特許第6193016号(P6193016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193016車載用の電源装置及び電源装置を備える車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193016
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】車載用の電源装置及び電源装置を備える車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-135942(P2013-135942)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-11850(P2015-11850A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】杉井 裕政
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】越智 誠
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 龍二
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3120348(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3182284(JP,U)
【文献】 米国特許第04684580(US,A)
【文献】 特開2008−306864(JP,A)
【文献】 特開2010−208461(JP,A)
【文献】 特開平03−214569(JP,A)
【文献】 特開2006−281805(JP,A)
【文献】 実開平06−073860(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3159362(JP,U)
【文献】 特開平06−257453(JP,A)
【文献】 特開2007−172938(JP,A)
【文献】 実開平04−080204(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/02
H01M 10/06−10/18
B01R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の収納部に形成された各々の電解液槽に鉛電池セルが収納された鉛バッテリと、
直列に接続された複数個の蓄電素子が保持手段に保持された状態で第2の収納部に収納された補助バッテリと、
前記鉛バッテリの電力を出力する一対の出力端子と、
前記補助バッテリと前記対の出力端子とに接続され、前記鉛バッテリと前記補助バッテリとを並列に接続するリード部とを備え、
前記第1の収納部と前記第2の収納部とが連結された収納ケースの中央部に位置する鉛電解液槽又は第2の収納部に重心が位置する電源装置。
【請求項2】
前記収納ケースは一体的に成型されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記保持手段は箱状に形成された内ケースであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1の収納部に、6つの電解液槽が形成されており、
前記第1の収納部の一方の端面に前記第2の収納部が連結されており、
前記第1の収納部の他方の端面から数えて4番目の電解液槽の空間内に、重心が位置するよう構成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
第1の収納部に形成される電解液槽と第2の収納部とは大きさが略等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記補助バッテリは、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素電池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
車両を走行させるエンジンと、
前記エンジン及び電源装置を搭載してなる車両本体と、
前記エンジンで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と、
請求項1〜6のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置は、車両のエンジンルームに配置されてなることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の電源装置及びこれを備える車両に関し、たとえば鉛バッテリと並列に補助バッテリを接続した車両用の電源装置及びこれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
