特許第6193003号(P6193003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193003
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】化粧具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   A45D34/04 510A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-124745(P2013-124745)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2014-14668(P2014-14668A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2016年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-136063(P2012-136063)
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 満
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知子
(72)【発明者】
【氏名】大場 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 敬之
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−096179(JP,U)
【文献】 特開2007−277175(JP,A)
【文献】 特開2011−068600(JP,A)
【文献】 特開2008−127389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A45D 40/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と塗布部が一体となった化粧具であって、
塗布部の周囲に、油性成分10〜70質量%と、樹脂成分0〜30質量%と、紛体成分5〜50質量%とを含み、70℃〜100℃に加温することで溶解する化粧料が多層構造で被膜されると共に、塗布部表面に凸部を設け、凸部以外の塗布部表面に化粧料が被膜され、化粧料表面の外径と凸部の外径を合わせていることを特徴とする化粧具。
【請求項2】
柄と塗布部が一体となった化粧具であって、
塗布部の周囲に、油性成分10〜70質量%と、樹脂成分0〜30質量%と、紛体成分5〜50質量%とを含み、70℃〜100℃に加温することで溶解する化粧料が多層構造で被膜されると共に、塗布部の内面には凸部と凹部を形成して、開いた状態でヒンジから折り曲げて凸部と凹部とを嵌合して固定する構造であることを特徴とする化粧具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔や体等の肌に化粧料を適量塗ることでき、使い捨てができ手軽な化粧具に関する。
【背景技術】
【0002】
顔や肌等に化粧料を塗る化粧具は、従来から種々に実用化や提案がされている。
【0003】
例えば特開2010-46299号公報(:特許文献1)には、柄と異なる芯体にスポンジ性被覆体で被覆した顔用軸付チップであって、使用の際に、肌面に化粧料を塗布する際に、塗布時にチップが捩れるのを基芯で防止して、肌面に化粧料の塗布を容易にした顔用軸付チップが開示されている。
【0004】
また、特開2011−143137号公報(:特許文献2)には、柄を設けた塗布部の先端の端縁部を直線状又は平面状にした化粧用チップが開示されている。
また、実開平2−112211号公報(:特許文献3)には、塗布体が、弾性力を有する芯材とその表面を覆ったウレタンフォームの表皮とから構成されている化粧用塗布具が開示されている。
【0005】
また、特開2003−275125号公報(:特許文献4)には、軸体の表面に繊維が熱融着で植設された所定形状の繊維集塊体の化粧料塗布具が開示されている。
【0006】
また、特開2005−334094号公報(:特許文献5)には、軸部材に設けたブラシ状の塗布部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-46299号公報
【特許文献2】特開2011−143137号公報
【特許文献3】実開平2−112211号公報
【特許文献4】特開2003−275125号公報
【特許文献5】特開2005−334094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1〜5記載の塗布具には、共に塗布部が比較的軟質な塗布部であるため、顔に塗布するには塗布部が変形してしまい、うまく塗布することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、塗布部に軸を設けかつ塗布部が変形するのを防止して塗りやすくかつ使いやすい化粧具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、柄と塗布部が一体となった化粧具であって、
塗布部の周囲に化粧料が被膜されていることを特徴とする化粧具である。
【0011】
本発明において、塗布部は、硬質材料であることが好適である。ここで挙げる硬質材料とはアルミ、ステンレス等の金属材料、ポリプロピレン、ABS、ポリスチレン等の樹脂材料等、塗布時において安易に塑性変形しない材料を示す。
