特許第6193034号(P6193034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6193034-発熱体冷却装置及びその制御方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193034
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】発熱体冷却装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20170828BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20170828BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20170828BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20170828BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20170828BHJP
   H01M 10/6565 20140101ALI20170828BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20170828BHJP
   B60L 3/00 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/633
   H01M10/6556
   H01M10/6563
   H01M10/6565
   B60K11/06
   !B60L3/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-150384(P2013-150384)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-22905(P2015-22905A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−335497(JP,A)
【文献】 特開2006−114532(JP,A)
【文献】 特開2004−220799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52−10/667
B60K 11/00−15/10
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略密閉されたモジュールケースに配置されるバッテリに対して空気流を送風する送風機であって、第1の風量と、前記第1の風量よりも多い第2の風量とを含む、複数の風量で送風することができる送風機と、
前記送風機によって送風され前記バッテリを経由して循環された空気流を冷却するための冷却用熱交換器と、
前記送風機と電気的に接続されるコントロールユニットもしくは前記送風機に配置される風量切換機構であって、前記モジュールケース内の容積、前記バッテリの発熱量、前記冷却用熱交換器の冷却能力、前記第1の風量の少なくともいずれかに基づいて前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると前記コントロールユニットが判断した場合には前記送風機の風量を前記第2の風量に切り換えるように前記コントロールユニットによって作動される風量切換機構と
を具備することを特徴とする自動車用バッテリ冷却装置。
【請求項2】
経過時間を測定し得るタイマーを前記コントロールユニット内にもしくは前記コントロールユニットに電気的に接続されるように更に備え、
前記コントロールユニットは、前記タイマーが所定の時間を計測したことをもって前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項1記載の自動車用バッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記モジュールケース内に設けられる湿度センサ及び/もしくは温度センサを更に備え、
前記コントロールユニットは、前記湿度センサの測定結果及び/もしくは前記温度センサの測定結果に基づいて前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項1記載の自動車用バッテリ冷却装置。
【請求項4】
経過時間を測定し得るタイマーを前記コントロールユニット内にもしくは前記コントロールユニットに電気的に接続されるように更に備え、
前記モジュールケース内に設けられる湿度センサ及び/もしくは温度センサを更に備え、