回生制動する車両では、車両が減速するときの運動エネルギーによってオルタネータが駆動され、オルタネータが発電した電力がバッテリに蓄えられる。信号待ち等では燃費効率を改善するためにエンジンのアイドリングをストップし、エンジンを再始動するときに、バッテリに蓄えた電力がスタータモータに供給される。このようなバッテリとして、定格電圧を12Vとする鉛バッテリが知られている。鉛バッテリは、種々の電装機器にも電力を供給しており、回生制動する度に急速に充電され、エンジンの再始動時には急速に放電されるため寿命が短い。
【0003】
このような問題を解決するために、補助バッテリとしてリチウムイオン電池が、鉛バッテリと並列に接続された電源装置が知られている(特許文献1参照)。この電源装置では、回生発電時に鉛バッテリとリチウムイオン電池との双方が充電されるため、鉛バッテリに流れる電流を小さくすることができ、エンジンを再始動させるときには、鉛バッテリとリチウムイオン電池の双方からスタータモータに電力を供給するため、鉛バッテリからスタータモータに流れる電流を小さくすることができる。
【0004】
鉛バッテリとリチウムイオン電池とを電気接続したときの電気抵抗が大きくなることを防止するとともに、電源装置のコンパクト化を図るために、鉛バッテリと補助バッテリとは一体的に構成されてエンジンルーム内に設置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−208599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補助バッテリは鉛バッテリに比べて軽いので、鉛バッテリに補助バッテリを連結して一体的に構成した電源装置では、重心位置が電源装置の中心がら外れて偏ることがある。重心位置が偏った電源装置を、たとえば両腕で抱えて持ち運ぶ場合には、両腕に均等に荷重が掛からないので持ち運びにくい。また、重心位置が偏った電源装置をエンジンルームにねじ止めして取り付けた場合に、車両走行中にねじ止め部が車両から受けるストレスは、取り付け位置によって異なり、取り付けねじが緩みやすくなる。取り付けねじが緩むと電源装置が振動して、たとえば補助バッテリの蓄電素子が破損することがある。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、鉛バッテリに補助バッテリを連結して一体的に構成した電源装置において、電源装置の中央に位置する、鉛バッテリの電解液槽又は補助バッテリの収納ケースに電源装置の重心が位置する電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一の車載用の電源装置によれば、第1の収納部に形成された各々の電解液槽に鉛電池セルが収納された鉛バッテリと、直列に接続された複数個の蓄電素子が保持手段に保持された状態で第2の収納部に収納された補助バッテリと、
前記鉛バッテリの電力を出力する一対の出力端子と、前記補助バッテリと前記1対の出力端子とに接続され、前記鉛バッテリと前記補助バッテリとを並列に接続するリード部とを備え、前記第1の収納部と前記第2の収納部とが連結された収納ケースの中央部に位置する鉛電解液槽又は第2の収納部に重心が位置する。
【0009】
上記構成により、電源装置を持ち運ぶときには、両腕に均等に電源装置の荷重が掛かるので、違和感を覚えることなくバランスよく電源装置を持ち運ぶことができる。さらに、電源装置がエンジンルームにねじ止めされたねじ止め部は、車両走行中に車両からストレスを受けるが、電源装置の略中心に重心が位置するので、取り付けねじの位置によるストレスのばらつきが小さくなる。これによって、取り付けねじが緩んで電源装置が振動して、たとえば補助バッテリの蓄電素子が破損することを効果的に防止することができる。
【0010】
また、他の車載用の電源装置によれば、収納ケースは一体的に成型される。
【0011】
上記構成により、電源装置をコンパクトに形成して、持ち運びおよびエンジンルームへの取り付けを容易に行うことができる。
【0012】
さらに、前記保持手段は箱状に形成された内ケースとしてもよい。
【0013】
上記構成により、補助バッテリの重量を容易に調整することができ、さらに補助バッテリの放熱効果を高めることができる。
【0014】
さらに、前記第1の収納部に、6つの電解液槽が形成されており、前記第1の収納部の一方の端面に前記第2の収納部が連結されており、前記第1の収納部の他方の端面から数えて4番目の電解液槽の空間内に、重心が位置するよう構成することもできる。
【0015】
上記構成により、いずれの端面から数えても4番目となる中間に位置する電解液槽に重心が位置するように調整して、重量バランスを適切に維持できる。
【0016】
