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特許6193014クロック乗せ換え装置、およびクロック乗せ換え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193014
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】クロック乗せ換え装置、およびクロック乗せ換え方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/073 20060101AFI20170828BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H04N5/073 B
   H04L7/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-133853(P2013-133853)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-12315(P2015-12315A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 通孝
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−303630(JP,A)
【文献】 特開2001−292337(JP,A)
【文献】 特開2001−309202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L7/00−7/10
H04N5/04−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのフィールド分の映像データを記憶することが可能な記憶領域を複数備え、入力映像信号を、前記入力映像信号から抽出された入力クロックのタイミングにて前記記憶領域に書き込み、所定の基準となる同期信号から抽出された出力クロックのタイミングにて前記記憶領域から前記映像データを読み出してメモリ出力信号として出力するフィールドメモリと、
前記入力クロックと前記出力クロックとが同位相となる場合に映像不連続現象が発生したと判断し、前記映像不連続現象が発生したと判断された場合のみアクティブとなる不連続検出信号を出力する映像不連続検出部と、
前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも高い場合に1フィールド期間アクティブとなり、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも低い場合に2フィールド期間アクティブとなる選択信号を出力する選択信号生成部と、
前記メモリ出力信号と、前記メモリ出力信号を1フィールド遅延した遅延出力信号とを入力し、前記メモリ出力信号と前記遅延出力信号との画素毎の平均値を算出してミックス信号を生成するミックス信号生成部と、
前記メモリ出力信号と前記ミックス信号とを入力し、前記選択信号がアクティブの場合に前記ミックス信号となり、前記選択信号が非アクティブの場合に前記メモリ出力信号となる出力映像信号を出力する選択部と、を備えることを特徴とするクロック乗せ換え装置。
【請求項2】
前記入力映像信号と、前記入力映像信号を1フレーム遅延した遅延入力信号とを比較することにより、前記入力映像信号が動画であるか静止画であるかを検知し、動き検知信号して出力する動き検知部を、さらに備え、
前記映像不連続検出部は、前記動き検知信号が動画であることを示すとともに、前記入力クロックと前記出力クロックとが同位相となる場合に、前記映像不連続現象が発生していると判断することを特徴とする請求項1記載のクロック乗せ換え装置。
【請求項3】
前記フィールドメモリの読み出しおよび書き込みを制御するメモリ制御部を、さらに備え、
前記メモリ制御部は、前記不連続検出信号を入力し、前記不連続検出信号がアクティブである場合、前記入力クロックと前記出力クロックの位相同士が一定値以上に接近しないように、いずれか一方のクロックを他方のクロックに対して所定の時間遅延させて前記入力クロックと前記出力クロックとの間に位相差を作り出す処理を実行することを特徴とする請求項1または2記載のクロック乗せ換え装置。
【請求項4】
