特許第6192960号(P6192960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192960
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20170828BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20170828BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   G01R19/00 B
   H02J7/02 H
   H01M10/48 P
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-62660(P2013-62660)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-186001(P2014-186001A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 力
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−223738(JP,A)
【文献】 特開2011−253777(JP,A)
【文献】 特開2011−185915(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0272497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00−19/32
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の二次電池セルからなり、互いにバス配線を介して直列接続された第1及び第2組電池と、
前記第1組電池と接続され、前記第1組電池の端子間電圧を計測する第1計測手段と、
前記第2組電池と接続され、前記第2組電池の端子間電圧を計測する第2計測手段と、
を備え、
前記第1計測手段は、第1電源端子と、第1グラウンド端子と、前記第1組電池の各二次電池セルの電圧信号を入力する複数の入力端子とを備え、
前記第1電源端子は、第1組電池の正極端子に接続され、
前記第1グラウンド端子は、電源系配線を介して前記第1組電池の負極端子であって前記バス配線の前記第1組電池側の接点に接続され、
前記第2計測手段は、第2電源端子と、第2グラウンド端子と、前記第2組電池の各二次電池セルの電圧信号を入力する複数の入力端子とを備え、
前記第2電源端子は、前記電源系配線を介して前記第1組電池の負極端子であって前記バス配線の前記第1組電池側の接点に接続され、
前記第2グラウンド端子は、前記第2組電池の負極端子に接続され、
前記第2計測手段の複数の入力端子のうち前記第2組電池の正極側端部に対応する入力端子と、前記電源系配線との間にダイオードが逆接続され、
前記ダイオードのVfは、前記第2計測手段内の、前記第2組電池の正極側端部に対応する入力端子と、前記電源系配線との間に逆接続された内部ダイオードのVfよりも小さく設定される
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記第1計測手段は、
前記第1組電池の正極端子に接続された第1アナログ入力端子と、
前記第1アナログ入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第1組電池の端子間電圧と、前記複数の入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第1組電池の端子間電圧とを比較する第1比較手段と、
を備え、前記第2計測手段は、
前記第2組電池の正極端子に接続された第2アナログ入力端子と、
前記第2アナログ入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第2組電池の端子間電圧と、前記複数の入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第2組電池の端子間電圧とを比較する第2比較手段と、
を備えることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の電池パックの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、エネルギ密度が高く、機器の小型化や軽量化が可能である特性を備え、各種電子機器の主電源、自動車や航空機等の産業用ないし運輸用動力源、家庭用の主電源等に幅広く用いられている。