さらに、第1の収納部に形成される各々の電解液槽と第2の収納部とは大きさを略等しくすることができる。
【0017】
上記構成により、補助バッテリの重量を容易に調整して、電源装置の中央部に位置する、電解液槽又は第2の収納部の内部に重心が位置するようにすることができる。
【0018】
さらに、前記補助バッテリは、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素電池である。
【0019】
上記構成により、効率の良い補助バッテリとすることができる。
【0020】
さらに、車両を走行させるエンジンと、前記エンジン及び電源装置を搭載してなる車両本体と、請求項1〜5のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、前記エンジンで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備え、電源装置は、車両のエンジンルームに配置されることを特徴とする車両である。
【0021】
上記構成により、両腕で均等に電源装置の荷重を支えて電源装置を持ち運ぶことができる。さらに、電源装置がエンジンルームにねじ止めされたねじ止め部が車両走行中に車両からストレスを受けるが、取り付け位置によるストレスの差が小さくなる。これによって、取り付けねじが緩んで電源装置が振動し、たとえば補助バッテリの蓄電素子が破損することを効果的に防止することができる電源装置を備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係る電源装置を示す外観斜視図である。
図2】電源装置の分解斜視図である。
図3】電源装置の透視斜視図である。
図4】電源装置を短手方向に切断した縦断面図である。
図5】電源装置を長手方向に切断した縦断面図である。
図6】電源装置を車両のエンジンルーム内に配置した状態を示す模式水平断面図である。
図7】補助バッテリの蓄電素子集合体をブラケットで保持した電源装置を示す外観斜視図である。
図8】電源装置100を、車両に載置したシステム例を示す図である。
図9】本発明の実施例2に係る電源装置を示す外観斜視図である。
図10】電源装置を長手方向に切断した縦断面図である。
図11】電源装置の透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための車載用の電源装置及び電源装置を備える車両を例示するものであって、本発明は車載用の電源装置及び電源装置を備える車両を以下のものに特定しない。また実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0024】
図1は本発明の実施例1に係る車両用の電源装置100の斜視図を示し、図2は電源装置100の分解斜視図を示す。図3は電源装置100の内部構造を示す。図4は電源装置100のを短手方向に切断した縦断面図である。図5は電源装置を長手方向に切断した縦断面図である。図6は電源装置100を車両1000のエンジンルーム95内に配置した状態を示す模式水平断面図である。電源装置100は、鉛バッテリ10と、補助バッテリ20と、これらを収納する収納ケース30で構成されている。なお図3では、内部構造を示すためにケース30と出力端子12を破線で示し、カバー部42(カバー部42については後述する。)は省略している。
【0025】
収納ケース30は、絶縁性に優れ、さらに内部に希硫酸等の電解液を充填するために耐薬品性に優れた樹脂などが用いられて箱形に形成される。なお、収納ケース30の外形及びサイズを、既存の車載用12V鉛バッテリとほぼ同様の外形とすることで、容易に電源装置100に載せ替えることができる。
収納ケース30は、上面が開口した有底箱状のケース本体32と、ケース本体32の上面を閉塞する蓋部31とを備えている。収納ケース30の内部に鉛バッテリ10と補助バッテリ20とが収納される。鉛バッテリ10は、複数の鉛電池セル11を積層した鉛電池積層体で構成される。補助バッテリ20は、複数の蓄電素子21が直列に電気接続されて構成される。
鉛バッテリ10は図示しない導通部材を介して正負の出力端子12に接続され、補助バッテリ20は後述のリード部14を介して正負の出力端子12に接続される。
【0026】
リード部14は導電性に優れた金属等の部材で構成されており、鉛バッテリ10と補助バッテリ20とは、リード部14を介して電気的に並列に接続される。補助バッテリ20に補助電池端子を設ける場合には、リード部14は、補助電池端子と正負の出力端子12とを電気接続するように構成される。
【0027】
鉛バッテリ10と補助バッテリ20との間には回路部40が介在される。回路部40は蓋部31の上面に配置されており、補助バッテリ20の電圧、電流、温度等を監視して、異常時には回路を遮断する保護回路を備えている。
【0028】
