとなるように配置されている。更に、第1のアームサポート部材42は、基端部42aが下方に湾曲されて、下部フレーム部材21の上端部近傍に連結されている。したがって、車椅子1は、第1のアームサポート部材42の基端部を下方に湾曲させることなく直線的に下部フレーム部材21の上端部近傍に連結される場合よりも、第1のアームサポート部材42が同じ高さの場合、背折れ金具22の位置を低く配置することができる。よって、車椅子1は、上部フレーム部材23を折り畳んだ際の高さ寸法を小さくすることができる。
【0037】
更に、第1のアームサポート部材42は、図3に示すように、先端部が第2のアームサポート部材43の上端部よりも前方に延設され、第1のアームサポート部材42の先端部の下方に隙間を有するように設けられている。したがって、車椅子1は、先端部が第2のアームサポート部材43の上端部よりも前方に延設されることなく、先端部が第2のアームサポート部材43の上端部と連結された場合よりも、アームレスト41が握り易い。
【0038】
更に、図4に示すように、第1のアームサポート部材42の上方側には、使用者100が肘を置いたり、座位のバランスを保持するためのアームレスト41が取り付けられている。このアームレスト41は、例えば、木や樹脂材料等で形成され、図12(A)及び図12(B)に示すように、柱状又は板状をなし、下面に第1のアームサポート部材42が収容される溝41aが形成されている。更に、車椅子1の幅方向の外側となるアームレスト41の側面には、アームレスト41と溝41a内に収納された第1のアームサポート部材42とを締結するボルト44aが挿通される挿通孔41bが形成されている。この挿通孔41bは、アームレスト41の長手方向に複数個形成されている。例えばここでは、挿通孔41bは、アームレスト41の長手方向の両端部に1個、合計2個形成されている。更に、この挿通孔41bは、内径がボルト44aの頭部の外径よりもやや大きくなるように形成されている。したがって、挿通孔41bは、内部にボルト44aの頭部まで収容することができ、ボルト44aの頭部が外部に突出することを防止することができる。更に、溝41aの内壁41cには、挿通孔41bに対向する位置に、ボルト44aと共にアームレスト41と第1のアームサポート部材42とを締結するナット44bが収容されるナット収容部41dが形成されている。
【0039】
このようなアームレスト41は、溝41a内に第1のアームサポート部材42を収容して、挿通孔41bを第1のアームサポート部材42の側面に形成された貫通孔42bと一致させて、第1のアームサポート部材42の上方側に配置した後に、側方からカラー部材45を挿通孔41bに挿通するとともに、ボルト44aを挿通孔41bとカラー部材45と第1のアームサポート部材42の貫通孔42bとに挿通してナット収容部41dに収納されたナット44bに締結することで、第1のアームサポート部材42に取り付けられる。
【0040】
すなわち、アームレスト41は、従来は縦方向に取付作業が行われていたのに対して、横方向から取付作業を行うことができる。具体的には、アームレスト41は、従来は下面側からボルトの締結作業が行われていたのに対して、車椅子1の幅方向の外側からボルト44aの締結作業を行うことができる。したがって、アームレスト41は、従来のようにボルトが下方に突出してシート5に座っている使用者100の大腿部100c等の身体に接触することを防止することができ、乗り心地の向上を図ることができる。更に、アームレスト41は、取付作業を横方向から行うことができるので、従来のように取付作業を縦方向、特に、下面側から行うアームレストよりも、工具が入り易く、組立効率を向上させることができるとともに、メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、アームレスト41は、挿通孔41bの内部にボルト44aの頭部まで収容することができる、所謂、埋め込み式であるので、ボルト44aの頭部が外部に突出することを防止することができ、乗り心地や安全性の向上を図ることができる。
【0041】
更に、アームレスト41は、先端部に傾斜面41eが形成されている。したがって、アームレスト41は、例えばプッシュアップの際により握り込み易くなっている。更に、アームレスト41は、内部にアームレスト41の強度を補強する補強板46が設けられている。
【0042】