【0003】
図3に、リチウムイオン二次電池等を備える電池パックの一般的な構成を示す。電池パックは、二次電池10と、二次電池10を構成する各電池セルの端子間電圧を検出する計測IC基板12と、二次電池10と計測IC基板12を接続するハーネス(配線群)18を備える。二次電池10のハーネス18と計測IC基板12は、コネクタ14,16で電気的に接続される。
【0004】
二次電池10は、複数の組電池を直列接続して構成され、図では組電池10A,10Bを示す。それぞれの組電池10A,10Bは、複数のセルを直列接続して構成され、図では10個のセルから構成される。組電池10A,10Bは、バス配線11で直列接続される。
【0005】
ハーネス18は、電源系配線と計測系配線に大別され、電源系配線は、配線18a1,18a2,18b1,18b2から構成され、計測系配線は配線19から構成される。
【0006】
計測IC基板12は、計測ICA及び計測ICBを備え、計測ICAで組電池10Aの10個のセルの端子間電圧を計測し、計測ICBで組電池10Bの10個のセルの端子間電圧を計測する。
【0007】
計測ICAの電源端子VINには配線18a1が接続され、グラウンド端子AGNDには配線18a2が接続される。また、計測ICBの電源端子VINには配線18b1が接続され、グラウンド端子AGNDには配線18b2が接続される。計測ICAと計測ICBは、データを送受するための通信ライン20で接続される。
【0008】
計測ICAは、C0〜C10の端子を備え、それぞれ組電池10Aの10個のセルの端子に配線19を介して接続される。例えば、C0は組電池10Aの端部のセルの負極端子に接続され、C1は当該セルの正極端子に接続される。計測ICBについても同様である。
【0009】
なお、特許文献1には、異なるグラウンド電位ごとに配置した検出モジュールと中央マイコンによる分散制御とし、複数の検出モジュールで複数個の電池セルの電圧を監視する構成が記載されている。
【0010】
特許文献2には、複数の電池セルを有する組電池の電圧を複数のモジュールで監視する構成において、電圧センサモジュールの電源と接続される第1の端子と、第1の端子と異なる第2の端子との間に電圧クランプ回路を接続する構成が記載されている。
【0011】
特許文献3には、組電池と、充電器又は負荷本体に着脱自在に装着される電源端子及び信号端子部を備え、充電器又は負荷本体が装着された場合に充電器又は負荷本体から供給される起動信号によって起動する電源起動回路及び電源供給回路を設ける電池パックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−131670号公報
【特許文献2】特開2007−218688号公報
【特許文献3】特開2008−199827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図3に示す電池パックにおいて、電池パックの構成を簡易化すべく、ハーネス18における電源系配線と計測系配線を共通化することが提案されており、例えば図3の符号100に示すように配線18a1と配線19を共通化し、配線18b1と配線19を共通化し、それぞれ計測IC基板12内で分岐させる構成が考えられる。
【0014】
しかしながら、この場合、端子C10の配線19とコネクタ14,16にかけて電源電流を流すことになるため、ハーネス18の線抵抗とコネクタ14,16間の接触抵抗による電圧降下が生じる。このため、電圧計測精度が低下する可能性、すなわち、組電池10Aの図中下から10番目のセル電圧の真値よりも低下してしまう可能性がある。
【0015】
また、図3に示すように、二次電池10を複数の組電池10A,10Bを直列接続して構成する場合、組電池間を接続するためにバス配線11が必要となるが、バス配線11の抵抗と接触抵抗が生じる。このため、組電池10を充放電する際に、充電時と放電時とでバス配線11の抵抗両端の極性は逆転することになり、計測ICAと計測ICBの間に変動した電位差が生じて通信が不安定化するおそれもある。
【0016】