図2に示すように、鉛バッテリ10が収納される収納ケース30の一部に、補助バッテリ20が収納される収納空間35が設けられた統合型としており、収納ケース30は、第1の収納部である複数の電解液槽36と第2の収納部である収納空間35とを含んでいる。1つの収納ケース30に鉛バッテリ10と補助バッテリ20とを収納することによって、電源装置をコンパクトに形成して、持ち運びおよびエンジンルームへの取り付けを容易に行うことができる。
【0029】
なお、鉛バッテリ10の鉛電池セル11が収納される電解液槽36と補助バッテリ20が収納される収納空間35とは、統合されて一体的に形成されるものに限定されない。鉛電池セル11が収納される電解液槽36と補助バッテリ20が収納される収納空間35とが別々に形成されて、ねじ等で連結されるものでも良い。
(仕切壁34)
【0030】
収納ケース30の内部には、鉛バッテリ10の電解液が注液される電解液槽36同士を区画し、あるいは補助バッテリを収納する収納空間35と電解液槽36とを区画するために、仕切壁34が設けられている。仕切壁34は、絶縁性の部材で構成されることが好ましく、たとえば収納ケース本体32と一体成型される。
(鉛バッテリ10)
【0031】
鉛電池セル11の電極体は、角形の外形とされ、幅方向の寸法よりも厚みが薄い薄型とされ、電解液と極板等で構成される発電要素の単位の電池を示すものである。鉛バッテリ10は、基本的に既存の車載用12V鉛バッテリの構成が用いられる。すなわち、定格電圧が2Vの鉛電池セル11を6セル積層して直列に接続したものが用いられる。
鉛バッテリ10に補助バッテリ20を積層しても、既存の車載用12V鉛バッテリと略同じサイズとなるように、鉛電池セル11の厚さは若干薄くされる。これにより、鉛バッテリ10に補助バッテリ20を統合した電源装置100のサイズを、既存の車載用12V鉛バッテリとほぼ同程度とすることができる。例えば、鉛電池セル11の厚さを従来のものに比べて6/7にすることで、既存の車載用12V鉛バッテリと略同じサイズの電源装置100としたうえで、補助バッテリ20の収納空間25を確保することができる。
(補助バッテリ20)
【0032】
補助バッテリ20は、複数の蓄電素子21を略同一平面に配置している。図4に示すように、蓄電素子21は蓄電可能な部材であり、二次電池セルが用いられる。二次電池セルとしては、ニッケル水素電池が好適に利用できる。ニッケル水素電池の電源電圧は1.2Vであるので、10個のニッケル水素電池を直列に接続すれば12Vとなり、電源電圧を12Vとする鉛バッテリ10との並列接続に適合する。ニッケル水素電池は、2本の電池セルを長手方向に接続して蓄電素子組21aを形成する。蓄電素子組21aを5組平行に同一平面上に並べて蓄電素子集合体が構成される。すなわち蓄電素子集合体は、合計10本のニッケル水素電池で構成される。この構成によって縦方向に薄型の補助バッテリ20が形成される。
【0033】
なお、蓄電素子21をニッケル水素電池とする構成について説明したが、リチウムイオン電池等の二次電池を使用することもできる。あるいは電解二重コンデンサ等の蓄電素子を用いることもできる。
【0034】
直列接続する蓄電素子21の本数を調整することで、補助バッテリ20の電圧を、接続先の鉛バッテリ10の電圧と一致するように調整できる。たとえば、トラック等の大型車両のように、定格電圧を24Vとする鉛バッテリに対しては、ニッケル水素電池の二次電池を20本直列に接続することで対応させることができる。このように必要に応じて36V、48V等、ニッケル水素電池を10本単位で、すなわち10n(nは自然数)個を直列に接続することにより、12Vの倍数で出力電圧を調整して、多くの規格化された電源装置の電圧に適合することができる。
【0035】
また円筒形の二次電池セルを蓄電素子21に用いる場合は、各二次電池セルを水平姿勢に配置することが好ましい。これによって各二次電池セルに設けられた安全弁を確実に動作させることができる。円筒形の外装缶を用いた二次電池セルは、一般に外装缶の内圧の上昇に応じて開弁する安全弁を、円筒形の一方の端面に設けている。この構造の場合、円筒形の二次電池セルを、底面側に安全弁が面する姿勢で縦置きにすると、外装缶内に充填されている電解液が安全弁の近傍に溜まって、安全弁が開弁した際に電解液が安全弁の開口面積の何割かを塞ぐことがある。特に、二次電池セルを直列に接続する際には、二次電池セル同士を接続するバスバー24(バスバー24については後述する。)を短くするため、長手方向の向きが入れ替わる。このために、二次電池セルを縦置きにすると、何れかの二次電池セルの安全弁が底面側に面する事態が起こり得る。そこで、上述の通り二次電池セルが水平姿勢となるように内ケース21やブラケット37(ブラケット37については後述する。)で保持することで、このような事態を回避し、安全弁が開弁した際に確実に開口部が確保されるようにして、安全弁の動作の信頼性を高めることができる。
