特許第6192947号(P6192947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192947
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】端子金具付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20170828BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-30764(P2013-30764)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160591(P2014-160591A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月19日
【審判番号】不服2016-13618(P2016-13618/J1)
【審判請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【弁理士】
【氏名又は名称】陸名 智之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 冨岡 和人
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−69449(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096526(WO,A1)
【文献】 特開2012−155892(JP,A)
【文献】 特開平9−115564(JP,A)
【文献】 特開2010−165514(JP,A)
【文献】 実開平7−36364(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/122622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部と該導体部の外周を包囲する絶縁被覆部とを含む電線と、該電線の端末部に接続される電線接続部を含む端子金具と、を有してなる端子金具付き電線において、
前記端子金具は、
接続相手端子との接続部分となる相手端子接続部と前記電線接続部とを連結する中間部を有してなり、
前記電線接続部は、
前記電線の延在方向における前端側に設けられ、かつ前記端末部の先端の前記絶縁被覆部が除去されることによって露出された前記導体部に圧着される露出導体圧着部と、
前記電線の延在方向における後端側に設けられ、かつ前記絶縁被覆部に圧着される絶縁被覆圧着部と、
前記電線の延在方向に沿って前記露出導体圧着部と前記絶縁被覆圧着部との間を前記露出された導体部が外部に露出されないように一体的に連接する中間一体連接部と、
を有してなり、
前記電線接続部の内側の面の、少なくとも前記電線の延在方向における前端部および後端部、さらに、前記中間部の内側の面に絶縁樹脂の層が形成されてなり、かつ前記電線接続部の内側の面の、前記導体部に圧着される部分の少なくとも一部に前記絶縁樹脂の層の未形成部分が形成されてなり、
前記電線は、
前記露出された導体部の先端部が前記露出導体圧着部の前記先端部側の前端開口よりも前記露出導体圧着部側、かつ、前記前端開口近傍位置に位置されてなり、
前記露出導体圧着部は、
前記前端開口が塞ぐために圧着変形されることなく開口された状態になっている
ことを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項2】
前記電線接続部は、
板状部分の両側端部が合わせられた筒状をなし、
前記絶縁被覆圧着部は、
前記両側端部がスリット状に切り込まれることによって片状に形成されてなる一対の圧着片部
を有してなることを特徴とする請求項1に記載の端子金具付き電線。
【請求項3】
前記絶縁被覆圧着部は、
少なくとも一箇所に貫通孔が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の端子金具付き電線。
【請求項4】
前記露出導体圧着部、および前記絶縁被覆圧着部は、
前記内側の面が凹凸形状に形成されてなる凹凸表面部を有してなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の端子金具付き電線。
【請求項5】
前記電線接続部は、
板状部分の両側端部が重なり合う筒状に形成されてなることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の端子金具付き電線。
【請求項6】
前記露出導体圧着部は、
前記重なり合う両側端部のうち外側の側端部の内側の面に前記絶縁樹脂の層が形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の端子金具付き電線。
【請求項7】
前記導体部は、
アルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなり、
前記端子金具は、
銅、あるいは銅合金からなる