1つのフィールド分の映像データを記憶することが可能な記憶領域を複数備え、入力映像信号を、前記入力映像信号から抽出された入力クロックのタイミングにて前記記憶領域に書き込み、所定の基準となる同期信号から抽出された出力クロックのタイミングにて前記記憶領域から前記映像データを読み出してメモリ出力信号として出力するフィールドメモリを備え、
前記入力クロックと前記出力クロックとが同位相となる場合に映像不連続現象が発生したと判断し、前記映像不連続現象が発生したと判断された場合のみアクティブとなる不連続検出信号を出力し、
前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも高い場合に1フィールド期間アクティブとなり、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも低い場合に2フィールド期間アクティブとなる選択信号を出力し、
前記メモリ出力信号と、前記メモリ出力信号を1フィールド遅延した遅延出力信号とを入力し、前記メモリ出力信号と前記遅延出力信号との画素毎の平均値を算出してミックス信号を生成し、
前記メモリ出力信号と前記ミックス信号とを入力し、前記選択信号がアクティブの場合に前記ミックス信号となり、前記選択信号が非アクティブの場合に前記メモリ出力信号となる出力映像信号を出力する
ことを特徴とするクロック乗せ換え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるクロックに同期した入力データを、異なるクロックに同期した出力データとして出力するクロック乗せ換え装置、およびクロック乗せ換え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレームシンクロナイザは、フィールドメモリ等を用いることにより、入力クロック(たとえば、映像出力装置側の出力クロック)に同期した入力映像信号を、出力クロック(たとえば、放送局内における基準同期クロック)に同期した出力映像信号として出力するクロック乗せ換え回路を搭載している。
【0003】
しかしながら、上記クロック乗せ換え回路の場合、メモリ量が有限であること、および2つのクロック間の周波数差を完全に無くすことができないことにより、「間引き(追い越し)」現象や「繰り返し(追い越され)」のような映像不連続現象が原理的に発生する。
【0004】
以下、図8および図9を用いて、映像不連続現象について説明する。なお、図8および図9のデータに付された符号「1o、1e、2o、2e、・・・・」は映像データを示す。符号の数字はフレーム番号を示し、アルファベットは各フレームのフィールド(奇数(odd)フィールド、偶数(even)フィールド)を示す。
【0005】
図8(a)のように、[入力信号の周波数>出力信号の周波数]の場合、たとえば、フィールド2o、2eが上書きされて捨てられる「間引き」現象が発生する。この場合の映像信号の流れは、図9(b)に示されるように、フィールド1o→1e→3o→3eとなる。すなわち、フィールド1eからフィールド3oへと飛ぶので、映像が間引かれたように見える。
【0006】
図8(b)のように、[入力信号の周波数<出力信号の周波数]の場合、たとえば、フィールド2o、2eが二度読みされる「繰り返し」現象が発生する。この場合の映像信号の流れは、図9(c)に示されるように、フィールド1o→1e→2o→2e→2o→2e→3o→3eとなる。すなわち、2番目のフレーム(フィールド2o、2e)が繰り返されるので、映像が戻ったように見える。
【0007】
映像不連続現象は、入力クロックと出力クロックの周波数ずれの度合いにより頻度が変化する。これまで、フレームシンクロナイザは、電波法の規定(周波数安定度の規定)に合致した入力信号、すなわち、放送局内における基準同期クロックとの周波数差が極めて小さい入力信号のみを扱っていれば十分であった。前述したように、映像不連続現象は原理的に発生するため、現象自体を完全に抑えることはできないが、周波数差が小さい場合、映像不連続現象の発生頻度は低く(例えば、1回/数日)、特に問題視されていなかった。
【0008】
しかしながら、昨今、放送と他分野装置(データサーバやコンピュータ装置等)との融合が進み、電波法の規定外の入力信号(放送局内における基準同期クロックとの周波数差が大きな入力信号)を処理する機会が増加している。上述したように、周波数差が大きい場合、映像不連続現象の発生頻度が上昇する(たとえば、発生頻度が1回/数日から1回/数時間に上昇する)ため、映像不連続現象を無視できない状況になってきた。
【0009】
特許文献1には、カット切替がなされた時に画面のつぎ目が不自然となることを防止する技術についての記載がある。