第2のアームサポート部材43は、図4に示すように、第1のアームサポート部材42の中途部とメインフレーム部30の上部メインフレーム部材33とに亘って設けられている。更に、第2のアームサポート部材43は、後輪34と同心円状になるように、湾曲して形成されている。また、第2のアームサポート部材43は、使用者100と面接触するように接触面積が大きくなるように形成されている。例えば、第2のアームサポート部材43は、楕円パイプや板部材で形成されている。したがって、使用者100がシート5に座った際に第2のアームサポート部材43に接触しても、使用者100と第2のアームサポート部材43、特に、使用者100の大腿部100cと第2のアームサポート部材43との接触面積が増えているので体圧分散されて、痛くなく、乗り心地の向上を図ることができる。
【0043】
更に、図1に示すように、本体フレーム10には、後輪34から使用者100を保護する側板50が取り付けられている。この側板50は、例えば樹脂材料等で形成され、図4及び図13に示すように、上面部50aが後輪34の外径よりもやや大きな同心円状になるように、円弧状に形成されている。そして、側板50は、本体フレーム10の幅方向の外側に配置されて、側面部50bが背フレーム部20の下部フレーム部材21にボルトやリベット等の締結部材によって締結されて取り付けられ、下面部50cがメインフレーム部30の上部メインフレーム部材33にボルトやリベット等の締結部材によって締結されて取り付けられている。なお、側板50は、ボルトによって締結することで、標準工具で交換することができ、容易に交換作業を行うことができる。
【0044】
更に、側板50は、図13に示すように、上面部50aの縁を外側(後輪34側)に折り曲げることで、鍔部51が設けられている。すなわち、鍔部51は、後輪34の外径に沿うように形成されている。したがって、鍔部51は、後輪34の泥除けとして機能し、車椅子1を屋外等で使用する場合に、衣服等への泥はねや、自走する際に腕や服の袖口等が後輪34と触れて汚れることを防止することができる。更に、車椅子1は、泥除けを別途設けない分、構成を簡素化でき、部品点数を削減することができ、コストを低減することができる。更に、鍔部51は、補強部として機能するので、側板を単に板状に設けて同じ程度の剛性を設けようとした場合、それらのものよりも、全体として軽量化を図ることができる。
【0045】
更に、側板50は、図4及び図13に示すように、側板50,50間の空間部と外部とを連通させる連通部52が形成されている。この連通部52は、切り欠き又は貫通孔等で構成されている。ここでは、連通部52は、側板50の側面部50bと下面部50cとのコーナ部を、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aやシート5が側方から視認可能な程度切り欠くようにして形成されている。したがって、車椅子1は、例えばシート5上に溜まった塵埃やゴミ等を連通部52から容易に外部に捨てることができ、容易に掃除することができる。特に、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a等に溜まった塵埃やゴミ等を連通部52から容易に外部に捨てることができる。
【0046】
更に、側板50は、内側の主面部50dに、外側に向けて凹部53が形成されている。この凹部53は、例えば、側板50の内側の主面部50dに、少なくとも1個形成されている。ここでは、凹部53は、半球状に形成されており、上面部50aに沿って等間隔に4個形成されている。したがって、凹部53は、補強部として機能し、側板50を単に板状に設けた場合よりも剛性を大きくすることができる。更に、凹部53は、側板50を単に板状に設けて同じ程度の剛性を設けようとした場合よりも、全体として厚さを薄くすることができ、軽量化を図ることができる。更に、凹部53は、使用者100、特に使用者100の大腿部100cと側板50との接触面積を減少させるので、不快感の減少や、べたつき等を少なくすることができる。なお、凹部53は、半球状に限定されるものではなく、多角形状や条状であってもよく、形状及び個数は適宜変更可能である。
【0047】
<1−2.クロスフレーム>
クロスフレーム11は、本体フレーム10と同様に、例えば、スチール、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属材料やカーボン等で形成された断面円形状や多角形状のパイプ等からなるフレーム部材で形成されている。このクロスフレーム11は、図14に示すように、上述したような構成を有する一対の本体フレーム10,10を、幅方向に折り畳み可能に連結するものである。具体的に、クロスフレーム11は、図2に示すように、一対のクロスフレーム部材11a,11aを有している。この一対のクロスフレーム部材11a,11aは、下端部が連結ピンを介して下部メインフレーム部材32に回動可能に取り付けられているとともに、その中央部で回動軸によってX状に交差されて連結されており、この回動軸を支点に相互回動可能に設けられている。更に、クロスフレーム部材11aは、上端部にシートフレーム12が連結されている。
【0048】