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の端子金具付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体部と該導体部の外周を包囲する絶縁被覆部とを含む電線と、電線の端末部に接続される電線接続部を含む端子金具と、を有してなる端子金具付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤーハーネス等には、導体部と導体部の外周を包囲する絶縁被覆部とを含む電線と、電線の端末部に接続される電線接続部を含む端子金具と、を有してなる端子金具付き電線が用いられている。
ところで、近年、自動車業界では環境への配慮から、車両を軽量化することによって燃費を向上させることが重要な課題となっている。このため、銅に比して軽量なアルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなる導体部を用いた導体部と該導体部の外周を包囲する絶縁被覆部とを含む電線と、該電線の端末部に接続される電線接続部を含む端子金具と、を有してなる端子金具付き電線が注目されている。
しかしながら、アルミニウムは水および銅イオンの存在下では腐食し易いため、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなる導体部と銅からなる端子金具との接続部分に水が侵入すると腐食し易いという問題があった。
そこで、導体部への水の付着を防ぐことによって導体部の腐蝕を防止するため、例えば特許文献1には、露出された導体部が配置される面に導体部の腐蝕を防止する防食剤が塗布されている端子金具付が記載さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された端子金具付を用いた端子金具付き電線は、芯線バレル片と、絶縁被覆バレル片との間で芯線の露出される部分が大きいため、バレル片の内側に塗布された防食剤がその露出部分に拡がりきれず、結果的に防食されないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、防食性能を向上させることができる端子金具付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る端子金具付き電線は、導体部と該導体部の外周を包囲する絶縁被覆部とを含む電線と、該電線の端末部に接続される電線接続部を含む端子金具と、を有してなる端子金具付き電線において、前記端子金具は、接続相手端子との接続部分となる相手端子接続部と前記電線接続部とを連結する中間部を有してなり、前記電線接続部は、前記電線の延在方向における前端側に設けられ、かつ前記端末部の先端の前記絶縁被覆部が除去されることによって露出された前記導体部に圧着される露出導体圧着部と、前記電線の延在方向における後端側に設けられ、かつ前記絶縁被覆部に圧着される絶縁被覆圧着部と、前記電線の延在方向に沿って前記露出導体圧着部と前記絶縁被覆圧着部との間を前記露出された導体部が外部に露出されないように一体的に連接する中間一体連接部と、を有してなり、前記電線接続部の内側の面の、少なくとも前記電線の延在方向における前端部および後端部、さらに、前記中間部の内側の面に絶縁樹脂の層が形成されてなり、かつ前記電線接続部の内側の面の、前記導体部に圧着される部分の少なくとも一部に前記絶縁樹脂の層の未形成部分が形成されてなり、前記電線は、前記露出された導体部の先端部が前記露出導体圧着部の前記先端部側の前端開口よりも前記露出導体圧着部側、かつ、前記前端開口近傍位置に位置されてなり、前記露出導体圧着部は、前記前端開口が塞ぐために圧着変形されることなく開口された状態になっていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記電線接続部は、板状部分の両側端部が合わせられた筒状をなし、前記絶縁被覆圧着部は、前記両側端部がスリット状に切り込まれることによって片状に形成されてなる一対の圧着片部を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記絶縁被覆圧着部は、少なくとも一箇所に貫通孔が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記露出導体圧着部、および前記絶縁被覆圧着部は、前記内側の面が凹凸形状に形成されてなる凹凸表面部を有してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記電線接続部は、板状部分の両側端部が重なり合う筒状に形成されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記露出導体圧着部は、前記重なり合う両側端部のうち外側の側端部の内側の面に前記絶縁樹脂の層が形成されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、上記の発明において、前記導体部は、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなり、前記端子金具は、銅、あるいは銅合金からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る端子金具付き電線は、前記中間一体連接部が前記電線の延在方向に沿って前記露出導体圧着部と前記絶縁被覆圧着部との間を前記露出された導体部が外部に露出されないように一体的に連接するとともに、前記電線接続部の内側の面の、少なくとも前記電線の延在方向における前端部および後端部に絶縁樹脂の層が形成されることによって、前記絶縁樹脂を溶融温度にて熱した場合、前記電線接続部の前端部および後端部で前記端子金具と前記電線との間の隙間前記絶縁樹脂を設けることができるので、前記端子金具の外部から露出された前記導体部に水が侵入されることを確実に防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができる。