【0010】
特許文献2には、入力クロックと出力クロックの位相差がある値に接近するときに「間引き」および「繰り返し」の発生にヒステリシス特性を持たせるようにすることで、「間引き」および「繰り返し」の発生を軽減する技術についての記載がある。
【0011】
特許文献3には、映像不連続が検出された際に、複数フィールドの時間に亘ってフレーム間の内挿処理行うことで映像不連続を複数フィールドに分散させて軽減させることが記載されている。
【0012】
特許文献4には、映像データと、メモリを介することにより1フィールド分遅延した映像データとを比較し、両データの間に所定以上の差があった場合にフィールド間でシーンチェンジがあったと判断する技術についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭61−061309号公報(ページNo.6、図6
【特許文献2】特公昭60−043707号公報(ページNo.2)
【特許文献3】特開平09−018740号公報(ページNo.5〜7)
【特許文献4】特開2000−069414号公報(ページNo.6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1の場合、カット切替処理が行われる時に発生した映像不連続現象については対処することができるが、カット切替処理が行われない時に発生した映像不連続現象については、全く対処できない。すなわち、特許文献1の技術では、映像不連続現象の軽減は、特定の場合にしか実行されない。
【0015】
また、特許文献2の技術によって軽減されるのは、あくまで位相のふらつきによって発生する映像不連続現象のみである。従って、特許文献2の技術でも、映像不連続現象の軽減は、特定の場合にしか実行されない。
【0016】
特許文献3は、映像不連続現象を複数フィールドに分散させて軽減させている。そして、上記分散処理は、映像不連続現象が検出されるたびに実行される。すなわち、特許文献3によれば、映像不連続現象を軽減させることができる。
【0017】
しかしながら、特許文献3の場合、本線信号の出力タイミング(すなわち、最終的に出力される出力映像信号の出力タイミング)が1フレーム多く遅延している。放送スタジオシステムでは、遅延に対する要求が非常に厳しい。従って、特許文献3の場合、映像不連続現象を根本的に解決することはできても、上記遅延要求に応えることは困難である。遅延要求を満足できなければ、映像品質以前の問題として、放送スタジオシステムに採用されない場合もある。
【0018】
特許文献4は、フィールド間でのシーンチェンジを検出するための技術について記載するのみで、上述したような映像不連続現象を軽減するための技術については何ら提示していない。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、映像信号を遅延させることなく、映像不連続現象を確実に軽減させることが可能な、クロック乗せ換え装置、およびクロック乗せ換え方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のクロック乗せ換え装置は、1つのフィールド分の映像データを記憶することが可能な記憶領域を複数備え、入力映像信号を、前記入力映像信号から抽出された入力クロックのタイミングにて前記記憶領域に書き込み、所定の基準となる同期信号から抽出された出力クロックのタイミングにて前記記憶領域から前記映像データを読み出してメモリ出力信号として出力するフィールドメモリと、前記入力クロックと前記出力クロックとが同位相となる場合に映像不連続現象が発生したと判断し、前記映像不連続現象が発生したと判断された場合のみアクティブとなる不連続検出信号を出力する映像不連続検出部と、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも高い場合に1フィールド期間アクティブとなり、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも低い場合に2フィールド期間アクティブとなる選択信号を出力する選択信号生成部と、前記メモリ出力信号と、前記メモリ出力信号を1フィールド遅延した遅延出力信号とを入力し、前記メモリ出力信号と前記遅延出力信号との画素毎の平均値を算出してミックス信号を生成するミックス信号生成部と、前記メモリ出力信号と前記ミックス信号とを入力し、前記選択信号がアクティブの場合に前記ミックス信号となり、前記選択信号が非アクティブの場合に前記メモリ出力信号となる出力映像信号を出力する選択部と、を備える。
