(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193020
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の定速走行制御システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20170828BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20170828BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20170828BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20170828BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20170828BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20170828BHJP
B60K 31/00 20060101ALI20170828BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/00
B60K6/48ZHV
B60K6/54
B60L15/20 J
B60K31/00 Z
F02D29/02 311J
F02D29/02 301C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-140889(P2013-140889)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-169065(P2014-169065A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0022418
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】金尚準
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−157305(JP,A)
【文献】
特開2000−295714(JP,A)
【文献】
特開2003−269210(JP,A)
【文献】
特開2006−312924(JP,A)
【文献】
特開2009−029314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60K 31/00
B60L 15/20
B60W 10/06
B60W 20/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両の走行車速を設定された目標車速で自動制御する定速走行制御方法であって、
前記目標車速と走行道路の傾斜角に基づいて定速走行のための要求トルクを算出する段階;
前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配してエンジンとモータで前記設定された比率のトルクが発生するように前記エンジンとモータに指令する段階;
前記走行車速と前記目標車速の速度差を算出する段階;
前記算出された速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出して前記分配されたモータトルクに合算する段階;および
前記合算されたモータトルクを前記モータに指令して前記走行車速を前記目標車速で制御する段階;
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御方法。
【請求項2】
前記目標車速が変更されると、前記変更された目標車速に基づいて前記要求トルクを更新算出し、更新算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに更新分配することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の定速走行制御方法。
【請求項3】
前記走行道路の傾斜角または前記ハイブリッド車両の走行負荷が変更されると、前記設定された比率で分配されたエンジントルク指令およびモータトルク指令を維持することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の定速走行制御方法。
【請求項4】
ハイブリッド車両の走行車速を設定された目標車速で自動制御する定速走行制御システムであって、
前記ハイブリッド車両が走行する道路の傾斜角を検出する傾斜角センサー;
前記ハイブリッド車両の走行車速を検出する車速センサー;
エンジン、モータ、変速装置および制動装置を含んで前記ハイブリッド車両の走行車速を制御するための被制御対象;および
前記傾斜角センサーおよび車速センサーの信号を受信して前記被制御対象を制御して走行車速を設定された目標車速で制御する制御器を含み、
前記制御器は、
前記目標車速と走行道路の傾斜角に基づいて定速走行のための要求トルクを算出する段階;前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配してエンジンとモータで前記設定された比率のトルクが発生するように前記エンジンとモータに指令する段階;前記走行車速と前記目標車速の速度差を算出する段階;前記算出された速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出して前記分配されたモータトルクに合算する段階;および前記合算されたモータトルクを前記モータに指令して前記走行車速を前記目標車速で制御する段階を含む方法を遂行するための設定されたプログラムによって動作することを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御システム。
【請求項5】
前記制御器は、
前記目標車速と前記傾斜角センサーによって検出された走行道路の傾斜角に基づいて走行負荷を演算し、演算された走行負荷に基づいて前記定速走行のための要求トルクを算出する走行負荷演算部;