前記コントロールユニットは、前記タイマーが所定の時間を計測したことと、前記湿度センサの測定結果及び/もしくは前記温度センサの測定結果との組み合わせをもって前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項1記載の自動車用バッテリ冷却装置。
【請求項5】
略密閉されたモジュールケースに配置されるバッテリに対して、第1の風量と、前記第1の風量よりも多い第2の風量とを含む、複数の風量で空気流を送風することができる送風機と、前記送風機によって送風され前記バッテリを経由して循環された空気流を冷却するための冷却用熱交換器と、前記送風機と電気的に接続されるコントロールユニットもしくは前記送風機に配置される風量切換機構を備えた自動車用バッテリ冷却装置の制御方法であって、
−前記第1の風量で送風する工程と、
前記モジュールケース内の容積、前記バッテリの発熱量、前記冷却用熱交換器の冷却能力、前記第1の風量の少なくともいずれかに基づいて前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると前記コントロールユニットが判断する工程と、
前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると前記コントロールユニットが判断した場合には前記コントロールユニットが前記送風機の風量を前記第2の風量に切り換えるように前記風量切換機構を作動させる工程と
を具備することを特徴とする自動車用バッテリ冷却装置の制御方法。
【請求項6】
前記自動車用バッテリ冷却装置は経過時間を測定し得るタイマーを前記コントロールユニット内にもしくは前記コントロールユニットに電気的に接続されるように更に備え、
前記コントロールユニットは、前記タイマーが所定の時間を計測したことをもって前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項5記載の自動車用バッテリ冷却装置の制御方法。
【請求項7】
前記自動車用バッテリ冷却装置は前記モジュールケース内に設けられる湿度センサ及び/もしくは温度センサを更に備え、
前記コントロールユニットは、前記湿度センサの測定結果及び/もしくは前記温度センサの測定結果に基づいて前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項5記載の自動車用バッテリ冷却装置の制御方法。
【請求項8】
経過時間を測定し得るタイマーを前記コントロールユニット内にもしくは前記コントロールユニットに電気的に接続されるように更に備え、
前記モジュールケース内に設けられる湿度センサ及び/もしくは温度センサを更に備え、
前記コントロールユニットは、前記タイマーが所定の時間を計測したことと、前記湿度センサの測定結果及び/もしくは前記温度センサの測定結果との組み合わせをもって前記空気流の凝縮を生じなくなる状態にあると判断することを特徴とする請求項5記載の自動車用バッテリ冷却装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体の冷却を行う発熱体冷却装置及びその制御方法に関し、特に、ハイブリッド自動車や電気自動車に用いられるバッテリの冷却を行う発熱体冷却装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野において、ハイブリッド自動車や電気自動車が広く実用されるようになってきている。その際に、従来よりも大容量のバッテリが用いられ、その発熱量も従来の自動車と比べ、はるかに大きくなってきている。
【0003】
一方、バッテリの設置場所は、自動車内部の居住スペースを確保するため、トランクルーム下部や、座席床下などの、狭隘で、形状が制限される場所となる場合が多い。
【0004】
そのような中で、いかに効率的にバッテリを冷却するかは、走行性能、快適性、安全性など、自動車全体の性能を確保する意味で、極めて重要な問題となってきている。
【0005】
例えば、バッテリを冷却する方法として、特許文献1には、バッテリと、バッテリを収容するバッテリケースと、バッテリケース内部に設けられた送風機と、バッテリケース内部に設けられたエバポレータとを備える自動車用バッテリ冷却装置に係る技術思想が開示されている。
【0006】