したがって、図14に示すように車椅子1を折り畳む場合には、先ず、一対の本体フレーム10,10を互いに近づける。すると、一対のクロスフレーム部材11a,11aの上端部が上方に回動され、シートフレーム12がメインフレーム部30の上部メインフレーム部材33上に設けられた受け具11bから離間されて、一対の本体フレーム10,10が幅方向に折り畳み可能な状態となる。次いで、一対の本体フレーム10,10を更に近づけることで、車椅子1を幅方向に折り畳むことができる。その一方で、車椅子1を折り畳まれた状態から元の使用状態に戻す場合には、一対の本体フレーム10,10を幅方向に離間させて、一対のクロスフレーム部材11a,11aの上端部を下方に回動させ、シートフレーム12を受け具11bに嵌合させる。
【0049】
<1−3.シートフレーム>
シートフレーム12は、本体フレーム10及びクロスフレーム11と同様に、例えば、スチール、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属材料やカーボン等で形成された断面円形状や多角形状のパイプ等からなるフレーム部材で形成されている。具体的には、シートフレーム12は、図2に示すように、クロスフレーム11のクロスフレーム部材11a,11aの上端部に取り付けられている。このようなシートフレーム12は、図3に示すように、シート5に座った際の使用者100の足、特に大腿部100cに沿った形状となるように、後方から前方に向けて、第1の直線部12b、曲線部12c、第2の直線部12dの順に一体に形成されている。
【0050】
第1の直線部12bは、背フレーム部20の下部フレーム部材21に沿うように形成されている。更に、第1の直線部12bは、軸線方向の長さL1が30mm〜90mmとなるように設けられている。軸線方向の長さL1が30mm未満であれば、背フレーム部20との関係上、臀部100bに沿った形状にすることができなくなり、使用者100が違和感を覚えることで、乗り心地が悪くなる。また、軸線方向の長さL1が90mmより大きいと、前滑り防止効果が損なわれる。
【0051】
曲線部12cは、上方に凸状に湾曲形成され、ここでは、凸円弧状に形成されている。曲線部12cの曲率半径R3は、60〜100mmとなるように設けられている。曲線部12cの曲率半径R3が60mm未満であれば、シートフレーム12の曲率半径が小さすぎるため大腿骨100cの形状に沿うことができず、使用者100の大腿骨100cに曲線部12cが当たり、使用者100が不快に感じる。また、曲線部12cの曲率半径R3が100mmより大きいと、シートフレーム12がフラット形状に近づくため、前滑り防止の効果が得づらくなる。更に、曲線部12cの曲率半径R3は、背フレーム部20の下部フレーム部材21の下端側の曲率半径R2以上になるように設けられている。
【0052】
第2の直線部12dは、従来の車椅子のシートフレームの前端部が地面に対して前上がりなのに対して、前下がりとなるように設けられている。例えば、ここでは、従来の車椅子のシートフレームの前端部が地面に対して4°〜5°前上がり(上向き)に設けられているのに対して、地面に対して2°〜5°程度前下がり(下向き)に設けられている。更に、第2の直線部12dは、軸線方向の長さL2が100mm〜160mmとなるように設けられている。軸線方向の長さL2が100mm未満であれば、一般的な大腿骨の長さに比べて、短すぎて、シートフレーム12で使用者100の大腿骨100cを十分に支えることができない。また、軸線方向の長さL2が160mmより大きいと、車椅子1のシート奥行が長くなってしまう。更に、前滑り防止効果が出ている状態でシート奥行が長くなりすぎると、お尻を前にずらせないので膝が曲げにくくなり、座り難くなる。なお、第2の直線部12dは、地面に対して前下がりに設けることが好ましいが、地面に対して前上がりに設けても良く、平行に設けても良い。
【0053】
したがって、シートフレーム12は、人100の大腿部100cに沿った形状を有しているので、使用者100がシート5に座った際に使用者100との接触面を増やすことができ、荷重を全体で受けることができる。よって、車椅子1は、従来の車椅子のようにクッション等を用いることなく、単にシート5に座るだけで、使用者100が前すべりすることを防止することができる。更に、シートフレーム12は、体圧分散をクッションなしで行うことができる。したがって、車椅子1は、乗り心地の向上を図ることができる。なお、シートフレーム12は、シート5に座った際の使用者100の足、特に大腿部100cに沿った形状となるように、全体を凸円弧状に形成して設けるようにしても良い。
【0054】
更に、以上のような構成を有するシートフレーム12には、図6に示すように、第2の座シート4が取り付けられる。なお、第2の座シート4については、後述する。