【0012】
また、本発明において、化粧料の塗布可能量は、1〜2mgであることが好適である。
【0013】
また、本発明において、化粧料は、油性成分10〜70質量%、樹脂成分0〜30質量%、粉体(顔料)成分5〜50質量%からなることが好適である。
【0014】
なお、本発明において、化粧料は、70℃〜100℃に加温することで溶解するものであることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
化粧具において、通常のフェイスペイントの原料は化粧料では無い(石鹸など)ので肌への安全性が担保されにくい。また、フェイスペイントが石鹸ベースだと汗で流れて見苦しくなる場合がある。
【0016】
そこで、本発明において、塗布部に被覆する化粧料は石鹸ベースのもので無いものであることが好ましく、これによって肌への安全性が担保され、汗で流れにくく、使い勝手が良い。
【0017】
また、安価にするためと塗布時における塗布部の強度を確保するため、柄の一方に設けた塗布部の周囲に必要量の化粧料を被覆した簡単な構造としている。また、肌に塗り易い柔らかい化粧料とすることもできる。
【0018】
塗布部の周囲に化粧料を被覆してなる簡単な構成及び工程であり、化粧料は多色展開が容易に可能となる。
【0019】
小型であるため、多くの色の化粧具を持ち運ぶことができる。
【0020】
また、柄の形状は任意であり、把持部に意匠を凝らすことも可能となる。
【0021】
また、塗布部も略球体である必要はなく、柄全体が薄いものでも良い。
【0022】
小型の使い捨て構造のため、使い終わったら処分でき、衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図6】本発明の第6実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図7】本発明の第7実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図8】本発明の第8実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図9】本発明の第9実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
図10】本発明の第10実施形態に係る化粧具の説明図で、(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1図10は第1実施形態〜第10実施形態に係る各化粧具を示し、それぞれの図の(a)が先端方向から見た図、(b)が側面視図、(c)が縦断面図、(d)が後端方向から見た図である。
【0026】
(1)図1図10に示すように、第1実施形態〜第10実施形態に係る化粧具は、軸状又は棒状の柄10の一方側端部に塗布部12を一体成形したものである。
【0027】
柄10の一方側端の塗布部12の表面には固形化粧料(化粧料の例)14を層状又は膜状に成形している。固形化粧料は通常は単層であるが、必要に応じて多層構造(下地材と化粧材としたり、別の色の化粧材を重ねたり等)とすることができる。
【0028】
塗布部12は、顔や手足等の肌に固形化粧料14を塗りやすくするため適宜寸法の球形を呈している。
【0029】
(2)前記固形化粧料14は、ディッピング(塗布部12を化粧液に浸けて引上げて乾燥させる)や流し込みで成形する。
【0030】
また、固形化粧料14は、図1の第1実施形態、図4図10の第4〜第10実施形態のように、塗布部12の外周面全体から柄10の先端側の一部にかけて乗せて被覆成形する。
【0031】
(3)ただ、図1の化粧具は、使用時において、塗布部12の柄10に近い側は塗れない又は塗り難いときがある。
【0032】
これに対して、図2の第2実施形態のように、塗布部12において最初からその部分12aには、固形化粧料14を乗せないか、図3の第3実施形態のように、塗布部12に凸部12bを設けておいて、固形化粧料14を凸部12b以外の塗布部12表面に乗せて固形化粧料14の表面の外径と凸部12bの外径を合わせて外観上の統一を図るようにしても良い。
【0033】
(4)いずれも実施形態でも、塗布部12や柄10は樹脂製とし、射出成形、ブロー成形でも良い。なお、柄10は金属によって構成しても良い。
【0034】
(5)柄10の樹脂は、硬いもの(PP、ABS・・・)でもエラストマーでも良い。
【0035】
(6)柄10は塗布部と一体で成形しても、別体で成形して塗布部と組み合わせて固定しても良い。
【0036】
図1図3の第1実施形態〜第3実施形態、図7図10に示す第7実施形態〜第10形態では、柄10から塗布部12の全体にわたって、各図の(c)に示すように、樹脂材を用いて一体かつ中実に成形している。
【0037】
一方、図4に示す第4実施形態では、塗布部12の一部に嵌め込み用凹部12cを設けて略球形に形成し、棒状の柄10をその嵌め込み用凹部12cに嵌入又は樹脂接着、圧着、熱接着するなどして一体化するようにしても良い。
【0038】
また、図5に示す第5実施形態では、塗布部12から柄10を中空に形成し、縦断して開いた状態で成型し、それら同士を閉じて柄10と塗布部12を組み立て、内部に空間のある状態にする。
【0039】
なお、閉じた部分を固定するため、凸部16aと凹部16bとを塗布部12内面に形成して、ヒンジ16cから折り曲げて凸部16aと凹部16bとを嵌合して固定する構造にできる。
【0040】
また、図6に示す第6実施形態のように、柄10の端部から空気を吹き込むブロー成形で塗布部12から柄10を中空に形成しても良い。