前記算出された要求トルクに基づいて設定された比率でエンジントルクおよびモータトルクを分配して前記エンジンおよびモータに指令する動力分配部;
前記目標車速と前記車速センサーによって検出された走行車速間の速度差を算出し前記速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出する速度制御部;および
前記速度制御部によって算出された追従モータトルクを前記動力分配部で分配されたモータトルクに合算するための合算部;
を含むことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の定速走行制御システム。
【請求項6】
前記目標車速が変更されると、前記変更された目標車速に基づいて前記要求トルクを更新算出し、更新算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに更新分配することを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の定速走行制御システム。
【請求項7】
前記走行道路の傾斜角または前記ハイブリッド車両の走行負荷が変更されると、前記設定された比率で分配されたエンジントルク指令およびモータトルク指令を維持することを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の定速走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の定速走行(auto cruise)を制御するハイブリッド車両の定速走行制御システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにハイブリッド車両(hybrid electric vehicle)は内燃機関エンジン(internal combustion engine)とバッテリー電源を共に使用する。つまり、ハイブリッド車両は内燃機関エンジンの動力とモータの動力を効率的に組み合わせて使用する。
【0003】
前記ハイブリッド車両は一例として
図1に示すように、エンジン10、モータ20、エンジン10とモータ20の間で動力を断続するエンジンクラッチ30、変速機40、差動歯車装置50、バッテリー60、前記エンジン10を始動したり前記エンジン10の出力によって発電をする始動発電機70、および車輪80を含むことができる。
【0004】
また、前記ハイブリッド車両は、ハイブリッド車両の全体動作を制御するハイブリッド制御器(HCU;hybrid control unit)200、エンジン10の動作を制御するエンジン制御器(ECU;engine control unit)110、モータ20の動作を制御するモータ制御器(MCU;motor control unit)120、変速機40の動作を制御する変速制御器(TCU;transmission control unit)140、およびバッテリー60を制御し管理するバッテリー制御器(BCU;battery control unit)160を含むことができる。
【0005】
前記バッテリー制御器160はバッテリー管理システム(BMS;battery management system)と呼称されることができる。前記始動発電機70はISG(integrated starter & generator)またはHSG(hybrid starter & generator)と呼称されることもできる。
【0006】
このようなハイブリッド車両はモータ20の動力だけを利用する純粋な電気自動車モードであるEVモード(electric vehicle mode);エンジン10の回転力を主動力にするとともにモータ20の回転力を補助動力として利用するHEVモード(hybrid electric vehicle mode);車両の制動あるいは慣性による走行時制動および慣性エネルギーを前記モータ20の発電を通して回収してバッテリー60に充電する回生制動モード(regenerative braking mode、RBモード)などの走行モードで運行することができる。
【0007】
一方、前記ハイブリッド車両には人(運転者)の助けなしに車両の走行速度を設定した目標速度(目標車速)に一定に維持する定速走行制御システム(auto cruise control system)が適用される。運転者の助けがないということは、運転者が加速ペダルおよびブレーキペダルのような車速と関連ある機構を操作しないことを意味する。
【0008】
従来技術の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムの概略的な構成を
図2に示す。
【0009】
従来技術の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムは、定速走行制御の際、目標車速制御のために速度制御部5で運転者要求トルクを演算し、動力分配部6で前記演算された運転者要求トルクをエンジントルク指令とモータトルク指令に分配して被制御対象7に含まれているエンジンおよびモータに印加して定速走行制御を行う。
【0010】
しかし、このような従来技術の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムは、要求トルクが急変する時に正確な目標車速追従のためにエンジントルク指令を急変させることができる。
【0011】
したがって、従来技術の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムは、前記急変するエンジントルク指令に対応するため、エンジンスロットル開度を一定水準開けて点火時期(spark timing)を可変制御することによって燃費を悪化させることができる。
【0012】