このような、ケース内に、発熱体、送風機、冷却用熱交換器を収容する発熱体冷却装置は、騒音を抑制したり、自動車への搭載性を向上したりできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−54379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ケース内に、発熱体、送風機、冷却用熱交換器を収容するバッテリ冷却装置においては、運転時に、冷却用熱交換器表面に空気中の水分が凝縮し、凝縮水が発生し、その凝縮水の水滴が飛散する、飛水という現象が発生する。特許文献1においては、冷却用熱交換器としてのエバポレータの表面に親水性の表面処理を施し、かつ、エバポレータの取り付けを傾斜させることで、凝縮水の水滴の飛水の発生を防止し、かつ、凝縮水を排水ドレンからバッテリケース外へ排出するようにしているが、次の点で十分とは言えないというという問題があった。
【0009】
発熱体冷却装置は、狭隘で形状が制限される場所に配置されることが多いため、冷却用熱交換器も小型のものが用いられる。一方、バッテリなどの発熱体は、その表面が冷却された空気と接触することで冷却されるものである。ここで、一般に発熱体は数量が多く、表面形状も複雑であり、発熱体冷却装置には大きな送風能力が求められる。その結果、冷却用熱交換器を通過する空気流の風速は速いものとなり、親水性の表面処理を施した冷却用熱交換器を用いたとしても、凝縮水の飛水に対して、より注意深く考慮する必要がある。
【0010】
そこで、上記問題を解決するため、本発明は、飛水の発生を最小限に抑えるようにした、バッテリなどの発熱体を冷却する装置及びその制御方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本発明は、発熱体を収納する略密閉されたモジュールケースに配置される発熱体冷却装置であって、空気流を発生する送風機と、空気流を冷却する冷却用熱交換器とを有し、送風機が、少なくとも、第1の風量と、第1の風量よりも多い第2の風量とを含む、複数の風量で送風することができ、所定の条件により、複数の風量の切換が可能であることを特徴とする。
【0012】
これによれば、凝縮により水滴が発生し、かつ、飛水しやすい状態の場合には、より少ない風量(例えば第1の風量)で送風機を運転することで、冷却用熱交換器表面に水滴が発生したとしても飛水の発生が防止される。このとき水滴は、冷却用熱交換器の通風部分の外部(例えば、冷却用熱交換器の下方)へと移動する。その後、モジュールケースの内部が除湿されて水滴が発生しにくい条件に移行したら、より多い風量(例えば第2の風量)に切り換えることで、飛水の発生なく発熱体の冷却効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明は、上記の発熱体冷却装置であって、上記送風機の風量の切換が、送風機の運転時間に基づくことを特徴とする。
【0014】
すなわち、運転開始時は、空気流の湿度が比較的高く、水滴が発生しやすい。その状態では、より少ない風量で送風機を運転する。すると、発生した水滴は、飛水することなく、冷却用熱交換器の通風部分の外部(例えば、冷却用熱交換器の下方)へと移動する。また空気流は、湿度が低下していく。そこで、所定の時間を経過した後により多い風量に切り換えることで、飛水の発生なく発熱体の冷却効率を高めることができる。これにより、センサなどによる検知機構を必要とせず、簡便に装置が実現できる。
【0015】
あるいは、本発明は、上記の発熱体冷却装置であって、上記送風機の風量の切換が、空気流の温度、湿度のいずれか、またはその両方に基づくことを特徴としてもよい。
【0016】
すなわち、湿度が高く、水滴の発生や飛水をしやすい場合には、より少ない風量で送風機を運転することで、水滴は飛水せず冷却用熱交換器の通風部分の外部(冷却用熱交換器の下方)へと移動し、空気流は湿度が低下する。湿度低下後は、より多い風量に切り換えて、飛水の発生なく冷却効率を高めることができる。直接、空気流の湿度という、水滴や飛水の発生条件から制御するため、確実な動作が期待できる。
【0017】
また、上記送風機の風量の切換が、空気流の温度に基づくようにしてもよい。同一密閉空間であれば、温度が高いほど含みうる水蒸気量が多いことから、冷却によって水滴が発生しやすいため、高温の間はより少ない風量で、温度が低下したらより多い風量で、それぞれに送風するようにすればよい。温度の検知は比較的容易にできるため、装置が簡便になる。
【0018】
更に、本発明は、前記の発熱体冷却装置であって、送風機の風量の切換が、送風機の運転時間と、空気流の温度、湿度のいずれか、またはその両方との組み合わせに基づくことを特徴としてもよい。
【0019】
例えば、運転開始から所定の時間を経過するか、湿度が所定の値に下がるか、どちらかを満たせばより多い風量に切り換える組み合わせ、あるいは運転開始から所定の時間を経過しても温度が高ければ、より多い風量には切り換えないというような組み合わせであってもよい。実態に合わせて、きめ細かい制御が可能となる。
【0020】