【0021】
本発明のクロック乗せ換え方法は、1つのフィールド分の映像データを記憶することが可能な記憶領域を複数備え、入力映像信号を、前記入力映像信号から抽出された入力クロックのタイミングにて前記記憶領域に書き込み、所定の基準となる同期信号から抽出された出力クロックのタイミングにて前記記憶領域から前記映像データを読み出してメモリ出力信号として出力するフィールドメモリを備え、前記入力クロックと前記出力クロックとが同位相となる場合に映像不連続現象が発生したと判断し、前記映像不連続現象が発生したと判断された場合のみアクティブとなる不連続検出信号を出力し、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも高い場合に1フィールド期間アクティブとなり、前記不連続検出信号がアクティブで、且つ前記入力クロックの周波数が前記出力クロックの周波数よりも低い場合に2フィールド期間アクティブとなる選択信号を出力し、前記メモリ出力信号と、前記メモリ出力信号を1フィールド遅延した遅延出力信号とを入力し、前記メモリ出力信号と前記遅延出力信号との画素毎の平均値を算出してミックス信号を生成し、前記メモリ出力信号と前記ミックス信号とを入力し、前記選択信号がアクティブの場合に前記ミックス信号となり、前記選択信号が非アクティブの場合に前記メモリ出力信号となる出力映像信号を出力することを特徴とする。

【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、映像信号を遅延させることなく、映像不連続現象を確実に軽減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るクロック乗せ換え装置の構成例を示すブロック図である。
図2図1に示すクロック乗せ換え装置の、「間引き現象」が発生した場合の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図3図1に示すクロック乗せ換え装置の、「繰り返し現象」が発生した場合の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図4図2に示す処理を実行した場合の映像の流れを説明する図である。
図5図3に示す処理を実行した場合の映像の流れを説明する図である。
図6】映像不連続現象が発生しているがフレーム間に動きが無い場合の映像の流れを説明する図である。
図7】本発明に必須の構成要素のみで構成されたクロック乗せ換え回路の構成例を示すブロック図である。
図8】映像不連続現象が発生した場合の入力信号と出力信号との関係を説明するための図である。
図9】映像不連続現象が発生した場合の映像の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るクロック乗せ換え装置10の構成例を示すブロック図である。なお、本実施形態では、クロック乗せ換え装置10がフレームシンクロナイザに搭載され、映像データのクロック乗せ換え処理を実行する場合を例に挙げる。
【0025】
クロック乗せ換え装置10は、ライトパルス生成部12と、リードパルス生成部14と、フレーム遅延部16と、動き検知部18と、映像不連続検出部20と、メモリ制御部22と、選択信号生成部24と、フィールドメモリ26と、フィールド遅延部28と、ミックス信号生成部30と、選択部32と、を備える。
【0026】
なお、以下において使用する「入力映像信号A」は、たとえば、所定の映像出力装置(放送機材、パーソナルコンピュータ、データサーバ等)から出力される映像信号である。また、「同期信号B」は、たとえば、放送局内における基準同期信号(スタジオや調整室における処理を同期させるための同期信号)である。
【0027】
ライトパルス生成部12は、入力映像信号Aに多重されているタイミング基準信号から「ライトパルスC」を抽出する。
【0028】
リードパルス生成部14は、ローパスフィルタやコンペア回路等で構成されるアナログ回路を用いて、同期信号B(アナログ信号)から「リードパルスD」を抽出する。
【0029】
フレーム遅延部16は、入力映像信号Aを1フレーム遅延させた「フレーム遅延信号M」を生成する。
【0030】
動き検知部18は、入力映像信号Aとフレーム遅延信号Mとを比較し、「動き検知信号N」を生成する。動き検知信号Nは、両者の間に差が有る場合には「動き有り」を示すアクティブとなり、差が無い場合には「動き無し」を示す非アクティブとなる。
【0031】