この背景技術の部分に記載された事項は発明の背景に対する理解増進のために作成したものであって、この技術が属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、目標車速、傾斜角を利用して走行負荷を演算してこれを要求トルクに使って、エンジンとモータの動力を分配し分配されたモータトルクに速度制御器の追従トルクを加えて最終のモータトルクを生成してハイブリッド車両の定速走行(auto cruise)を制御するハイブリッド車両の定速走行制御システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御方法は、ハイブリッド車両の走行車速を設定された目標車速で自動制御する定速走行制御方法であって、前記目標車速と走行道路の傾斜角に基づいて定速走行のための要求トルクを算出する段階;前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配してエンジンとモータで前記設定された比率のトルクが発生するように前記エンジンとモータに指令する段階;前記走行車速と前記目標車速の速度差を算出する段階;前記算出された速度差を基礎に前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出して前記分配されたモータトルクに合算する段階;前記合算されたモータトルクを前記モータに指令して前記走行車速を前記目標車速で制御する段階を含むことができる。
【0015】
前記目標車速が変更されると、前記変更された目標車速に基づいて前記要求トルクを更新算出し、更新算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに更新分配することができる。
【0016】
前記走行道路の傾斜角または前記ハイブリッド車両の走行負荷が変更されると、前記設定された比率で分配されたエンジントルク指令およびモータトルク指令を維持できる。
【0017】
前記算出された速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出して前記分配されたモータトルクに合算する段階は、比例積分微分(PID;proportional integral differential)制御によって遂行できる。
【0018】
前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配する時、ハイブリッド車両のバッテリー60(
図1)のSOC(state of charge)のバランシング(balancing)を考慮できる。
【0019】
そして、前記課題を解決するための本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムは、ハイブリッド車両の走行車速を設定された目標車速で自動制御する定速走行制御システムであって、前記ハイブリッド車両が走行する道路の傾斜角を検出する傾斜角センサー;前記ハイブリッド車両の走行車速を検出する車速センサー;エンジン、モータ、変速装置および制動装置を含んで前記ハイブリッド車両の走行車速を制御するための被制御対象;および前記傾斜角センサーおよび車速センサーの信号を受信して前記被制御対象を制御して走行車速を設定された目標車速で制御する制御器を含み、前記制御器は前記本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御方法を遂行するための設定されたプログラムによって動作することができる。
【0020】
前記制御器は、前記目標車速と前記傾斜角センサーによって検出された走行道路の傾斜角に基づいて走行負荷を演算し、演算された走行負荷に基づいて前記定速走行のための要求トルクを算出する走行負荷演算部;前記算出された要求トルクに基づいて設定された比率でエンジントルクおよびモータトルクを分配して前記エンジンおよびモータに指令する動力分配部;前記目標車速と前記車速センサーによって検出された走行車速間の速度差を算出し前記速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出する速度制御部;および前記速度制御部により算出された追従モータトルクを前記動力分配部で分配されたモータトルクに合算するための合算部を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
前述のように本発明の実施例によれば、目標車速、傾斜角を利用して走行負荷を演算してこれを要求トルクに使って、エンジンとモータの動力分配を行い分配されたモータトルクに速度制御器の追従トルクを加えて最終のモータトルクを生成してハイブリッド車両の定速走行(auto cruise)を制御することによって燃費および速度制御性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一般的なハイブリッド車両を概念的に示すブロック構成図である。
【
図2】従来技術の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムを概念的に示すブロック構成図である。
【
図3】本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムを示すブロック構成図である。
【
図4】本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムの速度制御部の内部構成ブロック図である。
【
図6】本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御方法の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参考にして本発明の実施例について本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明はここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。
【0024】
明細書全体にわたって同一符号は同一の構成要素を意味する。
【0025】
明細書全体で、ある部分がある構成要素を含むという場合、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0026】
図1は本発明の実施例による定速走行制御システムが適用されるハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【0027】