別の本発明は、発熱体冷却装置の制御方法であって、発熱体を収納する略密閉されたモジュールケースに配置され、空気流を発生する送風機と、空気流を冷却する冷却用熱交換器とを有する発熱体冷却装置において、送風機が、少なくとも、第1の風量と、前記第1の風量よりもより多い第2の風量とを含む、複数の風量で送風することができ、
−送風機が、複数の風量のうちのいずれかの風量で送風する工程と、
−空気流の風量を切り換えるための所定の条件を検出する工程と、
−検出された所定の条件に基づき、前記送風機が、前記複数の風量のうちの他の風量に切り換えて送風する工程と
を含むことを特徴とする。
【0021】
また、別の本発明は、発熱体冷却装置の制御方法であって、空気流の風量を切り換えるための所定の条件が、送風機の運転時間であることを特徴としてもよい。
【0022】
あるいは、別の本発明は、発熱体冷却装置の制御方法であって、空気流の風量を切り換えるための所定の条件が、空気流の温度、湿度のいずれか、またはその両方であることを特徴としてもよい。
【0023】
あるいは、別の本発明は、発熱体冷却装置の制御方法であって、空気流の風量を切り換えるための所定の条件が、送風機の運転時間と、空気流の温度、湿度のいずれかまたはその両方の組み合わせであることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る発熱体冷却装置及びその制御方法では、冷却用熱交換器において発生する水滴の飛散を防止することができ、発熱体などに悪影響を与えることなく、長期間の稼働が可能となり、その経済的効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る発熱体冷却装置1及び発熱体5を内蔵するモジュールケース6の正面断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る発熱体冷却装置1の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態にかかる発熱体冷却装置1について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る発熱体冷却装置1及び発熱体5を内蔵するモジュールケース6の正面断面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る発熱体冷却装置1の斜視図である。これらにより、詳細に説明する。
【0028】
薄肉で箱型構造の略密封されたモジュールケース6内には、略水平状態の仕切板61が設けられ、仕切板61には、第1の通風口62、第2の通風口63が設けられている。仕切板61の上方には、自動車用バッテリなどの発熱体5が固定されている。
【0029】
また、モジュールケース6内には、仕切板61の下方に、両端に第1の開口部41、第2の開口部42を有するダクト状のハウジング4が設けられ、第2の開口部42が、仕切板61の第1の通風口62と密着されている。
【0030】
このハウジング4には、内部に、第1の開口部41側に冷却用熱交換器3、第2の開口部42側に送風機2が収容され、固定されており、これらにより、発熱体冷却装置1を構成している。
【0031】
送風機2としては、省スペースで設置が可能で、適切な風量が得られるシロッコファン及びファンを駆動するモータの組み合わせとして実現されることが望ましいが、ファンの種類はそれに限定されるものではない。
【0032】
また、冷却用熱交換器3としては、冷媒の蒸発による気化熱を利用するエバポレータを採用することが望ましいが、それに限定されるものではない。
【0033】
ここで、発熱体5には図示しない外部からの電力用配線及び必要な場合は制御用配線、送風機2にも図示しない外部からの電力用配線及び制御用配線、冷却用熱交換器3にも図示しない外部からの冷媒出入配管が接続されているが、それらの配線、配管の取付部分は、シールなどで密封され、その部分からの空気の流入流出が防止されている。なお、外部とは、モジュールケース6の外部のことを言う。
【0034】
また、送風機2が発生する空気流の方向は、図1の中に矢印で示すように、ハウジング4の第1の開口部41から、冷却用熱交換器3を通過して吸引され、ハウジング4の第2の開口部42、仕切板61の第1の通風口62を通過して発熱体5の方へ吐出され、発熱体5を通過した後は、仕切板61の第2の通風口63を経由して、ハウジング4の第1の開口部41へと循環するようになっている。すなわち、空気流の上流側から、冷却用熱交換器3、送風機2、発熱体5の順に環状に並ぶようになっている。
【0035】