【0041】
その他、使い勝手を考えて、各部を種々の構成とすることができる。
【0042】
図7の第7実施形態のように、塗布部12は球形であるが、柄10を角型断面形状の構成とする。
【0043】
また、図8の第8実施形態のように、柄10の尾端に略円形等の滑り止め又は把持部10aを形成することができる。
【0044】
また、塗布部12の形状を球体で無い構成にできる。図9の第9実施形態のように、塗布部12を楕円球体又は、先端部が砲弾状に形成することができる。
【0045】
また、図10の第10実施形態のように、全体を薄板状に形成し、塗布部12を円形に柄10を平板状に形成することができる。
【0046】
(7)各実施形態において、固形化粧料14は樹脂等の硬質材料の塗布部12に固着し、かつ肌への塗布が可能なものとする。
【0047】
(8)固形化粧料14の塗布可能量は顔に塗布する数回分とする。
【0048】
例えば、塗布部12の球の直径が10mmのときに化粧料1.3mgを塗布可能量とする。
【0049】
(9)固形化粧料14を塗布する塗布対象部は通常、顔に描くもののため、塗布部12又は化粧具全体が塗布時に変形しないことが望ましい。
【0050】
(10)固形化粧料14は、油性成分10〜70質量%、樹脂成分0〜30質量%、粉体(顔料)成分5〜50質量%を含み、例えば、70℃〜100℃に加温することで溶解し、棒に適量を付着(ディッピング)することが可能となり、付着後は冷却することで速やかに固まり室温では固体となる。
【0051】
(11)固形化粧料14は、油性成分を90℃〜120℃程度で加熱溶解後、樹脂成分、粉体成分を加え均一に混合し、さらに加温し、脱泡を行うことにより調製することができる。
【0052】
(12)固形化粧料の各成分は、次の判断基準1.〜3.で決定することができる。
1.固形化粧料の油性成分:使用感、経時安定性付与、固形化粧料の成形。
2.樹脂成分:顔料の分散、化粧持ち効果付与。
3.粉体成分:着色、感触調整。
上記判断基準で決定された汎用の油性成分、樹脂成分、粉体成分の中から選ばれる各種成分を組み合わせることにより、好適な固形化粧料を調製することができる。
【0053】
上記第1実施形態〜第10実施形態の化粧具について、塗布部12の球の直径を12mmとし、柄10の太さ4mm、化粧具全体の長さを40mmとし、固形化粧料(バルク)14の厚みを約0.4mmとし、固形化粧料付着量を0.2gとしたものを製造した。
【0054】
また、塗布した固形化粧料14は、それぞれ黄色、赤色、白色の三色(化粧料1〜3)とし、以下の表1の配合組成とした。この三色の化粧料1〜3をそれぞれ上記第1実施形態〜第10実施形態の各化粧具に用いた(30本)。
【0055】
【表1】
【0056】
本発明では、この各実施形態の各化粧具1本で5人程度の顔を塗りつぶせた。この場合、塗布部12の球の上半分を使い切ったが、使い捨て用途としては十分な量といえる。
【0057】
以上説明したとおり、本実施形態では、塗布部に被覆する化粧料は石鹸ベースのもので無いので、肌への安全性が担保され、汗で流れにくく、使い勝手が良い。
【0058】
また、安価にするため、柄10の一方に設けた塗布部12の周囲に必要量の固形化粧料14を乗せる簡単な構造とし、安価なものにすることができる。逆に、塗布部12の全体を固形化粧料とした塊にしてしまうと高価になってしまう。
【0059】
塗布部12の周囲に固形化粧料14を乗せる構造であり、固形化粧料14を乗せる工程が簡易であるので、工程負荷が少なくなる。したがって、各色の化粧料について化粧具を製作することが簡易に行えるので、このような固形化粧料14を多色に展開することが容易に可能となる。
【0060】
また、化粧具全体として小型であるため、多くの色の化粧具を持ち運ぶことができる。
更に、柄10の形状は任意であり、把持部に意匠を凝らすことも可能となる。
【0061】
更にまた、塗布部12は球形であるので、溶かした化粧料に塗布部12を浸ければほぼ均一な球状に固まるという、簡単な工程によってできる。これに対して、図10の第10実施形態のように塗布部12が棒状や扇形形状であると化粧料の厚みが均一になりにくい。したがって、塗布部12は球体であることが好ましい。
【0062】
ただし、塗布部12も略球体である必要はなく、図10の第10実施形態のように、塗布部12が柄10と共に全体が薄いものでも良い。
【0063】
化粧具は、小型の使い捨て構造のため、使い終わったら処分でき、衛生的である。
【0064】
なお、上記実施形態では本発明を実施するのに好適な例を述べたが、本発明はこれに限定されず、種々に変形実施できる。例えば、塗布部の周囲に被膜成形した化粧料は必ずしも固形であることに限定されず、塗布部から脱落しない程度の粘度であれば、リキッド状やゲル状の化粧料であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の化粧具は、フェイスペイント等の化粧具に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 柄
10a 把持部(第8実施形態)
12 塗布部
12a 化粧料を乗せない部分(第2実施形態)
12b 化粧料の乗らせない凸部(第3実施形態)
12c 嵌め込み用凹部(第4実施形態)
14 固形化粧料
16a 固定用の凸部(第5実施形態)
16b 固定用の凹部(第5実施形態)
16c ヒンジ(第5実施形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10