映像不連続検出部20は、ライトパルスCと、リードパルスDと、動き検知信号Nと、に基づいて、フィールドメモリ26の制御に関連する「第1制御信号F」と、中間画像を挿入する制御(詳細ついにては後述)に関連する「第2制御信号G」を生成する。
【0032】
第1制御信号Fは、映像不連続現象の発生が検知された場合にアクティブとなり、発生が検知されない場合に非アクティブとなる信号である。映像不連続検出部20は、動き検知信号Nの状態に拘わらず、ライトパルスCとリードパルスDとが同位相(位相差が所定の範囲内に収まる状態)となる場合、映像不連続現象が発生したものと判断する。
【0033】
第2制御信号Gは、中間画像の挿入処理が必要と判断された場合にアクティブとなり、不要と判断された場合に非アクティブとなる信号である。映像不連続検出部20は、フレーム間に動きが有り(すなわち、動き検知信号Nがアクティブの場合)、且つライトパルスCとリードパルスDとが同位相となる場合に、中間画像の挿入処理が必要と判断する。
【0034】
すなわち、第1制御信号Fが、フレーム間の動きの有無に関係なくライトパルスCとリードパルスDとが同位相となる場合にアクティブとなるのに対して、第2制御信号Gは、ライトパルスCとリードパルスDとが同位相となり且つフレーム間に動きがあった場合のみにアクティブとなる。
【0035】
メモリ制御部22は、ライトパルスCと、リードパルスDと、第1制御信号Fと、に基づいて、「メモリ制御信号E」を生成する。メモリ制御信号Eは、フィールドメモリ26の書き込みおよび読み出しを制御するための信号である。具体的には、メモリ制御信号Eは、ライトクロックとリードクロックとを含む。
【0036】
第1制御信号Fが非アクティブの場合、単に、ライトクロック=ライトパルスC、リードクロック=リードパルスDとなる。
【0037】
一方、第1制御信号Fがアクティブの場合、ライトクロックとリードクロックの位相同士が一定値以上に接近しないように強制的に位相差が作り出される処理(この処理を、「ヒステリシス領域付与処理」と呼ぶ。)が実行される。たとえば、ライトクロック=ライトパルスCを所定時間だけ遅延させた信号、リードクロック=リードパルスDとなる。この処理により、ライトパルスCやリードパルスDの信号揺らぎ(位相変動)による映像不連続現象の多発を防ぐ。
【0038】
選択信号生成部24は、ライトパルスCと、リードパルスDと、第2制御信号Gと、に基づいて、「ミックス選択信号H」を生成する。選択信号生成部24は、ミックス選択信号Hの生成に先立って、ライトパルスCおよびリードパルスDの各周波数を算出する。各周波数は、たとえば、検出された各パルスの周期に基づいて算出される。ミックス選択信号Hは、第2制御信号Gがアクティブで、且つ[ライトパルスCの周波数>リードパルスDの周波数]が成立する場合に1フィールド期間だけアクティブとなり、第2制御信号Gがアクティブで、且つ[ライトパルスCの周波数<リードパルスDの周波数]が成立する場合に2フィールド期間だけアクティブとなり、第2制御信号Gが非アクティブの場合には非アクティブとなる。
【0039】
フィールドメモリ26は、1フィールド分のデータを記憶することが可能なバンク(記憶領域)を2つ有する。各バンクともに、ライトクロックのタイミングにて入力映像信号Aが書き込まれ、リードクロックのタイミングにてメモリ出力信号Iが読み出される。各バンクは、書き込みおよび読み出しいずれの場合も、循環的に切り替わる。たとえば、2つバンクA、Bに、フィールド1、2、3、4のデータが記憶される場合、バンクA、Bは、『バンクA(フィールド1)→バンクB(フィールド2)→バンクA(フィールド3)→バンクB(フィールド4)』のように循環する。なお、3フィールド目の書き込みが実行されるよりも前に読み込みが実行されないと、蓄積上限(すなわち、2フィールド)を超えて「バッファFull」となる。一方、読み込みを実行しようとする場合に書き込み済みのバンクが1つも存在しない場合には、「バッファEmpty」となる。
【0040】
以上説明したフィールドメモリ26において、入力した映像データを、入力クロック(入力映像信号Aに多重されているタイミング基準信号)から出力クロック(同期信号B)に乗せ換えるクロック乗せ換え処理が実行される。
【0041】
フィールド遅延部28は、メモリ出力信号Iを1フィールド遅延させた「フィールド遅延信号J」を生成する。
【0042】
ミックス信号生成部30は、メモリ出力信号Iとフィールド遅延信号Jとがミックスされた「ミックス信号K」を得る。具体的には、例えば、ミックス信号Kは、メモリ出力信号Iとフィールド遅延信号Jとを加算した結果を“2”で除算して得られる。すなわち、画素毎に映像信号の平均値が算出される。