冷却用熱交換器3は、図示しない外部からの冷媒出入配管を通して、冷却された冷媒が流入し、その冷媒が冷却用熱交換器3中に設けられた図示しない配管を通過する際に、冷媒と、送風機2が発生する空気流との間で熱交換がなされ、空気流を冷却できるようになっている。
【0036】
また、冷却用熱交換器3の下方には、水滴を収集するための吸水材66が設置されている。
【0037】
更に、モジュールケース6内には、湿度センサ64、温度センサ65が設けられており、モジュールケース外の自動車全体の制御を司る、ECU(エンジンコントロールユニット)7に電気的に接続されている。なお、湿度センサ64、温度センサ65は、いずれか1つのみ備えるか、両方とも備えない場合もある。このECU7は、送風機2、冷却用熱交換器3などとも、電気的に接続されている。
【0038】
また、ECU7に電気的に接続されるか、あるいはECU7の内部に設けられる、経過時間を測定しうるタイマー71を有する場合もある。
【0039】
次に、このような構成の発熱体冷却装置1の動作について説明する。
【0040】
自動車の運転を開始するなどして、発熱体の冷却が必要な事態となった場合には、冷却用熱交換器3への冷媒の流入が開始され、更に送風機2の運転が開始される。ここで、送風機2は、より少ない風量(第1の風量)か、第1の風量よりもより多い風量(第2の風量)のいずれかの風量で運転が可能となっている。この切り換えは、送風機2に内蔵された風量切換機構21によってなされる。風量切換機構21は、具体的には送風機2内のモータの回転数の変更によりなされるが、それに限定されず、周知の風量切換機構であってもよい。なお、風量切換機構21は、送風機2側ではなく、ECU7側に配置し、ECU7からの信号により、風量が切り換わるようにしてもよい。
【0041】
冷却用熱交換器3の運転開始時には、モジュールケース6の内部の空気の温度は、冷却が必要な状態であるから、通常は、高温となっており、水分は水蒸気として気体の状態となっている。
【0042】
この状態で、冷却用熱交換器3の運転が開始されると、水滴が飛散しやすくなる。すなわち、モジュールケース6の内部の空気の温度は下がりきっておらず、冷却用熱交換器3の表面には、水蒸気の凝縮による水滴が発生することになる。ここで、水滴が発生し、しかも冷却用熱交換器3の表面に留まっている場合に(水滴が、冷却用熱交換器の通風部分の外部へ移動する前に)、送風機2がより多い風量を発生するように運転されると、冷却用熱交換器3を通過する空気流の風速が早いために、表面の水滴が離脱し、送風機2を通過して、発熱体5の方へと向かうことになる。このことにより、種々の電気的接点や金属部分を有する発熱体5に対して、接点の誤動作や錆の発生などにつながることが懸念される。
【0043】
そこで、冷却用熱交換器3の運転開始時には、送風機2をより少ない風量の第1の風量で運転するようにする。第1の風量は、冷却用熱交換器3の表面に発生した水滴が離脱しない風量(風速)となるように設定してあり、水滴は冷却用熱交換器3の表面を鉛直下方に移動していき、冷却用熱交換器3の下方にある吸水材66に吸水されることになる。
【0044】
第1の風量で、運転を続行していると、モジュールケース6が略密閉であるために、温度および湿度が低下していき、更なる凝縮が生じない状態となる。そこで、送風機2の風量を、より多い風量である第2の風量に切り替える。それにより、効率的な冷却がなされることになる。
【0045】
この、少風量から多風量に切り換える条件として、運転開始からの経過時間を条件とする方法がある。すなわち、凝縮を生じなくなるまでの運転時間は、モジュールケース6内の容積、発熱体5の発熱量、冷却用熱交換器3の冷却能力、第1の風量などの条件から、実測または計算によってECU7において求めることができる。それにより、ECU7が、タイマー71を設定し、設定時間経過後に風量切換機構21を作動させればよい。あるいは、凝縮を生じなくなるまでの運転時間は、実測や計算により予め求めておくこともできる。タイマー71が予め設定しておいた所定の時間を計測し、所定の時間が経過した後、ECU7が風量切換機構21を作動させればよい。
【0046】
また、別の条件としては、モジュールケース6の内部の湿度を条件とする方法がある。例えば、モジュールケース6の内部に設置された湿度センサ64の測定結果を、湿度センサ64に接続された自動車のECU(エンジンコントロールユニット)7に伝送し、ECU7が、モジュールケース6内の湿度が凝縮を発生させない数値以下になったと判断した場合には、送風機2の風量を、より多い風量である第2の風量に切り換えるようにする。
【0047】