【0015】
本発明の請求項1に係る端子金具付き電線は、前記電線接続部の内側の面の、前記電線の延在方向における前端部に形成された前記絶縁樹脂の層が溶融されることよって前記露出された導体部の先端に先端の外表面側から絶縁樹脂材を浸透させることができる。
【0016】
本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、前記絶縁被覆圧着部に形成された前記一対の圧着片部が曲げ変形され易いようになっているため、前記絶縁被覆圧着部を前記絶縁被覆部に容易に圧着することができ、しかもスリット状の切り込みに前記絶縁被覆部がくい込まれるようになっているため、前記絶縁被覆圧着部と前記絶縁被覆部との密着強度を高めることができる。
【0017】
本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、前記絶縁被覆圧着部が前記絶縁被覆部に圧着された場合、前記貫通孔内に前記絶縁被覆部がくい込まれるようになっているため、前記絶縁被覆圧着部と前記絶縁被覆部との密着強度を高めることができる。
【0018】
本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、前記凹凸表面部によって前記露出導体圧着部と前記導体部との接触面積、および前記絶縁被覆圧着部と前記絶縁被覆部との接触面積が増大されるため、前記露出導体圧着部と前記導体部との密着強度、および前記絶縁被覆圧着部と前記絶縁被覆部との密着強度を高めることができる。
【0019】
本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、前記電線接続部の前記両側端部が重なり合うことによって、前記端子金具の外部から前記両側端部の合わせ面を介して水が侵入され難くなるため、前記端子金具の外部から露出された前記導体部に水が侵入されることを防ぐことができる。
【0020】
本発明の請求項6に係る端子金具付き電線は、前記露出導体圧着部が重なり合う前記両側端部の間に前記熱塑性絶縁樹脂の層が形成されるようになっているため、前記端子金具の外部から露出された前記導体部に水が侵入されることをより確実に防ぐことができる。
【0021】
本発明の請求項に係る端子金具付き電線は、前記導体部の材質と前記端子金具の材質との組み合わせが、腐蝕され易い材質の組み合わせであったとしても、前記端子金具の外部から露出された前記導体部に水が侵入されることを確実に防ぐことができるので、防食性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施例に係る端子金具付き電線の分解斜視図である。
図2図2は、図1に示した端子金具付き電線の電線接続部周辺の拡大斜視図である。
図3図3は、図2に示した端子金具付き電線のA−A線断面図である。
図4図4は、図2に示した端子金具付き電線のB−B線断面図である。
図5図5は、端子金具付き電線の製造手順を示した図である。
図6図6は、端子金具付き電線の製造手順を示した図である。
図7図7は、端子金具付き電線の製造手順を示した図である。
図8図8は、本発明の実施例の変形例1の端子金具付き電線の電線接続部周辺の拡大斜視図である。
図9図9は、図8に示した端子金具の材料となる板状部材が型抜きされた状態を示した図である。
図10図10は、本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線の電線接続部周辺の拡大斜視図である。
図11図11は、図10に示した端子金具の材料となる板状部材が型抜きされた状態を示した図である。
図12図12は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線の端子金具の材料となる板状部材が型抜きされた状態を示した図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
図13図13は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線の電線接続部周辺の拡大斜視図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
図14図14は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線の電線接続部周辺の拡大斜視図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る端子金具付き電線の好適な実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の分解斜視図である。図2は、図1に示した端子金具付き電線1の電線接続部40周辺の拡大斜視図である。図3は、図2に示した端子金具付き電線1のA−A線断面図である。図4は、図2に示した端子金具付き電線1のB−B線断面図である。
なお、本発明の実施例では説明の便宜上、図中矢印に示すように前後方向を定義する。
本発明の実施例に係る端子金具付き電線1は、導体部11と導体部11の外周を包囲する絶縁被覆部12とを含む電線10と、電線10の端末部10aに接続される電線接続部40を含む端子金具20と、を有してなる。