【0036】
以下、蓄電素子21として円筒形のニッケル水素電池を用いた場合について説明するが、ニッケル水素電池に限定するものでなく、例えばリチウムイオン電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ等を用いることもできる。蓄電素子21の外形も円筒形に限定されるものではなく、角形の電池セルやキャパシタ等を利用することもできる。リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池等の非水系電解液二次電池は、鉛バッテリ10よりも充電抵抗が小さく、軽量で充放電容量を大きくすることができる。またニッケル水素電池は、充電抵抗が極めて小さく、優れた大電流の充電特性を有する。
(バスバー24)
【0037】
複数の蓄電素子21は、内ケース22に収納される。さらに内ケース22に収納された状態で、蓄電素子21同士はバスバー24によって電気的に接続される。バスバー24は、金属板等導電性に優れた材質で構成される。また、複数の蓄電素子21を直列接続した補助バッテリ20は、回路部40に実装された監視回路によって中間電位が検出されて監視される。たとえば蓄電素子21にリチウムイオン電池を使用する場合は、各蓄電素子21の電圧が監視されることが好ましい。このため各バスバー24は、回路部40と個別に配線されている。
【0038】
また回路部40は回路基板41を備える。回路基板41は一方向に延長された形状として、長手方向の側面側の一方に、端子コネクタ46を設けている。端子コネクタ46には、バスバー25に設けられるシャント抵抗28やヒューズ29、あるいはバスバー24に設けられるサーミスタ27の信号ラインが接続される。回路部40を収納ケース30の中心から一方の側面側に偏在させて配置する場合は、収納ケース30正面の端縁と近い側の側面に、端子コネクタ46を設けることが好ましい。
【0039】
なお、鉛バッテリ10は、多量の電解液を有しており、熱容量が補助バッテリ20よりも大きいため、鉛バッテリ10の方が補助バッテリ20より温度が相対的に低くなる。
(内ケース22)
【0040】
内ケース22は、絶縁性に優れた材質、例えば樹脂等で形成される。内ケース22は外形を箱状に形成し、内部に蓄電素子集合体を収納できる空間を備えている。内ケース22の主面は、角形の鉛電池セル11の電極体の主面とほぼ等しいか、これよりも小さい大きさに形成されている。これによって、補助バッテリ20を鉛バッテリ10と積層した際に、外形をコンパクトなブロック状にすることができる。
【0041】
補助バッテリ20の蓄電素子21が内ケース22に収納されることによって、内ケース22を含んだ補助バッテリ20全体の重量を増やすことができる。たとえば内ケース22を構成する壁部の厚みを厚くすることによって、補助バッテリ20を鉛電池セル11と略同じ重量とすることができる。
【0042】
このようにして、たとえば鉛バッテリ20に鉛電池セル11が6つ設置されている場合には、電源装置100の中央に位置する鉛電池セル11の内部に電源装置100の重心を位置させることができる。このような電源装置100を両手で持ったときには、電源装置100の荷重が両腕に均等に掛かるので、違和感を覚えることがない。電源装置100を持ち運ぶときには両腕に均等に荷重が掛かるので持ち運び易い。
【0043】
電源装置100をエンジンルーム95にねじ止めして取り付けた場合に、電源装置100のねじ止め部が走行中に車両1000から受けるストレスは、ねじ止め位置によるばらつきが小さくなる。これによって、たとえば一部の取り付けねじに過大なストレスが掛かってねじが緩み、電源装置1000に発生した振動によって電源装置1000が破損し、あるいはエンジンルーム95から脱落することを防止することができる。
【0044】
なお、内ケース22には、図2等に示すように複数箇所に開口窓26を設けてもよい。開口窓26を設けることによって補助バッテリ20の重量の微調整を行うことができるとともに、開口窓26から蓄電素子21を部分的に表出させることで、蓄電素子21の放熱性を高めることもできる。
【0045】
図6の模式平面図に示すように、電源装置100をエンジンルーム95内に配置したとき、補助バッテリ20は、エンジン96から見て離れた側に位置していることが好ましい。これによって、補助バッテリ20がエンジン96の熱に直接晒されることを防止することができる。
【0046】
図7に示すように、蓄電素子21同士をバスバー24等を介して機械的に接続し、さらに収納ケース30の内壁に、内ケース22を設けることなく、蓄電素子集合体を保持するブラケット37を設けることもできる。このような構成であると、たとえばブラケット37の厚みを調節して補助バッテリ20の重量調整を容易に行うことができる。さらに、この場合には、蓄電素子21を内ケース22に収納しないので、補助バッテリ20の放熱性を一層高めることもできる。