更に、別の条件としては、モジュールケース6の内部の温度を条件とする方法がある。例えば、モジュールケース6の内部に設置された温度センサ65の測定結果を、温度センサ65に接続された自動車のECU7に伝送し、ECU7が、モジュールケース6内の容積、発熱体5の発熱量、冷却用熱交換器3の冷却能力、第1の風量などの条件から、実測または計算によって、温度の低下と湿度の低下の相関を求めることができ、それにより、モジュールケース6内の空気が凝縮を発生させない状態になったと判断した場合には、送風機2の風量を、より多い風量である第2の風量に切り替えるようにする。
【0048】
これらの条件は、組み合わせて用いてもよい。例えば、運転開始からの経過時間と、モジュールケース6内の湿度のどちらか早い方とする。これにより、早期に風量を多くして、発熱体の冷却を早めることができる。また、温度と湿度の両方を検知し、それらがある範囲内になったら切り替えてもよい。除湿された状態を、より確実に検知することができる。
【0049】
なお、これまでの説明では、ECU7を用いるとしたが、これを用いることなく、発熱体冷却装置1に関しての制御を専用に行う制御部を設けるか、あるいは、制御部を設けず、単純なタイマーなどを用いる方法で行うようにしてもよい。
【0050】
これまでの説明では、冷却用熱交換器3の下方に吸水材66を設置するとしたが、冷却用熱交換器3の下方に受け皿のような構造を設け、そこに水分を溜めておくようにしてもよいし、配管によって外部に排水してもよい。外部に排水する場合は、モジュールケース6の密封度を減じないような配管構造とすることが望ましい。また、冷却用熱交換器3の表面を親水性処理し、吸水材66を冷却用熱交換器の側面や周囲に配置してもよい。冷却用熱交換器3を下方へ流れる水滴だけでなく、側面や周囲でも水滴を捕捉できる。冷却用熱交換器の表面から水滴をより効率的に除去することができるので、水滴の飛散の発生をより確実に防ぐことができる。
【0051】
構成要素の配列についても、空気流の上流側から、冷却用熱交換器3、送風機2、発熱体5の順に環状に並ぶとしたが、送風機2、冷却用熱交換器3、発熱体5の順に環状に並んでもよい。発熱体冷却装置1に要求される種々の条件から、このような配列が有利になることもある。
【0052】
モジュールケース6とその内部の構造について、発熱体5を仕切板61の上に固定する構造として説明したが、その構造に限定されず、例えば、仕切板61を用いずにモジュールケース6の側面や上部から発熱体5を固定する方法や、発熱体5を側面間に渡した梁状や網状の構造物の上に設置する方法であってもよい。
【0053】
また、これまでの説明では、送風機2及び冷却用熱交換器3を、ハウジング4に組み付けた状態で、モジュールケース6の内部に設置するとして説明した。このようにすると、モジュールケース6の外部でハウジング4への組み付け作業ができることから、作業性に優れている。
【0054】
一方、送風機2及び冷却用熱交換器3を、モジュールケース6の内部に、直接設置するようにしてもよい。この場合は、モジュールケース6がハウジング4を兼ねることとなる。このようにすると、部品点数が減るため、部材費を低減することができる。
【0055】
更に、これまでの説明では、モジュールケース6内で、発熱体5が上方、発熱体冷却装置1が下方に設置される構造として説明したが、これに限定されず、上下が逆の構造でも、全体を横に倒したような構造であってもよい。
【0056】
また、これまでの説明では、送風機2を、初めは、より少ない風量の第1の風量で運転し、水滴を生じない条件になったら、より多い風量の第2の風量に切り換えるとして説明したが、逆に、より多い風量の第2の風量で運転中に湿度が上昇した場合などに、より少ない風量の第1の風量に切り換えるようにしてもよい。
【0057】
更に、風量は、第1の風量と、それより多い風量の第2の風量との間を切り換えるとして説明したが、3以上の風量を切り換えてもよい。例えば、第1の風量から、水滴発生量が少なくなったら、少し多い風量の第2の風量へ、更に水滴の発生が少なくなったら、最も多い風量の第3の風量へと切り換えるようにしてもよい。
【0058】
なお、これまでの説明では、発熱体5として自動車用バッテリ、冷却用熱交換器3としてエバポレータを例に説明したが、これに限定されるものでなく、発熱体としては冷却を必要とするあらゆる電気装置(例えば、車両走行用モータのインバーター)、冷却用熱交換器としては、冷却に用いられるあらゆる熱交換器(例えば、液体式冷却用熱交換器)を含むものとする。
【符号の説明】
【0059】
1 発熱体冷却装置
2 送風機
21 風量切換機構
3 冷却用熱交換器
4 ハウジング
41 第1の開口部
42 第2の開口部
5 発熱体
6 モジュールケース
61 仕切板
62 第1の通風口
63 第2の通風口
64 湿度センサ
65 温度センサ
66 吸水材
7 ECU
71 タイマー
図1
図2