【0024】
まず、電線10について説明する。
導体部11は、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなる複数の素線11aが束ねられてなる。
絶縁被覆部12は、絶縁性の合成樹脂からなり、導体部11の外周を包囲するように形成されることによって、導体部11を外部から絶縁可能に保護するものである。
なお、導体部11は、複数の素線11aが束ねられてなるものを例示したが、これに限らず単芯線であっても構わない。
【0025】
次に、端子金具20について説明する。
端子金具20は、銅、あるいは銅合金等の金属からなる板状部材が金型プレス加工等によって成形された端子金具である。この端子金具20は、不図示の接続相手端子との接続部分となる相手端子接続部30と、電線10の端末部10aに接続される電線接続部40と、相手端子接続部30と電線接続部40とを連結する中間部50とを有してなる。
【0026】
相手端子接続部30は、角筒状をなす接続本体部の筒内に設けられた弾性接触片に不図示の相手端子が接触されるようになっている。
【0027】
電線接続部40は、板状部分の両側端部が合わせられた筒状をなし、露出された導体部11に圧着される露出導体圧着部41と、絶縁被覆部12に圧着される絶縁被覆圧着部42と、露出導体圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間を連接する中間一体連接部43と、を有してなる。
【0028】
露出導体圧着部41は、電線10の延在方向における電線接続部40の前端側に設けられ、かつ電線10の端末部10aの先端の絶縁被覆部12が除去されることによって露出された導体部11に圧着される部分である。
この露出導体圧着部41は、露出された導体部11が載置される導体圧着底壁部41aと、導体圧着底壁部41aの両側縁から起立され、導体部11の両側部から上部にわたって導体部11の外周を包囲するように圧着される一対の導体圧着起立壁部41bとを有してなる。
また、露出導体圧着部41は、内側の面41cが凹凸形状に形成されてなる凹凸表面部44を有してなる。より具体的には、凹凸表面部44は、内側の面41cの複数箇所にひし形形状の凸部が連続して形成されてなる部分である。この凹凸表面部44は、露出導体圧着部41と導体部11との接触面積が増大されることによって密着強度を高める機能を有してなる。
なお、この実施例の端子金具付き電線1は、凹凸表面部44が内側の面41cの複数箇所にひし形形状の凸部が連続して形成されてなるものを例示したが、これに限らず、露出導体圧着部41の内側の面41cが凹凸形状に形成されるようになっていればその他の形状であっても構わない。
【0029】
絶縁被覆圧着部42は、電線10の延在方向における電線接続部40の後端側に設けられ、かつ絶縁被覆部12に圧着される部分である。
この絶縁被覆圧着部42は、絶縁被覆部12が載置される絶縁被覆圧着底壁部42aと、絶縁被覆圧着底壁部42aの両側縁から起立され、絶縁被覆部12の両側部から上部にわたって絶縁被覆部12の外周を包囲するように圧着される一対の絶縁被覆圧着起立壁部42bとを有してなる。
【0030】
中間一体連接部43は、電線10の延在方向に沿って露出導体圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間を露出された導体部11が外部に露出されないように一体的に連接する部分である。
この中間一体連接部43は、絶縁被覆部12が載置される中間底壁部43aと、中間底壁部43aの両側縁から起立され、絶縁被覆部12の両側部から上部にわたって絶縁被覆部12の外周を包囲するように圧着される一対の中間起立壁部43bとを有してなる。
【0031】
このような中間一体連接部43は、露出導体圧着部41および絶縁被覆圧着部42のそれぞれが電線10に圧着されやすいように露出導体圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間を連接するようになっている。
より具体的には、中間一体連接部43は、絶縁被覆部12に覆われた部分の電線10の外径と、露出された導体部11の部分の電線10の外径との差が小さくなるように、絶縁被覆圧着部42から露出導体圧着部41に向けて電線10の外径が漸次縮径されるように電線10に圧着されるようになっている。
【0032】
このような端子金具20は、中間部50の内側の面50a全域、露出導体圧着部41の内側の面41cの前端部41d、中間一体連接部43の内側の面43c全域、および絶縁被覆圧着部42の内側の面42c全域に絶縁樹脂の層60が形成されてなる。すなわち、端子金具20は、電線接続部40の内側の面40aのうち、前端部41dを除く部分に絶縁樹脂の層60の未形成部分が形成されている。
このため、端子金具20を電線10に接続させた後に、端子金具20を絶縁樹脂Rが溶融される温度で加熱することによって、図3に示すように、露出導体圧着部41の絶縁樹脂の層60の未形成部分で露出導体圧着部41が導体部11に電気的に接続されつつ、電線接続部40の前端開口40bおよび後端開口40cが絶縁樹脂Rによって封止されるので、端子金具20の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができる。
【0033】