図1に示されているように、本発明の実施例による定速走行制御システムが適用されるハイブリッド車両は、エンジン10、モータ20、エンジン10とモータ20の間で動力を断続するエンジンクラッチ30、変速機40、差動歯車装置50、バッテリー60および前記エンジン10を始動したり前記エンジン10の出力によって発電をする始動発電機70を含むことができる。
【0028】
また、本発明の実施例による定速走行制御システムが適用されるハイブリッド車両は、ハイブリッド車両の全体動作を制御するハイブリッド制御器(HCU)200、エンジン10の動作を制御するエンジン制御器(ECU)110、モータ20の動作を制御するモータ制御器(MCU)120、変速機40の動作を制御する変速制御器(TCU)140およびバッテリー60を制御し管理するバッテリー制御器(BCU)160を含むことができる。
【0029】
図3は本発明の実施例によるハイブリッド車両の定速走行制御システムを示すブロック図である。
【0030】
本発明の実施例による定速走行制御システムは、目標車速、傾斜角を利用して走行負荷を演算してこれを要求トルクに使って、エンジンとモータの動力分配を行い分配されたモータトルクに速度制御器の追従トルクを加えて最終のモータトルクを生成してハイブリッド車両の定速走行(auto cruise)を制御するシステムである。
【0031】
このような本発明の実施例による従属走行制御システムは、前記ハイブリッド車両が走行する道路の傾斜角を検出する傾斜角センサー302、前記ハイブリッド車両の走行車速を検出する車速センサー304、
図1に示すようなエンジン10、モータ20、変速装置および制動装置を含んで前記ハイブリッド車両の走行車速を制御するための被制御対象370、および前記傾斜角センサー302および車速センサー304の信号を受信して前記被制御対象370中で特にエンジンおよびモータを制御して走行車速を設定された目標車速で制御する制御器300を含むことができる。
【0032】
前記傾斜角センサー302は、本発明の実施例では一例としてホイールに装着されて車両の縦傾きを検出する縦加速度センサーで形成されることができ、他の例としてはブレーキロッキング防止装置(ABS;anti−lock braking system)と関連した縦加速度センサーで形成されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。これと異なる構成であっても、実質的な車両の傾斜角に相応する値の計算を可能にする構成であれば本発明の技術的な思想が適用されることができる。
【0033】
前記車速センサー304は、本発明の実施例では一例としてホイールに付着して回転速度を検出する車速センサーで形成されることができ、他の例としては変速機の終減速ギヤに付着する車速センサーで形成されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。これと異なる構成であっても、実質的な車速に相応する値の計算を可能にする構成であれば本発明の技術的な思想が適用されることができる。
【0034】
前記制御器300は、設定されたプログラムによって動作する一つ以上のマイクロプロセッサーまたは前記マイクロプロセッサーを含むハードウェアであって、前記設定されたプログラムは後述する本発明の実施例による定速走行制御方法を遂行するための一連の命令で形成される。
【0035】
前記制御器300は、
図3に示すように、前記目標車速と前記傾斜角センサー302によって検出された走行道路の傾斜角に基づいて走行負荷を演算し、演算された走行負荷に基づいて前記定速走行のための要求トルクを算出する走行負荷演算部310、前記算出された要求トルクに基づいて設定された比率でエンジントルクおよびモータトルクを分配して前記エンジン10およびモータ20に指令する動力分配部360、前記目標車速と前記車速センサー304によって検出された走行車速間の速度差を算出し前記速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出する速度制御部350、および前記速度制御部350によって算出された追従モータトルクを前記動力分配部360で分配されたモータトルクに合算するための合算部380を含むことができる。
【0036】
前記制御器300を構成する各構成要素は設定されたプログラムによって動作する一つ以上のマイクロプロセッサーまたは前記マイクロプロセッサーを含むハードウェアで構成されることもできる。
【0037】
前記速度制御部350は、本発明の実施例では一例として、車速センサー304によって検出される走行車速を目標車速に追従させるために車速をフィードバック制御でき、このため、
図6に示すようなPID(proportional integral differential)制御器を含むことができる。前記PID制御器の構成および作用については当業者に一般的なものであるため、これに対する詳細な説明は省略する。
【0038】
本発明の実施例において前記制御器300は、
図1に示されたようなハイブリッド車両のエンジン10を制御するエンジン制御器(ECU)、モータ20を制御するモータ制御器(MCU)、変速機40を制御する変速制御器(TCU)、およびエンジンクラッチ30を制御しハイブリッド車両の全体動作を制御するハイブリッド制御器(HCU)を含むことができる。
【0039】
後述する本発明の実施例による定速走行制御方法において、その一部プロセスは前記エンジン制御器によって、他の一部プロセスはモータ制御器によって、また他の一部プロセスは変速制御器によって、また他の一部プロセスはハイブリッド制御器によって行うことができる。
【0040】
本発明は保護範囲は後述する実施例に限定されるものではない。本発明の実施例での説明と異なる組み合わせで制御器を実現することができる。また、前記エンジン制御器、モータ制御器、変速制御器およびハイブリッド制御器が実施例で説明されたものとは異なる組み合わせのプロセスを行うことができる。
【0041】
以下、本発明の実施例によるハイブリッド車両の走行モード制御方法について添付図面を参照して詳しく説明する。