【0055】
<1−4.シート>
<1−4−1.背シート>
背シート2は、図1に示すように、背フレーム部20,20間に配置され、ボルト等の締結部材によって締結される等して、背フレーム部20の上部フレーム部材23及び下部フレーム部材21に取り付けられ、主に背凭れとなる。更に、背シート2は、例えば、ポリアミドやポリエステル等の丈夫な合成繊維等で形成されており、背フレーム部20,20間の幅及び長さに対応するように、矩形状に設けられている。
【0056】
更に、図15に示すように、背シート2の側部の上端側には、背シート2を上部フレーム部材23に取り付けるための第1の取付部2aが形成されている。第1の取付部2aは、上部フレーム部材23を前方から後方側まで包み込むことが可能な程度の幅(突出量)を有している。更に、第1の取付部2aには、上部フレーム部材23を前方から後方側まで包み込んだ際に、上部フレーム部材23の後方側に形成された背シート締結孔23aに対応する位置に、背シート2を上部フレーム部材23に取り付けるためのボルトが挿通される第1の貫通孔2bが形成されている。
【0057】
更に、背シート2の側部の下端側には、背シート2を下部フレーム部材21に取り付けるための第2の取付部2cが形成されている。第2の取付部2cは、第1の取付部2aよりも幅(突出量)が短く、下部フレーム部材21の内側の面を覆うことが可能な程度の幅(突出量)を有している。更に、第2の取付部2cには、下部フレーム部材21の内側の面を覆った際に、下部フレーム部材21の内側の面に形成された背シート締結孔21bに対応する位置に、背シート2を下部フレーム部材21に取り付けるためのボルトが挿通される第2の貫通孔2dが形成されている。そして、背シート2は、背フレーム部20,20間に配置された後に、ボルト等の締結部材で、第1の取付部2aが上部フレーム部材23に締結され、第2の取付部2cが下部フレーム部材21に締結されることで、背フレーム部20に取り付けられる。
【0058】
更に、図1に示すように、第1の取付部2a及び第2の取付部2cは、背フレーム部20の背折れ金具22と干渉しないように形成されている。したがって、背シート2は、容易に交換することができる。
【0059】
更に、背シート2は、図15に示すように、長手方向に所定の間隔をあけて横ステッチ2eが入るように設けられている。ここでは、横ステッチ2eは、長手方向に等間隔に設けられている。したがって、隣接する横ステッチ2e,2e間が凸部となり、背シート2には、長手方向に所定の間隔をあけて複数個の凸部が形成される。したがって、車椅子1は、使用者100の背中100aや衣服等と背シート2の凸部(凹部)とが係合して、凸部(凹部)が滑り止めとして機能するので、使用者100が前すべりすることを防止することができる。
【0060】
更に、背シート2は、幅方向の略中央部に長手方向に縦ステッチ2fが入るように設けられている。したがって、背シート2は、縦ステッチ2fを中心に容易に折り曲げることができる。よって、車椅子1は、容易に折り畳むことができる。
【0061】
<1−4−2.第1の座シート>
第1の座シート3は、主に人の臀部100bを含む人の上体を支持するものであり、背シート2と同様に、ポリアミドやポリエステル等の丈夫な合成繊維等で矩形状に設けられている。更に、第1の座シート3は、図6及び図16に示すように、背フレーム部20の下部フレーム部材21の下端部から凹部湾曲部21aまでを覆うような長さを有するとともに、下部フレーム部材21,21間に亘って配置可能な幅を有するように形成されている。更に、図17に示すように、第1の座シート3の幅方向の両端部には、下部フレーム部材21,21の上方側に形成された座シート締結孔21cに対応する位置に、第1の座シート3を下部フレーム部材21に取り付けるためのボルトが挿通される貫通孔3aが形成されている。そして、第1の座シート3は、下部フレーム部材21の下端部から凹部湾曲部21aまでを覆い、下部フレーム部材21,21間に亘って配置された後に、ボルト等の締結部材で下部フレーム部材21に締結されることで、下部フレーム部材21の上面側に取り付けられる。
【0062】
更に、第1の座シート3は、長手方向に所定の間隔をあけて横ステッチ3bが入るように設けられている。ここでは、横ステッチ3bは、長手方向に等間隔に設けられている。したがって、隣接する横ステッチ3b,3b間が凸部となり、第1の座シート3には、長手方向に所定の間隔をあけて複数個の凸部が形成される。したがって、この車椅子1は、使用者100の臀部100bや衣服等と第1の座シート3の凸部(凹部)とが係合する等して、凸部(凹部)が滑り止めとして機能するので、使用者100が前すべりすることを防止することができる。
【0063】