また、この実施例では、電線10の露出された導体部11の先端部11bが露出導体圧着部41内に収容されてなるので、露出された導体部11の先端部11bが露出導体圧着部41の内側の面41cの前端部に形成された絶縁樹脂の層60が溶融されることによって確実に絶縁樹脂Rに覆われるようになっている。
【0034】
なお、絶縁樹脂Rは、熱可塑性樹脂が用いられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁樹脂Rが例示されるが、これに限定されず、その他の絶縁樹脂を用いてもよい。
【0035】
ここで、図5図7を用いて端子金具付き電線の製造手順について説明する。図5図7は、端子金具付き電線1の製造手順を示した図である。
まず、作業者は、不図示の加工機を用いて端子金具20の内側の面のうち、露出導体圧着部41の内側の面41cに未形成部分を残すようにして絶縁樹脂の層60を形成する(図5参照)。
この樹脂層形成工程では、複数の端子金具20が型抜き処理される前の板状部材21に対して、絶縁樹脂の層60が形成される。ここで、板状部材21に対して絶縁樹脂の層60を部分的に形成する場合、例えば、絶縁樹脂の層60の未形成部分に対応する部分にマスキングを施し、その後に絶縁樹脂Rを塗布するようにする。
【0036】
なお、この実施例では、中間部50の内側の面50a全域、露出導体圧着部41の内側の面41cの前端部41d、中間一体連接部43の内側の面43c全域、および絶縁被覆圧着部42の内側の面42c全域に絶縁樹脂の層60が形成され、露出導体圧着部41の内側の面41cのうち、前端部41dを除く部分に絶縁樹脂の層60の未形成部分が形成される。
このため、絶縁樹脂の層60が形成される部分、および絶縁樹脂の層60の未形成部分を板状部材21の図中横方向に連続する直線状に形成することができるようになっている。
このように、複数の端子金具20が型抜きされる前の板状部材21に絶縁樹脂の層60を形成することによって、複数の端子金具20に対して一括で絶縁樹脂の層60が形成されるようになっている。
なお、絶縁樹脂の層60は、板状部材21に対して型抜き加工を行なった後に形成するようにしても構わない。
【0037】
その後、作業者は、不図示の加工機を用いて板状部材21に対して端子金具20の型抜き加工を行う(図6参照)。この型抜き加工によって、展開状態の複数の端子金具20が形成される。また、この型抜き加工によって、複数の端子金具20を連結させる帯状のキャリア22が形成され、このキャリア22に形成された送り孔22aに不図示の加工機の搬送用の爪が挿通されることによって型抜きされた板状部材21が次工程に搬送される。
【0038】
その後、作業者は、不図示の加工機を用いて展開状態の端子金具20に対して曲げ加工を施し所定形状に成形するとともに、端子金具20の電線接続部40を電線10に接続させる(図7参照)。これによって、露出導体圧着部41の絶縁樹脂の層60の未形成部分が導体部11に圧着され、端子金具20と電線10とが電気的に接続される。
【0039】
その後、作業者は、不図示の加工機を用いて絶縁樹脂Rが溶融される温度で端子金具20を加熱する。これによって、図3に示すように、電線接続部40の前端開口40bおよび後端開口40cにおける端子金具20と電線10との間の隙間が絶縁樹脂Rによって封止される。なお、露出導体圧着部41の両側端部41e,41eは、互いに隙間なく合わせられるため、この合わせ面41fからの水の侵入は防止できるようになっている。
【0040】
本発明の実施例に係る端子金具付き電線1は、中間一体連接部43が電線10の延在方向に沿って露出導体圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間を露出された導体部11が外部に露出されないように一体的に連接しするとともに、電線接続部40の内側の面40aの、少なくとも電線10の延在方向における前端部40dおよび後端部40eに絶縁樹脂の層60が形成されることによって、絶縁樹脂Rを溶融温度にて熱した場合、電線接続部40の前端部40dおよび後端部40eで端子金具20と電線10との間の隙間絶縁樹脂Rを設けることができるので、端子金具20の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができる。
【0041】
また、本発明の実施例に係る端子金具付き電線1は、電線接続部40の内側の面40aの、電線10の延在方向における前端部に形成された絶縁樹脂の層60が溶融されることよって露出された導体部11の先端に先端の外表面側から絶縁樹脂材Rを浸透させることができる。
【0042】
(変形例1)
次に、図8および図9を用いて本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の変形例1について説明する。図8は、本発明の実施例の変形例1の端子金具付き電線2の電線接続部72周辺の拡大斜視図である。図9は、図8に示した端子金具70の材料となる板状部材71が型抜きされた状態を示した図である。
この変形例1の端子金具付き電線2は、端子金具70の絶縁被覆圧着部73に一対の圧着片部73a,73aが形成されてなる点で実施例の端子金具付き電線1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0043】