【0043】
選択部32は、ミックス選択信号Hの値に基づいて、メモリ出力信号Iとミックス信号Kのいずれか一方を「出力映像信号L」として出力する。具体的には、選択部32は、ミックス選択信号Hがアクティブの場合にはミックス信号Kを出力映像信号Lとして出力し、ミックス選択信号Hが非アクティブの場合にはメモリ出力信号Iを出力映像信号Lとして出力する。
【0044】
図2は、「間引き現象」が発生した場合のクロック乗せ換え装置10の動作例を説明するためのタイムチャートである。
【0045】
間引き現象が発生すると、メモリ出力信号Iにおいて、フィールド2o、2eが捨てられる(この点については、図8(a)と同様)。本実施形態の場合、メモリ出力信号Iとフィールド遅延信号Jとがミックスされたミックス信号Kが得られる。一方、選択部32は、ミックス選択信号Hの値に応じて、2つの信号(メモリ出力信号Iとミックス信号K)のいずれか一方を選択して出力する。上述したように、間引き現象の場合([ライトパルスCの周波数>リードパルスDの周波数]が成立する場合)、ミックス選択信号Hは、1フィールド期間だけアクティブとなる。すなわち、本実施形態の場合、出力映像信号Lにおいて、間引き現象が検出された(ミックス選択信号Hがアクティブとなる期間)フィールド3oを、フィールド1eとフィールド3oとがミックスされた中間画像としてのフィールド(1e+3o)に書き換える。なお、上記において、“+”は“加算”と言う意味だけではなく、“ミックスする”と言う意味、たとえば、前述の画素毎に映像信号の平均値を算出する意味で使用する。
【0046】
この場合の映像の流れは、図4に示すように、フィールド1o→1e→(1e+3o)→3eとなる。書き換え後のフィールド(1e+3o)にはフィールド1eの要素が含まれている。すなわち、フィールド(1e+3o)は、フィールド1eと3eの間の中間画像である。従って、フィールド1eからフィールド(1e+3o)を経由してフィールド3eに移行する映像の方が、フィールド1eから直接フィールド3oへ移行する映像(図9(b))よりも、映像飛びの量が軽減されている(すなわち、映像不連続現象が軽減されている)。
【0047】
図3は、「繰り返し現象」が発生した場合のクロック乗せ換え装置10の動作例を説明するためのタイムチャートである。
【0048】
繰り返し現象が発生すると、メモリ出力信号Iにおいて、フィールド2o、2eが二度読みされる(この点については、図8(b)と同様)。本実施形態の場合、上述したように、繰り返し現象の場合([ライトパルスCの周波数<リードパルスDの周波数]が成立する場合)、ミックス選択信号Hは、2フィールド期間だけアクティブとなる。すなわち、本実施形態の場合、出力映像信号Lにおいて、繰り返し現象が検出された(ミックス選択信号Hがアクティブとなる期間)フィールド2eおよび2oを、フィールド2oとフィールド2eとがミックスされた中間画像としてのフィールド(2o+2e)に書き換える。
【0049】
この場合の映像の流れは、図5に示すように、フィールド1o→1e→2o→(2o+2e)→(2o+2e)→2e→3o→3eとなる。書き換え後のフィールド(2o+2e)は、フィールド2oと2eの間の中間画像である。同じ画像が2枚続く場合はあるものの、少なくとも時間的に過去の画像が表示されることはないので(すなわち、絵戻りはないので)、図9(c)のような不自然さは全く無い(すなわち、映像不連続現象が軽減されている)。
【0050】
また、本実施形態の場合、フレーム間に動きが無い場合は、図2図3に示されるような中間画像の挿入処理は、実行されない(すなわち、映像不連続現象が発生したままのフィールドが出力される)。しかしながら、静止画中のフィールドは全て同じ画像であるため、映像不連続現象によりフィールドがジャンプ(飛び、または戻り)しても、あくまで同じ画像内でのジャンプであるため、強い違和感はない。図6に示すように、たとえば、フィールド2oから3eまでが静止画の場合、その間に映像不連続現象が発生しても、フィールド2o=2e=3o=3eとなる。
【0051】