本発明の目的は、二次電池の端子間電圧を高精度に計測できる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電池パックは、それぞれ複数の二次電池セルからなり、互いにバス配線を介して直列接続された第1及び第2組電池と、前記第1組電池と接続され、前記第1組電池の端子間電圧を計測する第1計測手段と、前記第2組電池と接続され、前記第2組電池の端子間電圧を計測する第2計測手段とを備え、前記第1計測手段は、第1電源端子と、第1グラウンド端子と、前記第1組電池の各二次電池セルの電圧信号を入力する複数の入力端子とを備え、前記第1電源端子は、第1組電池の正極端子に接続され、前記第1グラウンド端子は、電源系配線を介して前記第1組電池の負極端子であって前記バス配線の前記第1組電池側の接点に接続され、前記第2計測手段は、第2電源端子と、第2グラウンド端子と、前記第2組電池の各二次電池セルの電圧信号を入力する複数の入力端子とを備え、前記第2電源端子は、前記電源系配線を介して前記第1組電池の負極端子であって前記バス配線の前記第1組電池側の接点に接続され、前記第2グラウンド端子は、前記第2組電池の負極端子に接続され、前記第2計測手段の複数の入力端子のうち前記第2組電池の正極側端部に対応する入力端子と、前記電源系配線との間にダイオードが逆接続され、前記ダイオードのVfは、前記第2計測手段内の、前記第2組電池の正極側端部に対応する入力端子と、前記電源系配線との間に逆接続された内部ダイオードのVfよりも小さく設定される。
【0018】
また、本発明の他の実施形態では、前記第1計測手段は、前記第1組電池の正極端子に接続された第1アナログ入力端子と、前記第1アナログ入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第1組電池の端子間電圧と、前記複数の入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第1組電池の端子間電圧とを比較する第1比較手段とを備え、前記第2計測手段は、前記第2組電池の正極端子に接続された第2アナログ入力端子と、前記第2アナログ入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第2組電池の端子間電圧と、前記複数の入力端子に供給された電圧信号に基づく前記第2組電池の端子間電圧とを比較する第2比較手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構成を簡易化しつつ、二次電池の端子間電圧を高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の電池パックの構成図である。
図2】他の実施形態の電池パックの構成図である。
図3】従来の電池パックの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、非水電解質二次電池としてリチウムイオン二次電池を例にとり説明する。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0022】
図1に、本実施形態の電池パック1の構成を示す。電池パック1は、二次電池10と、二次電池10を構成する各電池セルの端子間電圧を検出する計測IC基板12と、二次電池10と計測IC基板12を接続するハーネス(配線群)18を備える。二次電池10のハーネス18と計測IC基板12は、コネクタ14,16で電気的に接続される。
【0023】
二次電池10は、複数の組電池を直列接続して構成され、図では組電池10A,10Bを示す。それぞれの組電池10A,10Bは、複数のセルを直列接続して構成され、図では10個のセルから構成される。各セルは、正極活物質、負極活物質、及びセパレータを備えており、正極活物質にはリチウム含有複合酸化物等、負極活物質には黒鉛等、セパレータにはポリプロピレンとポリエチレン等が用いられる。組電池10Aの10個のセルを、図中下から順にcelA1,celA2,・・・,celA10と称する。組電池10Bの10個のセルも同様に、celB1,celB2,・・・celB10と称する。組電池10A,10Bは、バス配線11で直列接続される。
【0024】
本実施形態において、組電池10Aが第1組電池、組電池10Bが第2組電池として機能するが、二次電池10は2つ以上の組電池から構成されていてもよい。但し、最上位の組電池は組電池10Aとし、組電池10Bの負極側に組電池10Bを追加する。
【0025】
ハーネス18は、電源系配線と計測系配線に大別される。電源系配線は、配線18a1,18a2,18b2から構成され、計測系配線は配線19から構成される。組電池10Aに関しては、配線18a1はcelA10の正極端子に接続される。また、各配線19は、celA1〜celA10のそれぞれの正極端子及び負極端子に接続される。また、配線18a2はcel1の負極端子、言い換えれば、組電池10A,10Bを接続するバス配線11の組電池10A側の一端に接続される。