【0042】
図4は本発明の実施例によるハイブリッド車両の走行モード制御方法を示すフローチャートである。
【0043】
図4に示されているように、制御器300は使用者(運転者)によって設定される目標車速と走行道路の傾斜角を検出する傾斜角センサー302の信号に基づいて定速走行のための要求トルクを算出する(S100、S200)。
【0044】
前記要求トルクは制御器300の走行負荷演算部310によって算出されることができる。
【0045】
走行負荷演算部310は、本発明の実施例では一例として、
図5に示すように、運転者によって設定された目標車速(v)と傾斜角センサー302に検出された走行道路の傾斜角(θ)を基礎にハイブリッド車両に作用する走行負荷として力(F;force)を演算することができ、前記演算された力(F)に車輪の半径をかけて要求トルクを算出することができる。
【0046】
図5で前記力(F)は車輪のローリングに応じたローリング抵抗力(F
rolling)と、走行中に車体の空気抵抗による空気抵抗力(F
aerodynamic)および走行道路の傾斜角に応じた傾斜抵抗力(F
climbing)の和で定義される。
【0047】
前記ローリング抵抗力(F
rolling)、空気抵抗力(F
aerodynamic)および傾斜抵抗力(F
climbing)はそれぞれ以下の式で計算できる。以下の式でAは車両の正面面積(m
2)であり、C
dは空気抵抗係数でマイナス符号であり、ρは大気中空気密度(kg/m3)である。
【0051】
一方、傾斜角センサー302が縦加速度センサーで形成される場合、傾斜角(θ)は以下のようにして求められる。
【0052】
以下の式でlong_accel_valは縦加速度センサーの出力信号値であり、Mは車両重量であり、aは車両走行加速度、gは重力加速度である。
【0054】
S200で走行負荷演算部310が目標車速と走行道路の傾斜角に基づいて定速走行のための要求トルクを算出すると、制御器300は動力分配部360を通じて前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配してエンジン10とモータ20で前記設定された比率のトルクが発生するように前記エンジンおよびモータに指令する(S300)。
【0055】
前記設定された比率は実験データ等を通して最適値を設定できることは当業者にとって自明である。
【0056】
そして、動力分配部360は前記算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに分配する場合、ハイブリッド車両のバッテリー60(
図1)のSOC(state of charge)のバランシング(balancing)を考慮してトルク分配を適切に行うことができる。
【0057】
動力分配部360でエンジントルク指令およびモータトルク指令がそれぞれエンジンとモータに印加されると、前記エンジンとモータはそれぞれ指令されたトルクを発生し、前記エンジンとモータによって発生したトルクによってハイブリッド車両は走行することになる。
【0058】
前記ハイブリッド車両の走行の際、車速センサー304は走行車速を検出して速度制御部350に入力する。
【0059】
車速センサー304によって検出された走行車速が入力されると、制御器300の速度制御部350は前記目標車速と前記検出された走行車速間の速度差を算出し、算出された速度差が設定値以上であるか判断する(S400、S500)。
【0060】
前記設定値は本発明の実施例では一例として前記目標車速の2〜5%にすることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
前記速度差が設定値以上であれば、速度制御部350は前記速度差に基づいて前記目標車速を追従するための追従モータトルクを算出して合算部380に入力する(S600)。
【0062】
前記追従モータトルクが合算部380に入力されると、合算部380は前記入力された追従モータトルクを前記動力分配部360で分配されたモータトルクに合算して合算された最終のモータトルクをモータ20に指令して前記走行車速が前記目標車速を追従するようにする(S700、S800)。
【0063】
前記のようにして、制御器300が定速走行制御中に前記目標車速が変更されると、制御器300は前述のように前記変更された目標車速に基づいて前記要求トルクを更新算出し、更新算出された要求トルクを設定された比率のエンジントルクおよびモータトルクに更新分配することができる。
【0064】
一方、前記目標車速の変更ではなく、前記走行道路の傾斜角または前記ハイブリッド車両の走行負荷が変更されて走行車速が変わる場合、制御器300は前記設定された比率で分配されたエンジントルク指令およびモータトルク指令をそのまま維持した状態で、速度制御器350で変化した走行車速に応じた追従モータトルクを算出し、これを前記分配されたモータトルクに合算させて前記走行車速が前記目標車速を追従するようにすることができる。
【0065】
したがって、本発明の実施例によれば、走行負荷の変動がない場合、例えば、走行道路の傾斜角の変化がない場合、エンジントルク指令は大きく変わらないので一定のスロットル、点火角の制御が可能であり、それだけエンジン効率が向上することができる。
【0066】
そして、本発明の実施例によれば、動力分配部で分配されたモータトルクに速度制御部で生成された追従モータトルクを合算して最終のモータトルクを生成し、これを応答性能が速いモータに指令することによって定速走行の制御性能を向上させることができる。
【0067】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれによって限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の色々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0068】
300 制御器
302 傾斜角センサー
304 車速センサー
310 走行負荷演算部
350 速度制御部
360 動力分配部