更に、第1の座シート3は、幅方向の略中央部に長手方向に縦ステッチ3cが入るように設けられている。したがって、第1の座シート3は、縦ステッチ3cを中心に容易に折り曲げることができる。よって、車椅子1は、容易に折り畳むことができる。
【0064】
<1−4−3.第2の座シート>
第2の座シート4は、主に人の大腿部100cを支持するものであり、背シート2及び第1の座シート3と同様に、ポリアミドやポリエステル等の丈夫な合成繊維等で矩形状に設けられている。更に、第2の座シート4は、図6及び図16に示すように、シートフレーム12の前端部から背フレーム部20の下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aまでを覆うような長さを有するとともに、シートフレーム12,12間に亘って配置可能な幅を有するように形成されている。すなわち、第2の座シート4は、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aにおいて第1の座シート3上に積層されて設けられる。したがって、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a上には、第1の座シート3及び第2の座シート4が設けられ、最も座圧の掛かる臀部100bのシートが2重となるので、車椅子1は、座り心地をより向上させることができる。
【0065】
更に、図18に示すように、第2の座シート4の幅方向の前端側には、シートフレーム12,12の上方側に形成された座シート締結孔12aに対応する位置に、第2の座シート4をシートフレーム12に取り付けるためのボルトが挿通される貫通孔4aが形成されている。そして、第2の座シート4は、シートフレーム12の前端部から凹部湾曲部21aまで覆い、シートフレーム12,12間に亘って配置された後に、ボルト等の締結部材でシートフレーム12に締結されることで、シートフレーム12の上面側に取り付けられる。すなわち、第2の座シート4は、後方(下部フレーム部材21の凹部湾曲部21a)が固定されていない。したがって、第2の座シート4の伸びが少なくなり、車椅子1は、座り心地をより向上させることができる。更に、車椅子1は、使用者100が第2の座シート4に座った際に、使用者100の臀部100bや大腿部100c等に第2の座シート4を固定するボルト等の締結部材が当たり難くなる。よって、車椅子1は、例えば床ずれ等しにくくなり、座り心地をより向上させることができる。
【0066】
更に、第2の座シート4は、長手方向に所定の間隔をあけて横ステッチ4bが入るように設けられている。したがって、隣接する横ステッチ4b,4b間が凸部となり、第2の座シート4には、長手方向に所定の間隔をあけて複数個の凸部が形成される。したがって、車椅子1は、使用者100の臀部100bや衣服等と第2の座シート4の凸部(凹部)とが係合する等して、凸部(凹部)が滑り止めとして機能するので、使用者100が前すべりすることを防止することができる。
【0067】
更に、第1の座シート3では全面に亘って長手方向に等間隔に横ステッチ3bを設けていたが、第2の座シート4では、間隔を異ならせて横ステッチ4bが設けられている。例えば、下部フレーム部材21の凹部湾曲部21aに対応する領域では、第1の間隔で横ステッチ4bが設けられ、シートフレーム12に対応する領域では、第1の間隔とは異なる第2の間隔で横ステッチ4bが設けられている。更に、シートフレーム12が凸円弧状に設けられ、第2の座シート4のシートフレーム12に対応する領域では他の領域よりも張っているので、第2の間隔が第1の間隔よりも広くなるように設けられている。
【0068】
更に、第2の座シート4は、幅方向の略中央部に長手方向に縦ステッチ4cが入るように設けられている。したがって、第2の座シート4は、縦ステッチ4cを中心に容易に折り曲げることができる。よって、車椅子1は、フレームを容易に折り畳むことができる。
【0069】
<1−5.その他の構成>
以上のような構成を有する車椅子1は、全幅が560mm〜580mmとなるように設けられている。ここで、住宅の基準となる公庫基準によると、廊下の幅は780mm以上であることとなっており、この寸法で廊下幅が設計されている場合、手すりを取り付けると有効幅は700mm程度なる。このような場合であっても、車椅子1は、全幅が560mmとなるように設けられ、従来の車椅子よりもコンパクトに設けられているので、手すりを付けた廊下であっても、従来よりも左右に大きな隙間を有する状態で走行することができ、例えば90度に折れ曲がった廊下であっても円滑に走行することができる。更に、車椅子1は、ハンドリム34aの位置が身体に近いので駆動時に力を入れやすく、容易に駆動することができる。
【0070】
<2.変形例>