【0026】
図1図3を対比すると、図3では電源系配線として配線18b1が存在するが、図1ではこれに相当する配線が存在しない点に留意されたい。
【0027】
計測IC基板12は、計測ICA及び計測ICBを備え、計測ICAで組電池10Aの10個のセルcelA1〜celA10の端子間電圧を計測し、計測ICBで組電池10Bの10個のセルcelB1〜celB10の端子間電圧を計測する。
【0028】
本実施形態において、計測ICAが第1計測手段、計測ICBが第2計測手段として機能する。組電池と計測ICは1対1に対応し、組電池の数が増大するとこれに応じて計測ICの数も増大する。
【0029】
計測ICAの電源端子VINには配線18a1が接続され、グラウンド端子AGNDには配線18a2が接続される。また、計測ICBの電源端子VINにも配線18a2が共通接続され、グラウンド端子AGNDには配線18b2が接続される。言い換えれば、計測ICBの電源端子VINは、配線18a2を介して組電池10Aの負極端子であってバス配線11の組電池10A側の接点に接続される。計測ICAと計測ICBは、データを送受するための通信ライン20で接続される。
【0030】
計測ICAは、C0〜C10の複数の入力端子を備え、それぞれ組電池10Aの10個のセルcelA1〜celA10の端子に配線19を介して接続される。例えば、C0は組電池10AのcelA1の負極端子に接続され、celA1の負極端子の電圧信号が供給される。C1は当該celA1の正極端子に接続され、celA1の正極端子の電圧信号が供給される。また、C2はcelA2の正極端子に接続され、celA2の正極端子の電圧信号が供給される。以下同様であり、C9はcelA9の正極端子に接続され、C10はcelA10の正極端子に接続される。celA1の端子間電圧は、端子C0とC1の電位差から計測される。また、celA2の端子間電圧は、端子C1とC2の電位差から計測される。以下同様であり、celA10の端子間電圧は、端子C9とC10の電位差から計測される。計測ICAは、端子C0〜C10で検出される各celA1〜celA10の各電圧を合計することで、組電池10Aの端子間電圧を計測する。すなわち、
組電池10Aの端子間電圧=(C1−C0)+(C2−C1)+(C3−C2)+(C4−C3)+(C5−C4)+(C6−C5)+(C7−C6)+(C8−C7)+(C9−C8)+(C10−C9)
である。
【0031】
計測ICBは、C0〜C10の端子を備え、それぞれ組電池10Bの10個のセルcelB1〜celB10の端子に配線19を介して接続される。例えば、C0は組電池10BのcelB1の負極端子に接続され、C1は当該celB1の正極端子に接続される。
また、C2はcelB2の正極端子に接続される。以下同様であり、C9はcelB9の正極端子に接続され、C10はcelB10の正極端子に接続される。celB1の端子間電圧は、端子C0とC1の電位差から計測される。また、celB2の端子間電圧は、端子C1とC2の電位差から計測される。以下同様であり、celB10の端子間電圧は、端子C9とC10の電位差から計測される。計測ICBは、端子C0〜C10で検出される各celB1〜celB10の各電圧を合計することで、組電池10Bの端子間電圧を計測する。すなわち、
組電池10Bの端子間電圧=(C1−C0)+(C2−C1)+(C3−C2)+(C4−C3)+(C5−C4)+(C6−C5)+(C7−C6)+(C8−C7)+(C9−C8)+(C10−C9)
である。
【0032】
電源系配線である配線18a2は、計測ICAのグラウンド端子AGNDに接続されるとともに、計測ICBの電源端子VINに共通接続される。また、配線18a2と配線19のうち、組電池10BのcelB10の正極端子と計測ICBの端子C10とを接続する配線はダイオード22を介して接続される。ダイオード22のアノード端子は端子C10側に接続され、カソード端子は配線18s2側に接続される。組電池10A,10Bはバス配線11を介して直列接続され、図1に示すように組電池10A,10Bにおいて図中上側が正極側(+)、図中下側が負極側(−)であるから、ダイオード22は、計測ICBの端子C10と配線18a2との間に逆接続される。
【0033】
計測ICA、計測ICBは、それぞれ組電池10A,10Bの端子間電圧を計測し、図示しない中央マイコン等に電圧信号として出力する。また、過電圧や低電圧を検出した場合に、これらの検出信号を出力する。