(回路図)
【0047】
図8は電源装置100を車両1000に載置したシステム例を示す。エンジン96は車輪97を駆動する。鉛バッテリ10と補助バッテリ20とが並列に電気接続されており、鉛バッテリ10と補助バッテリ20との間に、一時的に回路を切り離す遮断機構60を備えている。鉛バッテリ10と補助バッテリ20とは、それぞれ鉛バッテリ用遮断スイッチ61、補助バッテリ用遮断スイッチ62を介して、リード部14で並列接続されており、各遮断スイッチをONすると、鉛バッテリ10と補助バッテリ20の電圧は等しくなる。このような遮断スイッチとして、リレーや半導体スイッチング素子等のスイッチング素子が利用される。また遮断スイッチのON/OFFの切替制御は、回路部40に設けられた制御回路48によって行われる。
【0048】
電源装置100は、好ましくは回生制動とアイドリングストップする車両1000に搭載される。この電源装置100は、鉛バッテリ10と補助バッテリ20とを備える。オルタネータ52が回生制動発電した電力が、鉛バッテリ10と補助バッテリ20との双方に蓄えられる。鉛バッテリ10と補助バッテリ20との電力は、車両のエンジン96を始動するスタータモータ54と電装機器50とに供給される。
【0049】
アイドリングストップする車両は、メインスイッチであるイグニッションスイッチがオンの状態で、信号待ち等でエンジン96を停止させて燃費効率を改善する。エンジン96を再始動させるために、スタータモータ54に電力が供給される。なお、回生制動し、かつアイドリングストップする車両は、大きなオルタネータ52を備えており、このオルタネータ52がエンジン96を再始動するモータとしても用いられる。
(実施例2)
【0050】
図9は本発明の実施例2に係る電源装置200を示す外観斜視図である。図10は電源装置200を長手方向に切断した縦断面図である。図11は電源装置200の透視斜視図である。鉛電池セル11が同数となるように鉛電池積層体を2つに分けて、2つに分けた鉛電池積層体の間に補助バッテリ20を配置することもできる。車載用12Vの鉛バッテリは、1セル当たりの定格電圧が2Vの鉛電池セル11を6枚使用して、総電圧12Vの出力を得ているが、仕切壁34によって7つの区画空間に分けられている収納ケース30の端から4番目に位置する区画空間を補助バッテリの収納空間35として、ここに補助バッテリ20を収納する。
【0051】
このように電源装置200の中央に補助バッテリ20を設置することによって、補助バッテリ20を収納する収納空間35の内部に確実に重心を位置させることができる。このとき、補助バッテリ20は、蓄電素子集合体が内ケース22に収納されるもの、あるいは蓄電素子集合体がブラケット37に保持されるもの、あるいは他の構成によって蓄電素子集合体が設置されるものでも良い。さらに、補助バッテリ20は、鉛バッテリ10の鉛電池セル11に比べて軽量なものでも良い。
【0052】
なお、電解液槽36には希硫酸等の電解液が充填されており熱の吸収効果が高く、補助バッテリ20を鉛電池セル11で挟み込むことによって、補助バッテリ20が発生する熱を電解液に吸収させることができる。さらに補助バッテリ20が、エンジンルーム95内に設置されたエンジン96や他の機器が発生する熱を受けて過熱することも効果的に防止することができる。また、電源装置200を車両のエンジンルーム95内に配置する際に、電源装置200の方向を意識せずとも済むという利点も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る車両用の電源装置及び電源装置を備える車両は、車両の電装用バッテリや補機バッテリとして好適に利用できる。特に、回生制動で鉛バッテリを充電するアイドリングストップ機能を備えた車両に適用すると、鉛バッテリの負荷を軽減できる。
【符号の説明】
【0054】
100,200…電源装置
10…鉛バッテリ
11…鉛電池セル
20…補助バッテリ
12…出力端子;12+…正極側出力端子;12−…負極側出力端子
14…リード部
21…蓄電素子;21a…蓄電素子組
22…内ケース
24,25…バスバー
26…開口窓
27…サーミスタ
28…シャント抵抗
29…ヒューズ
30…収納ケース
31…蓋部
32…ケース本体
33…外壁
34…仕切壁
35…収納空間
36…電解液槽
37…ブラケット
40…回路部
41…回路基板
42…カバー部
44…端子部;44+…正極側端子部;44−…負極側端子部
46…端子コネクタ
48…制御回路
50…電装機器
52…オルタネータ
54…スタータモータ
60…遮断機構
61…鉛バッテリ用遮断スイッチ
62…補助バッテリ用遮断スイッチ
95…エンジンルーム
96…エンジン
97…車輪
1000…車両
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