端子金具70は、絶縁被覆圧着部73の両側端部73b,73bがスリット状に切り込まれることによって片状に形成されてなる一対の圧着片部73a,73aを有してなる。このような一対の圧着片部73a,73aは、曲げ変形され易いようになっている。
【0044】
この変形例1の端子金具付き電線2は、実施例の端子金具付き電線1と同様に端子金具70の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができるとともに、絶縁被覆圧着部73に形成された一対の圧着片部73a,73aが曲げ変形され易いようになっているため、絶縁被覆圧着部73を絶縁被覆部12に容易に圧着することができ、しかもスリット状の切り込みに絶縁被覆部12がくい込まれるようになっているため、絶縁被覆圧着部73と絶縁被覆部12との密着強度を高めることができる。
【0045】
(変形例2)
次に、図10および図11を用いて本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の変形例2について説明する。図10は、本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線3の電線接続部周辺の拡大斜視図である。図11は、図10に示した端子金具の材料となる板状部材が型抜きされた状態を示した図である。
この変形例2の端子金具付き電線3は、端子金具80の絶縁被覆圧着部83に貫通孔が形成されてなる点で実施例の端子金具付き電線1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0046】
端子金具80は、絶縁被覆圧着部83の二箇所に貫通孔83aが形成されてなる。より具体的には、各貫通孔83aは、絶縁被覆圧着部83の両側端部83b,83bの合わせ面83cを間にし、かつ合わせ目83cの近傍に配置されてなる。
このような端子金具80は、絶縁被覆圧着部83が絶縁被覆部12に圧着された場合、絶縁被覆部12が貫通孔83a内にくい込まれるため、電線10の絶縁被覆部12により確実に圧着される。
なお、この変形例2の端子金具付き電線3は、絶縁被覆圧着部83の二箇所に貫通孔83aが形成されてなるものを例示したが、これに限らず、絶縁被覆圧着部83の少なくとも一箇所に貫通孔83aが形成されていればよい。
【0047】
この変形例2の端子金具付き電線3は、実施例の端子金具付き電線1と同様に端子金具80の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができるとともに、端子金具80がより確実に絶縁被覆部12に圧着されるようになっている。
【0048】
(変形例3)
次に、図12を用いて本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の変形例3について説明する。図12は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線4の端子金具90の材料となる板状部材91が型抜きされた状態を示した図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
この変形例3の端子金具付き電線4は、端子金具90の絶縁被覆圧着部93に凹凸表面部94が形成されてなる点で実施例の端子金具付き電線1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0049】
端子金具90は、絶縁被覆圧着部93の内側の面93aが凹凸形状に形成されてなる凹凸表面部94を有してなる。
この凹凸表面部94は、断面矩形状に内側の面93aから突出された凸部が並んで設けられてなる。このような端子金具90は、絶縁被覆圧着部93が絶縁被覆部12に圧着された場合、凹凸表面部94によって絶縁被覆圧着部93と絶縁被覆部12との接触面積が増大されることによって密着強度を高める機能を有してなる。
なお、この変形例3の端子金具付き電線4は、凹凸表面部94が断面矩形状に内側の面93aから突出された凸部が並んで設けられてなるものを例示したが、これに限らず、絶縁被覆圧着部93の内側の面93aが凹凸形状に形成されるようになっていればその他の形状であっても構わない。
【0050】
この変形例3の端子金具付き電線4は、実施例の端子金具付き電線1と同様に端子金具90の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができるとともに、凹凸表面部94によって絶縁被覆圧着部93と絶縁被覆部12とのが増大されるため、絶縁被覆圧着部93と絶縁被覆部12との密着強度を高めることができる。
【0051】
(変形例4)
次に、図13を用いて本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の変形例4について説明する。図13は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線5の電線接続部110周辺の拡大斜視図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
この変形例4の端子金具付き電線5は、端子金具100の電線接続部110が板状部分の両側端部110a,110aが重なり合う筒状に形成されてなる点で実施例の端子金具付き電線1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0052】