【0034】
以上のような構成において、ハーネス18の電源系配線と計測系配線は共通化されていないため、共通化する場合に生じる電圧計測精度の低下、すなわちcelA10とcelB10の電圧の真値よりも低い値を計測してしまう事態を防止できる。
【0035】
また、計測ICAのグラウンド端子AGNDと計測ICBの電源端子VINは配線18a2によりバス配線11の一端に共通接続されているため、これらの端子がバス配線11の両端にそれぞれ独立に接続されている場合の電圧変動による影響も防止できる。なお、電圧変動とは、バス配線11の抵抗と充放電時に流れる電流により発生するバス配線11の両端に生じる電位差との極性が変動することをいう。
【0036】
充放電時のバス配線11の抵抗と接触抵抗がある値まで上昇した場合、バス配線11の組電池10A側端電圧と組電池10B側端電圧との関係は、(組電池10A側端電圧)<<(組電池10B側端電圧)となり得る。この場合、組電池10Bの端子C10の配線から配線18a2へ抜ける電流が発生するが、ダイオード22により計測ICBへのダメージは抑制される。
【0037】
すなわち、計測ICBの電源端子VINの電位をVb、端子C10の電位をVc10とすると、Vb>Vc10の場合には電圧精度低下はない。また、Vb<Vc10の場合、両者の差分(Vc10−Vb)が計測IC基板12の内部ダイオードのVfより小さい場合には計測精度の低下は無視できるレベルである。一方、差分(Vc10−Vb)が計測IC基板12のVfより大きい場合には端子C10から内部ダイオードを介して端子VINに流れる電流が発生し、計測IC基板12の破壊のおそれがある。但し、ダイオード22を端子C10と端子VINの間に接続し、ダイオード22のVfを内部ダイオードのVfよりも小さく設定することで、計測IC基板12の破壊を防止できる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、ハーネス18を簡易化しつつ、組電池10の電圧計測精度低下を防止できる。
【0039】
<第2実施形態>
図2に、本実施形態の電池パック1の構成を示す。電池パック1は、二次電池10と、二次電池10を構成する各電池セルの端子間電圧を検出する計測IC基板12と、二次電池10と計測IC基板12を接続するハーネス(配線群)18を備える。二次電池10のハーネス18と計測IC基板12は、コネクタ14,16で電気的に接続される。
【0040】
二次電池10は、複数の組電池を直列接続して構成され、図では組電池10A,10Bを示す。それぞれの組電池10A,10Bは、複数のセルを直列接続して構成され、図では10個のセルから構成される。組電池10Aの10個のセルを、図中下から順にcelA1,celA2,・・・,celA10と称する。組電池10Bの10個のセルも同様に、celB1,celB2,・・・celB10と称する。組電池10A,10Bは、バス配線11で直列接続される。
【0041】
ハーネス18は、電源系配線と計測系配線に大別される。電源系配線は、配線18a1,18a2,18b2から構成され、計測系配線は配線19から構成される。組電池10Aに関しては、配線18a1はcelA10の正極端子に接続される。また、各配線19は、celA1〜celA10のそれぞれの正極端子及び負極端子に接続される。また、配線18a2はcel1の負極端子、言い換えれば、組電池10A,10Bを接続するバス配線11の組電池10A側の一端に接続される。
【0042】
計測IC基板12は、計測ICA及び計測ICBを備え、計測ICAで組電池10Aの10個のセルcelA1〜celA10の端子間電圧を計測し、計測ICBで組電池10Bの10個のセルcelB1〜celB10の端子間電圧を計測する。
【0043】
計測ICAの電源端子VINには配線18a1が接続され、グラウンド端子AGNDには配線18a2が接続される。また、計測ICBの電源端子VINにも配線18a2が共通接続され、グラウンド端子AGNDには配線18b2が接続される。計測ICAと計測ICBは、データを送受するための通信ライン20で接続される。
【0044】
計測ICAは、C0〜C10の端子を備え、それぞれ組電池10Aの10個のセルcelA1〜celA10の端子に配線19を介して接続される。例えば、C0は組電池10AのcelA1の負極端子に接続され、C1は当該celA1の正極端子に接続される。