なお、本発明を適用した車椅子1は、後輪34の外側にハンドリム34aが取り付けられ、使用者100によって駆動及び操作される自走式に限定されるものではなく、後輪34の外側にハンドリム34aが取り付けられておらず、介助者によって駆動及び操作される介助式であっても良い。
【0071】
更に、本発明を適用した車椅子1は、背フレーム部20の上部フレーム部材23が後方に折り畳み可能であることに限定されるものではなく、上部フレーム部材23と下部フレーム部材21とが一体に設けられていても良い。このような場合、車椅子1は、上述した様々な作用効果に加え、背折れ金具22を設けない分、構成を簡素化でき、部品点数を削減することができ、コストを低減することができる。
【0072】
更に、本発明を適用した車椅子1は、一対の本体フレーム10,10を幅方向に折り畳むことができることに限定されるものではなく、例えば、クロスフレーム11を設けずに、シートフレーム12を、メインフレーム部30の上部メインフレーム部材33の上面側に設けるようにしても良い。このような場合、車椅子1は、上述した様々な作用効果に加え、クロスフレーム11を設けない分、構成を簡素化でき、部品点数を削減することができ、コストを低減することができる。
【0073】
更に、本発明を適用した車椅子1は、アームレスト41を、挿通孔41bの内部にボルト44aの頭部まで収容することができる、所謂、埋め込み式に設けることが好ましいが、ボルト44aの頭部が突出するように設けても良い。更に、車椅子1は、アームレスト41の挿通孔41bを幅方向の外側となる側面に形成して、アームレスト41に対して幅方向の外側からボルト44aの締結作業を行うことに限定されるものではなく、挿通孔41bを幅方向の内側となる側面に形成して、アームレスト41に対して幅方向の内側からボルト44aの締結作業を行うようにしても良い。更に、車椅子1は、アームレスト41に対して横方向から取付作業が行われることが好ましいが、上方、斜め上、斜め下等、下面以外の面からアームレスト41の取付作業が行えるように、アームレスト41の挿通孔41bを設けるようにしても良い。更に、下面からアームレスト41の取付作業が行えるように、アームレスト41の挿通孔41bを設けるようにしても良い。更に、車椅子1は、ボルト44a等の締結部材によってアームレスト41の取付作業を行うことに限定されるものではなく、リベット等の締結部材によってアームレスト41の取付作業を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 車椅子、2 背シート、2a 第1の取付部、2b 第1の貫通孔、2c 第2の取付部、2d 第2の貫通孔、2e 横ステッチ、2f 縦ステッチ、3 第1の座シート、3a 貫通孔、3b 横ステッチ、3c 縦ステッチ、4 第2の座シート、4a 貫通孔、4b 横ステッチ、4c 縦ステッチ、5 シート、10 本体フレーム、11 クロスフレーム、11a クロスフレーム部材、11b 受け具、12 シートフレーム、12a 座シート締結孔、12b 第1の直線部、12c 曲線部、12d 第2の直線部、20 背フレーム部、21 下部フレーム部材、21a 凹部湾曲部、21b 背シート締結孔、21c 座シート締結孔、22 背折れ金具、23 上部フレーム部材、23a 背シート締結孔、24 グリップ、25 押手部、26 後輪ブレーキレバー、27 ブレーキワイヤ、28 調整ベルト、28a ベルト、28b 長さ調整部材、30 メインフレーム部、30a 駐車ブレーキ取付フレーム部材、31 後部メインフレーム部材、31a 直線部、31b 連結部、31c 補強部、32 下部メインフレーム部材、32a 後方部、32b 前方部、32c 連結部、33 上部メインフレーム部材、33a 貫通孔、34 後輪、34a ハンドリム、35a 後輪ブレーキ、35b 駐車ブレーキ、35 後輪ブレーキ、36 前輪、36a 前輪取付部、37 フットレスト、37a 挿通部、37b 貫通部、37c 取付部、38a ボルト、38b ナット、39 半月ワッシャー、39a 貫通孔、39b 一端面、39c 他端面、39d 突起、40 サイドフレーム部、41 アームレスト、41a 溝、41b 挿通孔、41c 内壁、41d ナット収容部、41e 傾斜面、42 第1のアームサポート部材、42a 基端部、42b 貫通孔、43 第2のアームサポート部材、44a ボルト、44b ナット、45 カラー部材、46 補強板、50 側板、50a 上面部、50b 側面部、50c 下面部、50d 主面部、51 鍔部、52 連通部、53 凹部、100 使用者(人)、100a 背中、100b 臀部、100c 大腿部
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