端子金具100は、電線接続部110が電線10に接続された場合、電線接続部110が板状部分の両側端部110a,110bが重なり合うようにして電線10に接続されるため、両側端部110a,110bの重なり合う部分をより確実に塞ぎ、外部からの水がより浸入され難い構造になっている。
【0053】
この変形例4の端子金具付き電線5は、実施例の端子金具付き電線1と同様に端子金具100の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、結果的に防食性能を向上させることができるとともに、電線接続部110の両側端部110a,110bが重なり合うことによって、端子金具100の外部から両側端部110a,110bの合わせ面110cを介して水が侵入され難くなるため、端子金具100の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができる。
【0054】
(変形例5)
次に、図14を用いて本発明の実施例に係る端子金具付き電線1の変形例5について説明する。図14は、(a)が本発明の実施例の変形例2の端子金具付き電線6の電線接続部110周辺の拡大斜視図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
この変形例5の端子金具付き電線6は、端子金具100の電線接続部110が板状部分の両側端部110a,110bが重なり合う筒状に形成されてなり、かつ導体露出圧着部111が重なり合う両側端部110a,110bのうち外側の側端部110bの内側の面に絶縁樹脂の層60が形成されてなる点で実施例の端子金具付き電線1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0055】
この変形例4の端子金具付き電線5は、変形例4の端子金具付き電線5と同様に端子金具100の外部から両側端部110a,110bの合わせ面110cを介して水が侵入され難くなるため、端子金具100の外部から露出された導体部11に水が侵入されることを防ぐことができ、しかも、導体露出圧着部111が重なり合う両側端部110a,110bの間に熱塑性絶縁樹脂の層60が形成されるようになっているため、端子金具100の外部から露出された導体部11に水が侵入されることをより確実に防ぐことができる。
【0056】
なお、本発明の実施例に係る端子金具付き電線1,2,3,4,5,6は、導体部11がアルミニウム、あるいはアルミニウム合金からなり、端子金具20,70,80,90,100が、銅、あるいは銅合金からなるものを例示したが、これに限らず、導体部11、および端子金具20,70,80,90,100としてその他の金属材料を用いても構わない。例えば、導体部11として銅、あるいは銅合金を用いても構わない。
【0057】
また、本発明の実施例に係る端子金具付き電線1,2,3,4,5,6は、中間部50の内側の面50a全域、露出導体圧着部41の内側の面41cの前端部41d、中間一体連接部43の内側の面43c全域、および絶縁被覆圧着部42の内側の面42c全域に絶縁樹脂の層60が形成されてなるものを例示したが、これに限らず、絶縁樹脂の層60は、電線接続部40,72,82,92,110の内側の面の、少なくとも電線10の延在方向における前端部および後端部に形成されていればよい。例えば、絶縁樹脂の層60が電線10の延在方向における前端部および後端部にのみ形成されている場合、少なくとも電線接続部40,72,82,92,110の両端開口が絶縁樹脂Rによって封止される。
【0058】
また、本発明の実施例に係る端子金具付き電線1,2,3,4,5,6は、露出された導体部11の先端部11bが露出導体圧着部内に収容されてなるものを例示したが、これに限らず、露出された導体部11の先端部11bが電線接続部40,72,82,92,110の前端開口から露出されていても構わない、この場合においても、電線接続部40,72,82,92,110の前端部に形成された絶縁樹脂Rが溶融して拡がることによって、電線接続部40,72,82,92,110の前端開口から露出される導体部11を絶縁樹脂Rによって覆うことができる。また、中間部50に絶縁樹脂の層60が形成されることよってさらに確実に露出された導体部11の先端部11bを絶縁樹脂Rで覆うことができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3,4,5,6 端子金具付き電線
10 電線
10a 端末部
11 導体部
11a 素線
11b 先端部
12 絶縁被覆部
20,70,80,90,100 端子金具
21,71,81,91 板状部材
22 キャリア
22a 送り孔
30 相手端子接続部
40,72,82,92,110 電線接続部
40a,41c,42c,43c,50a,93a 内側の面
40b 前端開口
40c 後端開口
40d,41d 前端部
40e 後端部
41,111 露出導体圧着部
41a 導体圧着底壁部
41b 導体圧着起立壁部
41e,73b,83b,110a,110b 側端部
41f,83c,110c 合わせ面
42,73,83,93,112 絶縁被覆圧着部
42a 絶縁被覆圧着底壁部
42b 絶縁被覆圧着起立壁部
43,113 中間一体連接部
43a 中間底壁部
43b 中間起立壁部
44,94 凹凸表面部
50 中間部
60 絶縁樹脂の層
73a 圧着片部
83a 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14