以上説明した本実施形態は、映像不連続現象(間引き/繰り返し)が検出されたフィールドを、そのフィールドとそのフィールド直前のフィールドとがミックスされた中間画像としてのフィールドに置き換えている。換言すれば、映像不連続現象が検出されたフィールドに、映像不連続現象を軽減させるための中間画像が挿入される。そして、この処理は、映像不連続現象が検出される度に実行される。すなわち、本実施形態は、特許文献1や特許文献2の技術と比べて、映像不連続現象を確実に軽減させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態の場合、遅延量を増やすことなく映像不連続現象を軽減させることが可能である。本実施形態において、中間画像(ミックス信号K)自体は1フィールドだけ遅延した信号から生成されるものの、その中間画像は映像不連続現象発生時に元の画像に置き換わるだけあり、特許文献3のように、本線信号(すなわち、メモリ出力信号I)のタイミング自体が遅延するわけではない。もちろん、クロック乗せ換えに必要な2フィールド遅延自体は機能上必要な遅延であり許容された遅延であることは説明するまでもない。さらに、ここで問題としているのはあくまでフィールド遅延(クロック単位での遅延)であって、ライン遅延(フィールド先頭数ラインの遅延)ではない。
【0053】
従って、放送スタジオシステムの遅延要求を満たすことができ、さらに、本実施形態を搭載したフレームシンクロナイザを既存の放送スタジオシステムに投入する場合、タイミングを変えるなどの仕様変更は一切不要である。
【0054】
以上を纏めると、本実施形態によれば、映像信号を遅延させることなく、映像不連続現象を確実に軽減させることが可能となる。
【0055】
なお、図1において、フレーム遅延部16、動き検知部18、およびメモリ制御部22は、上記効果を奏する上で必須の構成要素ではない。図7は、必須の構成要素のみで構成されたクロック乗せ換え回路50の構成例を示すブロック図である。この場合、フレーム遅延部16と動き検知部18による「静止画像判定処理」、およびメモリ制御部22による「ヒステリシス領域付与処理」は不要となる。従って、図7に示すように、フィールドメモリ26にはライトパルスCとリードパルスDとが直接入力され、映像不連続検出部20からの第1制御信号Fは不要となる(すなわち、フィールドメモリ26と映像不連続検出部20とは接続されない)。図7において図1と同一の構成要素には同一の符号が付与される。
【0056】
また、ミックス処理が頻繁に行われる場合、関連する回路(選択信号生成部24や選択部32)で消費される電力が増大する。しかしながら、本実施形態の場合、映像不連続現象が発生しているが放置しておいても実害が無い静止画の場合には、ミックス処理を実行しないようにしている。従って、本実施形態の場合、映像不連続現象の軽減処理に影響を与えることなく、装置で消費される電力を削減することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態において、第1制御信号Fがアクティブの場合、ライトクロックとリードクロックの位相同士が一定値以上に接近しないように強制的に位相差が作り出される。この処理により、ライトパルスCやリードパルスDの信号揺らぎ(位相変動)による映像不連続現象の多発を防ぐことが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、クロック乗せ換え用のメモリであるフィールドメモリ26のバンク数を2つにする場合を例に挙げたが、フィールドメモリ26のバンク数は、必ずしも2つである必要はない。フィールドメモリ26のバンク数は、例えば、NTSC(National Television Standards Committee)信号に対応するために4つでもよく、あるいは、PAL(Phase Alternation by Line)信号に対応するために8つでもよい。
【0059】
また、本実施形態は、フレームシンクロナイザに限定されず、広く他分野に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10、50 クロック乗せ換え装置
12 ライトパルス生成部
14 リードパルス生成部
16 フレーム遅延部
18 動き検知部
20 映像不連続検出部
22 メモリ制御部
24 選択信号生成部
26 フィールドメモリ
28 フィールド遅延部
30 ミックス信号生成部
32 選択部
A 入力映像信号
B 同期信号
C ライトパルス
D リードパルス
E メモリ制御信号
F 第1制御信号
G 第2制御信号
H ミックス選択信号
I メモリ出力信号
J フィールド遅延信号
K ミックス信号
L 出力映像信号
M フレーム遅延信号
N 動き検知信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9