また、C2はcelA2の正極端子に接続される。以下同様であり、C9はcelA9の正極端子に接続され、C10はcelA10の正極端子に接続される。celA1の端子間電圧は、端子C0とC1の電位差から計測される。また、celA2の端子間電圧は、端子C1とC2の電位差から計測される。以下同様であり、celA10の端子間電圧は、端子C9とC10の電位差から計測される。
【0045】
計測ICBは、C0〜C10の端子を備え、それぞれ組電池10Bの10個のセルcelB1〜celB10の端子に配線19を介して接続される。例えば、C0は組電池10BのcelB1の負極端子に接続され、C1は当該celB1の正極端子に接続される。
また、C2はcelB2の正極端子に接続される。以下同様であり、C9はcelB9の正極端子に接続され、C10はcelB10の正極端子に接続される。celB1の端子間電圧は、端子C0とC1の電位差から計測される。また、celB2の端子間電圧は、端子C1とC2の電位差から計測される。以下同様であり、celB10の端子間電圧は、端子C9とC10の電位差から計測される。
【0046】
配線18a2は、計測ICAのグラウンド端子AGNDに接続されるとともに、計測ICBの電源端子VINに共通接続される。また、配線18a2と配線19のうち、組電池10BのcelB10の正極端子と計測ICBの端子C10とを接続する配線はダイオード22を介して接続される。ダイオード22のアノード端子は端子C10側に接続され、カソード端子は配線18s2側に接続される。
【0047】
本実施形態では、計測ICA及び計測ICBはそれぞれアナログポートAN1,AN2を備えており、計測ICAのアナログポートAN1には配線24により組電池10AのcelA10の正極端子が接続される。計測ICAは、端子C0〜C10とは別に、配線24の電圧信号により組電池10Aの端子間電圧を計測する。同様に、計測ICBのアナログポートAN2には配線26により組電池10BのcelB10の正極端子が接続される。計測ICBは、端子C0〜C10とは別に、配線26の電圧信号により組電池10Bの端子間電圧を計測する。
【0048】
計測ICAは、端子C0〜C10の信号を用いて組電池10Aの端子間電圧を計測するとともに、アナログポートAN1の信号を用いて組電池10Aの端子間電圧を計測する。通常、両電圧は一致するはずであるが、計測IC基板12内部のハーネスやバス配線11の接触不良等があると、両者の電圧が相違する。従って、計測ICAのCPUは、比較手段として機能して計測した両電圧を比較し、両者が一致する場合には正常と判定し、両者が一致しない場合には異常と判定して異常信号を中央マイコン等に出力する。
【0049】
同様に、計測ICBは、端子C0〜C10の信号を用いて組電池10Bの端子間電圧を計測するとともに、アナログポートAN2の信号を用いて組電池10Bの端子間電圧を計測する。計測ICBのCPUは、比較手段として機能して計測した両電圧を比較し、両者が一致する場合には正常と判定し、両者が一致しない場合には異常と判定して異常信号を中央マイコン等に出力する。
【0050】
具体的には、放電時(電池パック1が自動車等に搭載される場合には自動車の走行時が該当する)においてバス配線11に接触異常が生じてバス配線11の接触抵抗が大きくなると、計測ICBの端子C10の電位Vc10とVINの電位Vbとの関係がVc10>Vbとなる。このとき、図2において矢印で示すような電流が流れ、端子C10の配線19に直列接続された抵抗(RCフィルタにおける抵抗成分Rであって1kΩ〜10kΩ)で電圧降下が生じる。その結果、端子C9とC10間の電圧値が低下し、計測ICBの端子C0〜C10で計測される各セルの電圧を加算した組電池10Bの端子間電圧も低下する。従って、計測ICBでアナログポートAN2により計測された組電池10Bの端子間電圧と、端子C0〜C10による端子間電圧とは一致しなくなり、両電圧を比較して不一致を判定することでバス配線11の接触異常を検出することができる。その他、アナログポートAN1,AN2で計測される電圧値と各セルの電圧を加算した組電池端子間電圧を比較することによって、ハーネス18の結線状態の異常も検出できる。
【0051】
なお、CPUは、所定の制御タイミングで計測した両電圧を繰り返し比較してもよいが、異常診断プログラムの一種として、特定のタイミングにおいてのみ両電圧を比較して異常診断を行うこともできる。
【符号の説明】
【0052】
1 電池パック、10 二次電池、10A,10B 組電池、11 バス配線、12 計測IC基板、14,16 コネクタ、18 ハーネス。
図1
図2
図3